JP4988093B2 - リン青銅複合焼結材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐摩耗性に優れたリン青銅複合焼結材に関するものである。
リン青銅は強度、ばね特性、耐摩耗性などに優れているために各種機械部品や電気部品に使用されている。通常リン青銅は、脱酸剤がほとんど残留していないような普通青銅、10%以下のSnに0.05〜0.15%程度のPを含有させたばね用リン青銅、およびSn10%以上の青銅にPを0.3〜1.5%を加えた軸受用リン青銅がある。これらの範疇に属さないリン含有銅合金としてはCo-P, Ni-P, Co-Ni-Pなどのリン化物を析出させた特許第3044384号公報のものがある。本発明においてリン青銅とはこれらをすべて包含し、好ましくは0.3%以下のPと3〜10%のSnを含有する軸受用リン青銅を指すものである。
【0002】
【従来の技術】
特許第2769421号及び第3013946号によるとリン青銅を裏金上で焼結し、その後圧延することによりバイメタル状軸受材料が製造されている。焼結は還元もしくは不活性雰囲気、700〜1000℃、0.3〜15分の条件で行なわれている。
特公平7−26125号公報によると、バイメタル状すべり軸受合金を製造するに際して、裏金の鉄のキュリー点までは還元性雰囲気内で高周波誘導加熱による予備焼結を行ない、その後電気抵抗炉又はガス加熱炉内で本焼結を行う方法が開示されており、その実施例によると、高周波誘導加熱時間は1分,電気炉加熱時間は3〜12分である。また、比較例によると、電気炉加熱だけを12分行っても焼結はやや良好の結果が得られている。
高周波誘導加熱による予備焼結を行ない、その後電気抵抗炉又はガス炉内で本焼結を行う方法は、特表平1−503150号公報でも開示されており、微細な鉛粒子組織を有するCu−Pb系焼結層が得られることが説明されている。
【0003】
前段落番号で挙げた従来の銅合金焼結層を有するバイメタル状複合材料においては、焼結銅合金の結晶粒度に注目したものはない。尤も、高周波誘導加熱による予備焼結を行ない、その後電気抵抗加熱を行う方法では、電気炉もしくはガス加熱炉のみで焼結を行う方法よりも全体の焼結時間は短いので焼結銅合金の結晶粒度は小さくなる可能性はあるが、特表平1−503150号公報では鉛組織にのみ着目している。
【0004】
従来、一般的な電気炉で焼結し、市販されているバイメタル状すべり軸受のリン青銅の平均結晶粒度は50〜200μmであった。この原料粉末は粒度が一般に180μm以下のものが使用されている。
一般に金属材料の特性は結晶粒度が小さいほど向上するが、焼結の面では結晶粒度が小さいと粉末粒子どうしの焼結結合が不充分になるので、上記範囲の平均結晶粒度は現状では材料特性と焼結性の両方を最高レベルで満足している値であると言える。別の観点からは、従来のバイメタル状すべり軸受のリン青銅の結晶粒度をより小さくしようとすると、焼結不充分となり焼結層の密着性が不足した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明は従来技術における制約を打破し、従来と同等の焼結密着性を確保しつつより小さい結晶粒度を有するリン青銅複合焼結材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、質量百分率で0.01〜0.5%のP及び3〜10%のSnを必須元素として含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなるリン青銅からなる焼結層と、裏金とを含んでなるリン青銅複合焼結材において、前記リン青銅複合焼結材の少なくとも表面に存在する焼結層のリン青銅はその結晶の平均円相当径が5〜50μmであることを特徴とする。以下本発明をより詳しく説明する。
【0007】
本発明において複合焼結材料を構成する裏金は、焼結合金の支持体である他に高周波誘導加熱されて銅合金への熱伝達媒体になるものである。この裏金の厚さは0.3〜6mmの範囲のものを使用することが好ましい。ここで、厚さが0.3mm未満では構造部品としての強度が低くなり、一方6mmを超えると高周波誘導加熱による裏金の昇温が不十分になり、その結果焼結も不十分になるのでこの上限以下が好ましい。また裏金の幅はリン青銅の用途により決められる。
裏金鋼板は通常低炭素鋼の冷間圧延鋼板であるが、必要により粗面化処理、酸洗、アルカリ脱脂、スキンパス圧下、Niめっき、異種材料とのクラッドによる複合化などの処理を施こしたり、微量元素添加による高強度化などを行ってもよい。クラッド化される異種材料は通常の方法で焼結一体化される銅合金層であってもよい。裏金の長さは特に制限がない。
【0008】
複合焼結材料の少なくとも表面に存在するリン青銅焼結層は質量百分率で0.01〜0.5%のPを必須元素として含有する。以下の説明では、百分率は特に断らない限り質量%である。Pが0.01%未満では、脱酸、強度向上などの効果が不足し、一方0.5%を超えると銅合金が脆化するので好ましくない。好ましいP含有量は0.01〜0.5%であり、より好ましくは0.05〜0.3%である。
リン青銅焼結層は裏金に従来材と同じ接着強度で接合されており、具体的には剪断法で測定した接着強度が150MPa以上である。
【0009】
本発明が最も特徴とするのはリン青銅の結晶粒度が平均円相当径換算で5〜50μmであり、従来材より極めて微細であることである。ここで、従来材(電気炉焼結材、平均円相当径換算の結晶粒度78μm)と本発明材(平均円相当径換算の結晶粒度18μm)の基礎特性測定例(平均値)を示すと、次のとおりであり、約3%の強度増加がある。
【0010】
【表1】
【0011】
次に摺動特性を説明する。
(1)耐摩耗性試験法
図1に示す円筒平板型摩擦・摩耗試験機により行なった。試験条件は次のとおりであった。
速度(試験片30の軸31に対する相対すべり速度):0.2m/s
荷重(w):14.2kgf
油種:10w−30(油浴32)
油温:30℃
軸(31):S55C
時間:60分
(2)耐焼付性試験法
図2(a),(b)に示す両押しピンディスク試験機により行なった。図中、33は供試材、34は熱電対、35は荷重伝達機構、36はディスク(S45C焼入れ相手材)、37はパッド、38は注油管である。試験条件は次のとおりであった。
回転数:1790rpm(周速15m/s)
面圧:2MPa/5min漸増
給油方法:パッド給油
(3)耐疲労性試験法
直径5mm、平行部の長さ13mmの丸棒試験片に50Hzの振動を加え、107回での疲労強度を測定した。
試験結果を次の表に示す。
【0012】
【表2】
【0013】
この結果から、本発明材の摩耗量は従来材の約80%に減少し、耐焼付性と耐疲労性は約20%向上していることが分かる。耐摩耗性が良好な材料は、相手材を摩耗させて耐焼付性を劣化させることが多いが、本発明材はこのような傾向がないので摺動特性が優れていると言える。したがって、本発明材のリン青銅はピストンピンブシュなどの耐摩耗性・耐疲労性部品に好ましく使用することができる。
【0014】
本発明のリン青銅焼結層は、例えば1%以下のPb,1%以下のB,2%以下のAg及び8%以下のNiの少なくとも1種を含有することができる。これらの成分のうちAg,Niは強度を高めかつ潤滑性を付与し、リン青銅の摺動特性を高める。これらの成分の内幾つかは二次相として存在する。二次相が存在する場合のリン青銅の結晶粒度は、一般的に行なわれているように、当該二次相がリン青銅の粒内に存在する場合は二次相を含む粒度であり、リン青銅の粒外に存在する場合は当該二次相を除いた粒度である。
【0015】
本発明においては、耐摩耗性を高めるために、リン青銅の100質量部に対して、合計で10質量部以下のFe3P,CBN(cubic boron nitride),TiC,Al2O3,AlN,NiB, 及びSiCの少なくとも1種以上の硬質物をさらに含有させることができる。これらの含有量が10質量部を超えると複合リン青銅が脆弱化する。硬質物の粒度は30μm以下が好ましい。
【0016】
さらに、本発明においては、潤滑性を高めるためにリン青銅の100質量部に対して、合計で5質量部以下の黒鉛、hBN(hexagonal boron nitride)などを分散させることもできる。黒鉛などの粒度は10μm以下が好ましい。
【0017】
上記した微細結晶組織を有するリン青銅焼結材は、(1)焼結層の組成を有する粉末を裏金に積層し、裏金及びこの上に積層された粉末を、還元性もしくは不活性雰囲気中で、裏金の鋼のキュリー点近傍まではソレノイドコイル式高周波誘導加熱により加熱し、続いてトランスバースコイル式高周波誘導加熱により焼結温度まで加熱を行う第1の方法、(2)焼結層の組成を有する粉末を裏金に積層し、裏金及びこの上に積層された粉末を還元性もしくは不活性雰囲気中で、ソレノイドコイル式高周波誘導加熱により該裏金の鋼のキュリー点近傍まで加熱し、続いて還元性もしくは不活性雰囲気中で、焼結温度までソレノイドコイル式高周波誘導加熱と、例えば裏金両側縁のためのトランスバースコイル式高周波誘導加熱を併用する第2の方法、(3)焼結層の組成を有する粉末を裏金に積層し、裏金及びこの上に積層された粉末を還元性もしくは不活性雰囲気中で、裏金の鋼のキュリー点近傍まで及びさらに焼結温度までをトランスバースコイル式高周波誘導加熱による加熱を行う第3の方法、あるいは(4)焼結層の組成を有する粉末を裏金に積層し、裏金及びこの上に積層された粉末を、還元性もしくは不活性雰囲気中で、裏金の鋼のキュリー点近傍まで及びさらに焼結温度までを、ソレノイドコイル式高周波誘導加熱とトランスバースコイル式高周波誘導加熱を併用して加熱する第4の方法により製造することができる。好ましい製造条件は結晶粒の成長に最も影響を与える750〜1000℃における加熱時間が2分以下であり、かつ焼結性に影響を与える850℃以上での加熱時間が0.1分以上である。続いて、本発明に係る複合焼結材を工業的に製造するための好ましい条件を説明する。
【0018】
本発明においては、裏金上に銅合金の組成を有する粉末の層を作ることによりワークを調製する。この方法としては、ホッパーからの落下により散布された粉末をすり切る方法によることができる。銅合金の組成を有する粉末とは、粉末粒子自体が銅合金の組成をもつもの、Cu−P母合金粉末とその他の合金粉末を混合したものなど種々の粉末である。粉末の粒度は、焼結が可能であれば、特に制限がない。又、粉末を構成する結晶の粒度も制限がない。
【0019】
次に,トランスバース式高周波誘導加熱(transverse flux heating)について説明する。従来技術で採用されていたソレノイドコイル式高周波誘導加熱では、板状ワークを囲むソレノイドコイルの軸と板面は平行になる。これとは異なるトランスバースコイル式高周波誘導加熱では、図3に示すように、高周波誘導コイルは板状ワークを取り囲まず、何れかの板面に面するように配置される。トランスバース式高周波誘導加熱コイルに関する従来技術としては,米国特許第4751360号、このコイル形状の改良を提案する米国特許第5403994号、板の縁も均一に加熱する方法を提案する米国特許第5739506号、連続走行するストリップの縁に遮蔽手段を設けてストリップの均一加熱を意図する米国特許第2448012号などがあるが、鋼スラブのような厚い材料を均一に加熱することを意図しており,バイメタル状銅合金の加熱焼結には言及していない。このように、従来トランスバースコイル式高周波誘導加熱法は鉄鋼のスラブ、ストリップなどの比較的厚い材料を厚さ及び幅に関し均一加熱するために主として用いられていたが、本発明者らはトランスバース式高周波誘導加熱は、10mm以下の板厚の薄板に対してはキュリー点以上での昇温速度が低くならないことに着目して本発明を完成した。
【0020】
続いて、裏金の鋼のキュリー点近傍まではソレノイドコイル式高周波誘導加熱により加熱し、続いてトランスバース式高周波誘導加熱により焼結温度まで加熱を行う第1の方法を説明する。ワークを搬送しながら裏金の鋼のキュリー点近傍までの高周波誘導予備加熱を行うことによって、銅合金粉末には裏金からの熱伝導及び輻射による熱を与えて焼結温度近傍まで急速昇温する。ソレノイドコイルが発生する高周波の周波数は1〜400kHzである。高周波誘導コイルの巻数はワークの移動速度、裏金の板厚などを考慮して決めるものとする。予備加熱は室温から行うことが好ましいが、裏金が前段の処理により常温以上に加熱されている場合は、その温度から予備加熱を行っても全く差し支えない。最後に、加熱中の雰囲気は還元性もしくは不活性雰囲気とする。なお、室温からキュリー点までの昇温時間は、中型乗用車用の一般的なすべり軸受で1分以内、最も一般的には約20秒である。
【0021】
続いて、トランスバースコイルによる後段の加熱を典型的には、裏金の温度で1023K(750℃)近傍〜1273K(1000℃)までの温度範囲で行う。この後段加熱では裏金が焼結温度まで急速にかつ均一に加熱され、好ましくは20K以下、より好ましくは5K以下の裏金の幅方向温度分布が達成される。これに対して、ソレノイドコイルによる後段加熱を行うと、最適条件でも、昇温速度は本発明法の1/5以下であり、温度分布は最大200K(℃)である。トランスバース式高周波誘導加熱の周波数は1〜10kHzであることが好ましい。
なお、キュリー点から焼結温度までの昇温時間は、中型乗用車用の一般的なピストンピンブシュで1分以内、最も一般的には約40秒である。昇温後の焼結温度での保持時間は一般にゼロ以上3分の範囲である。ここで、保持時間ゼロとは焼結温度に裏金が達した瞬間に冷却を開始することである。本発明において焼結温度とは焼結に適する温度範囲内の温度であり、焼結温度への保持とは一定温度への保持を意味していない。したがって、焼結温度範囲が1163K(890℃)〜1253K(980℃)であると、1223K(950℃)まで昇温を続け, 1223K(950℃)より直ちに冷却する方法の採用が可能である。
【0022】
さらに、続いてソレノイドコイル式高周波誘導加熱により裏金の鋼のキュリー点近傍まで加熱し、続いて焼結温度までソレノイドコイル式高周波誘導加熱と、例えば裏金両側縁のためのトランスバースコイル式高周波誘導加熱を併用する第2の方法につき説明する。段落0018で記述したようにソレノイドコイル方式には問題があるが、トランスバースコイルと併用することにより弊害を目立たなくすることができる。特にソレノイドコイル方式による裏金の両側縁での急峻な温度降下は両側縁を加熱するトランスバースコイル方式を使用することにより補償することができる。併用の方式としては、時系列の面からは(イ)ソレノイドコイル方式とトランスバースコイル方式による誘導加熱を同時に行う;(ロ)ソレノイドコイル方式とトランスバースコイル方式による誘導加熱を逐次行う方式があり,またトランスバースコイル方式による加熱領域としては裏金の(a)板幅全体を加熱する、(b)板幅の両側縁を加熱する方式があり、これら(イ)、(ロ)、(a)及び(b)適宜を組み合わせることができる。また、同一ラインにおいて例えば(イ)+(b)の装置1基以上と(ロ)+(b)の装置1基以上とを交互に配列してもよい。第2発明方法では昇温速度は第1発明方法より若干低くなるが、温度分布は遜色ない結果を実現できる。なお、なお、キュリー点から焼結温度までの昇温時間は、中型乗用車用の一般的なピストンピンブシュで2分以内、最も一般的には約60秒である。
本段落0021での説明事項と矛盾しない第1の方法の説明事項は本段落に引用したこととして、繰り返しを避けることにしたい。
【0023】
引き続いて、裏金の鋼のキュリー点近傍まで及びさらに焼結温度までを、トランスバースコイルにより一貫して高周波誘導加熱する第3の方法を説明する。裏金の鋼のキュリー点未満では、最適条件で作動されるトランスバースコイル式高周波誘導加熱の昇温速度は同様に最適条件で作動されるソレノイドコイル式高周波誘導加熱より低く、温度分布はほぼ同じにできる。
本段落0022での説明事項と矛盾しない第1の方法の説明事項は本段落に引用したこととして、繰り返しを避けることにしたい。
【0024】
最後に、裏金の鋼のキュリー点近傍まで及びさらに焼結温度までを、ソレノイドコイルとトランスバースコイルを併用して高周波誘導加熱する第4の方法につき説明する。この発明において、後段の加熱は第2の方法と同じであり、前段の加熱がソレノイドコイルとトランスバースコイルを併用して高周波誘導加熱するところが上述した各発明と異なっている。併用の方式は第2の方法の説明を引用することとする。前段の加熱では、昇温速度は第1及び第2発明と同じであり、第3の方法より高い。
本段落0023での説明事項と矛盾しない第1方法、第2方法の説明事項は本段落に引用したこととして、繰り返しを避けることにしたい。
【0025】
ワークをすべり軸受として使用するためには、冷間圧縮を行って焼結層を緻密化した後に再焼結を行う。再焼結法は、本第1〜第4のいずれかの方法、通常は1回目の焼結と同じ方法を採用するか、あるいは異なる方法を採用する。
【0026】
上記した方法を実施する焼結装置は、図4の概念図に示すように、銅合金粉末3を裏金1に積層するためのホッパー2など、焼結炉5、即ち高周波誘導加熱炉、及び裏金1を長さ方向に搬送するために裏金コイルを巻き戻すアンコイラ4a及び巻き取るリコイラ4bを含んでなる。なお、リコイラ4bを駆動するモーター、減速機などは図示を省略しており、また、コイル状ではなく切り板状裏金を搬送する場合は、(アン)コイラに代えて通板ローラーやメッシュベルトなどを使用することができる。図示されない駆動手段で回転されるリコイラ4bは裏金1を、1〜10m/分、より具体的には板厚が1mmでは約6m/分、板厚が6mmでは1.5m/分の速度で焼結炉5内を通板する。勿論、この値は好ましい一例であり、裏金板厚が厚く、高周波電力が低く、高周波周波数が高いほど、通板速度を遅くすればよい。さらに、図示のように、焼結炉5の直後に、ガス冷却及び/又はロール冷却等を行う冷却室6を設けて、ワークを速やかに次工程の温度まで冷却することが好ましい。なお、後述する焼結雰囲気設定手段により焼結炉内部の銅合金粉末は水素ガスなどと接触せしめられている。
【0027】
本第1の方法を具体化した焼結炉を概念的に示す図5において、耐火断熱材等からなる炉体の内側に設けられた1基以上のソレノイドコイル式高周波誘導加熱部8a,8b,8c(以下「ソレノイドコイル」と略す)は裏金をその鋼のキュリー点近傍に加熱する。ソレノイドコイル8a,8b,8cは裏金の板面方向に高周波磁界を発生させる公知の加熱手段であって、ワーク7を取り囲む任意の形状をもつ。ソレノイドコイル8a,8b,8cは図示のように1段以上設けて、高周波発振機に接続してもよく、あるいは1段のみ設けてもよい。ソレノイドコイル8a,8b,8cとワーク7の間隔は、40mm以下、特に10〜30mmが好ましい。
【0028】
ソレノイドコイル8a,8b,8cに続いてトランスバースコイル式高周波誘導加熱部9a,9b,9c(以下「トランスバースコイル」と言う)が設けられる。トランスバースコイル9a,9b,9cはワーク7を挟んで対向させている。このようなトランスバースコイル自体は、特公平7−7704号公報、特許第2875489号公報、米国特許第4751360号公報、第5403994号、第5739506号公報等で公知である。トランスバースコイル9a,9b,9cは図示のように2段以上に設けて、高周波発振機に接続してもよく、あるいは1段のみ設けてもよい。トランスバースコイル9a,9b,9cとワーク7の間隔は、40mm以下、特に10〜30mmであって、小さいほど好ましい。
【0029】
そこで、図6を参照して焼結雰囲気の設定方法を説明すると、ソレノイドコイル8の内側に、石英ガラス、セラミックスなどの断熱性、非電導性、非磁性、気密性などの性質を兼備した雰囲気密封用保護管22を配置し、その内部にてワーク7を搬送可能にし、保護管22内には水素・窒素混合ガス、水素・アルゴン混合ガスなどを、図示されないガス源から、弁、流量計などを介して炉の内に流すと、銅合金粉末3はこれらガスと接触しつつ高周波誘導加熱される。保護管22の内径は、高周波電流到達距離に依存する加熱効率や、通板中に波打ち挙動を示すワーク7との接触危険回避などの両面から、20〜50mmであることが好ましい。図6ではソレノイドコイル8を示すが、トランスバースコイルにも同様に保護管を設ける。
【0030】
本第2の方法を具体化した実施例を図7に示す。図7において,ソレノイドコイル8a,8bは裏金をキュリー点近傍まで加熱し、それ以上の高温はソレノイドコイル8c,8d,8e,8fと側縁加熱用トランスバースコイル14a,14bの併用方式で加熱を行う。ワーク7の両側縁は中央部に比べ温度降下が起こり易いので、側縁部加熱用トランスバースコイル14a,14bを図7に示すように配置している。
【0031】
本発明者は、測温方法を種々試行し、(あ)ワークからの放射光は物理的には見かけの温度を示すが、これを実際の温度に補正するためには放射率もしくは放射率比を使用することができる;(い)放射光の測定は時間ずれがなく、通板中のワークの波長を直ちに検知できる;(う)放射光センサは、ワークと非接触方式であり、高周波誘導の影響を受けないなどの事実に着目し、測温方法を考案した。例えばCHINO社製の放射温度計(商品名IRC)を使用し石英ガラス保護管を介してワークからの放射光を受光する。
以上、バイメタル状リン青銅焼結材を工業的に製造する方法につき詳述したが、この方法以外でも、従来の電気炉もしくはガス加熱炉を少なくとも1段階で使用する焼結法よりも急速加熱が可能な方法によれば本発明が特長とする微細結晶組織を得ることができる。
【0032】
【実験例】
実験例
ソレノイドコイルによる最終加熱温度=1013K(760℃),トランスバースコイルによる最終焼結温度=1223K(950℃)、裏金板厚=1.5mm、焼結雰囲気−N2−H2混合ガス、焼結層厚さ=600μmにてリン青銅(0.06%P,6.0%Sn)を第1の方法で焼結したところ、1.2分で全加熱工程が終了した。その顕微鏡組織を図8に示す(平均円相当径18μm)。
【0033】
従来例
実験例と同じ裏金上に、実験例と同じ組成を有し、焼結層の厚さが600μmであるリン青銅を電気炉で焼結した。焼結条件は、通板速度=2.8m/分、焼結雰囲気−N2−H2混合ガス、温度1163K(890℃)、時間18分であった。その顕微鏡組織を図9に示す(平均円相当径78μm)。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るリン青銅複合焼結材は微細結晶組織を有しており、かつ密着性が良好である。このリン青銅は硬度、強度などは従来材と同等であるが耐摩耗性・耐焼付性及び耐疲労性が大幅に向上している。しかも耐摩耗性向上にも拘らず耐焼付性は低下していない。よって、本発明材は摺動材料として極めてすぐれている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 円筒平板型摩擦・摩耗試験機の概念図である。
【図2】 両押しピン−ディスク試験機の概念図であり、(a)図は側面図、(b)図は平面図である。
【図3】 トランスバース式高周波誘導加熱の原理説明図である。
【図4】 焼結装置の概念図である。
【図5】 本第1の方法を具体化した焼結炉を示す概念図である。
【図6】 本発明において還元性もしくは不活性焼結雰囲気を設定する方法を説明する焼結炉のソレノイドコイル加熱部の横断面図である。
【図7】 本第2の方法を具体化した高周波誘導コイルの配列例を示すである。
【図8】 本発明の焼結リン青銅の顕微鏡組織写真である。
【図9】 従来の焼結リン青銅の顕微鏡組織写真である。
【符号の説明】
1 裏金
2 ホッパ−
3 銅合金粉末
4a アンコイラ
4b リコイラー
5 焼結炉(高周波誘導加熱炉)
6 冷却室
7 ワーク
8 ソレノイドコイル式高周波誘導加熱部
9 トランスバースコイル式高周波誘導加熱部
10 トランスバースコイル
Claims (5)
- 質量百分率で0.01〜0.5%のP及び3〜10%のSnを必須元素として含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなるリン青銅からなる焼結層と、裏金とを含んでなるリン青銅複合焼結材において、前記リン青銅複合焼結材の少なくとも表面に存在する焼結層のリン青銅はその結晶の平均円相当径が5〜50μmであることを特徴とするリン青銅複合焼結材。
- 前記リン青銅が、さらに、質量百分率で、1%以下のPb、 1%以下のBi、2%以下のAg、及び8%以下のNiの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1記載のリン青銅複合焼結材。
- 前記焼結層が、さらに、前記リン青銅の100質量部に対して硬質物として10質量部以下のFe 3 P、AlN、CBN、TiC、Al 2 O 3 、NiB、及びSiCの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のリン青銅複合焼結材。
- 前記焼結層が、さらに、前記リン青銅の100質量部に対して、5質量部以下の黒鉛及びhBNの少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から3までの何れか1項記載のリン青銅複合焼結材。
- ピストンピンブシュに使用することを特徴とする請求項1から4までの何れか1項記載のリン青銅複合焼結材。
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