JP4986676B2 - ハイブリッド自動車のモータ支持構造 - Google Patents

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Description

本発明は、駆動源としてエンジンと電動モータとを用いたハイブリッド自動車のモータ支持構造に関するものである。
従来、エンジンに負荷がかかる発進時や加速時に電動モータを駆動して駆動力をアシストし、減速時には電動モータを発電機として作用させてエネルギー回生を行うパラレル型のハイブリッド自動車が知られている。この種のハイブリッド自動車において、特許文献1(図8参照)には、エンジンを専用駆動源とする自動車をベースにしてハイブリッド自動車を製造する際に、既存の変速機をそのまま流用することができる駆動装置が提案されている。
この駆動装置では、エンジンと、エンジンから駆動力が入力され、変速を行う変速機と、変速機から駆動力が伝達され、駆動力を車輪へ分配する差動装置と、エンジンからの駆動力とは別に差動装置へ駆動力を伝達する電動モータとを備えており、この電動モータは変速機ケースに設けられたトランスファ取付部に取り付けられている。電動モータの出力ギヤは、変速機から動力が伝達される差動装置のリングギヤと同じリングギヤに噛み合っている。電動モータと出力ギヤとの間にはクラッチが設けられており、エンジンのみを駆動源として走行する際には、上記クラッチを遮断状態とし、これにより電動モータの空転を止めてエネルギーロスを抑制している。一方、回生ブレーキ走行モードでは、クラッチを接続状態とし、電動モータを発電機として作用させる。上記構造によって、4輪駆動車用の既存のエンジン、変速機、差動装置、トランスファをそのまま流用しつつ、2輪駆動と4輪駆動の両方が可能なハイブリッド自動車を構成することができる。
上記駆動装置の場合、電動モータを収容したモータハウジングの一端側がトランスファ取付部に横向きで固定され、電動モータはいわば片持ち支持されている。しかし、ハイブリッド車用の電動モータ50は数十kgにもなる重量物であり、車体振動などが加わった時、電動モータには上下方向または前後方向に大きな慣性力が作用し、変速機ケースに過大な負荷がかかる。そのため、変速機ケースの耐久性を低下させる恐れがある。
特許文献2の図4には、差動装置の一方の出力軸と同軸に電動モータを配置したハイブリッド自動車の駆動装置が提案されている。この場合には、出力軸を支えることによって電動モータも同時に支えることが可能であり、変速機ケースにかかる重量負荷を軽減できる。しかし、電動モータの回転軸を中空円筒状としたり、電動モータの直径が大きくなるなど、特殊な構造の電動モータを使用しなければならず、コスト上昇を招く結果となる。
特開平9−95149号公報 特開2002−160540号公報
そこで、本発明の目的は、エンジン車をベースにしてハイブリッド車を容易に構成できるとともに、電動モータによる変速機ケースへの重量負荷を軽減できるハイブリッド自動車のモータ支持構造を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、エンジン出力軸が車幅方向に配設された横置き式エンジンと、エンジンの車幅方向一側部に連結され、エンジンから駆動力が入力される変速機と、この変速機から駆動力が伝達され、車輪へ分配する差動装置と、上記変速機からの駆動力とは別に駆動力を上記差動装置へ伝達する電動モータとを備えたハイブリッド自動車において、上記差動装置は左右の車輪の片側に偏在配置され、上記差動装置の左右の出力軸はそれぞれ等長ドライブシャフトを介して左右の車輪と接続されており、上記差動装置の出力軸は上記エンジン出力軸の後方の斜め下方に配置されており、上記差動装置の長い方の出力軸がエンジンの外壁に固定されたブラケットにより回転自在に支持されており、上記電動モータのモータ軸はエンジンの後側側部であって差動装置より上方に配置されており、上記電動モータのモータ軸は減速ギヤ機構を介して差動装置に接続されており、上記電動モータのモータ軸が突出する一端側が変速機ケースのエンジン側側面に固定され、上記電動モータの一端側から所定の距離を隔てた部位が上記ブラケットによって支持されていることを特徴とするハイブリッド自動車のモータ支持構造を提供する。
本発明では、エンジンからの駆動力を差動装置を介して車輪に伝達するとともに、電動モータからの駆動力を差動装置を介して車輪に伝達するように構成したので、エンジン車をベースにして少ない設計変更でハイブリッド車を構成できる。また、電動モータの一端側を変速機ケースに固定するとともに、この一端側から所定距離隔てた部位を、エンジン(シリンダブロック)に固定された等長ドライブシャフト用のブラケットによって支持している。ブラケットによって支持される電動モータの部位としては、電動モータの重心位置又はそれより自由端側、つまり変速機ケースに固定された電動モータの一端側に対して反対側がよい。このように、電動モータは前後方向の所定のスパンで両持ち支持されているため、その荷重を変速機ケースとブラケットとで分担でき、変速機ケースにかかる重量負荷を軽減できる。そのため、変速機ケースの耐久性を向上させることができる。通常のドライブシャフトが電動モータの近傍に配置されている場合には、走行中にドライブシャフトが上下に振れ、電動モータと干渉する恐れがあるが、ブラケットによって支えられた差動装置の出力軸は、走行中、上下に変位しないので、電動モータと干渉することがない。さらに、電動モータとして特殊な構造のモータを必要とせず、一般的なモータを使用できるので、コストを低減できる。
好ましい実施形態によれば、電動モータをリテーナを介してブラケットに固定してもよい。この場合には、ブラケットにリテーナを介して電動モータを支持することで、既存の等長ドライブシャフト用ブラケットを大幅に設計変更する必要がなく、安価に構成できる。
以上のように、本発明によれば、電動モータの一端側を変速機ケースに固定するとともに、この一端側から離れた部位を等長ドライブシャフト用ブラケットによって支持したので、電動モータは変速機ケースとブラケットとで両端支持され、支持剛性が高くなるとともに、変速機ケースにかかる重量負荷を軽減できる。そのため、変速機ケースの耐久性を向上させることができる。
以下に、本発明の実施の形態を、実施例を参照して説明する。
図1〜図8は本発明に係るハイブリッド自動車の駆動装置の第1実施例を示す。この実施例は、FF横置き式のエンジン車をベースとし、変速機として無段変速機を用いた例である。
無段変速機Aの入力軸10は、エンジン1の出力軸2とトルクコンバータ3を介して接続されている。無段変速機Aは、入力軸10の回転を正逆切り替えて駆動軸11に伝達する前後進切替装置20、駆動プーリ31と従動プーリ33と両プーリ間に巻き掛けられたVベルト35とからなる変速機構30、従動軸12の動力を出力軸41,42に伝達する差動装置40、電動モータ50などを備えている。入力軸10と駆動軸11とは同一軸線上に配置され、従動軸12と差動装置40の出力軸41,42とは入力軸10に対して平行でかつ非同軸に配置されている。したがって、この無段変速機は全体として3軸構成とされている。この実施例で用いられるVベルト35は、一対の無端状張力帯と、これら張力帯に支持された多数のブロックとで構成された公知の金属ベルトである。
無段変速機Aを構成する各部品は変速機ケース4の中に収容されている。変速機ケース4は、変速機構30や前後進切替機構20などを収容する本体ケース5と、トルクコンバータ3を収容するコンバータハウジング6と、駆動軸11と従動軸12の軸端を支えるエンドカバー7とを備えている。本体ケース5とコンバータハウジング6とエンドカバー7で構成される第1収容室S1の内部には、変速機構30や前後進切替機構20、差動装置40が収容されている。また、本体ケース5の底部にはオイルパン8が固定されており、その中に変速機構30、前後進切替装置20及びトルクコンバータ3のロックアップを制御するための変速制御用油圧制御装置16(図2参照)が収容されている。トルクコンバータ3と前後進切替装置20との間には、エンジン出力軸2によって駆動されるオイルポンプ9が配置され、その発生油圧は油圧制御装置16に供給されている。
前後進切替装置20は、遊星歯車装置21と逆転ブレーキ28と直結クラッチ29とで構成されている。遊星歯車装置21のサンギヤ22は入力軸10に連結され、リングギヤ23は駆動軸11に連結されている。この例の遊星歯車装置21はシングルピニオン方式であり、逆転ブレーキ28はピニオンギヤ24を支えるキャリア25と本体ケース5との間に設けられ、直結クラッチ29はキャリア25とサンギヤ22との間に設けられている。
直結クラッチ29を解放して逆転ブレーキ28を締結すると、トルクコンバータ3から入力される駆動力が逆転されかつ減速されて駆動プーリ31へ伝達され、従動プーリ32及び差動装置40を介して出力軸41,42がエンジン回転方向と同一方向に駆動されるため、前進駆動状態となる。逆に、逆転ブレーキ28を解放して直結クラッチ29を締結すると、遊星歯車装置21のキャリア25とサンギヤ22とが一体に回転するので、トルクコンバータ3から入力された駆動力がそのまま駆動プーリ31へ伝達され、従動プーリ32及び差動装置40を介して出力軸41,42がエンジン回転方向と逆方向に駆動され、後退駆動状態となる。
変速機構30を構成する駆動プーリ31は、駆動軸11上に一体に固定された固定シーブ31aと、駆動軸11上に軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持された可動シーブ31bと、可動シーブ31bの背後に設けられた油圧サーボ32とを備えている。油圧サーボ32に供給される油圧を制御することにより、変速制御が実施される。従動プーリ33は、従動軸12上に一体に固定された固定シーブ33aと、従動軸12上に軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持された可動シーブ33bと、可動シーブ33bの背後に設けられた油圧サーボ34とを備えている。油圧サーボ34に供給される油圧を制御することにより、トルク伝達に必要なベルト推力が与えられる。
従動軸12の一端部はエンジン1側に向かって延び、この一端部に出力ギヤ13が固定されている。出力ギヤ13は差動装置40の第1リングギヤ43に噛み合っており、差動装置40から左右に延びる出力軸41,42に動力が分配される。差動装置40には、第1リングギヤ43より小径な第2リングギヤ44が、第1リングギヤ43よりエンジン側であって、本体ケース5の端面よりエンジン側に突出した位置に設けられている。第2リングギヤ44には、後述する電動モータ50から減速ギヤ機構60及びモータ動力断続用の油圧クラッチ70を介して動力が伝達される。出力軸42は出力軸41より長く、エンジン1の側部に沿って延びている。出力軸41,42の端部には、それぞれジョイント45,46を介して等長ドライブシャフト47,48が接続され、各ドライブシャフト47,48の端部に駆動輪(図示せず)が連結されている。
図5,図6に示すように、電動モータ50のモータ軸50aが突出する一端部に設けた取付座51は、コンバータハウジング6に複数本のボルト52によって締結され、電動モータ50はコンバータハウジング6に横向きで固定されている。なお、後述するギヤカバー14を間にしてコンバータハウジング6と取付座51とをボルト52で締結してもよい。電動モータ50の一端面から所定距離離れた位置には、リテーナ53の一端部がボルト54aによって締結されている。リテーナ53の締結位置は、好ましくは電動モータ50の重心位置又はそれより自由端側がよい。リテーナ53の他端部は、出力軸42を支える等長ドライブシャフト用ブラケット55にボルト54bによって締結されている。ブラケット55はベアリング56を介して出力軸42を回転自在に支持しており、ブラケット55の一端部はエンジン1(シリンダブロック)の側面にボルト57によって締結されている。そのため、ブラケット55は、出力軸42を支えるとともに、リテーナ53を介して電動モータ50の荷重の一部を支える機能を有する。
ハイブリッド車用の電動モータ50は数十kgにもなる重量物であり、その一端面だけをコンバータハウジング6に締結しただけでは、繰り返し振動等が加わったとき、コンバータハウジング6の耐久性を低下させる恐れがあるが、上記のように電動モータ50の荷重の一部をリテーナ53,ブラケット55を介してエンジン1によって支持することで、コンバータハウジング6に作用する荷重を軽減でき、耐久性の向上を図ることができる。また、等長ドライブシャフト用ブラケット55を利用して電動モータ50を支持しているので、モータ専用の支持ブラケットを必要とせず、低コストでモータ50を支持できる。なお、図5ではリテーナ53を電動モータ50の軸方向ほぼ中間部に固定した例を示したが、電動モータ50の自由端側に近い位置に固定してもよい。また、リテーナ53とブラケット55とを一部品で構成してもよい。つまり、ブラケット55にモータ支持部を一体に形成してもよい。
コンバータハウジング6の差動装置40を収容したデフ収容部6aの斜め上部には、拡張ケース部6bが一体に形成されており、この拡張ケース部6bの開口部をギヤカバー14で閉じることにより、内部に減速ギヤ機構60、油圧クラッチ70及びモータ動力制御用油圧制御装置90を収容する第2収容室S2が形成されている。つまり、第2収容室S2は、デフ収容部6aの内部に形成されたデフ収容室S3より上部に形成されている。なお、この例では第2収容部S2に減速ギヤ機構60、油圧クラッチ70及びモータ動力制御用油圧制御装置90を一緒に収容したが、モータ動力制御用油圧制御装置90を減速ギヤ機構60及び油圧クラッチ70とは別の収容室に配置してもよい。この場合には、例えば減速ギヤ機構60と油圧クラッチ70とを差動装置40が収容されたデフ収容室S3内に配置してもよい。
減速ギヤ機構60は、図3,図4に示すように、電動モータ50のモータ軸50aと同軸上でスプライン結合された第1減速軸61と、第1減速軸61に対して平行に配置された第2減速軸62とを備えている。なお、モータ軸50aと第1減速軸61とを一部品で構成してもよい。第1減速軸61には第1減速ギヤ61aが一体に形成されており、この第1減速ギヤ61aはそれより大径な第2減速ギヤ63と噛み合っている。第2減速ギヤ63は、第2減速軸62にスプライン嵌合された内輪部材64上にワンウエイクラッチ65を介して支持されている。第2減速ギヤ63はワンウエイクラッチ65の外輪を兼ねている。ワンウエイクラッチ65の両側には一対のベアリング66が設けられ、これらベアリング66によって第2減速ギヤ63は安定に支持されている。ワンウエイクラッチ65は、電動モータ50から差動装置40へのみ動力を伝達するものであり、内輪部材64が第2減速ギヤ63より高速回転する時にはフリーとなる。第2減速ギヤ63には油圧クラッチ70のクラッチハブ71が一体に形成されている。第2減速軸62には油圧クラッチ70のクラッチドラム72がスプライン固定され、このクラッチドラム72の内部にピストン73が配置されている。クラッチハブ71とクラッチドラム72との間には、上記ピストン73によって締結,解放される複数のクラッチ板74が配置されている。
上記のように電動モータ50と差動装置40との間にワンウエイクラッチ65と油圧クラッチ70とを並列に配置したので、アイドルストップ等で油圧が発生していない状態から発進する場合には、電動モータ50の動力をワンウエイクラッチ65を介して差動装置40に伝達し、電動モータ50によって発進できる。また、走行中に油圧が発生している場合には、油圧クラッチ70を係合して減速時の回生を行い、さらに高速走行時には油圧クラッチ70を切ることで、電動モータ50の空転を防止できる。また、ワンウエイクラッチ65を第2減速ギヤ63の内側に配置し、第2減速ギヤ63に油圧クラッチ70のクラッチハブ71を形成してあるので、コンパクトで簡素な減速ギヤ機構60を構成できる。また、この実施例では減速ギヤ機構60として2本の減速軸61,62を用い、電動モータ50と差動装置40との間で2段階の減速を行うように構成したので、電動モータ50としてより小型のモータを使用できるとともに、電動モータ50のみで発進が可能となる。なお、アイドルストップを実施しない場合には、ワンウエイクラッチ65を省略することができる。
第2減速軸62の一端部は差動装置40を収容したデフ収容部6a内に挿入されており、この端部に第2リングギヤ44と噛み合う出力ギヤ67が形成されている。この例では、変速機の出力ギヤ13が第1リングギヤ43に噛み合い、電動モータ50からの動力伝達用の出力ギヤ67が第1リングギヤ43とは別の第2リングギヤ44に噛み合う例を示したが、第2リングギヤ44を省略し、第1リングギヤ43に両方の出力ギヤ13,67が噛み合うように構成してもよい。なお、出力ギヤ67が本体ケース5よりエンジン側に突出した第2リングギヤ44と噛み合う場合には、本体ケース5をエンジン車とハイブリッド車とで共通化できる利点がある。
図2,図6に示すように、差動装置40の出力軸41,42はエンジン出力軸2の後方の斜め下方に配置され、第2収容室S2はトルクコンバータ3を収容したコンバータハウジング6の後部でかつ差動装置40の上方に配置されている。電動モータ50のモータ軸50a(第1減速軸61)はエンジン1の後側側部であって差動装置40より上方に配置され、第2減速軸62はモータ軸50a(第1減速軸61)と差動装置40の出力軸41,42との上下方向中間位置に配置されている。そして、第2収容室S2はエンジン1の高さを超えない位置に配置されている。このように、エンジン1及び差動装置40に対して、電動モータ50及び減速ギヤ機構60を配置することで、電動モータ50をできるだけエンジン1に近づけることができ、空きスペースを有効利用して電動モータ50及び減速ギヤ機構60等をコンパクトに配置できる。また、電動モータ50の駆動力を減速ギヤ機構60を介して差動装置40へ伝達するので、小型のモータを使用でき、一層コンパクトに構成できる。このような構成は、限られたエンジンルーム内に収容されるFF車をベースとしたハイブリッド車の駆動装置として好適である。
図2,図3に示すように、コンバータハウジング6には第1プラグ80が固定され、減速ギヤ機構60に潤滑油を供給するための配管81が接続されている。ギヤカバー14には第2プラグ82が固定されており、油圧クラッチ70への供給油圧の元圧を供給するための配管83が接続されている。配管81,83は本体ケース5の側壁に設けられた油圧検出口84,85にそれぞれ接続されている。これら油圧検出口84,85は油圧チェックのために、エンジン車用の無段変速機Aに既に備えられたものである。一方の油圧検出口84からはトルクコンバータ3のロックアップON圧が出力され、他方の油圧検出口85からは逆転ブレーキ28の供給油圧Pbが出力されている。第1プラグ80に供給された潤滑油は、潤滑油路86を通って第2減速軸62の軸心穴87に供給され、第2収容室S2内に収容されたワンウエイクラッチ65やベアリング、ギヤ等を潤滑している。第2収容室S2は差動装置40より上部に配置されているので、第2収容室S2に溜まった潤滑油は重力によって、コンバータハウジング6に形成された通路(図示せず)を通り、デフ収容室S3へ戻される。第2プラグ82に供給された油圧Pbは、第2収容室S2に収容されたモータ動力制御用油圧制御装置90に導かれる。
図3,図7,図8に示すように、モータ動力制御用油圧制御装置90は、ギヤカバー14に固定されたバルブボデー91と、3本のバルブ92〜94とを備えているが、ポンプ等の独自の油圧源は備えていない。第1のバルブ92は変速制御用油圧制御装置16から配管83を介して供給された油圧Pbを一定のモジュレータ圧Pmに調圧するモジュレータバルブであり、第2のバルブ93はモジュレータ圧を調整して電気信号に比例した信号圧Psを出力するリニアソレノイドバルブであり、第3のバルブ94は変速制御用油圧制御装置16から供給された油圧Pbを油圧クラッチ70へ給排するコントロールバルブである。リニアソレノイドバルブ93の信号圧Psはコントロールバルブ94の信号ポート94aに供給され、コントロールバルブ94を切り替え制御する。上述のモータ動力制御用油圧制御装置90はハイブリッド車専用であり、エンジン車用の変速制御用油圧制御装置16に追加されるものである。上記のように減速ギヤ機構60と油圧クラッチ70とバルブボデー91とが1つの収容室S2にまとめて配置されているため、コンパクトに構成できるとともに、バルブボデー91が油圧クラッチ70の近くに配置されるので、油路が短くなり、油圧クラッチ70の応答性が向上する。そのため、電動モータ50の動力制御を精度よく行うことができる。バルブボデー91が減速ギヤ機構60より上部に配置されているので、バルブボデー91から排出されたドレーン油が減速ギヤ機構60の上に落下し、潤滑に利用できる。
上述のように、油圧クラッチ70の元圧Pbとして、変速制御用油圧制御装置16から前進時に締結される逆転ブレーキ28の油圧が供給されている。元圧Pbとして変速制御用油圧制御装置16からライン圧を導くことも可能であるが、無段変速機の場合、ライン圧はベルト推力を得るための従動側油圧サーボ34への供給油圧を兼ねるので、非常に高い油圧であり、この高いライン圧を油圧クラッチ70に適した油圧まで大きく減圧する必要があり、しかもライン圧の油路途中から油圧を取り出すと、無段変速機の油圧供給に影響を与える可能性がある。これに対し、前進時に締結される逆転ブレーキ28の供給油圧は、油圧クラッチ70の必要油圧と略同レベルの油圧であると同時に、逆転ブレーキ28の供給油圧は行き止まりの圧であるので、ライン圧に影響を及ぼすことがない。また、減速ギヤ機構60の潤滑系の油圧として、ロックアップON圧を利用しているが、ロックアップON圧はその先が潤滑系統に流れるので、これを減速ギヤ機構60に利用しても、何ら変速機本体に影響を及ぼさない。
上記実施例では、逆転ブレーキ28が前進時に締結され、油圧クラッチ70への供給油圧の元圧として逆転ブレーキ28への供給油圧を利用したが、直結クラッチ29が前進時に締結される変速機の場合には、油圧クラッチ70への供給油圧の元圧として直結クラッチ29への供給油圧を利用してもよい。さらに、変速制御用油圧制御装置16に与える影響を小さくできる場合には、ライン圧やその他の油圧を利用することも可能である。
ここで、上記構成よりなるハイブリッド自動車の作動を説明する。高速走行時には、エンジン1による走行が選択され、エンジン1の動力はトルクコンバータ3、変速機構30を介して差動装置40へ伝達され、出力軸41,42を介して車輪が駆動される。このとき、モータ動力断続用油圧クラッチ70は解放しているので、電動モータ50は追随回転せず、許容回転数の限界を超えることがない。走行途中で減速する場合には、油圧クラッチ70を係合することで、差動装置40と電動モータ50とを接続し、電動モータ50を発電機として作用させてエネルギー回生を行う。回生された電気エネルギーはバッテリに蓄えられる。なお、渋滞路のような低速走行時には、エンジン1を停止し、電動モータ50によって走行することもできるし、エンジン1による走行時に電動モータ50による駆動力を付与することで、燃費の向上や排気ガスの低減を行うこともできる。
燃費および環境性能の向上のため、アイドルストップ制御を行う場合がある。その場合、エンジンが停止しているため、オイルポンプ9が油圧を発生しておらず、逆転ブレーキ28だけでなくモータ動力断続用油圧クラッチ70も締結できず、発進できない。これに対し、本実施例のように電動モータ50と差動装置40との間にワンウエイクラッチ65を設けた場合には、電動モータ50を駆動すれば、その動力がワンウエイクラッチ65を介して差動装置40に即座に伝達されるため、電動モータ50によって発進することが可能になる。やがてエンジン1が始動してオイルポンプ9が油圧を発生するようになれば、逆転ブレーキ28を締結してエンジン動力によって走行を行い、電動モータ50を停止させればよい。
上記のようにワンウエイクラッチ65を設けることで、油圧が発生していない状態でも電動モータ50による発進を行うことができるが、それだけでなく、エンジン1による走行と電動モータ50による走行との動力伝達を円滑に切り替える機能も有する。例えばアイドルストップ状態からの発進時には電動モータ50によって発進し、車速が上昇すればエンジン1による走行に切り替えるが、その際に油圧クラッチ70を急に切ると、切替ショックを伴う可能性がある。これに対し、ワンウエイクラッチ65を設けることで、電動モータ50による走行からエンジン1による走行への切り替わりに際して、エンジン側(内輪)の回転速度が電動モータ側(外輪)の回転速度より高くなると、ワンウエイクラッチ65が自動的にフリーになるので、ショックのない円滑な動力の切り替えが可能である。逆に、エンジン1による走行から電動モータ50による走行への切り替わりに際しても、電動モータ側(外輪)の回転速度がエンジン側(内輪)の回転速度より高くなると、ワンウエイクラッチ65が自動的にロックするので、ショックのない切り替えが可能になる。
本発明は上記実施例に限定されるものではない。上記実施例では、電動モータを変速機ケースのエンジン側に配置した例を示したが、変速機ケースの反エンジン側に配置することもできる。この場合には、第2収容室をコンバータハウジングとギヤカバーとの間ではなく、本体ケースとギヤカバーとの間に形成することもできる。
上記実施例では、電動モータと差動装置との間に2軸の減速ギヤ機構を設けたが、モータ軸と同軸に減速ギヤを有する減速軸を取り付け、この減速ギヤを差動装置の第1リングギヤ又は第2リングギヤに噛み合わせてもよい。
本発明における変速機とは無段変速機に限るものではなく、一般の有段式自動変速機であってもよい。自動変速機の場合も、油圧制御装置や本体ケースが複雑な構造であるため、これら部品を共通化することで、安価なハイブリッド自動車を実現することが可能である。
本発明にかかるハイブリッド自動車の駆動装置の一例を示す概略骨格図である。 エンジン側から見た変速機ケースの側面図である。 図1に示す駆動装置の差動装置と電動モータ駆動機構の具体例を示す断面図である。 図3の要部の拡大図である。 電動モータの取付状態を示す車両後方からみた側面図である。 電動モータの取付状態を示す車両右側方からみた側面図である。 図1に示す駆動装置のモータ動力制御用油圧制御装置を示す断面図である。 モータ動力制御用油圧制御装置の油圧回路図である。
符号の説明
1 エンジン
2 エンジン出力軸
3 トルクコンバータ
4 変速機ケース
5 本体ケース
6 コンバータハウジング
10 入力軸
20 前後進切替装置
28 逆転ブレーキ
29 直結クラッチ
30 変速機構
40 差動装置
41,42 出力軸
43 第1リングギヤ
44 第2リングギヤ
50 電動モータ
50a モータ軸
53 リテーナ
55 ブラケット
56 ベアリング
60 減速ギヤ機構
70 油圧クラッチ
90 モータ動力制御用油圧制御装置

Claims (1)

  1. エンジン出力軸が車幅方向に配設された横置き式エンジンと、エンジンの車幅方向一側部に連結され、エンジンから駆動力が入力される変速機と、この変速機から駆動力が伝達され、車輪へ分配する差動装置と、上記変速機からの駆動力とは別に駆動力を上記差動装置へ伝達する電動モータとを備えたハイブリッド自動車において、
    上記差動装置は左右の車輪の片側に偏在配置され、
    上記差動装置の左右の出力軸はそれぞれ等長ドライブシャフトを介して左右の車輪と接続されており、
    上記差動装置の出力軸は上記エンジン出力軸の後方の斜め下方に配置されており、
    上記差動装置の長い方の出力軸がエンジンの外壁に固定されたブラケットにより回転自在に支持されており、
    上記電動モータのモータ軸はエンジンの後側側部であって差動装置より上方に配置されており、
    上記電動モータのモータ軸は減速ギヤ機構を介して差動装置に接続されており、
    上記電動モータのモータ軸が突出する一端側が変速機ケースのエンジン側側面に固定され、
    上記電動モータの一端側から所定の距離を隔てた部位が上記ブラケットによって支持されていることを特徴とするハイブリッド自動車のモータ支持構造。
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