JP4982629B2 - 抗体、及び抗体を含む抗歯周病組成物 - Google Patents

抗体、及び抗体を含む抗歯周病組成物 Download PDF

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Description

本発明は、抗体、及び抗体を含む抗歯周病組成物に関し、特に、歯周病菌の病巣となるバイオフィルムの形成を抑止し、歯周病リスクを低減する鶏卵抗体、及び当該鶏卵抗体を含む抗歯周病組成物に関する。
歯周病は、日本の成人の約8割が罹患する国民病であり、歯の喪失の直接的原因となるだけでなく、心疾患、脳血管疾患、肺炎、生活習慣病等の全身性疾患との強い関連が明らかとなっている。
歯周病は、歯周病菌が歯面や歯肉へ付着・増殖し、バイオフィルムを形成することにより引き起こされる口腔内感染症である。バイオフィルムは、以下のようにして形成、成熟すると言われている。
まず、歯表面に唾液中の有機物(ペリクル)が付着し、これに口腔常在菌であるストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、ストエレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(Streptococcus gordonii)、ストレプトコッカス・サンギス(Streprococcus sanguis)等が付着してコロニーをつくり始める。これらの初期定着菌群のコロニーが歯面に形成されると、これらの菌の表層タンパク質をレセプターとして、フゾバクテリウム・ヌクレイタム(Fusobacterium nucleatum)が定着・増殖し、共凝集を起こす。そしてさらに歯周病菌であるポロフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、タンネラ・フォーシテンシス(Tannerella forsythensis)、トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)等の後期定着菌が共凝集し、多糖体の産生を介してバイオフィルムが形成される。このように口腔内の常在菌叢のバランスが崩れ、複数の歯周病菌が相互に影響しあうことで歯周病原性を持つバイオフィルム(病巣)が形成される。
従来、歯周病の予防・改善のために、上記のような歯周病菌に対する抗体を作製し、これを用いることが提案されている。例えば、特許文献1には、バクテロイデス・ジンジバリス,バクテロイデス・インテルメディウス,アクチノマイセス・ビスコーサス,ヘモフィルス・アクチノミセテムコミタンス,フゾバクテリウム・ヌクレイタム及びアイコネラ・コローデンスから選ばれる口腔内細菌の線毛又は莢膜を抗原とし、これで免疫した家禽から得られる卵,卵黄又は水溶性卵黄分画物を含有することを特徴とする口腔用組成物が開示されている。
特許文献2には、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンスの線毛を構成するアミノ酸配列由来のフラグメントに対応する合成ペプチドを抗原とし、これを動物に免疫することによって得られる抗体を含有してなることを特徴とする口腔用組成物について開示されている。
特許文献3には、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)のタイプII線毛を構成する72KDaサブユニット蛋白質のアミノ酸配列由来のフラグメントに対応するペプチドであって、前記フラグメントが連続する5〜10個のアミノ酸残基を含んでなるフラグメント群から選ばれたことを特徴とするペプチドもしくはその誘導体又はそれらの塩を抗原として動物を免疫して得られる抗体を含んでなる歯周病予防用又は歯周病治療用口腔組成物が開示されている。
特許文献4には、歯周疾患原因菌の菌体表層由来多糖を抗原として動物に免疫することによって得られる抗体を含有してなることを特徴とする口腔用組成物が開示されている。
また、特許文献5には、糖アルコール及び/又はアミノ酸を含むバイオフィルム形成阻害用又はバイオフィルム除去促進用口腔用組成物、特許文献6には、オフロキサシン及びクロサンテルから選ばれるヒスチジンキナーゼ阻害剤を組成物全体に対して0.0001〜10質量%の濃度で含有し、フェノール性殺菌剤と界面活性剤及びアルコール類のうちの1種又は2種以上とを含有してなることを特徴とする口腔バイオフィルム抑制組成物、特許文献7には、グリシン若しくはアラニンを有効成分とする口腔内細菌の共凝集抑制剤が開示されている。
特開平10−152425号公報 特開平9−52822号公報 特開平8−48695号公報 特開平6−40871号公報 特開2005−29484号公報 特開2005−187377号公報 特開2005−53851号公報
しかし、従来の歯周病菌の成分を抗原として得られる抗体は、他の口腔内常在菌に影響を与えることなく、特定の菌を殺菌・除去できるというメリットがあるが、歯周病菌に直接作用させる必要があるため、一旦バイオフィルムが形成されてしまうと、バイオフィルム内の菌には作用しにくく、十分な予防・改善効果が期待できなかった。
一方、薬剤を使用した場合は、歯周病菌だけでなく、他の有用な口腔内常在菌も殺菌してしまうといった問題もあった。
また、バイオフィルム中の歯周病菌は、複数種の歯周病菌が相互に影響し合うことが知られているが、歯周病菌の抗原性の変化についてはほとんど知られておらず、このような抗原性の変化に着目して開発された抗体は知られていない。
したがって、本発明の目的は、バイオフィルムの形成抑制及びその除去、並びに歯周病菌に対する効果の高い抗体及びそれを含有する抗歯周病組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、バイオフィルム中における複数種の歯周病菌の相互作用に着目して、複数種類の歯周病菌の混合培養物を抗原として用いることにより、より効果の高い抗体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の抗体は、2種類以上の歯周病菌を混合培養した培養物を抗原として免疫した鳥類の卵から得られることを特徴とする。
上記発明においては、前記培養物は、2種類以上の歯周病菌を混合培養した際に生成するバイオフィルム様付着物であることが好ましい。
また、前記歯周病菌が、ポロフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、フゾバクテリウム・ヌクレイタム(Fusobacterium nucleatum)、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、タンネラ・フォーシテンシス(Tannerella forsythensis)、トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(Streptococcus gordonii)から選ばれた2種類以上の菌であることが好ましい。
特に、前記2種類以上の歯周病菌は、各々を単独で培養した場合と混合培養した場合とで、凝集状態が異なる2種類以上の歯周病菌であることを特徴とする。
具体的には、前記2種類以上の歯周病菌は、フゾバクテリウム・ヌクレイタム(Fusobacterium nucleatum)と、ポロフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、タンネラ・フォーシテンシス(Tannerella forsythensis)の4種から選択された1種以上の歯周病菌であることが好ましい。フゾバクテリウム・ヌクレイタム(Fusobacterium nucleatum)と、上記4種の歯周病菌との間では、歯周病菌表層同士で相互作用しあう可能性が、MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY REVIEWS, Sept. 2002, p. 486-505 に示唆されており、単独培養の場合と比較して混合培養の場合に凝集状態が変化し、混合培養物を抗原とした場合に抗体に変化が生じる可能性が期待できる。歯周病菌表層同士の相互作用により、単独培養と比較して、混合培養物の凝集状態が変化するのである。本願発明者らは、特にポロフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)とフゾバクテリウム・ヌクレイタム(F. nucleatum)との混合培養物を抗原として用いることにより、非常に高いバイオフィルム形成抑止率、共凝集体の付着抑止率が実現されることを見出した。
さらに、本願発明者らは、抗原調製方法、免疫方法、混合培養する歯周病菌の組み合わせなどについて鋭意検討を行った。その結果、さらに有効性の高い抗体が得られることが明らかとなった。特に混合培養する歯周病菌の組み合わせについて、特に限定されない可能性が示唆される結果が得られた。
また、本発明に係る抗歯周病組成物は、前記抗体を有効成分として含有することを特徴とする。
本発明によれば、2種類以上の歯周病菌を混合培養した培養物を抗原として用いることにより、従来の単菌を用いた抗体などに比べて、より効果の高い抗体を提供することができる。そして、この抗体を用いることにより、抗歯周病効果の高い抗歯周病組成物を提供することができる。
各抗原の様子を示す画像データである。 各抗原の電子顕微鏡写真を示す画像データである。 バイオフィルム形成抑止率を測定した結果を示す図である。 共凝集体の付着抑止率を測定した結果を示す図である。 SDS−PAGEにより各抗原のタンパク質組成を分析した結果を示す図である。 ポロフィロモナス・ジンジバリスの標準菌株、臨床分離株に対するELISAの測定値を示す図である。 フゾバクテリウム・ヌクレイタムの標準菌株、臨床分離株に対するELISAの測定値を示す図である。 バイオフィルム形成抑止率を測定した結果を示す図である。 共凝集抑止試験の結果を示す図である。
本発明において、抗原の調製に用いられる歯周病菌は、ポロフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、フゾバクテリウム・ヌクレイタム(Fusobacterium nucleatum)、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、タンネラ・フォーシテンシス(Tannerella forsythensis)、トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(Streptococcus gordonii)から選ばれた2種類以上の菌であることが好ましい。なお、以下の説明及び図中では、ポロフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)を「ジンジバリス菌」又は「P.g」、フゾバクテリウム・ヌクレイタム(F. nucleatum)を「ヌクレイタム菌」又は「F.n」、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)を「アクチノマイセテムコミタンス菌」又は「A.a」と示すこともある。
これらの菌株は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)や、独立行政法人理化学研究所バイオリソースセンター(BRC)から入手することができる。
以下、抗原の調製方法、免疫方法などについて説明する。なお、本発明において、バイオフィルム様付着物とは、2種類以上の歯周病菌を混合培養した際に生成する、菌体と多糖類やタンパク質などからなる付着性を有する不溶物を意味する。
上記歯周病菌の混合培養条件は、選択した2種類以上の上記歯周病菌を混合培養した際に好適な増殖と共凝集が確認できる条件(通常、嫌気条件下、37℃程度で24〜72時間程度)にて行えばよく、具体的には以下のような方法が例示できる。
1)例えば、上記歯周病菌2種類を、それぞれBHIブロスやTSB培地などを用いて、嫌気条件下、37℃程度で24〜72時間程度培養した後、各培養液の濁度(OD600)を合わせて、各菌体培養液を所定の割合(容量)で混合する。この混合液の一部を新しい培地に添加して、嫌気性条件下、37℃、24〜72時間ほど静置培養する。
歯周病菌の混合培養後は、常法に従って培養液にホルマリンを加える等の方法により、菌体の不活性処理を行い、遠心分離と生理食塩水(あるいはPBS)による洗浄後、適量の生理食塩水あるいはPBSに懸濁する。この懸濁液をホモミキサー、超音波処理によって均質化することで抗原標品を調製することができる。
2)上記1)と同様にして調製した菌体の混合液を、細胞培養用ディッシュ(プレート)に分注し、嫌気条件下、37℃、24時間ほど静置培養する。ディッシュ底面に形成されたバイオフィルム様付着物を壊さないように上清を除去した後、新たな培地を添加して、再び嫌気条件下で37℃、24時間ほど静置培養する。なお、バイオフィルム様付着物は、ジンジバリス菌とヌクレイタム菌の2種類を用いた場合に非常に良好に形成されることが実施例の結果から分かっている。
細胞培養用ディッシュ底面に形成されたバイオフィルム様付着物をスクレイパーなどを用いて回収し、遠心分離にて上清を捨て、PBSや生理食塩水などを用いて洗浄を行った後、PBSあるいは生理食塩水を適量添加して懸濁する。この懸濁液を、氷冷水中で5〜15分間超音波処理を行ない均質化することで抗原標品を調製することができる。なお、本場合においても、上記1)の場合と同様に、ホルマリンを用いて不活性化処理を行ってもよい。
上記において、超音波処理などの均質化を行う前の懸濁液の一部を、グラム染色下での顕微鏡観察により菌数をカウントし、菌数比率を確認することが好ましい。例えば、2種類の歯周病菌を用いた場合、2菌の菌数比率が1:1〜100:1であることが好ましく、1:1〜30:1であることがより好ましい。
上記のようにして調製した抗原標品は、免疫に使用するまで凍結保存あるいは凍結乾燥して保存するとよい。
免疫に用いる鶏としては、特に制限はないが、抗体の量産性などの点から、白色レグホン系、ロードアイランドレッド系、横斑プリマスロック系、ニューハンプシャー系等の卵用種を用いるのが特に好ましい。
免疫方法としては、皮下注射、筋肉注射、腹腔内投与等、鶏などの動物を免疫することのできる方法であれば特に制限はない。
抗原の接種量は、所望の抗体価が得られ、かつ鶏などの動物に対して悪影響を与えない程度の量を適宜選択すればよく、通常、1回の免疫にタンパク質量で0.01〜10mgが好ましい。また、必要に応じてFCA(フロイント完全アジュバント)、FIA(フロイント不完全アジュバント)等のアジュバントを併用して免疫してもよい。
通常、初回免疫後、抗体力価の維持を目的として、1〜4月毎に追加免疫するとよい。なお、必要に応じて、初回免疫後〜追加免疫前に、毎週1回で3〜5回程度繰り返し抗原を接種してもよい。
なお、鶏卵中の抗体価は、酵素免疫吸着法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ、マイクロタイター法等を用いて測定をすることができ、免疫後に2週程度の間隔で抗体価を測定することにより抗体価の推移を追跡することができる。通常、初回免疫から1ヶ月以上経過すると、鶏卵の卵黄中に十分な抗体価を有する所望の特異的抗体が移行・蓄積される。
本発明の鶏卵抗体は、前記のようにして免疫した鶏の卵より、卵黄を分離し、卵黄液として、または粉末化した卵黄粉末として得ることができる。また、公知の方法によって、卵黄から免疫グロブリン(IgY)を抽出、精製してもよい。
卵黄からの鶏卵抗体の調製は、免疫グロブリンの抽出、分離に用いられる公知の方法にしたがって行えばよく、例えば、デキストラン硫酸やポリエチレングリコール(PEG)、寒天、カラギナン、ファーセレラン、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸塩、アルギン酸誘導体等を用いてリポタンパク質を沈澱させ、その上清から分離、精製する方法(例えばJournal of Immunological Methods, 46, P63-68 (1981), Immunological
Communication, 9(5), P475-493 (1980)、特開昭63−215699号公報、特開昭64−38098号公報参照)や、プロパノール、クロロホルム等を用いた抽出法などが挙げられる。例えば、食品分野等での利用の場合は、カラギナン、キサンタンガム、ペクチン等の食品天然添加物として認められているものを用いるのが人体への安全性の見地からは好ましい。
例えば、卵黄液を、カラギナン等を用いて卵黄リポタンパク質を除去した卵黄水溶性タンパク質を粉末化した卵黄水溶性タンパク質粉末として、あるいは、卵黄水溶性タンパク質をイオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、ゲル濾過、硫酸ナトリウム塩析、塩酸アンモニウム塩析等の公知のタンパク質精製方法により精製された精製鶏卵抗体として等、各種の形態で調製することができる。
このようにして得られた各種調製サンプルの鶏卵抗体の純度は、粉末重量に対する鶏卵抗体重量で算出すると、卵黄粉末の形態では、通常鶏卵抗体が1〜2%、卵黄水溶性タンパク質粉末の形態では、通常8〜12%、精製鶏卵抗体の形態では通常95%以上である。
本発明においては、上記の鶏卵抗体を含有する卵黄液、卵黄粉末、卵黄水溶性タンパク質粉末、精製抗体などをそのまま抗歯周病組成物として用いることができる。また、その剤形は、粉末・顆粒状、液状、カプセル状、錠剤状、ゼリー状など、適宜選択することができる。
本発明の抗歯周病組成物は、必要に応じて、歯牙着色除去剤、口臭予防剤、フッ素等の虫歯予防剤、抗酵素予防剤等の薬効成分、賦形剤、乳化剤、糖類、ビタミン類、香料などの他の成分を含むことができる。
本発明の抗歯周病組成物は、練り歯磨き、粉歯磨き、液状歯磨き等の歯磨き類、歯科用材、マウスウォッシュ、口腔内パスタ、歯肉マッサージクリーム、うがい用錠剤、トローチ、チューインガム、缶飲料等の口腔内材料だけではなく、チョコレート、あめ、ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、調製牛乳、ベビーフード、ペットフード等の食品にも配合することができる。なお、上記のような製品に配合する場合、本発明の抗歯周病組成物の安定性を高めるためにマイクロカプセル化して配合してもよい。
例えば、練り歯磨きの場合では、炭酸カルシウム、燐酸水素カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸ソーダ、アルミナ、無水ケイ酸等の研磨剤、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール等の保湿剤、ラウリン硫酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、石鹸末等の発泡剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギナン等のバインダー、さらに適当なる香料成分、甘味剤、保存剤及び着色剤等の成分を水と混合し、常法に従って製造すればよい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(1)抗原の調製
歯周病菌として、ポロフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)とフゾバクテリウム・ヌクレイタム(F. nucleatum)を用いた。ジンジバリス菌はATCCより分与された33277株を、ヌクレイタム菌は、RIKEN BRCより分与された8532株を用いた。
ジンジバリス菌とヌクレイタム菌をそれぞれBHIブロスにて、常法に従って培養した。各培養液の濁度(OD600)を1.0に合わせて、ジンジバリス菌培養液:ヌクレイタム菌培養液=19:1(容量)で混合して、この混合液の1/100量を新しいBHIブロスに添加し、37℃、48時間、嫌気条件下で静置培養した。
得られた混合培養液に0.5%(v/v)となるようホルマリンを加え、37℃、24時間放置して菌体の不活化処理を行った。次いで、混合培養液を遠心分離して不溶性画分を集め、生理食塩水で3回洗浄した後、不溶性画分を生理食塩水に分散させた後、均質化した。この液をグラム染色下での顕微鏡観察により菌数濃度を求めて適度に希釈し、抗原G3(ジンジバリス菌:5.0×10cells/mL、ヌクレイタム菌:1.3×10cells/mL)とした。
比較サンプルとして、上記と同様にしてジンジバリス菌を単独で培養・処理を行い、菌数濃度を上記の混合培養抗原G3の菌数(5.0×10cells/mL)と同等に調整し、抗原G1を得た。
また、上記と同様にしてヌクレイタム菌を単独で培養・処理を行い、菌数濃度を上記の混合培養抗原G3の菌数(1.3×10cells/mL)と同等に調整し、抗原G2を得た。
また、上記の抗原G1とG2を、上記の混合培養抗原G3の菌数(ジンジバリス菌:5.0×10cells/mL、ヌクレイタム菌:1.3×10cells/mL)と同等になるよう混合・調整し、抗原G4を得た。
図1は、上記のようにして得られた各抗原の様子を示す画像データである。1番はジンバリス菌単独(G1)、2番はヌクレイタム菌単独(G2)、3番は両者の混合培養(G3)、4番は、ジンバリス菌、ヌクレイタム菌各々の単独培養液を混合(G4)したものである。それぞれの画像は、各抗原を超音波処理にて分散後、30分間静置した後の様子を示す。混合培養により、抗原の状態に変化が生じていることが明らかに観察される。
図2は、各抗原の電子顕微鏡写真を示す画像データである。各画像データは電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、TM−1000)を用いて撮像した。1番はジンバリス菌単独(G1)、2番はヌクレイタム菌単独(G2)、3番は両者の混合培養(G3)、4番は、ジンバリス菌、ヌクレイタム菌各々の単独培養液を混合(G4)したものである。各々の単独培養液を混合した4番と、混合培養液である3番とでは、ジンバリス菌とヌクレイタム菌との間の凝集性が明らかに異なっている。両菌表層同士の相互作用により、混合培養した場合には、単独培養液の混合物とは凝集性が異なっているのではないかと推測できる。
(2)抗原の産卵鶏への免疫
上記で調製した抗原G1〜G4を、それぞれフロイントコンプリートアジュバントと等量混合し、雌鶏(ボリスブラウン)の腿筋に1mLずつ注射して1回目の免疫を行った。同様にして初回免疫9週間後に2回目の免疫を行った。本実施例においては、ELISA法により抗体力価の推移を追跡し、抗体力価が充分に上昇した段階の卵を採取して、各抗体の調製に用いた。
(3)卵黄から抗体(IgY)の精製
各抗原を免疫した鶏から初回免疫13週後の卵を採取した。卵黄と卵白に分け、卵黄に等量の水を加え、0.15%のλ−カラギナンの懸濁液を加え、撹拌後8000rpmで10分間遠心し、上清を採取した。更に、硫酸アンモニウムによる分画沈殿を3回繰り返し、0.15M−NaCl水溶液で透析後、0.45μmのフィルターで濾過を行い、濾液を回収し、各抗体を得た。以下、抗原G1〜G4を用いて得られた抗体をP1〜P4とする。
また、コントロールとして、未免疫の鶏卵から同様にして調製したIgY(コントロールIgY)を用いた。
(4)バイオフィルムの形成抑止率の測定
コラーゲンコートされたポリスチレン製96穴プレート(IWAKI製、平底タイプ)の各穴に、ジンジバリス菌とヌクレイタム菌の2菌を含むTSB培養液を分注し、次いで、抗体P1〜P4、コントロールIgYをそれぞれ所定濃度で加え、30℃で24時間培養した。
その後、プレートを蒸留水で4回軽く洗い、プレート上に形成されたバイオフィルムをクリスタルバイオレット(以下、CVという)で染色した後、エタノールを添加し、着色したバイオフィルムから染料を抽出し、その抽出液を、分光光度計を用い、吸光度(OD570)で測定した。そして、鶏卵抗体を加えていないポジティブコントロールの吸光度の値をバイオフィルム形成抑止率0%、鶏卵抗体も歯周病菌も加えていないネガティブコントロールの吸光度の値をバイオフィルム形成抑止率100%とし、相対吸光度値よりバイオフィルム形成抑止率を求めた。その結果を図3に示す。
図3から、2菌を混合培養して得られた抗原G3を用いて得られた抗体P3は、特に低濃度(2μg/mL)において、単菌を抗原として用いて得られた抗体P1、P2や、それらの抗原の混合物を用いて得られた抗体P4に比べて、バイオフィルムの形成抑止率が高いことが分かる。
(5)共凝集体のコラーゲンコートプレートへの付着量の測定
コラーゲンコートされた96穴プレート(IWAKI製、平底タイプ)の各穴に、ジンジバリス菌とヌクレイタム菌の2菌を含むPBSを分注し、次いで、抗体P1〜P4、コントロールIgYをそれぞれ所定濃度で加え、37℃で3時間静置した。その後、プレートを蒸留水で4回軽く洗い、プレート上に付着した菌をCVで染色した後、エタノールを添加し、着色したバイオフィルムから染料を抽出し、その抽出液を、分光光度計を用い、吸光度(OD570)で測定した。そして、鶏卵抗体を加えていないポジティブコントロールの吸光度の値を付着抑止率0%、鶏卵抗体も歯周病菌も加えていないネガティブコントロールの吸光度の値を付着抑止率100%とし、相対吸光度値より付着抑止率を求めた。その結果を図4に示す。
図4から、2菌を混合培養して得られた抗原G3を用いて得られた抗体P3は、単菌を抗原として用いて得られた抗体P1、P2や、それらの抗原の混合物を用いて得られた抗体P4に比べて、共凝集体のコラーゲンコートプレートへの付着抑止率が高いことが分かる。
以上の結果から、2菌を混合培養して得られた抗原を用いて得られた抗体P3は、バイオフィルム形成の初期段階である共凝集体のコラーゲンへの付着を効果的に抑止すると共に、バイオフィルムの形成自体も効果的に抑止することが分かる。図1、図2に示したように、混合培養した抗原液における少なくとも2種の歯周病菌の凝集性が異なることによって、得られた抗体のバイオフィルム形成抑止率、共凝集体の付着抑止率が向上しているとすれば、用いることができる歯周病菌はジンジバリス菌とヌクレイタム菌の2菌に限定されず、他の歯周病菌を用いても良いという可能性が予測できる。
以下、本願発明者らが、より効果的なバイオフィルム形成抑止等を目的として、さらなる検討を行った結果について説明する。
(1)抗原の調製(混合培養の方法)
P.g菌とF.n菌をそれぞれTSB培地を用いて常法に従って培養した。各培養液の濁度(OD600)が0.1になるように、各培養液を適量のTSB培地に添加・混合して、P.g菌とF.n菌の混合液を調製した。この混合液を細胞培養用ディッシュ(直径10cm)8枚に10mlずつ分注して嫌気条件下、37℃、24時間静置培養した。ディッシュ底面に形成されたバイオフィルム様菌体付着物を壊さないように慎重に上清を除去した後、新たなTSB培地を10mlずつ添加して、再び嫌気条件下、37℃、24時間静置培養した。
このようにして細胞培養用ディッシュで混合培養したバイオフィルム様菌体付着物をスクレイパーを用いて回収し、遠心分離にて上清を捨て、PBSを用いて2回洗浄し、最後にPBSを20ml添加して懸濁後、この懸濁液を氷冷水中で10分間超音波処理(Sonics & Materials Inc., Ultrasonic processor, Model:VC130,
Amplitude:50%, Timer:10 min, Pulser:5 sec)を行い、抗原G9を得た。
なお、上記懸濁液をグラム染色下での顕微鏡観察により菌数をカウントしたところ、F.n菌:3.6×10cells/mL、P.g菌:7.6×10cells/mLであった。
また、比較サンプルとして以下の抗原を調製した。
TSB培地を用い、不活化処理として超音波処理を行った以外は、実施例1の抗原G1と同様の方法で抗原G5を得た。
TSB培地を用い、不活化処理として超音波処理を行った以外は、実施例1の抗原G2と同様の方法で抗原G6を得た。
TSB培地を用い、不活化処理として超音波処理を行った以外は、実施例1の抗原G3と同様の方法で抗原G7を得た。
TSB培地を用い、不活化処理として超音波処理を行った以外は、実施例1の抗原G4と同様の方法で抗原G8を得た。
上記で得られた抗原G5、G6、G9について、SDS−PAGEにより抗原のタンパク質組成を分析した。その結果を図5に示す。
図5から、抗原G9の場合、30KDa、28KDa付近にピークが現われ、抗原G6(F.n単体)や抗原G5(P.g単体)とはタンパク質組成が明らかに異なることがわかった。
(2)抗原の産卵鶏への免疫
抗原G7〜G9を用いて、実施例1と同様の方法で免疫(本実施例では追加免疫を3回)を行い、ELISA法により抗体力価の推移を追跡し、抗体力価が充分に上昇した段階の卵を採取して、各抗体の調製に用いた。
(3)卵黄から抗体(IgY)の精製
実施例1と同様の方法で各抗原G7〜G9を免疫した鶏から得られた卵からそれぞれ抗体を得た。以下、抗原G7〜G9を用いて得られた抗体をP7〜P9とする。
(4)臨床分離株交差性試験(ELISA)
「臨床分離株」とは、実際に人の口腔内から分離された菌株であり、バイオフィルム形成能力が高い菌株であると言われている。そのため、本願発明者らが検討している抗体について、臨床分離株に対しても有効性が確認できれば、実際の実用的効果が確認できると言える。
本実施例においては、歯周病患者などから常法に従い単離し、Real Time
PCR法にて属・種を確認した臨床分離株を用いた。
すなわち、P.g菌の臨床分離株として、11株(ST1、TO1、YM4、KS1、KS2、TK3、TK4、KO1、YH1、CT2、AT2)を用いた。なお、P.g菌の標準菌株として、2種(ATCC33277、W83)を用いた。
また、Fusobacterium属菌の臨床分離株として、11株(S-10、#2、#20、KO1、TS1、IY1、ST1、KS1、OM1、YE1、YK1)を用いた。S10、#2、#20はF.n菌、KO1以降は、Fusobacterium属まで同定した臨床分離株である。なお、F.n菌の標準菌株として、2種(ATCC10953、ATCC25586)を用いた。
P.g菌やFusobacterium属菌の臨床分離株のST1、S-10等は管理番号であって、菌株の構造を特定するものではない。
ELISAに用いる抗原溶液を作製するため以下の調製を行った。
使用した臨床分離株・標準菌株は、いずれも5μg/mLヘミン、1μg/mLビタミンK3含有TSB液体培地を用いて嫌気培養(37℃)した。
培養液を遠心分離して集菌した後、PBSにて3回洗浄した。その後、プロテアーゼ阻害剤を含む0.1M炭酸緩衝液(pH9.6)に菌を懸濁し、破砕するまで-80℃にて保存した。融解した菌懸濁液を超音波処理(30秒間×10回、on ice)に供し、菌体破砕液を得た。破砕液の遠心分離上清を、タンパク質濃度が500μg/mLとなるようにプロテアーゼ阻害剤を含む0.1M炭酸緩衝液(pH9.6)にて希釈して固相化用抗原溶液(臨床分離株・標準菌株)を調製し、-30℃にて保存した。
次に、ELISAの具体的な測定方法について説明する。
固相化用抗原溶液のタンパク質濃度は50μg/mL、抗体濃度は5μg/mLにて試験を行った。
まず、100μLの固相化抗原溶液を96ウェルプレートに加え、8℃にて1晩静置することで抗原をプレートに固相化した。次に、1%BSA含有PBS(ブロッキング液)150μLを各ウェルに注ぎ、室温にて1時間静置してブロッキング処理を行った後、0.05%Tween20含有PBS(PBST)にて3回洗浄を行った。
抗体P7〜P9を、それぞれブロッキング液に溶解させた後、遠心分離を行い、その各上清100μLを一次抗体溶液として各ウェルに注ぎ、37℃にて1時間インキュベートして一次抗体処理を行った。その後、各ウェルをPBSTにて3回洗浄を行い、2次抗体処理に移行した。
2次抗体としては、抗ニワトリIgY[IgG](H+L)(AP標識、ZYMED LABORATORIES)を用いた。2次抗体をブロッキング液にて2,000倍希釈した溶液を各ウェルに100μLずつ注ぎ、37℃にて1時間インキュベートした。各ウェルをPBSTにて3回洗浄後、100μLの発色溶液(1mg/mL Disodium p−nitrophenyl phosphate
hexahydrate in 10% ジエタノールアミン−HCl緩衝液(pH9.8))を各ウェルに注いだ。室温にて15分間ほどインキュベートした後に50μLの5N NaOH添加することで反応を停止し、プレートリーダによる吸光度測定(405nm)に供した。
まず、P.g菌の標準菌株、臨床分離株について、ELISA法を適用した結果を図6に示す。図6において、灰色は抗体P8、黒は抗体P9、白は抗体P7のELISA測定値を示す。抗体P7、P9が、抗体P8と比べて多様な臨床分離株に対して親和性が高いことは、本願発明で得られた抗体の有用性を示すものである。
次に、Fusobacterium属の標準菌株、臨床分離株について、ELISA法を適用した結果を図7に示す。図7において、灰色は抗体P8、黒は抗体P9、白は抗体P7のELISA測定値を示す。P.g菌と同様に、抗体P7、P9が、抗体P8と比べて多様な臨床分離株に対して親和性が高いことは、本願発明で得られた抗体の有用性を示すものである。
(5)バイオフィルムの形成抑止率の測定
バイフィルム形成抑制試験は、実施例1(4)と同様の方法で行い、バイオフィルム形成抑止率を求めた。その結果を図8に示す。
図8から、2菌を細胞培養用ディッシュ上で混合培養して得られた抗原G9を用いて得られた抗体P9は、単菌を混合した抗原G8を用い得られた抗体P8に比べて、バイオフィルムの形成抑止率が高いことが分かる。
最後に、他の歯周病菌として、上記したヌクレイタム菌(F.n菌)と、アクチノマイセテムコミタンス菌(A.a菌)の2種の菌について混合培養した抗原を用いた場合について説明する。
(1)抗原の調製(混合培養の方法)
A.a菌とF.n菌をそれぞれTSB培地を用いて常法にしたがって培養した。A.a菌培養液の濁度(OD600)が0.06、F.n菌培養液の濁度(OD600)が0.04になるように、各培養液をTSB培地に添加・混合して、A.a菌とF.n菌の混合液を調製した。この混合液を嫌気条件下、37℃、24時間静置培養した後、菌体を遠心分離して集菌後、上清を捨て、PBSで2回洗浄して、最後にPBSを20mL添加して懸濁後、この懸濁液を実施例2と同様の方法で超音波処理を行い、抗原G11を得た。
なお、上記懸濁液をグラム染色下での顕微鏡観察により菌数をカウントしたところ、A.a菌:3.4×10cells/mL、F.n菌:6.4×10cells/mLであった。
また、比較サンプルとして、上記と同様にしてA.a菌を単独で培養・処理を行い、抗原G10を得た。
また、上記と同様にしてA.a菌とF.n菌をそれぞれ単独で培養・処理を行い、抗原G12を得た。
(2)抗原の産卵鶏への免疫
抗原G10〜G12を用いて、実施例2(2)と同様の方法で免疫を行い、ELISA法により抗体力価の推移を追跡し、抗体力価が充分に上昇した段階の卵を採取して、各抗体の調製に用いた。
(3)卵黄から抗体(IgY)の精製
実施例1と同様の方法で各抗原G10〜G12を免疫した鶏から得られた卵からそれぞれ抗体を得た。以下、抗原G10〜G12を用いて得られた抗体をP10〜P12とする。
(4)歯周病菌の共凝集抑止試験
常法どおりTSB培地を用いて培養したA.a菌とF.n菌をPBSで2回洗浄し、濁度(OD 600
nm)がA.a菌=1.0、F.n菌=1.0になるように、共凝集バッファー(1mM Tris-HCl pH8.0、0.1mM CaCl2、0.1mM MgCl2、0.15M NaCl、0.02% NaN3)に懸濁した。
この懸濁液に、P10〜P12抗体、および未免疫のコントロール抗体を100μg/mlになるようにそれぞれ添加し、96穴平底透明プレートの各ウェルに200μlずつ分注した。
このプレートを、振盪機能を有する96穴マイクプレートリーダー(ARVO MX、Perkin Elmer)を用いて、最初30秒間プレートを振盪し、その後、1分20秒毎に合計30回(合計40分間)、濁度(OD630)を測定した。歯周病菌の共凝集が起こると、濁度(OD630)が低下するため、濁度(OD630)の低下を見ることで、共凝集抑止効果を測定した。その結果を図9に示す。
図9において、A.a菌とF.n菌との混合培養抗原(G11)を用いて得られた抗体P11は、A.a菌単独抗原(G10)を用いて得られた抗体P10、A.a菌とF.n菌の混合抗原(G12)を用いて得られた抗体P12に比べて、濁度(OD630)の低下が緩やかであり、高い共凝集抑止能力があることが認められた。この点は、他の歯周病菌についても2種以上を混合培養して得られる抗原を用いて得られる抗体は、高いバイオフィルム形成抑止能力が発揮される可能性を示唆するものである。
本発明は、例えば、歯周病の病巣となるバイオフィルムの形成抑制効果に優れた抗歯周病組成物に適用することができる。

Claims (10)

  1. 2種類以上の歯周病菌を混合培養した培養物を抗原として免疫した鳥類の卵から得られることを特徴とする抗体であって、2種以上の歯周病菌からなる共凝集体(バイオフィルム)を認識するポリクローナル抗体。
  2. 前記培養物は、2種類以上の歯周病菌を混合培養した際に生成するバイオフィルム様付着物であることを特徴とする請求項1に記載の抗体。
  3. 前記歯周病菌が、ポロフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、フゾバクテリウム・ヌクレイタム(Fusobacterium nucleatum)、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、タンネラ・フォーシテンシス(Tannerella forsythensis)、トレポネーマ・デンティコーラ(Treponema denticola)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、ストレプトコッカス・ゴルドニー(Streptococcus gordonii)から選ばれた2種類以上の菌である請求項1又は2に記載の抗体。
  4. 前記2種類以上の歯周病菌は、各々を単独で培養した場合と混合培養した場合とで、凝集状態が異なる2種類以上の歯周病菌である
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の抗体。
  5. 前記2種類以上の歯周病菌は、フゾバクテリウム・ヌクレイタム(Fusobacterium nucleatum)と、ポロフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetemcomitans)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、タンネラ・フォーシテンシス(Tannerella forsythensis)の4種から選択された1種以上の歯周病菌である
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の抗体。
  6. 前記2種類以上の歯周病菌表層同士で相互作用しあうことにより、単独培養の場合と比較して混合培養の場合に凝集状態が変化している
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の抗体。
  7. 前記2種の歯周病菌がポロフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)とフゾバクテリウム・ヌクレイタム(F. nucleatum)とである請求項1から6のいずれに記載の抗体。
  8. 前記2種類以上の歯周病菌は、フゾバクテリウム・ヌクレイタム(F. nucleatum)、アクチノバチルス・アクチノマイセテムコミタンス(Actinobacillus actinomycetmcomitans)、の2種であることを特徴とする請求項1からに記載のいずれかに記載の抗体。
  9. 抗原とする菌体の不活性化を超音波処理で行う
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の抗体。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の抗体を有効成分として含有することを特徴とする抗歯周病組成物。
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