JP4980274B2 - 結晶化ガラス基板の製造方法、及び両面配線基板の製造方法 - Google Patents

結晶化ガラス基板の製造方法、及び両面配線基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気ヘッド用基板材、両面配線基板の基板等に好適な熱膨張係数の大きな結晶化ガラス基板の製造方法、及び両面配線基板の製造方法に関するものである。
結晶化ガラスは、平滑性の良好な平面が容易に得られることから、従来では、例えば薄膜磁気ヘッド用の基板材として用いられてきた。このような結晶化ガラスは、従来の一般的な製法として、所要のガラス成分のものを溶融、成形した後、適当な上昇速度で熱処理を行い、結晶核、一次結晶、二次結晶を順次成長させ、ガラス全体に微結晶を析出させることによって製造されていた。結晶化ガラスにおける析出結晶の微細化技術に関しては、TiOやZrO等の酸化物、弗化物および金属コロイド等の結晶生成の核として利用することが既に知られている。
さらに、LiO−Al−SiO系で感光性の塩化銀、増感剤の酸化セリウムを含むガラスは、紫外線の露光により照射部分に潜像が生じ、これを熱処理すると銀のコロイドが発生し、更に高温ではLiO・SiOの結晶が析出する。この結晶は、弗酸への溶解速度がガラス部分の数十倍も速いので、上述の紫外線露光、熱処理によって、前記露光部分のみを弗酸でエッチング(溶解除去)することが可能である。これを利用して、結晶化ガラス(結晶化された感光性ガラス)基板にスルーホールをあけ、基板の両面の導通をとるためのスルーホールメッキ等を施し、さらに基板の両面に、リチウムタンタレート、リチウムニオベートなどのセラミックス圧電体、各種導体金属、誘電体などを成膜、接着し、所定のパターニングを行うことによって、光・電子部品用実装基板として用いられる両面配線基板が得られる。
ところで、前述の磁気ヘッド用基板材にしても上述の両面配線基板にしても、基板として用いる結晶化ガラスと、この上に成膜、接着する材質の熱膨張係数はできるだけ一致していることが必要である。つまり、異質な材料同士を接合する場合には、熱膨張係数の近い材料を使用することが肝要である。その理由は、上記両者の熱膨張係数差が大きいと、基板が割れたり、あるいは成膜、接着した材料膜が剥離、切断したり、熱膨張係数差が小さくても反りの原因となるためである。このような問題は、磁気ヘッドや配線基板の製造プロセスにおいて、あるいは磁気ヘッドを搭載する磁気記録装置や上記配線基板を用いた電子部品等の使用環境において著しい温度変化が生じる場合に顕著に発生する。したがって、ガラス基板上に成膜、接着する磁性薄膜、圧電体、導体金属、誘電体等の薄膜の材質の熱膨張係数とほぼ一致するような熱膨張係数を有する結晶化ガラス基板を得ることが重要な課題である。特に近年では、上述の磁気記録装置や電子部品等をいわゆるモバイル環境において使用することが多くなり、このような非常に厳しい環境での使用中に著しい温度変化が生じても安定して動作する、つまり高信頼性を保証することが求められている。
特許文献1には、磁気ヘッド用基板材として、熱膨張係数の大きい磁性材料とほぼ一致するような熱膨張係数の大きな結晶化ガラスを得る製法が開示されている。
特開昭61−63542号公報
ところが、実際にガラス基板上に成膜、接着する磁性薄膜、圧電体、導体金属、誘電体等の薄膜材料は、比較的大きな熱膨張係数を有するものが多い。たとえば、石英基板(結晶化率100%とした場合)の熱膨張係数が16×10−6/℃であるのに対し、リチウムタンタレートでは、17×10−6/℃、リチウムニオベートでは、15×10−6/℃、アルミニウムでは、20×10−6/℃、銅では、16×10−6/℃、等である。
前述した従来の一般的な製法である、所要のガラス成分のものを溶融、成形した後、適当な上昇速度で熱処理を行って得られる結晶化ガラスの場合、熱膨張係数がせいぜい大きなものでも、10.5×10−6/℃程度である。したがって、ガラス基板として用いた場合、前述の熱膨張係数差により起こる剥離や反りといった問題を十分に解決することができない。
また、上記特許文献1には、紫外線露光量および780℃から840℃間の結晶化温度の調節によって110×10−7/℃から145×10−7/℃の間の熱膨張係数を有する結晶化ガラスが得られると記載されているが、とくに紫外線の露光量が、ジ珪酸リチウム結晶の析出を促進させるために行われる通常の露光量より少ない場合に大きな熱膨張係数の結晶化ガラスが得られることが開示されている。しかし、この技術を用いても、なお熱膨張係数の上限値としては不十分である。
またさらに、本発明者らの検討によると、上記特許文献1の技術において好ましいとされている紫外線露光量の少ない領域においては、露光量に対する熱膨張係数の変化量が大きく、そのため露光量の僅かの変化に対しても得られる結晶化ガラスの熱膨張係数は大きく変化してしまうので、所望する熱膨張係数を得ようとしても正確に制御することが困難である。実際には、ガラス素材の溶融から保管、製造工程に至る全ての過程でどうしても曝露される紫外線の影響をも考慮する必要があり、紫外線露光量の少ない領域においては、紫外線露光量を制御すること自体が困難である。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、第1に、熱膨張係数の十分大きな結晶化ガラス基板が安定的に得られる結晶化ガラス基板の製造方法を提供することであり、第2に、成膜等により接合する材質に合わせて所望の熱膨張係数を制御することが可能な結晶化ガラス基板の製造方法を提供することであり、第3には、上記結晶化ガラス基板の製造方法を適用して結晶化したガラス基板を用いる両面配線基板の製造方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ガラス結晶化するための熱処理に先立って施される紫外線露光条件に着目し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
少なくともSiOを主成分として含有するガラス基板に、露光エネルギーを1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行い、次いで熱処理を行うことを特徴とする結晶化ガラス基板の製造方法である。
(構成2)
前記熱処理は、熱処理温度を780℃〜900℃の間で調節して行うことを特徴とする構成1に記載の結晶化ガラス基板の製造方法である。
(構成3)
前記紫外線露光における露光エネルギーの調節及び前記熱処理における熱処理温度の調節によって、12×10−6/℃〜17×10−6/℃の範囲の熱膨張係数を有する結晶化ガラスとすることを特徴とする構成1又は2に記載の結晶化ガラス基板の製造方法である。
(構成4)
ガラス基板の表裏両面に形成された電気配線パターンと、前記ガラス基板の表裏両面に連通する、内部に導電性材料が形成された貫通孔とを有し、前記ガラス基板の表裏両面に形成された各前記電気配線パターンが、前記貫通孔に形成された導電性材料を介して電気的に導通された両面配線基板の製造方法であって、前記ガラス基板に前記貫通孔を形成する工程と、前記ガラス基板に対して、露光エネルギーを1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行い、次いで熱処理を行うことにより前記ガラス基板を結晶化する工程と、前記貫通孔の内部に導電性材料を形成する工程とを有することを特徴とする両面配線基板の製造方法である。
本発明によれば、熱膨張係数の十分大きな結晶化ガラス基板を提供することができる。
すなわち、本発明の結晶化ガラス基板の製造方法によれば、少なくともSiOを主成分として含有するガラス基板に、露光エネルギーを1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行い、次いで熱処理を行うことにより、このような熱膨張係数の十分大きな結晶化ガラス基板を安定的に得ることができる。
また、本発明の結晶化ガラス基板の製造方法によれば、露光エネルギーを1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行い、次いで熱処理(好ましくは熱処理温度を780℃〜900℃の間で調節)を行うことにより、成膜等により接合する材質に合わせて所望の熱膨張係数を制御することが可能である。
さらに、本発明の両面配線基板の製造方法によれば、本発明の結晶化ガラス基板の製造方法を適用してガラス基板を結晶化する工程を有することにより、成膜等により接合する電気配線パターンの材質に合わせて所望の熱膨張係数を制御することができるので、使用環境において温度変化があっても、配線パターンの剥離、切断、基板の反りなどの不具合が起こらず、安定して動作する高信頼性の両面配線基板を得ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
本発明により得られる結晶化ガラス基板は、少なくともSiOを主成分として含有し、X線回折法により得られる回折ピークが、少なくとも回折角度2θが20.5degの位置の回折ピークを有する結晶化ガラス基板である。
上記回折角度2θが20.5degの位置の回折ピークは、SiOを主成分として含有する結晶化ガラスにおいて通常検出される回折ピークであって、クォーツ(α−石英)によるピークであると考えられる。したがって、本発明による結晶化ガラス基板においては、回折角度2θが20.5degの位置の回折ピークを有することが特徴的である。
本発明者らの検討によると、従来の結晶化ガラスの場合、850℃〜880℃の熱処理工程を経ることで、LiO・2SiOが主結晶として析出し、10×10−6/℃〜11×10−6/℃程度の熱膨張係数が得られることが確認されている。しかし、これだけでは熱膨張係数を十分に上げられない。本発明による結晶化ガラス基板の場合、上記の熱膨張係数の値を超える13×10−6/℃〜17×10−6/℃という高い熱膨張係数のものが得られるため、従来の結晶化ガラスに含まれる熱膨張係数を大きくする効果のあるα−石英などの結晶成分以外に、石英と同じく二酸化ケイ素の変態の一つであるトリジマイト(tridymite、リン珪石)などの熱膨張係数の特に大きい結晶成分が含まれているものと推察される。
したがって、本発明による結晶化ガラス基板において検出される回折角度2θが20.5degの位置の回折ピークは、トリジマイトなどの熱膨張係数の特に大きい結晶成分によるピークであると考えられる。
本発明による結晶化ガラス基板は、結晶種で特徴付けると、結晶種として少なくともα−石英及びトリジマイトを含むことを特徴とする結晶化ガラス基板である。
本発明の結晶化ガラス基板は、詳しくは後述するが、ガラス素材に、露光エネルギー(露光量)を調節して紫外線露光を行い、次いで熱処理を行うことにより得られるが、これにより熱膨張係数が12×10−6/℃〜17×10−6/℃の範囲、特に好ましい13×10−6/℃〜17×10−6/℃という高い熱膨張係数を有する結晶化ガラス基板が安定して得られる。
次に、本発明による結晶化ガラス基板の製造方法について詳しく説明する。
本発明による結晶化ガラス基板の製造方法は、少なくともSiOを主成分として含有するガラス基板に、露光エネルギーを1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行い、次いで熱処理を行うことを特徴とする製造方法である。
本発明に用いるガラス素材は、少なくともSiOを主成分として含有するものであれば、成分の種類は本発明において特に制約される必要はないが、通常は、例えば重量百分率で、SiO:70〜85%,Al:0.1〜10%,LiO:5〜20%,Ag及び/又はAu:0.001〜0.1%,Sb:0.01〜1%、等を含む多成分系のガラス素材を好ましく用いることができる。本発明の結晶化ガラス基板は、露光感度低下の原因となる不純物を含まないことが好ましいため、上記ガラス成分の合計含有量を90%以上とすることが好ましい。また、これらのガラス成分に加えて、NaO,KO,ZnO,MgO,CaO,SrO,BaO,SnO,F等は必須成分ではないが、ガラスの結晶化特性、熱膨張特性の調整、清澄などの目的で、それぞれ10%未満の範囲で適宜用いることができる。
とりわけ、上記のSiOとLiOの含有量が上記の範囲外であると、後の熱処理工程において熱膨張係数を大きくする効果のあるα−石英およびトリジマイトの析出量が少なくなり、13×10−6/℃以上の熱膨張係数が得られにくくなる。
このようなガラス素材を例えば溶融成形する方法は公知の方法を任意に適用することができる。本発明による結晶化ガラス基板を例えば両面配線基板の基板として用いる場合には、溶融したガラス素材を所定の板状に成形する。
次に、ガラス素材を、ガラス結晶化させる熱処理に先立って(つまり結晶化前のアモルファスガラスの状態で)、紫外線露光を行う。本発明においては、露光エネルギー(露光量)を1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行うことが肝要である。そして、この紫外線露光後に熱処理を施し、アモルファス状態のガラスを結晶化させ、本発明による熱膨張係数の大きな結晶化ガラス基板を得る。
図1は、本発明による結晶化ガラス基板の製造方法において、結晶化前の紫外線露光時の露光量を変化させて、その後、温度T1またはT2で熱処理を行った場合の熱膨張係数の変化を示した曲線図である。なお、上記の熱処理温度T1またはT2は、780℃〜900℃の間で設定した温度である。
図1によると、いずれの熱処理温度でも、約1J/cm付近で熱膨張係数が一番低く、それよりも露光量の減少、または増大に伴って熱膨張係数の上昇が認められる。本発明では、上述したように、露光エネルギー(露光量)を1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行う。図1を参照すると明らかなように、露光エネルギー(露光量)を1〜20J/cmの間で調節した場合、得られる結晶化ガラス基板の熱膨張係数は緩やかなカーブを描きながら変化する領域である。また、紫外線露光後の熱処理温度を調節することによっても熱膨張係数のカーブを変えられる。
本発明の結晶化ガラス基板の製造方法によれば、露光エネルギーを1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行い、次いで熱処理温度を例えば780℃〜900℃の間で調節して熱処理を行うことにより、12×10−6/℃から17×10−6/℃(特に好ましい13×10−6/℃〜17×10−6/℃)の大きな熱膨張係数を有する結晶化ガラス基板を得ることができる。また、露光エネルギー(露光量)を1〜20J/cmの間で調節した場合、熱膨張係数は緩やかに変化するため、例えば製造プロセスの雰囲気中でどうしても曝露される紫外線等の影響が少なくなり、所望の熱膨張係数の結晶化ガラス基板が安定して得られるように制御することが可能である。
そしてより好ましい実施態様としては、熱処理温度をある程度固定しておき、あとは紫外線露光量を適宜調節することで、熱処理温度のばらつきの影響を少なくして、成膜等により接合する材質に合わせて所望の熱膨張係数の結晶化ガラス基板が安定して得られるように制御することが容易に可能である。
因みに、図1より判断すると、紫外線露光量の非常に少ない領域(1J/cm未満)においても熱膨張係数をある程度高くすることは可能であるが、この領域においては露光量に対する熱膨張係数の変化量が大きく、そのため露光量の僅かの変化に対しても得られる結晶化ガラス基板の熱膨張係数は大きく変化してしまうので、所望する熱膨張係数を得ようとしても正確に制御することが困難である。実際の製造工程では雰囲気中で曝露される紫外線の影響も考慮する必要があり、紫外線露光量の少ない領域においては、露光量を制御すること自体が困難である。
本発明において、上記熱処理は、熱処理温度を780℃〜900℃の間で調節して行うことが望ましい。ただし、この熱処理温度は最終的な到達温度であって、その到達温度までは所定の昇温速度で段階的にあるいは連続的に温度を上昇させることが望ましい。たとえば前述のガラス素材の場合、紫外線露光後、最終的な到達温度に達する温度上昇の過程において、LiO・SiO結晶の析出・成長、LiO・SiO結晶のLiO・2SiO結晶への転移(結晶相の転移)、LiO・2SiO結晶の析出・成長が順次好ましく起こり、例えば800℃以上の熱処理温度では、LiO・SiO、LiO・2SiO、及びSiOの3種類、もしくはLiO・2SiO、及びSiOの2種類の結晶が異なる比率で析出していると考えられる。
なお、熱処理温度が780℃未満であると、上述の結晶相転移が起こらず、本発明に好ましい結晶種の析出が少なくなる。一方、熱処理温度が900℃を超えると、一部溶解してしまい、基板として用いる場合の物性を劣化させるおそれがある。
次に、本発明の具体的な適用例として、本発明による結晶化ガラス基板を基板として用いる両面配線基板の製造工程を説明する。図2はこのような両面配線基板の製造工程を示す概略断面図である。
同図(a)は、感光性ガラスからなる板状基板1である。この感光性ガラスは、LiO−Al−SiO系の成分に加えて感光性の塩化銀、増感剤の酸化セリウムを含有する。
この感光性ガラス基板1上にフォトマスク2(透光性基板21上に所定のホールパターン22を有する)を密着させ、所定の露光3を行う(同図(b)参照)。感光性ガラス基板1の照射部分に潜像が生じ、これを熱処理すると銀コロイドが発生し、更にLiO・SiOの結晶が析出し、結晶化部11を形成する(同図(c)参照)。この結晶は、弗酸への溶解速度がガラス部分の数十倍も速いので、上記照射部分のみを弗酸でエッチング(溶解除去)することにより、感光性ガラス基板1に貫通孔(スルーホール)12をあける(同図(d)参照)。
次に、このような貫通孔12のあけられた感光性ガラス基板1に対して、本発明に従い高露光量の紫外線露光および熱処理を行って、結晶化ガラス基板10を得る(同図(e)参照)。
次いで、基板10の両面の導通をとるための上記貫通孔12の内壁にスルーホールメッキ等による導体膜を形成し、その後、絶縁性樹脂を貫通孔12内に充填する方法でもよいが、本発明においては、例えば国際公開第2005/027605号に開示されているように、上記貫通孔12に金属銅からなる銅ポスト4を充填する方法が好適である(同図(f)参照)。銅ポスト4は、電解メッキ法を用い、まず貫通孔12の一方の開口部を銅で閉塞し、その後、閉塞した一方の開口部から他方の開口部に向かって更に銅をメッキしていくことにより充填する。この方法によると、基板10の表裏両面が確実に電気的に接続可能となるとともに、両面配線基板全体として高い耐熱性を確保することが可能になる。
上記貫通孔12への銅ポスト4の充填後、基板10の両面に、密着力強化層を形成してもよい。この密着力強化層は、結晶化ガラス基板10と、後に配線パターンとして形成されるセラミックス圧電体、各種導体金属、誘電体などの単一又は積層薄膜5A,5Bとの密着力を向上させるためのものであり、例えばスパッタクロム層、スパッタクロム銅層、スパッタ銅層などの単一又は積層膜などを用いると好適である。
さらに基板10の両面にそれぞれ配線パターンを形成するため、セラミックス圧電体、各種導体金属、誘電体などの単一又は積層薄膜5A,5Bを成膜、あるいは接着し(同図(g)参照)、この薄膜5A,5Bに例えばフォトリソグラフィ法により所定のパターニングを行うことによって、同図(h)に示すような光・電子部品用実装基板として用いられる両面配線基板6が得られる。
本発明によれば、上述の図2(e)の結晶化工程において、露光エネルギーを1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行い、次いで例えば780℃〜900℃の間で熱処理温度を調節して熱処理を行うことにより、(g)の工程で接合する薄膜5A,5Bの材質に合わせて所望する熱膨張係数を有する結晶化ガラス基板を形成することができる。そのため、製造プロセスや使用環境中に著しい温度変化が生じても配線パターンの剥離や基板の反りといった問題が起こらず、高信頼性の両面配線基板とすることができる。
次に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。併せて、比較例についても説明する。
(実施例1〜3)
重量百分率でSiO:79%,Al:5%,LiO:10.5%,KO:3.75%,ZnO:0.5%,Ag:0.055%,Sb:0.2%を含むガラス素材を公知の方法で溶融し、所定の大きさの板状に成形した。
この板状のガラス基板に先ず紫外線露光を行い、次いで熱処理を行った。
この場合の紫外線露光は、2kWのXe−Hgランプを用いて行い、このときの露光量を、1.0J/cm(実施例1)、3.0J/cm(実施例2)、8.0J/cm(実施例3)となるようにそれぞれ露光時間を適宜設定して行った。
また、上記熱処理は、ローラハース方式の移送手段を備えた加熱処理装置を使用して行い、熱処理条件は、810℃、2時間とした。
熱処理後、放冷し、実施例1〜3の結晶化ガラス基板を得た。
以上のようにして得られた実施例1〜3の結晶化ガラス基板について、X線回折法により分析を行ったところ、いずれのガラス基板についても、少なくとも回折角度2θが20.5degの位置の回折ピークが検出された。
また、得られた実施例1〜3の結晶化ガラス基板について、熱膨張係数の測定を行った。熱膨張係数の測定は、示差熱分析装置(THERMO PLUS TMA8310、理学電気社製)を用いて行った。
その結果、熱膨張係数は、露光量を1.0J/cmとした実施例1では、12.2×10−6/℃、3.0J/cmとした実施例2では、13.0×10−6/℃、8.0J/cmとした実施例3では、13.8×10−6/℃であった。
以上説明したように、本発明の実施例によれば、露光エネルギーを1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行い、次いで熱処理温度を例えば780℃〜900℃の間で調節して熱処理を行うことにより、12×10−6/℃から17×10−6/℃の大きな熱膨張係数を有する結晶化ガラス基板が安定して得られる。
そしてより好ましい実施態様としては、熱処理温度をある程度固定して、あとは紫外線露光量を適宜調節することで、成膜等により接合する材質に合わせて所望の熱膨張係数の結晶化ガラス基板が安定して得られるように制御することが容易に可能である。
(比較例)
上記実施例と同様の組成のガラス素材を溶融し、所定の大きさの板状に成形した。
この板状のガラス基板に先ず紫外線露光を行い、次いで熱処理を行った。紫外線露光は、実施例と同じ2kWのXe−Hgランプを用いて行い、このときの露光量は、0.5J/cmとなるように露光時間を適宜設定して行った。また、熱処理は、実施例と同じローラハース方式の移送手段を備えた加熱処理装置を使用して行い、熱処理条件は、850℃、2時間とした。
熱処理後、放冷し、本比較例の結晶化ガラス基板を得た。
以上のようにして得られた本比較例の結晶化ガラス基板について、X線回折法により分析を行ったところ、少なくとも回折角度2θが20.85degの位置の回折ピークは検出されたが、20.5degの位置の回折ピークは検出されなかった。
また、得られた本比較例の結晶化ガラス基板について、実施例と同様にして熱膨張係数の測定を行った結果、熱膨張係数は、10.5×10−6/℃であった。
なお、紫外線露光量を0.5〜1J/cmの間で適宜調節して結晶化ガラス基板を製造し、熱膨張係数の評価を行ったが、12×10−6/℃よりも大きい熱膨張係数を有するものは得られなかった。また、比較例の場合、紫外線露光量のばらつきに対して得られる熱膨張係数の変化が大きく、紫外線露光時の露光量を厳密に設定しても、たとえば製造時の環境において避けがたい紫外線量の影響のためか、得られる熱膨張係数のばらつきが大きかった。
要するに、上述の比較例の場合には、成膜等により接合する材質に合わせて所望の熱膨張係数の結晶化ガラス基板が安定して得られるように制御することは非常に困難である。
(実施例4)
本実施例は、本発明の結晶化ガラス基板の製造方法を適用した両面配線基板の製造例であり、ここでも前述の図2を参照しながら説明する。
重量百分率でSiO:79%,Al:5%,LiO:10.5%,KO:3.75%,ZnO:0.5%,Ag:0.055%,Sb:0.2%を含むガラス素材を公知の方法で溶融し、所定の大きさの板状に成形し、感光性ガラス基板1を得た(図2(a)参照)。
この感光性ガラス基板1上にフォトマスク2(透光性基板21上に所定のホールパターン22を有する)を密着させ、所定の紫外線露光3を行った(同図(b)参照)。感光性ガラス基板1の照射部分に潜像が生じ、これを約400℃で熱処理を行って、貫通孔形成部分を結晶化し、結晶化部11を形成した(同図(c)参照)。その後、希フッ化水素酸(約10%溶液)を感光性ガラス基板10の両面にスプレーして、上記結晶化部11(照射部分)のみをエッチング(溶解除去)することにより、感光性ガラス基板1に貫通孔(スルーホール)12を形成した(同図(d)参照)。
次に、このような貫通孔12のあけられた感光性ガラス基板1に対して、本発明に従い高露光量の紫外線露光および熱処理を行って、結晶化ガラス基板10を得た(同図(e)参照)。具体的には、後で配線パターンとして基板の両面に成膜する銅薄膜の熱膨張係数(16×10−6/℃)を考慮し、露光量が、8.5J/cmとなるように露光時間を設定して紫外線露光を行った。また、露光後の熱処理は、810℃、2時間とした。なお、露光手段及び熱処理方法は前述の実施例と同様にした。そして熱処理後、ガラス基板10を放冷した。得られた結晶化ガラス基板10の熱膨張係数を測定したところ、16×10−6/℃であり、銅の熱膨張係数と同じであった。
次に、結晶化ガラス基板10の両面の導通をとるため、国際公開第2005/027605号に開示された方法に従い、上記貫通孔12に金属銅からなる銅ポスト4を充填した(同図(f)参照)。具体的には、まず、DCスパッタ装置を使用し、結晶化ガラス基板10の裏面に電極層を形成した。この電極層は、基板10に近い側から順に、0.05μm厚のクロム層、0.05μm厚のクロム銅層(クロム:銅=4:96原子%)、1.5μm厚の銅層の3層構造とした。電極層を形成した後、電解メッキ法を用いて、まず電極層が形成された裏面における貫通孔12の開口部を銅メッキで閉塞した。この際、電極層が形成された基板10の裏面側が、陽極に対向するような状態で通電し、電流密度を3A/dmとした。その後、基板10表面側の貫通孔12の開口部が陽極と対向するように配置し直して、電解メッキを行い、閉塞した一方の開口部から他方の開口部に向かって更に銅をメッキしていくことにより貫通孔12を充填した。この際の電流密度は0.5A/dmとした。
基板10表面側に突出した電解メッキ銅層はラップ法を用いて除去し、次いで、基板10裏面側の電解メッキ銅層および電極層はエッチングにより除去して、貫通孔12を銅ポスト4で充填した。
上記貫通孔12への銅ポスト4の充填後、基板10の表裏両面に、DCスパッタ装置を使用し、密着力強化層を形成した。この密着力強化層は、基板10に近い側から順に、0.05μm厚のクロム層、0.05μm厚のクロム銅層(クロム:銅=4:96原子%)、1.5μm厚の銅層の3層構造とした。
次に、基板10両面の密着力強化層上に、電解メッキにより、配線パターンを形成するための銅膜を約3.5μm厚に成膜した(同図(g)参照)。次いで、フォトリソグラフィ法を用いて、基板10の両面の銅膜をパターニングした。つまり、まず基板10の両面にポジ型フォトレジストを塗布し、所望の配線パターンに応じた露光、現像を行ってレジストパターンを形成した。次いで、このレジストパターンをマスクとして、銅膜および密着力強化層のウェットエッチングを行い、結晶化ガラス基板10の両面に所定の配線パターンを形成した両面配線基板を得た(同図(h)参照)。
得られた両面配線基板は、たとえば使用環境において著しい温度変化があっても、配線パターンの剥離、切断、基板の反りなどの不具合が起こらず、安定して動作する高信頼性の両面配線基板を得ることができた。
本発明の結晶化ガラス基板の製造方法における露光量と熱膨張係数との関係を示す曲線図である。 本発明による結晶化ガラス基板を基材として用いる両面配線基板の製造工程を示す概略断面図である。
符号の説明
1 感光性ガラス基板
2 フォトマスク
3 露光
4 銅ポスト
5A,5B 薄膜
6 両面配線基板
10 結晶化ガラス基板
12 貫通孔(スルーホール)

Claims (2)

  1. 少なくともSiOを主成分として含有するガラス基板に、露光エネルギーを1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行い、次いで熱処理温度を780℃〜900℃の間で調節して熱処理を行い、前記紫外線露光における露光エネルギーの調節及び前記熱処理における熱処理温度の調節によって、12×10 −6 /℃〜17×10 −6 /℃の範囲の熱膨張係数を有する結晶化ガラスとすることを特徴とする結晶化ガラス基板の製造方法。
  2. 少なくともSiO を主成分として含有するガラス基板の表裏両面に形成された電気配線パターンと、前記ガラス基板の表裏両面に連通する、内部に導電性材料が形成された貫通孔とを有し、前記ガラス基板の表裏両面に形成された各前記電気配線パターンが、前記貫通孔に形成された導電性材料を介して電気的に導通された両面配線基板の製造方法であって、
    前記ガラス基板に前記貫通孔を形成する工程と、
    前記ガラス基板に対して、露光エネルギーを1〜20J/cmの間で調節して紫外線露光を行い、次いで熱処理温度を780℃〜900℃の間で調節して熱処理を行い、前記紫外線露光における露光エネルギーの調節及び前記熱処理における熱処理温度の調節によって、12×10 −6 /℃〜17×10 −6 /℃の範囲の熱膨張係数を有する結晶化ガラスとすることにより前記ガラス基板を結晶化する工程と、
    前記貫通孔の内部に導電性材料を形成する工程と
    を有することを特徴とする両面配線基板の製造方法。
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