JP4979420B2 - トンネル覆工コンクリート打設構造 - Google Patents

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Description

本発明は、トンネル覆工用型枠を用いて覆工コンクリートを形成するトンネル覆工コンクリート打設方法において用いるトンネル覆工コンクリート打設構造に関する。
例えば山岳トンネル工法等のトンネル工法において、掘削したトンネルの内周面の地山を覆って構築されるトンネル覆工コンクリートを形成するための方法として、トンネル覆工用型枠(コンクリート覆工用型枠)を用いる工法が一般的に採用されている。トンネル覆工用型枠50は、図8(a),(b)に示すように、例えば馬蹄形等のアーチ形状部分52を含む形状のトンネル53の内周面54に沿って、トンネル53の側壁部55から上部に亘って設置されるものであり、設置されたトンネル覆工用型枠50と、トンネル53の内周面54の吹き付けコンクリート56によって覆われる地山との間の覆工空間61に、好ましくは無筋コンクリートを打設して硬化させることにより、トンネル底部のインバート部51のコンクリートと連続させるようにして、覆工コンクリートが形成されることになる。
また、トンネル覆工用型枠50としては、例えばパラセントルと呼ばれる組立式のトンネル覆工用型枠の他、スライドセントルと呼ばれる移動式のトンネル覆工用型枠が知られており、トンネル53の掘削作業の進行に伴なって、例えば10m程度の所定のスパン毎にトンネル覆工用型枠50を据え付け直しながら、トンネル53の掘進方向の後方から前方に向かって、トンネル覆工用型枠50を用いてトンネル53の側部及び上部の覆工コンクリートを順次打設形成して行くことになる。
そして、トンネル覆工用型枠50を用いてトンネルの側部及び上部の覆工コンクリートを打設するには、例えば図9(a)〜(d)に示すように、設置したトンネル覆工用型枠50に設けられた検査窓56からコンクリートを打設可能な高さ領域として、例えばトンネル53の側壁部55からアーチ形状部分52の肩部までの領域に対しては、検査窓56を介してコンクリート57を供給すると共に、バイブレータ58を検査窓56から挿入し、供給されたコンクリート57を締固めながらコンクリート57を打設する。しかる後に、検査窓56からコンクリート57を供給しながらバイブレータ58によって締固めることが困難な高さ領域として、トンネル53の冠部(クラウン部)59(図8参照)の領域に対しては、トンネル覆工用型枠50の天端部に設けた吹き上げ口としてのコンクリート打設孔60から、コンクリートを吹き上げ方式で打ち込み、直接バイブレータを用いて締固めを行うことなく冠部59のコンクリート57を形成するパターンが採用されている。
より具体的には、所定位置にトンネル覆工用型枠50を設置した後に、例えば側壁部55の下部より、下段の検査窓56を介してコンクリート57を流し込みながらバイブレータ58を用いて締固める工程(図9(a)参照)と、さらに側壁部55の上部のアーチ形状部分52に向かって、中段の検査窓56を介してコンクリート57を流し込みながらバイブレータ58を用いて締固める工程(図9(b)参照)と、さらにアーチ形状部分52の冠部59の手前まで、上段の検査窓56及び必要に応じてコンクリート打設孔60を介してコンクリート57を流し込みながら、バイブレータ58を用いて締固める工程(図9(c)参照)と、冠部59の既設覆工コンクリート62側の部分からコンクリート打設孔60を介して順次コンクリート57を流し込み、直接バイブレータを用いて締固めを行うことなく妻型枠63までコンクリートを充填する工程(図9(d)参照)とにより、覆工コンクリートが打設されることになる。
上述のような従来のトンネル覆工用型枠50を用いた覆工コンクリートの打設方法では、トンネル冠部(クラウン部)59に打設されたコンクリート57の締固めを行うことができないことから、当該冠部59における覆工コンクリートの品質上の信頼性が低くなり、特に既設覆工コンクリート62の付近では、エア溜まりや空洞が発生しやすくなる。また、吹き上げ口としてのコンクリート打設孔60から集中してトンネル覆工用型枠50と地山との間の覆工空間61にコンクリート57が打設されるので、コンクリート57がコンクリート打設孔60から周囲に流れる際の軌跡が縞模様として覆工コンクリートの表面に残りやすくなり、仕上りが悪くなる。
これに対して、トンネル冠部に打設されたコンクリートの締固めを行うことができるようにする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の覆工コンクリート打設方法では、山岳トンネル工法とは異なるシールド工法によってトンネルを築造する際に、セグメントとセントルとの間の空隙のクラウン部に、トンネル軸方向の略全長に亘って延伸する、断面L型のアングルを凹向きに吊り下げ固定してなるガイドレールと、ガイドレールに沿って動く棒状バイブレータとを設置しておき、既設側からクラウン部の空隙にコンクリートを棒状バイブレータで締固めつつ打設し、コンクリートの充填に伴って、棒状バイブレータをガイドレールに沿って既設側から妻板側に向けて移動させるようにしたものである。また、特許文献1の覆工コンクリート打設方法では、ガイドレールは例えば二次覆工コンクリートの段取筋を兼ねて設けられるようになっている。
特開2002−30893号公報
特許文献1に記載のトンネルのクラウン部にコンクリートを打設する方法では、棒状バイブレータをトンネル軸方向に案内するL型のアングルからなるガイドレールを、コンクリートの打設箇所におけるトンネルの軸方向の略全長に亘って予め設けておく必要があるため、段取筋等を設置することなく好ましくは無筋コンクリートを用いて覆工コンクリートが形成されるトンネル覆工用型枠による山岳トンネル等においては、その材料や施工に多くの無駄を生じることになる。
一方、段取筋等を設置することなく好ましくは無筋コンクリートを用いて覆工コンクリートが形成されるトンネル覆工用型枠による山岳トンネル等においては、ガイドレールに換えて、例えば図3に示すように、トンネル覆工用型枠の外周面に、ガイド片を、トンネルの軸方向に間隔をおいて直列状に配置して複数突設しておき、このガイド片によって、棒状バイブレータに後続するバイブレータケーブルを案内させることにより、棒状バイブレータを既設覆工コンクリート側から妻型枠側に向けて牽引しつつ移動させることが考えられる。
また、ガイド片によってバイブレータケーブルを案内させつつ、妻型枠側にバイブレータケーブルを牽引して棒状バイブレータを移動させる方法では、コンクリートを流し込む前に棒状バイブレータやバイブレータケーブルをトンネル覆工用型枠の外周の覆工空間にセットした後に、覆工空間にコンクリートを流し込むと、コンクリートは相当の比重を有していることから、コンクリートによって押し流されて棒状バイブレータやバイブレータケーブルがセットされた所定の位置から移動したり、バイブレータケーブルが曲折したりする場合がある。このため、本願出願人は、先に特願2006−246086において、トンネル覆工用型枠の外周面に突設して、バイブレータケーブルの遊嵌固定機能を有するケーブル挿通孔を備える固定ガイド片を、トンネルの軸方向に間隔をおいて直列状に複数配置し、覆工空間にコンクリートを流し込む前は、固定ガイド片によって、バイブレータケーブルを、覆工空間の厚さ方向中間部分に保持しつつトンネルの軸方向に直線状に配置して仮固定しておき、コンクリートを流し込んだ後に、バイブレータケーブルを遊嵌状態に切り換えて、棒状バイブレータを振動させつつ妻型枠側に牽引するようにした、トンネル覆工コンクリート打設構造を開発し、開示している。
しかしながら、特願2006−246086のトンネル覆工コンクリート打設構造では、バイブレータケーブルを遊嵌状態に切り換えて、棒状バイブレータを振動させつつ妻型枠側に牽引する際に、棒状バイブレータやバイブレータケーブルと、固定ガイド片のケーブル挿通孔との間にコンクリート中の骨材がかみ込んで詰まった場合に、棒状バイブレータやバイブレータケーブルの牽引が困難になることから、このような障害を解消できるようにするための新たな技術の開発が望まれている。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、覆工空間に流し込まれたコンクリートを締固める際のバイブレータケーブルの直線性を固定ガイド片を介して保持することにより、棒状バイブレータ及びバイブレータケーブルの妻型枠側への移動を容易且つスムーズに行わせることができると共に、これら移動中に固定ガイド片と棒状バイブレータやバイブレータケーブルとの間に骨材がかみ込まないようにして、棒状バイブレータやバイブレータケーブルの容易且つスムーズな移動が阻害されないようにすることのできるトンネル覆工コンクリート打設構造を提供することを目的とする。
本発明は、トンネル覆工用型枠を用いて覆工コンクリートを形成するトンネル覆工コンクリート打設方法において用いるトンネル覆工コンクリート打設構造であって、既に形成された既設覆工コンクリートと妻型枠とによって挟まれる、前記トンネル覆工用型枠の外周面とトンネル内周の覆工面との間の覆工空間に、棒状バイブレータを前記既設覆工コンクリートに近接して配置すると共に、これに後続するバイブレータケーブルを前記妻型枠側に延設させて前記妻型枠を貫通させることにより前記妻型枠の外側から牽引可能な状態で配置し、前記覆工空間にコンクリートを流し込んだ後、前記棒状バイブレータを前記バイブレータケーブルの牽引によって前記妻型枠側に移動させながらコンクリートの締固めを行えるようにするものであり、前記覆工空間にコンクリートを流し込む前は、前記バイブレータケーブルを、前記覆工空間の厚さ方向中間部分に保持しつつトンネルの軸方向に直線状に配置して仮固定しておき、コンクリートを流し込んだ後に、前記バイブレータケーブルの仮固定を解除して、前記棒状バイブレータを振動させつつ前記妻型枠側に牽引可能とする、前記バイブレータケーブルの仮固定機能を有する固定ガイド片が、トンネルの軸方向に間隔をおいて直列状に複数配置されており、前記固定ガイド片は、前記トンネル覆工用型枠の外周面から前記覆工空間の厚さ方向に進退スライド可能に突出する、先端部分に切欠きガイド凹部を有する板状部材からなり、且つ前記切欠きガイド凹部の切欠き先端部分を閉塞する閉塞ワイヤ部材が、前記切欠き先端部分を挟んだ両側の係止溝に掛け渡されると共に前記トンネル覆工用型枠の内側まで延設して、トンネル内部からの操作によって取り外し可能に設けられており、前記切欠きガイド凹部と前記閉塞ワイヤ部材との間に前記バイブレータケーブルを挟み込んで仮固定した状態から、前記閉塞ワイヤ部材をトンネル内部からの操作によって前記切欠き先端部分から取り外すことにより、仮固定を解除して前記バイブレータケーブルを前記切欠きガイド凹部から脱離させることを特徴とするトンネル覆工コンクリート打設構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
また、本発明のトンネル覆工コンクリート打設構造では、前記切欠きガイド凹部は、前記板状部材の先端部分に前記覆工空間の厚さ方向外方を向いて設けらていることが好ましい。
本発明のトンネル覆工コンクリート打設構造によれば、覆工空間に流し込まれたコンクリートを締固める際のバイブレータケーブルの直線性を固定ガイド片を介して保持することにより、棒状バイブレータ及びバイブレータケーブルの妻型枠側への移動を容易且つスムーズに行わせることができると共に、これら移動中に固定ガイド片と棒状バイブレータやバイブレータケーブルとの間に骨材がかみ込まないようにして、棒状バイブレータやバイブレータケーブルの容易且つスムーズな移動が阻害されないようにすることができる。
本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリート打設構造は、図1(a)〜(c)に示すように、例えば山岳トンネル工法において、コンクリート覆工用型枠としてのトンネル覆工用型枠10を用いてトンネル12の側部及び上部の覆工コンクリート11を打設形成してゆく際に、特にトンネル12の冠部(クラウン部)13の覆工コンクリート11aを、これより下方の例えばトンネル12の側壁部及びアーチ形状部分の覆工コンクリート11を打設した後に、充分に締固めながら打設してゆくための構造として採用されたものである。
ここで、本実施形態では、トンネル覆工用型枠10は、従来技術として公知の例えばスライド移動式のセントルであり、トンネル12の掘削作業の進行に伴なって、例えば10m程度の所定のスパン毎にトンネル12の掘進方向Xの後方から前方に向かって据え付け直しながら、トンネル12の側部及び上部の覆工コンクリート11を順次打設形成してゆくことを可能にするものである。また、本実施形態では、側壁部及びアーチ形状部分の覆工コンクリート11は、例えば従来の工法と同様の方法により、設置したトンネル覆工用型枠10に設けられた検査窓14を介してコンクリートが供給されると共に、振動締固め装置としての棒状バイブレータ14aを検査窓14から挿入して供給されたコンクリートを締固めることによって、当該側壁部及びアーチ形状部分の覆工コンクリート11が、トンネル冠部13の覆工コンクリート11aに先行して打設されることになる。
そして、本実施形態のトンネル覆工コンクリート打設構造は、トンネル覆工用型枠10を用いて覆工コンクリートを形成するトンネル覆工コンクリート打設方法において用いるコンクリート打設構造であって、図1〜図4に示すように、既に形成された既設覆工コンクリート15の端面15aと妻型枠16とによって挟まれる、トンネル覆工用型枠10の外周面とトンネル内周の覆工面22との間のトンネル冠部13の覆工空間23に、棒状バイブレータ22を既設覆工コンクリート15に近接して配置すると共に、これに後続するバイブレータケーブル19を妻型枠16側に延設させて妻型枠16を貫通させることにより妻型枠16の外側から牽引可能な状態で配置し、覆工空間23にコンクリートを流し込んだ後、棒状バイブレータ20をバイブレータケーブル19の牽引によって妻型枠16側に移動させながらコンクリートの締固めを行えるようにするものである。覆工空間23にコンクリートを流し込む前は、バイブレータケーブル19を、覆工空間23の厚さ方向中間部分に保持しつつトンネル12の軸方向Xに直線状に配置して仮固定しておき、コンクリートを流し込んだ後に、バイブレータケーブル19の仮固定を解除して、棒状バイブレータ20を振動させつつ妻型枠16側に牽引可能とする、バイブレータケーブル19の仮固定機能を有する固定ガイド片18が、トンネル12の軸方向Xに間隔をおいて直列状に複数配置されている。固定ガイド片18は、トンネル覆工用型枠10の外周面から覆工空間23の厚さ方向Yに進退スライド可能に突出する、先端部分に切欠きガイド凹部26を有する板状部材17からなり、且つ切欠きガイド凹部26の切欠き先端部分29を閉塞する閉塞ワイヤ部材30が、切欠き先端部分29を挟んだ両側の上端係止溝39に掛け渡されると共にトンネル覆工用型枠10の内側まで延設して、トンネル内部からの操作によって取り外し可能に設けられており、切欠きガイド凹部26と閉塞ワイヤ部材30との間にバイブレータケーブル19を挟み込んで仮固定した状態から(図4(a)参照)、閉塞ワイヤ部材30をトンネル内部からの操作によって切欠き先端部分29から取り外すことにより、仮固定を解除してバイブレータケーブル19を切欠きガイド凹部26から脱離させるようになっている(図4(b)参照)。
また、本実施形態では、切欠きガイド凹部26は、板状部材17の先端部分に覆工空間23の厚さ方向Yの外方を向いて設けられている。
本実施形態では、トンネル覆工用型枠10の外周面から覆工空間23の厚さ方向Yに進退スライド可能に突出して設けられる各固定ガイド片18は、図6にも示すように、その正面及び裏面をトンネル12の軸方向Xに対向させた状態で、トンネル覆工用型枠10に形成した固定ガイド片18の挿入開口41を介して覆工空間23に突出可能に設置される。また各固定ガイド片18は、トンネル覆工用型枠10に取り付けた支持金物42に支持された状態で、当該支持金物42に沿って、トンネル覆工用型枠10の外周面から覆工空間23の厚さ方向Yに進退スライドする。
固定ガイド片18は、例えば鋼製プレートによる板状部材17からなり、図5(a)に示すように、例えば幅120mm、高さ500mm程度の大きさの縦長矩形の正面形状を有しており、その上端の辺部には、テーパー状に縁取りされた略半円形状の切欠きによる切欠きガイド凹部26が設けられている。また、板状部材17の略下半部分には、その中央部に、1本のスライド用スリット35が縦方向に延設して設けられている。さらに、スライド用スリット35の一方の側部には、スライド用スリット35の上端部に隣接して、第1係止孔36aが穿孔形成されていると共に、スライド用スリット35の下端部に隣接して、第2係止孔36bが穿孔形成されている。さらにまた、板状部材17の下端部から垂直に突出して、ハンドル片33が設けられている。また、板状部材17の側端面から側方に突出して、ハンドル金具38が取り付けられている。
そして、本実施形態では、板状部材17には、切欠きガイド凹部26の切り欠き先端部分29を閉塞する閉塞ワイヤ部材30が取り付けられている。閉塞ワイヤ部材30は、例えばφ3mmのワイヤーケーブルからなり、一端部を板状部材17の一方の側端面から突出するハンドル金具38に係止し、当該一方の側端面に沿って掛け回すと共に、これの上端部から、切り欠き先端部分29を挟んだ両側の上端係止溝39に掛け渡された後に、板状部材17の他方の側端面に沿って掛け回され、当該他方の側端面から突出するハンドル金具38に他端部を係止することにより、強固に取り付けられる。これによって閉塞ワイヤ部材30は、両側の上端係止溝39に掛け渡した部分によって、切欠きガイド凹部26の切り欠き先端部分29を閉塞した状態とし、バイブレータケーブル19を仮固定する際には、この閉塞ワイヤ部材30と切欠きガイド凹部26との間に、バイブレータケーブル19を挟み込むことができるようになっている(図4(a)参照)。
また、本実施形態では、閉塞ワイヤ部材30は、板状部材17の他方の側端面に沿った部分におけるハンドル金具38と近接する部位に、着脱係止機構31を備えており、この着脱係止機構31において、閉塞ワイヤ部材30を他方の側端面のハンドル金具38に係止された他端部から分離して、一端部側に引き込むことにより、トンネル覆工用型枠10の内側からの操作によって、板状部材17の切り欠き先端部分29から閉塞ワイヤ部材30を容易に取り外すことが可能になる(図4(b)参照)。なお、本実施形態では、板状部材17の側端面に沿って閉塞ワイヤ部材30を掛け回した状態を安定して保持できるように、板状部材17の各側端面には、図5(b)に示すように、内側に窪んだ断面形状を有する添接溝40が設けられている。
固定ガイド片18の板状部材17を進退スライド可能に支持する支持金物42は、図7にも示すように、上端部を接合フランジ部42aとしてL字断面形状となるように折り曲げて形成した、例えば幅120mm、高さ250mm程度の大きさの金属プレート部材であって、接合フランジ部42aを、トンネル覆工用型枠10の内側面に例えば溶着固定することによって、強固に取り付けられる。また、支持金物42の下端部には、固定ピン43a,43bを挿入係止するための第1ピン係止孔44a及び第2ピン係止孔44bが、中央部及び一方の側部の2箇所に穿孔形成されている。
そして、本実施形態では、支持金物42の中央の第1ピン係止孔44aに挿入固定した固定ピン43aを板状部材17の中央部のスライド用スリット35に挿通し、このスライド用スリット35をガイドとして、板状部材17を覆工空間23の厚さ方向Yに進退スライドさせる。また、支持金物42の一方の側部の第2ピン係止孔44bを、板状部材17の第1係止孔36a又は第2係止孔36bに選択的に合致させながら、第2ピン係止孔44bに固定ピン43bを挿入固定することにより、板状部材17をトンネル覆工用型枠10の外周面から覆工空間23に突出させた状態(図4(a),(b)参照)や、板状部材17をトンネル覆工用型枠10の内側に撤去した状態(図4(a),(b)参照)を保持させることが可能になる。
すなわち、例えば支持金物42の第2ピン係止孔44bを、板状部材17の第2係止孔36bに合致させて、固定ピン43bを第2ピン係止孔44bに挿入固定することにより、図4(a)に示す、閉塞ワイヤ部材30と切欠きガイド凹部26との間にバイブレータケーブル19を挟み込んで仮固定する状態や、図4(b)に示す、閉塞ワイヤ部材30を切欠き先端部分29から取り外すことにより、仮固定を解除してバイブレータケーブル19を切欠きガイド凹部26から脱離させる状態に、安定して保持することが可能になる。また、例えば支持金物42の第2ピン係止孔44bを、板状部材17の第1係止孔36aに合致させて、固定ピン43bを第2ピン係止孔44bに挿入固定することにより、図4(c)に示す固定ガイド片18をトンネル覆工用型枠10の内側に撤去した状態に、安定して保持することが可能になる。
なお、本実施形態では、固定ガイド片18は、トンネルの軸方向Xに一定の設置間隔aとして、例えば1000mmの間隔をおいて直列状に複数設けられている(図3参照)。また、本実施形態では、図2に示すように、バイブレータケーブル19の先端に連結されて既設覆工コンクリート15に近接配置される棒状バイブレータ20もまた、上述と同様の構成を備える固定ガイド片18を用いて両端部分を支持されることにより、覆工空間23の厚さ方向中間部分にバイブレータケーブル19と直線状に配置されて仮固定される。
棒状バイブレータ20は、例えば電磁式振動体やモータの回転力によって振動する振動体等を内部に備える、コンクリート用の締固め装置として汎用されている公知の装置であり、当該棒状バイブレータ20の後端部分には、接続線等が収容されたフレキシブルな動力供給ホースからなるバイブレータケーブル19が一体として接続される。
バイブレータケーブル19は、例えば8mm程度の太さのワイヤーを、内径9.2mm程度、外径12mm程度のポリアミドチューブで覆うと共に、ポリアミドチューブの外周面に、導体と介在紐とを周方向に交互に配置し、さらにこれらを外径が21.8mm程度のシース(外皮)で覆った後に、耐摩耗チューブで被覆して形成される、外径が例えば37.2mm程度の公知のケーブル部材である。バイブレータケーブル19は、覆工空間23に充填打設されたコンクート11a中に埋入される当該バイブレータケーブル19を、コンクート11aとの摩擦力(付着力)に抗して、棒状バイブレータ20と共に妻型枠16側に牽引するのに十分な引張り強度を備えている。
本実施形態では、図1(b)に示す、トンネル12の側壁部及びアーチ形状部分の肩部までの覆工コンクリート11を打設形成した後における、複数の固定ガイド片18により、厚さ方向中間部分にバイブレータケーブル19及び棒状バイブレータ20を直線状に配置して仮固定したトンネル12の冠部(クラウン部)13の覆工空間23に対して、例えば図1(c)示すように、コンクリートポンプをコンクリート打設孔24に接続して、当該コンクリート打設孔24からコンクリート11aを打設する。
覆工空間23の全体に充填されるまでコンクリート11aを打設したら、或いは棒状バイブレータ20及びバイブレータケーブル19が相当の長さに亘ってコンクリート中に埋入されるまでコンクリート11aを打設したら、トンネル覆工用型枠10の内側からの操作によって、板状部材17bの切欠き先端部分29から閉塞ワイヤ部材30を取り外す。これによって、バイブレータケーブル19及び棒状バイブレータ20は、仮固定された状態から解放されて移動可能な状態となるので、必要に応じてコンクリート打設孔24やその他の打設口からコンクリートを適宜追加打設しつつ、棒状バイブレータ20を震動させながら当該棒状バイブレータ20及びバイブレータケーブル19を、例えばコード巻取り装置45の牽引力によって牽引することにより、妻型枠16側に移動させて、トンネル12の冠部13に打設されたコンクリート11aを締固める。棒状バイブレータ20が妻型枠16まで移動したら、例えば妻型枠16のケーブル貫通孔からバイブレータケーブル19と共に棒状バイブレータ20を引き抜いて、トンネル覆工用型枠10が設置された当該スパンにおける覆工コンクリート11の打設作業が終了する。
なお、本実施形態では、図2に示すように、好ましくは、例えば既設覆工コンクリート15に近接してトンネル覆工用型枠10に形成したワイヤー導入孔から覆工空間23に導入したワイヤー部材46を棒状バイブレータ20の先端部に連結し、ワイヤー部材46を介して既設覆工コンクリート15側へ引張り力を負荷することにより、棒状バイブレータ20及びバイブレータケーブル19の直線性をさらに効果的に保持しつつバイブレータケーブル19を妻型枠16側に牽引することもできる。この際には、ワイヤー導入孔から覆工空間23に導入されたワイヤー部材46は、固定ガイド片18と直列状に配置されたワイヤガイド片47のワイヤーガイド孔を経ることにより、覆工空間23の厚さ方向中間部分に誘導された後に、棒状バイブレータ20の先端部に連結されることが好ましい。
そして、本実施形態によれば、覆工空間23に流し込まれたコンクリート11aを締固める際のバイブレータケーブル19の直線性を固定ガイド片18を介して保持することにより、棒状バイブレータ20及びバイブレータケーブル19の妻型枠16側への移動を容易且つスムーズに行わせることができると共に、これらの移動中に固定ガイド片18と棒状バイブレータ20やバイブレータケーブル19との間に骨材がかみ込まないようにして、棒状バイブレータ20やバイブレータケーブル19の容易且つスムーズな移動が阻害されないようにすることが可能になる。
すなわち、本実施形態によれば、直列状に複数配置された固定ガイド片18によって、バイブレータケーブル19は、覆工空間23にコンクリートを流し込む前に、覆工空間23の厚さ方向中間部分においてトンネル12の軸方向Xに直線状に配置されて仮固定される(図4(a)参照)。このようにバイブレータケーブル19が直線状に仮固定されていることにより、バイブレータケーブル19は、覆工空間23に相当の比重を有するコンクリートが流し込まれても、コンクリートによって押し流されることがなく、仮固定された所定の位置から移動したり曲折したりしないので、直線状に配置された状態を強固に保持して、バイブレータケーブル19を牽引しつつ棒状バイブレータ20を妻型枠16側に移動させてコンクリートを締固める際に、棒状バイブレータ20やバイブレータケーブル19を妻型枠16側へ容易且つスムーズに移動させることが可能になり、これによってトンネル12の冠部13の覆工コンクリート11aを効率良く効果的に締固めて、十分に締固めがなされた、品質が良く表面の仕上りが良好な覆工コンクリート11aを得ることが可能になる。また、本実施形態によれば、切欠きガイド凹部26と閉塞ワイヤ部材30との間にバイブレータケーブル19を挟み込んで仮固定した状態から(図4(a)参照)、閉塞ワイヤ部材30を切欠き先端部分29から取り外すことにより、仮固定を解除してバイブレータケーブル19を切欠きガイド凹部26から脱離させるようになっている(図4(b)参照)ので、棒状バイブレータ20やバイブレータケーブル19が移動中に切欠きガイド凹部26から自在に離れることにより、固定ガイド片18との間に骨材をかみ込ませることがなく、これによって棒状バイブレータ20やバイブレータケーブル19の容易且つスムーズな移動が阻害されるのを効果的に回避することが可能になる。
さらに、本実施形態では、板状部材17から閉塞ワイヤ部材30を取り外すことによって、切欠きガイド凹部26の切欠き先端部分29を解放させたら、板状部材17をトンネル覆工用型枠10の内側に引き込むことにより、切欠きガイド凹部26から、棒状バイブレータ20やバイブレータケーブル19をより確実に脱離させることが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明は、山岳トンネル以外のその他のトンネルにおける覆工コンクリートを形成するべく採用することもできる。また、トンネル覆工用型枠の外周面との間に覆工空間を形成するトンネルの内周面は、吹き付けコンクリートによって覆われる地山の他、1次覆工を行った後のトンネル内周面による、2次覆工を行うための覆工面であっても良い。さらに、本発明によって締固められる覆工コンクリートは、トンネル冠部の覆工コンクリートである必要は必ずしもなく、例えばトンネルの側壁部や肩部、アーチ形状部分等に複数の固定ガイド片をトンネルの軸方向に直列状に配置して、本発明を適用することもできる。さらにまた、固定ガイド片の切欠きガイド凹部は、板状部材の先端部分に覆工空間の厚さ方向外方を向いて設けられる必要は必ずしもなく、板状部材の側方や斜め方向を向いて切欠き形成されても良い。
(a)〜(c)は、本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリート打設構造を用いた覆工コンクリートの打設作業の作業手順を説明する、一部を断面図として示す側面図である。 本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリート打設構造の構成を説明する略示断面図である。 本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工コンクリート打設構造の構成を説明する略示斜視図である。 (a)は固定ガイド片によってバイブレータケーブルを仮固定した状態を説明する正面図、(b)はバイブレータケーブルを脱離させる状態を説明する正面図、(c)は固定ガイド片をトンネル覆工用型枠の内側に撤去した状態を説明する正面図である。 (a)は固定ガイド片の正面図、(b)は(a)のA−Aに沿った断面図である。 固定ガイド片をトンネル覆工用型枠に取り付けた状態を説明する側面図である。 支持金物の正面図である。 (a)はトンネル覆工用型枠をトンネルの内周面に沿って設置した状態を説明するトンネル軸方向から見た断面図、(b)は同側面図である。 (a)〜(d)は、従来のトンネル覆工コンクリート打設方法の作業手順を説明する、一部を断面図として示す側面図である。
符号の説明
10 トンネル覆工用型枠
11 覆工コンクリート
11a 冠部の覆工コンクリート
12 トンネル
13 トンネルの冠部
15 既設覆工コンクリート
16 妻型枠
17 板状部材
18 固定ガイド片
19 バイブレータケーブル
20 棒状バイブレータ
23 覆工空間
26 切欠きガイド凹部
29 切り欠き先端部分
30 閉塞ワイヤ部材
31 着脱係止機構
38 ハンドル金具
42 支持金物
43a,43b 固定ピン
X トンネルの軸方向
Y 覆工空間の厚さ方向

Claims (2)

  1. トンネル覆工用型枠を用いて覆工コンクリートを形成するトンネル覆工コンクリート打設方法において用いるトンネル覆工コンクリート打設構造であって、
    既に形成された既設覆工コンクリートと妻型枠とによって挟まれる、前記トンネル覆工用型枠の外周面とトンネル内周の覆工面との間の覆工空間に、棒状バイブレータを前記既設覆工コンクリートに近接して配置すると共に、これに後続するバイブレータケーブルを前記妻型枠側に延設させて前記妻型枠を貫通させることにより前記妻型枠の外側から牽引可能な状態で配置し、前記覆工空間にコンクリートを流し込んだ後、前記棒状バイブレータを前記バイブレータケーブルの牽引によって前記妻型枠側に移動させながらコンクリートの締固めを行えるようにするものであり、
    前記覆工空間にコンクリートを流し込む前は、前記バイブレータケーブルを、前記覆工空間の厚さ方向中間部分に保持しつつトンネルの軸方向に直線状に配置して仮固定しておき、コンクリートを流し込んだ後に、前記バイブレータケーブルの仮固定を解除して、前記棒状バイブレータを振動させつつ前記妻型枠側に牽引可能とする、前記バイブレータケーブルの仮固定機能を有する固定ガイド片が、トンネルの軸方向に間隔をおいて直列状に複数配置されており、
    前記固定ガイド片は、前記トンネル覆工用型枠の外周面から前記覆工空間の厚さ方向に進退スライド可能に突出する、先端部分に切欠きガイド凹部を有する板状部材からなり、且つ前記切欠きガイド凹部の切欠き先端部分を閉塞する閉塞ワイヤ部材が、前記切欠き先端部分を挟んだ両側の係止溝に掛け渡されると共に前記トンネル覆工用型枠の内側まで延設して、トンネル内部からの操作によって取り外し可能に設けられており、
    前記切欠きガイド凹部と前記閉塞ワイヤ部材との間に前記バイブレータケーブルを挟み込んで仮固定した状態から、前記閉塞ワイヤ部材をトンネル内部からの操作によって前記切欠き先端部分から取り外すことにより、仮固定を解除して前記バイブレータケーブルを前記切欠きガイド凹部から脱離させることを特徴とするトンネル覆工コンクリート打設構造。
  2. 前記切欠きガイド凹部は、前記板状部材の先端部分に前記覆工空間の厚さ方向外方を向いて設けられる請求項1に記載のトンネル覆工コンクリート打設構造。
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