JP4978924B2 - 遺伝子構成比測定方法 - Google Patents
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A)定量的(quantitative)PCR方法(非特許文献1)
蛍光色素で標識された1種の均一溶液系プライマープローブおよび1種の蛍光色素非標識の均一溶液系プライマープローブを用いて、2種の遺伝子をPCR方法により増幅し、2種の遺伝子の構成比を測定した。2種の遺伝子の構成比の分析はT−RFLP解析方法によった。
1本鎖のポリヌクレオチドの両末端に各々異なった蛍光色素で標識して得た均一系の標的核酸プローブと蛍光色素で標識していない2種のプライマー(forward primerおよびreverse primer)プローブを用いて、2種の遺伝子、すなわち標的遺伝子および内部標準遺伝子を、PCR方法で定常期まで増幅し、各蛍光色素から発生した光学的キャラクター変化量を測定し、得た各変化量の比から標的遺伝子と内部標準遺伝子との構成比を求める方法である。
しかしながら、前記方法A)においては、T−RFLP解析方法を介するので、測定工程が複雑であり、前記方法B)においては、測定精度の向上がのぞまれていた。
(1)2種類の遺伝子のどちらか一方に相補し、蛍光色素で標識された、1種または2種以上の均一溶液系核酸プローブを当該相補する遺伝子にハイブリダイズさせ、当該遺伝子を増幅させて増幅過程において発生するその光学的キャラクター変化量を測定し、得られた変化量に基づいて遺伝子の増幅過程をモニタリングする工程(以下、「工程1」という。)。
(2)2種類の遺伝子に同時に相補し、蛍光色素で標識された、前記工程(1)のものとは異なった1種または2種以上の均一溶液系核酸プローブを、2種類の遺伝子にハイブダイズリさせ、当該2種類の遺伝子を増幅させ、増幅過程において発生する光学的キャラクター変化量を測定し、得られた変化量に基づいて、当該2種類の遺伝子の増幅過程をモニタリングする工程(以下、「工程2」という。)。
(4)2種類の標準遺伝子を種々な構成比で含む複数の試料について、工程(1)〜(3)を実施し、各標準試料における補正蛍光変化量を測定し、当該測定値と遺伝子構成比との関係式を求める工程(以下、「工程4」という。)。
(5)未知試料について工程(1)〜(3)を実施し、各未知試料における補正蛍光変化量を測定し、当該測定値と、工程(4)で得られた関係式より、未知試料における遺伝子構成比を測定する工程(以下、「工程5」という。)。
(a)前記1)に記載の工程1〜5を実施して、標的核酸と内部標準遺伝子との構成比を測定する工程。
(b)当該構成比と内部標準遺伝子の添加量から標的遺伝子量を測定する工程。
また、本発明においては、工程1および工程2のいずれか一方若しくは双方の均一溶液系プローブが、蛍光消光核酸プライマーであることが好ましい。
1)既知のゲノムサイズおよびゲノムコピーを有するDNAゲノム(A)および既知のゲノムコピー数を有し、未知ゲノムサイズの標的DNAゲノム(B)の混合液を用いて、前記の遺伝子構成比測定方法により、遺伝子構成比を測定する工程。
2)Aのゲノムサイズと、工程1)で得られた遺伝子構成比とから、Bのゲノムサイズを測定する工程。
先ず、本発明で使用する用語を説明または定義する。本発明において用いる用語は、特別な定義がない場合は、現在、分子生物学、遺伝学若しくは遺伝子工学、微生物学若しくは微生物工学等で一般的に使用されている用語と同じ意味である。
「1種若しくは2種以上」、「1種または2種以上」、「1種若しくは複数種」とは、少なくとも1種の意味である。
「標的遺伝子」とは、検出・測定を目的とした遺伝子の意味である。そして、「試料中に含まれる遺伝子」のことを単に標的遺伝子または目的遺伝子という場合がある。
また、一般的な場合は、「光学的キャラクター」なる用語を使用し、具体的な場合は、「蛍光強度」、単に「蛍光」なる用語を使用した。
なお、本発明の核酸プローブが本発明の蛍光色素で標識される部位のことを「蛍光色素標識部位」または「蛍光標識部位」ともいう。しかし、同じ意味である。
本発明でいう核酸増幅方法とは、インビトロ(in vitro)で核酸を増幅する方法のことをいう。公知、未公知を問わない。例えば、PCR方法、LCR方法(ligase chain reaction)、TAS方法、ICAN(Isothermal and Chimeric Primer−Initiated Amplification of Nucleic acids)方法、LAMP方法、NASRA方法、RCA方法、TAMA方法、UCAN方法等を全て含めるものとする。好適にはプライマープローブまたは単なるプローブを用いるPCR方法で行うのが好適である。
「Qプローブ」、「QProbe」(J−Bio21(株)社製)とは、本発明者らにより開発された蛍光消光核酸プローブ(Quenching Probe)(以下、単に「QProbe」と呼ぶこともある。)(KURATA et al., Nucleic acids Research, 2001, vol.29, No.6 e34)である。このプローブは、1本鎖のオリゴヌクレオチドを蛍光色素で標識した均一溶液系核酸プローブであるが、蛍光色素で標識した部位の塩基がGまたはCであるか、またはプローブの標識塩基から、また対応核酸の標識塩基に対応する塩基から1乃至3塩基離れて(標識塩基に対応する塩基を1と数える。)GまたはCが少なくとも1つ存在する均一溶液系核酸プローブである。
また、このQProbeは、遺伝子増幅用のプライマー(「Qプライマー」、「Qprimer」(J−Bio21(株)社製) 以下、これらを単に「QPrimer」と呼ぶこともある。)として用いることが可能である。
遺伝子構成比の測定方法における工程4でいう「標準遺伝子」とは、スタンダードとなり得る遺伝子という意味である。例えば、好適に使用できる遺伝子として、標的遺伝子を精製して得た遺伝子DNAを挙げることができる。
本発明は、2種の遺伝子の構成比を測定する方法である。
2種の遺伝子のうち、一方の遺伝子を、均一溶液系プローブにて特異的に検出する。しかしながら、未知試料の場合、2種遺伝子のトータル数は、サンプルによって異なるため、例え遺伝子構成比が同じであっても、光学的キャラクター変化量は一致しない(図1参照)。よって、一方の遺伝子由来の光学的キャラクター変化量からは、遺伝子構成比を正確に測定することは実質的に不可能である。しかしながら、トータルの遺伝子量が一定であれば、均一溶液系プローブの光学的キャラクターの変化量は、検出する遺伝子の構成比が大きい場合、相対的に大きく、逆に小さい場合は、相対的に小さくなる。この場合、蛍光変化量は、遺伝子構成比と相関がある。この相関を検量線として利用することで、未知試料に含まれる2種の遺伝子間の構成比を求めることができると考えられる(図2参照)。
本発明は、測定系の2種類の遺伝子を、蛍光色素で標識された1種または2種以上の均一溶液系核酸プローブを用いて増幅させ、測定系の光学的キャラクター変化量を測定し、当該変化量に基づいて、遺伝子構成比を測定する定量的PCR方法において、以下の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする遺伝子構成比の測定方法である。以下、工程別に説明する。
工程1は、2種類の遺伝子のどちらか一方に相補し、蛍光色素で標識された1種または2種以上の均一溶液系核酸プローブを当該相補する遺伝子にハイブリダイズさせ、当該遺伝子を増幅させ、増幅過程中に発生するその光学的キャラクター変化量を測定し、得た当該変化量に基づいて遺伝子の増幅過程をモニタリングする工程である。
蛍光色素で標識された1種または2種以上の均一溶液系核酸プローブとしては、プライマーとして使用できるものでもよく、単に核酸プローブとして使用できるものでもよい。遺伝子の増幅過程をモニタリングできるものであればよい。このモニタリングで2種の遺伝子の一方(均一溶液系核酸プローブと相補した遺伝子)の量に対応した光学的キャラクター変化量が測定できる。
また、核酸プローブとしては、蛍光消光核酸プローブ、蛍光消光核酸プライマーを用いることが好ましく、具体的には、QProbe、QPrimer(J−Bio21(株)社製)が好適に用いられる。
核酸を増幅する方法は、前記した何れでもよいのであるが、好適にはPCR方法である。
この工程は、2種の遺伝子のトータル量に対応した光学的キャラクター変化量を測定するための工程である。
工程2で使用する均一溶液系核酸プローブは、プライマーでも、単に核酸プローブでもよく、単に2種の遺伝子に相補できるものであればよい。
核酸プローブとしては、蛍光消光核酸プローブ、蛍光消光核酸プライマーを用いることが好ましく、具体的には、QProbe、QPrimer(J−Bio21(株)社製)が好適に用いられる。
この工程で、2種の遺伝子のトータル量に対応した正確な光学的キャラクター変化量が測定される。
具体的には実施例に詳しく記載されている。
具体的には実施例に詳しく記載されている。
この工程で、実施の試料についての遺伝子構成比が測定される。
上記各工程は、上記の順に行わなくともよい。適当に組み合わせて一緒に行ってもよい。
すなわち、前述した遺伝子構成比測定方法を使用するならば、標的遺伝子の絶対量を測定(定量)することができる。すなわち、前記の2種遺伝子のうち、一方を内部標準遺伝子とし、他方を標的遺伝子として、標的遺伝子が含まれているか或いは含まれていない未知試料に内部標準遺伝子を、既知濃度宛を測定系に添加し、前記の遺伝子構成比測定方法の工程を実施する。結果として、標的遺伝子と内部標準遺伝子の構成比が測定される(工程a)。内部標準遺伝子が既知量であるので、標的遺伝子の絶対量を測定できることになる(工程b)。
1)既知のゲノムサイズおよびゲノムコピーを有するDNAゲノム(A)および既知のゲノムコピー数を有し、未知ゲノムサイズの標的DNAゲノム(B)の混合液を用いて、前記の遺伝子構成比測定方法により、遺伝子構成比を測定する工程。
2)Aのゲノムサイズと、工程1)で得られた遺伝子構成比とから、Bのゲノムサイズを測定する工程。
なお、本実施例において、使用した蛍光色素で標識された均一溶液系プローブ類は、全てJ−Bio21株式会社製(つくば市)のものである。
蔵田らによって開発された蛍光消光するプローブ(QProbe)は、遺伝子増幅用のプライマー(QPrimer)として、用いることが可能であり、このQPrimerを用いてPCRを実施し、その蛍光変化量から、増幅産物量をリアルタイムに定量することが可能であることが報告されている(Shinya Kurata, Takahiro Kanagawa, Yukio Magariyama, Kyoko Takatsu, Kazutaka Yamada, Toyokazu Yokomaku, and Yoichi Kamagata, APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY, Dec. 2004, p.7545−7549)。よって、このQPrimerを用いることにより、その蛍光変化量から、産物量がある一定量に達するサイクル数を特定化することができる。このサイクルにおいて、QPrimerとは異なる蛍光色素でラベルされた均一溶液系プローブを用い、一方の遺伝子由来の蛍光変化量を求めることにより、遺伝子の構成比を定量することが可能であると考えられた(図3)。以下、その実施例について記す。
a.鋳型の調整
Escherichia coli(以下、E.coliという。) K12株とMicrolunatus phosphovorus(以下、M.phosphovorusという。) NM−1株のゲノムDNAを、Genomic−tip(キアゲン社製、Hilden、Germany)を用いて抽出した。これを鋳型として、16S rRNA遺伝子(16S rDNA)を、PCR法にて増幅した。プライマーは、pAおよびpHを使用した。得られた増幅産物は、GFX spin−column(アマシャムバイオサイエンス社製、Piscataway、NJ、USA)を用いて精製し、精製された産物は、Pico Green dsDNA定量キット(モルキュラープローブ社製、Eugene、OR、USA)を用いて定量した。産物濃度を、109コピー/μLに調整した後、これを用いて102コピー/μLまでの10倍毎の連続希釈系列を調整した。これら希釈系列を用いて、各希釈段階にて、M.phosphovorus NM−1株由来の増幅産物が、50%、25%、12.5%、6.25%、3.125%の割合で含まれる16S rDNA増幅産物混合液を作成した。
本実施例において、均一溶液系プローブ、プライマーは以下のものを用いた。
51−70F:5’−ACACATGCAAGTCGAACGGT−3’
380−360R:5’−CGCCCATTGTGCAATATTCCC−3’
380−360R−5T:5’−CGCCCATTGTGCAATATTCCC−3’
MP197−178R:5’−ATGTCGGCCGAGGTCGTATC−3’
51−70F(フォワードプライマー)、および380−360R(リバースプライマー)は、E.coliおよびM.phosphovorusの両方の16S rDNAを増幅できるよう設計した。
380−360R−5TはQPrimer−R5’(J−Bio21社製)であり、配列は380−360Rと同様で、5’末端はグアニンとの相互作用によって、蛍光消光する性質を有する蛍光色素にて標識されている。
MP197−178RはQProbe−G3’(J−Bio21社製)であり、M.phosphovorusに特異的なプローブであり、その3’末端は、上記の380−360R−5Tと蛍光波長の異なる蛍光消光性の色素で標識されている。
PCR過程の蛍光モニタリングには、リアルタイムPCR装置であるLight CyclerTM(ロッシュ社製、Mannheim、Germany)を用いた。反応溶液の組成等を以下の表1に示す。
2)工程2:蛍光色素で標識された均一溶液系プローブは、フォワードプライマーとして51−70F、リバースプライマーとして380−360R−5T(QPrimer−R5’)を使用した。これらのプライマーは、E.coliおよびM.phosphovorusの両方の16S rDNAを増幅できるよう設計した。反応条件等は前記に示した通りである。
3)工程3、4および5:具体的には、下記の「結果と考察」に示した。なお、工程4における標準試料として、M.phosphovorus由来の16S rDNAを用いた。
PD−PCRの比較対照として、QPrimerおよびQProbeを用いてリアルタイムPCR法を実施し、2種遺伝子間の構成比を求めた。トータルの16S rDNAは、QPrimer−R5’(380−360R−5T)を用いたリアルタイムPCR法(QPrimer−PCR法)にて実施した。QPrimer−PCR法の反応条件等は、QProbe−G3’を添加していないこと以外、PD−PCRと同様である。2種鋳型を含む溶液中のM.phosphovorusの16S rDNA量は、QProbe−G3’(MP197−178R)を用いたリアルタイムPCR法(QProbe−PCR法)にて測定した。QProbe−PCR法の反応条件等は、リバースプライマーとしてQPrimer−R5’ではなく、非標識の380−360Rを用いたこと以外、PD−PCRと同様である。検量線作成の際は、標準サンプルとして、M.phosphovorusの16S rDNAを、反応チューブ(反応容量:20μL)あたり、4×105、4×106、4×107コピー添加した。QPrimer−PCRおよびQProbe−PCRによる定量は、谷らによって報告されたCt(cycle of threshold)値をベースとした計算法(Journal of Agricultural and Food chemistry, 2005, Vol.53, No.7 p2535−2540)にて行った。
M.phosphovorus 16S rDNAの構成率(%)は、以下の計算式(1)により実施した。
M.phosphovorus 16S rDNA(%)=[N1/N2]×100 (1)
ここで、N1およびN2は、各々、M.phosphovorus 16S rDNAと、トータルの16S rDNAを表す。
a. 検量線作成
図4は、PD−PCRにおける各サイクルの蛍光消光率の変化(光学的キャラクターの変化量)を示す。図4のaは、工程2のものであり、図4のbは、工程1および工程4のものである。
蛍光波長:640nmで測定したQPrimer−R5’(QPrimer)の蛍光消光率(RRn)の変化を図4のaに、530nmで測定したQProbe−G3’(QProbe)の蛍光消光率(RGn)の変化を図4のbに、それぞれ示した。QPrimerの蛍光消光率の推移は、トータルの鋳型量(4×105(●)、4×106(△)または4×107(■))に依らず、ほぼ同じであった。トータルの16S rDNA遺伝子は、2種遺伝子間の構成比に関わらず、同じように増幅したと考えられた(図4のa)。一方、QProbeの蛍光推移は、M.phosphovorus由来の16S rDNA遺伝子の構成比およびトータル遺伝子量によって異なった(図4のa)。
図5で、各サイクルにおける消光率を比較した。同じRRn値(QPrimerの消光率)で比較した時、M.phosphovorus由来の16S rDNA遺伝子の存在比が高い場合、高いRGn値(QProbeの消光率)が測定された。RRn値に一定のスレショールドラインを設定し(以下、RRT(%)とする。)、そのスレショールド値に達するRGn値(以下、RGTとする。)を以下の計算式(2)より求めた。
ここでRGBとRGAはRGn値、RRBとRRAはRRn値であり、RGBとRRBはスレショールド値に達する直前のサイクルにおける値であり、RGAとRRAはスレショールド値に達した直後のサイクルにおける値である。
RGTが工程3でいう補正蛍光変化量である。
各PD−PCR反応におけるRRT値が12.5%時におけるRGT値を、M.phosphovorusの16S rDNA遺伝子構成率に対して、プロットした(図6a−c)。RGT値の回帰曲線は、トータル遺伝子量(4×105(図6a)、4×106(図6b)、4×107(図6c))に関わらず、RGT値はlog[M.phosphovorus%]に対して直線となった。3つの回帰曲線(図6a−c)は、ほとんど同一であったことから、図6dで示した同一の回帰曲線で表すことができると想定した。この回帰曲線が示す関係式は以下のように表すことができ、この関係式(3)は、トータル遺伝子量が4×104から4×109コピーの範囲で満足することが確認された。
当該関係式(3)が工程4の関係式である。
トータル遺伝子量が4×103、4×102コピーで、M.phosphovorusの16S rDNA遺伝子の絶対量が少ない時(トータル遺伝子量が2000コピーの時125コピー、トータル遺伝子量が200コピーの時12.5コピー)は、この関係式(3)に当てはまらなかった。よって、今回実施したPD−PCRのモデル系においてはトータル遺伝子量が4×104〜4×109コピー、大腸菌に対して、M.phosphovorus 16S rDNA遺伝子が3.125%〜50%の構成率において、同一の検量線を用いて定量可能であると考えられる(図6d)。
PD−PCRおよびCt値をベースとした一般的なリアルタイムPCR法による構成比測定の結果を、図7に示す。Ct値をベースとした測定では、幾つかのサンプルにおいて(トータル遺伝子量が4×106コピーで、M.phosphovorusの16S rDNA遺伝子構成率が3.125%から6.25%の場合と、トータル遺伝子量が4×105コピーである全てのサンプル)、測定結果が示されていないが、それはM.phosphovorusの16S rDNA遺伝子の測定が、測定範囲より低かったためである。M.phosphovorusの構成率が50%の場合、どちらの方法でも、1.1%から8.0%のエラー率で、正確に推定することができた。しかしながら、M.phosphovorusの構成率が低い場合、M.phosphovorusの構成率は、実際よりも高く見積もられてしまった(図7中のクロカラム、グレーカラム)。PD−PCRの場合、標準偏差(%)は1.1〜20.1%(平均:9.8%)であったが、Ct値をベースとしたリアルタイムPCR法の場合、7.5〜55.0%(平均:9.8%)であった。谷らは、QProbe/QPrimer−PCR法の正確性が、TaqMan法と同等であることを確認している(Journal of Agricultural and Food chemistry, 2005, Vol.53, No.7 p2535−2540)。以上より、遺伝子構成比を求める場合、PD−PCRは、QProbe/QPrimer−PCRやTaqMan法などCt値をベースとしたリアルタイムPCR法よりも、正確であることが示された。
本方法の応用として、M.phosphovorusのゲノムサイズをPD−PCRにより定量した。E.coli K12株は、16S rDNAがゲノム中に7コピー存在し、ゲノムサイズも4.64Mbpであることが分かっている。本発明者らは、M.phosphovorus NM1株の16S rDNA遺伝子のゲノムあたりのコピー数が、1コピーであることを明らかにしたが、そのゲノムサイズはまだ明らかとなっていなかった。ゲノムあたりの16S rDNA遺伝子のコピー数をベースとして、Ct値をベースとしたリアルタイムPCR法により16S rDNA遺伝子のコピー数を見積もることや、PD−PCRにより、ゲノムサイズが既知の生物をリファレンスとして、16S rDNA遺伝子のコピーの構成率を見積もることによって、ゲノムサイズが未知の生物についても、そのゲノムサイズを見積もることが可能であると考えられる。
Claims (6)
- 測定系の2種類の遺伝子を、蛍光色素で標識された1種または2種以上の均一溶液系核酸プローブを用いて増幅させ、測定系の光学的キャラクター変化量を測定し、当該変化量に基づいて、遺伝子構成比を測定する定量的PCR方法において、以下の工程(1)〜(5)を含むことを特徴とする遺伝子構成比の測定方法。
(1)2種類の遺伝子のどちらか一方に相補し、蛍光色素で標識された、1種または2種以上の均一溶液系核酸プローブを当該相補する遺伝子にハイブリダイズさせ、当該遺伝子を増幅させて増幅過程において発生するその光学的キャラクター変化量を測定し、得られた変化量に基づいて遺伝子の増幅過程をモニタリングする工程。
(2)2種類の遺伝子に同時に相補し、蛍光色素で標識された、前記工程(1)のものとは異なった1種または2種以上の均一溶液系核酸プローブを、2種類の遺伝子にハイブダイズリさせ、当該2種類の遺伝子を増幅させ、増幅過程において発生する光学的キャラクター変化量を測定し、得られた変化量に基づいて、当該2種類の遺伝子の増幅過程をモニタリングする工程。
(3)前記工程(2)の光学的キャラクター変化量が、一定値に達したときの前記工程(1)の光学的キャラクター変化量(以下、補正蛍光変化量と呼ぶ)を測定する工程。
(4)2種類の標準遺伝子を種々な構成比で含む複数の試料について、工程(1)〜(3)を実施し、各標準試料における補正蛍光変化量を測定し、当該測定値と遺伝子構成比との関係式を求める工程。
(5)未知試料について工程(1)〜(3)を実施し、各未知試料における補正蛍光変化量を測定し、当該測定値と、工程(4)で得られた関係式より、未知試料における遺伝子構成比を測定する工程。 - 2種類の遺伝子を標的遺伝子および内部標準遺伝子として、内部標準遺伝子を未知試料に既知量添加して得た試料について、次の工程(a)〜(b)を実施して、未知試料中の標的遺伝子量を測定することを特徴とする標的遺伝子量測定方法。
(a)前記請求項1に記載の工程(1)〜(5)を実施して、標的核酸と内部標準遺伝子との構成比を測定する工程。
(b)当該構成比と内部標準遺伝子の添加量から標的遺伝子量を測定する工程。 - 工程(1)および工程(2)のいずれか一方若しくは双方の均一溶液系核酸プローブが、蛍光消光核酸プローブである請求項1に記載の遺伝子構成比測定方法。
- 工程(1)および工程(2)のいずれか一方若しくは双方の均一溶液系核酸プローブが、蛍光消光核酸プライマーである請求項1に記載の遺伝子構成比測定方法。
- 遺伝子増幅法が、PCR法である請求項1に記載の遺伝子構成比測定法。
- 以下の工程1)〜2)を含むことを特徴とするゲノムDNAのゲノムサイズを測定する方法。
1)既知のゲノムサイズおよびゲノムコピーを有するDNAゲノム(A)および既知のゲノムコピー数を有し、未知ゲノムサイズの標的DNAゲノム(B)の混合液を用いて、前記請求項1に記載の遺伝子構成比測定方法により、遺伝子構成比を測定する工程。
2)Aのゲノムサイズと、工程1)で得られた遺伝子構成比とから、Bのゲノムサイズを測定する工程。
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