JP4975349B2 - マレイン化熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、マレイン化熱可塑性樹脂およびその製造方法に関する。更に詳しくは、数平均分子量が15000〜100000の主鎖に二重結合を有する樹脂が0.1〜3重量%マレイン化されたマレイン化熱可塑性樹脂であって、マレイン酸基の少なくとも一部がエステル化されているマレイン化熱可塑性樹脂、および、主鎖に二重結合を有する樹脂と、無水マレイン酸とを無水マレイン酸に対して300〜3000モル%のアルコールの存在下に反応させるマレイン化熱可塑性樹脂の製造方法に関する。
二重結合を有する炭化水素系ポリマーを無水マレイン酸などで変性して得られるマレイン化熱可塑性樹脂は、その硬化塗膜が強靭性、耐水性に優れるため水系塗料の原料や金属の腐食防止塗料の原料として利用されている。また、二重結合を有する炭化水素系ポリマーが樹脂に弾性を付与することに加え、マレイン化することでマレイン化前の炭化水素系ポリマーに比し、極性樹脂に対する相容性や接着性に優れるため、樹脂改質剤として種々の分野で使用されている。
このようなマレイン化熱可塑性樹脂及びその製造方法については、従来より種々のものが知られている。例えば、特許文献1にはマレイン化された合成シス−1,4−ポリイソプレンゴムの製造方法が、特許文献2にはブタジエン低重合付加物の製造方法が、特許文献3には淡色な無水マレイン酸付加ブタジエン低重合体およびその製造方法が、特許文献4には共役ジオレフィン重合体または共重合体に対して5〜30重量%のマレイン酸を付加し、1価アルコールの存在下で部分エステル化させた樹脂組成物が、金属と強固に接着し、金属の腐食防止に優れることが開示されている。但し、マレイン酸の付加率が5重量%より少ない場合は、このような優れた効果は発現しないと記載されている。
一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある)などのビニルアルコール系樹脂は、その優れたガスバリア性、透明性などの特徴から、食品容器などに広範に使用されている。しかしながら、EVOHは比較的柔軟性に乏しいため、他の樹脂をブレンドするなどして力学的特性を改善することが一般的に行われている。
特開昭49―121892号公報 特開昭56−149403号公報 特開昭53−134895号公報 特開昭54−008132号公報
しかしながら、これら従来のマレイン化熱可塑性樹脂をEVOHの力学特性改善に用いることは困難であった。まず、一般にこれらのマレイン化熱可塑性樹脂は、安定化剤などを添加しなければ、保存中に粘度の増加、ゲル化する傾向があり、この傾向は、特に主鎖炭素に存在する水素以外の置換基量が小さい樹脂の場合、あるいはマレイン化率が大きい場合その傾向は著しくなる。ところが、例えば上記EVOHなどは食品用途に多く使用されるが、保存中の増粘を防止するために安定化剤を添加すると、この安定化剤がブリードアウトして食品に影響を与える可能性があった。従って、このような用途に用いるためには安定化剤等の添加物が存在しなくても安定であることが望まれる。
特許文献1に開示されている方法で製造されたマレイン化熱可塑性樹脂を通常の方法でEVOHに溶融混合した場合、ゲル化物が発生し、外観不良が発生しやすい。これは、樹脂の分子量或いはマレイン化率が比較的高い上、製造の際に部分的に架橋が発生しているためと推定される。一方、上記のような問題点が発生しないようマレイン化率を低下させると、EVOHとの十分な相容性が得られず、脆性の改善効果が得られにくい。
特許文献2、3に開示されているマレイン化熱可塑性樹脂は、数平均分子量が2000以下と小さいため、少量の添加ではEVOHの力学特性改善の効果が十分でなく、かといって多量に添加するとEVOH本来の特性であるガスバリア性を低下させ、成形中のゲル化を引き起こす傾向があった。
さらに、マレイン化熱可塑性樹脂は、その製造の際にもゲル化が起こりやすいため、製造が困難である。特に主鎖炭素にメチル基を有さず、主鎖以外に存在する二重結合も全二重結合の10モル%以下である1、4−ポリブタジエンのように、主鎖の炭素にあまり置換基を有しない樹脂をマレイン化する場合にはその傾向が著しく製造が非常に困難である。
例えば、特許文献1では、水を適量添加することによりゲル化を防止する方法が、特許文献3および4には水やアルコールを添加する方法開示されている。しかし、これらの方法では、水やアルコールをあまり多量に添加すると樹脂の溶解度が低下してマレイン化反応自体が妨げられるため、水やアルコールの添加可能な量に限界があり、その結果ゲル化するところまでは至らないものの、製造時にある程度の高分子量体が生成する傾向があり、製造された樹脂の保存安定性も良くなかった。
また、特許文献2においては、ゲル化を防止するためにフェノール系化合物をかなり添加しているが、この方法では添加物が樹脂に残留するため、食品用途などに使用する場合、これら添加物のブリードアウトが問題になる可能性がある。
本発明の目的は、EVOH等のビニルアルコール系ポリマーに添加した場合に外観不良やガスバリア性などの特性の低下を引き起こさず、力学的特性、特に脆性を改善する効果があって、かつ保存安定性が良好でありブリードアウトなどの問題のないマレイン化熱可塑性樹脂を提供することである。
また、本発明のもう一つの目的は、このようなマレイン化熱可塑性樹脂をゲル化や着色を抑え、不純物を残さず効率よく製造することである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定量のアルコールの存在下に、主鎖に二重結合を有する樹脂をマレイン化することにより、ゲル化などの問題無くマレイン化熱可塑性樹脂を製造できることを見出した。さらにこのようにして得られた、マレイン酸基がエステル化されたマレイン化熱可塑性樹脂は、保存安定性が良好であり、EVOHに添加した場合に力学特性の改善効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、エチレン−ビニルアルコール共重合体に対してマレイン化熱可塑性樹脂を0.01〜20重量%含有する熱可塑性樹脂組成物であって;
1)前記マレイン化熱可塑性樹脂は、数平均分子量15000〜100000の主鎖に二重結合を有する樹脂が、マレイン化熱可塑性樹脂全体量に対するマレイン酸単位の量の酸無水物換算の重量が0.1〜3重量%となる範囲でマレイン化されたマレイン化熱可塑性樹脂であって、マレイン酸基の少なくとも一部がエステル化されているマレイン化熱可塑性樹脂であり;
2)前記主鎖に二重結合を有する樹脂において、含まれる二重結合のうち、主鎖以外に存在する二重結合が、該主鎖に二重結合を有する樹脂の全二重結合の10モル%以下であり、
3)前記主鎖に二重結合を有する樹脂が、分岐を有さず、主鎖に置換基を有さない樹脂であり;かつ
4)マレイン酸基のエステル化率が80モル%以上である;
熱可塑性樹脂組成物である。
本発明により、保存安定性が良好で、成形時のゲル化、製品の外観不良、製品からのブリードアウトなどの問題なくEVOHなどのビニルアルコール系樹脂、その他極性反応基を有する樹脂の脆性を成形後の二重結合が緩やかにラジカル架橋することで改善させることのできるマレイン化熱可塑性樹脂が提供される。
本発明の第一の発明は、数平均分子量が15000〜100000の主鎖に二重結合を有する樹脂がマレイン化されたマレイン化熱可塑性樹脂であって、マレイン酸基の少なくとも一部がエステル化されているマレイン化熱可塑性樹脂である。
本発明のマレイン化熱可塑性樹脂は、数平均分子量が15000〜100000の、主鎖に炭素−炭素二重結合を有する樹脂(以下、樹脂(A)と記載することがある)がマレイン化されてなる。
樹脂(A)の分子量が15000以下では、EVOHなどに混合して力学的特性を改善する効果が小さく、また、マレイン化熱可塑性樹脂が製品からのブリードアウトの危険が増大する。一方、樹脂(A)の分子量が100000以上の場合、EVOHと混合した場合の相容性が悪化する傾向があり、相容性を改善するためにマレイン化率を高くすれば架橋などによるゲル化が起きやすくなる。また、樹脂(A)の分子量が100000より大きい場合、マレイン化反応中のゲル化や高分子量化も起こりやすくなるため、製造の困難さも増大する。脆性を改善する効果の観点から分子量は20000以上が好ましく、30000以上がより好ましい。一方、成形時の外観不良が起こりにくくする観点からは分子量は90000以下が好ましく、80000以下がさらに好ましい。
樹脂(A)としては、炭化水素系樹脂が使用される。ここでいう炭化水素系樹脂とは、主として炭素と水素からなる樹脂であるが、本発明の効果を阻害しない範囲で、エーテル結合、エステル基、アミド結合などの官能基を有していても差し支えない。通常は、マレイン化熱可塑性樹脂の安定性が高いこと、EVOHなどの基材樹脂や基材樹脂中の添加物などとの反応や相互作用を避ける観点から、上記のような官能基を有しない炭化水素樹脂が使用される。
また、マレイン化熱可塑性樹脂がEVOHの力学物性改善を目的としてEVOHとの組成物として使用される場合、EVOH本来のガスバリア性を低下させにくいという面からは、樹脂(A)は分岐のないものが好ましく、主鎖に置換基を有しないものが好ましい。
樹脂(A)はEVOHなどのビニルアルコール系樹脂、その他極性反応基を有する樹脂の脆性を成形後の二重結合が緩やかにラジカル架橋することで改善させる目的から、主鎖に二重結合を有する。樹脂(A)の炭素−炭素二重結合は主鎖以外、即ち主鎖から分岐した部分に存在しても差し支えないが、マレイン化熱可塑性樹脂をEVOHと混合した場合にEVOHのガスバリア性等の特性を損ねない、ゲル化の可能性を低くする観点からは、主として主鎖に存在することが好ましい。具体的には、主鎖に二重結合を有する樹脂において、含まれる二重結合のうち、主鎖以外に存在する二重結合が、該主鎖に二重結合を有する樹脂の全二重結合量の10モル%以下であることが好ましい。
また、マレイン化を実施しやすくする観点から、樹脂(A)の主鎖に含まれる二重結合のアリル位炭素には少なくとも1個の水素原子が結合していることが必要である。
このような観点から、樹脂(A)は、下記構造式(I)及び構造式(II)で示される構造単位のうち少なくとも一方を含むことが好ましく、主鎖に含まれる二重結合の実質的にすべてが下記構造式(I)及び構造式(II)で示される構造のいずれかであることがさらに好ましい。
Figure 0004975349
Figure 0004975349
本発明に使用できる樹脂(A)としては、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどのジエン系ポリマー;スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体のようなジエン系共重合体、ポリオクテニレン、シクロオクタジエンの開環メタセシス重合体のようなメタセシス重合体などが例示できる。
上記の樹脂のうち、本発明のマレイン化熱可塑性樹脂を構成する樹脂(A)として好ましい樹脂としては1、4−ポリブタジエン、二重結合を含む環状炭化水素の開環メタセシス重合体が例示できる。これらの中でも、1、4−シスポリブタジエン、ポリオクテニレン、シクロオクタジエンの開環重合物が、製造・入手が容易である点などから特に好適に使用される。
本発明に用いられる市販の1,4−シスポリブタジエンとしては、(株)クラレ製のLIR−300などが例示できる。また、1,4−シスポリブタジエンのコポリマーとしては,(株)クラレ製のLIR−390などが例示できる。
本発明のマレイン化熱可塑性樹脂は、上記樹脂(A)がマレイン化されており、マレイン化によって導入されたマレイン酸基の少なくとも一部がエステル化されている。
ここで、マレイン化とは、無水マレイン酸及び無水マレイン酸と同様の反応性を有する酸無水物(以下、酸無水物(B)と記することがある)あるいはその誘導体が付加することを意味し、従ってマレイン化された、とは、主鎖に二重結合を有する樹脂のアリル位に上記酸無水物(B)あるいはその誘導体の構造単位が結合していることをいう。
酸無水物(B)としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、2,3−ジメチル無水マレイン酸、ブロモ無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸、ジクロロ無水マレイン酸、無水クロトニック酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、無水グルタコン酸などが上げられる。これらの中で無水マレイン酸が最も代表的なものである。
本発明のマレイン化熱可塑性樹脂のマレイン化率、即ち、マレイン化熱可塑性樹脂重量に対する酸無水物(B)単位の量に特に制限はないが、EVOHと混合、溶融成形する際にゲル化等の問題を引き起こさない観点からは、マレイン化率は3重量%以下、好ましくは2.5重量%以下である。一方、樹脂の相容性を改善するためには、一定以上のマレイン化率である必要があり、マレイン化率は0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることがさらに好ましい。
なお、本発明のマレイン化熱可塑性樹脂に含まれるマレイン酸単位の量は、酸価測定によって定量される。このマレイン酸単位の量を酸無水物の重量に換算し、マレイン化熱可塑性樹脂全重量で除したものがここでいうマレイン化率である。
本発明においては、マレイン酸基の少なくとも一部がエステル化されている。マレイン酸基の少なくとも一部がエステル化されていることにより、マレイン化熱可塑性樹脂の保存安定性が著しく改善される。また、マレイン酸基がエステル化されていても本発明のマレイン化熱可塑性樹脂はEVOHなどと良好な親和性を有する。
マレイン酸基をエステル化する方法に特に制限はなく、一旦樹脂(A)に酸無水物(B)を反応させた後に、アルコールと反応させても良いが、後で述べる本発明の方法あるいはそれに準ずる方法でマレイン化反応とエステル化反応を同時に実施することが好ましい。
マレイン酸基をアルコールの存在下でエステル化させた場合、酸無水物基が開環し、1つのマレイン酸基に1個のアルコールが付加して1個のエステル基と1個のカルボン酸基を有するいわゆるハーフエステル構造を形成する場合と、2個のアルコールが付加して2個のエステル基を有するジエステル構造を形成する場合がある。本発明においてエステル化された、という場合酸無水物に由来するカルボン酸基の両方がエステル化されていても差し支えないが、通常は上記の合成上の理由、および樹脂との親和性を保ちかつゲル化等の問題が起こりにくくする観点から、このハーフエステル構造が好ましい。
本発明においては、マレイン酸基の少なくとも一部がエステル化されていればよく、マレイン酸基に対するエステル基の比率に相当するエステル化率は種々の値をとり得るが、EVOH等のビニルアルコール系樹脂、その他極性反応基を有する樹脂とブレンドした場合にゲル化等の問題を引き起こさないためにはエステル化率は80モル%以上であることが好ましい。これらの構造の比率は製造方法により異なるが、エステル化率が180モル%を超えるとEVOH等とブレンドした場合に相溶性が悪化するため好ましくない。より好ましいエステル化率は150モル%である。さらには実質的にマレイン酸基がすべてハーフエステル構造を有していることが好ましい。ここでいう実質的にすべてハーフエステル化されているとはエステル化率が95モル%〜105モル%であることをいう。
ここで、エステル化されたマレイン酸基のエステルの種類に特に制限はないが、エステル部分を形成するアルコール単位としては、アルコール性水酸基との反応性を有しないものが好ましい。アルコール単位としては、1価のアルコールであるメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコールなどの鎖状脂肪族アルコール;シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノールなどの環状脂肪族アルコール;ベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、2−フェニルプロパノールなどの芳香族アルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールモノアセテート、ポリエチレングリコールモノアセテートなどのグリコールエステル;などに由来するもの、2価のアルコールであるエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類あるいはグリコール類を重合させたポリグリコール類;などが上げられる。これらの中でもマレイン化熱可塑性樹脂とEVOH等との親和性の面から、炭素数5以下の1価アルコール、即ちメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール、アミルアルコールが好ましい。エステルはこれらアルコール単位のうち1種だけから構成されていてもよいし、2種以上から構成されているものを含んでいてもよい。
以下、本発明のもう一つの発明である、マレイン化熱可塑性樹脂の製造方法について説明する。
本発明のマレイン化熱可塑性樹脂の製造方法は、主鎖に二重結合を有する樹脂と、無水マレイン酸とを無水マレイン酸に対して300〜3000モル%のアルコールの存在下に反応させることを特徴とする。
ここでいう無水マレイン酸とは、無水マレイン酸そのものだけでなく、上記の酸無水物(B)をも包含する。
これら酸無水物の使用量は、目的のマレイン化率に応じて決定すればよいが、前記のマレイン化熱可塑性樹脂に必要な条件を満たすためには、好ましくは樹脂(A)に対し0.1〜3重量%使用される。反応への導入形態は、塊状、顆粒状、粉末状の何れの形態で導入しても良いが、使用する溶媒、或いは共存させる水、アルコールに溶解、分散して導入することが出来る。
主鎖に二重結合を有する樹脂としては、既に記した樹脂(A)が使用できる。
本発明において用いられるアルコールとしては、自身がアルコールと反応する官能基や、無水マレイン酸が付加できる部分、即ち分子内にアリル位水素を有する二重結合などを有するものでなければ特に制限はなく、通常カルボン酸をエステル化できるものであれば使用できる。このようなアルコールとしては、上記マレイン酸エステルを構成するアルコール単位として挙げたアルコールのうち1種、あるいは2種以上が使用できるが、製造されたマレイン化熱可塑性樹脂のゲル化などを防ぐ観点からは、1価のアルコールが好ましい。また、反応後のアルコールの除去など操作の容易さ、製造されたマレイン化熱可塑性樹脂のビニルアルコール系樹脂との親和性などの点から、好ましいアルコールとして、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、1−ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール等の飽和炭化水素系アルコールを使用することが出来る。
これらの中で、反応後に樹脂組成物から除去が容易である点からは、アルコールが沸点100℃以下の飽和脂肪族アルコールであることが好ましい。このようなアルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノールが上げられる。
本発明の方法におけるアルコールの使用量は無水マレイン酸に対して300モル%以上、3000モル%以下である。アルコールの使用量がこれより小さいと、特にマレイン化率の高いものを製造しようとする場合ゲル化が起こりやすくなる。この点から、アルコール使用量は400モル%以上が好ましい。一方、アルコール使用量が多すぎれば樹脂の溶解性が悪くなり反応効率が低下する。このような観点から、アルコールの使用量は好ましくは2000モル%以下、より好ましくは1000モル%以下である。
通常、このような多量のアルコールを共存させて反応を実施すると、特許文献3などにも記載されているとおり、無水マレイン酸のエステル化が競争的に進行し、反応性が低下するため、マレイン化率を上げ難くなる傾向がある。本発明においては、樹脂と無水マレイン酸を反応させるにあたり、さらにアルコール以外の有機溶媒を共存させることにより、アルコールの存在下においても反応性を大幅に高めることができる。
本発明において用いられるアルコール以外の有機溶媒としては、マレイン化反応を阻害しないものであればよく、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルエーテル、アニソール等のエーテル系溶媒、メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸−n−アミル等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール誘導体類、四塩化炭素、1,1,1−トリクロロエタン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等のラジカル反応に対し活性を有さない溶媒の一種又は二種以上が用いられる。残存有機溶媒の環境への影響、取扱いの容易さ、溶解度などを考慮すると、炭化水素系の溶媒、例えばトルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンの使用が好ましく、目的のマレイン化ポリブタジエン重合体への反応性、溶解度を考慮すると、環状脂肪族化合物、特にシクロヘキサンが好ましい。
上記アルコール以外の有機溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、溶解するポリブタジエンの流動性が十分発揮できる量であればよい。よって、主鎖に二重結合を有する樹脂の構造やの分子量にもよるが、一般的に、主鎖に二重結合を有する樹脂が、反応溶液全体に対して0.1〜50重量%、好ましくは3〜30重量%となるように溶媒を使用する。
本発明における反応温度は、通常、100℃以上である。特に120℃以上であることが、重合体の流動性を維持し、マレイン化が均質に進行するため好ましい。一方、あまり高温で実施すると副反応が増大する傾向があるため、通常300℃以下、好ましくは250℃以下である。
上記反応温度においては使用する溶媒によっては溶媒の蒸気圧が大気圧を超えるため、その場合は反応は加圧下にて実施する。また、溶媒の蒸気圧にかかわらず、窒素などの不活性ガスを用いて溶媒の蒸気圧以上に加圧することによってマレイン化反応速度を向上させることができる。従って、反応時の圧力は使用する溶媒、および溶解濃度にもよるが、0.1〜4MPaの範囲で実施するのが好ましく、0.1〜1.5MPaの範囲が実用上さらに好ましい。
本発明においては、必要に応じて、触媒としての有機過酸化物を使用する。本発明において用いられる触媒の有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロル過酸化ベンゾイル、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジクミルパーオキサイド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類;t−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーアセテート、ジ−t−ブチルパーフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;ジ−t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、α−フェニルエチルヒドロパーオキサイド、シクロヘキセニルヒドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類などが一種又は二種以上の混合物を用いることが出来る。これらの使用量は樹脂(A)に対して0.0001〜1重量%、好ましくは0.001〜0.5重量%が適当である。
また、反応時又は反応終了後、反応系に2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、p−メトキシキノン、ハイドロキノン、4,4' −チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、N,N' −ジフェニル−p−フェニレンジアミン等公知の重合防止剤を添加しても良い。
本発明のマレイン化熱可塑性樹脂は一例としてEVOHとの樹脂組成物として使用される。本発明に用いられるEVOHのエチレン比率10モル%未満ではマレイン化熱可塑性樹脂との相溶性が損なわれることからエチレン比率は10〜95モル%の範囲が好ましく、EVOHのガスバリア性を損なわないことも考慮するとエチレン比率は10〜60モル%の範囲がより好ましい。
またEVOHに熱安定剤や滑剤などの化合物や酸無水物と反応する基をEVOHのビニルアルコール比率以上に含有しない範囲で本発明のマレイン化熱可塑性樹脂とEVOHとの樹脂組成物に添加しても良い。
EVOHに対するマレイン化熱可塑性樹脂の添加量はマレイン化熱可塑性樹脂が0.1重量%未満ではEVOHの改質効果がなく、40重量%より多いと樹脂組成物の透明性や剛性が損なわれることから0.1〜40重量%の範囲が好ましく、EVOHのガスバリア性とマレイン化熱可塑性樹脂の効果を考慮すると0.1〜30重量%がより好ましい。
以下に、本発明を実施例及び比較例により、更に具体的に説明する。しかし、本発明の範囲は、これらの実施例により何ら制限を受けるものではない。
以下の実施例において、マレイン化熱可塑性樹脂のマレイン酸基の定量、エステル化率の定量、分子量分布の定量は以下の方法で実施した。
[マレイン酸基の定量]
試料400mg分を80mLのテトラヒドロフラン(以下THFと略記することがある。)に溶解させ、補正付き0.05モル/L水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定し、滴定値から酸価、およびマレイン化率を下記式にて求めた。但し、下記式中の定数56.1は水酸化カリウムの分子量、定数98.1は無水マレイン酸の分子量である。マレイン化の際に無水マレイン酸以外の上記した酸無水物(B)を使用するときには適宜対応する酸無水物の分子量を下記式に代入して計算する。
酸価(mgKOH/g)
=([滴定値(mL)]−[ブランク値(mL)])×56.1×0.05×[水酸化カリウムのエタノール溶液の補正値]÷[質量(mg)]
マレイン化率(重量%)
=[酸価(mgKOH/g)]÷56.1×98.1÷1000×100÷2
[エステル化率の定量]
フーリエ変換方式赤外吸収測定装置FT−IRの石英セルに粘性液体状の試料を希釈せず直接塗布し、透過法にて測定した。得られたIRのカルボン酸基に由来する吸収率のピーク(1710cm−1)高さをx、エステル基に由来するピーク(1740cm−1)の高さをy、酸無水物基に由来するピーク(1780cm−1)の高さをzとしたとき、以下の式に従ってエステル化率を計算した。
エステル化率(モル%)=100×2y/(x+y+z)
[分子量分布の定量方法]
試料10mgを液体クロマトグラフィー用THF10mLに溶解させ、その溶液を0.45μmフィルターに通して測定用試料を調整した後、液体クロマトグラフィー用THFにて測定した。分子量は、分子量が規定されたポリスチレンを同手法にて測定した値から別途作成した検量線から求めた。
[−40℃におけるノッチ付きIzod衝撃強度の測定方法]
JIS規格K7110に基づいて測定を行なった。作成した試験片を−40℃条件下で7日間保管した後、衝撃強度測定器により衝撃強度を測定した。
1,4−シスポリブタジエン((株)クラレ製 LIR−300、数平均分子量(以下Mnと記す)50000、1,4−結合含有量=90モル%) 30g、無水マレイン酸0.3g、シクロヘキサン200g、エタノール3gを500mLオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気にした後、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1gを加え攪拌しながら140℃、10kgf/mで3時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィー(以下、GCと記す)により分析した結果、未反応の無水マレイン酸は0.1重量%以下であった。次いで反応液中の溶媒を100℃にて留去させ、室温下で8時間真空乾燥し、無色透明のマレイン化シスポリブタジエン(試料1)30.3gを得た。試料1の酸価は11.4(半酸価、KOHmg/g)、マレイン化率は1.0重量%であった。
また、IRで測定したところ酸無水物ピークは認められず、無水マレイン酸のすべてがエステル化されており、試料1のマレイン基は実質的にすべてハーフエステル化されていたことがわかった。更に試料1の分子量分布をGPCにて分子量分布を測定した結果を図1に示す。図1に示すとおり、試料1には高分子量体の生成が見られなかった。加えて試料1は、30日間、空気下、室温中で保存しても粘度上昇がなく、保存安定性に優れていた。
上記試料1を必要量合成し、スクリュー径25mmφの二軸セグメント式押出機に、試料1を10重量部およびクラレ製エバールL101(エチレン含量27モル%、けん化度99.7モル%、含水フェノール中30℃における極限粘度1.1dL/g)90重量部を供給し、下記の条件で押出しペレット化を行った。
温度条件(℃):C1/C2/C3/C4/C5/ダイ=220/220/220/220/220/220
吐出量:2kg/h
スクリュー回転数:115rpm
得られたペレットを射出成型して、試験片を作成し、JIS規格K7110の方法に基づき衝撃強度測定器により衝撃強度を測定した。この試験片の−40℃におけるノッチ付きIzod衝撃強度は7kJ/mであった。
1,4−シスポリブタジエン((株)クラレ製 LIR−300、数平均分子量(以下Mnと記す)50000、1,4−結合含有量=90モル%) 30g、無水マレイン酸0.3g、キシレン200g、エタノール3gを1Lセパラブルフラスコに仕込み、窒素雰囲気にした後、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1gを加え攪拌しながら140℃で3時間反応させた。反応液をGCにより分析した結果、未反応の無水マレイン酸は0.1重量%以下であった。次いで反応液中の溶媒を100℃にて留去させ、室温下で8時間真空乾燥し、無色透明のマレイン化シスポリブタジエン30.3gを得た(試料2)。試料2の酸価は11.4(半酸価、KOHmg/g)、マレイン化率は1.0重量%であった。また、IRで測定したところ酸無水物ピークは認められず、無水マレイン酸のすべてがエステル化していた。得られたマレイン化シスポリブタジエンは、30日間保存しても粘度上昇がなく、保存安定性に優れていた。
上記試料2について実施例1と同様に−40℃におけるノッチ付きIzod衝撃強度を測定したところ6.8kJ/mであった。
ポリオクテニレン(Degussa社製 VESTENAMER 8012 Mn=90000、シス/トランス=20/80) 30g、無水マレイン酸0.3g、シクロヘキサン300g、エタノール3gを1Lオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気にした後、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1gを加え攪拌しながら140℃、10kgf/mで3時間反応させた。反応液をGCにより分析した結果、未反応の無水マレイン酸は0.1重量%以下であった。次いで反応液中の溶媒を100℃にて留去させ、室温下で8時間真空乾燥し、無色透明のマレイン化ポリオクテニレン30.3gを得た(試料3)。試料3の酸価は11.4(半酸価、KOHmg/g)、マレイン化率は1.0重量%であった。また、IRで測定したところ酸無水物ピークは認められず、無水マレイン酸のすべてがエステル化していた。得られたマレイン化ポリオクテニレンは、30日間保存しても粘度上昇がなく、保存安定性に優れていた。
シクロオクタジエンを有機金属触媒にて開環メタセシス重合させた分子量45000の樹脂30g、無水マレイン酸0.3g、シクロヘキサン200g、エタノール3gを1Lオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気にした後、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1gを加え攪拌しながら140℃、10kgf/mで3時間反応させた。反応液をガスクロマトグラフィー(以下、GCと記す)により分析した結果、未反応の無水マレイン酸は0.1重量%以下であった。次いで反応液中の溶媒を100℃にて留去させ、室温下で8時間真空乾燥し、無色透明のマレイン化ポリ(シクロオクタジエン)30.3gを得た(試料4)。試料4の酸価は11.4(KOHmg/g)、マレイン化率は1.0重量%であった。また、IRで測定したところ酸無水物ピークは認められず、無水マレイン酸のすべてがエステル化していた。得られたマレイン化ポリ(シクロオクタジエン)は、30日間保存しても粘度上昇がなく、保存安定性に優れていた。
[比較例1]
1,4−シスポリブタジエン((株)クラレ製 LIR−300、数平均分子量(以下Mnと記す)50000、1,4−結合含有量=90モル%) 300g、無水マレイン酸3gを1Lセパラブルフラスコに仕込み、窒素雰囲気にした後、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1gを加え攪拌しながら常圧にて140℃で6時間反応させ定量的にマレイン化シスポリブタジエンを得た(試料5)。試料5をキシレンに溶解させGCにより分析した結果、未反応の無水マレイン酸は0.1重量%以下であった。試料5の酸価は11.4(半酸価、KOHmg/g)、マレイン化率は1.0重量%であった。また、IRで測定したところ酸無水物ピークのみが観測され、エステル化、加水分解はされていなかった。しかし試料5は増粘、黄変していた。また、得られたマレイン化シスポリブタジエンの分子量分布をGPCにて測定した結果を図1に示す。図1に示すとおり試料5においては高分子量体の生成が見られた。試料5を窒素下、室温で30日間保存したところ、さらに増粘が見られ、保存安定性はよくなかった。
[比較例2]
Mn=390000の1,4−シスポリブタジエン(日本ゼオン社製、Nipol IR2200、1,4−結合含有量=90モル%以上)30g、無水マレイン酸0.3g、シクロヘキサン300g、エタノール3gを500mLオートクレーブに仕込み、窒素雰囲気にした後、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド0.1gを加え攪拌しながら140℃、10kgf/mで3時間反応させた。反応液をGCにより分析した結果、未反応の無水マレイン酸は0.1重量%以下であった。次いで反応液中の溶媒を100℃にて留去させ、室温下で8時間真空乾燥し、無色透明のマレイン化シスポリブタジエン(試料6)30.1gを得た。
試料6の酸価は11.4(半酸価、KOHmg/g)であり、マレイン化率は1.0重量%であった。また、試料6のマレイン酸基は定量的にエステル化されていた。このマレイン化シスポリブタジエンは、30日間保存しても硬化することがなく、保存安定性に優れていた。
試料6を実施例1と同様に−40℃におけるノッチ付きIzod衝撃強度を測定しようとしたが、得られた試験片には溶融状態における不均一に由来するブツが多量に発生していた。
[比較例3]
上記比較例2のMn=390000の1,4−シスポリブタジエンに代えて、分子量1600の1,4−シスポリブタジエン(日本ゼオン製 ポリオイル110 1,4−結合含有量=99モル%)を使用した点以外は比較例2と同様にマレイン化反応を実施し、無色透明のマレイン化シスポリブタジエン(試料7)30.1gを得た。
試料7の酸価は11.4(半酸価、KOHmg/g)であり、マレイン化率は1.0重量%であった。また、試料7のマレイン酸基は定量的にエステル化されていた。このマレイン化シスポリブタジエンは、30日間保存しても硬化することがなく、保存安定性に優れていた。
試料7を実施例1と同様に−40℃におけるノッチ付きIzod衝撃強度を測定しようとしたが、得られた試験片には試料の不均一性に由来するブツが発生しており、その値は2.4kJ/mで試料7を混合しないEVOHに比べそれほど向上していなかった。
[比較例4]
上記実施例1のエタノール量を3gから0.1gに代えてマレイン化反応を実施し、淡黄色透明のマレイン化シスポリブタジエン(試料8)30.3gを得た。
試料8の酸価は11.4(半酸価、KOHmg/g)であり、マレイン化率は1.0重量%であった。また、IRで測定したところエステル化率は21モル%であった。このマレイン化シスポリブタジエンは、30日間保存後には黄変がみられ、硬化した。
[比較例5]
上記実施例1の無水マレイン酸量を0.3gから1.8gに代え、更に無水マレイン酸量の変化に伴いエタノール、シクロヘキサン、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイドの量をそれぞれ6倍に変更してマレイン化反応を実施し、無色透明のマレイン化シスポリブタジエン(試料9)31.6gを得た。
試料9の酸価は67.7(半酸価、KOHmg/g)であり、マレイン化率は5.9重量%であった。また、試料9のマレイン酸基は定量的にエステル化されていた。このマレイン化シスポリブタジエンは、30日間保存しても硬化することがなく、保存安定性に優れていた。
試料9を実施例1と同様に−40℃におけるノッチ付きIzod衝撃強度を測定しようとしたが、得られた試験片にはブツが多量に発生した。
[参考例](EVOH単独でのIzod衝撃強度)
スクリュー径25mmφの二軸セグメント式押出機に、クラレ製エバールL101(エチレン含量27モル%、けん化度99.7モル%、含水フェノール中30℃における極限粘度1.1dL/gのEVOH)を供給し、下記の条件で押出しペレット化を行った。
温度条件(℃):C1/C2/C3/C4/C5/ダイ=220/220/220/220/220/220
吐出量:2kg/h
スクリュー回転数:115rpm
得られたペレットを−40℃におけるノッチ付きIzod衝撃強度を測定したところ、値は2kJ/mであった。
実施例1、および比較例1にて得られたマレイン化シスポリブタジエンの分子量分布曲線である。

Claims (2)

  1. エチレン−ビニルアルコール共重合体に対してマレイン化熱可塑性樹脂を0.01〜20重量%含有する熱可塑性樹脂組成物であって;
    1)前記マレイン化熱可塑性樹脂は、数平均分子量15000〜100000の主鎖に二重結合を有する樹脂が、マレイン化熱可塑性樹脂全体量に対するマレイン酸単位の量の酸無水物換算の重量が0.1〜3重量%となる範囲でマレイン化されたマレイン化熱可塑性樹脂であって、マレイン酸基の少なくとも一部がエステル化されているマレイン化熱可塑性樹脂であり;
    2)前記主鎖に二重結合を有する樹脂において、含まれる二重結合のうち、主鎖以外に存在する二重結合が、該主鎖に二重結合を有する樹脂の全二重結合の10モル%以下であり、
    3)前記主鎖に二重結合を有する樹脂が、分岐を有さず、主鎖に置換基を有さない樹脂であり;かつ
    4)マレイン酸基のエステル化率が80モル%以上である;
    熱可塑性樹脂組成物。
  2. 上記主鎖に二重結合を有する樹脂が1、4−シスポリブタジエン、ポリオクテニレン、または二重結合を含む環状炭化水素の開環メタセシス重合体である請求項1記載のマレイン化熱可塑性樹脂組成物
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