最初に従来のCDL装置について図面を用いて説明する。図11は、上記特許文献1に示された全光ファイバ型のCDL装置の構成図である。図11においてCDL装置は、単一波長で発振したレーザ光を光ファイバ出力するレーザ光源12、光ファイバ型の第1の光分岐カプラ(第1カプラ)13、光変調器14、送受信光分離部15、光ファイバ増幅器16、送受信望遠鏡(送受信光学系)17、45度ファラデーローテータ18、光ファイバ型の第2の光分岐カプラ(第2カプラ)19、光受信器20、信号処理器21を備える。
図11において、レーザ光源12、第1の光分岐カプラ13、光変調器14、第2の光分岐カプラ19は偏波保持型の光学素子を用い、レーザ光源12、第1の光分岐カプラ13、光変調器14、送受信光分離部15を結ぶ光ファイバおよび、第1の光分岐カプラ13と第2の光分岐カプラ19、送受信光分離部15と第2の光分岐カプラ19、第2の光分岐カプラ19と光受信器20を結ぶ光ファイバには、偏波保持型のシングルモード光ファイバを用いている。
図11において、レーザ光源12から紙面に対して平行な偏波状態で出力した光は、第1の光分岐カプラ13により偏波を保持したまま分岐され、一方は送信光の種光として、他方は光ヘテロダイン検出における局部発振光として用いられる。光変調器14は第1の光分岐カプラ13の出力のうち送信光種光に対して偏波を保持したまま変調する。光変調器14の出力である変調光は、送受信光分離部15を介して光ファイバ増幅器16で増幅され、45°ファラデーローテータ18を通過させた後、送受信光学系17により大気中の観測空間に向けて照射される。
大気中に照射された光は、観測空間における散乱対象(たとえば風速と同じ速度で移動するエアロゾル)により後方散乱され、散乱対象の移動速度に応じたドップラ周波数シフトを受ける。
大気中の散乱対象からの後方散乱光を送受信光学系17により収集し、45°ファラデーローテータ18を再度通過させた後、送受信光分離部15を介して紙面に対して垂直な直線偏光として第2の光分岐カプラ19に伝送し、第1の光分岐カプラ13の局部発振側出力光を90°回転させて紙面に対して垂直な直線偏光とし、第2の光分岐カプラ19で光合波した後、光受信器20でビート信号を受信する。
光受信器20において得られたビート信号を信号処理器21により、ビート信号の強度、ラウンドトリップ時間、ドップラ周波数シフトを抽出し、それぞれ散乱対象の量(密度)、散乱対象までの距離、散乱対象の移動速度を算出する。
このとき、送受信光学系17の直前に45°ファラデーローテータ18を通過させることで、送受信光分離部15から45°ファラデーローテータ18の光路内で送信光と受信光をともに直線偏光で且つ偏波状態を90°直交させて伝送するため、光ファイバ増幅器16内部および光ファイバ増幅器16から45°ファラデーローテータ18までファイバ光路で受ける複屈折変動にともなう偏波状態の変動を送受信往復光路で補償でき、光受信器20での偏波面不一致に伴う信号変動を最小化できる特徴を有していて、光ファイバ増幅器16として安価な非偏波保持型の使用を許容できる利点があった。
しかしながら、45°ファラデーローテータ18を通過した際の送信光の偏波状態は、送信光がファイバ増幅器16内部およびファイバ増幅器16から45°ファラデーローテータ18までファイバ光路で変動を受ける。これにより直交成分を取り出すための手段(例えば偏光ビームスプリッタ)の偏光軸を正確に設定できず2偏波を分離することができないという問題があった。
一方、図11の構成では、偏波状態変動の補償のため光ファイバ増幅器16を送受信光分離部15よりも下流側に設置する必要があった。しかしながら、この構成では光ファイバ増幅器16の内部で計測に用いない自然放出光が発生した際に次のような問題が引き起こされる。
すなわち自然放出光は無偏波状態で発生し光ファイバの前方(送信光と同方向)だけでなく後方(受信光と同じ方向)に伝播するため自然放出光のうち受信光の偏光方向(送信光と偏光状態が90°回転)と同じ成分が、送受信光分離部15を介して、光受信器側に伝播する。
伝播した自然放出光成分は、局部発振光とミキシングされる結果、白色雑音を増加させ受信信号の信号対雑音比を悪化させ、計測性能を低下させる問題があった。
さらに、図11の構成では、45°ファラデーローテータ16より下流にある送受信光学系17の内部において偏光状態が変化した場合には、その変化分を補償する手段がなく偏光解消のない散乱対象の場合には、受信効率の低下を引き起こす問題があった。
また偏光解消が存在する散乱対象の場合には、送受信光学系17による偏光変動と散乱対象による偏波変動量の切り分けが困難となり、正確な偏光解消度の測定が困難となる問題があった。
上記CDL装置(ライダ)では、散乱対象物の距離と移動速度の測定を主な目的としているため、送信光の偏光状態に一致する偏光成分を受信光として検出する方式となっている。一方、散乱対象の球形度の推定を目的として散乱光の偏光解消を測定したいというニーズがある。
偏光解消の検出のためには、例えば図12に示す上記非特許文献1に記載された装置のように、散乱対象に対して直線偏光で照射した際の散乱光における直線偏光の直交2成分を独立に受信できる受信器を追加する必要がある。
図12の構成に適用するためには、受信光の伝播路のうち送受信光学系17と45°ファラデーローテータ18との間において、送信光の偏光方向と直交する成分を取り出す必要がある。もし、この偏光分離ができれば、図12のように、光の送受信に別々の望遠鏡を用いる必要がなく、送受信光路一致調整が不要となるだけでなく、装置簡略化による小型化、コスト低減化に寄与できる可能性がある。
実施の形態1.
図1はこの発明の一実施の形態による光波レーダ装置の構成を示す図である。図1において光波レーダ装置は、単一波長で発振したレーザ光等の光(単一周波数の直線偏波光)を光ファイバケーブルに出力する基準光源112、光ファイバ型の光分岐カプラ113、光変調器114、送受信光分離部115、光ファイバ増幅器116、送受信光望遠鏡である送受信共用の光ファイバコリメータ光学系117、45°ファラデーローテータ118、光ファイバ型の光合成カプラ119、光ヘテロダイン受信器120、受信信号のアナログ信号処理回路121、ディジタル信号処理回路122、信号処理、表示用の汎用計算機(PC)123、ビーム走査機構124、光ファイバコネクタ130、90°偏光回転機構131、光ファイバの端面方位回転機構1117を含む。
図1において、基準光源(基準レーザ光源)112、光分岐カプラ113、光変調器114、送受信光分離部115、45°ファラデーローテータ118、光合成カプラ119は偏波保持型の光学素子で構成される。送受信光分離部115と光合成カプラ119間には90°偏光回転機構131を設置する。
基準光源112から光分岐カプラ113、光変調器114、光ファイバ増幅器116を経由して送受信光分離部115までの光路(光送信光路)、送受信光分離部115から45°ファラデーローテータ118を経て光ファイバコネクタ130までの光路(光送受信光路)、送受信光分離部115から90°偏光回転機構131、光合成カプラ119を経由して光ヘテロダイン受信器120までの光路(光受信光路)、及び光分岐カプラ113から光合成カプラ119までの光路(局部発振光路)、における各素子間の光路接続(光伝送路)には偏波保持型のシングルモード光ファイバ(PMF)を用いる(図1の太線部分)。
光ファイバコリメータ光学系117の接続インターフェイスには端面からの反射光がファイバ内に再結合するのを防ぐため、端面法線方向が光ファイバの長手方向と角度αとして、球面研磨又は平面研磨した光ファイバ端面を有する光ファイバコネクタ130とする。通常α=8°とする場合が多い。
光ファイバコリメータ光学系117の光ファイバコネクタ130の取り付け部の例を図6に示す。この例ではコリメートレンズ117aと、光ファイバコネクタ130のソケットとなる光ファイバレセプタクル117b、コリメートレンズ117aを保持固定したコリメートレンズ保持鏡筒117c、光ファイバレセプタクル117bが固定されると共にコリメートレンズ保持鏡筒117cに対して光軸を軸として回転可能な光ファイバレセプタクル保持鏡筒117d、光ファイバレセプタクル保持鏡筒117dをコリメートレンズ保持鏡筒117cに対して固定するための光ファイバレセプタクル固定ねじ177eから構成する。
コリメートレンズ保持鏡筒117cと光ファイバレセプタクル保持鏡筒117dとはコリメートレンズ177aの光軸を中心とした回転対称形とする。
光ファイバレセプタクル117bは光ファイバレセプタクル保持鏡筒117dに対して、次式で表される取り付け角βで設置する。
β=sin-1(n・sinα)−α
ここで、nは光ファイバの屈折率、αは光ファイバコネクタ130の端面の研磨角度である。
これにより光ファイバコネクタ130の端面からのビームの出射方向はコリメートレンズ117aの光軸と一致する。また光ファイバレセプタクル保持鏡筒117dの回転対称性により光ファイバレセプタクル保持鏡筒117dを回転させた場合でも光軸一致は保たれる。
図6の(a)は光ファイバレセプタクル保持鏡筒117dのコリメートレンズ保持鏡筒117cに対する方位が0°の場合、(b)は180°の場合、(c)は90°の場合を示す。
これによりコリメートレンズ117aと光ファイバレセプタクル117bとの間隔を保持したまま、光ファイバコネクタ130の設置方位のみを独立に変更できる。
なお図1において、光ファイバの端面方位回転機構1117が電気信号線によりディジタル信号処理回路122を介して汎用計算機123に接続され、汎用計算機123により端面方位回転機構1117の回転位置制御を行うようにしているが、端面方位の回転に高速性が要求されない場合には、端面方位回転機構1117が設定方位を表示する表示部を有し、これを読み取ることができれば、手動調整して設定方位を読み取るようにしてもよい。
また、基準光源112が単一周波数で直線偏波光を発生する光源部に含まれ、上述の各光路が光ファイバ型の光伝送路に含まれ、光分岐カプラ113が直線偏波光を一方を局部発振光に他方を送信光に分配する光路分岐手段に含まれ、光ファイバコリメータ光学系117が光伝送路を伝送された送信光を空中に放出するとともに、大気中の微小塵による散乱光を受信光として前記光伝送路に結合するための送受信共用の光ファイバコリメータ光学系に含まれ、送受信光分離部115と45°ファラデーローテータ118が光路分岐手段と光ファイバコリメータ光学系の間に設けられ、送信光と受信光の光路を切替える送受信光路切替部に含まれ、光合成カプラ119が光路分岐手段と送受信光路切替部の間に設けられ、受信光と局部発振光とを合成する光路合成手段に含まれ、光ヘテロダイン受信器120が受信光を局部発振光と合成した際の差周波数光の強度信号を電気信号に変換する光ヘテロダイン受信部に含まれ、アナログ信号処理回路121、ディジタル信号処理回路122、汎用計算機123が電気信号を周波数変換して視線方向風速、複数視線方向風速から風向風速を演算する信号処理部に含まれる。また、図6に示す構成が、光ファイバコリメータ光学系117の光軸を中心として光ファイバコリメータ光学系117への光ファイバレセプタクル117bからなる光ファイバ接続インターフェイス部を回転可能にする機構を示す。
図1において、基準光源112から紙面に対して平行な偏波状態(P偏波)で出力した光が、PMFの複屈折軸のfast軸(速軸)又はslwo軸(遅軸)のいずれか一方に平行となるように、PMFの面内方位を設定する。以降ではslwo軸に平行の場合を想定して説明する。基準光源112の出力光は光分岐カプラ113により偏波を保持したまま分岐され、一方は送信光の種光として、他方は光ヘテロダイン検出における局部発振光(局発光)として用いられる。光変調器114は光分岐カプラ113の出力のうち送信光種光に対して偏波を保持したまま変調する。光変調器114の出力である変調光は光ファイバ増幅器116で所定のパワーに増幅され、送受信光分離部115、45°ファラデーローテータ118の順に伝送され、送受信望遠鏡である光ファイバコリメータ光学系117により大気中の観測空間に向けて照射される。
ここで45°ファラデーローテータ118下流(光ファイバコリメータ光学系117側)へのPMF接続については、45°ファラデーローテータ118の通過前後で偏波面が45°回転するため、45°ファラデーローテータ118下流側の偏波面がPMFのslwo軸と平行となるようにPMFの面内方位を45°回転させて設置する。
大気中に照射された光は、観測空間における散乱対象(たとえば風速と同じ速度で移動するエアロゾル)により後方散乱され、散乱対象の移動速度に応じたドップラ周波数シフトを受ける。
大気中の散乱対象からの後方散乱光を光ファイバコリメータ光学系117により収集し、45°ファラデーローテータ118を再度通過させた後、送受信光分離部115に伝送する。45°ファラデーローテータ118により送信光の偏光状態から90°回転した直線偏光成分(紙面に対して垂直な直線偏光)を持つ散乱光が送受信光分離部115に再入射する。
図2に送受信光分離部115の一構成例を示す。図2において光ファイバコネクタ201,202,203は球面研磨又は平面研磨した光ファイバ端面を持つ光ファイバコネクタであり、各々送信光入力ポート、送信光出力(散乱光入力)ポート、受信光出力ポートを示し、ともに偏波保持型シングルモード光ファイバが接続されている。コリメート光学系204〜206は光ファイバ出力光を平行光に変換する。207は偏光ビームスプリッタ(偏光分離素子)を示す。
送信光入力ポートから伝送されたP偏光の入射光はPMFのslwo軸に平行な状態で光ファイバコネクタ201からコリメート光学系204に伝送され、平行光に変換されて偏光ビームスプリッタ207に入射する。偏光ビームスプリッタ207はP偏光が送信光出力ポート側のコリメート光学系205に透過する位置関係で固定する。コリメート光学系205に入射した平行光は光ファイバコネクタ202上で集光して、送信光出力ポート側の偏波保持型シングルモード光ファイバに伝送される。ここで光ファイバコネクタ202の取り付け方位として、P偏波の偏光方向が偏波保持型光ファイバのslwo軸と平行となるように設定する。
一方、送信光出力ポート側下流に接続された45°ファラデーローテータ118から送受信光分離部115へと再入射した散乱光成分は、45°ファラデーローテータ118を往復伝播した結果、偏光状態が送信光に対して90°変化する。したがって、光ファイバコネクタ202でslwo軸に平行なP偏光で送信光を出射した場合、散乱光成分はs成分として光ファイバコネクタ202のfast軸に平行な状態となる。
光ファイバコネクタ202から入射したs偏光の散乱光成分はコリメート光学系205により平行光に変換されて偏光ビームスプリッタ207により受信光出力ポート側へ光路を変え伝送される。
受信光出力ポート側に伝送された散乱光成分はコリメート光学系206により光ファイバコネクタ203上に集光され、受信光出力ポート側の偏波保持型シングルモード光ファイバに伝送される。ここで光ファイバコネクタ203の取り付け方位として、P偏波の偏光方向が偏波保持型光ファイバのslwo軸と平行となるように設定することで、s偏光の偏光状態を持つ散乱光成分は偏波保持型光ファイバのfast軸に平行な状態を保持したまま伝送される。
散乱光は光受信光路側の下流にある90°偏光回転機構131に伝送され、偏波保持型光ファイバのslwo軸に平行な直線偏光に戻す。これにより90°偏光回転機構131の出力側の偏波保持型光ファイバに伝送される散乱光成分と、光分岐カプラ113から出力された局部発振光はともに偏波保持型光ファイバのslwo軸に平行な状態で伝送される。
90°偏光回転機構131を出た散乱光は光合成カプラ119に伝送されて、光合成カプラ119で光分岐カプラ113の局部発振側出力光と合成されて光合波にされた後、光ヘテロダイン受信器120でビート信号として電気信号に変換される。
送受信光分離部115には、図3で示すように偏光ビームスプリッタ207とコリメート光学系205との間に45°ファラデーローテータ118を設置しても良い。この場合、光ファイバコネクタ202の取り付け方位をP偏波の偏光方向が偏波保持型光ファイバのslwo軸と平行となるように光ファイバコネクタ201に対して45°回転させて設定する。これにより図1の配置における45°ファラデーローテータ118において入出力ポート各1個ずつ必要となるコリメートレンズ、光ファイバコネクタが不要となる。
さらに図4で示した構成において、受信光出力ポート側のコリメート光学系206と光ファイバコネクタ203との間に90°偏光回転機構131を設置してもよい。ここで90°偏光回転機構131は図1の構成でP偏波の偏光方向がslwo軸と平行となるように設定していた偏波保持型光ファイバの光ファイバコネクタ203をP偏波の偏光方向がfast軸と平行となるように設定することで実現でき、構成の簡略化が可能となる。
光受信器である光ヘテロダイン受信器120により得られたビート信号は、光ヘテロダイン受信器120により、光電変換される。光ヘテロダイン受信器21の出力は、アナログ信号処理回路121に入力され、所定のアナログ処理、例えばビート信号における中心周波数の変更や、不要周波数成分の抑圧処理、および信号増幅などを行う。
アナログ信号処理回路121の出力は、ディジタル信号処理回路122に入力され、所定のディジタル信号処理が行われる。
ディジタル信号処理回路122の処理内容として例えば、ドップラスペクトル算出処理、送信光の走査機構の角度パルスカウント処理、各算出データの同期・蓄積処理、汎用計算機(PC)123との通信インターフェイス処理等がある。
図5にディジタル信号処理回路の一例の機能ブロック図を示す。ディジタル信号処理回路122は、A/D変換部(ADC)301、高速フーリエ変換機能部(FFT)302、信号積分機能部303、カウンタ304、バッファ305、通信インターフェイス(IF)部306、同期処理機能部307を備える。
ドップラスペクトル処理として例えば以下のような演算を行う。まずアナログ信号処理回路121の出力信号を所定の同期信号に同期してAD(アナログ/ディジタル)変換し、得られた時系列データを所定サンプル点数毎に複数ゲートで切り出し、演算モード毎に異なる点数のゼロデータ挿入と窓関数乗算を行った後、各々FFT(Fast Fourier Transform)処理を行い、各レンジ毎のFFT演算結果を所定回数くり返して積算平均する。
送信光の走査機構であるビーム走査機構124の角度パルスカウント処理としては例えば次のような処理を行う。ビーム走査機構124を運転して送信光の出射方位を連続的に変化させた際に、ビーム走査機構124に設置された仰角、方位角あるいはウェッジプリズムの回転角や走査鏡の回転角などの各回転軸に対応したロータリエンコーダからの出力パルス(所定の角度範囲を等分割した角度ごとに出力されるパルス)の数を所定角度範囲に達した時に出力されるリセットパルスが来るまで加算する。パルスカウントの結果は前記AD変換における同期信号に同期して読み出す。
各算出データ(ドップラスペクトル、角度パルスカウント)の同期処理としては、ドップラスペクトルの積算平均結果と同スペクトル積算開始から積算終了までの角度パルスカウント値の平均値を関連付けてバッファ305に蓄積・格納する。
通信インターフェイス部306としては、汎用計算機123に対して、バッファ305内に格納したドップラスペクトル+角度パルスカウント値の関連付けデータを伝送する機能と、汎用計算機123からディジタル演算の開始・停止や、演算モード設定などの制御コマンドを受信する機能を有する。
汎用計算機123では、ディジタル信号処理回路122により算出されたドップラスペクトル+角度パルスカウント値の関連付けデータから、まず送信光出射方位毎にスペクトルの強度、ラウンドトリップ時間、ドップラ周波数シフトを抽出しそれぞれ散乱対象の量(密度)、散乱対象までの距離、散乱対象の移動速度を算出する。
送信光の出射方位は、角度パルスカウント値に1パルス当たりの角度刻み値を乗算して角度に変換して求める。
次に、上記の方法で算出した送信光出射方位ごとに、散乱対象の量(密度)、散乱対象までの距離、散乱対象の移動速度を求め、送信光出射方位に関連付けた散乱対象の移動速度をデータとして蓄積する。
上記の蓄積データに対して、観測空間における散乱対象の移動速度が一様であると仮定しVAD(Velocity Azimuth Display)法により移動速度の3次元ベクトルを算出する。
次に、大気散乱による偏光解消の測定方法について説明する。偏光解消度はD(r)、受信される大気散乱光パワーのうち、送信光の偏光面に対して平行成分Prx_p(r)と垂直性分Prx_s(r)を用いて次式で表される。
D(r)=Prx_s(r)/Prx_p(r)
D(r)の値により大気散乱体の球形度により値が変化し、通常、硫酸塩などの球形エアロゾルでは5%以下で、鉱物粒子である黄砂では10〜30%となることが知られている。
上記の偏光解消度の変化はPrx_p(r)成分とPrx_s(r)成分の比により決定される。偏光解消は観測空間にある複数の非球形散乱対象がそれぞれ持つ偏光回転の主軸をベクトル和した平均的な主軸に対する偏光回転で与えられる。今、直線偏光光が散乱対象により後方散乱される際に受ける平均的な偏光の回転量をφbackscatとする。
次に、送信光の偏光面を上記の観測空間における平均的な偏光面主軸に対して変化させながら、散乱光のパワーを測定することを考える。送信光の偏光面が観測空間における平均的な偏光面主軸に対して平行な場合には送信光は散乱対象により偏光解消を受けずに後方散乱されるが、偏光主軸に対して平行以外の場合には、後方散乱される際に最大でφbackscatの偏光回転を受ける。
偏光回転を受けた受信光は、偏光回転を受けていない場合に比べ、送信光の偏光面に直交する成分が増加するため、散乱光パワーが一定である場合には、散乱光パワーの送信偏光面に平行な成分が減少する。
一方、光ファイバコリメータ光学系117への光ファイバ入力インターフェイスである光ファイバコネクタ130において、偏波保持型の光ファイバの遅軸に沿った方向に直線偏光が伝送されるため、光ファイバの端面方位回転機構1117を駆動させることで、送信光の偏波面を回転させることができる。
従って、送信光の視線方向を固定した状態で、光ファイバの端面方位回転機構1117をある角度(端面方位1とする)で固定して視線方向風速の測定を行い、散乱対象の量(密度)に比例した信号強度を算出してデータを蓄積する。
次に送信光の視線方向を固定したまま、端面方位1と異なる方位角に設定(端面方位2)して同様の測定を行い、データを蓄積する。
上記のデータ測定を端面方位0度から360度の範囲で所定数くり返し行い、得られた信号強度を端面方位角度ごとに積算平均する。
さらに積算平均した端面方位角度毎の信号強度データより信号強度の最大値Prx_MAXと平均値Prx_meanを算出する。
ここで、通常の全光ファイバ型ライダにおける1回の視線方向風速測定に要する時間は1秒以下(送信パルス光のくり返し周波数:数kHz〜数10kHz、インコヒーレント積分数:数回〜数1000回)であり、観測空間内における平均的な偏波状態の変化に比べ十分に早い。
また通常、観測空間における平均的な偏波状態の変化は、送信光の出射方位を固定して(視線方向を固定)、送信光の偏波面を回転させながら風速測定を行うために要する時間に比較しても十分に遅く、複数の送信偏波面に対して観測空間における平均的な偏波状態は固定して考えることができる。
受信信号の最大値Prx_MAXは、送信偏波面が観測空間における平均的な偏波主軸に一致している場合に近似できる。このとき、散乱光に偏光解消は発生しない。一方で受信信号が最大値Prx_MAX以外の場合は散乱光に偏光解消は発生していると考えられる。
このことから、Prx_MAXとPrx_meanとの差の成分が偏光解消時に発生する送信光偏波面に垂直な偏光成分であると考えられる。
従って偏光解消度は次式のような比例関係により推定することができる。
以上の測定とデータ処理により、1系統の光ヘテロダイン受信系で偏光解消の有無の簡易的な判別が可能となる。
また、偏光解消測定に対して、図11に示した従来の構成における課題点、すなわち光ファイバ増幅器16及び光ファイバ増幅器16から45°ファラデーローテータ18までのファイバ光路で偏波変動を受けることに関して、本実施の形態1では、図1に示すように送受信光分離部115より下流側の45°ファラデーローテータ118、光ファイバコネクタ130のファイバ部品および接続ファイバに偏波保持型のシングルモード光ファイバを用いて、且つ偏波保持型シングルモード光ファイバのfast軸あるいはslwo軸に直線偏光の偏光面を合わせて伝送している。
従って光ファイバ増幅器116や光ファイバ光路における偏光状態は一定に保たれたまま伝送できる効果がある。
また、光ファイバ増幅器116を送受信光分離部115よりも上流側に設置できるため、光ファイバ増幅器116で発生した自然放出光(ASE)が受信側へ漏れこむのを低減できる効果がある。
この発明によれば送信光を偏波面保存のシングルモード光ファイバを用いて送受信共用の光ファイバコリメータ光学系に伝送しているため、偏光面の回転を光ファイバコネクタ端面方位の回転により簡易に実現できる。
また運用時において、観測空間における平均的な偏波状態の時間的変化が遅く、送信光の偏波面変更に要する時間に高速性が要求されない場合には、偏光面の回転を手動で行い、設定角度のみ読み取れればよい。この場合、ディジタル信号処理回路と光ファイバの端面方位回転機構との間の信号線接続は不要となる。
実施の形態2.
実施の形態1では、光ファイバ増幅器以降の光路に偏波保持型のシングルモード光ファイバを用いた構成に、望遠鏡(光ファイバコリメータ光学系)入力時の直線偏光調整手段を加えることで、単一の光ヘテロダイン受信系により偏光解消度の測定を行う例を示したが、この実施の形態では光ヘテロダイン受信系を2系統用いて、大気散乱における偏光保存成分と偏光解消成分とを同時に検出する装置の実現例ついて説明する。送受信光分離部を含む送受信光路切り替え部の上流、下流についての説明は実施の形態1と共通であるため省略する。
図7はこの発明の実施の形態2による光波レーダ装置の構成を示す図である。上記実施の形態のものと同一もしくは相当部分は同一符号で示し、説明は省略する。図7において、上記実施の形態における、45°ファラデーローテータ118と光ファイバコネクタ130の間に第2の送受信光分離部150を設置し、第2の送受信光分離部150の光受信光路側に第2の90°偏光回転機構151を設置し、さらに第2の光合成カプラ152を用いて局部発振光と合波し、第2の光ヘテロダイン受信器153でビート信号を検出する。なお、第2の送受信光分離部150が第2の送受信光路切替部に含まれ、第2の光合成カプラ152が第2の光路合成手段に含まれ、第2の光ヘテロダイン受信器153が第2の光ヘテロダイン受信部に含まれる。
第2の送受信光分離部150も上記実施の形態と同様に、図2の構成をとるものとする。また、上記実施の形態において光分岐カプラ113は1入力を2分岐する機能を有したが、この実施の形態の光分岐カプラ113は1入力を3分岐して、局部発振光を導く局部発振光路を2系統持たせる。
基準光源112から光分岐カプラ113、光変調器114、光ファイバ増幅器116を経由して第1の送受信光分離部115までの光路(光送信光路)、第1の送受信光分離部115から45°ファラデーローテータ118、第2の送受信光分離部150を経由して光ファイバコネクタ130までの光路(光送受信光路)、第1の送受信光分離部115から第1の90°偏光回転機構131、第1の光合成カプラ119を経由して第1の光ヘテロダイン受信器120までの光路(第1の光受信光路)、光分岐カプラ113から光合成カプラ119までの光路(第1の局部発振光路)、第2の送受信光分離部150から第2の90°偏光回転機構151、第2の光合成カプラ152を経由して第2の光ヘテロダイン受信器153までの光路(第2の光受信光路)、光分岐カプラ113から第2の光合成カプラ152までの光路(第2の局部発振光路)、における各素子間の光路接続(光伝送路)には偏波保持型のシングルモード光ファイバ(PMF)を用いる(図7の太線部分)。
今、大気散乱の過程で偏光が変化しない場合を考える。この場合、散乱光の偏光面は光ファイバコネクタ130からの送信光の偏光面と一致する。従って第2の送受信光分離部150において、散乱光は図2の偏光ビームスプリッタ207を透過し送信光入力側の光ファイバコネクタ201へと伝送され、受信光出力側の光ファイバコネクタ203には伝送されない。
第2の送受信光分離部150の送信光入力側に逆伝搬した散乱光成分は、45°ファラデーローテータ118で偏光状態を送信光の偏光面に対して90°変化させ第1の送受信光分離部115の送信光出力側に伝送される。
第1の送受信光分離部115の内部では、散乱光の偏光が90°回転しているため、図2の偏光ビームスプリッタ207で反射され、受信光出力側の光ファイバコネクタ203に伝送され、第1の90°偏光回転機構131により局部発信光側の光ファイバのslwo軸に偏光面を一致させた後、第2の光合成カプラ119により合波され、第1の光ヘテロダイン受信器120を用いて受信光ビートとして検出される。
従ってこの場合、第1の光ヘテロダイン受信器120のみに信号が検出され、第2の光ヘテロダイン受信器153では検出されない。第1の光ヘテロダイン受信器120での受信信号成分は、送信光の偏光面に対して平行成分であり、Prx_p(r)とする。
一方、散乱光の偏光状態が送信光の偏光状態と直交の場合には、散乱光は第2の送受信光分離部150の偏光ビームスプリッタ207で反射されて受信光出力側の光ファイバコネクタ203に伝送され、第2の90°偏光回転機構151により局部発信光側の光ファイバのslwo軸に偏光面を一致させた後、第2の光合成カプラ152により合波され、第2の光ヘテロダイン受信器153を用いて受信光ビートとして検出される。
従ってこの場合、第2の光ヘテロダイン受信器153のみに信号が検出され、第1の光ヘテロダイン受信器120では検出されない。第2の光ヘテロダイン受信器153での受信信号成分は、送信光の偏光面に対して垂直成分であり、Prx_s(r)とする。
偏光解消度D(r)は受信される大気散乱光パワーのうち、送信光の偏光面に対して平行性分Prx_p(r)と垂直性分Prx_s(r)とを用いて次式であらわされる。
D(r)=Prx_s(r)/Prx_p(r)
図7におけるディジタル信号処理回路122において、Prx_p(r)とPrx_s(r)の両成分が同時に測定できるため、上式により偏光解消度D(r)を直接に算出することができる。
上記実施の形態1において、偏光解消度の測定において送信光の偏光方向を変化させた状態での複数の受信信号の測定が必要であったのに対し、本実施の形態2においては送信光の偏光状態を変化させる必要がなく、測定に要する時間を短縮できる利点がある。
実施の形態3.
上記実施の形態1では図1の光ファイバ増幅器116以降の光路に偏波保持型のシングルモード光ファイバに直線偏光調整手段を加えることで、単一の光ヘテロダイン受信系により偏光解消度の測定を行う例を、実施の形態2では光ヘテロダイン受信系を2系統用いて、大気散乱における偏光保存成分と偏光解消成分とを同時検出する例ついて説明した。本実施の形態3では、送受信光分離部の下流側にスイッチ手段を設けて光路を切り替えることにより大気散乱における偏光保存成分と偏光解消成分とを同時検出する例を示す。送受信光分離部の上流と送受信望遠鏡である光ファイバコリメータ光学系、90°偏光回転機構以降の処理部分については実施の形態1と基本的に共通であるため説明を省略する。
図8はこの発明の実施の形態3による光波レーダ装置の送受信光分離部付近の構成を示す図である。図8において上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。図8においては、実施の形態1の送受信光分離部115の下流に第1の光路切替スイッチ501と第2の光路切替スイッチ502を設ける。第1の光路切替スイッチ501の下流側の第2の光路切替スイッチ502との間に2光路を設け、2光路のうち一方に45°ファラデーローテータ118を挿入して第2の光路切替スイッチ502に接続し、他方を第2の光路切替スイッチ502に直接接続する。
第1,第2の光路切替スイッチ501、502(光伝送路切替機構)はディジタル信号処理回路122から駆動信号を与えて同期させる。直線偏光で送受信望遠鏡である光ファイバコリメータ光学系117により送信された光が、大気中で後方散乱され、その散乱光が再び光ファイバコリメータ光学系117により収集され、光ファイバコネクタ130に結合されて、ファイバ内を上流側に伝搬する。
まず、第1、第2の光路切替スイッチ501,502が45°ファラデーローテータ118が挿入された光路側(第1光伝送路)に接続されている場合、45°ファラデーローテータ118の入力−出力の間で直線偏光が90°回転する。このため大気中で偏光解消されずに散乱された散乱光成分に関して、送受信光分離部115の直前での偏光状態は送信光の偏光面に対して垂直となる。一方、大気中で偏光解消を受けて散乱された散乱光成分については、送受信光分離部115の直前での偏光状態が送信光の偏光面に対して平行となる。
送受信光分離部115においては、送信光の偏光と垂直な成分のみ受信光出力側の光路に伝送するように設計している。このため大気中で偏光解消を受けない成分のみが受信光出力側の光路へと伝送され、ヘテロダイン検出が行われる。
一方、第1、第2の光路切替スイッチ501,502が互いに直接接続された光路側(第2光伝送路503)にスイッチを設定した場合、大気中で偏光解消を受けた成分は送信光の偏光状態に対して直交状態で、大気中で偏光解消を受けない成分は送信光の偏光状態に対して平行状態で送受信光分離部115に入力する。
この場合、送受信光分離部115では大気中で偏光解消を受けた成分のみが受信光出力側の光路へと伝送され、ヘテロダイン検出が行われる。
従って、第1、第2の光路切替スイッチ501,502の切り替えにより、大気中で偏光解消を受けない成分と、大気中で偏光解消を受けた成分とを、時間的に切り替えて計測することができる。
これにより送受信光分離部115、90°偏光回転機構131、光合成カプラ119、光ヘテロダイン受信器120までを共通化できるため、実施の形態2で必要だった2系統の光ヘテロダイン受信系(検出部)が1系統で実現できるだけでなく、大気偏光解消/偏光非解消成分を検出する際に光路損失や検出器感度が等しくなり、第1、第2の光路切替スイッチ501,502の間の光路損失のみ校正すればよく、感度校正が簡易になる効果がある。
実施の形態4.
上記実施の形態3では、送受信光分離部の下流側に光路切替スイッチ2個を設け、これらを同期させて光路を切り替えることにより、大気散乱における偏光保存成分と偏光解消成分とを検出する例を示した。本実施の形態4では、スイッチ手段である光路切替スイッチを1個を用いて偏光保存成分と偏光解消成分とを検出する例を示す。ここで送受信光分離部の上流と送受信望遠鏡である光ファイバコリメータ光学系、90°偏光回転機構以降の処理部分については実施の形態1と基本的に共通であるため説明を省略する。
図9はこの発明の実施の形態4による光波レーダ装置の送受信光分離部付近の構成を示す図である。図9において上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。図9においては、実施の形態1の送受信光分離部115の下流に第2の光分岐カプラ601と第3の光路切替スイッチ602(光伝送路切替機構)を設ける。そして第2の光分岐カプラ601の下流側における2光路のうち一方に45°ファラデーローテータ118を挿入して第3の光路切替スイッチ602に接続し、他方を第3の光路切替スイッチ602に直接接続する。
送受信光分離部115の上流から下流側に出力された直線偏光光は、光分岐カプラ601(第2の光路分岐手段)により2分岐され、一方は、45°ファラデーローテータ118を通過させて光路切替スイッチ602に、他方は直接に光路切替スイッチ602へ接続する。ここで光分岐カプラ601は偏波保存型のシングルモード光ファイバにより偏波状態を保持したまま分岐する。
光路切替スイッチ602を通過した直線偏光光は上述の実施の形態1〜3と同様に、送受信望遠鏡である光ファイバコリメータ光学系117により送信され、大気中で後方散乱を受けて散乱光が再び光ファイバコリメータ光学系117により収集される。
光ファイバコリメータ光学系117により収集された散乱光は、光ファイバコネクタ130に結合されファイバ内を上流側に伝搬する。
光路切替スイッチ602が45°ファラデーローテータ118側(第1光伝送路)の場合は、45°ファラデーローテータ118の入力−出力の間で直線偏光が90°回転する。このため大気中で偏光解消されずに散乱された散乱光成分に関して、送受信光分離部115の直前での偏光状態は送信光の偏光面に対して垂直となる。一方、大気中で偏光解消を受けて散乱された散乱光成分については、送受信光分離部115の直前での偏光状態が送信光の偏光面に対して平行となる。
送受信光分離部115においては、送信光の偏光と垂直な成分のみ受信光出力側の光路に伝送するように設計している。このため大気中で偏光解消を受けない成分のみが受信光出力側の光路へと伝送され、ヘテロダイン検出が行われる。
一方、光路切替スイッチ602が45°ファラデーローテータ118の無い光路側(第2光伝送路503)にスイッチを設定する場合、大気中で偏光解消を受けた成分は送信光の偏光状態に対して直交状態で、大気中で偏光解消を受けない成分は送信光の偏光状態に対して平行状態で送受信光分離部115に入力される。
この場合、送受信光分離部115では大気中で偏光解消を受けた成分のみが受信光出力側光路へと伝送され、ヘテロダイン検出が行われる。
従って、光路切替スイッチ602の切り替えにより、大気中で偏光解消を受けない成分と、大気中で偏光解消を受けた成分とを、時間的に切り替えて計測することができる。
これにより送受信光分離部115、90°偏光回転機構131、光合成カプラ119、光ヘテロダイン受信器120までを共通化できるため、実施の形態2で必要だった2系統の光ヘテロダイン受信系(検出部)が1系統で実現できるだけでなく、大気偏光解消/偏光非解消成分を検出する際に光路損失や検出器感度が等しくなり、第2の光分岐カプラ601と第3の光路切替スイッチ602の間の光路損失のみ校正すればよく、感度校正が簡易になる効果がある。
また実施の形態3では2個の光路分岐スイッチにより実現していた大気偏光解消/偏光非解消成分の切り替え機能を、光路分岐スイッチを1個で実現でき、2個のスイッチの同期駆動が不要となり構成を簡素化できる。
さらに、第2の光分岐カプラ601と第3の光路切替スイッチ602との間の2光路における光路損失の差を相殺するように第2の光分岐カプラ601の分岐比を設計して製作することもできる。これにより第2の光分岐カプラ601と第3の光路切替スイッチ602との間における光路損失の校正は不要となる。
実施の形態5.
上記実施の形態2〜4では、直線偏光光を45°ファラデーローテータに通過/非通過による偏光回転/非回転の違いを用いて大気散乱光の偏光解消成分/非解消成分の分離測定を行っていた。この実施の形態5では、45°ファラデーローテータの代わりに、電気入力でファラデー回転角を制御できるファラデー回転子を用いる構成について説明する。
図10はこの発明の実施の形態5による光波レーダ装置の送受信光分離部付近の構成を示す図である。図10において上記実施の形態と同一もしくは相当部分は同一符号で示し説明を省略する。また、送受信光分離部115の上流および受信光出力側の光路以降は図1と共通であるため説明を省略する。送受信光分離部115の下流側には、可変ファラデー回転子701、磁界発生部702と駆動部703からなる磁界発生装置を設ける。駆動部703はディジタル信号処理回路122を介して汎用計算機123で制御される。
可変ファラデー回転子701は、鉄−ガーネット結晶に代表される磁光結晶内に光路を設け、磁界発生部702による外部磁界Hを駆動部703で電気的に変化させることによりファラデー回転角θを変化させることができる。ファラデー回転角θと磁界Hとは次式で現される関係にある。
θ=V(H・K)
ここで、Vは材料固有のベルデ係数、Kは光波数ベクトルである。
従って、θ=45°になるような磁界すなわち
H・K=π/(4V)
とすることで、可変ファラデー回転子701を往復する光の偏光状態を90°回転させることができる。
可変ファラデー回転子701に外部磁界をゼロとした場合(磁界発生部702による信号をゼロ)、送受信光分離部115から光ファイバコネクタ130の間での往復光路で、直線偏光の回転はない。
このため大気中で偏光解消されずに散乱された散乱光成分に関して、送受信光分離部115の直前での偏光状態は送信光の偏光面に対して平行となる。一方、大気中で偏光解消を受けて散乱された散乱光成分については、送受信光分離部115の直前での偏光状態が送信光の偏光面に対して垂直となる。
送受信光分離部115においては、送信光の偏光と垂直な成分のみ受信光出力側の光路に伝送するように設計している。このため大気中で偏光解消を受けた成分のみが受信光出力側の光路へと伝送され、ヘテロダイン検出が行われる。
一方、可変ファラデー回転子701に外部磁界をπ/(4V)とした場合、送受信光分離部115から光ファイバコネクタ130の間での往復光路で、直線偏光は90°回転する。
このため大気中で偏光解消されずに散乱された散乱光成分に関して、送受信光分離部115の直前での偏光状態は送信光の偏光面に対して垂直となる。一方、大気中で偏光解消を受けて散乱された散乱光成分については、送受信光分離部115の直前での偏光状態が送信光の偏光面に対して平行となる。
従って、可変ファラデー回転子701への外部磁界の切り替えにより、大気中で偏光解消を受けない成分と、大気中で偏光解消を受けた成分とを、時間的に切り替えて計測することができる。
送受信光分離部115、可変ファラデー回転子701、光ファイバコネクタ130、光ファイバコリメータ光学系(送受信望遠鏡)117までの送受信往復光路と、送受信光分離部115、90°偏光回転機構131、光合成カプラ119、光ヘテロダイン受信器120までの受信光路を共通化できるため、実施の形態2で必要だった2系統の光ヘテロダイン受信系(検出部)が1系統で実現できるだけでなく、大気偏光解消/偏光非解消成分を検出する際に光路損失や検出器感度が等しくなり、光路損失の校正が不要となる効果がある。
また、実施の形態3,4で用いた光路切替スイッチや、実施の形態4で用いた光路分岐手段である光分岐カプラが不要となり、これらによる光路損失が低減できる効果がある。
112 基準光源、113 光分岐カプラ、114 光変調器、115 送受信光分離部、116 光ファイバ増幅器、117 光ファイバコリメータ光学系、117a コリメートレンズ、117b 光ファイバレセプタクル、117c コリメートレンズ保持鏡筒、117d 光ファイバレセプタクル保持鏡筒、117e 光ファイバレセプタクル固定ねじ、118 45°ファラデーローテータ、119 光合成カプラ、120 光ヘテロダイン受信器、121 アナログ信号処理回路、122 ディジタル信号処理回路、123 汎用計算機、124 ビーム走査機構、130 光ファイバコネクタ、131 90°偏光回転機構、150 第2の送受信光分離部、151 第2の90°偏光回転機構、152 第2の光合成カプラ、153 第2の光ヘテロダイン受信器、201〜203 光ファイバコネクタ、204〜206 コリメート光学系、207 偏光ビームスプリッタ、301 A/D変換部、302 高速フーリエ変換機能部、303 信号積分機能部、304 カウンタ、305 バッファ、306 通信インターフェイス部、307 同期処理機能部、501 第1の光路切替スイッチ、502 第2の光路切替スイッチ、503 光伝送路、601 第2の光分岐カプラ、602 第3の光路切替スイッチ、701 可変ファラデー回転子、702 磁界発生部、703 駆動部。