JP7329995B2 - レーザドップラーレーダ装置及び風速算出方法 - Google Patents

レーザドップラーレーダ装置及び風速算出方法 Download PDF

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Description

本発明は、レーザドップラーレーダ装置及び風速算出方法に関する。
風速をレーザによって遠隔測定する装置であるレーザドップラーレーダ装置は、一般的に下記のような構成を有する。
すなわち、レーザ光源から発したレーザを測定光と参照光とに分岐した後、測定光をスイッチングしてパルス光とし、このレーザ光をパワーアンプユニットで増強する。増強されたレーザ光を望遠レンズ(Telescope lens)により大気中に射出させると、大気中のエアロゾルで散乱した測定光の一部が再び望遠レンズに戻って集光される。集光された測定光を参照光と混合すると、これら測定光と参照光とが干渉してビート信号が生成されるので、このビート信号を検出器で検出する。
大気中に射出されたレーザ光の光路に風が吹いていてエアロゾルが動いていると、エアロゾルによって散乱された光の周波数は、レーザ光の射出方向であるエアロゾルの視線方向(LOS:Light of Sight)の速度に比例して変動し、その結果、ビート信号の光周波数がシフトする。そこで、ビート信号の周波数を測定することで、視線方向の風速を計測することができる。さらに、大気中に射出するパルス光の方向を切り替えて、複数の視線方向の風速を測定して処理することにより、風向きと風速を計測することが可能となる。
レーザドップラーレーダ装置のレーザ光源は、一般的にアイセーフ波長の1550nmレーザを使うことが多い。そして、レーザドップラーレーダ装置に用いられる光学系は、かかる波長帯を有するレーザ光源と相性のよい光ファイバ光学系で構成されることが多い。
レーザドップラーレーダ装置に限らず、一般的に広く用いられている、偏波面保持型光ファイバではない通常の光ファイバは、この光ファイバの側部に応力が作用し、また、コアが真円からずれた形状に形成されていると、光ファイバ内を伝播するレーザの偏向状態が不安定に変動する。この結果、測定光と参照光の偏光状態がずれることが生じて測定光と参照光との干渉信号が弱くなり、大気中のエアロゾルからの微弱な散乱光を捉えることが困難になる可能性が生じる。そこで、一般的なレーザドップラーレーダ装置では、光ファイバ光学系の部品を全て偏波面保持タイプで構成して、測定光と参照光の直線偏向方向を揃えて干渉させるように構成していた。
しかしながら、光ファイバ光学系の部品を全て偏波面保持タイプで構成すると、光学系のコストの上昇を招く可能性があった。
かかる課題に鑑みて、特許文献1には、送受光学系からの内部反射光およびターゲットからの散乱光の偏波面を制御する偏波面コントローラと、ローカル光と偏波面コントローラを介した受信光の一部とをヘテロダイン検波してビート信号を出力するヘテロダインレシーバと、送受光学系からの内部反射光を利用して偏波面コントローラを制御する偏波面制御回路とを備えたレーザドップラーレーダ装置が開示されている。これにより、高価な偏波面保存ファイバを使用せず、偏波面保持タイプでない通常のシングルモードファイバを用いてレーザドップラーレーダ装置を構成することができる。
特開2003-240853号公報
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、偏波面コントローラを検出光路にいれることによる光量のロスが懸念される。また、偏波面コントローラを制御するための追加の光学系と検出器が必要となり、装置が複雑化する。偏光最適化の観察対象が内部反射光であり、反射面で偏光方向が変わるため、内部反射光の偏光方向とエアロゾルからの散乱光の偏光方向にずれがあるので、正確な制御ができない。また、大気の状態によっては、偏光が乱れた成分にも有効な情報が含まれるのに捨てることになる。という課題があった。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、製造コストの低減を図りつつ高精度に風速の計測が可能なレーザドップラーレーダ装置及び風速算出方法を提供することにある。
上記課題を解決すべく、本発明の一つの観点に従うレーザドップラーレーダ装置は、レーザ光を出射する光源と、光源から出射されたレーザ光を測定光と参照光とに分岐する光分岐部と、測定光をパルス変調して大気中に射出し、大気からの散乱光を受光する送受光部と、参照光に対して互いに異なる少なくとも2種類の偏光状態を与える偏光変調部と、少なくとも2種類の偏光状態が与えられた参照光と送受光部が受光した散乱光と干渉させて少なくとも2種類のビート信号を生成させる干渉部と、少なくとも2種類のビート信号に基づいて測定光が射出された方向の大気の風速を算出する信号処理部とを有する。
本発明によれば、製造コストの低減を図りつつ高精度に風速の計測が可能なレーザドップラーレーダ装置及び風速算出方法を実現することができる。
実施例1に係るレーザドップラーレーダ装置の概略構成を示す図である。 一般的なレーザドップラーレーダ装置の概略構成を示す図である。 実施例2に係るレーザドップラーレーダ装置の概略構成を示す図である。 実施例3に係るレーザドップラーレーダ装置の概略構成を示す図である。 レーザドップラー信号の処理手順を示す図である。 視線方向風速から風向風速を計算す手順を示す図である。 視線方向切替手法の一例を示す図である。 視線方向切替手法の別の例を示す図である。 視線方向と偏光状態とレーザパルスの切替タイミングとの一例を示す図である。 視線方向と偏光状態とレーザパルスの切替タイミングとの別の例を示す図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
本実施形態に係るレーザドップラーレーダ装置は、コストがかかる上に動作が不安定になりやすい、測定光の偏光の回転を制御するための要素や、偏光の回転をキャンセルするための要素を持たない。その代わりに、測定光の複数の偏光成分を測定することで、測定光の偏光が回転した場合にも安定な計測を実現する。
一例として、本実施形態に係るレーザドップラーレーダ装置は、参照光の偏光状態を切り替える素子を介してから、参照光を測定光と混合して生成した干渉信号を検出するようにし、測定パルスごとに参照光の偏光状態を切り替えて得た干渉信号を用いている。これにより、測定光の光路には、なんら偏光状態をコントロールするための要素を持たずとも、測定光の偏光の状態変化に対して安定なレーザドップラー検出を実現する。
まず、図2を用いて、一般的なレーザドップラーレーダ装置について説明する。
図2は、一般的なレーザドップラーレーダ装置1の概略構成を示す図である。図2において、測定ユニット200のレーザ光源101から出射された連続光であるレーザ光Lは、光ファイバカプラ(光分岐部)103で参照光LRと測定光LMとに分岐される。測定光LMはAOM(Acoust-Optic Modulator:音響光学変調器)104に入射され、このAOM104によりスイッチングされてパルスレーザ光となる。測定光LMであるパルスレーザ光は光ファイバ105により導光されて光アンプ107に入射され、この光アンプ107によりパワーが増強される。
増強された測定光LMはサーキュレータ108を図中左から右へ透過して、光ファイバ150により導光されてレンズ160及び望遠レンズ(Telescope lens)161により測定ビーム300として大気中に射出される。
大気中のエアロゾルで散乱された測定光(以下、散乱光ともいう)の一部は、再び望遠レンズ161に戻り集光される。集光された散乱光LDは光ファイバ150からサーキュレータ108にもどり、図中右から下方へと導光される。
波長フィルタ164で測定光以外の波長成分が除去された散乱光LDは、光ファイバカプラ103で分岐された参照光LRと、光ファイバカプラ(干渉部)106で混合されることによって干渉し、これによりビート信号が生成される。このビート信号は検出器109で光電変換されて、ビート信号に基づく受信信号が検出器109から出力される。受信信号はADC(アナログデジタル変換器)201によってデジタル信号に変換されて、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphical Processing Unit)などから構成される制御装置(算出部)210で信号処理されて、風速が計測される。
以上の構成において、検出器109、ADC201及び制御装置210は本実施例における信号処理部を構成している。
AOM104には、発振器102から出力される周波数foのRF信号と制御装置210で生成されるパルス信号とを乗算器120で掛け合わせた信号が入力される。従って、AOM104は、入力されたパルス信号の期間だけ光ファイバカプラ103からのレーザ光を光ファイバ105に伝える。
制御装置210からのパルス信号は同様にADC201に入力され、ADC201は、このパルス信号をトリガとして、入力されたビート信号をデジタル信号として取り込む。AOM104を通るときに測定光LMの光周波数は周波数fだけずれている。そのため、検出ビート信号の周波数はfとなる。
望遠レンズ161から射出された測定ビーム300の光路に風が吹いていて大気中のエアロゾルが動いていると、エアロゾルによって散乱された光は、エアロゾルの視線方向の速度に比例してその周波数がシフトする。この結果、ビート信号の光周波数がΔfだけシフトしたとする。そこで、ビート周波数f+Δfを測定することで、視線方向の風速を計測することができる。
さらに、測定ビーム300の方向を切り替えて、複数の視線方向の風速を測定して処理することにより、風向きと風速を計測することが可能となる。図2に示す例では、回転モータ162で回転可能な偏角プリズム163を通して測定ビーム300を射出することで、測定ビーム300を走査し、これにより視線方向を変化させている。回転モータ162の制御信号は制御装置210から入力される。
以上の構成において、少なくともAOM104、光アンプ107、望遠レンズ161、回転モータ162、偏角プリズム163、サーキュレータ108は本実施例における送受光部を構成している。
図2に示す一般的なレーザドップラーレーダ装置では、その光学系に光ファイバ光学系を用いることで簡便に構成できる。しかし、既に説明したように、通常の光ファイバでは伝播するレーザの偏光状態が不安定に変動しうる。測定光と参照光の偏光状態があっていないと干渉信号が弱くなり、大気中のエアロゾルからの微弱な散乱光を感度よく捉えることができなくなる。そのため、図2に示す一般的なレーザドップラーレーダ装置では、光ファイバ105、150及び各種光学素子103、104、105、107、108、150、164、106をすべて偏波面保存タイプで構成する必要があり、このために装置のコストが上がってしまうという問題があった。
さらに、測定ビーム300の射出方向(視線方向)を走査させる偏角プリズム163によって測定ビーム300の偏光方向が回転してしまう可能性があった。特に、ミラーを用いて測定ビーム300を走査する場合には偏光のずれが大きく検出シグナルの低下が大きいという課題もあった。
図1は、実施例1に係るレーザドップラーレーダ装置1の概略構成を示す図である。なお、以下の説明において、図2に示す一般的なレーザドップラーレーダ装置の構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
本実施例のレーザドップラーレーダ装置1では、光ファイバ105、150及び各種光学素子103、104、105、107、108、150、164、106はすべて偏波面を保存しないタイプのものとする。特に、光ファイバ105、150及び各種光学素子各種光学素子103、104、105、107、108、150、164、106を構成する光ファイバを、偏波面を保存しない通常のシングルモード光ファイバで構成する。
このようにすると、既に説明したように、光ファイバカプラ106に入る測定光(散乱光LD)の偏光状態が変動する可能性があるが、この散乱光LDと干渉させる参照光LRの偏光状態を少なくとも2種類作り、この2種類の偏光状態が互いに直交するようにすれば、少なくともどちらかの偏光状態の参照光LRと散乱光LDとが干渉する。
このために、光ファイバカプラ103で参照光LRを分離した後、光ファイバカプラ106で測定光と混合して干渉させる前に、参照光LRを偏光コントローラ130及び偏光切替器131に順次通過させる。
偏光コントローラ130は、参照光LRの偏光がシングルモード光ファイバで乱れた分を戻して直線偏光にするための素子であり、偏光切替器131は、制御装置(制御部)210からの電気信号に従って、偏光方向を90°切り替える電気光学素子である。
これら偏光コントローラ130及び偏光切替器131は周知の光学素子であるので、その構成の詳細については説明を省略する。一例として、偏光コントローラ130には、複数の1/2波長板及び1/4波長板から構成されるもの、光ファイバに一定の応力を付与することで偏光状態を直線偏光にするもの、液晶などの偏光状態が制御可能な素子を有するものなどがある。
また、偏光切替器131は電圧を加えると複屈折による位相遅れが方向によって変わる現象を用いた電気光学素子を用いて実現してもよいし、液晶への印加電圧によって偏光の旋回量が変わる素子を用いて実現してもよいし、ファラデー効果による偏光の旋回量が磁界の強さによって変わる磁気光学的効果を用いて実現してもよいし、光ファイバ切り替え器などで2つの光路を切り替えて、通る光路によって偏光が90°異なるようにしたものを用いてもよい。
従って、偏光コントローラ130を通過させることで参照光LRの偏光方向を直線偏光に揃え、さらに、偏光切替器131を通過させることで参照光LRの偏光方向を(1)0°と(2)90°との間で切替可能にすることができる。従って、散乱光LDの偏光方向をαとすると、(1)の場合はcosαに比例した振幅のビート信号が得られ、(2)の場合はsinαに比例した振幅のビート信号が得られる。
よって、これら(1)、(2)でそれぞれ得られるビート信号を制御装置210においてFFT(Fast Fourier Transform)演算をして得られたパワースペクトルのピーク高さは、(1)の場合はcosαに比例し、(2)の場合はsinαに比例する。したがって、これら二つのパワースペクトルの和を取れば、散乱光LDの偏光方向αが変動しても、常にcosα+sinα=1と一定のパワースペクトルのピークシグナルを得ることができる。
これによって、偏光方向を保持しない安価なシングルモードファイバを用いても安定な測定が可能となる。レーザのパワーをあげて遠隔地の風速を測定する場合には、ハイパワーのシングルモードファイバと偏波面保存ファイバの価格差は更に大きくなるので、上記効果は更に大きくなる。
なお、光ファイバカプラ103から光ファイバカプラ106まで導光する光ファイバのみ、通常のシングルモードファイバではなく偏波面保存ファイバとすれば、偏光切替器131に入る偏光が乱れないため、偏光コントローラ130は不要となるので、このように構成してもよい。
以上の構成において、少なくとも偏光切替器131、好ましくは偏光コントローラ130は本実施例における偏光変調部を構成している。
図5を用いて、本実施例に係るレーザドップラーレーダ装置1が行う信号処理について詳述する。
図5は、本実施例に係るレーザドップラーレーダ装置1におけるレーザドップラー信号の処理手順を示す図である。
望遠レンズ161から出た測定ビーム300は大気中を飛行して、大気中に浮遊するエアロゾル400で散乱されて望遠レンズ161に戻る。レーザドップラーレーダ装置1による風速の測定距離は、望遠レンズ161からX離れた位置を起点としてΔX刻みでn区間であるとする。
図5に示すように、測定ビーム300であるパルス光は時間間隔Tで射出される射出パルス波形401であるとする。光速をcとすると、図5に示すようなビート信号402が得られる。このビート信号402は、往復距離を光速で割った2X/cだけ遅れて戻ってくる、測定区間の最初の散乱光と、その後2ΔX/cごとに次の測定区間から戻ってくる散乱光とに基づく。
制御装置210において、n番目の測定区間に相当する2ΔX/cの長さのビート信号を取り出して、ハミング窓、ハニング窓等の窓関数を掛けて両端を滑らかに落とす(図5において403で示す)。
さらに、FFTの周波数分解能をあげるために、ビート信号403に一定個数の0データを付加して、全体として2のべき乗個のデータとなるように整形する(図5において404で示す)。
そして、0データを付加したビート信号404をFFTの入力データとして、FFTを掛ける。結果のFFTスペクトルの絶対値の2乗を計算してパワースペクトル405を求め、このパワースペクトル405のピーク付近のデータから、2次関数フィッティング、ガウス関数フィッティング、重心演算などによって真のピーク位置f+Δfを求める。これにより、前述したように、Δfから視線方向速度を求めることが可能となる。
次に、視線方向速度から風向・風速を求める方法について図6、図7、図8で説明する。
図7は、視線方向切替手法の一例を示す図であり、図1に示す測定ビーム300の走査機構を拡大したものである。
回転モータ162で回転可能な偏角プリズム163に測定ビーム300を通すことで、測定ビーム300の視線方向を変化させている。偏角プリズム163は、ガラスと空気の界面での屈折を利用して、測定ビーム300の方向をθだけ偏角させる。回転モータ162の回転角度φによって、測定ビーム300は方位角φを変えることができる。
図8は、視線方向切替手法の別の例を示す図である。
図8に示す例では、光ファイバ切り替え器170を用いて測定光を切り替えている。これによって、測定光が出射する光ファイバ端160′を切り替えることができ、これによって、測定ビーム300の視線方向を変えることができる。
図8に示す例では、偏角θ、方位角は0°、90°、180°、270°の4方位角に加えて、測定ビームが偏角0で直進する方向の計5方向にビームを出射している。
以上の構成において、回転モータ162、偏角プリズム163、光ファイバ切り替え器170は本実施例における走査部を構成している。
図6は、視線方向風速から風向風速を計算す手順を示す図である。
図7及び図8に示す視線方向切替手法を用いて得られた、視線方向風速分布を図6に示す。風向風速の計算に最低限必要なのは、3方向の視線方向風速データ(例えば、0°、120°、240°)である。偏角0の視線方向データはデータの矛盾をモニタして、異常値を除去するために用いられている。
回転モータ162で偏角プリズム163を回転させた場合は実線で示す正弦波状視線方向風速データが、光ファイバ切り替え器170で測定ビーム300の出射方向を切り替えた場合は、図中○で示す4方向の視線方向風速データが得られる。
図6の例では、視線方向風速をレンズ160に向かってくる方向をプラスとしてプロットし、風向が北東から吹いている場合を想定して描いている。このようにして得られた方位角ごとの視線方向風速データに対して、平均値を求めてcosθで割ったものが、下向き風速データとなる。片振幅をsinθで割ったものが水平方向風速となる。正弦波の位相が風向となる。ここで、
Figure 0007329995000001
および
Figure 0007329995000002
(ただしΣはφが0°~360°の総和)とすると、片振幅は次式により与えられる。
Figure 0007329995000003
また、位相φは次式で与えられる。
Figure 0007329995000004
図9は、視線方向と偏光状態とレーザパルスの切替タイミングとの一例を示す図である。
図9は、図7の構成を用いた場合のレーザ方位角φと、偏光切替器131のあとの参照光LRの偏光状態(0と1で偏光方向が90°異なる)と、測定レーザパルスとの時間的な関係を示したものである。
回転モータ162で偏角プリズム163を回転させる間に、参照光の偏光状態を複数回切り替えながら計測を行う。偏光切り替えがレーザパルス間隔に対して十分応答が速い場合は、レーザパルスごとに切り替えてもいいが、偏光切り替えの応答がレーザパルス間隔に対して同程度、あるいは、遅い場合、ある偏光状態で複数回の測定パルスを射出して視線方向風速を測定し、偏光を切り替えて、複数回の測定パルスを射出して視線方向風速を測定し、これを1セットとしてある方位角φの視線方向風速を算出する。
図9では、一つの偏光状態あたり2回の測定パルスを用いている。この間にレーザ方位角φは回転するが、360°にたいして十分φが小さければ、ある方向の視線方向風速を測定しているとみなしてよい。もちろん、モータをステップ的に駆動させて上記1セットのデータを取っている間は、モータを静止させることも可能であるが、ステップ駆動によるモータへの負荷や振動を考慮して、ステップ駆動とするか連続駆動とするか選択すればいい。
ここで、方位角φを何方向とればいいかであるが、8方向以上の視線方向データを得ることができると、データが正弦波にどのくらい載っているかをチェックすることができ、より望ましい。
上記1セットの間に得られた複数の干渉ビート信号に対して、それぞれ図5を用いて説明したパワースペクトル算出処理をおこない、得られた複数のパワースペクトルを加算することで、S/N比が向上したパワースペクトルに対して、ピーク周波数を算出して視線方向風速に変換する。
図10は、視線方向と偏光状態とレーザパルスの切替タイミングとの別の例を示す図である。
図10は、図8の構成を用いた場合のレーザ方位角φと、偏光切替器131のあとの参照光の偏光状態(0と1で偏光方向が90°異なる)と、測定レーザパルスとの時間的な関係を示したものである。
光ファイバ切り替え器170により特定の光ファイバ端160′からレーザを出射させている間に、参照光LRの偏光状態を複数回切り替えながら計測を行う(図の例では4回)。偏光切り替えがレーザパルス間隔に対して十分応答が速い場合は、レーザパルスごとに切り替えてもいいが、偏光切り替えの応答がレーザパルス間隔に対して同程度、あるいは、遅い場合、ある偏光状態で複数回の測定パルスを射出して視線方向風速を測定し(図の例では2回)、偏光を切り替えて、複数回の測定パルスを射出して視線方向風速を測定することを1回以上(図の例では2回)繰り返し、これを1セットとしてある方位角φの視線方向風速を算出する。
なお、図9と図10を用いて説明した偏光状態の切り替えは、ビーム方向を1回転させる間に多数回行っていたが、別の方法として、偏光状態の切り替えをビーム方向を1回転させ終わった段階で行い、2周分の干渉ビート信号を組みあわせて計算処理を行ってもよい。
このように構成される本実施形態によれば、レーザ光源101からのレーザ光Lを光ファイバカプラ103により参照光LRと測定光LMとに分岐させ、偏光切替器131により参照光LRの偏光方向を(1)0°と(2)90°との間で切り替えることで2種類の偏光状態を参照光LRに与え、大気からの散乱光としての測定光LMとこの2種類の偏光状態の参照光LRとを光ファイバカプラ106により干渉させて2種類のビート信号を生成し、この2種類のビート信号に基づいて大気の風速を算出している。
従って、本実施例のレーザドップラーレーダ装置1によれば、高価な偏波保存型光ファイバを用いずとも大気の風速を算出することができ、また、簡易な構成でありながら高精度に大気の風速を算出することができる。従って、本実施形態によれば、製造コストの低減を図りつつ高精度に風速の計測が可能なレーザドップラーレーダ装置及び風速算出方法を実現することができる。
一方、上述した特許文献1に開示された技術では、本実施例における望遠レンズ161の内部反射の偏光をモニタして光ファイバカプラ106に入る前の計測光の偏光方向をコントロールしている。また、他の技術では、望遠レンズ161からレーザが出入りするときに偏光方向が90°回転するようにして、光ファイバ150における複屈折の影響をキャンセルしている。しかしながら、望遠レンズ161の外側に位置する偏向用光学素子である偏角プリズム163で偏光が乱れた分の影響はキャンセルできないという問題もあった。
本実施例のレーザドップラーレーダ装置1では、上述したように、測定光LMの偏光方向αが変動しても、常に一定のパワースペクトルのピークシグナルを得ることができる。これにより、偏波保存型光ファイバを用いずとも高精度な風速算出を行うことができる。
図3は、実施例2に係るレーザドップラーレーダ装置の概略構成を示す図である。
上述した実施例1のレーザドップラーレーダ装置1では参照光LRの偏光状態を時分割で切り替えたが、2種類の参照光LRの偏光状態を常に準備して、これら2種類の参照光LRと測定光LMとの干渉ビート信号を同時に検出してもいい。
なお、以下の説明において、上述した実施例1のレーザドップラーレーダ装置1の構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を簡略化する。
実施例1のレーザドップラーレーダ装置1と異なる点を説明する。測定光LMの光ファイバ光路に挿入された波長フィルタ164の出射側光路に偏光スプリッタ110′を挿入し、参照光LRの光路の偏光コントローラ130の出射側光路に、偏光切替器131に代えて別の偏光スプリッタ110を挿入し、参照光LRと測定光LMとをそれぞれ偏光スプリッタ110、110′で偏光方向が直交する二つの偏光に分ける。
それぞれ対応する偏光状態の測定光LMと参照光LRとを偏光保存タイプの光ファイバカプラ106、106′で混合することで干渉ビート信号を生成し、それぞれ検出器109、109′で光電変換し、アナログデジタル変換器(ADC)201、201′でそれぞれデジタル信号として制御装置210に取り込む。
制御装置210は、取り込んだ2種類の干渉ビート信号をそれぞれFFTした後、パワースペクトルとして加算する。あるいは、2種類の信号の片方を複素数の実部、もう片方を複素数の虚部として合成し、1つの複素信号にした上でFFTし、パワースペクトルを求めれば、FFTの回数を半分にすることが可能となる。
従って、本実施例によっても、上述の実施例1のレーザドップラーレーダ装置1と同様の作用効果を得ることができる。加えて、本実施例のレーザドップラーレーダ装置1では、2種類の偏光状態を常時準備しているので、より実時間的に大気の風速を算出することができる。
なお、二つの干渉ビート信号を複素数として合成してからFFTする方法は、実施例1のように、二つの干渉ビート信号が同時には得られず、時分割で得られる場合にも活用することが可能である。
図4は、実施例3に係るレーザドップラーレーダ装置の概略構成を示す図である。
上述の実施例2のレーザドップラーレーダ装置1において、図4に示すように、光ファイバカプラと偏光スプリッタの順番を替えて用いることも可能である。
実施例3のレーザドップラーレーダ装置1と実施例2のレーザドップラーレーダ装置1との違いを説明する。
本実施例のレーザドップラーレーダ装置1では、測定光LMの光ファイバ光路に入れられた波長フィルタ164の出力と、参照光LRの光路の偏光コントローラ130の出力を、まず光ファイバカプラ106(偏波保持タイプ)で混合し、光ファイバカプラ106の二つの出力をそれぞれ偏光スプリッタ110、110′に入れ、取り出した偏波の方向ごとに別々の検出器109、109′で検出している。得られる干渉ビート信号は実施例2のそれと同等であるので、その後の処理は実施例2と同様である。
従って、本実施例によっても、上述の実施例2のレーザドップラーレーダ装置1と同様の作用効果を得ることができる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
一例として、上述の各実施例に係るレーザドップラーレーダ装置1において、望遠レンズ161、回転モータ162及び偏角プリズム163を図略の回転台の上に設置し、この回転台を回転させることで測定ビーム300を回転させてもよい。回転台の回転軸は、例えば図1において図中上下方向に延びる回転軸とする。これにより、測定ビーム300を広範囲に走査することができ、風速の測定範囲を拡大することができる。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
1…レーザドップラーレーダ装置 101…レーザ光源 103…光ファイバカプラ(光分岐部) 104…AOM 106…光ファイバカプラ(干渉部) 108…サーキュレータ 109、109′…検出器 110、110′…偏光スプリッタ 130…偏光コントローラ 131…偏光切替器 160′…光ファイバ端 161…望遠鏡レンズ 162…回転モータ 163…偏角プリズム 164…波長フィルタ 170…光ファイバ切り替え器 201…アナログデジタル変換器 210…制御装置 300…測定ビーム

Claims (7)

  1. レーザ光を出射する光源と、
    前記光源から出射された前記レーザ光を測定光と参照光とに分岐する光分岐部と、
    前記測定光をパルス変調して大気中に射出し、前記大気からの散乱光を受光する送受光部と、
    前記参照光に対して互いに異なる少なくとも2種類の偏光状態を与える偏光変調部と、
    少なくとも2種類の偏光状態が与えられた前記参照光と前記送受光部が受光した前記散乱光とを干渉させて少なくとも2種類のビート信号を生成させる干渉部と、
    少なくとも2種類の前記ビート信号に基づいて前記測定光が射出された方向の前記大気の1方向の風速を算出する信号処理部と
    を有し、
    前記偏光変調部は、
    前記参照光の偏光方向を少なくとも2方向に切り替える偏光切替器と、
    前記偏光切替器により与えられる偏光方向を時分割で切替制御させる制御部と
    を有するレーザドップラーレーダ装置。
  2. 請求項に記載のレーザドップラーレーダ装置において、
    前記偏光変調部は、前記光分岐部と前記偏光切替器との間に設けられ、前記参照光の偏光を直線偏光にする偏光コントローラを有するレーザドップラーレーダ装置。
  3. 請求項1に記載のレーザドップラーレーダ装置において、
    前記信号処理部は、
    前記ビート信号を光電変換して受信信号を出力する検出器と、
    前記受信信号をデジタル信号に変換する変換器と、
    少なくとも2種類の前記ビート信号から得られた前記デジタル信号をそれぞれフーリエ変換し、得られたパワースペクトルを加算した信号から前記大気の1方向の風速を算出する算出部と
    を有するレーザドップラーレーダ装置。
  4. 請求項1に記載のレーザドップラーレーダ装置において、
    前記信号処理部は、
    前記ビート信号を光電変換して受信信号を出力する検出器と、
    前記受信信号をデジタル信号に変換する変換器と、
    少なくとも2種類の前記ビート信号から得られた前記デジタル信号の一つを複素数の実部に、もう一つを複素数の虚部として1つの複素信号とし、この複素信号をフーリエ変換し、得られたパワースペクトルを加算した信号から前記大気の1方向の風速を算出する算出部と
    を有するレーザドップラーレーダ装置。
  5. 請求項1に記載のレーザドップラーレーダ装置において、
    前記送受光部は、前記大気中に射出する前記測定光を走査する走査部を有するレーザドップラーレーダ装置。
  6. 請求項1に記載のレーザドップラーレーダ装置において、
    前記光源から前記信号処理部まで前記測定光及び前記参照光を導光する、偏波面を保持しないシングルモード光ファイバを有するレーザドップラーレーダ装置。
  7. レーザドップラーレーダ装置により実行される風速算出方法であって、
    レーザ光を出射する工程と、
    出射された前記レーザ光を測定光と参照光とに分岐する工程と、
    前記測定光をパルス変調して大気中に射出し、前記大気からの散乱光を受光する工程と、
    前記参照光に対して互いに異なる少なくとも2種類の偏光状態を与える工程と、
    少なくとも2種類の偏光状態が与えられた前記参照光と受光した前記散乱光とを干渉させて少なくとも2種類のビート信号を生成させる工程と、
    少なくとも2種類の前記ビート信号に基づいて前記測定光が射出された方向の前記大気の1方向の風速を算出する工程と
    を有し、
    前記互いに異なる少なくとも2種類の偏光状態を与える工程は、
    前記参照光の偏光方向を少なくとも2方向に切り替える工程と、
    前記偏光方向を時分割で切替制御させる工程と
    を有する風速算出方法。
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