JP4972950B2 - 有機半導体素子に適したテトラセン化合物 - Google Patents

有機半導体素子に適したテトラセン化合物 Download PDF

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本発明は、有機溶媒への溶解度が高く、融点が低い有機半導体であるテトラセン化合物に関する。さらに本発明は、該テトラセン化合物を用いた有機半導体薄膜、有機半導体素子および電界効果トランジスタ(FET)に関する。
半導体の材料であるシリコン(珪素)は、半導体薄膜または半導体素子として最も多く用いられているが、シリコンによる薄膜形成は、蒸着法などのプロセスを用いることにより行われている。このようなプロセスを用いる際には、真空や高温という条件を満たさなければならず、さらに溶媒への溶解性が低いシリコンは固体として用いらざるを得ないため、形成膜のムラが生じやすいうえに薄膜の面積も限られる。また、プログラマブルデバイスによる半導体素子の形成は、複雑な電気回路を一律に作製したあとに、不必要な箇所を焼き切ったり、電気的にバイパスしたりしなければならない手間が生じる。
一方、半導体の材料として、半導体性を有する有機高分子も着目されており(特許文献1〜5)、中には優れたキャリア移動度を示すポリアセン等が知られている(特許文献5)。このような有機高分子が、有機溶媒に高濃度で溶解する特性、好ましくは加熱したときに分解することなく融解する特性を有していれば、その液状の高分子を用いた種々の印刷方法を利用した薄膜形成が可能となる。印刷方法を用いる薄膜形成は、常温・常圧下で行うことができ、また簡便かつ短時間の薄膜形成を実現することができるので、蒸着法等による薄膜形成よりも有利である。また、表面均一性にも優れた有機半導体素子を形成することができるという利点がある。
また、上記のような印刷方法を利用した半導体素子の形成が実現できれば、プログラマブルデバイス(programmable device)で生じるような不必要な回路を焼き切ったり、電
気的にバイパスしたりする製造工程を簡略化することができる。そのうえ、有機半導体素子を可とう性のある高分子表面に形成すれば、折り曲げられる素子とすることができる。
特開2004−256532号公報(特許文献5)には、高いキャリア移動度を有し、有機溶媒に対する溶解性に優れた有機高分子として、ポリアセン化合物が開示されている。しかしながら、特許文献5に記載されているテトラセン化合物は、分子の長軸方向の端部のみに置換基を有し、結晶構造がヘリンボーン構造であることは示されているが、テトラセン化合物の具体的な溶解度や融点等は示されていない。
ここで、テトラセン化合物の有機溶媒への溶解度が低いと、カラムクロマトグラフィーなどの簡便な手段で精製することができない。したがって昇華による精製を行わざるを得ず、微粒化による酸化が生じやすく、また得られる生成物量も少ないといった問題が生じる。
他方、テトラセン化合物の融点が高いと加熱する際に化合物自体が分解することがあり、半導体の材料作製に支障をきたす。J.Org.Chem.,50,2934(1985)(非特許文献1)にはテトラメチルテトラセンが開示されているが、このテトラメチルテトラセンの融点は高く、有機溶媒に対する溶解性は低い。
特開2003−338377号公報 特開2003−347058号公報 WO03/080762 WO01/064611 特開2004−256532号公報 J.Org.Chem.,50,2934(1985)
本発明は、キャリア移動度が高く、有機溶媒に対する溶解性に優れ、さらに融解する前に分解することがなく、融点が低いテトラセン化合物、該テトラセン化合物で構成された有機半導体薄膜、ならびに該有機半導体薄膜を有する有機半導体素子およびトランジスタを提供することを目的とする。
本発明は、次の以下の項[1]〜[10]によって構成される。
[1]平面構造を有し、融点が200℃以下であるテトラセン化合物。
[2]式(1)で表される項[1]に記載のテトラセン化合物。
Figure 0004972950
式中、R1およびR2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素または炭素数2〜10のアルキルであり、R3およびR4は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキルである。
[3]式(1)中のR1およびR2が水素である、項[2]に記載のテトラセン化合物。
[4]式(1)中のR3およびR4が同一である、項[3]に記載のテトラセン化合物。
[5]式(1)中のR3およびR4が炭素数2〜10のアルキルである、項[2]に記載のテトラセン化合物。
[6]式(1)中のR1およびR2が炭素数2〜10のアルキルである、項[5]に記載のテトラセン化合物。
[7]式(1)中のR1〜R4が同一である、項[6]に記載のテトラセン化合物。
[8]項[1]〜[7]のいずれかに記載のテトラセン化合物で構成される有機半導体薄膜。
[9]項[8]に記載の有機半導体薄膜および複数の電極で構成される有機半導体素子。
[10]ゲート電極、誘電体層、ソース電極、ドレイン電極および半導体層を含むトランジスタであって、該半導体層が請求項8に記載の有機半導体薄膜で構成されるトランジスタ。
なお本明細書において、キャリア移動度とは、電子移動度および正孔移動度を含む広義の意味である。
本発明の化合物の結晶構造は非常に平面性の高い構造であるため、本発明の化合物およびこの化合物からなる有機半導体薄膜は実用上十分に高いキャリア移動度を示すことから、本化合物は半導体の材料として優れている。また、本発明の化合物は、有機溶媒に高濃度で溶解性でき、融点が200℃以下と低い。このため、本化合物を融解または有機溶媒に溶解させることにより、融解液または濃厚溶液を基板上に塗布したり、印刷したりすることが可能となり、簡便にしかも短時間かつ多量に有機半導体薄膜を製造できる。
さらに、本発明の化合物からなる有機半導体薄膜を利用したトランジスタ等の有機半導体素子の作製も実現でき、必要な素子特性を安定に調製することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のテトラセン化合物は、ベンゼン環が直線上に連なった平面構造を有し、ベンゼン環上の特定の位置に特定の置換基を有するものであり、分子間にパイ電子軌道の重なりがあり、融点が200℃以下である。より詳しくは、式(1)で表される。以下、式(1)で表される本発明のテトラセン化合物を「化合物(1)」ともいう。
Figure 0004972950
式(1)中、R1およびR2は互いに同一でも異なっていてもよく、水素または炭素数2〜10のアルキルであり、R3およびR4は互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜10のアルキルである。
具体的には、下記式(1a)および(1b)で表される、1,4,7,10−テトラアルキルテトラセン(以下「化合物(1a)」という。)および1,4−ジアルキルテトラセン(以下「化合物(1b)」という。)である。
Figure 0004972950
式(1a)中、Raは炭素数1〜10のアルキルであるが、テトラセンの1位と10位
のRa、または4位と7位のRaが同時にメチルであることはない。Raは互いに同一でも
異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
式(1b)中、Rbは炭素数1〜10のアルキルである。Rbは互いに同一でも異なっていてもよいが、すべてが同一であることが好ましい。
化合物(1a)および化合物(1b)は、いずれも極めて低い融点と有機溶媒への高い溶解性を示す。アルキルの鎖長を変化させることによって、融点および有機溶媒に対する溶解性を最適化できる。また、アルキルの変化に伴い分子同士の会合状態も変化するので、キャリア移動度が変動する。したがって、アルキルを最適化することにより、特定のキャリア移動度を有するテトラセン化合物を得ることができる。
化合物(1)は融点が200℃以下と低いため、融解や結晶化を繰り返しても酸化されることがなく、分解もしない。このため、化合物(1)を加熱融解させて融解液とすることによって、化合物(1)を基板上に塗布または印刷することができる。また、この融解液を用いると、毛細管現象を利用して狭間隔のセルに化合物(1)を封入することができ、ノズルを使った滴下による印刷方法も利用することができる。他方、この融解液をペーストとして用いることにより、任意の厚さを持つ有機半導体厚膜を作製することができる。
化合物(1)を溶かすことができる有機溶媒としては種々の有機溶媒が挙げられる。使用する有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、乳酸エチル、ジオキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロオルム、アセトニトリル、アセトン、シクロヘキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ブチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、水またはこれらの混合物などが挙げられる。これらの有機溶媒に対する化合物(1)の溶解度は高く、例えば温ヘキサン(例えば55℃)には0.01g/mL以上溶解する。したがって、カラムクロマトグラフィーや再結晶などの簡易な方法によって、化合物(1)を容易に精製することができる。
化合物(1)は前記有機溶媒に極めて良く溶解するので、高濃度溶液を得ることができ
る。したがって、この溶液を基板上に塗布または印刷することにより、有機半導体薄膜を作製することができる。有機半導体素子に使用する有機半導体薄膜層の厚さは、通常10〜1,000ナノメートルであり、溶液中の化合物の濃度は、0.1〜10重量%である。1,000ナノメートルより厚い有機半導体膜を作製するときには、融解した化合物をそのまま使用することが好ましい。
化合物(1)の優れた溶解性により種々の濃度の溶液を調製することができるので、溶液の濃度に依存する結晶化度を変動させることができる。化合物(1)の結晶化度が変動すると、結晶化度に影響されるキャリア移動度も変動する。このように、結晶から非晶質までの広い範囲での結晶性を容易に調整できることによって、有機半導体膜の厚みおよびキャリア移動度といった必要な素子特性を安定に再現できる。
化合物(1)およびその溶液を塗布または印刷できる基板としては種々の基板が挙げられる。使用する基板としては、例えば、ガラス基板、金や銅や銀等の金属基板、結晶性シリコン基板、アモルファスシリコン基板、トリアセチルセルロース基板、ノルボルネン基板、ポリエチレンテレフタレート基板、ポリエステル基板、ポリビニル基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板などが挙げられる。
化合物(1)およびそれらの溶液を塗布する方法としては種々の方法が挙げられ、例えばスピンコート法、ディップコート法、ブレード法などが挙げられる。
化合物(1)およびそれらの溶液を印刷する方法としては種々の方法が挙げられ、例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷、平版印刷、凹版印刷、凸版印刷などが挙げられる。なかでも、化合物(1)の溶液をそのままインクとして用いたプリンタにより行うインクジェット印刷は、簡易な方法であり好ましい。
化合物(1)は、高いキャリア移動度を有する。また、トランジスタのゲート電圧によるドレイン電流のon/off比も高い数値を示すので、半導体材料として優れた性質を有する。前記のとおり、化合物(1)は非常に低い融点および有機溶媒に対する高い溶解性を有するため、キャスト法または印刷法等の簡便な製膜工程を利用することができるので、化合物(1)の高いキャリア移動度を損なうことなく、有機半導体薄膜または有機半導体素子を製造することができる。用途によってキャリア移動度の最適値は異なるが、有機半導体素子として使用する場合のキャリア移動度は、好ましくは0.03cm2/V・
s以上、より好ましくは0.5cm2/V・s以上、特に好ましくは1.0cm2/V・s以上である。
化合物(1)の一般的な製造方法を説明する。
[製造方法1]
Figure 0004972950
(式中、Tsはトシル基であり、Raは炭素数1〜10のアルキルである。Raは互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。)
2,5−二置換フラン(2)と化合物(3)から系中で発生させたビスアリーンとを反応させることで、ディールス・アルダー付加体(4)を得る。ビスアリーンは、化合物(3)にフェニルリチウムやn−ブチルリチウム等の塩基を作用させて発生させる。
2,5−二置換フラン(2)は、J.Org.Chem.,60,301(1995)の方法で製造できる。また、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の存在下、n−ブチルリチウムと2当量のハロゲン化アルキルを順次作用させることにより、より簡便に2,5−二置換フラン(2)を製造することもできる。化合物(4)を10%パラジウム炭素またはマグネシウムで還元し、続いて酸性にすると、本発明の化合物(1a)を製造できる。
[製造方法2]
Figure 0004972950
(式中、Rbは炭素数1〜10のアルキルである。Rbは互いに同一で異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。)
2,5−二置換フラン(2)と無水マレイン酸(5)とから合成するディールス・アルダー付加体(6)に濃硫酸を作用させ、化合物(7)を合成する。化合物(7)を水素化リチウムアルミニウムで還元して得たアルコール(8)を、三臭化リンなどで臭素化して化合物(9)を得る。
化合物(9)にナフトキノンを作用させることにより、化合物(10)を得る。化合物(10)のカルボニルを水素化ホウ素ナトリウムで還元して、ジオール(11)を得る。化合物(11)にヨウ化水素水溶液を作用させることにより、本発明の化合物(1b)を製造できる。
これらの方法によって製造できる本発明の化合物は、例えば下記式(1a−1)〜(1a−9)および式(1b−1)〜(1b−10)で表される。
Figure 0004972950
Figure 0004972950
J.Org.Chem.,50,2934(1985)(非特許文献1)は、1,4,7,10−テトラメチルテトラセンを開示している。しかし、非特許文献1に開示されているテトラセンは式(1)中のR1〜R4がすべてメチルの場合のみであり、またこの化合物の融点は高く、有機溶媒への溶解度も低い。本発明の化合物(1a)および(1b)の優れた特性を示唆するものではない。
さらに、特許文献1〜6の明細書中には、テトラセンおよびペンタセンの一般式が開示されている。しかし、化合物(1)を明確に示すものではなく、本発明が開示する優れた特性を具体的に示すものではない。
化合物(1)を用いて製造できる有機半導体薄膜および有機半導体素子について説明する。
有機半導体素子を製造する際、印刷によりパターニングを行うことが好ましく、さらに印刷には、化合物(1)の高濃度溶液または融解液を用いるのが好ましい。高濃度溶液または融解液を用いると、インクジェット印刷、マスク印刷、スクリーン印刷およびオフセット印刷を活用でき、便利である。また、印刷による有機半導体素子の製造は、回路の単純化、製造効率の向上および素子の低廉化・軽量化に寄与する。前述のとおり、加熱や真空プロセスの必要性がなく流れ作業によって製造できるので、低コスト化および工程変更
への対応性を増すことに寄与する。こういった観点から、有機溶媒への極めて高い溶解性を示す化合物(1)は優れている。
化合物(1)は、合成有機高分子と組み合わせて、樹脂組成物(ブレンド樹脂)として使用することができる。ブレンド樹脂における本発明の化合物の含有量は、1重量%〜99重量%、好ましくは10重量%〜99重量%、より好ましくは50重量%〜99重量%である。
上記合成有機高分子としては、熱可塑性高分子、熱硬化性高分子、エンジニアリングプラスチックス、導電性高分子が挙げられる。具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアリレンビニレンなどがある。
本発明の有機半導体薄膜を構成要素の一つとし、整流機能または信号処理機能を有する素子として用い、他の半導体性を有する有機物または無機物と組み合わせることによって、整流素子または電流駆動型のトランジスタ、スイッチング動作を行うサイリスタ・トライアック・ダイアックなどの素子を構成することができる。また、表示素子としても用いることができ、特にすべての部材を有機化合物で構成した表示素子が有用である。例えば、液晶表示素子や電子ペーパーなどに使用することができる。具体的には、可とう性を示す高分子体でできた絶縁基板の上に、本発明の有機半導体薄膜と、この薄膜を機能させる構成要素を含む一つ以上の層とを形成し、電子ペーパーやICカードタグなどのフレキシブルなシート状表示装置または固有識別符号応答装置を作製することができる。
フレキシブルなシート状表示装置は、本発明の有機半導体薄膜を可とう性のある高分子基板上に形成した表示素子を用いることで提供できる。この可とう性の効果より、衣類のポケットや財布などに入れて携帯することができる表示素子が実現される。
固有識別符号応答装置は、特定周波数または特定符号を持つ電磁波に反応し、固有識別符号を含む電磁波を返答するものである。固有識別符号応答装置は、例えば、再利用可能な乗車券または会員証、代金の決済手段、荷物または商品の識別用シール、荷札または切手の役割、会社または行政サービスなどにおいて、高い確率で書類または個人を識別する手段として用いられる。
固有識別符号応答装置は、ガラス基板または可とう性のある高分子基板の上に、信号に同調して受信するための空中線と、受信電力で動作し識別信号を返信する半導体素子とによって構成される。
本発明の有機半導体素子は電力増幅素子や信号制御素子として用いられるが、その具体例として、図1に示すような断面構造を有する電界効果型トランジスタ(FET)がある。FETを作製するには、まず図1において、ガラス基板や高分子基板(6)の上に、金属のマスク蒸着または導電性インクの印刷により、ソース電極(1)およびドレイン電極(2)を形成する。必要に応じて絶縁層を積層してもよい。その上に、化合物(1)の溶液または融解液を印刷、塗布または滴下することによって有機半導体薄膜(5)を形成し、さらに必要に応じて絶縁膜(4)を形成し、その上にゲート電極(3)を形成すればよい。
このFETは、液晶表示素子やEL素子としても用いることができる。また、化合物(1)の薄膜を含むFET測定用セルを作製し、ゲート電圧を変化させながらソース・ドレイン電極間の電流/電圧曲線を測定すると、ドレイン電流/ゲート電圧曲線から電界効果
移動度を求めることができる。さらに、ゲート電圧によるドレイン電流のon/off動作を観測することもできる。
一方、キャリア移動度は、TOF(time of flight)法によって測定することができる。有機半導体薄膜に電圧をかけた状態で光パルスを照射すると、薄膜の照射表面にできた電荷は向かい側の電極に移動するため、回路に電流が流れる。この向かい側に電荷が到達するまでの時間(t)、電極間の距離(L)および有機半導体薄膜に与えた電界(V/L)から、下記式によってキャリア移動度(μ)が求められる。
μ=L/{t×(V/L)} (単位:cm2/V・s)
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[測定方法]
融点は、ヤナコ機器開発研究所製の融点測定器(MP−J3)を用いて測定した。1
−NMRおよび13C−NMRスペクトルは、ブルカー・バイオスピン(株)製の核磁気共鳴装置(DRX500)を用いて測定した。IRスペクトルは、(株)島津製作所製のフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR−8400S)を用いて、KBrペレットを用いて測定した。元素分析は、ヤナコ機器開発研究所製の有機元素分析装置(MT5 CHNレ
コーダー)を用いて測定した。蛍光スペクトルは、(株)日立ハイテクノロジー製の分光蛍光光度計(F−2500形)を用いて測定した。X線構造解析は、(株)リガク製のX線回折装置(MSC MercuryCCD)を用いて測定した。測定に用いた単結晶は
、再結晶または自然蒸発によって作製した。
有機溶媒への溶解度は次のように求めた。すなわち、200mgの試料を1mLの温ヘキサン(55℃)に溶解して、不溶物を熱ろ過によって集める。集めた不溶物を良く乾燥し、重量を測定する。得た重量と200mgとの差を、温ヘキサンへ溶けた試料の重量とした。
[実施例1]製造方法1による1,4,7,10−テトラエチルテトラセン(1a−1)の製造(式(1)において、R1〜R4がすべてエチルである化合物の製造)
第1段
Figure 0004972950
(式中、Tsはトシル基である。)
窒素雰囲気下、300mL三つ口フラスコに3,6−ジブロモ−2,7−ビス(p−トルエンスルホニルオキシ)ナフタレン(3.11g、4.89mmol)、2,5−ジエチルフラン(1.50g、12.10mmol)のトルエン溶液(75mL)を入れた。この混合物を冷却した(0℃)。この混合物は薄い桃色の懸濁液であった。n−ブチルリチウム(9.5mL、1.54Mヘキサン溶液、14.6mmol相当)を30分かけて滴下した。反応混合物は茶色の懸濁液に変化した。反応混合物をゆっくりと(1.5時間)室温に戻し、更に3時間攪拌した。反応混合物に水を加え、分離した有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。水層をクロロホルムで抽出し、飽和食塩
水で洗浄した。先ほどの有機層とあわせてセライトでろ過し、溶媒を留去した。残留物をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン(1:1)〜クロロホルム)で精製して、664mg(1.77mmol、36%)の化合物(1a−1)を茶色粘性固体(シン体/アンチ体の混合物)として得た。
第2段
Figure 0004972950
50mLフラスコに、第1段で製造した1,4:7,10−ジエポキシ−1,4,7,10−テトラエチル−1,4,7,10−テトラヒドロテトラセン(383mg、1.02mmol)、エタノール(40mL)、および10%パラジウム炭素(29.8mg)を入れ、黒色の懸濁液を得た。水素を3時間バブリングで導入したあと、不溶物をろ別除去した。ろ液を冷却し(0℃)、氷冷した濃塩酸(6mL)と無水酢酸(30mL)の混合物を加え、橙色の懸濁液を得た。反応混合物を室温に戻し、2時間攪拌した。再び冷却し(0℃)、冷水を加えた。クロロホルムで抽出し、有機層を水、炭酸カリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を除去したのち、残留物をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン(1:10))で精製し、更に再結晶(ジエチルエーテル/ヘキサン)して、115mg(0.34mmol、33%)の化合物(1a−1)を黄色固体として得た。化合物(1a−1)の融点は189〜191℃であり、蛍光発光のピークは623nmであった。
(1a−1):
1H−NMR(CDCl3、500MH)δ(ppm);1.51(t,J=7.5Hz,12H)、3.28(q,J=7.5Hz,8H)、7.21(s,4H)、8.88(s,8H)。
13C−NMR(CDCl3、126MH)δ(ppm);138.0、130.8、12
9.1、123.1、123.0、26.0、14.5。
FT−IR(KBr);ν(cm-1)2966、2939、2875、1625、1456、1371、887。
元素分析; 分析値(%): C=91.71、H=8.29;
2628としての計算値(%): C=91.76、H=8.41。
[実施例2]製造方法1による1,4,7,10−テトラプロピルテトラセン(1a−2)、および1,4,7,10−テトラヘキシルテトラセン(1a−5)の製造
(式(1)においてR1〜R4がすべてプロピルである化合物、およびヘキシルである化合物の製造)
Figure 0004972950
第1段
実施例1における第1段と同様の方法で、2,5−ジエチルフランの代わりに、2,5−プロピルフランおよび2,5−ヘキシルフランを用いて、1,4:7,10−ジエポキシ−1,4,7,10−テトラプロピル−1,4,7,10−テトラヒドロテトラセン(黄色油状物、1.05g、34%、シン体/アンチ体の混合物)および1,4:7,10−ジエポキシ−1,4,7,10−テトラヘキシル−1,4,7,10−テトラヒドロテトラセン(黄色液体、854mg、5.61mmol、シン体/アンチ体の混合物)を得た。
第2段
実施例1における第2段と同様の方法で、1,4:7,10−ジエポキシ−1,4,7,10−テトラエチル−1,4,7,10−テトラヒドロテトラセンの代わりに、1,4:7,10−ジエポキシ−1,4,7,10−テトラプロピル−1,4,7,10−テトラヒドロテトラセンおよび1,4:7,10−ジエポキシ−1,4,7,10−テトラヘキシル−1,4,7,10−テトラヒドロテトラセンを用いて、融点が194〜196℃(再結晶溶媒:ヘキサン)の化合物(1a−2)(橙色固体、10mg、0.029mmol、5%)および融点が108〜109℃の化合物(1a−5)(赤色固体、96.5g、0.28mmol、48%)を得た。化合物(1a−2)の蛍光発光のピークは588nmであった。化合物(1a−5)の蛍光発光のピークは623nmであった。吸収は600nmまで延びており、融解すると黄色に変色した。
(1a−2):
1H−NMR(CDCl3、500MH)δ(ppm);1.14(t,J=7.3Hz,12H)、1.90〜1.98(m,8H)、3.20(t,J=7.6Hz,8H)、7.18(s,4H)、8.85(s,4H)。
13C−NMR(CDCl3、126MH)δ(ppm);136.5、131.6、12
9.0、124.0、123.2、35.4、23.3、14.5。
FT−IR(KBr);ν(cm-1)2956、2927、2868、1620、1454、898、817。
元素分析; 分析値(%): C=90.85、H=9.15;
3036としての計算値(%): C=90.93、H=9.32。
(1a−5):
1H−NMR(CDCl3、500MH)δ(ppm);0.93(t,J=7.0Hz,12H)、1.36〜1.44(m,16H)、1.51〜1.56(m,8H)、1.86〜1.92(m,8H)、3.22(t,J=7.7Hz,8H)、7.17(s,4H)、8.84(s,4H)。
13C−NMR(CDCl3、126MH)δ(ppm);136.7、131.0、12
9.0、123.9、123.2、33.2、31.8、30.1、29.6、22.7、14.1。
FT−IR(KBr);ν(cm-1)2950、2927、2856、1620、146
7、891。
元素分析; 分析値(%): C=89.29、H=10.71;
4260としての計算値(%): C=89.44、H=10.60。
[実施例3]製造方法2による1,4−ジプロピルテトラセン(1b−3)の製造
(式(1)において、R1およびR2が水素、R3およびR4がプロピルである化合物の製造)
第1段
Figure 0004972950
窒素雰囲気下において、100mLナスフラスコに2,5−ジプロピルフラン(8.0
9g、53.14.mmol)、無水マレイン酸(5.21g、53.14mmol)、ジエチルエーテル(10mL)を入れて室温で20時間撹拌した。ヘキサン(60mL)を加えて固体を桐山漏斗(登録商標)で吸引ろ過し、6.54gの白色固体を得た。ろ液を溶媒留去し、ヘキサンを加えて993mgの白色固体を得た。あわせて、7.53g(30.10mmol、57%)の3,6−ジプロピル−3,6−エポキシフタル酸無水物を白色固体として得た。この化合物の融点は49〜51℃であった。
第2段
Figure 0004972950
200mLナスフラスコに96%硫酸(50mL)を入れた。これを−15℃まで冷却し、3,6−ジプロピル−3,6−エポキシフタル酸無水物(5.74g、23.0mmol)を20分かけて加えた。温度を上げて、0℃で30分間撹拌した。氷の中に反応液をあけて、ジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄、これを無水硫酸ナトリウムで脱水ろ別し溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン(1:1))で精製し、2.28gの3,6−ジプロピルシフタル酸無水物(9.80mmol、43%)を橙色液体として得た。
1H−NMR(CDCl3、500MH)δ(ppm);0.99(t,J=7.4Hz,6H)、1.67〜1.72(m,4H)、3.04(t,J=7.2Hz、4H)、7.54(s,2H)。
13C−NMR(CDCl3、126MH)δ(ppm);13.5、23.5、32.6
、127.8、136.9、142.5、162.8。
第3段
Figure 0004972950
窒素雰囲気下において、200mL三つ口フラスコに水素化リチウムアルミニウム(1.44g、37.0mmol)、テトラヒドロフラン(30mL)を入れた。テトラヒドロフラン(35mL)に溶解させた3,6−ジプロピルシフタル酸無水物(1.10g、4.74mmol)を室温で滴下した。油浴温度を90℃まで上げて還流条件下で62時間加熱した。放冷後、氷浴中で水(3mL)をゆっくりと滴下し、10%硫酸(40mL)を加えて析出物を溶解させた。クロロホルムで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、これを無水硫酸ナトリウムで脱水ろ別し溶媒留去した。880mgの1,2−ヒドロキシメチル−3,6−ジプロピルベンゼン(3.96mmol、85%)を黄色液体として得た。
1H−NMR(CDCl3、500MH)δ(ppm);0.98(t,J=7.1Hz,6H)、1.58〜1.62(m,4H)、2.68(t,J=7.7Hz,4H)、4.82(s,4H)、7.11(s,2H)。
13C−NMR(CDCl3、126MH)δ(ppm);13.9、25.0、35.4
、58.4、129.4、137.6、139.3。
第4段
Figure 0004972950
窒素雰囲気下、100mLナスフラスコに1,2−ヒドロキシメチル−3,6−ジプロピルベンゼン(772mg、3.48mmol)、ジエチルエーテル(10mL)を入れて撹拌し、ジエチルエーテル(10mL)に溶解させた三臭化リン(0.7mL、7.45mmol)を室温で10分かけて滴下した。氷の中に反応液をあけて、炭酸水素ナトリウム水溶液で中和した。ジエチルエーテルで抽出し、飽和食塩水で洗浄、これを無水硫酸マグネシウムで脱水ろ別し溶媒留去した。990mg(2.60mmol、75%)の1,2−ビス(ブロモメチル)−3,6−ジプロピルベンゼンを黄白色固体として得た。この化合物の融点は、62〜64℃であった。
1H−NMR(CDCl3、500MH)δ(ppm);1.02(t,J=6.7HZ,6H)、1.66〜1.70(m,4H)、2.67(t,J=7.6Hz,4H)、4.73(s,4H)、7.11(s,2H)。
13C−NMR(CDCl3、126MH)δ(ppm);14.2、24.0、27.3
、34.7、130.1、134.5、140.3。
FT−IR(KBr);ν(cm-1)2827、1570、1155。
第5段
Figure 0004972950
窒素雰囲気下において、100mLナスフラスコに1,2−ビス(ブロモメチル)−3,6−ジプロピルベンゼン(904mg、2.60mmol)、1,4−ナフトキノン(616mg、3.90mmol)、ヨウ化ナトリウム(1.95g、13.0mmol)、ジメチルホルムアミド(8mL)を入れて、油浴温度110℃で19.5時間加熱した。放冷後、クロロホルムで抽出、5%亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、これを無水硫酸ナトリウムで脱水ろ別し溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム/ヘキサン(1:1))で精製し、500mg(1.46mmol、56%)の1,4−ジプロピル−6,11−テトラセンキノンを黄色針状結晶として得た。この化合物の融点は、155〜156℃であった。
1H−NMR(CDCl3、500MH)δ(ppm);1.07(t,J=7.2Hz,6H)、1.81〜1.85(m,4H)、3.17(t,J=7.7Hz)、7.45(s,2H)、7.84(dd,J=3.2,5.6Hz,2H)、8.42(dd,J=3.2,5.6Hz,2H)、9.09(s,2H)。
FT−IR(KBr);ν(cm-1)2959、1670、1589。
元素分析; 分析値(%): C=84.33、H=6.77;
24222としての計算値(%): C=84.18、H=6.48。
第6段
Figure 0004972950
大気中条件下において、100mLナスフラスコに、1,4−ジプロピル−6,11−テトラセンキノン(342mg、1.0mmol)、メタノール(20mL)、テトラヒドロフラン(20mL)を入れて撹拌した。そこへ水素化ホウ素ナトリウム(189mg、5.0mmol)を少しずつ加え、室温で1時間撹拌した。10%酢酸で中和後、クロロホルムで抽出、飽和食塩水で洗浄し、これを無水硫酸マグネシウムで脱水ろ別し溶媒留去した。得た白色固体を100mL三つ口フラスコに入れ、テトラヒドロフラン(10mL)に溶解させた。還流条件下で加熱し、そこに57%ヨウ化水素水溶液(10mL)を滴下した。そのまま還流条件下で3.5時間加熱した。放冷後、5%亜硫酸ナトリウム水溶液中に反応溶液をあけてジエチルエーテルで抽出、5%亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、これを無水硫酸ナトリウムで脱水ろ別し溶媒留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、207mg(0.66mmol、66%)の化合物(1b−3)を橙色固体として得た。化合物(1b−3)の融点は、126〜127℃であった。
1H−NMR(CDCl3、500MH)δ(ppm);1.12(t,J=7.3Hz,6H)、1.89〜1.93(m,4H)、3.18(t,J=7.7Hz,4H)、7.17(s,2H)、7.54(dd,J=3.2,6.6Hz,2H)、8.01(dd,J=3.2,6.6Hz,2H)、8.69(s,2H)、8.84(s、2H)。13C−NMR(CDCl3、126MH)δ(ppm);14.4、23.3、35.4
、123.2、124.2、124.9、126.3、128.2、131.0、131.4、136.5。
FT−IR(KBr);ν(cm-1)2962、1627。
元素分析; 分析値(%): C=92.46、H=7.96;
2424としての計算値(%): C=92.26、H=7.74。
[実施例4]化合物(1a−5)のキャリア移動度の測定
化合物(1a−5)の薄膜を含むTOF測定セルを作製し、室温でそのキャリア移動度を求めた。まず、アルミを蒸着した一枚の基板(アルミ層の厚みは150nm)の上に径10μmのスペーサーを散布した。その上に、アルミを蒸着したもう一枚の基板(アルミ層の厚みは150nm)をかぶせて接着し、TOF測定用セルを作製した。セルを120℃となるように加熱し、2枚の基板間の間隙に化合物(1a−5)の結晶を接触させると溶融し、毛細管現象によってセル内部にすばやく拡散した。セルを室温に戻したところ、化合物(1a−5)がセル中で固化した。
セルにリード線を取りつけ、温度可変可能な容器であるオックスフォード・インストゥルメンツ(株)製の分光測定器(OptistatDN−V)の底部に取りつけた。窒素レーザー(337nm)のナノ秒パルスをサンプルに照射し、発生した電流の時間変化を計測した。得られた波形の一例を図4に示す。
ここで、Harvey Scher and Elliott W. Montroll,
Phys.Rev.B12(6),2455(1975)の方法を用いることにより、得られた波形から電荷が到達するまでの時間(t)を求めた。具体的には、得られた波形の両対数をとり、電荷が到達する前後の傾きの差を2本の直線で近似して、その2本の直線の交点を電荷が到達するまでの時間(t)とした(図5参照)。この波形から求めた電荷が到達するまでの時間(t)、印加電圧および電極間隔(10μm)からキャリア移動度を求めた。正孔移動度は印加電圧30Vにおいて、約0.038cm2/V秒であった。
さらに、印加電圧を変えてキャリア移動度を測定した。印加電圧とキャリア移動度の関係を図6に示す。図6において、■は電子移動度、▲は正孔移動度を表す。
[比較例1]
公知化合物1,4,7,10−テトラメチルテトラセン(R1)(以下「化合物(R1)」ともいう。)を、J.Org.Chem.,50,2934(1985)の方法にしたがって合成した。本発明のテトラセン化合物と、融点およびヘキサンへの溶解度を比較した。
[比較例2]
無置換のテトラセン(R2)(以下「化合物(R2)」ともいう。)は、融点を測定することができず、加熱中365℃で分解すると記載されている(Netka Jill,J. Org.Chem.,1986年,Vol 51(8),P.1189−1199)。
以上より、本発明のテトラセン化合物が化合物(R1)と比べて、90〜170℃も低い融点と有機溶媒への高い溶解度を示すことがわかる。また、化合物(R2)は融点を示さず、365℃で分解する。これらのことから、本発明のテトラセン化合物が優れている
ことがわかる。
Figure 0004972950
[実施例5]化合物(1a−1)のエックス線結晶構造解析
実施例1で製造した化合物(1a−1)の結晶構造を、エックス線構造解析により同定した。パイ電子軌道が重なり合った状態で、テトラセンが互いに平行に存在する結晶構造を観察した。
[比較例3]比較化合物(R1)のエックス線結晶構造解析
実施例5と同様に、化合物(R1)の結晶構造を解析したところ、ヘリンボーン構造で配列していることがわかった。
以上より、化合物(R1)では、置換基がメチルであるためテトラセン分子間のファンデルワールス力が弱く、相対的にCH−パイ相互作用(メチルのC−H結合におけるシグマ軌道と芳香環におけるパイ軌道との相互作用)による配向が支配的となり、結晶構造はヘリンボーン構造となる。ヘリボーン構造では、テトラセン分子間のパイ電子軌道の重なりがないため、キャリア移動度が低下すると考えられる。
一方、本発明の化合物(1a−1)はテトラセン分子が平行に配列するため、パイ電子軌道が重なっている。これは、高いキャリア移動度を誘起する上で有利である。この優れた特性は、化合物(1a−1)を合成して初めてわかった特性である。
Figure 0004972950
図1は、FETを構成した例を示す。 図2は、X線構造解析によって得た化合物(1a−1)の結晶構造を示す。 図3は、X線構造解析によって得た化合物(R2)の結晶構造を示す。 図4は、TOF測定における、時間と電流値の関係(波形)を示す。 図5は、時間と電流値の関係(波形)から電荷が到達するまでの時間(t)を求める方法を示す。 図6は、TOF測定において、キャリア移動度と印加電圧の関係を示す。
符号の説明
1: ソース電極
2: ドレイン電極
3: ゲート電極
4: 絶縁膜
5: 有機半導体薄膜
6: ガラス基板

Claims (6)

  1. 平面構造を有し、融点が200℃以下である、式(1a)または式(1b)で表されるテトラセン化合物。
    Figure 0004972950
    [式(1a)中、複数のR a は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数2〜10のアルキルであり、式(1b)中、複数のR b は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素数3〜10のアルキルである。]
  2. 式(1a)中のすべてのR a が同一である、請求項1に記載のテトラセン化合物。
  3. 式(1b)中の2つのR b が同一である、請求項1に記載のテトラセン化合物。
  4. 請求項1〜のいずれかに記載のテトラセン化合物で構成される有機半導体薄膜。
  5. 請求項に記載の有機半導体薄膜および複数の電極で構成される有機半導体素子。
  6. ゲート電極、誘電体層、ソース電極、ドレイン電極および半導体層を含むトランジスタであって、該半導体層が請求項に記載の有機半導体薄膜で構成されるトランジスタ。
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