JP2018186189A - 多結晶有機半導体膜形成用溶液、多結晶有機半導体膜およびその製造方法、有機半導体素子、ならびに電界効果トランジスタ - Google Patents
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Abstract
【課題】化学的かつ熱的に安定で、簡便な成膜方法を適用可能な有機半導体材料を提供する。【解決手段】式(1)で表される化合物を含む多結晶有機半導体膜形成用溶液。式(1)中、mおよびnは0または1であり、かつ、同時に0ではなく、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルシリル、アルキルシリルエチニル、アルキルカルボニルまたはアルキルスルホニルであり、これらの基は置換基を有してもよく、ただし、R1とR4が同一であればR2とR3は異なり、R2とR3が同一であればR1とR4は異なる。【選択図】なし
Description
本発明は、多結晶有機半導体膜形成用溶液、多結晶有機半導体膜およびその製造方法、有機半導体素子、ならびに電界効果トランジスタに関する。
薄膜トランジスタ(TFT)は、液晶表示装置等のスイッチング素子として広く用いられており、従来はアモルファスシリコンまたは多結晶シリコンを用いて製造されていた。しかしながら、製造に用いられる化学気相成長(CVD)装置は非常に高額であり、TFTを用いた表示装置の大型化は製造コストの増加に繋がっていた。そのため、代替として有機物を用いたTFTが提案されている。有機物であれば成膜方法として真空蒸着法または塗布法を用いることができる。前記成膜方法によれば、製造コストを抑えつつも素子の大型化が可能になり、プロセスも比較的低温にすることが可能となる。
現在までに上述のような要求に応えるべく、様々な有機半導体材料が開発されてきた。代表的な材料としてはポリアセン化合物がよく知られているが(非特許文献1、2)、これらは大気中での安定性が低い(非特許文献3)。
これに対してパイ共役系骨格に硫黄原子を含んだチエノアセン系化合物は、大気中での安定性に優れている上に、硫黄原子上の大きな最高被占軌道による高い正孔移動度を示すことが知られている。半導体材料の性能は、p型では「正孔移動度」、n型では「電子移動度」で表される。前記移動度が高いほど高速スイッチングに有利である。また、前記性能として「閾値電圧」もあり、低いほど低電圧駆動に有利である。例えばジベンゾチエノチオフェン(BTBT)やジナフトチエノチオフェン(DNTT)が既に開示されている(特許文献1、2)。特に近年、高移動度を有する材料として、硫黄原子を含む「含硫黄N字型パイ共役系有機半導体材料」が報告された(特許文献3)。これらの含硫黄有機半導体材料は、真空蒸着法にて1.0cm2/Vsを超える高い正孔移動度を示す有機半導体薄膜を形成できることが知られている。
しかしながら、パイ共役骨格自身のみでは、相転移温度が高く素子挙動における熱安定性はあるものの、剛直な構造のために汎用的な有機溶媒に対する溶解性が低いという難点があった。そこで、電荷輸送に関わるパイ共役骨格に様々なアルキル鎖を導入することで柔軟性を付加し、溶解性を補う試みがなされ、これまでに高性能なアルキル導入チエノアセン系有機半導体材料が開発されてきた。上述のN字型材料にアルキル鎖を導入すると溶解性に加えて結晶性が向上し、当該材料を含む溶液から「エッジキャスト法」によって成膜して作製した素子は16cm2/Vsという高性能を示す(非特許文献4)。
エッジキャスト法によって得た有機半導体薄膜は、パイ共役骨格の本来の性能を引き出す方法としては有用だが、成膜方法としては溶液濃度、周囲温度および溶媒乾燥スピードといった様々な要因に支配され(特許文献4、5)、工業化の点で課題を有する。工業化に向けては、ドロップキャスト法やスピンコート法といった世間に広く知られた成膜方法が適していると言える。
IEEE Electron Device Letters, 1997年, 46巻, 606頁
Applied Physics Letters, 2007年, 91巻, 063514頁
Chemistry of Materials, 2011年, 23巻, 1646頁
Advanced Materials, 2014年, 26巻, 4546頁
本発明者らの検討によれば、これまでに開発された、対称にアルキル鎖を有するN字型有機半導体材料は、その結晶性の高さゆえにドロップキャスト法といった製法を用いると、化合物が基板上に均一に広がらず、縁に寄ってしまい、薄膜を形成しづらいという問題があることがわかった。
したがって、有機溶媒に対して高い溶解性を持ち、結晶性をある程度落とした含硫黄N字型パイ共役系有機半導体材料が存在すれば、その溶液を用い簡便な製法での薄膜形成が可能となる。特にドロップキャスト法を用いる薄膜形成は、常圧下で行うことができ、また簡便かつ短時間で薄膜を形成できるので、大規模な装置が必要で、高温、超高真空下で行う蒸着法による薄膜形成よりも有利である。さらに、表面均一性に優れた有機半導体素子を作製できる点でも有用である。
本発明は、化学的かつ熱的に安定で、簡便な成膜方法を適用可能で、かつ高いキャリア移動度を実現する有機半導体材料を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、下記の構成とすることで、課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の構成を有する。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]式(1)で表される化合物を含む多結晶有機半導体膜形成用溶液。
[2]前記式(1)におけるR1およびR4が水素であり、R2およびR3が互いに異なる原子または基である、前記[1]に記載の多結晶有機半導体膜形成用溶液。
[3]前記式(1)におけるR2およびR3が、互いに異なる原子または基であって、水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、アルキルチオアリール、ヘテロアリール、アルキルへテロアリール、アルコキシ、アルキルチオまたはアルキルシリルである、前記[1]または[2]に記載の多結晶有機半導体膜形成用溶液。
[4]前記式(1)におけるR2およびR3が、互いに異なる基であって、炭素数1〜20のアルキル、アリールまたはへテロアリールである、前記[1]または[2]に記載の多結晶有機半導体膜形成用溶液。
[5]前記式(1)におけるR2およびR3の一方がアルキルであり、他方がアリールまたはヘテロアリールである、前記[1]または[2]に記載の多結晶有機半導体膜形成用溶液。
[6]前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の式(1)で表される化合物を含む多結晶有機半導体膜。
[7]前記[6]に記載の多結晶有機半導体膜と電極とを有する有機半導体素子。
[8]基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極および前記[6]に記載の多結晶有機半導体膜を有する電界効果トランジスタ。
[9]前記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の溶液を用いて、塗布法または印刷法により、多結晶有機半導体膜を形成する、多結晶有機半導体膜の製造方法。
[10]前記塗布法としてドロップキャスト法を用いる、前記[9]に記載の多結晶有機半導体膜の製造方法。
本発明によれば、化学的かつ熱的に安定で、簡便な成膜方法を適用可能で、かつ高いキャリア移動度を実現する有機半導体材料を提供することができる。本発明の溶液は、高い電荷輸送特性を有する含硫黄N字型パイ電子系骨格に非対称に置換基を導入した化合物を含み、適切に有機溶媒を選定することで、従来の対称的に置換基を有する類縁体には見られなかった高い成膜性を示す。このため、本発明の溶液を基板上に塗布または印刷することが可能となり、簡便にしかも短時間で、かつ多量に有機半導体膜を製造できる。さらに、本発明の溶液から得られる有機半導体膜は、実用上十分に高いキャリア移動度を示す。
図の説明において、「C10-Ph-DNBDT」は3-デシル-11-フェニルジナフト[2,3-d:2',3'-d']ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェン、「C10-DNBDT」は3,11-ジデシルジナフト[2,3-d:2',3'-d']ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェンを表す。
図1は、(a)ボトムゲート−トップコンタクト型、(b)ボトムゲート−ボトムコンタクト型、(c)トップゲート−トップコンタクト型、(d)トップゲート−ボトムコンタクト型の電界効果トランジスタ(FET)の断面図を示す。
図2は、成膜方法の概略を示す。
図3は、材料(C10-Ph-DNBDT)の飽和領域の伝達特性を示す。
図4は、材料(C10-Ph-DNBDT)の出力特性を示す。
図5は、材料(C10-Ph-DNBDTとC10-DNBDT)の薄膜の、シリコン基板に対する被覆状況を表す原子間力顕微鏡(AFM)像を示す。
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本明細書において、キャリア移動度とは、電子移動度および正孔移動度を含む広義の意味である。
[溶液]
本発明の溶液は、式(1)で表される化合物を含み、多結晶有機半導体膜の形成に好適に用いられる。以下、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」ともいう。化合物(1)は、N字型構造を持つ有機半導体材料(含硫黄N字型パイ共役系有機半導体材料)である。
[溶液]
本発明の溶液は、式(1)で表される化合物を含み、多結晶有機半導体膜の形成に好適に用いられる。以下、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」ともいう。化合物(1)は、N字型構造を持つ有機半導体材料(含硫黄N字型パイ共役系有機半導体材料)である。
mおよびnは0または1であり、ただし、mが0である場合、nは1であり、mが1である場合、nは0または1である。mは、材料の溶解性の観点から、好ましくは0である。2つのnは同一であることが好ましい。
R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、アルキル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アルキルシリル、アルキルシリルエチニル、アルキルカルボニルまたはアルキルスルホニルであり、これらの基は置換基を有してもよい。
ただし、R1とR4が同一であればR2とR3は異なり、R2とR3が同一であればR1とR4は異なる。このように、化合物(1)は、パイ共役系骨格末端のベンゼン環上に非対称にR1〜R4を有する。
前記置換基としては、例えば、R1、R2、R3およびR4として列挙した基と同様のものおよびそのハロゲン化された基が挙げられ、置換基として好ましくは、ハロゲン、アルキル、ハロアルキルである。
置換基を有する前記R1、R2、R3およびR4としては、例えば、ハロアルキル、アルキルアリール、ハロアルキルアリール、アルコキシアリール、アルキルチオアリール、アルキルへテロアリール、ハロアルキルへテロアリール、アルキルシクロアルキル、ハロシクロアルキル、ハロアルキルシクロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルコキシ,ハロアルキルチオ、ハロアルキルシリル、ハロアルキルシリルエチニル、ハロアルキルカルボニルおよびハロアルキルスルホニルが挙げられる。
ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシルおよびオクタデシルが挙げられる。アルキルの炭素数は、1〜20が好ましく、化合物(1)の溶媒への高い溶解性と、分子間の分子軌道の重なり易さ(重なり積分の大きさ)との両立の点から、より好ましくは4〜14、さらに好ましくは5〜12、よりさらに好ましくは6〜12、とりわけ好ましくは7〜12、特に好ましくは9〜12である。アルキルは、直鎖状および分岐鎖状のいずれであってもよく、結晶中における分子配列の観点から、直鎖状であることが好ましい。
アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシルおよびオクタデシルが挙げられる。アルキルの炭素数は、1〜20が好ましく、化合物(1)の溶媒への高い溶解性と、分子間の分子軌道の重なり易さ(重なり積分の大きさ)との両立の点から、より好ましくは4〜14、さらに好ましくは5〜12、よりさらに好ましくは6〜12、とりわけ好ましくは7〜12、特に好ましくは9〜12である。アルキルは、直鎖状および分岐鎖状のいずれであってもよく、結晶中における分子配列の観点から、直鎖状であることが好ましい。
ハロアルキルとしては、アルキルにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンに置き換えられた基が挙げられ、例えば、トリフルオロメチルパーフルオロヘキシル、パーフルオロオクチルおよびパーフルオロデシル等の、アルキル中の全ての水素がフッ素に置き換えられた基;トリフルオロエチル、1H,1H-パーフルオロヘキシル、1H,1H-パーフルオロオクチルおよび1H,1H−パーフルオロデシル等の、ハロアルキルが結合する部位(例:R1〜R4の場合は芳香環)に直結した炭素に結合した水素のみがフッ素に置き換えられておらず、他の全ての水素がフッ素に置き換えられた基が挙げられる。
アリールとしては、例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニルおよびナフチルが挙げられる。アリールの炭素数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜10である。
アルキルアリール、ハロアルキルアリール、アルコキシアリールおよびアルコキシチオアリールとしては、例えば、それぞれ、アリールにおいて、少なくとも1つの水素がR1〜R4として列挙したアルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルコキシチオに置き換えられた基が挙げられる。
アルキルアリール、ハロアルキルアリール、アルコキシアリールおよびアルコキシチオアリールとしては、例えば、それぞれ、アリールにおいて、少なくとも1つの水素がR1〜R4として列挙したアルキル、ハロアルキル、アルコキシまたはアルコキシチオに置き換えられた基が挙げられる。
ヘテロアリールとしては、例えば、環構成原子として炭素以外に酸素、硫黄および窒素から選ばれるヘテロ原子を1〜5個含有する複素環が挙げられる。ヘテロアリールの炭素数は、通常は2〜20、好ましくは2〜10である。ヘテロアリールの具体例としては、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリルおよび1H−ベンゾトリアゾリルが挙げられる。これらの中でも、フリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、ベンゾフラニルおよびベンゾ[b]チエニルが好ましい。
アルキルへテロアリールおよびハロアルキルへテロアリールとしては、例えば、それぞれ、ヘテロアリールにおいて、少なくとも1つの水素がR1〜R4として列挙したアルキルまたはハロアルキルに置き換えられた基が挙げられる。
シクロアルキルとしては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキルの炭素数は、通常は3〜8、好ましくは5〜8である。アルキルシクロアルキル、ハロシクロアルキルおよびハロアルキルシクロアルキルとしては、それぞれ、シクロアルキルにおいて少なくとも1つの水素がR1〜R4として列挙したアルキル、ハロゲン、ハロアルキルに置き換えられた基が挙げられる。
アルケニルとしては、例えば、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニル、2−ヘプテニル、2−オクテニル、2−ノネニル、2−デセニルが挙げられる。アルケニルの炭素数は、通常は2〜20、好ましくは6〜12である。ハロアルケニルとしては、アルケニルにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンに置き換えられた基が挙げられる。
アルコキシとしては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシおよびオクタデシルオキシが挙げられる。アルコキシの炭素数は、通常は1〜20、好ましくは6〜12である。ハロアルコキシとしては、アルコキシにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンに置き換えられた基が挙げられる。
アルキルチオとしては、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ウンデシルチオ、ドデシルチオ、トリデシルチオ、テトラデシルチオおよびオクタデシルチオが挙げられる。アルキルチオの炭素数は、通常は1〜20、好ましくは6〜12である。ハロアルキルチオとしては、アルキルチオのアルキルにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンに置き換えられた基が挙げられる。
アルキルシリルとしては、例えば、ジメチルシリル、ジエチルシリル等のジアルキルシリル;トリメチルシリルおよびトリエチルシリル等のトリアルキルシリルが挙げられる。アルキルシリルの炭素数は、通常は1〜12、好ましくは3〜9である。ハロアルキルシリルとしては、アルキルシリルのアルキルにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンに置き換えられた基が挙げられる。
アルキルシリルエチニルとしては、例えば、エチニルにおける水素がR1〜R4として列挙したアルキルシリルに置き換えられた基が挙げられ、ハロアルキルシリルエチニルとしては、例えば、アルキルシリルエチニルのアルキルにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンに置き換えられた基が挙げられる。
アルキルカルボニルおよびアルキルスルホニルにおけるアルキルとしては、例えば、R1〜R4として列挙したアルキルが挙げられる。ハロアルキルカルボニルおよびハロアルキルスルホニルとしては、例えば、それぞれ、アルキルカルボニルおよびアルキルスルホニルのアルキルにおいて少なくとも1つの水素がハロゲンに置き換えられた基が挙げられる。
なお、上記説明で現れるアルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルコキシおよびアルキルチオは、直鎖状および分岐鎖状のいずれであってもよいが、結晶中における分子配列の観点から、直鎖状であることが好ましい。
R1およびR4は、水素であることが好ましい。また、R2およびR3は、化合物(1)が非対称である点から、互いに異なる原子または基であることが好ましい。このような態様であると、密な分子の凝集構造を形成することができ、したがって有用(具体的には、均一な薄膜の形成と高いキャリア移動度の発現)な有機半導体膜を形成できることから好ましい。
また、R2およびR3は、それぞれ独立に水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、アルキルチオアリール、ヘテロアリール、アルキルへテロアリール、アルコキシ、アルキルチオまたはアルキルシリルであることが好ましく、炭素数1〜20のアルキル、アリールまたはへテロアリールであることがより好ましく、R2およびR3の一方がアルキルであり、他方がアリールまたはヘテロアリールであることがさらに好ましい。R2およびR3は互いに異なる置換基であって、それぞれが炭素数5〜12のアルキルまたはアリールであることが特に好ましい。このような態様であると、例えば、自己組織化単分子膜(SAM)で処理したシリコン基板に対する成膜性が高い点で好ましい。
化合物(1)は、高いキャリア移動度を有する。また、化合物(1)は、トランジスタのゲート電圧によるドレイン電流のオンオフ比が高く、半導体材料として優れた性質を有する。
化合物(1)は、溶媒に対して高い溶解性を示す。また、化合物(1)は、非対称構造を有するため、対称構造を有する化合物(例えば、式(1)においてR1=R4、かつR2=R3の化合物)に比べて結晶性が適度に低下している。このため、化合物(1)を含む溶液を基板上に塗布または印刷した場合に、前記溶液が均一に広がり、容易に膜を形成することができる。このように本発明では、簡便な成膜方法により化合物(1)を含む膜を製造することができる。そのため、化合物(1)の有する優れた性質を損なうことなく、有機半導体薄膜または有機半導体素子を製造することができる。
化合物(1)において分子の屈曲部位に存在するカルコゲン元素である硫黄原子を利用した分子間相互作用が向上しており、分子間でパイ電子軌道の重なりが十分あるため、化合物(1)を含む有機半導体膜は、実用上十分に高いキャリア移動度を示す。用途によってキャリア移動度の最適値は異なるが、例えば有機半導体素子として使用する場合の最大移動度は、好ましくは0.5cm2/Vs以上、より好ましくは1.0cm2/Vs以上である。最大移動度の上限は特に限定されないが、例えば40cm2/Vsである。
化合物(1)の一般的な合成方法を説明する。
化合物(1)の一般的な合成方法を説明する。
例えば、R3およびR4を有する化合物(11)を化合物(12)とクロスカップリングさせて化合物(13)を得て、化合物(13)をR1およびR2を有する化合物(14)とクロスカップリングさせて化合物(15)を得て、化合物(15)の脱保護によって化合物(16)を得て、化合物(16)を塩基の存在下でN,N−ジアルキルカルバモイルクロリドを反応させて化合物(17)を得て、これを窒素雰囲気下、無溶媒または溶媒中で300℃程度加熱して、化合物(1)を得ることができる。
前記反応では、溶媒として、例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、トルエン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンから選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。
化合物(1)は、溶媒に対して高い溶解性を示すため、カラムクロマトグラフィーや再結晶などの簡易な方法によって、合成後の化合物(1)の粗生成物を容易に精製することができる。
化合物(1)のうち非対称N字型二置換化合物は、例えば下記式で表される。
化合物(1)のうち非対称N字型二置換化合物は、例えば下記式で表される。
化合物(1)は、溶媒に対して高い溶解性を示すため、これを溶媒に溶解させた溶液状態で基板上に塗布または印刷することで、有機半導体膜等の膜を形成することができる。その際、使用する溶媒としては何を用いてもよく、また2種以上の溶媒を含む混合溶媒を用いてよい。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブチルセロソルブ等のエーテル又はアルコール溶媒;酢酸エチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル溶媒;アセトン等のケトン溶媒;アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素溶媒;ジメチルスルホキシド等の含硫黄溶媒などの有機溶媒、水またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。化合物(1)の溶媒に対する高い溶解性とは、化合物(1)の濃度0.01質量%以上を指す。
使用する溶媒は好ましくは沸点が120℃以上200℃以下の範囲である。この範囲の沸点の溶媒を用いることで乾燥が速すぎるがための膜ムラや、乾燥が遅すぎるがための膜の不均一化を防ぐことができる。
化合物(1)の溶媒に対する優れた溶解性により、種々の濃度の溶液を調製することができるので、得られる膜の結晶化度を変化させることができる。膜の結晶化度が変化すると、結晶化度に影響されるキャリア移動度も変化する。よって、結晶から非晶質までの広い範囲での結晶性を容易に調整でき、有機半導体膜の膜厚およびキャリア移動度といった、必要な素子特性を安定して再現できる。尚、単結晶を用いた場合では、結晶の質に由来する素子間のばらつきが非常に大きく、素子作製も困難なのに対し、多結晶ではばらつきが軽減でき、素子作製も容易で、工業的には大量生産に向いている。
本発明の溶液において、化合物(1)の含有量は、通常は0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上である。前記含有量の上限は特に限定されないが、例えば、0.5質量%、1.0質量%または5.0質量%である。
また、本発明の溶液は、高分子化合物をさらに含んでもよい。この場合における前記高分子化合物の含有量は、通常は1〜99質量%、好ましくは10〜99質量%、より好ましくは50〜99質量%である。
上記高分子化合物としては、例えば、熱可塑性高分子、熱硬化性高分子が挙げられる。具体的には、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアリーレンビニレンが挙げられる。
[有機半導体膜]
本発明の有機半導体膜は、化合物(1)を含み、多結晶構造を有する。
本発明の有機半導体膜の膜厚は、通常は1000nm以下、好ましくは200nm以下である。前記膜厚の下限は特に限定されないが、例えば、10nmである。本発明では、このような有機半導体薄膜を形成することができる。
本発明の有機半導体膜は、化合物(1)を含み、多結晶構造を有する。
本発明の有機半導体膜の膜厚は、通常は1000nm以下、好ましくは200nm以下である。前記膜厚の下限は特に限定されないが、例えば、10nmである。本発明では、このような有機半導体薄膜を形成することができる。
本発明の有機半導体膜は、上述の本発明の溶液を用いて形成することができ、例えば、前記溶液を基板上に塗布または印刷することにより、形成することができる。
化合物(1)を含む溶液を塗布または印刷できる基板としては、例えば、ガラス基板、金属基板(例:金、銅、銀等の基板)、結晶性シリコン基板、アモルファスシリコン基板等の無機基板;トリアセチルセルロース基板、ノルボルネン基板、ポリエステル基板(例:ポリエチレンテレフタレート基板)、ポリビニル基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板等の高分子基板が挙げられる。
化合物(1)を含む溶液を塗布または印刷できる基板としては、例えば、ガラス基板、金属基板(例:金、銅、銀等の基板)、結晶性シリコン基板、アモルファスシリコン基板等の無機基板;トリアセチルセルロース基板、ノルボルネン基板、ポリエステル基板(例:ポリエチレンテレフタレート基板)、ポリビニル基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板等の高分子基板が挙げられる。
化合物(1)を含む溶液を塗布する方法としては、例えば、ドロップキャスト法、スピンコート法、ディップコート法、ブレード法が挙げられる。化合物(1)を含む溶液を印刷する方法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、マスク印刷、オフセット印刷、平版印刷、凹版印刷、凸版印刷が挙げられる。これらの中でも、前記溶液をそのままインクとして用いたドロップキャスト法は、簡易な方法であり好ましい。
塗布または印刷の条件としては、例えば、乾燥温度が通常は90〜220℃、乾燥時間が通常は0.5〜24時間である。また、これらは例えば常圧下で行うことができる。溶液を加熱してもよく、基板を加熱してもよい。一態様では、例えば、基板を前記温度に加熱し、前記溶液を前記加熱した基板上に塗布または印刷して、有機半導体膜を形成する。
有機半導体膜を有機半導体素子の一部としてそのまま使用する際には、印刷によりパターニングを行ってもよい。化合物(1)を含むインクを用いれば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、マスク印刷およびオフセット印刷等を活用できる。また、印刷による有機半導体膜の製造は、回路の単純化、製造効率の向上および素子の低廉化・軽量化に寄与する。また、印刷による有機半導体膜の製造は、加熱や真空プロセスの必要性がなく流れ作業によって製造できるので、低コスト化および工程変更への対応性を増すことに寄与する。こういった観点から、溶媒への高い溶解性を示す化合物(1)は優れている。
[有機半導体素子]
本発明の有機半導体素子は、前記有機半導体膜および電極を有する。具体的には、前記有機半導体膜と、他の半導体性を有する素子とを組み合わせることによって、有機半導体素子とすることができる。半導体性を有する素子としては、例えば、整流素子、スイッチング動作を行うサイリスタ、トライアックおよびダイアックが挙げられる。さらに、本発明の有機半導体素子は、表示素子としても用いることができ、特にすべての部材を有機化合物で構成した表示素子が有用である。
本発明の有機半導体素子は、前記有機半導体膜および電極を有する。具体的には、前記有機半導体膜と、他の半導体性を有する素子とを組み合わせることによって、有機半導体素子とすることができる。半導体性を有する素子としては、例えば、整流素子、スイッチング動作を行うサイリスタ、トライアックおよびダイアックが挙げられる。さらに、本発明の有機半導体素子は、表示素子としても用いることができ、特にすべての部材を有機化合物で構成した表示素子が有用である。
上記表示素子としては、例えば、電子ペーパーやICカードタグ等のフレキシブルなシート状表示装置、および液晶表示素子が挙げられる。これらの表示素子は、可撓性のある高分子基板(高分子絶縁基板)上に、前記有機半導体膜と、この膜を機能させる構成要素を含む1つ以上の層とを形成することで作製することができる。このような方法で作製された表示素子は、可撓性を有しているため、衣類のポケットや財布などに入れて持ち運ぶことができる。
上記表示素子としては、固有識別符号応答装置を挙げることもできる。固有識別符号応答装置は、特定周波数または特定符号を持つ電磁波に反応し、固有識別符号を含む電磁波を返答する装置である。固有識別符号応答装置は、再利用可能な乗車券または会員証、代金の決済手段、荷物または商品の識別用シール、荷札または切手の役割、および、会社または行政サービスなどにおいて、高い確率で書類または個人を識別する手段として用いられる。
固有識別符号応答装置は、ガラス基板または可撓性のある高分子基板の上に、信号に同調して受信するための空中線と、受信電力で動作し、識別信号を返信する本発明の有機半導体素子とによって構成される。
本発明の有機半導体素子の例としては、電界効果トランジスタ(FET)が挙げられ、例えば図1に示す断面構造を有する。本発明のFETは、基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極、および本発明の有機半導体膜を有する。本発明のFETは、キャリアの注入効率を上げるために、キャリア注入層を有してもよい。
FETとしては、基板上にゲート電極が形成され、さらにゲート絶縁膜および有機半導体膜がこの順で形成された態様をボトムゲート型と呼び;基板上に有機半導体膜、ゲート絶縁膜およびゲート電極がこの順で形成された構造をトップゲート型と呼ぶ。
また、FETとしては、ソース電極およびドレイン電極が有機半導体膜の下部(基板側)に配置される態様をボトムコンタクト型FETと呼び;ソース電極およびドレイン電極が有機半導体膜の上部(有機半導体膜に対して基板と反対側)に配置される態様をトップコンタクト型FETと呼ぶ。
図1に、それぞれ、(a)ボトムゲート−トップコンタクト型,(b)ボトムゲート−ボトムコンタクト型、(c)トップゲート−トップコンタクト型,(d)トップゲート−ボトムコンタクト型のFETの断面図を示す。
基板としては、前述した種々の基板が挙げられる。
ゲート電極の材料としては、例えば、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Au、Pt、In、Ni、Nd、Cr、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ハイドープ等のシリコン、錫酸化物、酸化インジウムおよびインジウム錫化合物(Indium Tin Oxide:ITO)等の無機材料;導電性高分子等の有機材料が挙げられる。ただし、導電性高分子は、不純物添加により導電性を向上させる処理がされていても構わない。
ゲート電極の材料としては、例えば、Al、Ta、Mo、Nb、Cu、Ag、Au、Pt、In、Ni、Nd、Cr、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ハイドープ等のシリコン、錫酸化物、酸化インジウムおよびインジウム錫化合物(Indium Tin Oxide:ITO)等の無機材料;導電性高分子等の有機材料が挙げられる。ただし、導電性高分子は、不純物添加により導電性を向上させる処理がされていても構わない。
ゲート絶縁膜の材料としては、例えば、SiO2、SiN、Al2O3およびTa2O5等の無機材料;ポリイミドおよびポリカーボネート等の高分子材料が挙げられる。
基板および/またはゲート絶縁膜は、公知のシランカップリング剤を用いて表面処理されていてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、オクタデシルトリクロロシラン、デシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、トリエトキシトリデカフルオロオクチルシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシランが挙げられる。
基板および/またはゲート絶縁膜は、公知のシランカップリング剤を用いて表面処理されていてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、オクタデシルトリクロロシラン、デシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、トリエトキシトリデカフルオロオクチルシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシランが挙げられる。
ソース電極およびドレイン電極の材料としては、ゲート電極と同種の材料を用いることができ、ゲート電極の材料と同一であっても異なっていてもよく、異種材料を積層してもよい。
キャリア注入層は、キャリアの注入効率を高めるために必要に応じて、ソース電極およびドレイン電極と、有機半導体層とのいずれにも接する形で設けられる。キャリア注入層は、例えば、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリルおよび酸化モリブデン等を用いて製膜される。
FETを作製するには、例えば、まず図1(d)において、ガラス基板や高分子基板等の基板60上に、金属のマスク蒸着または導電性インクの印刷により、ソース電極10およびドレイン電極20を形成する。必要に応じて絶縁層を積層してもよい。その上に、化合物(1)の溶液を塗布または印刷することによって有機半導体膜40を形成し、さらに必要に応じてゲート絶縁膜50を形成し、その上にゲート電極30を形成すればよい。また電極と有機半導体材料間のイオン化ポテンシャルが大きくキャリアの注入に障壁があって閾値電圧が大きい場合には、有機半導体膜40と、ソース電極10およびドレイン電極20との間に、キャリア注入層70を形成して、前記閾値電圧を調節してもよい。
また、化合物(1)の薄膜を含むFET測定用セルを作製し、ゲート電圧を変化させながらソース・ドレイン電極間の電流を測定することで得られる、ドレイン電流/ゲート電圧曲線から電界効果移動度を求めることができる。さらに、ゲート電圧によるドレイン電流のオン/オフ動作を観測することもできる。
FETは、液晶表示素子やEL素子としても用いることができる。
FETは、液晶表示素子やEL素子としても用いることができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1H−NMRスペクトルは、Varian NMR System VNMRを用いて測定した。
1H−NMRスペクトルは、Varian NMR System VNMRを用いて測定した。
[実施例1]3-デシル-11-フェニルジナフト[2,3-d:2',3'-d']ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェン(以下「C10-Ph-DNBDT」ともいう)の合成および評価
(第1工程)2-メトキシ-7-フェニルナフタレンの合成
(第1工程)2-メトキシ-7-フェニルナフタレンの合成
Rf = 0.56 (クロロホルム:ヘプタン = 1:2), 1H NMR (500 MHz, CDCl3): δ 3.95 (s, 3H, OCH3), 7.15 (dd, 1H, ArH, J = 10 Hz, 2.5 Hz), 7.20 (sd, 1H, ArH, J = 2.4 Hz), 7.38 (tt, 1H, ArH, J = 7.4 Hz, 1.3 Hz), 7.47-7.50 (m, 2H, ArH), 7.60 (dd, 1H, ArH, J = 10 Hz, 1.9 Hz), 7.71-7.73 (m, 2H, ArH), 7.76 (d, 1H, ArH, J = 9.0 Hz), 7.84 (d, 1H, ArH, J = 8.4 Hz), 7.94 (s, 1H, ArH).
(第2工程)2-(4-ブロモ-2,5-ジメトキシフェニル)-6-デシル-3-メトキシナフタレンの合成
(第3工程)6-デシル-2-(2,5-ジメトキシ-4-(3-メトキシ-6-フェニルナフタレン-2-イル)フェニル)-3-メトキシナフタレンの合成
(第4工程)2-(6-デシル-3-ヒドロキシナフタレン-2-イル)-5-(3-ヒドロキシ-6-フェニルナフタレン-2-イル)ベンゼン-1,4-ジオールの合成
(第5工程)O,O'-(2-(6-デシル-3-((ジメチルカルバモチオイル)オキシ)ナフタレン-2-イル)-5-(3-((ジメチルカルバモチオイル)オキシ)-6-フェニルナフタレン-2-イル)-1,4-フェニレン) ビス(ジメチルカルバモチオエート)の合成
(第6工程)3-デシル-11-フェニルジナフト[2,3-d:2',3'-d']ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェン(C10-Ph-DNBDT)の合成
1H NMR (500 MHz, CDCl2CDCl2, 100℃): δ 0.89 (t, 3H, CH2CH3, J = 6.7 Hz), 1.29-1.41 (m, 14H, (CH2)7), 1.77 (quin, 2H, ArCH2CH2CH2, J = 6.7 Hz), 2.83 (t, 2H, ArCH2, J = 6.7 Hz), 7.38-7.39 (m, 2H, ArH), 7.48-7.51 (m, 2H, ArH), 7.67 (s, 1H, ArH), 7.75-7.77 (m, 2H, ArH), 7.80 (d, 1H, ArH, J = 8.5 Hz), 7.96 (d, 1H, ArH, J = 8.2 Hz), 8.11-8.12 (m, 2H, ArH), 8.21 (s, 1H, ArH), 8.33 (s, 1H, ArH), 8.62-8.65 (m, 3H, ArH), 8.68 (s, 1H, ArH).
[評価]
合成したC10-Ph-DNBDTのクロロベンゼン溶液(0.05質量%)を調製した。2-フェネチルトリエトキシシラン(以下「β-PTS」ともいう)で表面処理を施した、予め熱酸化処理でゲート絶縁膜(100 nm)を形成したシリコン基板(以下「基板」と略す)をホットプレート上で200℃に加熱し、前記クロロベンゼン溶液を、図2のようにドロップキャスト法により基板に垂らした。溶液が基板に浸透するように溶媒は蒸発した。この状態で1時間放置して膜を乾燥して、膜厚200 nmの多結晶有機半導体膜を形成した。得られた前記半導体膜上に金属マスクを通して、金(膜厚50 nm)を成膜して、チャネル長200 μm、チャネル幅2 mmのソース電極およびドレイン電極を形成し、トップコンタクト型FETを作製した。
飽和領域におけるドレイン電流−ゲート電圧特性相関は下記の式で表される。
合成したC10-Ph-DNBDTのクロロベンゼン溶液(0.05質量%)を調製した。2-フェネチルトリエトキシシラン(以下「β-PTS」ともいう)で表面処理を施した、予め熱酸化処理でゲート絶縁膜(100 nm)を形成したシリコン基板(以下「基板」と略す)をホットプレート上で200℃に加熱し、前記クロロベンゼン溶液を、図2のようにドロップキャスト法により基板に垂らした。溶液が基板に浸透するように溶媒は蒸発した。この状態で1時間放置して膜を乾燥して、膜厚200 nmの多結晶有機半導体膜を形成した。得られた前記半導体膜上に金属マスクを通して、金(膜厚50 nm)を成膜して、チャネル長200 μm、チャネル幅2 mmのソース電極およびドレイン電極を形成し、トップコンタクト型FETを作製した。
飽和領域におけるドレイン電流−ゲート電圧特性相関は下記の式で表される。
作製した素子について、半導体パラメータアナライザー(Keysight B1500A)を用いて測定を行ったところ、キャリア移動度について最大移動度は1.33cm2/Vs、平均移動度は0.55 cm2/Vs、移動度の変動係数は45 %、平均閾値電圧は9.0 V、オンオフ比は107であった。
[実施例2]3-ヘキシル-11-フェニルジナフト[2,3-d:2',3'-d']ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェン(以下「C6-Ph-DNBDT」ともいう)
黄色固体. 収量: 2.37 g, 収率: 93%, 1H NMR (500 MHz, CDCl2CDCl2, 100℃): d 0.90 (t, 3H, CH2CH3, J = 7.1 Hz), 1.22-1.36 (m, 6H, (CH2)3), 1.77 (quin, 2H, ArCH2CH2CH2, J = 7.1 Hz), 2.76 (t, 2H, ArCH2, J = 7.5 Hz), 7.38-7.40 (m, 2H, ArH), 7.48-7.51 (m, 2H, ArH), 7.67 (s, 1H, ArH), 7.75-7.81 (m, 3H, ArH), 7.96 (d, 1H, ArH, J = 8.2 Hz), 8.11-8.12 (m, 2H, ArH), 8.21 (s, 1H, ArH), 8.33 (s, 1H, ArH), 8.62-8.65 (m, 3H, ArH), 8.68 (s, 1H, ArH).
[実施例3]3-オクチル-11-フェニルジナフト[2,3-d:2',3'-d']ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェン(以下「C8-Ph-DNBDT」ともいう)
黄色固体. 収量: 6.54 g, 収量: 94%. 1H NMR (500 MHz, CDCl2CDCl2, 100℃): d 0.89 (t, 3H, CH2CH3, J = 7.1 Hz), 1.27-1.30 (m, 10H, (CH2)5), 1.77 (quin, 2H, ArCH2CH2CH2, J = 7.1 Hz), 2.83 (t, 2H, ArCH2, J = 7.5 Hz), 7.38-7.40 (m, 2H, ArH), 7.48-7.51 (m, 2H, ArH), 7.67 (s, 1H, ArH), 7.75-7.81 (m, 3H, ArH), 7.96 (d, 1H, ArH, J = 8.2 Hz), 8.11-8.12 (m, 2H, ArH), 8.21 (s, 1H, ArH), 8.33 (s, 1H, ArH), 8.62-8.65 (m, 3H, ArH), 8.68 (s, 1H, ArH).
[評価]
実施例2〜3で合成したC6-Ph-DNBDT、C8-Ph-DNBDTおよび公報材料C10-DNBDTについても、実施例1に準拠してトランジスタ特性を評価した。C10-DNBDTは、特許第6008158号に記載された3,11-ジデシルジナフト[2,3-d:2',3'-d']ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェンである。その結果を表1に示す。
実施例2〜3で合成したC6-Ph-DNBDT、C8-Ph-DNBDTおよび公報材料C10-DNBDTについても、実施例1に準拠してトランジスタ特性を評価した。C10-DNBDTは、特許第6008158号に記載された3,11-ジデシルジナフト[2,3-d:2',3'-d']ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジチオフェンである。その結果を表1に示す。
図3にC10-Ph-DNBDTの飽和領域の伝達特性を示し、図4にC10-Ph-DNBDTの出力特性を示す(Vg: ゲート電圧、Id: ドレイン電流、Vd: ドレイン電圧)。また、図5に、C10-Ph-DNBDTおよびC10-DNBDTの薄膜の、基板に対する被覆状況を表す原子間力顕微鏡(AFM)像を示す。図5のAFM像が示すように、非対称に置換基を有する有機半導体材料から成膜すると基板を材料が覆っている様子が分かる。これに対して、C10-DNBDTから成膜すると基板が露出している様子が明らかとなった。これが性能の差に繋がったと考えられる。
10・・・ソース電極、20・・・ドレイン電極、30・・・ゲート電極、40・・・有機半導体膜、50・・・ゲート絶縁膜、60・・・基板、70・・・キャリア注入層
Claims (10)
- 式(1)で表される化合物を含む多結晶有機半導体膜形成用溶液。
- 前記式(1)におけるR1およびR4が水素であり、R2およびR3が互いに異なる原子または基である、請求項1に記載の多結晶有機半導体膜形成用溶液。
- 前記式(1)におけるR2およびR3が、互いに異なる原子または基であって、水素、ハロゲン、炭素数1〜20のアルキル、アリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、アルキルチオアリール、ヘテロアリール、アルキルへテロアリール、アルコキシ、アルキルチオまたはアルキルシリルである、請求項1または2に記載の多結晶有機半導体膜形成用溶液。
- 前記式(1)におけるR2およびR3が、互いに異なる基であって、炭素数1〜20のアルキル、アリールまたはヘテロアリールである、請求項1または2に記載の多結晶有機半導体膜形成用溶液。
- 前記式(1)におけるR2およびR3の一方がアルキルであり、他方がアリールまたはヘテロアリールである、請求項1または2に記載の多結晶有機半導体膜形成用溶液。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の式(1)で表される化合物を含む多結晶有機半導体膜。
- 請求項6に記載の多結晶有機半導体膜と電極とを有する有機半導体素子。
- 基板、ゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース電極、ドレイン電極および請求項6に記載の多結晶有機半導体膜を有する電界効果トランジスタ。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶液を用いて、塗布法または印刷法により、多結晶有機半導体膜を形成する、多結晶有機半導体膜の製造方法。
- 前記塗布法としてドロップキャスト法を用いる、請求項9に記載の多結晶有機半導体膜の製造方法。
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