JP4970735B2 - それ自体は強固な部材に脆弱断面線を形成するための装置および方法 - Google Patents

Description

本発明は、それ自体は強固で、支持型となる受け部に対して完全にはその形状が密着していない部材、特に自動車用インストルメントパネルなどの射出成形された成形部材に脆弱断面線を形成するための装置および方法に関するものである。

自動車においては、いわゆるエアバッグ・システムにより衝突時の乗員の保護を行うことが現在の標準仕様となっている。その際に、同乗者の前方の計器盤、つまりインストルメントパネルに凹所を設けて、その中にエアバッグ装置を設置することが通常である。また視覚的な理由から、エアバッグ装置を見えないように取り付けることが通例である。同乗者用エアバッグには、エアバッグ装置を支持するインストルメントパネル部分の裏面に材料脆弱個所が形成されるが、それは事故の際に可視面の裂開、及び、それによるエアバッグの開放を可能とするために機能する。従来技術において既にこのような材料脆弱個所の形成が公知であり、多層構造のインストルメントパネルの場合には最上層の表面が脆弱化されており、その下に位置する複数部材からなるインストルメントパネルの複層が完全に破壊される。

しかし、インストルメントパネルが単一部材から形成される場合には、必要な脆弱化をもたらすために満足のいく方法がこれまで見出されていない。射出成形法に基づいて製造されたインストルメントパネルにおける脆弱化を射出成形部材に形成するために、該部材に極薄肉部分を設ける試みは失敗している。その主な理由は、脆弱化個所が必然的に浮かび上がって見えるからであり、極薄肉個所の部分における圧力状態および流れ状態は均一ではなく、縞や流動線が現れてしまうからである。

また、射出成形法に基づいて製造されたインストルメントパネルの脆弱化を、次の工程で、溝またはスロットのフライス加工により背面側から形成するという従来の試みは利用可能な成果をあげていない。というのは、射出成形された成形部材が、それを支持する支持型となる受け部上で安定しないのである。前述のインストルメントパネルの表面が比較的軟らかい場合、真空状態の受け部に対して、その空気圧により表皮が基準面に確実に密着するが、強固な射出成形部材の場合には、その堅さゆえに確実に密着できないのである。したがって、前述した従来の通常の加工法では成功しない。

安全上の観点から、さらにインストルメントパネルにおける脆弱断面線には厳しい公差が要求され、いわゆる残留肉厚を維持しなければならない。残留肉厚の公差は、事故の場合に確実な裂開が生じる一方、該脆弱部が車の寿命にわたって線となって表出しないこと、あるいは意図しない裂開が生じ得ない範囲内に維持されなければならない。したがって、通常の残留肉厚はおよそ０．５ｍｍの値となり、またこの肉厚に対する通常公差は＋／−０．０３ｍｍの大きさに収まる。そのため、特に自動車用インストルメントパネルにおける脆弱断面線を高精度に形成するために重要なのは、加工ツールの長さおよび形状を厳密に管理すること、ツールに対する当該機械の軸および機器の公差を維持すること、さらにワークピースつまり部材または成形部品を支持する受け部の位置を考慮することである。

したがって、本発明の目的は、必要な公差を備えた脆弱断面線が、支持型である受け部に密着しない部材においても形成できる装置および方法を提供することである。

本発明によれば、この目的は、それ自体は強固で、支持型となる受け部（１１）に対して完全にはその形状が密着していない部材（１０）に脆弱断面線を形成するための装置であって、基点を基準とするプログラムを処理するために設けられたＣＮＣ装置を備えた多軸工作機械と、加工すべき部材（１０）を受ける受け部（１１）とからなり、前記部材（１０）の実際の空間位置を把握するために、加工制御用の第１、第２及び第３の間隔センサ（１３）が前記受け部（１１）に組み込まれていることを特徴とする装置により達成される。

この装置において、好ましくは、前記間隔センサ（１３）は形成すべき脆弱断面線の区域に配設されている。また、好ましくは、前記間隔センサ（１３）として、機械式センサと非接触作動式センサとの少なくともいずれかが設けられている。

また、本発明によれば、この目的は、それ自体は強固で、支持型となる受け部に対して完全にはその形状が密着していない部材に脆弱断面線を形成するための方法であって、形成すべき脆弱断面線の区域において、支持型となる受け部に対する前記部材の実際の空間位置を、前記受け部（１１）に組み込まれた加工制御用の第１、第２及び第３の間隔センサによって把握し、次にＣＮＣ多軸工作機械を用いて、前記実際の空間位置に基づいて加工を行うことを特徴とする方法により達成される。

この方法において、好ましくは、前記実際の空間位置が、第１乃至第３の間隔センサにより測定され、加工線が前記間隔センサの測定結果に基づいて移動される。また、好ましくは、加工プログラムを任意に空間的に回転できるＣＮＣ装置が使用される。

本発明は、加工すべき部材は基本的に理想的な三次元形状にて成形されているが、加熱公差または収縮公差のために僅かに変形し、該部材は受け部に対して必ずしも完全には密着していないことを前提としている。本発明によれば、加工用の受け部の基準面に正確には密着していない加工すべき部材は、その実際の位置が測定され、そのために受け部の基準面には、基準面とワークピースつまり加工部材との間隔を充分な精度で把握できる間隔センサが設けられている。好ましくは、ワークピースつまり加工部材の表面に接触する機械式センサ、ないしは誘導電界または容量電界を用いて前記間隔を測定する非接触式センサである。

ワークピースつまり加工部材の実際の空間位置は３つのセンサにより把握または測定されるが、これらのセンサは本発明のさらに好適な構成に基づいて、形成すべき脆弱断面線の近傍に配置される。次に、測定された３つの座標から、ワークピースの実際の空間位置が高性能ＣＮＣ装置を用いて算定でき、さらに脆弱断面線を形成するための切削プログラム（例えば切削軌跡、切削点）がこの空間位置に応じて調整され、開始される。その際に好適に使用されるのは、加工プログラム（例えば加工軌跡、加工点）を、任意に空間的に回転できるＣＮＣ装置である。

本発明の別の構成に基づいて、ワークピースの形状の密着のために立体的空間での変形を脆弱断面線区域において補正するために、複数のセンサが部品加工用ＣＮＣ−プログラムの各基点（支点）に設けられており、次にこれらの各センサの測定結果に基づいて加工線の当該基点（支点）が適正に移動される。当該加工のために好適に採用されるのは、ＣＮＣ装置用の基点（支点）を基準とするプログラムである。

図１には、特に、射出成形された自動車用インストルメントパネルからなる部材１０の断面が概略的に示されている。部材１０は加工のために、支台となる受け部１１上に配置されているが、部材１０はその形状が完全には密着していない。受け部１１は、図示されていないＣＮＣ工作機械の加工テーブル１２上に固定されている。

受け部１１内には、図２により詳しく図示されている機械式センサ１３が設置されており、該センサは受け部１１の表面と成形部材１０の下面との間隔を測定するために、脆弱断面線を形成するための加工用区域に配設されている。この間隔センサ１３は、信号回線１４を介して測定信号を図示されていないＣＮＣ装置に伝える。

図２には間隔センサ１３の拡大図が示されているが、該センサは丸められた接点先端１６を持つ測定フィーラ１５として構成されており、また対応して形成された受け部１１の穴内の入れ子１７に挿入されている。入れ子１７内で間隔センサ１３を固定および調整するために、締付けリング１８および締付けねじ１９が設けられている。

図２に示すように、間隔センサ１３の丸められた先端１６は受け部１１の表面２０と成形部材１０の下面２１との間隔を測定し、それにより該成形部材の実際の空間位置を把握すると共に、脆弱断面線を形成するための次の加工工程のために前記空間位置を移動させる。

受け部上に位置する射出成形された成形部品の概略断面図である。 図１の間隔センサの区域における拡大断面図である。

符号の説明

１０ 部材
１１ 受け部
１３ 間隔センサ

Claims (6)

1. それ自体は強固で、支持型となる受け部（１１）に対して完全にはその形状が密着していない部材（１０）に脆弱断面線を形成するための装置であって、
   基点を基準とするプログラムを処理するために設けられたＣＮＣ装置を備えた多軸工作機械と、
   加工すべき部材（１０）を受ける受け部（１１）とからなり、
   前記部材（１０）の実際の空間位置を把握するために、加工制御用の第１、第２及び第３の間隔センサ（１３）が前記受け部（１１）に組み込まれていることを特徴とする装置。
2. 前記間隔センサ（１３）は形成すべき脆弱断面線の区域に配設されていることを特徴とする請求項１に記載の装置。
3. 前記間隔センサ（１３）として、機械式センサと非接触作動式センサとの少なくともいずれかが設けられていることを特徴とする請求項１又は２に記載の装置。
4. それ自体は強固で、支持型となる受け部に対して完全にはその形状が密着していない部材に脆弱断面線を形成するための方法であって、
   形成すべき脆弱断面線の区域において、支持型となる受け部に対する前記部材の実際の空間位置を、前記受け部（１１）に組み込まれた加工制御用の第１、第２及び第３の間隔センサによって把握し、
   次にＣＮＣ多軸工作機械を用いて、前記実際の空間位置に基づいて加工を行うことを特徴とする方法。
5. 加工線が前記間隔センサの測定結果に基づいて移動されることを特徴とする請求項４に記載の方法。
6. 加工プログラムを任意に空間的に回転できるＣＮＣ装置が使用されることを特徴とする請求項４又は５に記載の方法。

Images