JP4970319B2 - 列車位置算出装置、地上装置及び列車位置算出方法 - Google Patents

列車位置算出装置、地上装置及び列車位置算出方法 Download PDF

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Description

本発明は、列車位置算出方法等に関する。
軌道を走行する列車の位置を検知する方法としては、軌道回路方式や速度発電機を用いた方式がある。速度発電機を用いた方式では、列車の車軸に速度発電機を取り付け、車軸の回転に伴って発生するパルス信号をもとに車軸の回転数を計数し、基準位置からの走行距離を算出し、走行距離によって現在の列車位置を算出する。しかし、この速度発電機を用いた方式では、車軸の空転/滑走により走行距離に誤差が生じるという問題があるが、軌道回路方式と組み合わせることで誤差が補正されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−178614号公報
また、近年では、GPS(Global Positioning System)を用いた方法も提案されている。しかしながら、GPSでは、列車に専用のGPS受信機を備える必要がある。また、GPS信号を受信できないトンネル内等では、列車位置検知が不可能となる。更に、列車の運行制御等では、列車位置は基本的にキロ程が用いられているが、GPSによって検知される列車位置は緯度経度といった絶対位置である。このため、検知された位置を該当する軌道上の位置(キロ程)に変換する必要がある。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な方法で列車位置を算出可能とすること目的としている。
上記課題を解決するための第1の発明は、
キロ程で示された配設位置を記憶する無線機(例えば、図1の地上装置30)が軌道に沿って配設された当該軌道上を走行する列車(例えば、図1の列車10)に設置されて、当該列車の列車位置を算出する列車位置算出装置(例えば、図1の車上装置20)であって、
前記列車の走行によって通信圏内に位置した前記無線機と通信を行う通信部(例えば、図2の無線通信部220)と、
前記通信部を制御して、前記通信部の相手先無線機の配設位置を取得する無線機位置取得部(例えば、図2の処理部210)と、
前記列車と前記相手先無線機間の無線通信における伝搬遅延時間を算出する伝搬遅延時間算出部(例えば、図2の処理部210)と、
前記無線機位置取得部により取得された配設位置と前記伝搬遅延時間算出部により算出された伝搬遅延時間とに基づいて前記列車が位置するキロ程を列車位置として算出する列車位置算出部(例えば、図2の処理部210)と、
を備えた列車位置算出装置である。
また、第6の発明は、
キロ程で示された配設位置を記憶する無線機が軌道に沿って配設された当該軌道上を走行する列車の車上装置が、当該列車の列車位置を算出する列車位置算出方法であって、
前記車上装置は、前記列車の走行によって通信圏内に位置した前記無線機と通信を行う通信部を備え、
前記通信部を制御して、前記通信部の相手先無線機の配設位置を取得する無線機位置取得ステップ(例えば、図10のステップA5)と、
前記列車と前記相手先無線機間の無線通信における伝搬遅延時間を算出する伝搬遅延時間算出ステップ(例えば、図10のステップA17)と、
前記無線機位置取得ステップにより取得された配設位置と前記伝搬遅延時間算出ステップにより算出された伝搬遅延時間とに基づいて前記列車が位置するキロ程を列車位置として算出する列車位置算出ステップ(例えば、図10のステップA25)と、
を含む列車位置算出方法である。
この第1又は第6の発明によれば、通信圏内の無線機と通信を行って、相手先無線機の配設位置が取得されるとともに、列車とこの相手先無線機間の無線通信における伝搬遅延時間が算出され、取得された配設位置と算出された伝搬遅延時間とに基づいて、列車が位置するキロ程が列車位置として算出される。無線機は軌道に沿って配設されている。また、伝搬遅延時間に光速を乗じることで、相手先無線機との間の距離を算出できる。つまり、無線機の配設位置がキロ程である場合、この無線機の配設位置から算出した距離だけ離れた位置のキロ程を列車の列車位置として算出することができる。従って、少なくとも1つの地上無線機との通信を行うといった簡易な方法で、列車位置をキロ程で算出することができる。
第2の発明は、第1の発明の列車位置算出装置であって、
前記通信部は、所定の通信可能距離を有し、
前記無線機は、前記所定の通信可能距離以下の距離間隔で前記軌道に沿って配設されており、
前記列車位置算出部は、前記無線機位置取得部が取得した配設位置及び前記伝搬遅延時間算出部が算出した伝搬遅延時間に基づき、前記列車の進行方向前方直近に位置する無線機と、進行方向後方直近に位置する無線機とを選択し、該選択した無線機それぞれの配設位置及び伝搬遅延時間に基づいて前記列車の前記列車位置を算出する、
列車位置算出装置である。
この第2の発明によれば、配設位置及び伝搬遅延時間に基づき、列車の進行方向直近に位置する無線機と進行方向後方直近に位置する無線機とが選択され、選択された無線機それぞれの配設位置及び伝搬遅延時間に基づいて列車の列車位置が算出される。無線機は、通信部の通信可能距離以下の距離間隔で軌道に沿って配設されており、少なくとも、列車の前方直近及び後方直近の無線機と通信が可能となっている。上述のように、原理的には、少なくとも1つの無線機と通信を行うことで列車位置を算出可能であるが、無線機の性能や、マルチパスやハイトパターンといった電波の乱れによって、算出した伝搬遅延時間が正確とならず、列車位置に誤差が生じるおそれがある。しかしながら、本発明のように、前方直近及び後方直近の合計2つの無線機を選択し、それぞれの無線機からの距離を算出することで、より正確に列車位置を算出することが可能となる。
第3の発明は、第1又は第2の発明の列車位置算出装置であって、
前記列車位置算出部は、前記無線機位置取得部により取得された各無線機の配設位置の差に基づく距離と、前記伝搬遅延時間算出部により算出された各無線機それぞれについての伝搬遅延時間に基づく前記列車から当該無線機までの距離とを用いた所定の誤差最小化演算を行って、前記列車の列車位置を算出する誤差最小化列車位置算出部(例えば、図2の処理部210;図10のステップA27)を有する、
列車位置算出装置である。
この第3の発明によれば、取得された各無線機の配設位置の差に基づく距離と、各無線機それぞれについての伝搬遅延時間に基づく列車から当該無線機までの距離とを用いた所定の誤差最小化演算を行って、列車の列車位置が算出される。上述のように、原理的には、少なくとも1つの無線機との通信を行うことで列車位置を算出できるが、無線機性能やマルチパス等によって列車位置に誤差が生じるおそれがある。しかし、本発明によれば、この誤差を補正してより正確な列車位置の算出が可能となる。ここで、誤差最小化演算としては、例えば最小二乗法がある。
第4の発明は、第1〜第3の何れかの発明の列車位置算出装置であって、
前記通信部は、前記無線機との間で所定の拡散符号を用いたスペクトラム拡散方式で所定データの送受信を行い、
前記伝搬遅延時間算出部は、前記所定データの送受信にかかる応答時間に基づき伝搬遅延時間を算出する第1算出部(例えば、図2の処理部210;図10のステップA17)と、前記無線機からの信号受信時の拡散符号のコード位相から伝搬遅延時間を算出する第2算出部(例えば、図2の処理部210;図10のステップA33)とを有する、
列車位置算出装置である。
この第4の発明によれば、無線機との間で所定の拡散符号を用いたスペクトラム拡散方式で所定データの送受信が行われる。このため、伝搬遅延時間の算出方法として、所定データの送受信にかかる応答時間に基づく方法、及び、無線機からの信号受信時の拡散符号のコード位相に基づく方法の何れの方法も実行可能である。
そこで、第5の発明として、
前記伝搬遅延時間算出部は、前記通信部が通信可能な前記無線機の数に応じて前記第1算出部及び第2算出部を切り替えて機能させて伝搬遅延時間を算出する列車位置算出装置を構成しても良い。
この第5の発明によれば、通信可能な無線機の数に応じて、伝搬遅延時間の算出方法が、所定データの送受信にかかる応答時間に基づく方法、或いは、拡散符号のコード位相に基づく方法の何れかに切り替えられる。これにより、通信可能な無線機の数が複数の場合には、所定データの送受信にかかる応答時間に基づいて伝搬遅延時間を算出し、例えば無線機の故障等によって通信可能な無線機が1つとなった場合には、拡散符号のコード位相から伝搬遅延時間を算出する方法に切り替えるといったことが可能となる。
本発明によれば、通信圏内の無線機と通信を行って、相手先無線機の配設位置が取得されるとともに、列車とこの相手先無線機間の無線通信における伝搬遅延時間が算出され、取得された配設位置と算出された伝搬遅延時間とに基づいて、列車が位置するキロ程が列車位置として算出することができる。無線機は軌道に沿って配設されている。また、伝搬遅延時間に光速を乗じることで、相手先無線機との間の距離を算出できる。つまり、無線機の配設位置がキロ程である場合、この無線機の配設位置から算出した距離だけ離れた位置のキロ程を、列車の列車位置として算出することができる。従って、少なくとも1つの地上無線機との通信を行うといった簡易な方法で、列車位置をキロ程で算出することができる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
[構成]
図1は、本実施形態における列車位置算出システム1の構成図である。同図によれば、列車位置算出システム1は、列車10に搭載される列車位置算出装置である車上装置20と、軌道(線路)Rに沿って地上に固定設置された地上装置30とから構成される。
車上装置20は、スペクトラム拡散方式による無線通信を行う無線装置(SS無線機)を有し、通信圏内に位置する地上装置30との無線通信を行って列車10の列車位置を算出する処理を行う。具体的には、地上装置30に対する呼出信号を送出し、通信圏内に位置する地上装置30からこの呼出信号に応答した応答信号を受信すると、受信した応答信号をもとに、列車10の現在の列車位置を算出する。
地上装置30は、軌道Rに沿って隣り合う地上装置30の間の設置間隔Dが、車上装置20の通信可能距離よりも短い間隔(具体的には、500m〜1km程度)で設置されている。勿論、この設置間隔Dは、地上装置30毎に異なっていても良い。また、この地上装置30は、車上装置20との間でスペクトラム拡散方式による無線通信を行う無線装置を有し、車上装置20からの呼出信号を受信すると、この呼出信号に応答した応答信号を車上装置20に送信する。
ここで、地上装置30と車上装置20との間の無線通信は、車上装置20が複数の地上装置30との間で無線通信を行うこととなるため、CSMA/CA規格に準じた通信方式で行われる。
図2は、車上装置20の機能構成を示す図である。同図によれば、車上装置20は、処理部210と、無線通信部220と、記憶部230とを備えて構成される。
処理部210は、例えばCPUで実現され、車上装置20の全体制御を行う。また、処理部210は、列車位置算出プログラム231に従った列車位置算出処理を実行して、列車10の現在の列車位置を算出する。
具体的には、列車位置算出処理では、先ず、地上装置30に対する呼出信号を送出する。次いで、所定時間(例えば、2秒)の間、呼出信号に応答して地上装置30から送信されてくる応答信号を受信する。この応答信号には、当該信号の送信元である地上装置30に記憶されている地上装置データ310が含まれている。図3に、地上装置データ310の一例を示す。同図に示すように、地上装置データ310には、該当する地上装置30の識別情報である装置IDと、キロ程で表現された配設位置と、軌道Rに沿った隣の地上装置30の装置ID及び当該装置と隣の地上装置30との間の直線距離とが含まれている。
処理部210は、応答信号を受信すると、この受信した応答信号に含まれる地上装置データ310を、応答信号を受信した際の当該受信信号の拡散符号のずれ(コード位相)及び受信時刻と対応付けて、受信応答信号データ232に格納する。なお、受信時刻は、応答信号の受信を完了した時刻とする。
図4に、受信応答信号データ232の一例を示す。同図によれば、受信応答信号データ232は、1回の呼出信号に対する応答信号それぞれについて、その受信時刻232aと、地上装置データ310に含まれる装置ID232b、設置位置232c、隣接地上装置232dの装置ID及び距離と、コード位相232eとを対応付けて格納している。
次いで、処理部210は、受信した応答信号の送信元の地上装置30と、列車10の現在の列車位置との相対的な位置関係を判断する。すなわち、列車10の進行方向を前方として、送信元の地上装置30が、列車10の前方/後方の何れに位置するかを判断する。
図5は、列車10と地上装置30との位置関係の判断を説明する図である。同図では、左方向を列車10の進行方向としている。そして前回の算出時刻t0から今回の算出時刻t1までの経過時間Δtと、列車10の最高走行速度Vmとから、前回の算出時点から今回の算出時点までの間に列車10が走行し得る最大距離Dmを算出する。
Dm=Vm×Δt ・・(1)
つまり、前回算出時の列車10の位置P0から、軌道Rに沿って前方に距離Dmだけ進んだ位置P1は、今回算出時において列車10が進行し得る最大位置となる。この位置P0,P1と地上装置30の位置とを比較して、今回算出時点において、地上装置30が列車10の進行方向前方/後方の何れに位置するかを判断する。なお、地上装置30の位置及び列車10の位置P0,P1はキロ程で表現されているので、このキロ程の大小を比較することで、前後の位置関係を判断できる。すなわち、位置P0より後方に位置する地上装置30aは、今回の算出時点において列車10の進行方向「後方」と判断する。また、位置P1より前方に位置する地上装置30cは、今回の算出時点において列車10の進行方向「前方」と判断する。また、位置P0,P1との間に位置する地上装置30bは、今回の算出時点において列車10の前方であるのか後方であるのかは「不確定」と判断する。
なお、式(1)において、列車10の最高走行速度Vmを用いることとしたが、この最高速度Vmに替えて、前回の算出時刻tにおける走行速度V0に所定の係数(例えば、1.5)を乗じた速度を用いることにしても良い。
ここで、前回の算出時刻t0及び列車10の位置P0は、算出履歴データ234から得ることができる。算出履歴データ234は、ここまでの列車10の列車位置の算出履歴のデータである。図6に、算出履歴データ234の一例を示す。同図によれば、算出履歴データ234は、列車位置の算出時刻234aと、算出された列車10の列車位置234bとを対応付けて格納している。列車位置の算出時刻は、車上装置20が呼出信号を送信した時刻とする。
列車10と地上装置30との相対的な位置関係の判断結果は、相対位置データ233に格納される。図7に、相対位置データ233の一例を示す。同図によれば、相対位置データ233は、応答信号の送信元である地上装置30それぞれについて、装置ID233aと、判断された列車10に対する相対位置233bとを対応付けて格納している。
地上装置30の相対位置(前方/後方)を判断すると、処理部210は、受信応答信号データ232を参照して、相対的な位置関係が判断された地上装置30のうちから、列車10の前方直近の地上装置30及び後方直近の地上装置30を選択する。ここで、「直近」とは、軌道Rに沿った距離が最も短い、すなわちキロ程の差が最も小さいことである。
次いで、選択した前方直近の地上装置30と列車10との間の伝搬遅延時間T1と、後方直近の地上装置30と列車10との間の伝搬遅延時間T2とを算出する。
図8は、伝搬遅延時間Tの算出を説明する図である。同図では、車上装置20と2台の地上装置30−1,30−2との間で通信が行われる場合を示している。すなわち、送信時刻t0において、車上装置20が呼出信号を送信する。地上装置30−1においてこの呼出信号が受信されると、続いて地上装置30−1から応答信号が送信され、この応答信号が車上装置20において受信される。また、地上装置30−2において呼出信号が受信されるが、地上装置30−2からは所定時間Δtが経過した後に応答信号が送信され、この応答信号が車上装置20において受信される。
この場合、地上装置30−1の応答時間S1は、次式(2)となる。
S1=t1+tx2+t4+tx5 ・・(2)
また、地上装置30−2の応答時間S2は、次式(3)となる。
S2=t2+tx3+Δt+t5+tx7 ・・(3)
なお、応答時間Sは、呼出信号の送信時点からこれに対する応答信号の受信を完了した時点までの時間とする。
同図において、「tx1〜tx7」は、送信信号/応答信号の送受信に要する時間である。送信信号/応答信号を固定長とすると、この時間tx1〜xt7は、データ長によって決まる。また、「Δt」は、CSMA/CA通信によって生じる遅延時間であり、既知の値である。従って、遅延時間T1,T2は、応答時間S1,S2を用いると、次式(4a),(4b)となる。
T1=(t1+t4)/2
=(S1−(tx2+tx5))/2 ・・(4a)
T2=(t2+t5)/2
=(S2−(tx3+Δt+tx7))/2 ・・(4b)
続いて、処理部210は、算出した伝搬遅延時間T1,T2をもとに、前方直近の地上装置30−1と列車10の間の距離L1、後方直近の地上装置30−2と列車10との間の距離L2を、次式(5a),(5b)に従って算出する。
L1=C×T1 ・・(5a)
L2=C×T2 ・・(5b)
式(5a),(5b)において、「C」は光速である。
地上装置30−1,30−2間の軌道Rがほぼ直線とみなせる場合、距離L1とL2との和L12は、軌道Rに沿った地上装置30−1,30−2の間の距離Dにほぼ等しくなる。そこで、地上装置30−1,30−2の間の距離の測定値である距離L1,L2の和L12と、軌道Rに沿った地上装置30−1,30−2の間の距離Dとの距離の差ΔLを算出する。地上装置30−1,30−2の間の軌道Rに沿った距離Dは、地上装置30−1,30−2それぞれのキロ程の差として算出される。そして、距離差ΔLが所定値(例えば、10m)以下ならば、前方直近の地上装置30−1の位置から、距離L1だけ軌道Rに沿って後方に離れた位置を、列車10の現在の列車位置と判断する。地上装置30の位置はキロ程で表現されており、キロ程から距離L1を加算或いは減算したキロ程が、列車の現在の列車位置となる。距離L1を、加算するか減算するかは、列車10の進行方向が、キロ程が増加する方向であるのか減少する方向であるのかによって予め決まり、基本的には上り列車であるのか下り列車であるのかによって決まる。
一方、距離差ΔLが所定値を超えるならば、測定に誤差が生じているとみなし、最小二乗法によって誤差補正を行う。図9は、最小二乗法による誤差補正を説明する図である。同図において、列車10と地上装置30−1,30−2それぞれの間の実際の距離をX,Y、地上装置30−1,30−2の間の実際の距離をDとする。また、算出した距離L1と実際の距離Xとの誤差をε1、距離L2と実際の距離Yとの誤差をε2、算出した距離L1,L2の和と実際の距離Dmとの差をε3とすると、次式(6a)〜(6b)が成り立つ。
X+Y=Dm+ε3 ・・(6a)
X=L1+ε1 ・・(6b)
Y=L2+ε2 ・・(6c)
この式(6)において、次式(7)で与えられるfが最小となるL1,L2を算出する。
f=(ε1)+(ε2)+(ε3) ・・(7)
この式(7)の解は、最小二乗法による誤差最小化演算により求められる。そして、算出したXを前方直近の地上装置30−1からの距離として、或いは、算出したYを後方直近の地上装置30−2からの距離として、列車10の位置を算出する。
また、受信した応答信号の送信元の地上装置30が、前方/後方の一方の地上装置30のみである場合には、前方/後方直近の地上装置30を選択する。次いで、選択した地上装置30からの受信信号の拡散符号のずれ(コード位相)と、拡散符号のチップレートとから、この地上装置30の伝搬遅延時間Tsを算出する。このコード位相及びチップレートを用いた伝搬遅延時間Tsの算出方法は公知の方法を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。続いて、この地上装置30との間の距離Lsを、次式(8)に従って算出する。
Ls=Ts×C ・・(8)
そして、この地上装置30の位置から距離Lsだけ軌道Rに沿って離れた位置を、列車の現在の列車位置と判断する。すなわち、地上装置30の位置のキロ程から算出した距離Lsを加算/減算したキロ程を、列車10の列車位置とする。ここで、距離Lsを加算するか減算するかは、選択した地上装置30が列車10の前方/後方の何れであるか、及び、列車10の進行方向がキロ程が増加/減少する方向の何れであるのか(すなわち、上り/下りの何れであるか)に応じて決まる。
図2に戻り、無線通信部220は、スペクトラム拡散方式での無線通信を行う無線通信装置であり、外部装置(主に、地上装置30)との間の無線通信を制御する。
記憶部230は、例えばICメモリやハードディスク等で実現され、処理部210に車上装置20を統合的に制御させるためのシステムプログラムや、各種機能を実現するためのプログラムやデータ等を記憶するとともに、処理部210の作業領域として用いられる。本実施形態では、記憶部230には、プログラムとして列車位置算出プログラム231が記憶されるとともに、データとして、受信応答信号データ232と、相対位置データ233と、算出履歴データ234とが記憶される。
[処理の流れ]
図10は、列車位置算出処理の流れを説明するフローチャートである。同図によれば、先ず、地上装置30に対する呼出信号を送出する(ステップA1)。そして、この呼出信号に対する応答信号を地上装置30から受信したならば(ステップA3:YES)、受信した応答信号に含まれる地上装置データ及び当該受信信号のコード位相を、受信時刻と対応付けて受信応答信号データ232に記憶する(ステップA5)。
呼出信号の送出から所定時間が経過すると(ステップA7:YES)、処理部210は、受信された応答信号の数を判断する。そして、呼出信号に対して1以上の応答信号を受信したならば(ステップA9:YES)、前回の算出時から今回の算出時までの経過時間Δtと、列車10の最高走行速度Vmとから、前回の列車位置の算出時からの最大走行距離Lmを算出する(ステップA11)。また、受信した応答信号それぞれについて、当該応答信号の送信元の地上装置30が、列車10の現在の列車位置の前方にあるか後方にあるかの相対的な位置関係を判断する(ステップA13)。
前方及び後方に位置する地上装置30の両方から、応答信号が受信されたならば(ステップA15:YES)、相対的な位置関係が判断された地上装置30のうちから、前方直近及び後方直近の地上装置30を1つずつ選択する。次いで、選択した前方直近及び後方直近の地上装置30それぞれについて、応答信号の応答時間S1,S2から伝搬遅延時間T1,T2を算出する(ステップA17)。続いて、算出した伝搬遅延時間T1,T2を用いて、前方直近及び後方直近の地上装置それぞれと、列車10との間の距離L1,L2を算出する(ステップA19)。また、前方直近及び後方直近の地上装置30間の軌道に沿った距離Dを算出する(ステップA21)。
そして、算出した距離L1,L2の和L12と距離Dとの差が所定距離以下ならば(ステップA23:YES)、前方直近の地上装置30の位置から距離L1だけ軌道Rに沿って離れた位置を、列車10の現在の列車位置とする(ステップA25)。一方、距離L1,L2の和L12と距離Dとの誤差が所定距離を超えるならば(ステップA23:NO)、測定誤差が大きいと判断して、最小二乗法による誤差補正を行って列車の列車位置を算出する(ステップA27)。
また、前方/後方の一方の地上装置30のみからしか応答信号が受信されない場合には(ステップA15:NO〜ステップA29:YES)、前方/後方直近の何れか1つの地上装置30を選択する(ステップA31)。次いで、選択した地上装置30から受信した応答信号のコード位相から伝搬遅延時間Tsを算出し(ステップA33)、この伝搬遅延時間Tsを用いて、選択した地上装置30と列車10との間の距離Lsを算出する(ステップA35)。そして、選択した地上装置30の位置から算出した距離Lsだけ離れた位置を、列車10の列車位置とする(ステップA37)。
また、応答信号が1つも受信されないならば(ステップA29:NO)、列車位置は不明と判断する(ステップA39)。以上の処理を行うと、ステップA1に戻り、再度同様の処理を行う。
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
(A)複線区間
例えば、複線区間では、上り/下り方向それぞれでスペクトラム拡散変調の拡散符号を異ならせることで、混信を防止しつつ、上り/下り双方の列車が自列車の位置を算出可能となる。
(B)LCXケーブル
列車10の車上装置20と地上装置30との間の通信線路として、漏洩同軸ケーブル(LCX(Leaky Coaxial Cable)ケーブル)を用いることとしても良い。この場合、軌道Rに沿って敷設したLCXケーブルに地上装置30を接続し、車上装置20は、このLCXケーブルからの送出信号を受信する。
列車位置算出システムの構成図。 車上装置の機能構成図。 地上装置データのデータ構成例。 受信応答信号データのデータ構成例。 列車に対する地上装置の相対位置の判断の説明図。 算出履歴データのデータ構成例。 相対位置データのデータ構成例。 伝搬遅延時間の算出の説明図。 最小二乗法による誤差補正の説明図。 列車位置算出処理のフローチャート。
符号の説明
1 列車位置算出システム
10 列車
20 車上装置
210 処理部、220 無線通信部
230 記憶部
231 列車位置算出プログラム、232 受信応答信号データ
233 相対位置データ、234 算出履歴データ
30 地上装置、310 地上装置データ
R 軌道

Claims (4)

  1. キロ程で示された配設位置を記憶する無線機が軌道に沿って配設された当該軌道上を走行する列車に設置されて、当該列車の列車位置を算出する列車位置算出装置であって、
    前記列車の走行によって通信圏内に位置した前記無線機と通信を行う通信部と、
    前記通信部を制御して、前記列車の前方及び後方に位置する前記無線機(以下、それぞれを「前方無線機」及び「後方無線機」という。)から当該無線機の配設位置を取得する無線機位置取得部と、
    前記前方無線機及び前記後方無線機それぞれと前記列車と間の無線通信における伝搬遅延時間を算出する伝搬遅延時間算出部と、
    1)前記無線機位置取得部により取得された配設位置に基づく前記前方無線機と前記後方無線機間のキロ程基準距離と、2)前記伝搬遅延時間算出部により算出された伝搬遅延時間に基づく前記前方無線機及び前記後方無線機それぞれと前記列車との間の直線距離と、を用いた所定の誤差最小化演算を行って前記列車の列車位置を算出する列車位置算出部と、
    を備えた列車位置算出装置。
  2. 前記列車位置算出部は、
    (ε1)前記前方無線機と前記列車間の実際の距離Xと、前記前方無線機と前記列車間の前記2)の直線距離との誤差、
    (ε2)前記後方無線機と前記列車間の実際の距離Yと、前記後方無線機と前記列車間の前記2)の直線距離との誤差、
    (ε3)前記1)のキロ程基準距離と、前記2)の直線距離の和との誤差、
    の3つの誤差ε1〜ε3の大きさの和が最小となる距離X,Yを求める演算を前記所定の誤差最小化演算として行って前記列車の列車位置を算出する、
    請求項1に記載の列車位置算出装置。
  3. キロ程で示された配設位置を記憶する記憶部と、
    請求項1又は2に記載の列車位置算出装置からの送信信号に応じて、前記記憶部に記憶された配設位置のデータを含む応答信号を当該列車位置算出装置に送信する無線機と、
    を備えた地上装置。
  4. キロ程で示された配設位置を記憶する無線機が軌道に沿って配設された当該軌道上を走行する列車の車上装置が、当該列車の列車位置を算出する列車位置算出方法であって、
    前記車上装置は、前記列車の走行によって通信圏内に位置した前記無線機と通信を行う通信部を備え、
    前記通信部を制御して、前記列車の前方及び後方に位置する前記無線機(以下、それぞれを「前方無線機」及び「後方無線機」という。)から当該無線機の配設位置を取得する無線機位置取得ステップと、
    前記前方無線機及び前記後方無線機それぞれと前記列車と間の無線通信における伝搬遅延時間を算出する伝搬遅延時間算出ステップと、
    1)前記無線機位置取得ステップで取得された配設位置に基づく前記前方無線機と前記後方無線機間のキロ程基準距離と、2)前記伝搬遅延時間算出ステップで算出された伝搬遅延時間に基づく前記前方無線機及び前記後方無線機それぞれと前記列車との間の直線距離と、を用いた所定の誤差最小化演算を行って前記列車の列車位置を算出する列車位置算出ステップと、
    を含む列車位置算出方法。
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