JP4968610B2 - 糸の製造のための方法および装置 - Google Patents

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、その開示がその全体において参照により本明細書に援用される、2006年10月31日出願の米国仮特許出願第60/855776号明細書の優先権を主張する。
本発明は、溶液紡糸によるフィラメントおよび糸の製造のための方法および装置に関する。
液体抽出および洗浄装置での繊維の湿式紡糸法は、米国特許第3,996,321号明細書および米国特許第3,940,955号明細書に開示されている。これらの方法では、凝固液が凝固ゾーンを出た後に、液体は重力のために加速する。いったん凝固液が紡糸スピードを超えたら、フィラメントは通常、より高速の液体によって延伸される。これは、凝固液の不満足な制御をもたらし、かつ、紡糸連続性に影響を及ぼすループを繊維中に生み出す。
芳香族ポリアミドの酸性溶液を紡糸するときに前段落で議論された問題を最小限にするための一戦略は繊維を、凝固浴中へ非凝固流体を通して下向きに、そしてその後紡糸チューブを通して紡糸することであり、米国特許第4,965,033号明細書、米国特許第4,728,473号明細書、米国特許第4,298,565号明細書、米国特許第4,078,034号明細書、および米国特許第4,070,431号明細書によって教示されている。しかしながら、紡糸チューブによって、特に幾つかの方法で必要とされる長い紡糸チューブで、糸をひと続きにする(string up)ことは困難であり得る。
従って、当該技術分野では、前述の問題を回避する改良紡糸法に対するニーズがある。
幾つかの実施形態では、本発明は、
a)1つ以上のフィラメントを形成するためにポリマー溶液を凝固液の上方のエアギャップへ押し出す工程であって、そこでフィラメントが歪みを受ける工程と、
b)ポリマー溶液を凝固液と接触させることによって液体およびフィラメントの下降流を形成する工程と、
(c)フィラメントおよび液体を急冷チューブに通す工程と、
c)液体への重力の下向きの力がエアギャップにおけるフィラメントの歪みを増加させないように液体を表面と接触させる工程と、
d)液体をフィラメントから分離する工程と
を含むポリマーフィラメントの紡糸方法に関する。
ある種の実施形態では、本発明は、
a)ポリマー溶液を紡糸口金と凝固液との間のエアギャップにおいてフィラメントへ押し出す工程であって、フィラメントが1つ以上の引張ロールによって与えられる一定の歪みをエアギャップにおいて有する工程と、
b)フィラメントを液体と接触させてフィラメントを凝固させ、そして急冷チューブを通る液体およびフィラメントの下降流を形成する工程と、
c)液体への重力の下向きの力がエアギャップにおけるフィラメントの歪みを増加させないように液体を表面と接触させる工程と、
d)液体をフィラメントから分離する工程と、
e)1つ以上の引張ロールを用いてフィラメントを先へ送る工程と
を含むポリマーフィラメントの紡糸方法に関する。
幾つかの実施形態では、この表面はプレートを含む。ある種の実施形態では、表面は複数のプレートを含む。表面は2つの平行プレートを含むことができる。幾つかの表面およびプレートは曲線状である。
幾つかの実施形態では、本方法はフィラメントを収集する工程をさらに含む。ある種の方法では、フィラメントは、フィラメントをチューブ上に巻き取ることによって収集される。幾つかの方法では、フィラメントは、少なくとも500または少なくとも800メートル毎分のスピードで巻き取られる。
本明細書に記載される方法によって紡糸することができる1つのポリマーは、アラミドポリマーである。一実施形態では、アラミドはパラ−アラミドである。ある種の実施形態では、アラミドはポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である。
他の実施形態では、ポリマーは、ポリベンゾオキサゾールもしくはポリベンゾチアゾールなどの、ポリアレーンアゾール、またはポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’,5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}を含む。
フィラメントを製造するための装置もまた提供される。幾つかの実施形態では、本発明は、
a)紡糸口金と、
b)紡糸口金の真下に配置された急冷チューブを有する凝固浴と、
c)急冷チューブの真下に配置された、垂直スロットを形成する一対の離間された垂直平行表面であって、垂直スロットが、平行表面間の直線距離である幅寸法を有する垂直平行表面と
を含む、エアギャップにおける紡糸フィラメントの歪みを制御するための装置であって、
紡糸口金、急冷チューブ、および垂直スロットが全て中心線に沿って一列に並んでおり、そして垂直スロットの幅が急冷チューブの内径より小さい
装置に関する。
幾つかの実施形態では、表面は2つの平行プレートを含む。ある種の実施形態では、表面は曲線状である。
従来の急冷紡糸法(A)および液体と接触するための平行プレートを利用する本発明の一実施形態の方法(B)を示す。 典型的なエアギャップ紡糸法を示す。
本発明は、本開示の一部を形成する、添付の図および実施例に関連して行われる以下の詳細な説明を参照することによってより容易に理解されうる。本発明が本明細書に記載されるおよび/または示される具体的なデバイス、方法、条件またはパラメーターに限定されないこと、ならびに本明細書に用いられる専門用語がほんの一例として特定の実施形態を説明するという目的のためであり、かつ、特許請求される発明を制限することを意図されないことは理解されるべきである。
添付の特許請求の範囲を含めて本明細書で用いられるところでは、単数形「a」、「an」、および「the」は複数を含み、特定の数値への言及は、文脈上矛盾する明らかな記載がない限り、少なくとも当該特定値を含む。値の範囲が表現されるとき、別の実施形態は、1つの特定値からおよび/または他の特定値までを含む。同様に、値が先行詞「約」を用いて、近似値として表現されるとき、その特定値は別の実施形態を形成すると理解されるであろう。全ての範囲は包括的であり、そして組み合わせ可能である。任意のバリアブルが任意の成分でまたは任意の式で2度以上起こるとき、各出現におけるその定義は、あらゆる他の出現でのその定義とは無関係である。置換基および/または変数の組み合わせは、かかる組み合わせが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
本発明では、急冷チューブの後で、そして液体をフィラメントから分離する前に、流れ中の液体は、液体への重力の下向きの力がエアギャップにおけるフィラメントの歪みを増加させないように表面と接触する。一実施形態では、平行プレート装置が湿式紡糸のために急冷下に用いられて急冷液流体力学を制御する(図1、プロセスBを参照されたい)。これらプレート間のギャップの調節は、フィラメント境界層状態を変え、制御された水流速および糸束での液体交換の増加をもたらす。
本発明の一利点は、糸の容易なひと続き化である。一実施形態では、糸は平行プレート間のスロットへ片側から引き入れることができる。
本方法および装置は、多種多様なポリマーの紡糸に有用である。本発明に好適なポリマーの代表的なリストには、アラミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’,5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}(PIPD)、およびそれらの混合物が含まれる。好ましいポリマーは剛性ロッドポリマーである。
「アラミド」とは、アミド(−CO−NH−)結合の少なくとも85%が2つの芳香環に直接結合しているポリアミドを意味する。好適なアラミド繊維は、W.Blackら著、Man−Made Fibers−Science and Technology,Volume 2,Fiber−Forming Aromatic Polyamidesという表題のセクション、297ページ,Interscience Publishers,1968年に記載されている。アラミド繊維はまた、米国特許第4,172,938号明細書、米国特許第3,869,429号明細書、米国特許第3,819,587号明細書、米国特許第3,673,143号明細書、米国特許第3,354,127号明細書、および米国特許第3,094,511号明細書に開示されている。添加物をアラミドと共に使用することができ、そして10重量パーセントほどに多いまでの他のポリマー材料をアラミドとブレンドできること、または10パーセントほどに多くの他のジアミンがアラミドのジアミンに置き換わった、または10パーセントほどに多くの他の二酸塩化物がアラミドの二酸塩化物に置き換わったコポリマーを使用できることが分かった。
好ましい一アラミドはパラ−アラミドであり、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PPD−T)が好ましいパラ−アラミドである。PPD−Tとは、p−フェニレンジアミンとテレフタロイルクロリドとのおおよそモル対モル重合によって生じるホモポリマーならびに、また、p−フェニレンジアミンと共に少量の他のジアミンのおよびテレフタロイルクロリドと共に少量の他の二酸塩化物の組み入れによって生じるコポリマーを意味する。原則として、他のジアミンおよび二酸塩化物が重合反応を妨げる反応性基を全く持たないことのみを条件として、他のジアミンおよび他の二酸塩化物を、p−フェニレンジアミンまたはテレフタロイルクロリドの約10モルパーセントほどに多いまでの、または多分わずかにそれより多い量で使用することができる。PPD−Tはまた、例えば、2,6−ナフタロイルクロリドまたはクロロ−もしくはジクロロテレフタロイルクロリド、または3,4’−ジアミノジフェニルエーテルなどの他の芳香族ジアミンおよび他の芳香族二酸塩化物の組み入れによって生じるコポリマーを意味する。
ポリアレーンアゾールポリマーは、乾燥原料の混合物をポリリン酸(PPA)溶液と反応させることによって製造されてもよい。乾燥原料は、アゾール形成モノマーおよび金属粉末を含んでもよい。これらの乾燥原料の正確に秤量されたバッチは、本発明の好ましい実施形態の少なくとも幾つかの利用によって得ることができる。
例示的なアゾール形成モノマーには、2,5−ジメルカプト−p−フェニレンジアミン、テレフタル酸、ビス−(4−安息香酸)、オキシ−ビス−(4−安息香酸)、2,5−ジヒドロキシテレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ピリドジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−キノリンジカルボン酸、2,6−ビス(4−カルボキシフェニル)ピリドビスイミダゾール、2,3,5,6−テトラアミノピリジン、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノヒドロキノン、1,4−ジアミノ−2,5−ジチオベンゼン、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。好ましくは、アゾール形成モノマーには、2,3,5,6−テトラアミノピリジンおよび2,5−ジヒドロキシテレフタル酸が含まれる。ある種の実施形態では、アゾール形成モノマーはリン酸化されていることが好ましい。好ましくは、リン酸化アゾール形成モノマーは、ポリリン酸および金属触媒の存在下に重合させられる。
最終ポリマーの分子量を構築するのを助けるために金属粉末を用いることができる。金属粉末には、典型的には鉄粉、スズ粉末、バナジウム粉末、クロム粉末、およびそれらの任意の組み合わせが含まれる。
アゾール形成モノマーおよび金属粉末は混合され、次に混合物はポリリン酸と反応してポリアレーンアゾールポリマー溶液を形成する。追加のポリリン酸を必要に応じてポリマー溶液に加えることができる。
ポリベンゾオキサゾール(PBO)およびポリベンゾチアゾール(PBZ)は2つの好適なポリマーである。これらのポリマーは、PCT出願国際公開第93/20400号パンフレットに記載されている。ポリベンゾオキサゾールおよびポリベンゾチアゾールは好ましくは、以下の構造の繰り返し単位で構成される:
Figure 0004968610
窒素原子に結合して示される芳香族基が複素環であってもよいが、それらは好ましくは炭素環であり、そしてそれらは縮合または非縮合多環系であってもよいが、それらは好ましくは単6員環である。ビス−アゾールの主鎖に示される基は好ましいパラ−フェニレン基であるが、当該基は、ポリマーの製造を妨げない任意の二価有機基で置き換えられても、または全く基を含まなくてもよい。例えば、当該基は、12個以下の炭素原子の脂肪族、トリレン、ビフェニレン、ビス−フェニレンエーテルなどであってもよい。
本発明の繊維を製造するために使用されるポリベンゾオキサゾールおよびポリベンゾチアゾールは、少なくとも25、好ましくは少なくとも100の繰り返し単位を有するべきである。ポリマーの製造およびそれらのポリマーの紡糸は、上述のPCT出願国際公開第93/20400号パンフレットに開示されている。
本発明はまた、ポリピリドビスイミダゾール繊維を利用することもできる。この繊維は、高強度のものである剛性ロッドポリマーから製造される。この繊維のポリピリドビスイミダゾールポリマーは、少なくとも20dl/gまたは少なくとも25dl/gまたは少なくとも28dl/gの固有粘度を有する。かかる繊維には、PIPD繊維(M5(登録商標)繊維としても知られる、そしてポリ[2,6−ジイミダゾ[4,5−b:4,5−e]−ピリジニレン-1,4−(2,5−ジヒドロキシ)フェニレンから製造された繊維)が含まれる。PIPD繊維は構造:
Figure 0004968610
をベースとしている。
PIPD繊維は、約310GPa(2100グラム/デニール)の平均弾性率および5.8GPa(39.6グラム/デニール)以下の平均靱性を有すると報告されてきた。これらの繊維は、Brewら、Composites Science and Technology 59(1999)、1109ページ;Van der Jagt、Beukers、Polymer 40(1999)、1035ページ;Sikkema、Polymer 39(1998)、5981ページ;Klop、Lammers、Polymer 39(1998)、5987ページ;Hagemanら、Polymer 40(1999)、1313ページに記載されてきた。
剛性ロッドポリピリドイミダゾールポリマーの一製造方法は、Sikkemaらに付与された米国特許第5,674,969号明細書に詳細に開示されている。ポリピリドイミダゾールポリマーは、乾燥原料の混合物をポリリン酸(PPA)溶液と反応させることによって製造されてもよい。乾燥原料は、ピリドビスイミダゾール形成モノマーおよび金属粉末を含んでもよい。本発明の布に使用される剛性ロッド繊維を製造するために使用されるポリピリドビスイミダゾールポリマーは、少なくとも25、好ましくは100の繰り返し単位を有するべきである。
上でおよび本開示の全体にわたって用いられるところでは、以下の用語は、特に明記しない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
本明細書で用いるところでは、用語「曲線状の」は、表面の面が、複数のポイントとその表面に対する異なる接平面に置かれたポイントの少なくとも2つとによって画定されることを意味する。幾つかの実施形態では、表面は平面から逸脱しており、ここでこの逸脱は急な遷移または傾斜度なしに起こる。
本明細書での目的のためには、用語「フィラメント」は、長さ対その長さに垂直のその断面積を横切る幅の高い比を有する比較的可撓性の、巨視的に均一の物体を意味する。フィラメント断面は任意の形状であってもよいが、典型的には円形である。用語「フィラメント」は、用語「繊維」と同じ意味で用いられてもよい。
本明細書で定義されるところでは、「糸」は連続した長さの2つ以上の繊維を意味し、ここで繊維は本明細書で上に定義されている通りである。
本発明のある種の態様は、図1によって例示することができる。図1に例示されるタイプの方法では、急冷チューブ34の直径はラインスピードに基づいて選択される。例えば、0.06インチ直径チューブが50mpm未満の平均水流速で試験され、0.50インチ直径チューブが100mpmより大きい平均水流速で試験された。結果は上記急冷チューブ中の水レベルおよびチューブ表面仕様に依存して変わり得るが、結果は類似するであろう。水流速はパイプ摩擦抵抗によって対抗される重力加速度間で平衡にある(チューブ長さにかかわらず)ので、全体チューブ長さは典型的にはそれほど重要な因子ではない。
遅いプロセスは、ひと続きにすることがより困難である小さい直径の急冷チューブを必要とするかもしれない。大きすぎる急冷チューブは水流を十分に遅くしないであろうし、糸はラインスピードより速く急冷チューブを通過しないであろう。急冷の下方の方向ピンまたはデバイスの変更は、繊維を急冷水から離して導くために用いることができる。急冷チューブの出口と方向デバイスの変更点との間のいかなる距離も制御されず、重力のために下向きに加速するであろう。ライブプロセス中に、糸は急冷液と一緒にされる。糸が平衡水流速より速いラインスピードで引っ張られる場合、水は糸スピードで移動するであろう。平衡水流速がラインスピードより速い場合、糸は水流速(ラインスピードより速い)で移動するであろう。チューブ直径は、糸上に幾らかの抗力を提供するためにより小さいべきである。より小さいチューブおよび抗力でさえも、いったん糸および急冷液がラインスピードで急冷チューブを出ると、液体は典型的には重力のためにラインスピードより速く加速する。
平行プレート30は、急冷チューブの出口の後ろでありかつ方向デバイスの変更前の、制御されない加速のこの区域のために設計された。一実施形態では、2つのプレートは、プレート間のギャップを調節できる無色透明アクリルで作製された。一実施形態では、急冷チューブは、80mpmの平均水流速のためにセットアップされた。この実施形態では、プレートを2.5mm離してそして平行に間隔をあけて、異なるスピードが1500デニールKevlar(登録商標)アラミドで試験された。プレートは、水流を遅くして60mpmのラインスピードについて平衡状態を生み出した(プレートを通しての平均水流速は60mpmであった)。同じ条件で、ラインスピードは100mpmに上げられ、プレートは2gの張力を糸に加えた。ラインスピードは200mpmに上げられ、プレートは10gの張力を糸に加えた。2つのプレートは、ひと続きにすることが容易であり、糸は、急冷の出口で捕らえ、そして方向デバイス32の変更点まで引き下ろすことができる。糸は、2つのプレートの中および間で自然に決められたコースを進むであろう。便益には、2つのプレートの中および間での乱流によってもたらされるより良好な洗浄が含まれる。プレートは、異なるラインスピードに対して迅速に調節することができる。
幾つかの実施形態では、プレートは、1.5〜5.0mmの直線距離で離して配置される。ある種の実施形態では、プレートはそれぞれ、3mm厚さ×400mm長さ×125mm幅である。
幾つかの実施形態では、急冷チューブ直径は4〜7mmであり、チューブ長さは50〜300mmである。幾つかの実施形態では、プレートは垂直スロットおよび紡糸口金を形成し、急冷チューブ、および垂直スロットは全て、中心線に沿って一列に並んでおり、垂直スロットの幅は急冷チューブの内径より小さい。
図2は、典型的な「エアギャップ」紡糸技法を示す。これらの紡糸法のための紡糸口金および浴の一般的な配置は当該技術分野で周知であり、米国特許第3,227,793号明細書、米国特許第3,414,645号明細書、米国特許第3,767,756号明細書、および米国特許第5,667,743号明細書中の図が高強度ポリマーのためのかかる紡糸法を例示しており、それぞれの全体は本明細書に参照により援用される。「エアギャップ」紡糸では、紡糸口金は典型的には先ず繊維を、空気などの、ガス中へ押し出す。「エアギャップ紡糸」(時々「ドライジェット」湿式紡糸としてもまた知られる)を用いる方法を例示するのを助けるために図2を用いると、紡糸口金4を出たドープ溶液2は非常に短い時間、紡糸口金4と凝固浴10との間のギャップ8(空気を含有する必要はないが、典型的には「エアギャップ」と呼ばれる)に入る。ギャップ8は、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、または二酸化炭素などの、凝固を誘発しないかまたはドープと不利に反応することのない任意の流体を含有してもよい。ドープフィラメント6は、延伸ありまたはなしで、エアギャップ8を横切って引っ張られ、液体凝固浴中へ直ちに導入される。
フィラメント6は、水または水とリン酸との混合物を含有する凝固浴10中で「凝固」させられ、凝固浴10は、任意のその後の処理中にフィラメント6の実質的な延伸を防ぐために十分にポリリン酸を除去する。多数の繊維が同時に押し出される場合、それらは、凝固工程の前に、その間にまたはその後にマルチフィラメント糸へ組み合わせられてもよい。用語「凝固」は本明細書で用いるところでは、ドープフィラメント6が流動液体であり、そして固相へ変化することを必ずしも暗示しない。ドープが固化する程度は、溶液中のポリマーの分子量および溶液濃度に依存し、従って固化する程度は、広範囲の条件にわたって変わり得るであろう。最も高い強度の繊維では、実質的に十分に凝固した繊維は、それらが最適化プロセス条件下に凝固浴に達した時点で形成される。ドープフィラメント6は、凝固浴10に入る前にそれが本質的に非流動性であるように十分に低い温度にあることができる。しかしながら、凝固浴10は、フィラメントの凝固、すなわち、実質的に固体のポリマーフィラメント12へのドープ溶液2からのポリマーの変換を確実にするかまたは完了させる。凝固工程中に除去される、溶媒、すなわち、ポリリン酸の量は、凝固浴におけるフィラメント6の滞留時間、浴10の温度、およびその中の溶媒の濃度に依存するであろう。例えば、約23℃の温度でリン酸の20重量パーセント溶液を使用する、ポリアレーンアゾールポリマーについては、約1秒の滞留時間はフィラメント6中に存在する溶媒の約70パーセントを除去するであろう。
フィラメントに関連した残存ポリリン酸は典型的には実質的に加水分解され、ポリマー繊維特性を保つために除去される。PPAは好都合にはフィラメントまたは糸を、洗浄および/または中和工程の前に加熱することによって加水分解される。加水分解の一方法には、凝固繊維の短時間の対流加熱が含まれる。対流加熱の代替案として、加水分解は、湿った凝固したままのフィラメントまたは糸を沸騰水または水性酸溶液中で加熱することによって作用されてもよい。この処理は、製品繊維の引張強度を十分に保持しながらPPA加水分解を提供する。熱処理工程は、別個のキャビネット14中で、または既存の洗浄キャビネット14中での1つ以上のその後の洗浄工程がそれに続く初期プロセスシーケンスとして起こってもよい。幾つかの実施形態では、これは、(a)ドープフィラメントを浴またはキャビネット14中で溶液と接触させ、それによってPPAを加水分解させること、および次に(b)フィラメント中の十分な量のリン酸、ポリリン酸、またはそれらの任意の組み合わせを中和するのに十分な条件下に水および有効量の塩基を含有する中和液とフィラメントを接触させることによって溶解させられる。
凝固フィラメントに関連したPPAを実質的に加水分解させるための処理後に、加水分解したPPAは、残存酸溶媒および/または加水分解したPPAをフィラメントまたは糸12から除去するための1つ以上の洗浄工程で洗浄することによってフィラメントまたは糸12から除去されてもよい。フィラメントまたは糸12の洗浄は、フィラメントまたは糸12を塩基で、または多数の洗浄液で処理することによって実施されてもよく、ここで塩基でのフィラメントまたは糸の処理は水での洗浄によって先行されるおよび/または引き続かれる。フィラメントまたは糸はまたその後、ポリマー中の陽イオンのレベルを低下させるために酸で処理されてもよい。このシーケンスの洗浄はフィラメントを、一連の浴を通しておよび/または1つ以上の洗浄キャビネットを通して走らせることによって連続プロセスで実施されてもよい。図1は、一つの洗浄浴またはキャビネット14を描く。洗浄キャビネットは典型的には、フィラメントがキャビネットを出る前に、周りを、および横切って何度も移動する1つ以上のロールを含有する封入キャビネットを含む。フィラメントまたは糸12がロールの周りを移動するときに、それは洗浄流体を吹き付けられる。洗浄流体は連続的にキャビネットの底部に集められ、そこから排水される。
洗浄流体の温度は好ましくは30℃より高い。洗浄流体はまた、蒸気形態(スチーム)で適用されてもよいが、より好都合には液体形態で使用される。好ましくは、多数の洗浄浴またはキャビネットが用いられる。任意の1つの洗浄浴またはキャビネット14におけるフィラメントまたは糸12の滞留時間は、フィラメントまたは糸12中の残存リンの所望の濃度に依存するであろうが、好ましくは、滞留時間は約1秒〜約2分未満の範囲にある。連続プロセスでは、好ましい多数の洗浄浴および/またはキャビネットでの全体洗浄プロセスの継続期間は、好ましくは約10分以下、より好ましくは約5秒超、そして約160秒以下である。
幾つかの実施形態では、加水分解したPPAの除去のための好ましい塩基には、NaOH、KOH、Na2CO3、NaHCO3、K2CO3、KHCO3、またはトリアルキルアミン、好ましくはトリブチルアミン、またはそれらの混合が含まれる。一実施形態では、塩基は水溶性である。
繊維を塩基で処理した後、本方法は場合により、フィラメントを、過剰の塩基を全てまたは実質的に全て除去するための水または酸を含有する洗浄液と接触させる工程を含んでもよい。この洗浄液は、洗浄浴またはキャビネット18で適用することができる。
繊維または糸12は、水および他の液体を除去するために乾燥機20で乾燥されてもよい。乾燥機での温度は典型的には約80℃〜約130℃である。乾燥機滞留時間は典型的には、5秒からより低い温度でのおそらく5分ほどに多いまでである。乾燥機は、窒素または他の不活性雰囲気を備えることができる。次に、繊維は場合により、例えば、ヒートセッティングデバイス22中でさらに処理することができる。さらなる処理は、靱性を高めるおよび/またはフィラメント中の分子の機械的歪みを緩和するために窒素パージされるチューブ炉22中で行われてもよい。最後に、フィラメントまたは糸12は、巻取デバイス24上でパッケージへ巻き取られる。ロールおよび電動式デバイス26は好適にも、本方法によるフィラメントまたは糸を運ぶために配置される。
好ましくは、加水分解したPPAの除去後の乾燥フィラメントのリン含有率は、約5,000重量ppm(0.5重量%)未満、より好ましくは約4,000重量ppm(0.4重量%)未満、最も好ましくは約2,000重量ppm(0.2重量%)未満である。
典型的には、糸は、少なくとも50、または少なくとも100、または少なくとも250、または少なくとも500、または少なくとも800メートル毎分のスピードで収集される。
本方法において用いられる紡糸口金は、任意の好都合な形状を有してもよい。それを通して繊維が押し出される紡糸口金の穴は、円形であってもまたは任意の所望の断面を提供するための形状であってもよい。任意の所望の数の穴は設備によって制限されるように用いられてもよい。本明細書に記載される方法にとって好ましい穴サイズの範囲は、直径が0.1〜0.5mmである。
また、好ましい態様として、本発明を次のように構成することもできる。
1. a)1つ以上のフィラメントを形成するためにポリマー溶液を凝固液の上方のエアギャップへ押し出す工程であって、そこで前記フィラメントが歪みを受ける工程と、
b)前記ポリマー溶液を凝固液と接触させることによって液体およびフィラメントの下降流を形成する工程と、
(c)前記フィラメントおよび液体を急冷チューブに通す工程と、
c)前記液体への重力の下向きの力が前記エアギャップにおける前記フィラメントの歪みを増加させないように前記液体を表面と接触させる工程と、
d)前記液体を前記フィラメントから分離する工程と
を含むポリマーフィラメントの紡糸方法。
2. a)ポリマー溶液を紡糸口金と凝固液との間のエアギャップにおいてフィラメントへ押し出す工程であって、前記フィラメントが1つ以上の引張ロールによって与えられる一定の歪みを前記エアギャップにおいて有する工程と、
b)前記フィラメントを液体と接触させて前記フィラメントを凝固させ、そして急冷チューブを通る液体およびフィラメントの下降流を形成する工程と、
c)前記液体への重力の下向きの力が前記エアギャップにおける前記フィラメントの歪みを増加させないように前記液体を表面と接触させる工程と、
d)前記液体を前記フィラメントから分離する工程と、
e)1つ以上の引張ロールを用いて前記フィラメントを先へ送る工程と
を含むポリマーフィラメントの紡糸方法。
3. 前記表面がプレートを含む上記2に記載の方法。
4. 前記表面が複数のプレートを含む上記2に記載の方法。
5. 前記表面が2つの平行プレートを含む上記3に記載の方法。
6. 前記プレートが少なくとも1つの曲面を含む構造へ成形されている上記3に記載の方法。
7. 前記プレートが曲線状である上記3に記載の方法。
8. 前記フィラメントを収集する工程をさらに含む上記2に記載の方法。
9. 前記フィラメントがフィラメントをチューブ上に巻き取ることによって収集される上記8に記載の方法。
10. 前記フィラメントが少なくとも500メートル毎分のスピードで巻き取られる上記9に記載の方法。
11. 前記フィラメントが少なくとも800メートル毎分のスピードで巻き取られる上記9に記載の方法。
12. 前記ポリマーがアラミドを含む上記2に記載の方法。
13. 前記アラミドがパラ−アラミドである上記12に記載の方法。
14. 前記アラミドがポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である上記13に記載の方法。
15. 前記ポリマーがポリアレーンアゾールを含む上記2に記載の方法。
16. 前記ポリアレーンアゾールがポリベンゾオキサゾールまたはポリベンゾチアゾールである上記15に記載の方法。
17 前記ポリマーがポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’,5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}を含む上記2に記載の方法。
18. a)紡糸口金と、
b)前記紡糸口金の真下に配置された急冷チューブを有する凝固浴と、
c)前記急冷チューブの真下に配置された、垂直スロットを形成する一対の離間された垂直平行表面であって、前記垂直スロットが、前記平行表面間の直線距離である幅寸法を有する垂直平行表面と
を含む、エアギャップにおける紡糸フィラメントの歪みを制御するための装置であって、
前記紡糸口金、急冷チューブ、および垂直スロットが全て中心線に沿って一列に並んでおり、そして前記垂直スロットの幅が急冷チューブの内径より小さい、装置。
19. 前記表面が2つの平行プレートを含む上記18に記載の装置。
20. 前記表面が曲線状である上記18に記載の装置。
21. a)1つ以上のフィラメントを形成するためにポリマー溶液を凝固液の上方のエアギャップへ押し出す工程であって、そこで前記フィラメントが歪みを受ける工程と、
b)前記ポリマー溶液を凝固液と接触させることによって液体およびフィラメントの下降流を形成する工程と、
c)前記フィラメントおよび液体を急冷チューブに通す工程と、
d)前記液体への重力の下向きの力が前記エアギャップにおける前記フィラメントの歪みを増加させないように前記液体を表面と接触させる工程であって、前記表面が、複数のプレートを含む工程と、
e)前記液体を前記フィラメントから分離する工程と
を含むポリマーフィラメントの紡糸方法。
22. 前記エアギャップにおける前記歪みが1つ以上の引張ロールによって与えられ、そして
f)1つ以上の引張ロールを用いて前記フィラメントを先へ送る工程
をさらに含む上記21に記載の方法。
23. 前記表面が2つの平行プレートを含む上記21に記載の方法。
24. 前記プレートが少なくとも1つの曲面を含む構造へ成形されている上記21に記載の方法。
25. 前記プレートが曲線状である上記21に記載の方法。
26. 前記フィラメントを収集する工程をさらに含む上記22に記載の方法。
27. 前記フィラメントがフィラメントをチューブ上に巻き取ることによって収集される上記26に記載の方法。
28. 前記フィラメントが少なくとも500メートル毎分のスピードで巻き取られる上記27に記載の方法。
29. 前記フィラメントが少なくとも800メートル毎分のスピードで巻き取られる上記27に記載の方法。
30. 前記ポリマーがアラミドを含む上記22に記載の方法。
31. 前記アラミドがパラ−アラミドである上記30に記載の方法。
32. 前記アラミドがポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)である上記31に記載の方法。
33. 前記ポリマーがポリアレーンアゾールを含む上記32に記載の方法。
34. 前記ポリアレーンアゾールがポリベンゾオキサゾールまたはポリベンゾチアゾールである上記33に記載の方法。
35. 前記ポリマーがポリ{2,6−ジイミダゾ[4,5−b4’,5’−e]ピリジニレン−1,4(2,5−ジヒドロキシ)フェニレン}を含む上記22に記載の方法。
36. a)紡糸口金と、
b)前記紡糸口金の真下に配置された急冷チューブを有する凝固浴と、
c)前記急冷チューブの真下に配置された、垂直スロットを形成する一対の離間された垂直平行表面であって、前記垂直スロットが、前記平行表面間の直線距離である幅寸法を有する垂直平行表面と
を含む、エアギャップにおける紡糸フィラメントの歪みを制御するための装置であって、
前記紡糸口金、急冷チューブ、および垂直スロットが全て中心線に沿って一列に並んでおり、そして前記垂直スロットの幅が急冷チューブの内径より小さい、装置。
37. 前記表面が2つの平行プレートを含む上記36に記載の装置。
38. 前記表面が曲線状である上記36に記載の装置。

Claims (2)

  1. a)1つ以上のフィラメントを形成するためにポリマー溶液を凝固液の上方のエアギャップへ押し出す工程であって、そこで前記フィラメントが歪みを受ける工程と、
    b)前記ポリマー溶液を凝固液と接触させることによって液体およびフィラメントの下降流を形成する工程と、
    c)前記フィラメントおよび液体を急冷チューブに通す工程と、
    d)前記液体への重力の下向きの力が前記エアギャップにおける前記フィラメントの歪みを増加させないように前記液体を表面と接触させる工程であって、前記表面が、複数のプレートを含む工程と、
    e)前記液体を前記フィラメントから分離する工程と
    を含むポリマーフィラメントの紡糸方法。
  2. a)紡糸口金と、
    b)前記紡糸口金の真下に配置された急冷チューブを有する凝固浴と、
    c)前記急冷チューブの真下に配置された、垂直スロットを形成する一対の離間された垂直平行表面であって、前記垂直スロットが、前記平行表面間の直線距離である幅寸法を有する垂直平行表面と
    を含む、エアギャップにおける紡糸フィラメントの歪みを制御するための装置であって、
    前記紡糸口金、急冷チューブ、および垂直スロットが全て中心線に沿って一列に並んでおり、そして前記垂直スロットの幅が急冷チューブの内径より小さい、装置。
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