JP4593370B2 - 乾湿式紡糸装置 - Google Patents

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Description

本発明は、多数の紡糸孔が穿設された紡糸口金より紡糸ドープを一旦空気中に紡出した後に、紡出したドープを凝固浴中へ導入して繊維化する乾湿式紡糸装置に関する。
高強度と高モジュラスを兼ね備えた全芳香族ポリアミド繊維を紡糸するための従来技術として、紡糸口金より全芳香族ポリアミド重合体を含むドープを一旦空気中に紡出し、紡出した前記ドープ流を凝固液中へ導入して凝固させて、繊維化することは周知である。
しかしながら、紡出ドープをそのまま静止した凝固液中へ導入すると、凝固液から大きな通過抵抗を受けて、紡糸ドープがある速度以上になると単繊維切れを起こす。このため、紡糸ドープの紡出速度を上げることができず、紡糸速度を低速にせざるを得なかった。特に、製造する繊維の繊度が細くなればなるほど、単繊維切れが生じないように安定に紡糸するのが困難となる問題がある。
そこで、この問題を解決する方法として、凝固液を紡出されるドープと共に流動させて凝固液から受ける抵抗の低減を図るために、凝固液が流れる流管中に紡出ドープを導いて紡糸する技術が、例えば特開昭60−52610号公報に提案されている。確かに、この従来技術によると、流管内を流れる凝固液の流速を上げることができるが、流管内を走行する繊維の速度と流管内を流れる凝固液の流速とを一致させることが難しい。したがって、この従来技術を使用しても、単繊維切れの発生を充分に抑制するに至っていない。
また、特開昭56−128312号公報には、紡糸口金より一旦空気中へ紡出したドープを流管へ導き、その初期段階において複数の小径ノズルあるいはスリットから凝固液を流管中へ糸条の走行方向へ噴出させて、繊維化するドープを流管中で加速して紡糸する乾湿式紡糸方法が提案されている。確かに、このような乾湿式紡糸方法を採用することによって、初期段階で凝固液を流管中へ加速導入した凝固液流の助けを借りて繊維化するドープの流下速度を加速することができ、これによって糸条に働く抵抗を低減しながら、高速紡糸を行うことが可能となる。
しかしながら、この従来技術では、初期段階で紡出されたドープに沿って凝固液を強制推進流として流す必要があるため、未凝固のドープに対し急激な速度変化を与えてしまうことになる。そうすると、その速度変化による液抵抗の変化により単繊維切れが発生するという問題が生じる。
また、この従来技術には、凝固浴から流管の上部に導入される凝固液流が乱されるという問題があり、凝固液流に乱れが生じると、それによって凝固浴の液面も乱されてしまう。このように、急激な凝固液流の流速変化と凝固浴の液面の乱れが生じると、得られる繊維品質のバラツキが大きくなり、流管への導入部で単繊維切れが発生し易くなるという問題が生じる。特に、単繊維繊度が細くなればなるほど、この単繊維切れの問題はより顕著に現れる。
そこで、この問題を解消するために、特開昭57−106707号公報において、流管中に絞りを設け、絞りの面積を調節することにより流管内を流れる凝固液の流量(速度)を調整する方法が提案されている。確かに、この従来技術を採用すると、凝固浴の乱れが生じ難く液面も乱れ難い条件を作り出し易くなる。
しかしながら、流管途中に絞り部が存在すると、絞り部において急激に凝固液の流速が変化してしまい、流管内に流速差が発生して凝固途中の繊維が延伸されて物性が低下したり、単繊維切れを生じてしまうことが生じる。更に、繊維が絞り部を通過する時に、絞り部の壁面に接触するために、繊維がダメージを受ける。
特開昭60−52610号公報 特開昭56−128312号公報 特開昭57−106707号公報
以上に述べた従来技術が有する諸問題に鑑み、本発明の目的は、「多数の紡糸孔が穿設された紡糸口金より紡糸ドープを一旦空気中に紡出し、凝固液を貯えた凝固浴へドープを導いて繊維化する乾湿式紡糸において、糸条を構成する単繊維及び単繊維群間の品質のバラツキの無い安定した性能を有する繊維を生産性を上げながら製造することができる装置を提供する」ことにある。
ここに、上記課題を解決する本発明として、
(1)凝固液を充填する凝固浴と、前記凝固浴に充填される前記凝固液が形成する液面と一定のエアギャップをおいて設けられた多数の紡糸孔群が穿設された紡糸口金と、前記凝固液中に浸漬させて設けられた流管と、前記流管の下方に設けられた糸条の引取手段を含む乾湿式紡糸装置において、前記流管は、その上部内壁面は凝固液が流入する上流側に向って末広がりに形成された漏斗状の曲管部を有し、その下部内壁面は筒状の直管部を有すると共に、前記直管部に引き続いて前記直管部の管内径を縮小することなく全周方向から凝固液を供給する流速調節器を備え、前記流速調節器から供給する凝固液によって流管内を流下する凝固液の流速及び流量を制御することを特徴とする乾湿式紡糸装置、
(2)前記流管の曲管部と直管部とが段差を生じずになだらかに接続されている(1)に記載の乾湿式紡糸装置、
(3)前記流速調節器が貯液部と、該貯液部から流管中に凝固液を注入供給する液注入部を備え、該液注入部が貯液部に供給された凝固液を均圧化する均圧化部材及び/又は整流した凝固液を流管を流下した凝固液に注入する整流部材を兼ねる(1)に記載の乾湿式紡糸装置、
(4)前記流速調節器の液注入部内径が下流側に向かって末広がりに錐状に形成された(3)に記載の乾湿式紡糸装置、
(5)前記液面から前記流管の上端部までの距離が2〜100mmである(1)に記載の乾湿式紡糸装置、
(6)前記流管の直管部の内径が2〜30mmである(1)に記載の乾湿式紡糸装置、そして、
(7)前記方法により得られる繊維の引取り速度が10〜300m/minである(1)に記載の乾湿式紡糸装置が提供される。
以上説明したように、本発明の乾湿式紡糸方法とその装置によれば、所望量の凝固液を流管内を流下する凝固液流を擾乱することなく円滑に供給することができ、流管内を流れる凝固液の流量及び流速を極めて良好に制御することができる。しかも、本発明では、流管内を流下する凝固液の流量と流速を制御するために、従来技術のように絞り部を設けないため、通過する凝固液の流路断面積が急激に変わることがなく、流管内で凝固液の速度差が発生することもない。その上、ノズルによって凝固液を直接流管内に強制的に噴出することもないため、流管内で凝固液の流速が急激に変化することもなくなる。
したがって、紡糸口金から吐出されたドープは、凝固浴液によって繊維化される過程において、流管内を流れる凝固液の流速変化を小さくできる。このため、流管内で紡出したドープを安定的に単繊維切れの発生を極力抑制しながら繊維化することができ、繊維化することによって得られた糸条は、品質のバラツキが少なく安定した品質を有するという極めて顕著な効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明に係る乾湿式紡糸装置の一実施形態を模式的に例示した概略構成図である。この図1において、Dは全芳香族ポリアミドからなるポリマーを含むドープ、そして、Yはこのようなドープから溶媒が抽出されて繊維化された糸条をそれぞれ示す。また、1は多数の紡糸孔が穿設された紡糸口金、2は凝固装置、3は流管、そして、4は糸条を引き取るための回転体をそれぞれ示す。なお、前記凝固装置2は、凝固浴2a、凝固液の供給配管2b、凝固液の排出配管2c、凝固液の回収手段2d及び堰2eを含んで構成され、更に、符号Lは凝固液、そして符号Sは前記凝固液Lによって凝固浴2aに形成された液面をそれぞれ表す。
以上のように構成される本発明に係る乾湿式紡糸装置の実施形態例において、凝固液Lは、一定の流量に制御されながら凝固液Lの供給配管2bから凝固浴2aへ供給される。ついで、このようにして凝固浴2aへ供給された凝固液Lは、一方では、過剰に供給された凝固液Lが凝固浴2aに設けられた堰2eからオーバーフローして流出する。このようにして、前記堰2eは、凝固浴2aに貯えられる凝固液の液面Sの高さを、常に一定レベルに維持する役割を果たす。なお、前記オーバーフローした過剰の凝固液Lは回収手段2dによって回収され、この回収手段2dに接続する排出配管2cから排出される。
他方で、凝固浴2aへ供給された凝固液Lは、凝固液の液面Sの高さよりも下方に設けられた流管3へ流入し、紡糸口金1から紡出されたドープDと共に流管3内を流下する。また、この流管3は、上方の漏斗状を呈する曲管部3aと下方の筒状を呈する直管部3bとで構成されている。このとき、前記流管3の直管部3bには、図示したように流管3を流下する凝固液Lの流速と流量を調節するための流速調節器5が設けられている。ここで、本発明は前記流速調節器5を有することを一大特徴とするものであって、以下にこの流速調節器5について詳細に説明する。
以上に述べた本発明の流速調節器5は、凝固液Lを供給するための供給配管5aと、供給された凝固液Lを貯える貯液部5bと、貯えられた凝固液を流管3の直管部3b中へ注入供給する液注入部5cとから少なくとも構成されている。したがって、流管3へは、凝固浴2aを介して上方の曲管部3aから供給される凝固液Lと、貯液部5bを介して液注入部5cへ供給される凝固液Lとが注入される。
このように、本例においては、流管3中を流下する凝固液Lに対して、流速調節器5から供給される凝固液Lを液注入部5cから注入することにより流下する凝固液に抵抗を与えることができる。したがって、流速調節器5からの凝固液Lの流量によって直管部3b内を流下する凝固液の流速と流量とを所望の値に調節することができる。
本発明においては、前述のように、流管3内を流下する凝固液Lの流速と流量を所望の値に調整できる。このため、紡糸口金1から紡出した紡糸原液(紡糸ドープD)を流管3内を流れる凝固液Lと共に走行させることで、ドープDの繊維化速度を所望の値に制御することができる。
なお、調整したドープDを繊維化するにあたって、先ずギアポンプなどの計量供給手段を使用して、ドープの供給量を連続的に計量しながらスピンブロック(図示せず)へ分配供給し、スピンブロックに備えられた紡糸口金1からドープDとして紡出する。ただし、前記紡糸口金1の実施態様については、例えば、外径100mmの円板に孔径が0.5mmである紡糸孔群を1000個穿設して、これら多数の紡糸孔群からドープDを繊維状に紡出するものを挙げることができる。
本発明においては、前述のような紡糸口金1から紡出したドープDは、図1に例示したように、紡糸口金1のドープ吐出面と凝固液の液面Sとの間に形成されたエアギャップG中へ一旦紡出され、ついで凝固液L中へ導入される。
なお、前記エアギャップGは、小さ過ぎると紡糸口金1のドープ吐出面に凝固液Lが接触する事態が発生し、紡糸口金1から吐出されたドープDが紡糸口金1の直下で凝固を起こしてしまい、単繊維切れを生じるため好ましくない。また、大き過ぎると紡糸孔群から紡出された隣接する糸同士が密着を起し、独立した単繊維群を得ることができない。このような理由から、前記エアギャップGは、例えば、上記紡糸口金1では1mm以上、50mm以下が適している。
以上に述べたようにして、紡糸口金1に穿設された多数の紡糸孔から吐出されたドープDは、一旦空気中に紡出され、ついで、凝固浴2aに充填された凝固液Lへ導かれて流管3の曲管部3aへと導入される。
ここで、凝固浴2aの液面Sから流管3の上端部までの距離が小さいと、流管3の上部曲管部3aへ流入する凝固液Lの流れに乱れを生じ、これが液面Sまで伝播して液面Sが乱される。また、反対にこの距離が大きくなると、流管3を設置したことによる液面S近傍における凝固液Lの速度が所定の速度になるまでの立ち上がりを早くするという効果が無くなり、糸Y(ドープD)の走行速度と凝固液Lとの間の流速差が大きくなって単繊維切れが発生する。したがって、凝固浴2aの液面Sを安定させ、かつ単繊維切れの発生を抑制するには、液面Sから流管3の上端部までの距離を2mm以上、100mm以下の長さ、好ましくは、5mm以上、50mm以下にすることが必要である。
このとき、図1では図示省略したが、凝固浴2a内に凝固液Lの流れを整流するための整流部材を設置して、凝固液Lの流れが擾乱されないように安定な流れを形成させることは、本発明においては、好ましい実施態様である。ここで、このような好ましい整流部材を例示するならば、多孔板、ハニカム板、織編物などの凝固液Lの通過性に優れたスクリーンなどを挙げることができる。なお、これらの整流部材の設置位置に関しては、特に流管3へ流入する凝固液Lの導入部近辺に設けることが望ましい。
次に、本発明に用いる流管3の好ましい形状について述べると、その形状は紡糸口金1から吐出されるドープDが流管3内へ持ち込む凝固液Lの持込液量、ドープD自体の流管3への流入量、あるいは繊維化された糸条Yの引取速度などの多様な条件により決定される。このため、最終的には、これらの条件に適合するように実験を行って、最適な形状を決定する必要がある。しかしながら、凝固液Lの流管3内での速度上昇を滑らかにするためには、流管3上方の曲管部3aは、凝固液Lが流下する上流側に向ってなだらかな末広がり形状を有する曲面であることが必要である。
このとき、ドープDが流管3内で凝固して繊維化されるプロセスとして、凝固浴2aと流管の曲管部3aと直管部3bとに存在する凝固液Lと紡出したドープDとを接触させ、ドープDに含有される有機溶剤を凝固液L中へ抽出し、例えばパラ系全芳香族ポリアミドポリマーからなる多数の単繊維群(マルチフィラメント)で構成される糸条Yを形成することは周知の通りである。
次に、このようにして形成された糸条Yは、図1に例示したように、引取ローラなどの回転体4によって引き取られ、糸条Yに付着した凝固液Lを取り除く水洗工程、水洗工程で付着した水分を乾燥させる乾燥工程、乾湿式紡糸をした糸条を熱延伸する工程などからなる一連の製糸プロセスが行われる。そして、この一連の製糸プロセスによって高性能及び/又は高機能を有する繊維を最終的に得ることも周知の通りである。
以上に述べたような一連の製糸プロセス中の乾湿式紡糸工程において、本発明が一大特徴とするところは、既に述べてきたように、流管3内の凝固液Lの流速を調節できる機構を要することである。そこで、本発明の流速調節器5について、図2を用いて以下に更に詳細に説明する。
前記流速調節器5では、流管3内を流れる凝固液Lの流速と流量とを急激に変えないようにするため、流管3と流量調節器5の上部の接続部は絞り部などの急激な径変化がないことが望ましく、径変化が生じないように接続されることが好ましい。
その際、前記流速調節器5の内部には流管3の直管部3bの一部を囲繞し、その全周方向から凝固液Lを安定して供給することができる整流部材あるいは均圧化部材をそれぞれ設置して、直管部3b内を流れる凝固液Lを大きく擾乱することなく、供給することが好ましい。なお、図1及び図2の例では、前記液注入部5cを構成する部材自体を多孔質性の焼結金属で構成して整流部材及び/又は均圧化部材の機能を兼ね備えさせている。
なお、この液注入部5cを構成する部材の他の例としては、凝固液Lの流れが擾乱されないように安定な流れを形成させることが好ましく、したがって、前記整流部材及び/又は均圧化部材の好ましい例を挙げるならば、多孔質焼結金属などの多孔板、ハニカム板、織編物などの流体通過性に優れたスクリーンなどの濾過媒体を挙げることができる。
更に、液注入部5cから安定且つ均一に凝固液Lを供給するためには、凝固液Lの通過抵抗がある程度以上必要である。例えば、金属細線からなる織編物を材料として使用した場合には、20メッシュから2000メッシュの目開きの織編物を1枚または複数枚組み合わせて用いるとよい。もちろん、本発明においては、織編物に限定されること無く、類似の効果が得られるものであれば良いことは言うまでもない。
ここで、前記液注入部5cの形状としては、流管3を流下する凝固液Lをできるだけ擾乱しないように流管3の直管部3bに対して径変化や段差が生じずになだらかに接続して急激な形状変化のないものが良いことは言うまでもない。更に、液注入部5cを流下する凝固液Lの平均流速が一定となるように、絞り部を設けずに、その内径が末広がりに錐状に拡がる形状が好ましい。
以上に述べた流量調節器5は、流管3の直管部3bの下部に接続して設けられ、ここで、凝固液Lが流管3の直管部3bへと円滑に注入供給される。したがって、凝固浴2aから流管3を介して流速調節器5へ流下する凝固液Lは急激な速度変化を起さない。しかも、流管3内を流れる凝固液Lの流速と流量は、流量調節器5から供給する凝固液L流量を変化させることにより任意に調節することができる。
このとき、供給配管2bから凝固浴2aへ供給される凝固液Lの流量と流速調節器5から供給される凝固液Lの流量は、製糸条件に応じて適宜選定すべき事項である。しかしながら、凝固浴2aの液面Sが乱されないこと、そして、流管3内を流れる流速がドープD及び糸条Yが流管3内を走行する速度と近いことが望ましいことは言うまでもない。そこで、例えば、引取手段4による糸条Yの引取り速度を70〜100m/minとするときに、凝固浴2aの供給配管2bから供給される凝固液Lの量は、2〜10l/min(リットル/分)とし、流量調節器5の凝固液の供給配管5aから供給される凝固液Lの量は、3〜5l/min(リットル/分)とすることが望ましい。
その際、前記直管部3bの管内径については、2mm以上、30mm以下とすることが好ましい。何故ならば、糸条Yを効率的に生産するためには糸条Yを構成する単繊維群(マルチフィラメント)の数として、10〜5000本が必要とされるので、この点を考慮に入れると、糸条の相当直径が1mm以上、20mm以下となるからである。したがって、流管3内を走行するドープDもしくは繊維化された糸条Yが流管壁に過度に接触してダメージを受けないように余裕を持って走行させるためには、流管3の下部直管部3bの円筒内径dは2mm以上、30mm以下とすることが好ましいのである。
また、流管3の下部直管部3bの円筒長さLとしては、紡糸速度などの紡糸条件にもよるが、100mm以上、5000mm以下とすることが好ましい。何故ならば、一方では、紡糸口金1から紡出されたドープDを繊維化するためには、凝固に要する時間が必要であるので、流管3の長さはこの凝固に要する時間を稼ぐことができる長さが必要となるからである。
しかし、他方では、流管3下部の直管部3bの長さが長くなると、流管内壁面と走行するドープDあるいは糸条Yとが接触して過大な摩擦抵抗が作用する。そうすると、ドープDあるいは糸条Yが強く擦過されて単繊維切れや糸切れを招くので短くしたい。そこで、これら条件を両立させると、直管部3bの長Lは、100mm以上、5000mm以下とすることが好ましい。
次に、本発明の乾湿式紡糸装置は、ポリアクリルニトリルなどの紡糸装置として用いることができるが、好ましくは、全芳香族ポリアミドからなるポリマーを含むドープDが繊維化されて糸条Yを形成するプロセスに用いることが好ましい。
例えば、この実施態様として、先ず「ドープ」として、水分率が100ppm以下のN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPという)112.9部、パラフェニレンジアミン1.506部、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.789部を常温下で反応容器に入れ、窒素中で溶解した後、攪拌しながらテレフタル酸クロライド5.658部を添加する。そして、最終的に85℃で60分間反応させ、透明の粘稠なポリマー溶液を得る。次いで、22.5重量%の水酸化カルシウムを含有するNMPスラリー9.174部を添加し、中和反応を行って、必要な「ドープ」を得る。
本発明に係る乾湿式紡糸装置の一実施形態を模式的に例示した概略構成図である。 本発明の要部(流管部)を模式的に拡大表示した拡大断面図である。
符号の説明
1 紡糸口金
2 凝固装置
2a 凝固浴
2b 凝固液の供給配管
2c 凝固液の排出配管
2d 凝固液の回収手段
2e 堰
3 流管
3a 流管の曲管部
3b 流管の直管部
4 糸条の引取手段
5 流速調節器
5b 凝固液の貯部
5a 凝固液の供給配管
5c 液注入部
D ドープ
G エアギャップ
L 凝固液
S 凝固浴液面
Y 糸条

Claims (6)

  1. 凝固液を充填する凝固浴と、前記凝固浴に充填される前記凝固液が形成する液面と一定のエアギャップをおいて設けられた多数の紡糸孔群が穿設された紡糸口金と、前記凝固液中に浸漬させて設けられた流管と、前記流管の下方に設けられた糸条の引取手段を含む乾湿式紡糸装置において、
    前記流管は、その上部内壁面は凝固液が流入する上流側に向って末広がりに形成された漏斗状の曲管部を有し、その下部内壁面は筒状の直管部を有すると共に、前記直管部に引き続いて前記直管部の管内径を縮小することなく全周方向から凝固液を供給する液注入部を有する流速調節器を備え、かつ該流速調節器の液注入部内径が下流側に向かって末広がりに錐状に形成されてなり、前記流速調節器から供給する凝固液によって流管内を流下する凝固液の流速及び流量を制御することを特徴とする乾湿式紡糸装置。
  2. 前記流管の曲管部と直管部とが段差を生じずになだらかに接続されている請求項1記載の乾湿式紡糸装置。
  3. 前記流速調節器が貯液部と、該貯液部から流管中に凝固液を注入供給する液注入部を備え、該液注入部が貯液部に供給された凝固液を均圧化する均圧化部材及び/又は整流した凝固液を流管を流下した凝固液に注入する整流部材を兼ねる請求項1記載の乾湿式紡糸装置。
  4. 前記液面から前記流管の上端部までの距離が2〜100mmである請求項1記載の乾湿式紡糸装置。
  5. 前記流管の直管部の内径が2〜30mmである請求項1記載の乾湿式紡糸装置。
  6. 前記方法により得られる繊維の引取り速度が10〜300m/minである請求項1記載の乾湿式紡糸装置。

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