JP4967824B2 - 回転速度推定装置及び振動抑制装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両が備える車輪の回転速度を推定する機能を有する回転速度推定装置及び振動抑制装置に関する。
車輪のスリップを抑制したり、車両の振動を抑制したりする場合には、車輪の回転速度(単位時間当たりの回転数)を知ることが必要になる。特許文献1には、オブザーバを用いて駆動輪の回転数や平均回転数を推定し、推定した駆動輪の回転数や平均回転数に基づき、駆動輪を駆動する電動機の指令トルクを補正する制御技術が開示されている。
特開2002−152916号公報
しかし、特許文献1に開示された技術は、車輪と路面との間の摩擦係数が変化するときでもオブザーバ内のモデルは変更されないため、車輪にスリップが発生した場合等においては、車輪の回転速度の推定精度が低下して、車輪に動力を付与する動力発生手段を適切に制御できないおそれがある。
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車輪の接する路面の状態が変化した場合における車輪の回転速度を推定する際の精度低下を抑制すること、車輪の接する路面の状態が変化した場合において車両に発生する振動を抑制する制御の精度低下を抑制することのうち少なくとも一つを達成できる回転速度推定装置及び振動抑制装置を目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る回転速度推定装置は、車両が備える車輪の回転速度を推定するものであり、前記車両の減速装置を介して前記車輪に連結された駆動軸を駆動する動力発生手段を有した前記車両の駆動系を、前記動力発生手段のイナーシャと、前記動力発生手段の出力トルクと、前記動力発生手段の回転速度と、前記減速装置の減速比と、前記駆動軸の粘性係数と前記車輪のばね定数とを合成した合成ばね定数と、前記駆動軸のねじれ角度と、前記車両のイナーシャとを考慮してモデル化した駆動系モデルに基づき、前記車輪の回転速度を推定する回転速度推定部と、前記車輪のスリップに応じて、前記回転速度を推定する際に用いる前記車両のイナーシャを補正するパラメータ変更部と、を含むことを特徴とする。
この回転速度推定装置は、車両の駆動系をモデル化した駆動系モデルに基づき、車両が備える車輪の回転速度を推定するとともに、前記車輪のスリップに応じて、前記車輪の回転速度を推定する際に用いる車両のイナーシャを補正する。これによって、車輪が接する路面の状態を考慮して車輪の回転速度を推定することができるので、車輪の接する路面の状態が変化した場合における車輪の回転速度を推定する際の精度低下を抑制できる。そして、この回転速度推定装置によって推定した車輪の回転速度に基づいて車両の振動を抑制すれば、車輪の接する路面の状態が変化した場合において、車両に発生する振動を抑制する制御の精度低下を抑制することができる。
本発明の望ましい態様としては、前記回転速度推定装置において、前記パラメータ変更部は、記車輪がグリップ状態を保っている状態を前提として前記回転速度推定部が推定した前記車輪の回転加速度と、前記車輪がスリップしている状態における実際の前記車輪の回転加速度との比を、前記車両のイナーシャのうちの車体に関するイナーシャに乗じて、前記車両のイナーシャを補正することが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記回転速度推定装置において、前記車輪にスリップが発生しているか否かを判定する制御条件判定部を備え、前記パラメータ変更部は、前記車輪にスリップが発生している場合に前記車両のイナーシャを補正することが好ましい。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る振動抑制装置は、車両の振動を抑制する振動抑制装置であり、前記車両の減速装置を介して前記車輪に連結された駆動軸を駆動する動力発生手段を有した前記車両の駆動系を、前記動力発生手段のイナーシャと、前記動力発生手段の出力トルクと、前記動力発生手段の回転速度と、前記減速装置の減速比と、前記駆動軸の粘性係数と前記車輪のばね定数とを合成した合成ばね定数と、前記駆動軸のねじれ角度と、前記車両のイナーシャとを考慮してモデル化した駆動系モデルに基づき、前記車両が備える車輪の回転速度を推定する回転速度推定部と、前記回転速度推定部によって推定された前記車輪の回転速度と、前記車輪の目標とする回転速度との回転速度偏差に所定の振動抑制ゲインを乗じて得られる補正値を、前記車輪に動力を付与する動力発生手段に対する出力指令値から減ずることにより、前記出力指令値を補正する振動抑制部と、前記車輪のスリップに応じて、前記回転速度を推定する際及び前記振動抑制ゲインを設定する際に用いる前記車両のイナーシャを補正するパラメータ変更部と、を含むことを特徴とする。
この振動抑制装置は、車両の駆動系をモデル化した駆動系モデルに基づき、車両が備える車輪の回転速度を推定するとともに、前記車輪のスリップに応じて、前記車輪の回転速度を推定する際及び動力発生手段に対する出力指令値を補正するための振動抑制ゲインを設定する際に用いる車両のイナーシャを補正する。これによって、車輪が接する路面の状態を考慮して車輪の回転速度を推定し、路面の状態に応じて振動抑制ゲインを設定することができる。その結果、車輪の接する路面の状態が変化した場合であっても、推定した車輪の回転速度及び振動抑制ゲインを用いて車両の振動を抑制する制御を実行する際における精度の低下を抑制することができる。
本発明の望ましい態様としては、前記振動抑制装置において、前記パラメータ変更部は、記車輪がグリップ状態を保っている状態を前提として前記回転速度推定部が推定した前記車輪の回転加速度と、前記車輪がスリップしている状態における実際の前記車輪の回転加速度との比を、前記車両のイナーシャのうちの車体に関するイナーシャに乗じて、前記車両のイナーシャを補正することが好ましい。
本発明の望ましい態様としては、前記振動抑制装置において、前記車輪にスリップが発生しているか否かを判定する制御条件判定部を備え、前記パラメータ変更部は、前記車輪にスリップが発生している場合に前記車両のイナーシャを補正することが好ましい。
本発明に係る回転速度推定装置及び振動抑制装置は、車輪の接する路面の状態が変化した場合における車輪の回転速度を推定する際の精度低下を抑制すること、車輪の接する路面の状態が変化した場合において車両に発生する振動を抑制する制御の精度低下を抑制することのうち少なくとも一つを達成できる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲に含まれるものが含まれる。
以下においては、電動機を動力発生手段とする車両、例えば、いわゆる電気自動車やFCV(Fuel Cell Vehicle:燃料電池車両)に本発明を適用した場合を説明するが、本発明の適用対象は、駆動輪の駆動力を制御できる手段を備えていればよい。このような車両であれば、本発明は、電動機と内燃機関とを組み合わせて動力発生手段とする、いわゆるハイブリッド車両や、動力発生手段に内燃機関を用いる車両に対しても適用できる。
なお、本発明では、動力発生手段のトルクを調整することによって駆動輪のスリップを抑制するため、車両が備える動力発生手段は、例えば電動機のように、出力中のトルクを簡易に知ることができるとともに、出力するトルクを迅速に変更できるものであることが好ましい。
本実施形態は、車両の駆動系をモデル化した駆動系モデルに基づき、駆動力を発生する車両の車輪の回転速度を推定するとともに、前記車輪のスリップに応じて、回転速度を推定する際に用いる車両のイナーシャを補正する点に特徴がある。本実施形態において、車輪の回転速度は、回転角速度、車輪の周速度の他、単位時間あたりの車輪の回転数を含む概念である。また、以下において、車両に発生する振動を抑制する制御、すなわち振動抑制制御は、車両が備える駆動輪に振動が発生すること等を原因として車両が振動した場合、この振動を抑制する制御をいう。
図1は、本実施形態に係る走行装置を備える車両の構成を示す概略図である。以下の説明において、車両1が前進する方向(図1中の矢印X方向)を前とし、車両1が後進する方向、すなわち前進する方向とは反対の方向を後とする。また、左右の区別は、車両1の前進する方向を基準とする。すなわち、「左」とは、車両1の前進する方向に向かって左側をいい、「右」とは、車両1の前進する方向に向かって右側をいう。
実施形態1に係る車両1は、動力発生手段である左前電動機10flと、右前電動機10frと、左後電動機10rlと、右後電動機10rrとを備える。本実施形態において、左前電動機10flは左前輪2flを駆動し、右前電動機10frは右前輪2frを駆動し、左後電動機10rlは左後輪2rlを駆動し、右後電動機10rrは右後輪2rrを駆動する。
上述したように、この車両1において、左前輪2fl、右前輪2fr、左後輪2rl及び右後輪2rrは、それぞれが異なる電動機で駆動される。このように、車両1は、すべての車輪が駆動輪となる。すなわち、車両1の駆動輪は、左前輪2fl、右前輪2fr、左後輪2rl及び右後輪2rrである。このうち左前輪2fl、右前輪2frは車両1の駆動輪であるとともに、ハンドル4によって操舵されて車両1の進行方向を変更する操舵輪としても機能する。
この車両1において、左前電動機10flと、右前電動機10frと、左後電動機10rlと、右後電動機10rrとは、車両1のばね上構造物(懸架装置のばねよりも車体側にある構造物)に取り付けられる。そして、左前電動機10flの発生する動力は左前駆動軸9flを介して左前輪2flに伝達され、右前電動機10frの発生する動力は右前駆動軸9frを介して右前輪2frに伝達される。また、左後電動機10rlの発生する動力は左後駆動軸9rlを介して左後輪2rlに伝達され、右後電動機10rrの発生する動力は右後駆動軸9rrを介して右後輪2rrに伝達される。
本実施形態において、左前電動機10flと左前輪2flとの間には、左前減速装置8flが設けられ、右前電動機10frと右前輪2frとの間には右前減速装置8frが設けられ、左後電動機10rlと左後輪2rlとの間には左後減速装置8rlが設けられ、右後電動機10rrと右後輪2rrとの間には右後減速装置8rrが設けられる。このように、それぞれの電動機と車輪との間には減速装置が設けられ、それぞれの電動機の回転数は減速されてからそれぞれの車輪へ伝達される。
なお、本実施形態において、それぞれの減速装置は、それぞれの電動機と一体に構成され、それぞれの減速装置とそれぞれの車輪との間に、各駆動軸が配置される。このように、減速装置を設けることによって電動機のトルクを増加させて車輪へ伝達できるので、電動機を小型化することによるトルクの低下を減速装置によって補うことにより、電動機を小型化することができる。
上述した左前電動機10fl、左前減速装置8fl、左前駆動軸9fl及び左前輪2flが左前駆動装置100flを構成し、右前電動機10fr、右前減速装置8fr、右前駆動軸9fr及び右前輪2frが右前駆動装置100frを構成する。また、左後電動機10rl、左後減速装置8rl、左後駆動軸9rl及び左後輪2rlが左後駆動装置100rlを構成し、右後電動機10rr、右後減速装置8rr、右後駆動軸9rr及び右後輪2rrが右後駆動装置100rrを構成する。
左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl及び右後電動機10rrは、ECU(Electronic Control Unit)50によって制御されて、左前輪2fl、右前輪2fr、左後輪2rl、右後輪2rrの駆動力が調整される。本実施形態においては、アクセル開度センサ41によって検出されるアクセル5の開度により、車両1の総駆動力F_all、及び左前輪2fl、右前輪2fr、左後輪2rl、右後輪2rr各輪の駆動力が制御される。
本実施形態に係る振動抑制制御において、左前輪2fl、右前輪2fr、左後輪2rl、右後輪2rrの駆動力は、ECU50に組み込まれる振動抑制装置30によって変更される。また、本実施形態においては、上述した構成により、左前輪2fl、右前輪2fr、左後輪2rl、右後輪2rrそれぞれの駆動力を独立して制御することができる。これにより、本実施形態に係る振動抑制制御を実行する際には、左前輪2fl、右前輪2fr、左後輪2rl、右後輪2rrそれぞれの駆動力を個別に制御して、車両1の振動を抑制することができる。
左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl及び右後電動機10rrは、それぞれ左前側レゾルバ40fl、右前側レゾルバ40fr、左後側レゾルバ40rl、右後側レゾルバ40rrによって回転角度や回転速度が検出される。左前側レゾルバ40fl、右前側レゾルバ40fr、左後側レゾルバ40rl及び右後側レゾルバ40rrの出力は、ECU50に取り込まれて、左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl及び右後電動機10rrの制御に用いられる。
左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl及び右後電動機10rrは、インバータ6に接続されている。インバータ6には、例えばニッケル−水素電池や鉛蓄電池、あるいは燃料電池(FC:Fuel Cell)等の車載電源7が接続されている。そして、車載電源7の電力は、必要に応じてインバータ6を介して左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl及び右後電動機10rrへ供給される。それぞれの電動機の出力は、ECU50がインバータ6を制御することで制御される。
本実施形態においては、1台のインバータで1台の電動機を制御する。したがって、本実施形態において、インバータ6は、左前電動機用インバータ6fl、右前電動機用インバータ6fr、左後電動機用インバータ6rl、右後電動機用インバータ6rrで構成される。そして、左前電動機用インバータ6flにより左前電動機10flを制御し、右前電動機用インバータ6frで右前電動機10frを制御し、左後電動機用インバータ6rlで左後電動機10rlを制御し、右後電動機用インバータ6rrで右後電動機10rrを制御する。
左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl及び右後電動機10rrが車両1の動力発生手段として用いられる場合、車載電源7の電力がインバータ6を介して供給される。また、例えば車両1の減速時には、左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl、右後電動機10rrが発電機として機能して回生発電を行い、これによって車両1の運動エネルギを電気エネルギに変換して回収し、車載電源7に蓄える。これは、ブレーキ信号やアクセルオフ等の信号に基づいて、ECU50がインバータ6を制御することにより実現される。なお、本実施形態に係る振動抑制制御を実行する際にも、必要に応じて左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl、右後電動機10rrの回生発電を実行する。
以下においては、説明の便宜上、必要に応じて、左前輪2fl、右前輪2fr、左後輪2rl、右後輪2rrを区別せず車輪2という。同様に、説明の便宜上、必要に応じて、左前電動機10flや右後電動機10rr等は電動機10といい、左前側レゾルバ40flや右前側レゾルバ40fr等はレゾルバ40といい、左前減速装置8fl、右前減速装置8fr等は減速装置8といい、左前駆動軸9fl、右前駆動軸9fr等は駆動軸9といい、左前駆動装置100flや右前駆動装置100fr等は駆動装置100という。
図2は、本実施形態に係る回転速度推定装置及び振動抑制装置の構成例を示す説明図である。本実施形態に係る回転速度推定方法及び振動抑制制御は、図2に示す回転速度推定装置31及び振動抑制装置30により実現できる。図2に示すように、回転速度推定装置31は振動抑制装置30に組み込まれており、回転速度推定装置31及び振動抑制装置30は、ECU50に組み込まれて構成されている。
ECU50は、(Central Processing Unit:中央演算装置)CPU50pと、記憶部50mと、入力ポート55及び出力ポート56と、入力インターフェース57及び出力インターフェース58とから構成される。なお、ECU50とは別個に、本実施形態に係る回転速度推定装置31及び振動抑制装置30を用意し、これをECU50に接続してもよい。そして、本実施形態に係る回転速度推定方法や振動抑制制御を実現するにあたっては、ECU50が備える電動機10等に対する制御機能を、回転速度推定装置31や振動抑制装置30が利用できるように構成してもよい。
回転速度推定装置31は、車輪2の回転速度を推定する回転速度推定部32と、車両1の車体のイナーシャを補正するパラメータ変更部33と、イナーシャを補正する条件を判定する制御条件判定部34とを含んで構成される。これらによって、本実施形態に係る回転速度推定方法が実行される。また、振動抑制装置30は、回転速度推定装置31の構成に、車両1の振動を抑制する振動抑制部35を加えて構成される。これらによって、本実施形態に係る振動抑制制御が実行される。本実施形態において、回転速度推定装置31及び振動抑制装置30は、ECU50を構成するCPU50pの一部として構成される。また、ECU50のCPU50pは、車両1の運転制御を実行するための運転制御部50hを備える。
回転速度推定部32と、パラメータ変更部33と、制御条件判定部34と、振動抑制部35とは、バス54、バス54、及び入力ポート55及び出力ポート56を介して接続される。これにより、回転速度推定部32と、パラメータ変更部33と、制御条件判定部34と、振動抑制部35とは、相互に制御データをやり取りしたり、一方に命令を出したりできるように構成される。
CPU50pが備える回転速度推定装置31及び振動抑制装置30と、記憶部50mとは、バス54を介して接続される。これによって、回転速度推定装置31及び振動抑制装置30は、ECU50が有する車両1の運転制御データを取得し、これを利用することができる。また、回転速度推定装置31及び振動抑制装置30は、本実施形態に係る回転速度推定方法及び振動抑制制御を、ECU50が予め備えている運転制御ルーチンに割り込ませたりすることができる。
入力ポート55には、入力インターフェース57が接続されている。入力インターフェース57には、本実施形態に係る回転速度推定方法及び振動抑制制御を実現する際に必要なセンサ類が接続されている。本実施形態では、左前側レゾルバ40fl、右前側レゾルバ40fr、左後側レゾルバ40rl、右後側レゾルバ40rrが、本実施形態に係る振動抑制制御を実現する際に必要なセンサ類である。また、入力インターフェース57には、車両1の運転制御に必要な情報を取得するセンサ類(例えばアクセル開度センサ41)が接続されている。
これらのセンサ類から出力される信号は、入力インターフェース57内のA/Dコンバータ57aやディジタル入力バッファ57dにより、CPU50pが利用できる信号に変換されて入力ポート55へ送られる。これにより、CPU50pは、車両1の運転制御や、本実施形態に係る回転速度推定方法及び振動抑制制御に必要な情報を取得することができる。
出力ポート56には、出力インターフェース58が接続されている。出力インターフェース58には、左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl及び右後電動機10rrを制御するためのインバータ6が接続される。振動抑制装置30が、インバータを介して、左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl及び右後電動機10rrの駆動力を制御することにより、本実施形態に係る振動抑制制御が実現できる。
出力インターフェース58は、制御回路58、58等を備えており、CPU50pで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記センサ類からの出力信号に基づき、ECU50のCPU50pは、左前電動機10fl、右前電動機10fr、左後電動機10rl及び右後電動機10rrの駆動力を制御することができる。
記憶部50mには、本実施形態に係る振動抑制制御の処理手順を含むコンピュータプログラムやデータマップ等が格納されている。ここで、記憶部50mは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
上記コンピュータプログラムは、CPU50pへ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、本実施形態に係る振動抑制制御の処理手順を実現できるものであってもよい。また、この振動抑制装置30は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、回転速度推定部32、パラメータ変更部33、制御条件判定部34及び振動抑制部35の機能を実現するものであってもよい。
図3−1は、車両の駆動系をモデル化した駆動系モデルを説明する模式図である。図3−2は、車両の模式図である。本実施形態に係る回転速度推定装置31は、図3−1に示す駆動系モデル100Mに基づくオブザーバにより、車輪2の回転速度を推定する。駆動系モデル100Mは、車両1の駆動系、すなわち駆動装置100の駆動軸9の剛性と車輪2の剛性とを考慮し、そのねじれ振動の1次成分に特化することで低次元化して作成したモデルである。
ここで、I1は、電動機10のイナーシャ、Tmは電動機10の出力するトルク、ωmは電動機10の回転速度、ρは減速装置8の減速比、Csは駆動軸9の粘性係数と車輪2の粘性係数とを合成した合成粘性係数、Ksは駆動軸9のばね定数と車輪2のばね定数とを合成した合成ばね定数、θは駆動軸9のねじれ角度、ωtは車輪2の回転速度、I2は車両1のイナーシャである。車両1のイナーシャは、車両1の車輪2のイナーシャI2tと、車両1の車輪2以外の部分(車体1Bという)におけるイナーシャI2bとの和である。なお、車両1のイナーシャI2は、車両1の質量Mと相関が高く、車両1の質量を車両1のイナーシャに変換する変換係数jを用いて、I2=j×Mで表すことができる。なお、変換係数jは、車両1の諸元等によって決定される定数である。
本実施形態において、駆動系モデル100Mは、車両1が備える各駆動装置100に対して作成され、それぞれの駆動系モデル100Mを用いて車両1の各車輪2の回転速度を推定する。この場合、図3−2に示すように、それぞれの駆動系モデル100Mにおける車両1のイナーシャI2は、左前輪2fl、右前輪2fr、左後輪2rl、右後輪2rrそれぞれが担う車両1のイナーシャI2_fl、J2_fr、J2_rl、J2_rrとなる。それぞれの車輪2が担う車両1のイナーシャは、車両1の諸元等から予め求める。
なお、本実施形態において、駆動系モデル100Mは、各駆動装置100に対して作成される。すなわち、計4個の駆動系モデル100Mが作成されるが、駆動系モデル100Mは、これに限定されるものではない。例えば、車両1の左前駆動装置100flと右前駆動装置100frとを一つの駆動系モデルとし、車両1の左後駆動装置100rlと右後駆動装置100rrとを一つの駆動系モデルとしてもよい。このようにすれば、図2に示すCPU50pの演算負荷を低減させることができる。
さらに、各駆動装置100に対して作成した第1の駆動系モデルと、2台の駆動装置毎に作成した第2の駆動系モデルとを、路面条件に応じて切り替えてもよい。例えば、左右の車輪が接地する路面の状態が同じ場合には第2の駆動系モデルを用いて、CPU50pの演算負荷を低減する。そして、左右の車輪が接地する路面の状態が異なる場合(一方が乾燥路で一方が凍結路であるような場合)には、第1の駆動系モデルを用いて、車輪2の回転速度の推定精度を向上させる。
図4、図5は、本実施形態に係る回転速度推定方法を実行する際の制御ブロックを示すブロック図である。図4、図5に示す制御ブロックは、図1に示す車両1が備える複数の駆動装置100のうちの一つに対するものである。図2に示す回転速度推定装置31の回転速度推定部32の機能は、図4に示す制御ブロックのオブザーバObを用いて実現され、オブザーバObを用いて車輪2の回転速度が推定される。
図4に示す制御ブロックによる制御では、車輪2の回転速度を検出する手段の分解能が低い場合に、車輪2の回転速度の精度を向上させるために、オブザーバObを用いて、車両1が備える一つの車輪2の回転速度、及び図1に示す車両1が備えるすべての車輪2の平均回転速度を推定する。なお、以下の説明においては、推定された回転速度には*を付して、実測された回転速度と区別する。
ここで、車両1が備えるすべての車輪2の平均回転速度は、車両1の走行速度(車両速度)に対応し、車両1が備える各車輪の目標とする回転速度となる。なお、車輪2の目標とする回転速度は車両速度に限るものではない。例えば、車両1の左右の車輪間において駆動力を変更することにより、車両1の旋回性能を向上させるような場合には、車両の旋回性能に応じて設定された駆動力が、車輪2の目標とする駆動力になる。
図5に示す制御ブロックにおいて、図2に示す回転速度推定装置31の回転速度推定部32の機能は、オブザーバObを用いて実現される。この制御ブロックによる制御では、車輪2の回転速度を検出する手段がない場合に、オブザーバObを用いて車両1が備える一つの車輪2の回転速度、及び図1に示す車両1が備えるすべての車輪2の平均回転速度を推定する。
オブザーバObとは、現代制御理論に基づいて、制御系の内部状態を観測する状態観測器である。オブザーバObは、制御入力と測定出力から状態変数の時間応答を再現させる機能を持つ。そして、オブザーバObは、例えば、物理的なセンサでは直接検出できない制御系の状態を、間接的な情報から推定したり、物理的なセンサで制御系の状態が直接検出できる場合でも、その精度が低い場合には、間接的な情報から推定したりする。オブザーバObは、例えば、ワイヤードロジック又はソフトロジックで構成され、制御対象のモデル(シミュレータ)とみなすことができる。
オブザーバObは、図3−1に示す駆動系モデル100Mに基づいて作成される。例えば、図4に示すオブザーバObは、式(1)により、図5に示すオブザーバObは、式(2)により表現することができる。式(1)、式(2)中のα11、α13、α21、α23、β1は、それぞれ式(3)〜式(7)に示す通りである。また、Go11、Go12等は、オブザーバObのゲインである。なお、本実施形態に係る回転速度推定方法や振動抑制制御において用いる、式(1)、式(2)で表されるオブザーバObは一例であって、これに限定されるものではない。この他にも外乱を加味したオブザーバ等を用いることができる。
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本実施形態に係る振動抑制制御では、車輪2の回転速度と、車輪2の目標とする回転速度(例えば、車輪2の平均回転速度)との回転速度偏差に所定の振動抑制ゲインGを乗じて得られる補正値を、車輪2に動力を付与する電動機10(制御対象A)に対する出力指令値から減ずることにより、電動機10に対する出力指令値を補正して、車両1の振動を抑制する。このとき、図4に示す制御ブロックによる制御では、オブザーバObによって推定された車輪2の回転速度(推定回転速度)ωt*と、車両1が備えるすべての車輪2の平均回転速度(推定平均回転速度)ωta*との回転速度偏差Δωtを用いて、車両1の振動を抑制することになる。
オブザーバObは、車輪2がグリップ状態を保っている状態(例えば、乾燥路面上で車輪2が駆動されるような場合)を前提とした、図3−1に示す駆動系モデル100Mに基づいて設定される。このため、車輪2がグリップ状態である場合には、実際の車輪2の回転速度ωtや平均回転速度ωtaに対する推定回転速度ωt*や推定平均回転速度ωta*の誤差は小さい。しかし、車輪2がスリップ状態である場合、すなわち、車輪2が濡れた路面や凍結路面等を走行して、車輪2と路面との間における摩擦係数が最大値を超えた場合には、オブザーバObの前提としている条件が異なってしまう。このため、実際の車輪2の回転速度ωtや平均回転速度ωtaに対する推定回転速度ωt*や推定平均回転速度ωta*の誤差が大きくなり、振動抑制制御の精度が低下するおそれがある。
そこで、本実施形態に係る回転速度推定装置31及び振動抑制装置30が備える回転速度推定部32では、路面状態の変化を考慮したオブザーバObとする。この場合、路面の状態毎に駆動系モデル100Mを用意すると、制御が複雑になる。このため、本実施形態では、車輪2と路面との間における摩擦係数μの変化は、車両1のイナーシャI2が変化したものと同等と考えて、オブザーバObの車両1のイナーシャI2を変化させる。すなわち、式(5)で示すα21や、式(6)で示すα23における車両1のイナーシャI2を変化させる。これによって、路面の状態が変化した場合でも、その変化を簡易にオブザーバObへ反映させることができる。
ここで、車両1のイナーシャ(車両イナーシャ)I2を路面の状態に応じて変化させる手法を説明する。グリップ状態における車輪2の要求駆動力Fdと、スリップ状態における車輪2の要求駆動力Fsとは変化しない。車輪2がグリップ状態を保っている状態においては、要求駆動力Fd=I2b×adであり、車輪2がスリップしている状態においては、要求駆動力Fs=I2b_r×arとなる。Fd=Fsなので、I2b×ad=I2b_r×arとなり、この式から、車輪2がスリップしている状態における車体1Bに関するイナーシャI2b_rは、I2b×ad/arとなる。ここで、adは、車輪2がグリップ状態を保っている状態においてオブザーバObによって推定された車輪2の回転加速度(グリップ時回転加速度)である。また、arは、車輪2がスリップしている状態における実際の車輪2の回転加速度(実回転加速度)である。
このように、車両イナーシャI2を路面の状態に応じて変化させる場合、グリップ時回転加速度adと、実回転加速度arとの比(回転加速度比)ad/arを用いる。そして、回転加速度比ad/arを、車両イナーシャI2のうち、車体1Bに関するイナーシャI2bに乗ずることで、車輪2がスリップしている状態を考慮した車両イナーシャI2_rに補正することができる。すなわち、I2_r=I2b×ad/ar+I2t=I2b_r+I2tとなる。ここで、車輪2がスリップしている状態を考慮した車両イナーシャI2_rを、補正車両イナーシャという。
図4、図5に示すように、図2に示す回転速度推定装置31のパラメータ変更部33の機能は、イナーシャ補正ブロックCにより実現することができる。イナーシャ補正ブロックCは、制御対象A(電動機10)の回転速度ωmに1/ρを乗じて得られる車輪2の回転速度ωtを時間微分(1/s:sはラプラス演算子)することにより、実回転加速度arを得る。そして、オブザーバObで推定されたグリップ時回転加速度adから回転加速度比ad/arを求め、回転加速度比ad/arを車体1Bに関するイナーシャI2bに乗じて、車輪2がスリップしている状態における車体1Bに関するイナーシャI2b_rを求める。I2b_rに、車輪2のイナーシャI2tを加算することによって、補正車両イナーシャI2_rが得られる。
ここで、制御対象A(電動機10)の回転速度ωmは、電動機10のレゾルバ40から求めることができる。また、車輪2がグリップ状態を保っている状態においてオブザーバObによって推定された車輪2の回転速度ωt*を微分することにより、グリップ時回転加速度adを求めることができる。
上記手法により、オブザーバObの車両イナーシャI2を、補正車両イナーシャI2_rに変化させることにより、車輪2が接地する路面の状態変化を考慮することができる。これによって、車輪2がグリップ状態を保っている状態を前提としたオブザーバObを用いて、車輪2がスリップしている状態における車輪2の回転速度の推定精度を向上させることができる。したがって、オブザーバObが推定した車輪2の回転速度を用いて振動抑制制御を実行する場合においては、振動抑制制御の精度低下を抑制することができる。次に、本実施形態に係る振動抑制制御について説明する。
本実施形態に係る振動抑制制御では、図2に示す回転速度推定装置31の回転速度推定部32により推定された車輪2の回転速度ωt*、あるいは実測された車輪2の回転速度ωtと、車輪2の目標とする回転速度ωta*との回転速度偏差Δωtに所定の振動抑制ゲインGを乗じて得られる補正値を用いて、車両1の振動を抑制する。ここで、回転速度偏差Δωtは、ωt*−ωta*(車輪2の回転速度が推定値の場合)、又はωt−ωta*(車輪2の回転速度が実測値の場合)で求めることができる。
車両1の振動を抑制する場合、回転速度偏差Δωtが原因となっていると考えられるので、この回転速度偏差Δωtが0になるように、電動機10の出力するトルクTmを設定すればよい。このため、本実施形態に係る振動抑制制御では、動力発生手段である電動機10に対する出力指令値(より具体的にはトルク指令値)Tm_cから、補正値Tm’を減じた値のトルクを電動機10に出力させる。ここで、補正値Tm’は、回転速度偏差Δωtに振動抑制ゲインGを乗じた値、すなわちTm’=G×Δωtである。
ここで、振動抑制ゲインGは、式(8)を満たすように設定される。図3−1に示す駆動系モデル100Mの運動方程式は、式(9)により記述できる。また、電動機10のトルクTmは、式(10)により表される。そして、式(9)と式(10)とから作成した、制御系を構成した閉ループの状態方程式の特性方程式から、制御系を非振動とする振動抑制ゲインGを求める。このようにして求めた振動抑制ゲインGが、上記式(8)で得られる。
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式(8)から分かるように、振動抑制ゲインGには、式(5)で示すα21及び式(6)で示すα23が含まれる。すなわち、振動抑制ゲインGには、車両イナーシャI2が含まれる。上述したように、振動抑制ゲインGは、図3−1に示す駆動系モデル100Mの運動方程式(式(9))から得られるが、図3−1に示す駆動系モデル100Mは、例えば、乾燥した路面で車輪2がグリップ状態を保っている状態を前提としている。このため、車輪2がスリップ状態である場合には、駆動系モデル100Mの運動方程式の前提としている条件が異なってしまい、振動抑制制御の精度が低下するおそれがある。
そこで、振動抑制ゲインGについても、オブザーバObと同様に、車輪2が接する路面の状態を考慮する必要がある。本実施形態においては、上述した手法により、振動抑制ゲインGの車両イナーシャI2を、補正車両イナーシャI2_rに変化させて、路面状態の変化を考慮する。これによって、車輪2がグリップ状態を保っている状態を前提とした振動抑制ゲインGを用いて、車輪2がスリップしている状態における車両1の振動を抑制する。これによって、振動抑制制御の精度低下を抑制して、迅速に車両1の振動を収束させることができる。次に、本実施形態に係る回転速度推定方法及び振動抑制制御の手順を説明する。
図6は、本実施形態に係る回転速度推定方法及び振動抑制制御の手順を示すフローチャートである。図7は、車両速度と車輪の回転速度とを示す概念図である。図8は、摩擦係数とスリップ率との関係を示す概念図である。本実施形態に係る回転速度推定方法及び振動抑制制御において、オブザーバOb及びゲインGに設定される車両イナーシャI2の初期値は、車輪2がグリップ状態にあるときの車両イナーシャI2である。本実施形態に係る回転速度推定方法及び振動抑制制御を実行するにあたり、ステップS101において、図2に示す回転速度推定装置31が備える制御条件判定部34は、図1に示す車両1が振動中であるか否かを判定する。
車両1が振動中であるか否かは、例えば、車両1が備える複数の車輪2のうち少なくとも一つに振動が発生している場合には、車両1が振動していると判定する。例えば、図7に示すように、車両速度Vの増加に対して車輪2の周速度Vtが変動しながら増加している場合には、車輪2は振動していると判定することができる。車両速度Vは、例えば、車両1が備える複数の車輪2の回転速度を平均した値とすることができる。また、車輪2の周速度は、車輪2を駆動する電動機10のレゾルバ40から取得した電動機10の回転速度から求めることができる。
ステップS101でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部34が車両1は振動中でないと判定した場合、STARTに戻り、制御条件判定部34は、車両1の振動状態を監視する。ステップS101でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部34が、車両1は振動中であると判定した場合、ステップS102へ進む。
ステップS102において、制御条件判定部34は、車両1が備える車輪2にスリップが発生しているか否かを判定する。スリップが発生しているか否かは、車輪2のスリップ率Slip(=(ωt−ωta)/ωt)が最大摩擦係数μ_maxにおけるスリップ率Slip_cよりも大きくなったか否かで判定できる。図8に示すように、車輪2と路面との間の摩擦係数μは、スリップ率Slipの増加とともに増加して最大摩擦係数μ_maxとなり、その後は、スリップ率Slipの増加ともに小さくなる。したがって、摩擦係数μが上昇から下降に転じた場合に、車輪2にスリップが発生したと判定することができる。なお、摩擦係数μは、車輪2が発生する駆動力Fと相関があるため、前記駆動力をモニタすることにより、車輪2のスリップを判定することができる。
ステップS102でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部34が車輪2にスリップは発生していないと判定した場合、STARTに戻り、制御条件判定部34は、車両1の振動状態や車輪2のスリップを監視する。ステップS102でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部34が、車輪2にスリップが発生していると判定した場合、ステップS103に進む。
ステップS103において、回転速度推定装置31のパラメータ変更部33は、上述したグリップ時回転加速度adを求め、ステップS104において、上述した実回転加速度arを求める。なお、ステップS103とステップS104の順序は問わない。次に、パラメータ変更部33は、ステップS105で、グリップ時回転加速度adと実回転加速度arとから求めた回転加速度比ad/arを車体1Bに関するイナーシャI2bに乗ずることで、車両イナーシャI2を補正し、補正車両イナーシャI2_rを得る。
次に、ステップS106において、パラメータ変更部33は、補正車両イナーシャI2_rをオブザーバObに反映させる。そして、ステップS107において、振動抑制装置30の振動抑制部35は、補正車両イナーシャI2_rが反映されたオブザーバObにより推定された車輪2の回転速度を用いるとともに、振動抑制ゲインGに補正車両イナーシャI2_rを反映させて、振動抑制制御を実行する。
次に、ステップS108において、制御条件判定部34は、図1に示す車両1が振動中であるか否かを判定する。ステップS108でYesと判定された場合、すなわち、制御条件判定部34が車両1は振動中であると判定した場合には、車両1が振動していないと判定されるまで、ステップS102〜ステップS108が繰り返される。
ステップS108でNoと判定された場合、すなわち、制御条件判定部34が車両1は振動中でないと判定した場合には、ステップS109に進む。ステップS109において、パラメータ変更部33は、オブザーバOb及び振動抑制ゲインGの車両イナーシャI2を、車輪2がグリップ状態における値に変更する。
以上、本実施形態では、車両の駆動系をモデル化した駆動系モデルに基づき、駆動力を発生する車輪の回転速度を推定するとともに、前記車輪のスリップに応じて、回転速度を推定する際に用いる車両のイナーシャを補正する。これによって、車輪が接する路面の状態を考慮して車輪の回転速度を推定することができるので、車輪の接する路面の状態が変化した場合における車輪の回転速度を推定する際の精度低下を抑制できる。そして、この回転速度推定装置によって推定した車輪の回転速度に基づいて車両の振動を抑制すれば、車輪の接する路面の状態が変化した場合において、車両に発生する振動を抑制する制御の精度低下を抑制することができる。また、車輪の接する路面の状態が変化した場合において、車輪の回転速度を推定する際の精度低下を抑制できるので、車輪と路面との摩擦状態を推定する際の精度低下も抑制できる。
また、本実施形態においては、車両の駆動系をモデル化した駆動系モデルに基づき、駆動力を発生する車輪の回転速度を推定するとともに、前記車輪のスリップに応じて、前記車輪の回転速度を推定する際及び動力発生手段に対する出力指令値を補正するための振動抑制ゲインを設定する際に用いる車両のイナーシャを補正する。これによって、車輪が接する路面の状態を考慮して車輪の回転速度を推定し、路面の状態に応じて振動抑制ゲインを設定することができる。その結果、車輪の接する路面の状態が変化した場合であっても、振動抑制制御の精度低下を抑制できるので、車両の振動の発散を抑制して、速やかに車両の振動を抑制することができる。
以上のように、本発明に係る回転速度推定装置及び振動抑制装置は、車輪の回転速度を推定することに有用であり、特に、路面の状態が変化した場合における車輪の回転速度の推定精度低下を抑制することに適している。
本実施形態に係る走行装置を備える車両の構成を示す概略図である。 本実施形態に係る回転速度推定装置及び振動抑制装置の構成例を示す説明図である。 車両の駆動系をモデル化した駆動系モデルを説明する模式図である。 車両の模式図である。 本実施形態に係る回転速度推定方法を実行する際の制御ブロックを示すブロック図である。 本実施形態に係る回転速度推定方法を実行する際の制御ブロックを示すブロック図である。 本本実施形態に係る回転速度推定方法及び振動抑制制御の手順を示すフローチャートである。 車両速度と車輪速度とを示す概念図である。 摩擦係数とスリップ率との関係を示す概念図である。
符号の説明
1 車両
1B 車体
2 車輪
2fl 左前輪
2fr 右前輪
2rl 左後輪
2rr 右後輪
6 インバータ
6fl 左前電動機用インバータ
6fr 右前電動機用インバータ
6rl 左後電動機用インバータ
6rr 右後電動機用インバータ
8 減速装置
8fl 左前減速装置
8fr 右前減速装置
8rl 左後減速装置
8rr 右後減速装置
9 駆動軸
9rl 左後駆動軸
9fl 左前駆動軸
9rr 右後駆動軸
9fr 右前駆動軸
10 電動機
10fl 左前電動機
10fr 右前電動機
10rl 左後電動機
10rr 右後電動機
30 振動抑制装置
31 回転速度推定装置
32 回転速度推定部
33 パラメータ変更部
34 制御条件判定部
35 振動抑制部
40 レゾルバ
40fl 左前側レゾルバ
40fr 右前側レゾルバ
40rl 左後側レゾルバ
40rr 右後側レゾルバ
50 ECU
50m 記憶部
50p CPU
100 駆動装置
100fl 左前駆動装置
100rl 左後駆動装置
100fr 右前駆動装置
100rr 右後駆動装置
100M 駆動系モデル

Claims (6)

  1. 車両が備える車輪の回転速度を推定するものであり、
    前記車両の減速装置を介して前記車輪に連結された駆動軸を駆動する動力発生手段を有した前記車両の駆動系を、前記動力発生手段のイナーシャと、前記動力発生手段の出力トルクと、前記動力発生手段の回転速度と、前記減速装置の減速比と、前記駆動軸の粘性係数と前記車輪のばね定数とを合成した合成ばね定数と、前記駆動軸のねじれ角度と、前記車両のイナーシャとを考慮してモデル化した駆動系モデルに基づき、前記車輪の回転速度を推定する回転速度推定部と、
    前記車輪のスリップに応じて、前記回転速度を推定する際に用いる前記車両のイナーシャを補正するパラメータ変更部と、
    を含むことを特徴とする回転速度推定装置。
  2. 前記パラメータ変更部は、
    記車輪がグリップ状態を保っている状態を前提として前記回転速度推定部が推定した前記車輪の回転加速度と、前記車輪がスリップしている状態における実際の前記車輪の回転加速度との比を、前記車両のイナーシャのうちの車体に関するイナーシャに乗じて、前記車両のイナーシャを補正することを特徴とする請求項1に記載の回転速度推定装置。
  3. 前記車輪にスリップが発生しているか否かを判定する制御条件判定部を備え、
    前記パラメータ変更部は、前記車輪にスリップが発生している場合に前記車両のイナーシャを補正することを特徴とする請求項1又は2に記載の回転速度推定装置。
  4. 車両の振動を抑制する振動抑制装置であり、
    前記車両の減速装置を介して前記車輪に連結された駆動軸を駆動する動力発生手段を有した前記車両の駆動系を、前記動力発生手段のイナーシャと、前記動力発生手段の出力トルクと、前記動力発生手段の回転速度と、前記減速装置の減速比と、前記駆動軸の粘性係数と前記車輪のばね定数とを合成した合成ばね定数と、前記駆動軸のねじれ角度と、前記車両のイナーシャとを考慮してモデル化した駆動系モデルに基づき、前記車両が備える車輪の回転速度を推定する回転速度推定部と、
    前記回転速度推定部によって推定された前記車輪の回転速度と、前記車輪の目標とする回転速度との回転速度偏差に所定の振動抑制ゲインを乗じて得られる補正値を、前記車輪に動力を付与する動力発生手段に対する出力指令値から減ずることにより、前記出力指令値を補正する振動抑制部と、
    前記車輪のスリップに応じて、前記回転速度を推定する際及び前記振動抑制ゲインを設定する際に用いる前記車両のイナーシャを補正するパラメータ変更部と、
    を含むことを特徴とする振動抑制装置。
  5. 前記パラメータ変更部は、
    記車輪がグリップ状態を保っている状態を前提として前記回転速度推定部が推定した前記車輪の回転加速度と、前記車輪がスリップしている状態における実際の前記車輪の回転加速度との比を、前記車両のイナーシャのうちの車体に関するイナーシャに乗じて、前記車両のイナーシャを補正することを特徴とする請求項4に記載の振動抑制装置。
  6. 前記車輪にスリップが発生しているか否かを判定する制御条件判定部を備え、
    前記パラメータ変更部は、前記車輪にスリップが発生している場合に前記車両のイナーシャを補正することを特徴とする請求項4又は5に記載の振動抑制装置。
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