JP4966460B2 - 有価金属の回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話や携帯用コンピューターなどのモバイル機器で汎用されるコバルト含有電池の電極材料からのコバルトの電解的な回収方法に関し、より詳細には電池廃材を溶解して得られる電解液中のコバルトイオンを電解還元して陰極表面に析出させて分離回収する方法に関し、更に詳細には簡便な操作でコバルト金属等の有価金属を高純度金属として電池廃材から分離回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コバルト酸リチウムを電極とするリチウムイオン二次電池はモバイル用電子機器を中心として広く使用されており、歴史的に比較例新しいにも拘らず、現在電池の売上げでは乾電池を抜いて最高になっている。このように汎用されているリチウムイオン電池であるが、コバルトという産出が極めて限られている物質を使用するため、使用済みの電池や製造途中で副生する屑類からのコバルト回収は極めて重要な課題になる。
又リチウムも資源的には比較的豊富であるとはいえ、分離精製に多量のエネルギーを必要とするため、その回収をいかに効率良く行うかは重要な問題である。
【0003】
このようなタイプの電池はその歴史が浅いため、電池の電極からこれらの金属を回収する必要性が叫ばれてきたにも拘らず、精力的な研究開発が行われていないのが現状である。
最近になってドライ法と称せられる回収法が実施され、このドライ法では電池や電極を焼却して炭素分を除いて金属成分を集め、それを合金化した後、従来のコバルト精錬法に従ってコバルトを回収するが、手間が掛かる割には回収率は思わしくなく、又リチウムの回収はこの系では不可能に近かった。
【0004】
このドライ法以外に、化学的なコバルト回収が試みられており、例えば回収対象金属を酸に溶解した後、pHを調整しながら電解を行いコバルト金属を陰極上に析出させている。しかしpHの変動が起こり易くため所望のpH値に設定できず、工業的な回収を行うことは困難であった。更にこのような条件下では、コバルト金属析出の電流効率が比較的低く、エネルギー消費が大きくなるという問題点もあった。
回収対象金属の溶液をアルカリ性にしてコバルトイオンを水酸化コバルトとして析出させ分離することも試みられているが、水酸化物はコロイド状になりやすく、その後の濾過分別が比較的困難で、更に不純物が残留しやすいという問題点がある。
【0005】
これらの問題点を解消するため、通常の精錬プロセスではコバルトイオンを一旦酸化物として沈殿分離させる手法が採られることがあり、弱酸性で沈殿が生成するが、酸化剤の添加が必要で選択された酸化剤によってはコバルトの純度が低下するという欠点がある。酸化剤としてオゾンを使用すればそのような欠点は回避できるが、コスト高になってしまう。更に酸化コバルトは不純物を含みやすく、再精製が必要となるといった欠点もある。
従って本発明は、コバルトやリチウム等の有価金属を含む廃電池から、酸化剤を実質的に使用せずにかつ最小限の電力量でしかも比較的簡単な操作で有価金属を回収できる方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、コバルト酸リチウムを電極材料として含有する電池材料から有価金属を回収する方法において、前記電極材料を溶解したコバルト含有電解液を溶存塩素の存在下、酸性で電解し、陰極表面にコバルトを析出させた後、電解液を中和して残留コバルト成分を酸化コバルト又は水酸化コバルト沈殿として分離し、分離後の溶液に炭酸ナトリウムを添加してリチウムイオンを炭酸リチウムとして沈殿させ回収することを特徴とする有価金属の回収方法、及びアルミニウム基板上にコバルト酸リチウムを電極材料として含有する電池材料から有価金属を回収する方法において、前記電極材料を苛性アルカリで処理して前記アルミニウムの少なくとも一部を溶解して分離除去した後、前記電極材料を溶解したコバルト含有電解液を溶存塩素の存在下、酸性で電解し、陰極表面にコバルトを析出させた後、電解液を中和して残留コバルト成分を酸化コバルト又は水酸化コバルト沈殿として分離し、分離後の溶液に炭酸ナトリウムを添加してリチウムイオンを炭酸リチウムとして沈殿させ回収することを特徴とする有価金属の回収方法である。
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明では、コバルト等の有価金属を含有する電池材料から該有価金属を回収する。
コバルト回収の一法としてコバルトイオンを溶解した溶液を電解してコバルト金属として陰極表面に析出させる方法がある。
電解によりコバルトイオンを陰極に析出(電着)させる際に、例えば陰極としてコバルト金属電極を使用すると、通常は水素発生電位の方がコバルトイオンの析出電位より遥かに貴でコバルトイオンの析出より水素発生が優先して起こる。コバルト析出が生じる好ましい条件はpH範囲3〜4のみである。pH範囲がこれより強酸側つまりpH3未満ではコバルト析出は生じるにしてもコバルト析出と水素発生が競合反応となり、電流効率が大きく低下するため、コバルト析出は一般にpH3〜4で行われる。
【0008】
電池廃材としてのコバルトを電解的に回収する技術は知られていないが、コバルトイオンを電解的に陰極表面に析出させるためには、pH3〜4に限定され、電解条件が制約される。
本発明者らはこのような状況下で、電池廃材中のコバルトを電着で回収する条件、特にリチウム二次電池中のコバルトイオンを比較的制約の少ない条件下で電着させる条件を種々検討して本発明に到達したものである。
【0009】
本発明方法は、コバルトを含有する電池廃材等からコバルト含有溶液を調製し、溶存塩素の存在下、酸性で電解し、陰極表面にコバルトを析出させることを基本とする。ここで溶存塩素とは電解液中に溶存し酸化力を有する塩素含有成分を総称し、主として塩素ガスを意味する。又回収されるべきコバルトは、電池廃材や製造途中の材料中にコバルト化合物及びコバルト合金等のどのような形態で存在しても良いが、いずれにしても溶液に溶解し、コバルトイオンを含む電解液とする。
次に本発明によるコバルトイオンをコバルト金属として陰極上に析出させる方法を説明する。
【0010】
溶存塩素の存在下に酸性条件でコバルトイオン含有溶液を電解するとコバルト金属が陰極表面に析出する。このときコバルトイオン含有溶液に、例えばニッケルイオンが含有されていると、ニッケルイオンはイオン表面に析出せず、コバルトをニッケルから分離できることが分かった。
この事実は溶液中の2価のコバルトイオンが、可逆的な酸化及び還元が可能で、しかも強い酸化性を有している溶存塩素により3価に酸化されていると仮定することにより説明できる。
つまり、コバルトとほぼ同じ電気化学的特性を有し電解では実質的に分離することが不可能であるとされていたニッケルの共沈が極めて少ないという結果は、コバルトイオンが3価に酸化され、3価のコバルトイオンが3価のニッケルイオンと電気化学的特性が異なっている、又は溶存塩素は2価のコバルトイオンを3価に酸化するが、2価のニッケルイオンを3価のニッケルイオンに酸化できないという論旨で説明できる。
【0011】
即ちCo2+→Coの平衡電位は−0.277VvsNHEであり、それに対し水素発生は0.00VvsNHEで、強酸中では水素発生が優先し金属析出は起こらない。
しかしCo3+が安定に存在すると、Co3+→Coの平衡電位は+0.4VvsNHEであり、実質的にpHに無関係にコバルトが析出する。しかしその場合にはCo2+→Coによる析出の場合の1.5倍の電流が必要であり、電力消費が約1.5倍になる筈である。
溶存塩素を使用してコバルトイオンの析出を行うと、2価のコバルトイオンの析出とほぼ同じ電力消費量でコバルト金属の析出が起こり、しかも電解液中にコバルトイオンと例えばニッケルイオンが共存してもコバルト金属がほぼ選択的に析出するという、一見矛盾する結果が得られる。
【0012】
その理由は理論的に十分解明できてはいないが、次のように説明できる。電解反応に一部溶存塩素が関与して、つまり溶存塩素が2価のコバルトイオンの3価のコバルトイオンへの酸化、及び3価のコバルトイオンの2価のコバルトイオンへの還元のレドックス反応に恰も触媒として関与すると推測できる。
この溶存塩素が関与する反応は次のように進行すると考えられる。
1/2Cl2 + Co2+→ Cl- + Co3+(電解液内化学反応) ▲1▼
Co3+ + 3e- → Co (電極反応) ▲2▼
Cl- → 1/2Cl2 + e- (副反応) ▲3▼
Co3+ + Cl- + 2e- → Co + 1/2Cl2 (陰極全反応)▲4▼
【0013】
▲1▼式に示すように溶存塩素が自身が塩素イオンとなって2価のコバルトイオンの3価のコバルトイオンへの酸化を触媒して生成する塩素イオンが3価のコバルトイオンの選択的な析出を可能にするとともに、3価のコバルトイオンの0価のコバルト金属への還元に際しては、塩素イオンが3価→2価→1価→0価の何れかの還元に寄与して3価から0価までの還元に必要な電流量を2価から0価までの還元に必要な電流量に減少させている。
つまり溶存塩素の存在は、溶液中の還元されにくい2価のコバルトイオンを還元されやすい3価のコバルトイオンに変換して析出を促進すると共に本来であれば2価から3価に酸化されたことに伴い増加する筈の電力量を自身が触媒として機能することにより2価イオンの還元とほぼ同一量に維持している。
【0014】
このようにコバルトイオンの析出が促進されると、電解液中に他の金属イオンが共存しても該金属イオンが析出コバルト中に混入する可能性が減少して高純度のコバルト金属が得られることになる。
このように溶存塩素は消費電力量を増加させずにコバルトイオンの析出を容易化するという特性を有するが、塩素が陰極表面に過剰に存在すると、塩素の有する酸化作用により一旦還元析出したコバルト金属が再酸化されて電解液中にコバルトイオンとして溶解してしまい、見掛けの電流効率が低下する。
従って塩素は飽和濃度又は飽和濃度より若干低い濃度で電解液中に存在することが望ましい。換言すると、溶存塩素であれば析出したコバルト金属を再溶解させることはなく問題は生じないが、溶存できない量の塩素ガスが供給されると、この塩素ガスが陰極表面でコバルト金属を溶解させて効率低下を招くことになる。
【0015】
例えば電解液に塩酸水溶液を使用すると、陽極で塩素ガスが発生する。この塩素ガスが陰極に接触すると析出したコバルト金属を再溶解させる。これを防止するためには、発生する塩素ガスを陰極に接触させないように捕集し電解槽外に取り出すか、隔膜で陽極室と陰極室を区画する隔膜式電解槽を使用するか、陽極を覆って発生する塩素ガスが陰極へ到達しないようにするか、あるいは塩素ガスの発生自体を回避するために塩素を含まない電解液を使用する等の対策を講ずる必要がある。
陽極で発生する塩素を陰極に接触させないための手段としては、隔膜型電解槽の使用が最も確実であり、この場合には陽極室と陰極室が区画されて陽極室で発生する塩素ガスが隔膜で遮断されて陰極室へ移行することがない。
【0016】
この場合、陽極で発生する塩素はガス状であり気相中に存在するため、電解槽中の液相部分は隔膜で遮断されている必要はなく、気相部分のみが隔膜で分離されていれば十分である。従って例えば陽極を袋状のガスセパレーターで覆ったり、あるいは水平型の電解槽の場合に下部の液相部は連通させておき上部の気相部分のみを区画する隔膜を設置しても良い。なおここでいう隔膜とは、その目開きが通常の隔膜型電解槽で使用する隔膜より粗くても良く、つまり陽極で発生する塩素ガスのみの透過を阻止できれば良く、溶存塩素や電解液は透過しても良い。
この他に、陽極表面を耐塩素材製の網で覆い、そこから発生塩素ガスを回収するようにしても良く、この構造的に最も簡単な手法によると、通常の無隔膜型電解槽をそのまま使用することができる。
【0017】
前記セパレーターの材質は特に限定されないが、塩素に対して安定な例えばポリプロピレンやフッ素樹脂等であることが望ましい。その形状は前述の通り袋状として陽極を覆い発生する塩素ガスを捕捉するが、電解液は自由に流通できるようにすることが好ましい。捕集した塩素ガスは廃棄しても良いが、材料金属の溶解に使用すると効率的である。
以上コバルトの回収について説明したが、コバルト以外の金属も合わせて回収しても良く、現在最も多く使用されているリチウム二次電池で使用されているコバルト酸リチウムにも本発明方法を適用できる。次に廃電池からのコバルト酸リチウムの回収について説明する。
【0018】
リチウム二次電池等の電池では、通常アルミニウム又は鉄製のケース中に、銅箔上に正極物質として炭素をPVDF(ポリビニルジフルオライド)等のフッ素樹脂を使用して担持し、アルミニウム箔基板上にコバルト酸リチウムと炭素から成る負極物質をフッ素樹脂を使用して担持し、両電極をポリプロピレン等の樹脂を隔膜として巻き込んだ構造を有している。コバルトを高純度でしかも効率良く回収するためには、回収に先立ってケースやアルミニウム箔基板等を除去しておくことが望ましい。更に液が通りやすくなるようにある程度破砕しておくことが望ましく、電極物質のみが取り出せた場合にも更に粉砕して液との接触が効率的に生じるようにする。
【0019】
通常は廃電池を破砕した後、苛性ソーダ等の苛性アルカリで破砕した廃電池片を処理すると、ケースや負極基板としてのアルミニウム、及び炭素が溶解し、更にフッ素樹脂も部分的に溶解する。この苛性アルカリの濃度は2〜10%程度好ましくは4〜7%程度であり、2%未満であると反応が遅くなり又水量が大幅に増加してしまい、又10%を超えると反応が急速に進みすぎて大きな発熱が生じて取扱いが困難になり更に粘性が高くなってその後の操作が煩雑になる。なおこのアルカリ処理では、コバルト酸リチウム、銅箔及び鉄は溶解せずにアルカリ溶液中に展開され、又セパレーターを使用する場合はセパレーターも溶解せず、比較的大きな粒子又は塊になる。これらの未溶解分は目開き1〜5mm程度の篩で分離すれば良い。
次いで前記アルカリ溶液に展開された微粒子状のコバルト酸リチウムと炭素を集め、例えば塩酸に溶解する。塩酸濃度は特に限定されないが、溶解度や取扱いやすさの点から約15〜25%が好適である。溶解温度は室温から40℃前後とするが、発熱反応であるため、温度が上がり過ぎないように注意する必要がある。塩酸溶解によりコバルト酸リチウムは次式に従って分解し、塩素ガスを発生する。
【0020】
LiCoO2+2HCl→LiCl+CoCl2+1/2Cl2 ▲5▼
この溶解操作で炭素は溶解しないため、塩酸水溶液から炭素を主とする不溶成分を濾過等により除去する。なお通常廃電池は多量の炭素を含み、コバルト酸リチウムの溶解を円滑に行うためにも、溶解装置と濾過装置を連結し、前記塩酸水溶液を両装置間を循環させてコバルト酸リチウムを溶解させながら炭素を濾別するようにしても良い。
濾過条件は特に限定されず、通常のポリプロピレン製の濾布を用いてもNo.5程度の濾紙を使用しても良い。時間を掛ければ大気圧下の濾別も可能であるが、フィルタープレス濾過等の加圧法が望ましく、又循環しながらの濾過であれば遠心分離法も使用できる。
【0021】
この溶解の終点はpHが0.5〜2となった時点とすることが好ましい。溶解が進行するに連れてpHは徐々に上昇するが、pHが0.5〜2の範囲で溶解が比較的速く進行し、pHが2を超えると急速に溶解が進まなくなるからであり、又pHが2を超える領域は不純物である鉄等と共にコバルトが酸化コバルトとして沈殿しやすく液が不安定になりやすいからである。
このようにして調製した液を電解液として使用して電解を行う。溶存塩素が残留していてもそのままで良い。本発明で使用可能な陽極としては、塩素発生用として不溶性金属電極、例えば酸化ルテニウム及び酸化イリジウムの両者又は一方を電極物質としてチタン等の弁金属基体上に被覆した商品名DSA又はDSEが好ましいが、この他に炭素電極も使用できる。前述した通り、陽極では塩素発生を伴わない場合もあり、その場合には酸素発生用の電極として酸化イリジウムを電極物質としてチタン等の弁金属基体上に被覆した電極であっても良い。
【0022】
他方陰極は特に限定されないが、コバルト回収を容易に行える金属や金属合金であること、更に通電停止時にも不純物溶出がないこと、析出物の剥離が容易であることが望ましく、コバルトやチタンの薄板や穴開き板が好んで使用される。
このような電解材料を使用してコバルトイオンをコバルト金属として陰極表面に析出させる。
陽極反応が塩素発生反応になる場合は、電解液は、目的金属であるコバルトを十分に溶解できれば塩酸水溶液に限定されず、塩酸と硫酸の混酸でも良く、又導電性を高めるために陰極に金属として析出しないアルカリ金属塩、例えば食塩や塩化カリウムを使用し、そのpHを塩酸や硫酸で制御した電解液でも良い。
【0023】
電解温度は特に限定されず、40℃から80℃程度の通常の電解温度であれば問題なく、40℃未満の電解温度でも良いが電気抵抗が僅かに大きくなり電解電圧が高くなることがあり、80℃を超えると塩酸水溶液の場合は装置の腐食が進行することがある。電流密度も1A/dm2〜30A/dm2の通常の値で良い。
このようにして廃電池からコバルトを電解的に回収する。電解終了後の溶液は廃棄し、又は本発明の原料であるコバルト含有電解液調製用に循環使用しても良いが、リチウム等の他の有価金属を含有している場合は、引き続き電解以外の手法で回収することが望ましい。
コバルト回収後の溶液を水酸化ナトリウム等で中和すると通常pHは、8から9まで上昇し、残留コバルトが酸化コバルト(又は水酸化コバルト)として沈殿するため、これを濾別する。この酸化コバルトは再溶解して金属回収用に再使用することが好ましい。
【0024】
例えば電池廃材がコバルト酸リチウム(LiCoO2)の場合には、前述の酸化コバルト除去後の溶液中には塩化リチウムが残留している。この溶液に炭酸ナトリウムを添加すると、リチウムとナトリウムの交換反応によりリチウムが炭酸リチウムとして沈殿するので、これを濾別して回収する。リチウム回収の条件は特に限定されないが、炭酸リチウムの溶解をできるだけ小さくするために、室温で又は僅かに冷却しながら行うことが望ましい。
このように本発明方法は、廃電池からコバルトをはじめとする有価金属回収用として好ましく使用できるが、回収対象は廃電池に限定されず、製造工程の途中の電池や不良品と認定された完成電池も本発明方法による回収対象となる。
【0025】
【発明の実施の形態】
次に本発明方法の実施例に関し説明するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
【0026】
実施例1
コバルト酸リチウムを電極物質とするリチウムイオン電池の電極端材からコバルト及びリチウムを次のようにして回収した。
電極端材は、アルミニウム箔基材上に炭酸とコバルト酸リチウムの混合物をPVDF樹脂をバインダーとして被覆した負極材料であった。
この電極端材を、5%の苛性ソーダ水溶液に浸漬し、60℃で5時間保持した。これによりアルミニウム箔基材が半分程度溶解すると共に該基材から展開されて苛性ソーダ水溶液が黒色懸濁液に変化した。この懸濁液を目開き3mmのメッシュで濾過を行ったところ、未溶解アルミニウム箔とガム状になったバインダー樹脂がメッシュを通過できずメッシュから回収された。
【0027】
メッシュ通過物をポリプロピレン製の濾布で液成分を除去し、水洗浄を行った。濾液の分析を行ったところ、アルミニウムの他に僅少量のコバルトとリチウムが検出された。
次いで濾過残渣である固形物を20%塩酸水溶液に溶解した。溶解には僅かではあるが塩素発生が伴うためドラフト内で行った。pH=1程度になったときに溶解を停止し、ポリプロピレン製の濾布で濾過し、溶存塩素を含む暗赤色の溶液が得られた。濾布上の未溶解物は該未溶解物が炭素のみになるまで塩酸で抽出し、濾布上の炭素を水で洗浄し濾過乾燥を行って炭素粉末とした。
【0028】
次に前述の暗赤色の溶液を、酸化ルテニウム/酸化チタン複合物をチタンエキスパンドメッシュ上に担持した不溶性金属電極を陽極とし、チタン板を陰極とする電解槽内に電解液として充填した。陽極には底部が開いたポリプロピレン製の袋を被せて、電解液は陽極及び陰極間を流通するが、陽極で発生する塩素が陰極に接触せずに系外に取り出せるようにした。
液温を40℃とし、電解液をゆっくりと攪拌しながら電流密度が5A/dm2となるように通電したところ、陽極から塩素の発生が見られ、陰極表面には当初黒色の、次いで灰白色の物質の析出が観察された。この析出物がコバルトであることを確認した。なおコバルト析出の電流効率は2価のコバルトからの析出を仮定すると、88%であった。
【0029】
コバルト濃度が20g/リットル程度となったときに電解を停止して電解液を取り出し、攪拌しながら20%苛性ソーダをpHが9.5になるまで滴下した。その途中でコバルトが水酸化物/酸化物として沈殿し、液が無色になった。なお沈殿した水酸化物/酸化物はリチウム酸コバルト溶解の原料として再使用した。
前述の無色の液に炭酸ナトリウムを添加したところ、白色の炭酸リチウムの沈殿が生じた。この沈殿を濾過により回収した。
本実施例では、このようにして廃電池の電極材料であるコバルトをコバルト金属として、リチウムを炭酸リチウムとして、ケースや基材のアルミニウムはアルミニウム屑として回収できた。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、コバルトを電極材料として含有する電池材料からコバルトを電解的に回収する方法において、前記電極材料を溶解したコバルト含有電解液を溶存塩素の存在下、酸性で電解し、陰極表面にコバルトを析出させることを特徴とするコバルトの電解回収方法である。
この方法によると、従来のように還元され難い2価のコバルトイオンを還元する方法より簡単に溶液中のコバルトイオンを析出させることができる。又このときに3価へ酸化するために使用した塩素成分がレドックス的に作用して3価のコバルトイオンの0価のコバルト金属までのいずれかの段階の還元に寄与し、これにより必要な電力量を2価から0価の還元と実質的に等しくして、消費電力の増加が防止できる。更にこの方法はコバルトと共に他の有価金属を含有する電池材料からの金属回収に適用できる。
【0031】
このとき電解液が塩酸であり、pHが0〜3であると、より確実に溶液中のコバルトイオンをコバルト金属として陰極表面に析出させることができる。
又本発明は、コバルト酸リチウムを電極材料として含有する電池材料からの有価金属回収にも適用でき、コバルト金属回収後に電解液中に残留するリチウムイオンを炭酸ナトリウムの添加により、炭酸リチウムとして沈殿させ回収することができ、両金属を効率良く回収できる。
更に本発明は、アルミニウム基材を含むコバルト酸リチウムを電極材料として含有する電池材料からの有価金属回収にも適用でき、アルミニウムを含めた有価金属を効率良く回収できる。
Claims (2)
- コバルト酸リチウムを電極材料として含有する電池材料から有価金属を回収する方法において、前記電極材料を溶解したコバルト含有電解液を溶存塩素の存在下、酸性で電解し、陰極表面にコバルトを析出させた後、電解液を中和して残留コバルト成分を酸化コバルト又は水酸化コバルト沈殿として分離し、分離後の溶液に炭酸ナトリウムを添加してリチウムイオンを炭酸リチウムとして沈殿させ回収することを特徴とする有価金属の回収方法。
- アルミニウム基板上にコバルト酸リチウムを電極材料として含有する電池材料から有価金属を回収する方法において、前記電極材料を苛性アルカリで処理して前記アルミニウムの少なくとも一部を溶解して分離除去した後、前記電極材料を溶解したコバルト含有電解液を溶存塩素の存在下、酸性で電解し、陰極表面にコバルトを析出させた後、電解液を中和して残留コバルト成分を酸化コバルト又は水酸化コバルト沈殿として分離し、分離後の溶液に炭酸ナトリウムを添加してリチウムイオンを炭酸リチウムとして沈殿させ回収することを特徴とする有価金属の回収方法。
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