JP4963238B2 - 筆記具用キャップ - Google Patents

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本発明は、キャップ本体の内部に、気密性を向上するための内キャップを配設した筆記具用キャップに関する。
キャップ本体にクリップの取付け部を挿入し、キャップ本体の前方の頭部に配した頭冠とキャップ本体の内部に頭冠側への移動を抑止して配した吊り駒とにより、頭冠又は吊り駒のどちらか一方から延びた軸部を、前記クリップの取付部に設けた取付孔に挿通して、軸部を吊り駒又は頭冠に止着し、クリップの取付部と吊り駒との間にコイルスプリングを配した構造の筆記具用キャップは知られている。前記コイルスプリングは、軸筒の側面で被挟持物をしっかりと挟持するために、クリップの先端部を軸筒の側面に押圧させるもので、いわゆるクリップのばね性をもたすためのものである。また、こうした筆記具用キャップにおいて、キャップ本体の内部に気密性を向上するための内キャップを配設した構造のものも知られており、例えば実開昭62−75982号公報によりそうした構造が開示されている。
一方、キャップ内部に内キャップを配設した筆記具用キャップにおいて、内キャップや該内キャップに嵌合する筆記具本体の先端部分の寸法公差等の関係から、あるいは筆記具本体の先端部分のキャップへの嵌合が螺子嵌合による場合は螺子嵌合の度合により、内キャップと筆記具本体の先端部分がしっかりと衝接しないために、内キャップ内の気密が確保できないことがある。また、特にキャップが万年筆用のキャップの場合には、内キャップに万年筆の首部筒を嵌合すると、内キャップ内部の空気が圧縮されて圧力が高くなり、筆記時に首部筒を内キャップより離脱すると内キャップ内部の空気が急激に減圧され、首部筒内のインキを外部に引き出すためにペン先よりインキが飛び出してキャップ内を汚染するという問題等が生じることがある。こうした問題を解決するために、内キャップの先端部と筆記具本体の先端部がしっかりと衝接するように、または、過剰に内キャップ内部の圧力が高くならないように、内キャップをコイルスプリング等の弾性部材を介してキャップの開口部側へ付勢した構造のものが知られており、例えば特開平11−321181号公報にそうした技術が開示されている。
実開昭62−75982号公報 特開平11−321181号公報
前者の、クリップの取付け部をキャップ本体に挿入し、クリップとしてのばね性を得るためにクリップの取付部にコイルスプリングを配した構造の筆記具用キャップや、後者の、内キャップをコイルスプリング等の弾性部材を介してキャップの開口部側へ付勢した構造の筆記具用キャップについて、各々の構造については多数提案されているが、前者の構造の筆記具用キャップにおいて、さらに内キャップをコイルスプリング等の弾性部材を介してキャップの開口部側へ付勢した構造の筆記具用キャップは提案されていない。また、現実問題として、そうしたものは構造が複雑となり組立性が悪くなるという問題がある。
本発明は、キャップ本体の頭部に配した頭冠とキャップ本体の内部に頭冠側への移動を抑止して配した吊り駒とにより、クリップを、キャップ本体に挿入したクリップの取付部に設けた取付孔に頭冠又は吊り駒のどちらか一方から延びた軸部を挿通して、軸部を吊り駒又は頭冠に止着し、クリップの取付部と吊り駒との間にコイルスプリングを配してキャップ本体に取付けた構造の筆記具用キャップにおいて、構造が複雑にならずにかつ組立性が悪くならないように、キャップ本体内に内キャップを摺動可能に装着した筆記具用キャップを提案するものである。
本発明は、キャップ本体の前方の頭部に配した頭冠とキャップ本体の内部に頭冠側への移動を抑止して配した吊り駒とにより、クリップを、キャップ本体に挿入したクリップの取付部に設けた取付孔に頭冠又は吊り駒のどちらか一方に形成した軸部を挿通して吊り駒又は頭冠に止着することで挟持し、クリップの取付部と吊り駒との間にコイルスプリングを配してなる筆記具用キャップであって、吊り駒に、開口した空間部を有する収容部を形成するとともに、収容部の内壁面に、係止溝又は内方に突出した係止突起からなる第1の係止部と、内方に突出した突状の、開口部側の側面を開口部に向かうにしたがって漸次内径が大径となる傾斜面とし、反対側の側面を軸心方向に対して起立した起立面とした第2の係止部を設け、小径な頭端部を有した有底状の内キャップを、頭端部の外周面に、吊り駒の第1の係止部に係止可能な係止突起又は係止溝からなる第1の被係止部と、吊り駒の第2の係止部を乗り越えて係止可能な突状の、前方側の側面を前方に向かうにしたがって漸次外径が小径となる傾斜面とし、反対側の側面を軸心方向に対して起立した起立面とした第2の被係止部を形成し、内キャップの頭端部に形成した第1の被係止部を吊り駒の第1の係止部に係止するとともに第2の被係止部を吊り駒の第2の係止部より頭冠側に位置させて、頭端部を吊り駒の収容部に遊嵌し、吊り駒と内キャップとの間に弾性部材を配設して、内キャップをキャップ本体に対して摺動可能にかつキャップ本体の開口端部側に付勢して配したことを特徴とする、筆記具用キャップである。
本発明において、吊り駒と内キャップとの間に介在する弾性部材とは、軸心方向に圧縮されて弾発性を有するものであれば良く、例えばオーリングやコイルスプリング等が挙げられる。
本発明は前述したような構造なので、コイルスプリングを配設してキャップ本体に装着したクリップのばね性をだす構造の筆記具用キャップにおいて、筆記具本体をキャップに嵌合した際に、内キャップがキャップ本体の頭部側へ摺動可能なので、弾性部材が押圧され、その反発力で内キャップを筆記具本体の先端部分に衝接させるので、内キャップ内の気密が確実に保たれるし、弾性体の弾発力を適宜に設定することで内キャップ内の過剰な加圧を抑制する事ができる。
また、吊り駒に設けた第1の係止部と内キャップに設けた第1の被係止部との係止により、吊り駒と内キャップは連動して回転可能となるので、頭冠と吊り駒を止着する際に、内キャップに治具等を装着して吊り駒を回転させることもできるし、逆に治具を回転することなく保持すれば、吊り駒も回転することが無く、安定した位置で治具に保持でき、吊り駒の頭冠に対する位置だしも容易にできる。組立の際に、吊り駒と内キャップとの間に弾性部材を配した状態にセットしておき、内キャップを治具等で保持し、内キャップに治具に対して連動して回転可能な手段あるいは治具に対して回転不能な手段を講じることで、頭冠を固定して内キャップを回転することで、あるいは内キャップを固定して頭冠を回転することで頭冠と吊り駒を簡単に止着できるという利点がある。
また、吊り駒に設けた第2の係止部と内キャップに設けた第2の被係止部の形状が前記のような形状なので、吊り駒に内キャップを取付ける際は、第2の係止部の傾斜面と第2の被係止部の傾斜面が互いに滑りあって、内キャップの頭端部を吊り駒の収容部内に押圧して挿入しやすくなり、キャップに嵌合した筆記具本体を引き抜く等して外すときは、第2の係止部の起立面と第2の被係止部の起立面が衝接するので、容易に内キャップが吊り駒から外れることがない。組立性が良く、かつ一旦組立ててしまうと容易に組立が外れないという利点がある。
本発明におけるキャップ本体は、合成樹脂で形成された1つの部材で構成されたものでも良いし、金属や木材等で形成した外筒の内面に合成樹脂で形成した内筒を配して構成されたものでも良い。
本実施例を図面を用いて説明するが、本実施例の筆記具用キャップ1は、キャップ本体2が合成樹脂製の内筒2aの外側に金属製の外筒2bを配した万年筆用のキャップであるが、これに限定されるものではない。図1は、本実施例の万年筆用のキャップの縦断面図である。図2は、吊り駒の拡大断面図である。図3は、吊り駒の拡大側面図である。図4は、内キャップの拡大断面図である。図5は、図4におけるA−A線部分の横断面図である。図6は、図4におけるB−B線部分の横断面図である。図7は、本実施例の万年筆用のキャップに万年筆本体を嵌合した状態を示す、要部を断面とした図である。図8は、弾性部材の他の実施例を示す万年筆用のキャップの縦断面図である。
本実施例の万年筆用のキャップ1は、キャップ本体2が合成樹脂製の内筒2aの外側に金属製の外筒2bを配した構造のもので、両端は開口しており、頭端部3側の側面にはクリップ4の取付部5を挿入してある。該取付部5には、貫通した取付孔6を形成してある。内筒2aの頭端部2aaには内方へ突出した段部7を設けてある。
キャップ本体2の頭端部3には頭冠8を配してあり、キャップ本体2の内筒2aの内部には、軸部9をクリップ4の取付孔6に挿入した吊り駒としての吊りビス10が挿入してあり、前記軸部9に形成したねじ11により吊りビス10と頭冠8を螺着してある。吊りビス10は、軸部9の後方に該軸部9より大径な中径部12aと該中径部12aより大径な大径部12bとで構成された収容部12を設けてあり(図2を参照)、収容部12の大径部12bが内筒2aの段部7に衝接することで頭冠8側への移動を抑止されている。収容部12の大径部12bとクリップの取付部5の間にはコイルスプリング13を設けてあり、クリップ4を頭冠8側に弾発してクリップ4の取付部5の前端面を頭冠8に衝接し、クリップの先端部14が持ち上がる際のクリップ4のばね性を前記コイルスプリング13により得ている。
図2及び図3に示すように、吊りビス10の収容部12の中径部12aと大径部12bとには、連通した空間部15がキャップ本体2の開口端部16側を開口して設けてある。また、大径部12bの外周面には内外を貫通し軸心方向に延びた第1の係止部となる係止溝17が対向する2箇所に形成してある。収容部12の開口端部の内壁面には、円周状に内方に突出し、開口部18側の側面を開口部18に向かうにしたがって漸次内径が大径となる傾斜面19とし、反対側の側面を軸心方向に対して起立した起立面20とした、第2の係止部となる係止突部21を形成してある。
内キャップ22は、図4〜図6に示すように、小径な頭端部23を有した有底状であり、頭端部23の前方に小径な突出部24を設けた形状としてあり、頭端部23の外周面には、前記吊りビス10に形成した係止溝18に係止する第1の被係止部である係止突起25(図5を参照)と、前記吊りビス10に形成した係止突部21を乗り越えて係止可能な、前方側の側面を前方に向かうにしたがって漸次外径が小径となる傾斜面26とし、反対側の側面を軸心方向に対して起立した起立面27とした第2の被係止部である係止突起28を形成してある。
内キャップ22は、内筒2a内に収容して、前記係止突起25を吊りビス10の係止溝17に係止して前進させ、前記係止突起28を吊りビス10の係止突部21を乗り越えて係止突起28を係止突部21より頭冠8側に位置させ、突出部24を吊りビス10の中径部12aの空間部15に位置し、頭端部23を吊りビス10の収容部12の空間部15に遊嵌して、内キャップ22を内筒2a内に挿着してある。
吊りビス10と内キャップ22との間には、一方を吊りビス10の中径部12aにおける空間部15の底部15a(図2を参照)に当接し、他方を内キャップ22の頭端部23の前方端面23a(図4を参照)に当接し、内キャップ22の突出部24を内在させてコイルスプリング29を配設してある。内キャップ22は、キャップ本体2の開口端部16側に付勢されるが、係止突起28が吊りビス10の係止突部21に係止するので、キャップ本体2から抜け落ちることはない。
本実施例の万年筆用のキャップ1の組立について簡単に説明すると、先ず、内キャップ22と吊りビス10の間にコイルスプリング29を突出部24を内在(コイルスプリング29の位置を安定して配することができる。)するように配して、吊りビス10の収納部12の空間部15に内キャップ22の頭端部23を挿入して押圧する。内キャップ22の係止突起28は吊りビス10の係止突部21を乗り越えて前進し、係止突起28を係止突部21より前方に位置させて、吊りビス10と内キャップ22を1つのセットものとして組立てる。
次に、キャップ本体2にクリップの取付部5を挿入し、キャップ本体2の頭端部3に頭冠8を配し、前記セットものに吊りビス10の軸部9および収容部の中径部12aを内在(コイルスプリング13の位置を安定して配することができる。)するようにコイルスプリング13を配して、内キャップ22に治具(図示せず)を装着した状態でキャップ本体2内に挿入し、吊りビス10の軸部9をクリップ4の取付孔6に挿入して、前記軸部9に形成したねじ11により吊りビス10と頭冠8を螺着する。その際、図4および図6に示すように、内キャップ22には内方に突出した回転用突起30を対向する2カ所に設けてあるので、治具を回転することにより内キャップ22も回転し、内キャップ22の係止突起25の吊りビス10の係止溝17との係止により内キャップ22に連動して吊りビス10も回転し、吊りビス10と頭冠8を容易に螺着できる。
キャップ2の本体の開口端部16には、ねじ部を有した内リング31を装着してあり(図1を参照)、図7に示すように、万年筆本体50にねじ嵌合により取付ける。ねじ嵌合なので、ねじ嵌合の閉める度合により、キャップ本体2内に収容される内キャップ22の端面と衝接する万年筆本体50の首筒51の先端部のキャップ本体2の開口部からの長さは、微妙に相違するが、内キャップ22は前方に摺動可能なので、万年筆本体50を嵌合する前の内キャップの位置をキャップ本体2の開口部からの長さを短めにしてやれば、万年筆本体50を嵌合した際には確実に内キャップが首筒51の先端部に衝接するので、確実に内キャップ内の気密を確保でき、かつ内キャップは前方に摺動可能なので内キャップ内が過剰に加圧されることがない。
図8に示す筆記具用キャップ1は、前記実施例における内キャップ22と吊り駒10の間に設けたコイルスプリング29に換えて、オーリング31を用いたものである。作用・硬化、組立方法は、前記実施例と同様である。
本発明は、クリップの取付部をキャップ本体に挿入し、クリップのばね性を出すためにクリップの取付部にスプリングを配し、気密性を向上するための内キャップを配した構造の筆記具用キャップに採用すものであるが、クリップの取付部にスプリングを配さないものにも利用できる。キャップ本体が、合成樹脂で形成された1つの部材で構成されたものでも、金属や木材等で形成した外筒と合成樹脂で形成した内筒とで構成されたもののどちらにも利用できる。
本実施例の万年筆用のキャップの縦断面図である。 吊り駒の拡大断面図である。 吊り駒の拡大側面図である。 内キャップの拡大断面図である。 図4におけるA−A線部分の横断面図である。 図4におけるB−B線部分の横断面図である。 本実施例の万年筆用のキャップに万年筆本体を嵌合した状態を示す、要部を断面とした図である。 弾性部材の他の実施例を示す万年筆用のキャップの縦断面図である。
符号の説明
1 万年筆用のキャップ
2 キャップ本体
4 クリップ
5 取付部
8 頭冠
10 吊りビス
12 収容部
13 コイルスプリング
15 空間部
17 係止溝
21 係止突部
22 内キャップ
25 係止突起
28 係止突起
29 コイルスプリング
32 オーリング

Claims (1)

  1. キャップ本体の前方の頭部に配した頭冠とキャップ本体の内部に頭冠側への移動を抑止して配した吊り駒とにより、クリップを、キャップ本体に挿入したクリップの取付部に設けた取付孔に頭冠又は吊り駒のどちらか一方に形成した軸部を挿通して吊り駒又は頭冠に止着することで挟持し、クリップの取付部と吊り駒との間にコイルスプリングを配してなる筆記具用キャップであって、
    吊り駒に、開口した空間部を有する収容部を形成するとともに、収容部の内壁面に、係止溝又は内方に突出した係止突起からなる第1の係止部と、内方に突出した突状の、開口部側の側面を開口部に向かうにしたがって漸次内径が大径となる傾斜面とし、反対側の側面を軸心方向に対して起立した起立面とした第2の係止部を設け、
    小径な頭端部を有した有底状の内キャップを、頭端部の外周面に、吊り駒の第1の係止部に係止可能な係止突起又は係止溝からなる第1の被係止部と、吊り駒の第2の係止部を乗り越えて係止可能な突状の、前方側の側面を前方に向かうにしたがって漸次外径が小径となる傾斜面とし、反対側の側面を軸心方向に対して起立した起立面とした第2の被係止部を形成し、
    内キャップの頭端部に形成した第1の被係止部を吊り駒の第1の係止部に係止するとともに第2の被係止部を吊り駒の第2の係止部より頭冠側に位置させて、頭端部を吊り駒の収容部に遊嵌し、
    吊り駒と内キャップとの間に弾性部材を配設して、
    内キャップをキャップ本体に対して摺動可能にかつキャップ本体の開口端部側に付勢して配したことを特徴とする、筆記具用キャップ。
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