JP4962029B2 - 中空糸膜の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)外周面上に多数のロッドを備えた少なくとも一対のロールからなるクリンプ付与装置に中空糸膜を通過させることによりクリンプを付与する中空糸膜の製造方法であって、中空糸膜がロール外周面上のロッドに沿って走行しながら進行方向を変えつつ、ロール間の噛み合わせ部に中空糸膜が挟み込まれ、蛇行し、クリンプが付与されることを特徴とする中空糸膜の製造方法。
(2)該ロールの噛み合わせ部が互いに接触しないことを特徴とする(1)に記載の中空糸膜の製造方法。
(3)該ロッド間のピッチが15mm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の中空糸膜の製造方法。
(4)該ロッドの外径が1〜5mmφであることを特徴とする(1)〜(3)いずれか記載の中空糸膜の製造方法。
(5)該ロッドが自由に回転することを特徴とする(1)〜(4)いずれか記載の中空糸膜の製造方法。
(6)該ロッドの表面が鏡面加工されていることを特徴とする(1)〜(5)いずれか記載の中空糸膜の製造方法。
(7)該ロール間の噛み合わせ部に中空糸膜が挟み込まれる噛み込み深さが0.3〜5.0mmであることを特徴とする(1)〜(6)いずれか記載の中空糸膜の製造方法。
また、別の理由として、中空糸膜がクリンプ付与装置のギヤやロールの噛み込み部に挟み込まれる際にも、中空糸膜の滑りを避けることができない。特に、前工程より中空糸膜がフリーに走行してきた場合、噛み込み部での滑りはより大きくなり、応力が1点に集中せず、中空糸膜にクリンプが固定されない原因となっていると考えられた。
そこで、本発明者らはクリンプ付与装置での中空糸膜の滑り防止について鋭意検討の結果、クリンプ付与装置において、少なくとも一対のロール間に中空糸膜が挟み込まれる前後でロール外周面に中空糸膜を一定距離以上沿わせるように走行させることで、ロッドと中空糸膜との滑りを抑制し、ロッドの圧力を中空糸膜の一点に集中させることにより、熱などのエネルギーを加えなくとも非常に良好なクリンプを中空糸膜に固定できることを発見し、ついに本発明を完成した。
本発明においては、クリンプ付与装置の噛み合わせ部に中空糸膜が進入する際のスリップを防止する配慮を施したことにより、熱固定せずとも強固で長時間のクリンプ保持性の良好なクリンプ付与ができたものと推測している。
また、モジュール作製後のクリンプ数がクリンプ付与装置通過直後のクリンプ数の80%以上を保持することが好ましい。前記範囲を保持しているということはすなわち、クリンプ付与設備通過後のさまざまな工程を経てもクリンプの消失度合いが小さいということであり、中空糸膜にクリンプが強固に固定されているということである。よって、実使用時の偏流発生の可能性を低く抑えることができるため好ましい。クリンプ保持率は85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
中空糸膜断面のサンプルは以下のようにして得ることができる。測定には芯液を洗浄、除去した後、中空糸膜を乾燥させた形態で観察することが好ましい。乾燥方法は問わないが、乾燥により著しく形態が変化する場合には中空形成材を洗浄、除去したのち、純水で完全に置換した後、湿潤状態で形態を観察することが好ましい。中空糸膜の内径、外径および膜厚は、中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられた3mmφの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面でカミソリによりカットし、中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機Nikon-12Aを用いて中空糸膜断面の短径、長径を測定することにより得られる。中空糸膜断面1個につき2方向の短径、長径を測定し、それぞれの算術平均値を中空糸膜断面1個の内径および外径とし、膜厚は(外径−内径)/2で算出した。5断面について同様に測定を行い、平均値を内径、膜厚とした。
中空糸膜に付与したクリンプ数は次のようにして測定する。中空糸膜を20cm程度切り取り、中空糸膜の長さ方向が向かって垂直となるように置いたとき、波状となっている部分の山の頂上の個数をカウントし(谷の個数はカウントしない)、切り取った中空糸膜の長さから単位長さあたりの個数を算出する。中空糸膜5本について同様に測定し、平均値とする。この際、中空糸膜の長さは、自然な状態で鉛直下方に垂らしたときの見かけの長さを用いる。
中空糸膜に付与した振幅は次のようにして測定する。中空糸膜を10〜30cm切り取り、波状となっている部分の、1つの山とその次の谷の長さ方向に対する振れ幅を測定し、その1/2の値を算出する。中空糸膜5本について同様に測定し、平均値とする。
中空糸膜の偏平度合いを評価するために、中空糸膜の真円度を測定した。真円度とは中空糸膜断面における中空糸膜内径の短軸/長軸比のことであり、例えば真円であれば真円度は1である。画像解析ソフト「Image-Pro Plus」(Media Cybernetics社)によって、モジュール端面中任意の100個の中空糸膜断面に関して画像解析による測定を実施し、その平均値を求めた。
中空糸膜の閉塞を評価するために、中空糸膜の潰れを測定した。中空糸膜の潰れとは、中空糸膜断面における中空糸内径の短軸/長軸比が1/3未満の偏平の極端なものや実質的に中空部が潰れているものと定義し、モジュール端面中に存在する個数をカウントし、端面に含まれる中空糸膜の総本数からその存在割合を求めた。
中空糸膜モジュールの尿素クリアランスは、日本透析医学会発行のダイアライザー性能評価基準に従って測定し、膜面積1.0m2あたりの値に換算した。
透析液(キンダリー希釈液)に尿素1.0g/Lの濃度で溶解させ測定液とした。モジュールの血液側入口より200ml/minの速度で37℃の測定液(以下B液とする)を導入し、透析液側入口より37℃に保った透析液(以下D液とする)を500ml/minにてB液に対し向流で導入した。B液入口、出口圧(それぞれPBi、PBoとする)およびD液入口、出口圧(それぞれPDi、PDoとする)を計測し、式1で示される膜間圧力差(TMP)100mmHgにて測定を行った。
TMP=(PBi+PBo)/2−(PDi+PDo)/2 (式1)
測定中に流量変化がないことを確認しながら、B液の入口と出口の液とD液の出口の液をサンプリングした。和光純薬製尿素窒素テストワコーBを用いてサンプリング液の濃度を求め、これらの値から式2、3にてクリアランス(CL)を算出した。
CL=(CBi×QBi−CBo×QBo)/CBi (式2)
ここで、CBiはB液入口溶質濃度(g/ml)、QBiはB液入口流量(ml/min)、CBoはB液出口溶質濃度(g/ml)、QBoはB液出口流量(ml/min)である。なお、これらの値にはマスバランスエラー(MBE)が5%以下であるものを採用した。MBEは以下の式2から算出した。
MBE=(QBi×CBi−QBo×CBo−QDo×CDo)/(QBi×CBi−QBo×CBo) (式3)
ここで、QDoはD液出口流量、CDoはD液出口濃度である。
本発明の中空糸膜の製造方法を採用することにより、5本のモジュールを用いて測定した尿素クリアランスのバラツキ(σ)が15以下という高品質の中空糸膜を精度良く得ることができる。より好ましくはバラツキが10以下、さらに好ましくは7以下である。
ポリエーテルスルホン(住友ケムテック社製スミカエクセル(登録商標)4800P)17.5質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドン(登録商標)K-90)3.0質量%、非溶媒として水5.5質量%、溶媒にジメチルアセトアミド74.0質量%を均一に溶解したものを紡糸原液とし、44.5質量%ジメチルアセトアミド水溶液を芯液とした。2重管構造の紡糸用口金を用い、外側から紡糸原液を、内側から芯液を、垂直下方に向け吐出し、中空糸膜を形成した。長さ620mmの蒸気雰囲気中を通過させた後、凝固浴に浸漬させ、水洗浴、熱水浴を経た後、クリンプ付与装置を単糸で通過させ、カセによって巻取り速度40m/minで巻き取った。その際、クリンプ付与装置を通過する糸道は図3に示すようにS字状(中空糸膜がクリンプ付与装置のロール噛み込み部の前後でロールに沿って走行する角度:噛み込み前180°、噛み込み後180°)とし、その中間部分でクリンプ付与装置にそれぞれピッチ7.9mmで配されたφ2.0mmのロッド間に噛み込み深さ2.5mmで挟み込ませた。なお、クリンプ付与設備における張力は、中空糸膜1本あたり1.0gfであった。
巻き取られた中空糸膜10100本の束をポリエチレン製パイプに挿入し、長さ方向と垂直に切断してバンドルとし、乾燥処理した。乾燥後のバンドルから中空糸膜を取り出し、クリンプの測定を行った。また、乾燥後のバンドルをモジュールに組立て、潰れ評価と尿素クリアランス測定を行った。
結果を表1に示す。ただし、モジュールは5本作製し、尿素クリアランスは接着不良モジュールを除いて測定した平均値を示す。また、モジュール径に対する中空糸膜の充填率は、55〜65%の範囲内であった。
実施例1と同様に中空糸膜を形成し、カセによって巻取り速度75m/minで巻き取った。クリンプ付与装置を通過する糸道は図4に示すように鉤型状(中空糸膜がクリンプ付与装置のロール噛み込み部の前後でロールに沿って走行する角度:噛み込み前90°、噛み込み後90°)とし、その中間部分でクリンプ付与装置にそれぞれピッチ4.8mmで配されたφ2.0mmのロッド間に噛み込み深さ1.0mmで挟み込ませた。なお、クリンプ付与設備における張力は、中空糸膜1本あたり1.6gfであった。
巻き取られた中空糸膜10100本の束をポリエチレン製パイプに挿入し、長さ方向と垂直に切断してバンドルとし、乾燥処理した。乾燥後のバンドルから中空糸膜を取り出し、クリンプの測定を行った。また、乾燥後のバンドルをモジュールに組立て、潰れ評価と尿素クリアランス測定を行った。
結果を表1に示す。ただし、モジュールは5本作製し、尿素クリアランスは接着不良モジュールを除いて測定した平均値を示す。また、モジュール径に対する中空糸膜の充填率は、55〜65%の範囲内であった。
紡糸原液として、ダイセル化学工業製セルローストリアセテート19.0質量%、Nメチル2ピロリドン68.9質量%、トリエチレングリコール12.1質量%を180℃にて混合溶解したものを用いた。これを2重管構造の紡糸用口金の外側環状部から垂直下方に向け吐出した。同時に内側の管には芯液として水を供給し、中空糸膜を形成した。この中空糸膜は、30mmの蒸気雰囲気中を通過後、凝固浴、水洗浴を経た後、クリンプ付与装置を単糸で通過させ、カセにて巻取り速度60m/minで巻き取った。その際、クリンプ付与装置を通過する糸道は図5のようにS字状(中空糸膜がクリンプ付与装置のロール噛み込み部の前後でロールに沿って走行する角度:噛み込み前210°、噛み込み後210°)とし、その中間部分でクリンプ付与装置にそれぞれピッチ7.9mmで配されたφ2.0mmのロッド間に噛み込み深さ3.5mmで挟み込ませた。なお、クリンプ付与設備における張力は、中空糸膜1本あたり1.3gfであった。
巻き取られた中空糸膜10800本の束をポリエチレン製パイプに挿入し、長さ方向と垂直に切断してバンドルとし、乾燥処理した。乾燥後のバンドルから中空糸膜を取り出し、クリンプの測定を行った。また、乾燥後のバンドルをモジュールに組立て、潰れ評価と尿素クリアランス測定を行った。
結果を表1に示す。ただし、モジュールは5本作製し、尿素クリアランスは接着不良モジュールを除いて測定した平均値を示す。また、モジュール径に対する中空糸膜の充填率は、55〜65%の範囲内であった。
実施例1と同様に中空糸膜を形成し、カセによって巻取り速度40m/minで巻き取った。クリンプ付与装置を通過する糸道は図3に示すようにS字状とし、中空糸膜をφ3.5mmのロッド間に噛み込み深さ3.0mmで挟み込ませた。該ロッド間のピッチは7.9mmであった。なお、クリンプ付与設備における張力は、中空糸膜1本あたり0.9gfであった。
巻き取られた中空糸膜10100本の束をポリエチレン製パイプに挿入し、長さ方向と垂直に切断してバンドルとし、乾燥処理した。乾燥後のバンドルから中空糸膜を取り出し、クリンプの測定を行った。また、乾燥後のバンドルをモジュールに組立て、潰れ評価と尿素クリアランス測定を行った。
結果を表1に示す。ただし、モジュールは5本作製し、尿素クリアランスは接着不良モジュールを除いて測定した平均値を示す。また、モジュール径に対する中空糸膜の充填率は、55〜65%の範囲内であった。
実施例1と同様に中空糸膜を形成し、カセによって巻取り速度40m/minで巻き取った。クリンプ付与装置として、図6に示すような、上下に多数のロッドを備えたベルト状の設備を用い、中空糸膜をφ4.5mmのロッド間に噛み込み深さ4.5mmで挟み込ませた。該ロッド間のピッチは20.0mmであった。なお、クリンプ付与設備における張力は、中空糸膜1本あたり2.6gfであった。
巻き取られた中空糸膜10100本の束をポリエチレン製パイプに挿入し、長さ方向と垂直に切断してバンドルとし、乾燥処理した。乾燥後のバンドルから中空糸膜を取り出し、クリンプの測定を行った。また、乾燥後のバンドルをモジュールに組立て、潰れ評価と尿素クリアランス測定を行った。
結果を表1に示す。ただし、モジュールは5本作製し、尿素クリアランスは接着不良モジュールを除いて測定した平均値を示す。また、モジュール径に対する中空糸膜の充填率は、55〜65%の範囲内であった。
実施例3と同様に中空糸膜を形成し、カセによって巻取り速度60m/minで巻き取った。クリンプ付与装置を通過する糸道は図7のようにストレートとし、クリンプ付与装置にそれぞれピッチ7.9mmで配されたφ2.0mmのロッド間に噛み込み深さ4.0mmで挟み込ませた。なお、クリンプ付与設備における張力は、中空糸膜1本あたり1.3gfであった。
巻き取られた中空糸膜10800本の束をポリエチレン製パイプに挿入し、長さ方向と垂直に切断してバンドルとし、乾燥処理した。乾燥後のバンドルから中空糸膜を取り出し、クリンプの測定を行った。また、乾燥後のバンドルをモジュールに組立て、潰れ評価と尿素クリアランス測定を行った。
結果を表1に示す。ただし、モジュールは5本作製し、尿素クリアランスは接着不良モジュールを除いて測定した平均値を示す。また、モジュール径に対する中空糸膜の充填率は、55〜65%の範囲内であった。
実施例3と同様に中空糸膜を形成し、カセによって巻取り速度60m/minで巻き取った。その際、クリンプ付与装置を通過する糸道は図8に示すようにクリンプ付与部分でカーブさせ(中空糸膜がクリンプ付与装置のロール噛み込み部の前後でロールに沿って走行する角度:噛み込み前30°、噛み込み後30°)、その中間部分でクリンプ付与装置にそれぞれピッチ7.9mmで配されたφ2.0mmのロッド間に噛み込み深さ3.5mmで挟み込ませた。なお、クリンプ付与設備における張力は、中空糸膜1本あたり1.2gfであった。
巻き取られた中空糸膜10800本の束をポリエチレン製パイプに挿入し、長さ方向と垂直に切断してバンドルとし、乾燥処理した。乾燥後のバンドルから中空糸膜を取り出し、クリンプの測定を行った。また、乾燥後のバンドルをモジュールに組立て、潰れ評価と尿素クリアランス測定を行った。
結果を表1に示す。ただし、モジュールは5本作製し、尿素クリアランスは接着不良モジュールを除いて測定した平均値を示す。また、モジュール径に対する中空糸膜の充填率は、55〜65%の範囲内であった。
2:噛み込み深さ
3:ロッド間ピッチ
Claims (7)
- 外周面上に多数のロッドを備えた少なくとも一対のロールからなるクリンプ付与装置に中空糸膜を通過させることによりクリンプを付与する中空糸膜の製造方法であって、中空糸膜がロール外周面上のロッドに沿って走行しながら進行方向を変えつつ、ロール間の噛み合わせ部に中空糸膜が挟み込まれ、蛇行し、クリンプが付与されることを特徴とする中空糸膜の製造方法。
- 該ロール間の噛み合わせ部が互いに接触しないことを特徴とする請求項1に記載の中空糸膜の製造方法。
- 該ロッド間のピッチが15mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の中空糸膜の製造方法。
- 該ロッドの外径が1〜5mmφであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の中空糸膜の製造方法。
- 該ロッドが自由に回転することを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の中空糸膜の製造方法。
- 該ロッドの表面が鏡面加工されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の中空糸膜の製造方法。
- 該ロール間の噛み合わせ部に中空糸膜が挟み込まれる噛み込み深さが0.3〜5.0mmであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の中空糸膜の製造方法。
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