JP2008207153A - 中空糸膜および中空糸膜モジュール - Google Patents

中空糸膜および中空糸膜モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】乾燥状態であってもケースへの挿入が容易な中空糸膜を提供することにある。
【解決手段】中空糸外表面の構造を中心線粗さが15nm以上、開孔率が6%以上20%以下に制御することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、高充填率の中空糸膜モジュールが要求される用途において好適に使用される中空糸膜に関する。
中空糸膜モジュールは、モジュール内の中空糸膜充填率を高くすることで透過性能が向上するということが報告されている。たとえば、医療分野では、人工腎臓モジュール内の中空糸膜充填率を高くすると、内部濾過量が増大し、尿毒素の除去性能がよくなることがわかっている。(特許文献1、2、非特許文献1、)
また、近年、軽量化によるハンドリング性向上や、寒冷地での凍結防止などを目的として、充填液の無いドライタイプのダイアライザーが販売されている。
しかしながら、乾燥した中空糸膜をケースに挿入して中空糸膜モジュールを製造する場合、乾燥糸束は糸束径が大きくなるのでケースへ挿入しにくくなり、上記のような高充填率の製品の製造が難しくなることがあった。湿潤した中空糸膜をケースに装填した後に乾燥処理する方法もあるが、モジュールでの乾燥は時間がかかり、技術的にも難しくコストがかかる。したがって、工程簡略化や、湿潤化、再乾燥にかかるコストを考えると、乾燥状態で糸束をケースに挿入することが望ましい。また、同じ糸束径でもケースへ挿入しやすいものとしにくいものがあった。
特開昭58−169510号公報 特開昭53−35683号公報 臨床透析2002 vol.18 No.4(日本メディカルセンター) p.7〜11
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を改良し、乾燥状態であってもケースへの挿入が容易で、モジュール内における充填率を高めることが可能な中空糸膜を提供することにある。
本発明者らは上記課題を達成するため鋭意検討を進めた結果、ケースへの挿入が容易な中空糸膜は、下記の(1)〜(10)の構成によって達成される。
(1)分子間力顕微鏡で測定した外表面の中心線平均粗さ(Ra)が15nm以上であり、かつ外表面の開孔率が6%以上、20%以下であることを特徴とする中空糸膜。
(2)外表面の平均孔径が0.7μm未満である、前記(1)に記載の中空糸膜。
(3)前記(1)または(2)に記載の中空糸膜がケースに装填されてなる中空糸膜モジュール。
(4)中空糸膜充填率が58%以上、65%以下である、前記(3)に記載の中空糸膜モジュール。
(5)血液浄化のために用いられるものである、前記(3)または(4)に記載の中空糸膜モジュール。
(6)人工腎臓として用いられるものである、前記(5)に記載の中空糸膜モジュール。
本発明は、中空糸膜外表面に上記特定の形状を与えることにより、モジュールへの高い中空糸充填率が要求される用途に幅広く用いることができる。すなわち、中空糸膜に、分子間力顕微鏡で測定した外表面の中心線平均粗さ(Ra)が15nm以上であり、かつ外表面の開孔率が6%以上、20%以下となるような形状を付与することにより、乾燥状態であっても該中空糸膜をケースへ容易に挿入することができ、その結果、モジュール内における中空糸膜充填率を高めることが可能となる。
本発明者らは前記目的を達成するため鋭意検討した結果、中空糸膜外表面の形状を次のように制御したとき、乾燥状態の中空糸膜を用いる場合であっても高充填率の中空糸膜モジュールを安定して製造できることを見出した。すなわち、乾燥した中空糸膜が集積された糸束をモジュールケースに挿入する工程において、該中空糸膜外表面の、分子間力顕微鏡で測定した中心線平均粗さ(Ra)が15nm以上であり、かつ中空糸外表面の開孔率が6%以上、20%以下である場合に、高充填率の中空糸膜モジュールを安定して製造できることを見出した。
本発明者らは、同じ糸束径でもケースへ挿入しやすいものとしにくいものとの違いについて、その原因が中空糸外表面の形状にあるのではないかと考え、中空糸膜外表面の特性がケースへの挿入性に及ぼす影響について調べた。その結果、外表面の摩擦係数が大きい中空糸膜は、中空糸を集積したときの糸束において中空糸膜同士の反発が大きくなり、糸束が嵩高くなることによってケースへ挿入しにくくなるのではないかとの考えに至った。
そこで、摩擦係数の差を評価する方法として、下記の「抜け落ち荷重の測定」を行った。詳細は実施例で述べるが、ステンレス製梨地丸棒に乾燥中空糸を1本掛け、その一方の端に重りを下げていったとき、糸が滑り落ちる重さを抜け落ち荷重とした。抜け落ち荷重が小さいほど糸が滑りやすいので、摩擦係数は小さいと考えられる。
様々な条件で紡糸した中空糸膜の抜け落ち荷重を測定すると、抜け落ち荷重が小さい、すなわち摩擦係数が小さいものほど、糸束のケース挿入が容易であることがわかった。抜け落ち荷重は、0.034N以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.031以下である。
また、抜け落ち荷重の小さい中空糸は、中心線平均粗さ(Ra)が大きいことを見出した。つまり、Raが大きいとは、外表面の形状が平滑ではなく、凹凸が多いということであるが、中空糸外表面に凹凸が多いほど、ケースとの接触面積が小さくなり、同時に摩擦係数が小さくなるためと考えられる。糸束を絞ったときの径が同じであっても、ケース挿入性が異なる場合があったが、それは外表面の凹凸、すなわち摩擦係数が異なるため、挿入時の嵩高さに差があるのではないかと考えられる。
従って、本発明の課題を満たす中空糸膜は、外表面の摩擦係数を表す抜け落ち荷重が小さい中空糸である。このような抜け落ち荷重の小さい中空糸膜は、外表面のRa値が大きく凹凸の多いものである。具体的には、Raが15nm以上である。そして、Raが大きすぎると中空糸膜の強度が不足しやすくなるため、200nm以下であることが好ましい。
なお、本発明でいう中心線平均粗さ(Ra)は、ASME規格(B−46.1−1995 Surface Texture)により定義される値であり、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さlの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸、粗さ曲線をy=f(x)で表したとき、次の式によって求められる値をナノメートル(nm )で表した値である。
Figure 2008207153
このRaは、走査型プローブ顕微鏡(たとえばデジタル・インスツルメンツ社製、NANOSCOPE IIIa)を用いて測定する。10μm四方の試料の表面を走査して、膜表面凹凸を測定し、ワークステーションでRaを算出する。詳細は実施例で述べる。
そして、抜け落ち荷重は外表面開孔率とも相関し、外表面開孔率が大きいほど抜け落ち荷重が小さくなる。これは、開孔率が大きいほど接触面積が小さくなり、摩擦が小さくなるためと考えられる。従って、具体的には開孔率は6%以上、さらには10%以上が好ましい。一方、開孔率が大きすぎると、膜の強伸度が不足するため20%以下が好ましい。
また開孔率が大きくても孔径が大きすぎれば中空糸膜としての性能が悪くなる。したがって、中空糸膜外表面は平均孔径が0.7μm(直径)未満であることが好ましい。
なお、開孔率と平均孔径は下記の方法で算出する。まず、電界放射型走査型電子顕微鏡(たとえば日立社製、S−800)で中空糸膜外表面の1000倍画像を撮影し、Matrox Inspector2.2(Matrox Electronic Systems Ltd.)で画像処理を行う。外表面の孔を白く反転させ、孔数と各孔のピクセル数を測定し、画像の解像度から孔面積を求め、孔の直径を算出する。この数値から算術平均を求めて平均孔径とする。また開孔率は孔面積の総和を画像面積で除し、百分率で求める。詳細は実施例で述べる。
以上のような外表面形状の中空糸膜を製造するには、その紡糸条件を制御する必要がある。
まず、本発明の、外表面が平滑でない中空糸膜の材質は特に限定しないが、一般的に水処理膜や医療用膜などで多用されている高分子材料が主成分であることが好ましい。たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系ポリマーやポリスチレン、ポリ弗化ビニリデン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアミド、セルロース系ポリマーなどが挙げられる。この中でも特にポリスルホンは成形が容易で、膜にしたときの物質透過性能に優れているため、好適に用いられる。
中空糸膜の製造方法としては、基本的に公知の方法を用いればよいが、たとえば、次のような方法がある。すなわち、ポリスルホンとポリビニルピロリドン(重量比率20:1〜1:5が好ましく、5:1〜1:1がより好ましい)をポリスルホンの良溶媒(N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジオキサンなどが好ましい)および貧溶媒の混合溶液に溶解させた原液(濃度は、10〜30重量%が好ましく、15〜25重量%がより好ましい)を二重環状口金から吐出する際に内側に注入液を流し、乾式部を走行させた後凝固浴へ導く。
この際、乾式部の湿度が得られる中空糸膜の外表面形態に影響を与えるため、乾式部走行中に膜外表面からの水分補給によって、外表面近傍での相分離挙動を促進することができる。すなわち、本発明者らが鋭意検討した結果、抜け落ち荷重に影響を与える該表面のRa、開孔率、平均孔径を制御するには、吐出後、凝固浴に入るまでの乾式部においての相分離挙動が重要になることがわかった。具体的には、相分離を充分に進行させるために、乾式部雰囲気の湿度を高く保つことが必要である。吐出された中空糸膜の外表面周辺の雰囲気が飽和水蒸気に近ければ、外表面の相分離がより促進され、凹凸が多く開孔率が高い中空糸が得られる。乾式部雰囲気の湿度が低い場合は、水分が不足しているために外表面の相分離が不十分な状態で凝固浴に入るため、凹凸が少なく開孔率が低い中空糸が得られる。したがって、乾式部の相対湿度は80%以上、100%未満が好ましく、さらには90%以上、100%未満が好ましい。
また、膜厚を制御することも有効である。膜厚が薄いと相分離が充分に進行し、上記したような凹凸、開孔率を有する外表面を得やすい。しかしながら、一方、膜厚が薄すぎると膜の強度を保つことが難しい。したがって、膜厚は35μm以上、45μm以下が好ましく、さらには37μm以上、43μm以下であることが好ましい。
さらに、紡糸速度を下げることも有効である。紡糸速度を下げることによって乾式部を通過する時間が長くなるので、このことが外表面の凹凸の形成に効果があると考えられる。
そして、注入液組成としてはプロセス適性から原液に用いた溶媒を含む成分からなるものを用いることが好ましい。注入液濃度としては、例えばジメチルアセトアミドを用いたときは、45〜80重量%、さらには60〜75重量%の水溶液が好適に用いられる。
次に、得られた中空糸膜をモジュールに内蔵する方法としては、中空糸膜を必要本数束ねた後、筒状のケースに入れる。その後両端に仮のキャップをし、中空糸膜両端部にポッティング剤を入れる。このとき遠心機でモジュールを回転させながらポッティング剤を入れる方法は、ポッティング剤が均一に充填されるために好ましい方法である。ポッティング剤が固化した後、中空糸膜の両端が開口するように両端部を切断し、中空糸膜モジュールを得る。
このとき、本発明の中空糸膜は、上述したような方法で、分子間力顕微鏡で測定した外表面の中心線平均粗さ(Ra)が15nm以上で、かつ外表面の開孔率が6%以上、20%以下となっているので、乾燥状態であってもケースへ容易に挿入することができ、その結果、モジュール内における充填率を高めることも可能となる。
なお、ここでいう乾燥状態とは、中空糸膜の水分率が20%以下の状態をいう。水分率は、次の計算式で与えられる。ここで、水分率を求めるために、中空糸膜を乾燥させる必要がある。中空糸膜を100℃で乾燥させて、乾燥中の1時間での重量変化率が2%以内になった時点を乾燥の終了とする。
水分率=(中空糸膜の水重量/中空糸膜の乾燥終了時の重量)×100 [%]
また、中空糸膜のケースへの挿入が「容易」か否かは、筒状ケースの一方から糸束を挿入し、反対側から引っ張ったときに、中空糸に損傷(破れやちぎれ、つぶれなど)が生ずるか否かで判断することができる。
充填率は、低すぎると中空糸膜間の隙間が大きくなるため、血液浄化のために用いる中空糸膜モジュールの場合、透析液のショートパスなどの問題が起こり透析性能が低下する。一方、充填率が高すぎると中空糸膜間の隙間が小さすぎて透析液が流れにくくなるため、透析性能の悪化を招いてしまう。従って、十分な内部濾過量が確保でき、最適な除去性能を示す充填率は58%以上、65%以下である。
なお、本発明でいう中空糸膜の充填率とは、次式より求められる。
充填率=(((中空糸膜外径)×中空糸膜本数)/(モジュールケース胴体部内径))×100〔%〕
ここで、中空糸膜の外径とは、中空糸膜束から無作為に抜き取った16本の各中空糸膜について、レーザー変位計やマイクロウォッチャーを使用して直径を測定し、その平均値を採ったものである。
そして、上記したような本発明の中空糸膜による効果は、クリンプ形状が付与された中空糸膜において特に効果を発揮する。クリンプ形状を付与した中空糸膜は、一般に、糸束径が大きくなる。そのため、外表面の摩擦係数が大きい中空糸膜では、互いに反発しあって糸束が嵩高くなりやすく、高充填率になるようケースへ挿入することは難しい。しかしながら、上記したような外表面形状とすれば、摩擦係数が小さくなり、クリンプ形状の中空糸膜であっても充填率を高めてケースに挿入することが容易になる。
以上のように、本発明の中空糸膜によれば、充填率の高いモジュールを提供することができるため、中空糸の内側と外側で物質交換を行う各種の分離膜モジュールとして好適に使用される。特に、血液浄化用モジュールとして好適に使用される。血液浄化用モジュールとは、血液、血清または血漿を循環させ、中空糸膜の細孔を通して、血中の老廃物や有害物質、または所望のタンパク質を透過もしくは拡散によって取り除くまたは分画する機能を有したモジュールのことをいう。血液浄化用モジュールには、血液濾過モジュール、血漿分離モジュール、人工腎臓用モジュールなどがあるが、そのなかでも、標的物質の分離能が特に重要である人工腎臓用モジュールに好適に使用できる。
以下実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。また、以下の原料の説明において、「部」は重量部を意味する。
1.中空糸膜モジュールの作製
ポリスルホン(アモコ社 Udel−P3500)16部、ポリビニルピロリドン(インターナショナルスペシャルプロダクツ社;以下ISP社と略す)K30 3部、ポリビニルピロリドン(ISP社K90)3部をジメチルアセトアミド77部、水1部を加熱溶解し、製膜原液とした。
この原液を温度50℃の紡糸口金部へ送り、2重スリット管(外管内径0.35mm、内管該径0.25mm)から芯液としてジメチルアセトアミド63部、水37部からなる溶液を吐出させ、中空糸膜を形成させた後、雰囲気温度30℃、長さ350mmの乾式部を経て、ジメチルアセトアミド20重量%、水80重量%からなる温度40℃の凝固浴を通過させ、60〜75℃、90秒の水洗工程、130℃の乾燥工程を2分通過させ、160℃のクリンプ工程を経て得られた中空糸膜を巻き取り束とした。この中空糸膜を必要本数集積した糸束を、有効膜面積1.6m、中空糸充填率63%になるように、乾燥状態のままポリプロピレン製ケースに挿入し、ポッティングしたのち、端部を両面開口させて、中空糸膜モジュールとした。
2.測定方法
(1)中心線粗さ(Ra)
走査型プローブ顕微鏡(デジタル・インスツルメンツ社製、NANOSCOPE IIIa、タッピングモード、Dimension3000システム)を用いて試料表面を走査し、10μm四方の膜表面凹凸画像を取得した。スキャンラインは256本であった。1サンプルにつき3箇所の画像を測定し、ワークステーションでRaを算出した。それぞれの画像においては、10μm四方の測定画像から、1μm以上の大きな孔を除いた部分に任意に直線を引き、その断面のRaを算出させた。各画像について合計6箇所のRaを算出し、それらの算術平均値を中心線粗さ(Ra)とした。なお、1μm以上の大きな孔が多く、孔をよけて測定することが出来ない場合は、走査面積を5μm四方に変更して、同様の計算を行う。
(2)開孔率、平均孔径
電界放射型走査型電子顕微鏡(日立社製、S−800)で中空糸膜外表面の1000倍画像を撮影した。画像サイズは655×740ピクセルとした。Matrox Inspector2.2(Matrox Electronic Systems Ltd.)で画像処理を行った。孔を白く、それ以外を黒く反転させ、白い部分のピクセル数を測定した。各孔のピクセル数の総和(総開孔面積)を画像全体のピクセル数で除し、百分率で表したものを開孔率とした。
開孔率(%)=(各孔のピクセル数の総和)/(画像全体のピクセル数)×100
なお、画像の解像度は0.140845μm/ピクセルであったので、上記電子顕微鏡画像の面積Sは、9615.2μmと算出された。
また、平均孔径は、白く表示された孔の数をカウントし、各孔のピクセル数を測定した。孔のピクセル数が2ピクセル以下のものについては、ノイズとして除去した。次式によって各孔のピクセル数から孔面積を算出した。
孔面積(μm)=(孔のピクセル数)×(解像度0.140845)
上記孔面積から、各孔の直径を算出し、その算術平均を平均孔径とした。
なお、孔数が3000を越えるとカウントできないため、解析範囲を465×525ピクセルに減らして同様の操作を行う。
上記操作を異なる中空糸膜15本について行い、その算術平均を結果とした。
(3)抜け落ち荷重
直径40mmのステンレス製梨地丸棒1本と、直径12mmのポリアセタール製フリーロール2本を抱き角130°で設置し、これに20cmの乾燥中空糸膜を1本掛け、その一方の端に重りを下げていったとき、糸が滑り落ちる重さを抜け落ち荷重とした。測定に供する中空糸膜は、60℃で3時間乾燥させた。また、測定中は糸が揺れない程度に徐電エアを用いて静電気の影響を除去した。異なる10本の中空糸膜を用いて同様の操作を行い、その算術平均を測定値とした。
抜け落ち荷重が大きいほど糸が滑りにくいので、摩擦係数が大きく、糸束が嵩高くなりケース挿入が困難になる。
(5)ケース挿入性
中空糸膜を必要本数束ねた糸束を、モジュールケースの端から反対の端まで引き抜いたときに、糸束が嵩高くなりすぎてケースを通過できなかったり、通過しても中空糸膜に損傷(破れやちぎれ、つぶれなど)が生じた場合に挿入が困難であると判断した。一方、これらの問題が生じない場合を挿入が容易であると判断した。
10本の中空糸膜モジュールを作成し、挿入が容易であったモジュールの本数を百分率で表したものを挿入成功率とした。
(6)中空糸膜の外径および膜厚方法
中空糸束から無作為に抜き取った16本の中空糸をレーザー変位計(KEYENCE社製、LS5040T)で測定した。この時、クリンプがかかっている糸は、張力をかけ糸を張った状態で測定した。
一方、膜厚の測定においては、マイクロウォッチャーの1000倍レンズ(KEYENCE社製、VH−Z100)で測定して中空糸膜厚を求めた。
外径、膜厚ともに16本の算術平均値を測定値とした。
(7)中空糸膜充填率
中空糸膜外径の平均値を求めた後、この値を二乗し、ケースに挿入する本数を掛け合わせ、ケースの内径サイズの二乗で割った値に100を掛けた値を充填率とする。
充填率(%)=(((中空糸外径)×中空糸本数)/(ケース内径))×100
(実施例1)
紡速30m/min、乾式部の相対湿度は90%として、上記の方法で紡糸した。この中空糸膜の外径は280μm、膜厚は40μmであった。また、中空糸膜の外表面は、Raが21.2nm、開孔率が8.2%、平均孔径が0.68μmであった。この中空糸膜の抜け落ち荷重は0.031Nであった。挿入成功率は100%であり、ケースへの挿入は容易であった。
(実施例2)
紡速30m/min、乾式部の相対湿度は99%とし、上記の方法で紡糸した。この中空糸膜の外径は281μm、膜厚は40μmであった。また、中空糸膜の外表面は、Raが83.5nm、開孔率が10.1%、平均孔径が0.51μmであった。この中空糸膜の抜け落ち荷重は0.025Nであった。挿入成功率は100%であり、ケースへの挿入は容易であった。
(実施例3)
紡速30m/min、乾式部の相対湿度は80%とし、上記の方法で紡糸した。この中空糸膜の外径は283μm、膜厚は42μmであった。また、中空糸膜の外表面は、Raが23.6nm、開孔率が11.3%、平均孔径が0.66μmであった。この中空糸膜の抜け落ち荷重は0.026Nであった。挿入成功率は100%であり、ケースへの挿入は容易であった。
(実施例4)
紡速30m/min、乾式部の相対湿度は97%とし、上記の方法で紡糸した。この中空糸膜の外径は281μm、膜厚は39μmであった。また、中空糸膜の外表面は、Raが40.5nm、開孔率が14.0%、平均孔径が0.63μmであった。この中空糸膜の抜け落ち荷重は0.023Nであった。挿入成功率は100%であり、ケースへの挿入は容易であった。
(実施例5)
紡速30m/min、乾式部の相対湿度は85%とし、上記の方法で紡糸した。この中空糸膜の外径は282μm、膜厚は43μmであった。また、中空糸膜の外表面は、Raが15.1nm、開孔率が6.3%、平均孔径が0.77μmであった。この中空糸膜の抜け落ち荷重は0.032Nであった。挿入成功率は90%であり、外周部の糸につぶれが生じたものが1本あったが、ケースへの挿入はおおむね容易であった。
(比較例1)
紡速31m/min、乾式部の相対湿度は56%とし、上記の方法で紡糸した。この中空糸膜の外径は284μm、膜厚は50μmであった。また、中空糸膜の外表面は、Raが11.3nm、開孔率が4.76%、平均孔径が0.70μmであった。この中空糸膜の抜け落ち荷重は0.052Nであった。糸束が嵩高く、ケース内壁にこすりつけるようにして通さなければならなかった。ケースとの摩擦で糸がよじれたため、ちぎれやつぶれが多発した。挿入成功率は50%と低く、ケースへの挿入は困難であった。
(比較例2)
紡速31m/min、乾式部の相対湿度は75%とし、上記の方法で紡糸した。この中空糸膜の外径は280μm、膜厚は48μmであった。また、中空糸膜の外表面は、Raが14.0nm、開孔率が5.31%、平均孔径が0.81μmであった。この中空糸膜の抜け落ち荷重は0.043Nであった。糸束が嵩高く、外周部の糸がケース内壁との接触でつぶれたものがあった。挿入成功率は70%で、ケースへの挿入は困難であった。
(比較例3)
紡速30m/min、乾式部の相対湿度は56%とし、上記の方法で紡糸した。この中空糸膜の外径は281μm、膜厚は50μmであった。また、中空糸膜の外表面は、Raが11.9nm、開孔率が6.51%、平均孔径が0.76μmであった。この中空糸膜の抜け落ち荷重は0.035Nであった。糸束が嵩高く、外周部の糸がケース内壁との接触でつぶれたものがあった。挿入成功率は70%で、ケースへの挿入は困難であった。
なお、各実施例、比較例の結果を表1に示す。
Figure 2008207153

Claims (6)

  1. 分子間力顕微鏡で測定した外表面の中心線平均粗さ(Ra)が15nm以上であり、かつ外表面の開孔率が6%以上、20%以下であることを特徴とする中空糸膜。
  2. 外表面の平均孔径が0.7μm未満である、請求項1に記載の中空糸膜。
  3. 請求項1または2に記載の中空糸膜がケースに装填されてなる中空糸膜モジュール。
  4. 中空糸膜充填率が58%以上、65%以下である、請求項3に記載の中空糸膜モジュール。
  5. 血液浄化のために用いられるものである、請求項3または4に記載の中空糸膜モジュール。
  6. 人工腎臓として用いられるものである、請求項5に記載の中空糸膜モジュール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009104705A1 (ja) * 2008-02-21 2009-08-27 東洋紡績株式会社 耐ファウリング性に優れる中空糸型限外ろ過膜
JP2011024708A (ja) * 2009-07-23 2011-02-10 Toyobo Co Ltd モジュール組み立て性に優れた血液浄化用中空糸膜およびその製造方法

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