JP4958900B2 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents

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Description

本発明は、プラズマディスプレイパネル関し、特にMgOからなる保護層を備えるプラズマディスプレイパネル関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)はフラットパネルディスプレイ(FPD)の中でも高速表示が可能であり、かつ大型化が容易であることから、映像表示装置および広報表示装置などの分野で広く実用化されている。
図9は、一般的なAC型面放電PDPにおける放電単位である放電セル構造の模式的組図である。当図9に示すPDP1xはフロントパネル2及びバックパネル9を貼り合わせてなる。フロントパネル2は、パネルガラス3の片面に複数の表示電極対6(一対の走査電極5と維持電極4)が配置され、表示電極対6を覆うように誘電体層7および保護層8が順次積層されてなる。走査電極5(維持電極4)は透明電極51(41)及びバスライン52(42)で構成される。
誘電体層7はガラス軟化点が550℃〜600℃程度の範囲の低融点ガラスから形成され、AC型PDP特有の電流制限機能を有する。
保護層8は酸化マグネシウム(MgO)等からなり、上記誘電体層7及び表示電極対6をプラズマ放電のイオン衝突より保護すると共に、2次電子を効率よく放出し、放電開始電圧を低下させる役目をなす。通常、当該保護層8は真空蒸着法(特許文献7、8)や印刷法(特許文献9)で形成される。
他方、バックパネル9は、パネルガラス10上に画像データを書き込むための複数のデータ(アドレス)電極11が前記フロントパネル2の表示電極対6と直交方向で交差するように併設される。当該データ電極11およびパネルガラス10表面の少なくとも一部にはこれを覆うように低融点ガラスからなる誘電体層12が配設される。誘電体層12において隣接する放電セル(図示省略)との境界上には、低融点ガラスからなる所定の高さの隔壁(リブ)13が放電空間15を区画するように井桁状等のパターン部1231、1232を組み合わせて形成される。誘電体層12表面と隔壁13の側面には、R、G、B各色の蛍光体インクが塗布及び焼成されてなる蛍光体層14(蛍光体層14R、14G、14B)が形成されている。
フロントパネル2とバックパネル9は、表示電極対6とデータ電極11とが一定間隔をおいて互いに直交するように配置され、その各周囲において内部封止される。当該封止空間には放電ガスとしてXe‐Ne系あるいはXe‐He系等の希ガスが約数十kPaの圧力で封入される。以上でPDP1xが構成される。
ここで、PDPの放電特性は保護層の特性に大きく左右される。PDPの放電特性の向上を目的とした保護層の研究は広く行われているが、最も重視されている問題の一つとして放電遅れがある。
「放電遅れ」とは駆動パルスの幅を狭くして高速駆動を行う際に、パルスの立ち上がりから遅れて放電が行われる現象を指す。放電遅れが顕著になると、印加されたパルス幅内で放電が終了する確率が低くなり、本来点灯すべきセルに書き込み等ができずに点灯不良を生じる。
放電遅れの対策例としては、MgOにFe、Cr、V等の元素を添加したり、Si、Alを添加することによって、当該ドーパントにより保護層の放電特性を改善する試みが講じられている(特許文献1、2、4、5)。一方、誘電体層の上に直接、或いは薄膜法で作製したMgO膜上に対し、気相酸化法で作製したMgOの単結晶粒子を利用した粒子群をMgO結晶粒子層として配設することにより保護層表面における放電特性を改善する試みも行われている(特許文献3)。この方法によれば、低温時における放電遅れについては一定の改善が図られるとされている。
特開平8‐236028号公報 特開平10‐334809号公報 特開2006‐054158号公報 特開2004‐134407号公報 特開2004‐273452号公報 特開2006‐147417号公報 特開平05‐234519号公報 特開平08‐287833号公報 特開平07‐296718号公報 J.F.Boas、J..Chem.Phys.、Vol.90、No.2、807(1988)
しかしながら現在では、上記各従来技術においても、放電遅れに関する問題を効果的に解決するには至っていない。
特許文献3には、気相酸化法で作製したMgO結晶粒子群(粉体)の粒径が大きいほど電子線励起発光(カソードルミネッセンス、以下「CL」と称する。)のスペクトルにおいて200nm以上300nm未満の波長領域(以下、当該波長領域を「短波長領域」という。)の波形高さが大きくなることが開示されている。一方、本願発明者らの検討によって、300nm以上550nm未満の波長領域(以下、当該波長領域を「中波長領域」という。)に存在する発光ピークの大きさが、PDPの放電遅れや放電遅れの発生にかかる温度依存性と相関があることを示す結果が得られている。
また、気相酸化法で作製したMgO粒子群は、そのままでは粒径のバラツキが大きく、比較的大きい結晶粒子の周囲に微細粒子が多数存在している。このような微細粒子が混在すると、放電遅れの抑制効果が得られにくく、さらに可視光を散乱させるおそれもあり、画像表示性能に必要な可視光のパネル透過率を大幅に減少させるおそれも生じる。よって別途、分級工程が必要となり(特許文献6)、工程数が増加するほか、無駄なMgO材料が発生するためコスト面で不利となる。
以上のように、PDPにおいて実用的に「放電遅れの低減」と「放電遅れの温度依存性(特に低温領域の放電遅れ)の改善」を両立させるには至っていない。また、この問題は、フルスペックハイビジョンTV等の高精細なセル構造において、高速駆動を行う場合に特に顕在化するおそれがあり、早急な対策が望まれている。
本発明は以上の課題に鑑みなされたものであって、保護層における放電特性を改善することにより、高精細セル構造においても優れた画像表示性能を発揮することが可能なPDP提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、第一基板に電極、誘電体層並びに保護層が順次形成され、前記保護層が放電空間に臨むように前記第一基板が第二基板に対向配置されたプラズマディスプレイパネルであって、前記保護層は、CLにおける200nm以上300nm未満の波長領域のスペクトル積分値をa、300nm以上550nm未満の波長領域のスペクトル積分値をbとするとき、比率a/bが1以上であるMgO結晶粒子を含む結晶粒子層を少なくとも前記放電空間に臨む部分に有する構成とした。また前記比率は、2.5以上、5以上または20以上とすることもできる。
さらに前記保護層は、MgO膜層の上に前記結晶粒子層が積層されてなる構成とすることもできる。或いは前記保護層は、MgO膜層の表面にMgO結晶粒子が一部埋設されるように結晶粒子層が配設された構成とすることもできる。また前記保護層は、誘電体層の表面に直接前記結晶粒子層が形成された構成とすることもできる。
なお、本発明において、前記結晶粒子層が放電空間に臨む面積は、前記第一基板が放電空間に臨む全面積よりも小さい構成とすることもできる。
さらに前記MgO結晶粒子は、平均粒径が300nm以上4μm以下のサイズとすることができる。
以上の構成を有する本発明のPDPでは、保護層に用いられるMgO結晶粒子の特性において、中波長領域に対する短波長領域のスペクトル積分値の比率が1以上であって、PDPの放電遅れ及び放電遅れの温度依存性について抑制効果を呈することが実験的に明らかになっている。これにより保護層の良好な放電特性(放電遅れ及び放電遅れの温度依存性の改善)が期待され、結果的に優れたPDPの画像表示性能を実現することが期待できる。
また、上記比率関係のほか、本発明では短波長領域のスペクトル最大値が、中波長領域のスペクトル最大値に比べて2以上の比率となる構成としても、同様の効果が奏されることが分かっている。
以下に、本発明の実施の形態及び実施例を説明するが、当然ながら本発明はこれらの形式に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施の形態1>
(PDPの構成例)
図1は、本発明の実施の形態1に係るPDP1のxz平面に沿った模式的な断面図である。当該PDPは保護層周辺の構成を除き、全体的には従来構成(図9)と同様である。
PDP1は、ここでは42インチクラスのNTSC仕様例のAC型としているが、本発明は当然ながらXGAやSXGA等、この他の仕様例に適用してもよい。HD(High Definition)以上の解像度を有する高精細なPDPとしては、例えば、次の規格を例示できる。すなわちパネルサイズが37、42、50インチの各サイズの場合、同順に1024×720(画素数)、1024×768(画素数)、1366×768(画素数)に設定できるほか、当該HDパネルよりもさらに高解像度のパネルを含めることができる。HD以上の解像度を有するパネルとしては、1920×1080(画素数)を備えるフルHDパネルを含めることができる。
図1に示すように、PDP1の構成は互いに主面を対向させて配設されたフロントパネル2およびバックパネル9に大別される。
フロントパネル2の基板となるフロントパネルガラス3には、その一方の主面に所定の放電ギャップ(75μm)をおいて配設された一対の表示電極対6(走査電極5、維持電極4)が複数対にわたり形成されている。各表示電極対6は、ITO、ZnO、SnO等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極51、41(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン52、42(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン52、42によって透明電極51、41のシート抵抗が下げられる。
ここで、「厚膜」とは,導電性材料を含むペースト等を塗布した後に焼成して形成する各種厚膜法により形成される膜をいう。また,「薄膜」とは,スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子線蒸着法等を含む真空プロセスを用いた各種薄膜法により形成される膜をいう。表示電極対6を配設したフロントパネルガラス3には、その主面全体にわたり、酸化鉛(PbO)または酸化ビスマス(Bi)または酸化燐(PO)を主成分とする低融点ガラス(厚み35μm)の誘電体層7が、スクリーン印刷法等によって形成されている。
誘電体層7は、AC型PDP特有の電流制限機能を有し、DC型PDPに比べて長寿命化を実現する要素になっている。
誘電体層7の表面には、保護層8が配設されている。当該保護層8は、本実施の形態1の特徴として、スパッタリング法、イオンプレーティング法、蒸着法等で作製したMgO膜層81及びMgO結晶粒子層82からなり、放電時のイオン衝撃から誘電体層7を保護し、放電開始電圧を低減させるため、耐スパッタ性及び2次電子放出係数γに優れる材料からなる。MgO結晶粒子層82は説明のため実際よりMgO結晶粒子群16を大きく表している。保護層8は、光学的に透明で電気絶縁性が高いことも要求される。
バックパネル9の基板となるバックパネルガラス10には、その一方の主面にAg厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなる幅100μmの複数のデータ電極11が、x方向を長手方向としてy方向に一定間隔毎(360μm)でストライプ状に並設され、このデータ電極11を内包するようにバックパネルガラス9の全面にわたって厚さ30μmの誘電体層12がコートされている。
誘電体層12の上には、さらに隣接するデータ電極11の間隙に合わせて井桁状の隔壁13(高さ約110μm、幅40μm)が配設され、放電セルが区画されることで誤放電や光学的クロストークの発生を防ぐ役割をしている。そして隣接する2つの隔壁13の側面とその間の誘電体層19の面上には、カラー表示のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のそれぞれに対応する蛍光体層14が形成されている。なお、誘電体層12は必須ではなく、データ電極11を直接蛍光体層14で内包するようにしてもよい。
フロントパネル2とバックパネル9は、データ電極11と表示電極対6の互いの長手方向が直交するように対向配置され、両パネル2、9の外周縁部がガラスフリットで封着されている。この両パネル2、9間にはHe、Xe、Ne等を含む不活性ガス成分からなる放電ガスが所定圧力で封入される。
隔壁13の間は放電空間15であり、隣り合う一対の表示電極対6と1本のデータ電極11が放電空間15を挟んで交叉する領域が、画像表示にかかるセル(「サブピクセル」とも言う)に対応する。セルピッチはx方向が675μm、y方向が300μmである。隣り合うRGBの各色に対応する3つのセルで1画素(675μm×900μm)が構成される。
走査電極5、維持電極4及びデータ電極11の各々には、図2に示すようにパネル外部において、駆動回路として走査電極ドライバ111、維持電極ドライバ112、データ電極ドライバ113が接続される。
(PDPの駆動例)
上記構成のPDP1は前記各ドライバ111〜113を含む公知の駆動回路(不図示)によって、各表示電極対6の間隙に数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加されることにより、任意の放電セル内で放電を発生させ、励起されたXe原子からの紫外線によって蛍光体層14を励起し、可視光発光するように駆動される。
その駆動方法としては、いわゆるフィールド内時分割階調表示方式がある。当該方式は、表示するフィールドを複数のサブフィールド(SF)に分け、各サブフィールドをさらに複数の期間に分ける。1サブフィールドは更に、(1)全表示セルを初期化状態にする初期化期間、(2)各放電セルをアドレスし、各放電セルへ入力データに対応した表示状態を選択・入力していくデータ書き込み期間、(3)表示状態にある放電セルを表示発光させる維持放電期間、(4)維持放電により形成された壁電荷を消去する消去期間という4つの期間に分割されてなる。
各サブフィールドでは、初期化期間で画面全体の壁電荷を初期化(リセット)した後、アドレス期間で点灯すべき放電セルのみに壁電荷を蓄積させるアドレス放電を行い、その後の放電維持期間ですべての放電セルに対して一斉に交流電圧(サステイン電圧)を印加することによって一定時間放電維持することで発光表示する。
ここで図3は、フィールド中の第m番目のサブフィールドにおける駆動波形例である。フィールド中の第m番目のサブフィールドの駆動波形図3が示すように、各サブフィールドには、初期化期間、アドレス期間、放電維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。
初期化期間とは、それ以前のセルの点灯による影響(蓄積された壁電荷による影響)を防ぐため、画面全体の壁電荷の消去(初期化放電)を行う期間である。図3に示す波形例では、走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べて高い電圧を印加しセル内の気体を放電させる。それによって発生した電荷はデータ電極11、走査電極5および維持電極4間の電位差を打ち消すようにセルの壁面に蓄積されるので、走査電極5付近の保護層8表面には負の電荷が壁電荷として蓄積される。またデータ電極11付近の蛍光体層14表面および維持電極4付近の保護層8表面には正の電荷が壁電荷として蓄積される。この壁電荷により、走査電極5―データ電極11間、走査電極5―維持電極4間に所定の値の壁電荷により形成される電位が生じる。
アドレス期間は、サブフィールドに分割された画像信号に基づいて選択されたセルのアドレッシング(点灯/不点灯の設定)を行う期間である。当該期間では、セルを点灯させる場合には走査電極5にデータ電極11および維持電極4に比べ低い電圧を印加させる。すなわち、走査電極5―データ電極11には前記壁電荷により形成される電位と同方向に電圧を印加させると共に走査電極5―維持電極4間に壁電荷により形成される電位と同方向にデータパルスを印加させ、書き込み放電(アドレス放電))を生じさせる。これにより蛍光体層14表面、維持電極4付近の保護層8表面には負の電荷が蓄積され、走査電極5付近の保護層8表面には正の電荷が壁電荷として蓄積される。以上で維持電極4―走査電極5間には所定の値の電位が生じる。
放電維持期間は、階調に応じた輝度を確保するために、アドレス放電により設定された点灯状態を拡大して放電維持する期間である。ここでは、上記壁電荷が存在する放電セルで、一対の走査電極5および維持電極4の各々に維持放電電圧パルス(例えば約200Vの矩形波電圧)を互いに異なる位相で印加する。これにより表示状態が書き込まれた表示セルである放電セルに対し電圧極性の変化毎にパルス放電を発生せしめる。
この維持放電により、放電空間における励起Xe原子からは147nmの共鳴線が放射され、励起Xe分子からは173nm主体の分子線が放射される。この共鳴線・分子線が蛍光体層14表面に照射され、可視光発光による表示発光がなされる。そして、RGB各色ごとのサブフィールド単位の組み合わせにより、多色・多階調表示がなされる。なお、保護層8に壁電荷が書き込まれていない非表示セルの放電セルでは、維持放電が発生せず表示状態は黒表示となる。
消去期間では、走査電極5に漸減型の消去パルスを印加し、これによって壁電荷を消去させる。
(保護層8について)
本実施の形態1の特徴は、PDP1における保護層8の構成にある。本実施の形態1における保護層8は、誘電体層7上に設けられたMgO膜層81と、当該MgO膜層81上に配設されたMgO結晶粒子群16からなるMgO結晶粒子層82で構成される。MgO膜層81の厚みは0.3μm以上1μm以下である。
MgO膜層81は、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子線蒸着法等で作製された薄膜構造を有する。当該MgO膜層81は、PDPの駆動時には十分な量の壁電荷を安定に蓄積する役目をなす。一方、MgO結晶粒子群16は、MgO前駆体を焼成して得たものであって、平均粒径が300nm〜4μmの比較的均一な粒径分布を持つMgO結晶粒子を平面的に凝結させることによりMgO結晶粒子層82が構成されている。ここで、当該MgO結晶粒子の平均粒径は、SEM画像に現れた粒子の粒径から調査した。
MgO結晶粒子層82は、保護層8において、少なくとも放電空間に臨む部分に設けられていればよい。さらに、MgO結晶粒子が分布する領域の面積が、保護層8の当該放電空間を臨む部分(ここではMgO膜層81)の面積に対して1%以上30%以下の範囲と設定するのが望ましい。すなわち、MgO結晶粒子群16は、MgO膜層81の全面に被覆されている必要はなく、MgO膜層81の上に島(island)の形態に形成するのが好適である。これを言い換えると、前記結晶粒子層82が放電空間15に望む面積は、保護膜8の当該放電空間を望む部分の面積よりも小さいのが好適であると言うことができる。
この点を具体的に説明する。MgO膜層81は、上記のように、主として壁電荷の蓄積・保持機能を有し、PDP駆動時において表示電極4、5間で維持放電を発生させるための電圧維持機能を発揮するものである。これに対しMgO結晶粒子群16は、駆動時において、放電空間15内への電子放出機能に特化した構成である。ここで仮にMgO膜層81の全面にMgO結晶粒子群16を密に配設すると、放電空間15へ電子放出は活発にできるが、維持放電を発生させるために必要な電子まで過剰に放出されてしまい、維持放電が正常に行えないおそれがある。このような問題を効果的に回避し、MgO膜層81の電圧維持機能とMgO結晶粒子群による電子放出機能とを両立させるためには、ある程度、MgO膜層81の表面が放電空間15に臨んでいるような構成が好適である。従って、MgO微粒子は、MgO膜層81の表面において、なるべく分散させて配設する。例えば複数の粒子の集まりからなる二次粒子として配設してもよいし、公知のインクジェット法を用いたパターニングにより、所定のパターンで、保護層8上にMgO膜層81を配設することも可能である。このように、ここで言及する「島」とは、MgO膜層81が放電空間に露出するようなMgO結晶粒子層82の形態を含む広い概念を指す。
ここで、「MgO結晶粒子が分布する領域」とは、保護層8の平面方向に対し垂直な方向から保護層8を視したときに、MgO結晶微粒子に隠れてMgO膜層81又は誘電体層7を直接見ることができない領域のことをいう。これを言い換えると、前記結晶粒子層82が放電空間15に臨む面積は、フロントパネル2が放電空間15に臨む全面積よりも小さいと言うことができる。
なお、本発明におけるMgO結晶粒子は、従来の前駆体焼成法で作製されるMgO微粒子のように、特定の辺が他の辺よりも長い偏平な板状体ではなく、基本的に辺の長さが所定の範囲内に整った六面体もしくは八面体結晶の形状を有する。このうち六面体構造を採る場合、正六面体であれば好ましい。しかし、製造条件による誤差を考慮すると、最も長い辺の長さと最も短い辺の長さの比が、1対1〜2対1であってもよい。一方、八面体構造を採る場合、正八面体であれば好ましい。しかし、製造条件による誤差を考慮すると、最も長い辺の長さと最も短い辺の長さの比が、1対1〜2対1であってもよい。また、六面体もしくは八面体結晶の形状における稜線及び頂点は、明確に存在する必要はない。
ここで一般的に、MgOからなる保護層は全体的にスパッタリング法、イオンプレーティング法、電子線蒸着法等によって成膜される。
MgO結晶粒子群16は、MgO前駆体焼成による作製方法によれば、後述する従来の気相酸化法で作製されたMgO結晶粒子群(例えば特開2006‐147417号公報)に比べて粒径のバラツキを抑制できるため、各MgO結晶粒子にわたり、均一な放電特性を発揮できる特徴も有している。
さらにMgO結晶粒子群16の特性は、CLの測定結果で定義される。すなわち第一の定義として、「CL測定における短波長領域のスペクトル積分値をa、300nm以上550nm未満の波長領域のスペクトル積分値をbとするとき、比率a/bが1以上である特性を有する」ということができる。この短波長領域における発光スペクトルの積分値が示す隆起状波形部は、本願発明者らの実験により、その存在の有無及びその大きさによって、PDPの放電遅れ及び放電遅れの温度依存性について抑制効果を呈するか否かを確認する指標となることが明らかにされている。
以上のことから本実施の形態1のPDP1では、保護層8の構成において、放電空間15に面する部分にMgO結晶粒子群16を含むMgO結晶粒子層82に配設することにより、PDPの「放電遅れ」と「放電遅れの温度依存性」の課題を効果的に抑制することができる。
MgO結晶粒子群16を用いた場合に得られるその他の効果として、パルス依存性の改善が挙げられる。フィールド内示分割表示方式では、各電極6、11に対してサブフィールド毎に繰り返し無数のパルスを高速で印加するが、この場合、1のサブフィールドにおいて印加したパルスの放電履歴が、次のサブフィールドにおける放電に影響を及ぼす性質がある。
また本実施の形態1では、保護層8の放電遅れ・放電遅れの温度依存性に関する放電特性が向上され、放電現象に対する高速応答性に優れている。これにより、駆動時には各セルにおいて、パルス印加後の壁電荷状態が安定され、パルス依存性の改善も期待できる。よって、本実施の形態1のPDP1によれば、放電履歴の影響も抑制し、一層良好な画像表示性能が実現される。この効果は、フルスペックHD等の微細なセル構造を持つPDPにおいて、短パルスが高速で印加される場合に特に発揮されるものである。
なおCL法は、試料に電子線を照射してエネルギー緩和過程としての発光スペクトルを検出する方法である。CL法によれば、保護層の構成に係る情報(例えばMgO中の酸素欠陥の存在等)を分析できる。
さらに「スペクトル積分値」とは、所定の波長領域における発光分布を波長で積分した値である。
(CL測定結果より考察される保護層特性について)
本発明のPDPが有するMgO結晶粒子群16の特性は、CLの測定結果により、上記第一の定義とすることが可能である。
以下、このような定義がなされる原理について説明する。
一般にMgOについてのCL測定では、短波長領域に加えて中波長領域に発光ピークが観測される(たとえば特許文献3)。
ここで、従来の気相酸化法は、例えば特許文献3に示されるように、Mg(マグネシウム金属)を不活性ガスが満たされた槽中で、高温に加熱しながら酸素ガスを少量流し、Mgを直接酸化させてMgO結晶粒子群(粉体)を作製する合成方法である。従って十分に酸素がMgO中に取り込まれにくいため、酸素欠陥が生じやすいMgO結晶粒子群(粉体)になる。
上記した中波長領域で測定される発光ピークは、一般に酸素欠陥に起因すると言われており(非特許文献1)、気相酸化法で作製したMgO結晶粒子では、この放電遅れや放電遅れの温度依存性が悪化する原因と考えられるピークが顕著に現れる。この中波長領域で測定される波形隆起部に寄与するような準位がバンドギャップ間に多数存在すると、電子の遷移確率が増え、電子のエネルギーの緩和が起こりやすく、励起された電子がそのエネルギー準位にトラップされる時間が短くなると考えられる。このため、コンダクションバンド近傍の準位に電子が存在する確率が減少し、結果的に深い準位からの電子の放出を起こさなければならなくなると考えられる。
一方で、短波長領域で測定される発光ピークの存在は、5eV程度の電子のエネルギーの緩和過程が存在することを立証するものであり、オージェ過程での電子放出が存在すると考えられる。
ここで、オージェ遷移とは励起された電子のエネルギーが緩和する際に発生する余剰エネルギーを他の電子が受け取り、その電子が励起されるという電子の励起過程の一種である。このオージェ遷移によって励起され放出する電子も、他の過程で放出された電子と同様にPDPの放電に寄与すると考えられ、このことも短波長領域で測定される発光ピークを有するMgO結晶粒子群の層を、前記前面板の放電空間側の全面あるいは一部に形成したPDPの放電特性が優れている要因の一つであると考えられる。
したがって、短波長領域で測定される発光ピークが大きく、中波長領域で測定される波形隆起部が小さいようなMgO結晶粒子群16を用いるとPDPの放電遅れや放電遅れの温度依存性が改善されると考えられる。
逆に、中波長領域で大きな発光ピークが存在することは、コンダクションバンド近傍の準位に存在する電子が小さなエネルギー緩和で遷移することを促すため、上記の5eV程度という大きな余剰エネルギーを創出する電子の遷移が起こりにくくなり、上記で述べたオージェ遷移等による電子放出もほとんど見られなくなることが予想される。
以上のように、MgOのCL測定において中波長領域に発光ピークが観測される場合には、当該試料を保護層に用いた場合、放電遅れや放電遅れの温度依存性が優れないことが予想される。
一方、本実施の形態1においては、MgO前駆体を焼成して得たMgO結晶粒子群16についてCL測定を行った場合、スペクトルの短波長領域において相当程度の値を持ち、ピーク状の波形をなす隆起状波形部が確認される。このような特性の隆起状波形部は、従来の気相酸化法等により作製されたMgO結晶粒子には見られない。よって当該隆起状波形部の有無は本願特有のものと言え、PDPの放電遅れ及び放電遅れの温度依存性について抑制効果を呈するか否かを確認する場合の指標となりうる。
本実施の形態1の保護層につき、CL測定において呈する波形の特徴については、上記を第一の定義とし、以下のように別の定義を適用することもできる。
第二の定義として、前記MgO結晶粒子群16に含まれるMgO結晶粒子は、CL測定における200nm以上300nm未満の波長領域におけるスペクトル最大値をd、300nm以上550nm未満の波長領域におけるスペクトル最大値をeとするとき、比率d/eが2以上である特性を有するものとすることができる。
ここで「スペクトル最大値」とは、所定の波長領域における発光分布において、発光強度の最大値をいう。
なお、第一の定義において、短波長領域におけるスペクトル積分値は、対象とする波長領域のスペクトル積分値に比べて、さらに2.5倍、5倍、或いは20倍以上の大きさを有することが同順に好適であると考えられる。
ここで、CL測定における200nm以上300nm未満の波長領域のスペクトル積分値をa、300nm以上550nm未満の波長領域のスペクトル積分値をbとするときの比率a/bにおいて、1以上から上記の効果が顕著に現れ始め、2.5ではその効果が飽和傾向にあり、5までになると、放電遅れのばらつきがかなり小さくなる。
また、第二の定義においても、同様の理由からスペクトル最大値の大きさが対象とする波長領域のスペクトル積分値に比べて、さらに5倍、或いは12倍以上の大きさを有することが同順に好適であると考えられる。
上記と同様に、2以上から上記の効果が顕著に現れ始め、5ではその効果が飽和傾向にあり、12までになると、放電遅れのばらつきがかなり小さくなる。
なお、前記スペクトル積分値及び前記スペクトル最大値の比率の上限は、今回の実験で用いたCL測定装置の測定限界(測定されるスペクトルのサチュレーションによる限界)を考慮すると、いずれも1000倍程度である。
(PDPの製造方法について)
以下、PDP1の製造方法例について説明する。
(フロントパネルの作製ステップ)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラスの面上に、表示電極を作製する。ここでは印刷法によって表示電極を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
まず、ITO、SnO、ZnO等の透明電極材料を最終厚み約100nmで所定のパターンでフロントパネルガラス上に塗布し、乾燥させる。これにより透明電極が作製される。
一方、Ag粉末と有機ビヒクルに感光性樹脂(光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを調整し、これを前記透明電極材料の上に重ねて塗布し、形成する表示電極のパターンを有するマスクで覆う。そして、当該マスク上から露光し、現像工程を経て、590〜600℃程度の焼成温度で焼成する。これにより透明電極上にバスラインが形成される。このフォトマスク法によれば、従来は100μmの線幅が限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバスラインを細線化することが可能である。バスラインの金属材料としては、Agの他にPt、Au、Al、Ni、Cr、また酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。バスラインは上記方法以外にも、蒸着法、スパッタリング法などで電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成することも可能である。
次に、表示電極の上から、軟化点が550℃〜600℃の酸化鉛系あるいは酸化ビスマス系、SiO系の誘電体ガラス粉末とブチルカルビトールアセテート等からなる有機バインダーを混合したペーストを塗布する。そして550℃〜650℃程度で焼成し、最終厚みが2μm以下の誘電体層を形成する。
(保護層形成ステップ)
続いて誘電体層の表面に、所定の厚みのMgO膜層81を蒸着法を用いて成膜する。MgO膜層81の成膜方法は従来のMgO層の成膜方法と同様である。蒸着源としては、例えばペレット状、粉末状のMgOを用いる。酸素雰囲気中において、ピアス式電子ビームガンを加熱源として、上記蒸着源を加熱し所望の膜を形成する。ここで、成膜時の電子ビーム電流量、酸素分圧量、基板温度等は成膜後の保護層の組成には大きな影響を及ぼさないため、任意設定で構わない。なおMgO膜層81の成膜方法としては、上記EB法に限定するものではなく、その他の方法、例えばスパッタ法、イオンプレーティング法等、各種薄膜法を利用してもよい。
次に、上記作製したMgO膜層81の上に、所定のMgO結晶粒子を含む溶剤をスクリーン印刷法やスプレー法等により塗布する。その後、焼成により溶剤を除去することで、前記所定のMgO結晶粒子を含むMgO結晶粒子層82を形成する(MgO結晶粒子層形成ステップ)。
MgO結晶粒子層82に用いる前記所定のMgO結晶粒子は、以下に例示するようにMgO結晶粒子形成ステップにおいて、MgO前駆体を700℃以上2000℃未満の高温で均一に熱処理(焼成)し、カソードルミネッセンスにおける200nm以上300nm未満の波長領域のスペクトル積分値をa、300nm以上550nm未満の波長領域のスペクトル積分値をbとするとき、比率a/bが1以上であるという特性を持つMgO結晶粒子が得られる。
さらに、MgO結晶粒子の結晶体構造が単結晶構造体であれば、欠陥が減少するので、上記の効果が更に顕著となる。
MgO前駆体は、例えばマグネシウムアルコキシド(Mg(OR))、マグネシウムアセチルアセトン(Mg(acac))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム(MgCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硝酸マグネシウム(Mg(NO)、シュウ酸マグネシウム(Mg C)、の内のいずれか一種以上(2種以上を混合して用いてもよい)を選ぶことができる。選択した化合物によっては、通常、水和物の形態を取ることもあるが、このような水和物を用いてもよい。
MgO前駆体となるマグネシウム化合物は、焼成後に得られるMgOの純度が99.95%以上、最適値として99.98%以上になるように調整する。これはマグネシウム化合物に、各種アルカリ金属、B、Si、Fe、Al等の不純物元素が一定量以上混じっていると、熱処理時に不要な粒子間癒着や焼結を生じ、高結晶性のMgO結晶粒子を得にくいためである。このため、不純物元素を除去する等により予め前駆体を調整しておく。ここで本発明に用いる前駆体としては、その結晶性が高く、さらに楕円体状の粒子形状を有していることが好ましい。更には、BET値が5〜7程度であることが好ましい。当該BET値は、比表微粒子の表面に吸着占有面積の分かったガス分子(N)を吸着させ、そのガス分子量から求めるBET法を用いて測定することができる。
次に、焼成温度の設定を行なう場合、700℃以上が好ましく、750℃以上が一層好ましい。これは、焼成温度が700℃を下回る温度では、結晶面が十分発達せず欠陥が多くなり、微粒子への不純物ガスの吸着が多くなるためである。ただし、焼成温度が2000℃より高温に達すると、酸素抜けが生じてしまい、結果としてMgOの欠陥が多くなるため吸着が生じる。このため、1800℃以下が好ましい。
ここで、700℃以上2000℃以下の焼成温度条件で焼成を行なった場合、「カソードルミネッセンスにおける200nm以上300nm未満の波長領域のスペクトル積分値をa、300nm以上550nm未満の波長領域のスペクトル積分値をbとするとき、比率a/bが1以上である」という特性を持つMgO結晶粒子、及び、680〜900nm未満のスペクトル領域に相当程度の値をもつピークが確認されるMgO結晶粒子の2種類のMgO結晶粒子が生成される。
本発明者による別の実験により、およそ1400℃以上の温度で焼成を行うと、680〜900nm未満のスペクトル領域に相当程度の値をもつピークが確認されるMgO結晶粒子が生成される割合が大きくなる傾向が見られることが分かった。
したがって、「カソードルミネッセンスにおける200nm以上300nm未満の波長領域のスペクトル積分値をa、300nm以上550nm未満の波長領域のスペクトル積分値をbとするとき、比率a/bが1以上である」という特性を持つMgO結晶粒子の生成頻度を上げるためには、700℃以上1400℃未満の焼成温度が好ましい。
なお、680〜900nm未満のスペクトル領域に相当程度の値をもつピークが確認できるMgO結晶粒子は、前記比率a/bが1以上である特性を持つMgO結晶粒子よりも粒径が小さい傾向にある。従って、これら2種類のMgO微粒子は、選別(分級)工程を得ることによって、互いに分離することも可能である。
また、本発明では、これら2種類のMgO微粒子はいずれも300nm以上4μm以内の平均粒径の粒度分布を有しているが、一度の焼成工程によって焼成されるサンプル中では、各種のMgO粒子における平均粒径のピーク値が互いに分離しており、前記選別工程も十分に実用的であることが発明者らの実験により明らかになっている。
次にMgO前駆体の作製方法と、これを用いたMgO結晶粒子の各種作製方法(1)〜(4)について説明する。
(1)出発原料として、純度99.95%以上のマグネシウムアルコキシド(Mg(OR))sやマグネシウムアセチルアセトンMg(acac)を準備する。この水溶液に少量の酸を加えて加水分解し、MgO前駆体としてMg(OH)のゲル状の沈殿物を作製する。その後Mg(OH)を水溶液から分離し、空気中で750℃以上で焼成して脱水し、MgO結晶粒子を作製する。
(2)純度99.95%以上の硝酸マグネシウム(Mg(NO)を出発原料とし、この水溶液にアルカリ溶液を添加することによって加水分解する。これによりMgO前駆体としてMg(OH)のゲル状の沈殿物を作製する。その後Mg(OH)を水溶液から分離し、空気中で750℃以上で焼成して脱水し、MgO結晶粒子を作製する。
(3)純度99.95%以上の塩化マグネシウム(MgCl)を出発原料とし、この水溶液にアルカリ溶液を添加することによって加水分解し、MgO前駆体としてMg(OH)のゲル状の沈殿物を作製する。その後Mg(OH)を水溶液から分離し、空気中で750℃以上で焼成することによって脱水し、MgO結晶粒子を作製する。
(4)マグネシウムアルコキシド、Mg(OH)、硝酸マグネシウム(Mg(NO)、塩化マグネシウム(MgCl)、炭酸マグネシウム(MgCO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、シュウ酸マグネシウム(Mg C)、酢酸マグネシウム(Mg(CHCOO))等を、直接750℃以上の高温で、熱平衡的に熱分解する方法を採用してもよい。この方法でも、上記と同様にMgO結晶粒子が得られる。
このような焼成を加えて得られた結晶体は、粒子サイズが300nm〜4μmとなり、300nm以下の微粒子がほとんどなくなることが特徴である。このため、気相酸化法で作製された結晶よりも比表面積が小さくなる。このことは耐吸着性に優れている一つの要因であり、電子放出性能を向上させていると考えられる。
なお、従来の気相酸化法で作製されたMgO結晶粒子群は、粒径に比較的バラツキがある。このため、均一な放電特性を得るために一定の粒径範囲の粒子を選別する分級工程が必要である(例えば特開2006‐147417号公報)。これに対し、本発明において上記MgO前駆体を焼成してなるMgO結晶粒子群は、従来よりも粒径が均一且つ一定の粒径を有している。このため、場合によっては不要な微細粒子を分級工程で振り分ける工程が省略でき、製造効率及びコストの面で非常に有利である。
以上でフロントパネル2が作製される。
(バックパネルの作製ステップ)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラスの表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ約5μmのデータ電極を形成する。データ電極11の電極材料としては、Ag、Al、Ni、Pt、Cr、Cu、Pd等の金属や、各種金属の炭化物や窒化物等の導電性セラミックスなどの材料やこれらの組み合わせ、あるいはそれらを積層して形成される積層電極も必要に応じて使用できる。
ここで、作製するPDP1を例えば40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのデータ電極の間隔を0.4mm程度以下に設定する。
続いて、データ電極を形成したバックパネルガラスの面全体にわたって鉛系あるいは非鉛系の低融点ガラスやSiO材料からなるガラスペーストを厚さ約20〜30μmで塗布して焼成し、誘電体層を形成する。
次に、誘電体層12面上に隔壁13を形成する。具体的には低融点ガラス材料ペーストを塗布し、サンドブラスト法やフォトリソグラフィ法を用い、隣接放電セル(図示省略)との境界周囲を仕切るように、放電セルの複数個の配列を行および列を仕切る井桁形状のパターンで形成する。
隔壁13が形成できたら、隔壁13の壁面と、隔壁13間で露出している誘電体層12の表面に、赤色(R)蛍光体、緑色(G)蛍光体、青色(B)蛍光体のいずれかを含む蛍光インクを塗布し、これを乾燥・焼成してそれぞれ蛍光体層14とする。
RGB各色蛍光の化学組成例は以下の通りである。

赤色蛍光体;Y;Eu3+
緑色蛍光体;ZnSiO:Mn
青色蛍光体;BaMgAl1017:Eu2+

各蛍光体材料は、平均粒径2.0μmのものが好適である。これをサーバー内に50質量%の割合で入れ、エチルセルローズ1.0質量%、溶剤(α‐ターピネオール)49質量%を投入し、サンドミルで撹拌混合して、15×10-3Pa・sの蛍光体インクを作製する。そして、これをポンプにて径60μmのノズルから隔壁13間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁20の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後は500℃で10分間焼成し、蛍光体層14を形成する。
以上でバックパネル9が完成される。
なお上記方法例ではフロントパネルガラス3およびバックパネルガラス10をソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料で構成してもよい。
(PDPの完成)
作製したフロントパネル2とバックパネル9を、前記作製した保護層8が放電空間15に臨むように対向配置させ(配置ステップ)、これらを封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間の内部を高真空(1.0×10-4Pa)程度に排気し、これに所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe‐Xe系やHe‐Ne‐Xe系、Ne‐Xe‐Ar系等の放電ガスを封入する。
以上でPDP1が完成する。
(性能確認実験)
図4(a)に、実施例のMgO保護層(実施例)と従来構成の気相酸化法で作製したMgO保護層(比較例)の構成をなすMgO結晶粒子についてのCL測定の結果を示す。図4(b)は前記結果の部分拡大図である。各保護層は基板上に単体で作製してCL測定した。グラフの縦軸及び横軸はそれぞれ、発光強度(実施例の短波長領域におけるスペクトル最大値で規格化した相対強度)及び波長(nm)を示している。当図に示すデータは、MgO結晶粒子をPDPの保護層に利用する前の状態(粉体状態)で測定して得たものである。
ここで図10は、高感度型の分光光度測定システムを用いた発光スペクトル解析方法を模式的に示す図である。図4(a)、(b)に示す各スペクトルは、図10に示すように、真空チャンバー内で入射エネルギー3keV、ビーム電流3.9μAの電子線(EB)を入射角45°で試料に照射し、これにより得られた光をレンズ、ファイバー等の光学系を介して発光スペクトル解析用高感度型の分光光度測定システム(ここでは大塚電子(株)IMUC7500を使用)に入射させ、分光器で分光させることで得た。
なお、本測定システムでは、分光器の各波長に対する感度を補正するためのキャリブレーションを行った。
図4(b)に示すように、中波長領域のスペクトル最大値及びスペクトル積分値は実施例と比較例とでは同程度であるが、短波長領域については図4(a)に示すように、スペクトル最大値及びスペクトル積分値について、いずれも実施例が比較例10倍以上であり、圧倒的に大きい。
このように実施例と比較例では、互いに異なるCL発光スペクトルを有しており、その特性において明確な差異があると考えられる。
なお、中波長領域におけるスペクトル最大値及びスペクトル積分値の大きさは、別の実験により、PDPの放電遅れや放電遅れの温度依存性と比例関係にあると考えられている。
当該中波長領域のスペクトル最大値及びスペクトル積分値は、比較例では実施例に比べて大きい。短波長領域のスペクトル最大値及びスペクトル積分値が大きい場合、それ単体で放電特性の改善効果が有るか否かの詳細は現時点では不明であるが、中波長領域におけるスペクトル最大値及びスペクトル積分値の違いと合わせて考えると、実施例は相対的に比較例よりも優れた放電特性を発揮するものと解される。
次に示す図5は、これら2つの形態のPDPにおいて、MgO結晶粒子層82の粒子量(粉体量)と放電遅れの関係を示したグラフである。グラフの横軸における粒子量は、実施例及び比較例において粒子の質量で一致させており、最も粒子量が多いときを1としている。なお当図に示すデータは、MgO結晶粒子をPDPのMgO結晶粒子層82に利用する前の状態(粉体状態)で測定して得たものである。
当図に示すように、実施例及び比較例のいずれでも粒子量と比例して放電遅れの改善が確認できる。しかし、実施例のように前駆体焼成由来のMgO結晶粒子を用いる方が、改善効果が高い。さらに実施例の方が、比較例よりも少ない粒子量で放電遅れの改善効果があることも確認できる。
このような結果が得られた直接的な原因は不明であるが、比較例では実施例に比べ、MgOの粒径にバラツキがあり、微細なMgO結晶粒子が混在している。このため上記結果の原因として、実施例の粒子の電子放出能力が高いことや、比較例では電子放出に寄与する粒子の割合が小さいこと等が挙げられる。
図6(a)は、CL測定における短波長領域及び中波長領域のスペクトル積分値の比率と、放電遅れとの関係を示すグラフである。図6(b)は、前記比率が小さい領域において図6(a)を一部拡大したものである。当図に示されるように、スペクトル積分値の比率が2倍以上であれば、放電遅れは0.2以下でほぼ一定となり、これによって放電遅れの実質的な改善が見られる。すなわち、少なくとも中波長領域に対する短波長領域のスペクトル積分値の比率が相対的に大きいと、これに比例して放電遅れの抑制効果は確認できる。実施例のように、前駆体焼成由来のMgO結晶粒子を用いた本実施の形態に係るPDPでは、従来のPDPに比べて放電遅れという問題を大きく改善できると言える。
なお、MgO保護層の作製方法として、マグネシウム塩をペースト状にして誘電体層上に印刷し、焼成する方法が検討されている(例えば、特開平10‐125237号公報)。しかしながら、当該ペーストを用いたMgO保護層を持つPDPの放電特性は、MgOを電子ビームで加熱して蒸着させる真空蒸着法でMgO保護層を形成したPDPの放電特性と比べてほとんど向上しないことが分かっている。
今後の実験により、短波長領域のスペクトル最大値単体或いはスペクトル積分値単体と、放電遅れとの関係の詳細を調査することが重要と解される。
<性能比較実験>
次に、保護層以外の構成を共通とする実施例および比較例のPDPをそれぞれ作製し、放電遅れ時間と画面ちらつき等の各性能について調査した。
各実施例及び比較例について、MgO前駆体原料の作製(熱処理)条件、MgO結晶粒子の種類並びに放電ガス中のXeガス濃度等の各種作製条件を異ならせるものとした。一方、比較のために上記以外の構成、製造条件は共通させた。
実施例1及び2では、MgO前駆体からCL測定において短波長領域に発光ピークを有するMgO結晶粒子を作製し、MgO結晶粒子層を構成した。比較例4では、MgO前駆体からMgO結晶粒子層を構成する点で実施例1、2と共通するが、実施例よりも比較的低温(600℃)でMgO結晶粒子を構成した。
実施例1〜2、比較例1〜4の保護層の構成は表1に示す通りとした。表1の記載において、「蒸着法」とは電子線蒸着法、イオンプレーティング法等、公知の薄膜形成法を含む。
実験1;(放電遅れ時間の評価)
上記作製した各PDPについて、以下の方法で、データパルス印加時における放電遅れ時間を評価した。
各PDPにおける任意の1画素に、図3に示す初期化パルスを印加した後に、データパルスおよび走査パルスを繰り返し印加した。印加したデータパルスおよび走査パルスのパルス幅は、通常のPDP駆動時における5μsecよりも長い100μsecに設定した。データパルスおよび走査パルスを印加するごとに、パルスを印加してから放電が発生するまでの時間(放電遅れ時間)を500回測定し、測定した遅れ時間の最大値と最小値の平均を算出した。
遅れ時間は、放電に伴う蛍光体の発光を光センサーモジュール(浜松ホトニクス株式会社製、H6780‐20)により受光し、印加したパルス波形と受光信号波形とをデジタルオシロスコープ(横河電機製、DL9140)で観察した。
表1に、「放電遅れ」及び「放電遅れの温度依存性」の実験結果を示す。表1に示す測定値は、比較例1の放電遅れ時間を1として規格化した場合の各PDPの放電遅れ時間の相対値の結果である。この相対値が小さいほど、放電遅れ時間が短いことを示す。また、表中には、実施例1、2及び比較例1〜4の各々において、「放電遅れ」及び「放電遅れの温度依存性」の効果が最大限発揮された場合の数値を記載した。
実験2;(放電遅れ時間の温度依存性の評価)
各PDPについて、温度可変の恒温槽を用いて、‐5℃と25℃の放電の遅れ時間を実験1と同様にして評価した。
次に、‐5℃での放電遅れ時間と25℃での放電遅れ時間の比を各PDPについて求めた。
その結果を表1に記した。放電遅れ時間の比が1に近い方が、放電遅れの温度依存性が小さいことを示す。
実験3;(画面のちらつきの評価)
各PDPについて、低温(‐5℃)で白色画像を表示させ、その際の視覚評価により、表示される画像にちらつきが見られるかどうかを評価した。
以下の各実験条件と実験結果を表1に示す。
Figure 0004958900
(実験考察)
実施例1及び2のPDPは、各比較例1〜4のPDPと比べて、「放電遅れ」並びに「放電遅れの温度依存性」が少ない。また低温での画面のちらつきもみられないことがわかる。
比較例2、3は、放電遅れ時間、放電遅れの温度依存性は、比較例1と比べると小さいが、実施例1、2と比べると大きいことがわかる。これは、保護層がMgO結晶粒子で形成されているものの、そのMgO結晶粒子が気相酸化法で作製されたためである。比較例4は、形式的には真空蒸着法で作製されたMgO薄膜の上に、実施例1、2と同様に高純度のMg前駆体を熱処理して得たMgO結晶粒子層が配されている。しかし、前記熱処理の温度が600℃で比較的低いため、実施例に用いたMgO結晶粒子に比べ、結晶の成長が十分でなく、欠陥が多い。このため比較例4は、実施例1、2に比べてCL測定における短波長領域スペクトルが減少している。これは、放電に寄与する電子の放出が減少することを意味しており、放電遅れ時間の良化の効果が実施例に比べて小さく、且つ放電遅れの温度依存性はXeガス濃度によらず大きいと考えられる。比較例4については、さらに画面のちらつきも確認された。
これに対し各実施例を考察すると、CL測定において短波長領域に発光ピークを有するMgO結晶粒子層を単一層又は積層構造で有する実施例1、2は、良好な電子の放出性能を持ち、また温度依存性も小さい結果となった。この結果より各実施例はいずれも優れた特性を有していると言える。このような結果は、高純度のMg前駆体を750℃以上の温度で、熱処理(焼成)したために結晶学的に欠陥が少なく、CL測定において短波長領域に生じる発光ピークを発現する準位が形成されているために得られたものと考えられる。
次に、前述した図6(a)及び(b)の結果を考察する。これらの図は、700℃以上2000℃以下の焼成温度条件で焼成を行なって生成されたMgO結晶粒子のうち、短波長領域に相当程度の値を持つピークが確認された本願発明におけるMgO結晶粒子のみを選別して、スペクトル積分値の比率を測定したものである。
当該比率の算出方法は以下の通りである。まず、短波長と中波長の各スペクトルを、同一目盛のグラフ(横軸が波長、縦軸がピーク強度)に表示する。次に、横軸を等分割する。この等分割された所定の波長に対応するピーク強度の値の総和を算出する。このようにして算出された短波長領域における総和を、中波長領域における総和で割ることによって比率を算出した。
図6(a)、(b)に示されたデータによれば、実効的な放電遅れの抑制効果を得るためには、少なくとも比率が1以上であることが望ましいと解される。また、2.5倍以上で充分な効果が得られ、前記比率が5倍以上になると、マージンを含めて放電遅れが改善されることがわかる。
なお、今回の実験で測定された前記比率の上限は、71.2倍であった。
CL測定において、短波長領域のスペクトル最大値及び中波長領域のスペクトル最大値の比率と、放電遅れ時間との関係を図7(a)に示す。図7(b)は、前記比率が小さい領域において図7(a)を一部拡大したものである。放電遅れ時間は、表1の比較例1の遅れ時間を1として評価した。これらの図は、図6と同様に、700℃以上2000℃以下の焼成温度条件で焼成を行なって生成されたMgO結晶粒子のうち、短波長領域に相当程度の値を持つピークが確認された本願発明におけるMgO結晶粒子のみを選別して、スペクトル最大値の比率を測定したものである。当該比率は、短波長領域のスペクトルの最大値を中波長領域のスペクトルの最大値で割ることにより算出した。
当図に示されたデータでは、実効的な放電遅れの抑制効果は1以上で現れ始め、2倍以上で顕著になる。一方、前記比率が5倍以上になると改善効果が最大限発揮され、12倍以上で特性変動のマージンを含めて、安定な特性を得ることができる。なお、今回の実験で測定された前記比率の上限は、488倍であった。
なお、当該実験データは、MgO膜層81およびMgO結晶粒子層82の2層構造において、Xeガス濃度を100%とする条件に設定した。
本願発明者らの別の実験により、実施例1、2では放電遅れの温度依存性も放電遅れ時間と同様の挙動を示すことが明らかになった。
また、MgO膜層81およびMgO結晶粒子層82の2層構造においてXeガス濃度を15%とする条件、MgO結晶粒子層82の1層構造においてXeガス濃度を100%とする条件、MgO結晶粒子層82の1層構造においてXeガス濃度を15%とする条件においても、本願発明者らの別の実験により、MgO膜層81およびMgO結晶粒子層82の2層構造においてXeガス濃度を100%とする条件と同様の挙動を示すことが明らかになった。
次に、本発明のMgO結晶粒子を上記の製造方法“MgO結晶粒子形成ステップ”に従い、別個に68サンプル作製した。そして、これらの各サンプルNo.1〜68のいずれかを用いたPDPにおける放電遅れの発生を確認し、本発明の再現性をチェックした。
具体的には、まず1層構造のMgO保護層のみを持つ従来型PDPを比較例として作製した。そして当該比較例PDPにおける放電遅れを1とした。一方、前記MgO保護層の上に、サンプルNo.1〜68のいずれかのMgO結晶粒子を配設してなる実施例PDPを作製した。そして、各実施例PDPにおける放電遅れを比較例の放電遅れに対する比率として表した。
その結果を表2に示す。表中、「ピーク比」は、CL測定における短波長領域のスペクトル最大値/中波長領域のスペクトル最大値の比率を示す。
なお、No.1〜34のサンプルは、図7のスペクトル最大値の比率と放電遅れの関係をグラフ化する際に供したサンプル群である。
また、No.35〜68のサンプルは、図6のスペクトル積分値の比率と放電遅れの関係をグラフ化する際に供したサンプル群である。
Figure 0004958900
表2に示すように、本発明のサンプルNo.1〜68のいずれかのMgO結晶粒子を備える全てのPDPでは、比較例のPDPに対し、放電遅れ時間が短縮されているのが確認できる。この効果は、スペクトルにおけるピーク比に多少バラツキが見られる場合であっても、一様に得られることは確実であり、本願発明がその効果において極めて優れた再現性を有することが分かった。
以上の結果から、本発明の優位性が確認された。
(その他の事項)
実施の形態1では、誘電体層7の表面にMgO膜層81及びMgO結晶粒子層82を順次積層した保護層の構成を例示したが、本発明は当該構成に限定するものではない。ここで図8は、本発明の保護層8の構成のバリエーションを示す拡大断面図である。
図8(a)ではバリエーション1として、結晶粒子層82を構成するMgO結晶粒子群16は、各粒子の一部がMgO膜層81に埋設されるように配設されている。このような構成によっても、実施の形態1と略同様の効果が奏されるほか、MgO結晶粒子群16のMgO膜層81への吸着が増し、振動や衝撃に対しMgO結晶粒子群16がMgO膜層81から脱落することを防止できるという効果も奏されるので好適である。
一方、図8(b)ではバリエーション2として、保護層8はMgO結晶粒子層82のみで構成されており、誘電体層の表面に直接、MgO結晶粒子群16を分散させて構成されている。
この構成においても実施の形態1と同様の効果が奏される。また、MgO膜層81が不要であり、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子線蒸着法等を含む薄膜プロセスを行う必要がないので、工程がその分省略でき、製造コスト的にも大きなメリットがある。
なお、この構成においても実施の形態1と同様に、MgO結晶粒子が分布する領域の面積は、誘電体層の当該放電空間を臨む部分の面積よりも小さいのが好適である。すなわち、MgO結晶粒子群16は、誘電体層の全面に被覆されている必要はなく、誘電体層の上に島(island)の形態に形成するのが好適である。
本発明のPDPは、交通機関及び公共施設、家庭などにおけるテレビジョン装置及びコンピューターのディスプレイに用いられる表示装置等に利用することが可能である。
本発明の実施の形態1に係るPDPの構成を示す断面図である。 各電極とドライバとの関係を示す模式図である。 PDPの駆動波形例を示す図である。 CL測定における保護層の特性を示す図である。 放電遅れとMgO結晶粒子量との関係を示す図である。 放電遅れとCL測定における短波長領域及び中波長領域の各スペクトル積分値の比率との関係を示す図である。 放電遅れとCL測定における短波長領域及び中波長領域の各スペクトル最大値の比率との関係を示す図である。 保護層の構成のバリエーションを示す図である。 従来の一般的なPDPの構成を示す組図である。 高感度型の分光光度測定システムを用いた発光スペクトル解析の様子を模式的に示す図である。
符号の説明
1、1x PDP
2 フロントパネル
8 保護層
15 放電空間
16 MgO結晶粒子群
81 MgO膜層
82 MgO結晶粒子層

Claims (1)

  1. 第一基板に電極、誘電体層並びに保護層が順次形成され、前記保護層が放電空間に臨むように前記第一基板が第二基板に対向配置されたプラズマディスプレイパネルであって、
    前記保護層は、
    カソードルミネッセンスにおける200nm以上300nm未満の波長領域のスペクトル積分値をa、300nm以上550nm未満の波長領域のスペクトル積分値をbとするとき、
    比率a/bが2.5以上であるMgO結晶粒子を含む結晶粒子層を、少なくとも前記放電空間に臨む部分に有するプラズマディスプレイパネル
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