JP4958900B2 - プラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Description
図9は、一般的なAC型面放電PDPにおける放電単位である放電セル構造の模式的組図である。当図9に示すPDP1xはフロントパネル2及びバックパネル9を貼り合わせてなる。フロントパネル2は、パネルガラス3の片面に複数の表示電極対6(一対の走査電極5と維持電極4)が配置され、表示電極対6を覆うように誘電体層7および保護層8が順次積層されてなる。走査電極5(維持電極4)は透明電極51(41)及びバスライン52(42)で構成される。
保護層8は酸化マグネシウム(MgO)等からなり、上記誘電体層7及び表示電極対6をプラズマ放電のイオン衝突より保護すると共に、2次電子を効率よく放出し、放電開始電圧を低下させる役目をなす。通常、当該保護層8は真空蒸着法(特許文献7、8)や印刷法(特許文献9)で形成される。
ここで、PDPの放電特性は保護層の特性に大きく左右される。PDPの放電特性の向上を目的とした保護層の研究は広く行われているが、最も重視されている問題の一つとして放電遅れがある。
放電遅れの対策例としては、MgOにFe、Cr、V等の元素を添加したり、Si、Alを添加することによって、当該ドーパントにより保護層の放電特性を改善する試みが講じられている(特許文献1、2、4、5)。一方、誘電体層の上に直接、或いは薄膜法で作製したMgO膜上に対し、気相酸化法で作製したMgOの単結晶粒子を利用した粒子群をMgO結晶粒子層として配設することにより保護層表面における放電特性を改善する試みも行われている(特許文献3)。この方法によれば、低温時における放電遅れについては一定の改善が図られるとされている。
特許文献3には、気相酸化法で作製したMgO結晶粒子群(粉体)の粒径が大きいほど電子線励起発光(カソードルミネッセンス、以下「CL」と称する。)のスペクトルにおいて200nm以上300nm未満の波長領域(以下、当該波長領域を「短波長領域」という。)の波形高さが大きくなることが開示されている。一方、本願発明者らの検討によって、300nm以上550nm未満の波長領域(以下、当該波長領域を「中波長領域」という。)に存在する発光ピークの大きさが、PDPの放電遅れや放電遅れの発生にかかる温度依存性と相関があることを示す結果が得られている。
本発明は以上の課題に鑑みなされたものであって、保護層における放電特性を改善することにより、高精細セル構造においても優れた画像表示性能を発揮することが可能なPDPを提供することを目的とする。
なお、本発明において、前記結晶粒子層が放電空間に臨む面積は、前記第一基板が放電空間に臨む全面積よりも小さい構成とすることもできる。
<実施の形態1>
(PDPの構成例)
図1は、本発明の実施の形態1に係るPDP1のxz平面に沿った模式的な断面図である。当該PDPは保護層周辺の構成を除き、全体的には従来構成(図9)と同様である。
フロントパネル2の基板となるフロントパネルガラス3には、その一方の主面に所定の放電ギャップ(75μm)をおいて配設された一対の表示電極対6(走査電極5、維持電極4)が複数対にわたり形成されている。各表示電極対6は、ITO、ZnO、SnO2等の透明導電性材料からなる帯状の透明電極51、41(厚さ0.1μm、幅150μm)に対して、Ag厚膜(厚み2μm〜10μm)、Al薄膜(厚み0.1μm〜1μm)またはCr/Cu/Cr積層薄膜(厚み0.1μm〜1μm)等からなるバスライン52、42(厚さ7μm、幅95μm)が積層されてなる。このバスライン52、42によって透明電極51、41のシート抵抗が下げられる。
誘電体層7の表面には、保護層8が配設されている。当該保護層8は、本実施の形態1の特徴として、スパッタリング法、イオンプレーティング法、蒸着法等で作製したMgO膜層81及びMgO結晶粒子層82からなり、放電時のイオン衝撃から誘電体層7を保護し、放電開始電圧を低減させるため、耐スパッタ性及び2次電子放出係数γに優れる材料からなる。MgO結晶粒子層82は説明のため実際よりMgO結晶粒子群16を大きく表している。保護層8は、光学的に透明で電気絶縁性が高いことも要求される。
隔壁13の間は放電空間15であり、隣り合う一対の表示電極対6と1本のデータ電極11が放電空間15を挟んで交叉する領域が、画像表示にかかるセル(「サブピクセル」とも言う)に対応する。セルピッチはx方向が675μm、y方向が300μmである。隣り合うRGBの各色に対応する3つのセルで1画素(675μm×900μm)が構成される。
(PDPの駆動例)
上記構成のPDP1は前記各ドライバ111〜113を含む公知の駆動回路(不図示)によって、各表示電極対6の間隙に数十kHz〜数百kHzのAC電圧が印加されることにより、任意の放電セル内で放電を発生させ、励起されたXe原子からの紫外線によって蛍光体層14を励起し、可視光発光するように駆動される。
ここで図3は、フィールド中の第m番目のサブフィールドにおける駆動波形例である。フィールド中の第m番目のサブフィールドの駆動波形図3が示すように、各サブフィールドには、初期化期間、アドレス期間、放電維持期間、消去期間がそれぞれ割り当てられる。
(保護層8について)
本実施の形態1の特徴は、PDP1における保護層8の構成にある。本実施の形態1における保護層8は、誘電体層7上に設けられたMgO膜層81と、当該MgO膜層81上に配設されたMgO結晶粒子群16からなるMgO結晶粒子層82で構成される。MgO膜層81の厚みは0.3μm以上1μm以下である。
MgO結晶粒子群16は、MgO前駆体焼成による作製方法によれば、後述する従来の気相酸化法で作製されたMgO結晶粒子群(例えば特開2006‐147417号公報)に比べて粒径のバラツキを抑制できるため、各MgO結晶粒子にわたり、均一な放電特性を発揮できる特徴も有している。
MgO結晶粒子群16を用いた場合に得られるその他の効果として、パルス依存性の改善が挙げられる。フィールド内示分割表示方式では、各電極6、11に対してサブフィールド毎に繰り返し無数のパルスを高速で印加するが、この場合、1のサブフィールドにおいて印加したパルスの放電履歴が、次のサブフィールドにおける放電に影響を及ぼす性質がある。
さらに「スペクトル積分値」とは、所定の波長領域における発光分布を波長で積分した値である。
(CL測定結果より考察される保護層特性について)
本発明のPDPが有するMgO結晶粒子群16の特性は、CLの測定結果により、上記第一の定義とすることが可能である。
一般にMgOについてのCL測定では、短波長領域に加えて中波長領域に発光ピークが観測される(たとえば特許文献3)。
ここで、従来の気相酸化法は、例えば特許文献3に示されるように、Mg(マグネシウム金属)を不活性ガスが満たされた槽中で、高温に加熱しながら酸素ガスを少量流し、Mgを直接酸化させてMgO結晶粒子群(粉体)を作製する合成方法である。従って十分に酸素がMgO中に取り込まれにくいため、酸素欠陥が生じやすいMgO結晶粒子群(粉体)になる。
ここで、オージェ遷移とは励起された電子のエネルギーが緩和する際に発生する余剰エネルギーを他の電子が受け取り、その電子が励起されるという電子の励起過程の一種である。このオージェ遷移によって励起され放出する電子も、他の過程で放出された電子と同様にPDPの放電に寄与すると考えられ、このことも短波長領域で測定される発光ピークを有するMgO結晶粒子群の層を、前記前面板の放電空間側の全面あるいは一部に形成したPDPの放電特性が優れている要因の一つであると考えられる。
逆に、中波長領域で大きな発光ピークが存在することは、コンダクションバンド近傍の準位に存在する電子が小さなエネルギー緩和で遷移することを促すため、上記の5eV程度という大きな余剰エネルギーを創出する電子の遷移が起こりにくくなり、上記で述べたオージェ遷移等による電子放出もほとんど見られなくなることが予想される。
一方、本実施の形態1においては、MgO前駆体を焼成して得たMgO結晶粒子群16についてCL測定を行った場合、スペクトルの短波長領域において相当程度の値を持ち、ピーク状の波形をなす隆起状波形部が確認される。このような特性の隆起状波形部は、従来の気相酸化法等により作製されたMgO結晶粒子には見られない。よって当該隆起状波形部の有無は本願特有のものと言え、PDPの放電遅れ及び放電遅れの温度依存性について抑制効果を呈するか否かを確認する場合の指標となりうる。
第二の定義として、前記MgO結晶粒子群16に含まれるMgO結晶粒子は、CL測定における200nm以上300nm未満の波長領域におけるスペクトル最大値をd、300nm以上550nm未満の波長領域におけるスペクトル最大値をeとするとき、比率d/eが2以上である特性を有するものとすることができる。
なお、第一の定義において、短波長領域におけるスペクトル積分値は、対象とする波長領域のスペクトル積分値に比べて、さらに2.5倍、5倍、或いは20倍以上の大きさを有することが同順に好適であると考えられる。
また、第二の定義においても、同様の理由からスペクトル最大値の大きさが対象とする波長領域のスペクトル積分値に比べて、さらに5倍、或いは12倍以上の大きさを有することが同順に好適であると考えられる。
なお、前記スペクトル積分値及び前記スペクトル最大値の比率の上限は、今回の実験で用いたCL測定装置の測定限界(測定されるスペクトルのサチュレーションによる限界)を考慮すると、いずれも1000倍程度である。
以下、PDP1の製造方法例について説明する。
(フロントパネルの作製ステップ)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるフロントパネルガラスの面上に、表示電極を作製する。ここでは印刷法によって表示電極を形成する例を示すが、これ以外にもダイコート法、ブレードコート法等で形成することができる。
一方、Ag粉末と有機ビヒクルに感光性樹脂(光分解性樹脂)を混合してなる感光性ペーストを調整し、これを前記透明電極材料の上に重ねて塗布し、形成する表示電極のパターンを有するマスクで覆う。そして、当該マスク上から露光し、現像工程を経て、590〜600℃程度の焼成温度で焼成する。これにより透明電極上にバスラインが形成される。このフォトマスク法によれば、従来は100μmの線幅が限界とされていたスクリーン印刷法に比べ、30μm程度の線幅までバスラインを細線化することが可能である。バスラインの金属材料としては、Agの他にPt、Au、Al、Ni、Cr、また酸化錫、酸化インジウム等を用いることができる。バスラインは上記方法以外にも、蒸着法、スパッタリング法などで電極材料を成膜したのち、エッチング処理して形成することも可能である。
(保護層形成ステップ)
続いて誘電体層の表面に、所定の厚みのMgO膜層81を蒸着法を用いて成膜する。MgO膜層81の成膜方法は従来のMgO層の成膜方法と同様である。蒸着源としては、例えばペレット状、粉末状のMgOを用いる。酸素雰囲気中において、ピアス式電子ビームガンを加熱源として、上記蒸着源を加熱し所望の膜を形成する。ここで、成膜時の電子ビーム電流量、酸素分圧量、基板温度等は成膜後の保護層の組成には大きな影響を及ぼさないため、任意設定で構わない。なおMgO膜層81の成膜方法としては、上記EB法に限定するものではなく、その他の方法、例えばスパッタ法、イオンプレーティング法等、各種薄膜法を利用してもよい。
MgO結晶粒子層82に用いる前記所定のMgO結晶粒子は、以下に例示するようにMgO結晶粒子形成ステップにおいて、MgO前駆体を700℃以上2000℃未満の高温で均一に熱処理(焼成)し、カソードルミネッセンスにおける200nm以上300nm未満の波長領域のスペクトル積分値をa、300nm以上550nm未満の波長領域のスペクトル積分値をbとするとき、比率a/bが1以上であるという特性を持つMgO結晶粒子が得られる。
さらに、MgO結晶粒子の結晶体構造が単結晶構造体であれば、欠陥が減少するので、上記の効果が更に顕著となる。
したがって、「カソードルミネッセンスにおける200nm以上300nm未満の波長領域のスペクトル積分値をa、300nm以上550nm未満の波長領域のスペクトル積分値をbとするとき、比率a/bが1以上である」という特性を持つMgO結晶粒子の生成頻度を上げるためには、700℃以上1400℃未満の焼成温度が好ましい。
また、本発明では、これら2種類のMgO微粒子はいずれも300nm以上4μm以内の平均粒径の粒度分布を有しているが、一度の焼成工程によって焼成されるサンプル中では、各種のMgO粒子における平均粒径のピーク値が互いに分離しており、前記選別工程も十分に実用的であることが発明者らの実験により明らかになっている。
(1)出発原料として、純度99.95%以上のマグネシウムアルコキシド(Mg(OR)2)sやマグネシウムアセチルアセトンMg(acac)2を準備する。この水溶液に少量の酸を加えて加水分解し、MgO前駆体としてMg(OH)2のゲル状の沈殿物を作製する。その後Mg(OH)2を水溶液から分離し、空気中で750℃以上で焼成して脱水し、MgO結晶粒子を作製する。
(3)純度99.95%以上の塩化マグネシウム(MgCl2)を出発原料とし、この水溶液にアルカリ溶液を添加することによって加水分解し、MgO前駆体としてMg(OH)2のゲル状の沈殿物を作製する。その後Mg(OH)2を水溶液から分離し、空気中で750℃以上で焼成することによって脱水し、MgO結晶粒子を作製する。
なお、従来の気相酸化法で作製されたMgO結晶粒子群は、粒径に比較的バラツキがある。このため、均一な放電特性を得るために一定の粒径範囲の粒子を選別する分級工程が必要である(例えば特開2006‐147417号公報)。これに対し、本発明において上記MgO前駆体を焼成してなるMgO結晶粒子群は、従来よりも粒径が均一且つ一定の粒径を有している。このため、場合によっては不要な微細粒子を分級工程で振り分ける工程が省略でき、製造効率及びコストの面で非常に有利である。
(バックパネルの作製ステップ)
厚さ約2.6mmのソーダライムガラスからなるバックパネルガラスの表面上に、スクリーン印刷法によりAgを主成分とする導電体材料を一定間隔でストライプ状に塗布し、厚さ約5μmのデータ電極を形成する。データ電極11の電極材料としては、Ag、Al、Ni、Pt、Cr、Cu、Pd等の金属や、各種金属の炭化物や窒化物等の導電性セラミックスなどの材料やこれらの組み合わせ、あるいはそれらを積層して形成される積層電極も必要に応じて使用できる。
ここで、作製するPDP1を例えば40インチクラスのNTSC規格もしくはVGA規格とするためには、隣り合う2つのデータ電極の間隔を0.4mm程度以下に設定する。
次に、誘電体層12面上に隔壁13を形成する。具体的には低融点ガラス材料ペーストを塗布し、サンドブラスト法やフォトリソグラフィ法を用い、隣接放電セル(図示省略)との境界周囲を仕切るように、放電セルの複数個の配列を行および列を仕切る井桁形状のパターンで形成する。
RGB各色蛍光の化学組成例は以下の通りである。
赤色蛍光体;Y2O3;Eu3+
緑色蛍光体;Zn2SiO4:Mn
青色蛍光体;BaMgAl10O17:Eu2+
各蛍光体材料は、平均粒径2.0μmのものが好適である。これをサーバー内に50質量%の割合で入れ、エチルセルローズ1.0質量%、溶剤(α‐ターピネオール)49質量%を投入し、サンドミルで撹拌混合して、15×10-3Pa・sの蛍光体インクを作製する。そして、これをポンプにて径60μmのノズルから隔壁13間に噴射させて塗布する。このとき、パネルを隔壁20の長手方向に移動させ、ストライプ状に蛍光体インクを塗布する。その後は500℃で10分間焼成し、蛍光体層14を形成する。
なお上記方法例ではフロントパネルガラス3およびバックパネルガラス10をソーダライムガラスからなるものとしたが、これは材料の一例として挙げたものであって、これ以外の材料で構成してもよい。
(PDPの完成)
作製したフロントパネル2とバックパネル9を、前記作製した保護層8が放電空間15に臨むように対向配置させ(配置ステップ)、これらを封着用ガラスを用いて貼り合わせる。その後、放電空間の内部を高真空(1.0×10-4Pa)程度に排気し、これに所定の圧力(ここでは66.5kPa〜101kPa)でNe‐Xe系やHe‐Ne‐Xe系、Ne‐Xe‐Ar系等の放電ガスを封入する。
(性能確認実験)
図4(a)に、実施例のMgO保護層(実施例)と従来構成の気相酸化法で作製したMgO保護層(比較例)の構成をなすMgO結晶粒子についてのCL測定の結果を示す。図4(b)は前記結果の部分拡大図である。各保護層は基板上に単体で作製してCL測定した。グラフの縦軸及び横軸はそれぞれ、発光強度(実施例の短波長領域におけるスペクトル最大値で規格化した相対強度)及び波長(nm)を示している。当図に示すデータは、MgO結晶粒子をPDPの保護層に利用する前の状態(粉体状態)で測定して得たものである。
図4(b)に示すように、中波長領域のスペクトル最大値及びスペクトル積分値は実施例と比較例とでは同程度であるが、短波長領域については図4(a)に示すように、スペクトル最大値及びスペクトル積分値について、いずれも実施例が比較例10倍以上であり、圧倒的に大きい。
なお、中波長領域におけるスペクトル最大値及びスペクトル積分値の大きさは、別の実験により、PDPの放電遅れや放電遅れの温度依存性と比例関係にあると考えられている。
このような結果が得られた直接的な原因は不明であるが、比較例では実施例に比べ、MgOの粒径にバラツキがあり、微細なMgO結晶粒子が混在している。このため上記結果の原因として、実施例の粒子の電子放出能力が高いことや、比較例では電子放出に寄与する粒子の割合が小さいこと等が挙げられる。
<性能比較実験>
次に、保護層以外の構成を共通とする実施例および比較例のPDPをそれぞれ作製し、放電遅れ時間と画面ちらつき等の各性能について調査した。
実施例1及び2では、MgO前駆体からCL測定において短波長領域に発光ピークを有するMgO結晶粒子を作製し、MgO結晶粒子層を構成した。比較例4では、MgO前駆体からMgO結晶粒子層を構成する点で実施例1、2と共通するが、実施例よりも比較的低温(600℃)でMgO結晶粒子を構成した。
実験1;(放電遅れ時間の評価)
上記作製した各PDPについて、以下の方法で、データパルス印加時における放電遅れ時間を評価した。
表1に、「放電遅れ」及び「放電遅れの温度依存性」の実験結果を示す。表1に示す測定値は、比較例1の放電遅れ時間を1として規格化した場合の各PDPの放電遅れ時間の相対値の結果である。この相対値が小さいほど、放電遅れ時間が短いことを示す。また、表中には、実施例1、2及び比較例1〜4の各々において、「放電遅れ」及び「放電遅れの温度依存性」の効果が最大限発揮された場合の数値を記載した。
各PDPについて、温度可変の恒温槽を用いて、‐5℃と25℃の放電の遅れ時間を実験1と同様にして評価した。
次に、‐5℃での放電遅れ時間と25℃での放電遅れ時間の比を各PDPについて求めた。
実験3;(画面のちらつきの評価)
各PDPについて、低温(‐5℃)で白色画像を表示させ、その際の視覚評価により、表示される画像にちらつきが見られるかどうかを評価した。
実施例1及び2のPDPは、各比較例1〜4のPDPと比べて、「放電遅れ」並びに「放電遅れの温度依存性」が少ない。また低温での画面のちらつきもみられないことがわかる。
比較例2、3は、放電遅れ時間、放電遅れの温度依存性は、比較例1と比べると小さいが、実施例1、2と比べると大きいことがわかる。これは、保護層がMgO結晶粒子で形成されているものの、そのMgO結晶粒子が気相酸化法で作製されたためである。比較例4は、形式的には真空蒸着法で作製されたMgO薄膜の上に、実施例1、2と同様に高純度のMg前駆体を熱処理して得たMgO結晶粒子層が配されている。しかし、前記熱処理の温度が600℃で比較的低いため、実施例に用いたMgO結晶粒子に比べ、結晶の成長が十分でなく、欠陥が多い。このため比較例4は、実施例1、2に比べてCL測定における短波長領域スペクトルが減少している。これは、放電に寄与する電子の放出が減少することを意味しており、放電遅れ時間の良化の効果が実施例に比べて小さく、且つ放電遅れの温度依存性はXeガス濃度によらず大きいと考えられる。比較例4については、さらに画面のちらつきも確認された。
当該比率の算出方法は以下の通りである。まず、短波長と中波長の各スペクトルを、同一目盛のグラフ(横軸が波長、縦軸がピーク強度)に表示する。次に、横軸を等分割する。この等分割された所定の波長に対応するピーク強度の値の総和を算出する。このようにして算出された短波長領域における総和を、中波長領域における総和で割ることによって比率を算出した。
なお、今回の実験で測定された前記比率の上限は、71.2倍であった。
なお、当該実験データは、MgO膜層81およびMgO結晶粒子層82の2層構造において、Xeガス濃度を100%とする条件に設定した。
また、MgO膜層81およびMgO結晶粒子層82の2層構造においてXeガス濃度を15%とする条件、MgO結晶粒子層82の1層構造においてXeガス濃度を100%とする条件、MgO結晶粒子層82の1層構造においてXeガス濃度を15%とする条件においても、本願発明者らの別の実験により、MgO膜層81およびMgO結晶粒子層82の2層構造においてXeガス濃度を100%とする条件と同様の挙動を示すことが明らかになった。
具体的には、まず1層構造のMgO保護層のみを持つ従来型PDPを比較例として作製した。そして当該比較例PDPにおける放電遅れを1とした。一方、前記MgO保護層の上に、サンプルNo.1〜68のいずれかのMgO結晶粒子を配設してなる実施例PDPを作製した。そして、各実施例PDPにおける放電遅れを比較例の放電遅れに対する比率として表した。
なお、No.1〜34のサンプルは、図7のスペクトル最大値の比率と放電遅れの関係をグラフ化する際に供したサンプル群である。
また、No.35〜68のサンプルは、図6のスペクトル積分値の比率と放電遅れの関係をグラフ化する際に供したサンプル群である。
以上の結果から、本発明の優位性が確認された。
実施の形態1では、誘電体層7の表面にMgO膜層81及びMgO結晶粒子層82を順次積層した保護層の構成を例示したが、本発明は当該構成に限定するものではない。ここで図8は、本発明の保護層8の構成のバリエーションを示す拡大断面図である。
図8(a)ではバリエーション1として、結晶粒子層82を構成するMgO結晶粒子群16は、各粒子の一部がMgO膜層81に埋設されるように配設されている。このような構成によっても、実施の形態1と略同様の効果が奏されるほか、MgO結晶粒子群16のMgO膜層81への吸着が増し、振動や衝撃に対しMgO結晶粒子群16がMgO膜層81から脱落することを防止できるという効果も奏されるので好適である。
この構成においても実施の形態1と同様の効果が奏される。また、MgO膜層81が不要であり、スパッタリング法、イオンプレーティング法、電子線蒸着法等を含む薄膜プロセスを行う必要がないので、工程がその分省略でき、製造コスト的にも大きなメリットがある。
2 フロントパネル
8 保護層
15 放電空間
16 MgO結晶粒子群
81 MgO膜層
82 MgO結晶粒子層
Claims (1)
- 第一基板に電極、誘電体層並びに保護層が順次形成され、前記保護層が放電空間に臨むように前記第一基板が第二基板に対向配置されたプラズマディスプレイパネルであって、
前記保護層は、
カソードルミネッセンスにおける200nm以上300nm未満の波長領域のスペクトル積分値をa、300nm以上550nm未満の波長領域のスペクトル積分値をbとするとき、
比率a/bが2.5以上であるMgO結晶粒子を含む結晶粒子層を、少なくとも前記放電空間に臨む部分に有するプラズマディスプレイパネル。
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