JP4958751B2 - ポリプロピレン樹脂組成物、それを用いた灯体、その灯体の製造方法 - Google Patents

ポリプロピレン樹脂組成物、それを用いた灯体、その灯体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリプロピレン樹脂組成物、それを用いた灯体、その灯体の製造方法に関し、詳しくは、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、スチレン系樹脂などのレンズ部品との熱溶着特性に優れたポリプロピレン樹脂組成物、それを用いた灯体、その灯体の製造方法に関する。
自動車の車両灯具の外筐体部分は、一般に合成樹脂製ランプハウジングの前面開口部を覆って合成樹脂製レンズが装着された構造をなし、ランプハウジングとレンズとによって囲まれた灯室の中に光源が設置されている。灯具として完成するためには、ハウジング部分に使用される樹脂とレンズ部分に使用される樹脂を、確実に接着させることが重要である。従来から、レンズ部分としてポリメチルメタクリレート(PMMA)を使用し、ランプハウジング部分としてアクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン樹脂(AAS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)を使用する組み合わせが用いられてきていた。かかる組み合わせは、熱板溶着、振動溶着などの融着方法に適応性が高く、接着面の美観に優れ、接着強度も高い。
しかしながら、AAS、ABSは、流動性が十分でなく、昨今のデザインの多様化にあっては成形不良が多発する問題を抱えていた。さらに、AAS、ABSは、耐熱性にも問題があり、ランプの発熱部品からの輻射及び伝導によって、変形、変色、劣化が生じやすく、雨水の混入などの不具合が発生していた。
一方、かかる課題を解決するためポリプロピレンを主体にした材料が検討されている。ポリプロピレン(PP)とPMMAレンズとをホットメルト接着剤、粘着テープを介して接着する方法が知られている。かかる方法では、レンズ面から接着剤、粘着テープが透視でき意匠性を損なう問題があった。
また、レンズとポリプロピレンハウジングとをABS樹脂を介して振動溶着等により接着する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)が、ABSの耐熱性に問題があって、長期使用では溶着部分での変形、変色、劣化の問題を解消するには到っていない。さらに、レンズを非晶性ポリオレフィンとし、ハウジングをポリオレフィンとして、熱板或いは高周波溶着によって接着する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、かかる発明では接着強度は、充分とはいえないものであった。さらに、ランプハウジング部品に適したポリプロピレン材料として、ポリプロピレン重合体とPMMAなどの極性重合体とメタクリルエステルで変性されたポリオレフィンからなる組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照。)が、かかる提案は、PPが有する優れた流動性を損なうものであり、要求に十分応える材料ではなかった。
これに対して、本発明者らは、ポリプロピレン樹脂とスチレン系エラストマーとポリカーボネート樹脂とからなる樹脂組成物が、レンズ部品との溶着特性に優れ、かつ寸法安定性が樹脂製レンズ部品と同程度になることを見出している(例えば、特許文献4参照。)。しかし、かかる樹脂組成物は、構成成分同士の相溶性に欠け、成形品にデラミ(層間剥離)が発生し外観不良になる問題を抱えていた。
特開平10−302512号公報 特開平11−273413号公報 特開平5−43753号公報 特開2005−324347号公報
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、耐熱性に優れ、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、環状オレフィン重合体樹脂等との溶着性、成形品にしたときの表面外観に優れるポリプロピレン樹脂組成物及び該ポリプロピレン樹脂組成物からのランプハウジング部品を用いた灯体、その灯体の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、接合する2つの樹脂部材の相溶性を向上させることで溶着強度が高まることを見出し、本発明を完成させた。
具体的には、ポリプロピレン樹脂に、特定のジエン系ゴム質重合体と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、芳香族ビニル系単量体および/またはシアン化ビニル系単量体から構成されるグラフト共重合体と、特定量のスチレン系エラストマーとを配合することにより溶着強度の向上が図れるプロピレン系樹脂組成物を成形してなるプロピレン系樹脂材が、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、スチレン系樹脂からなる樹脂材に容易に熱溶着し、溶着強度に優れた成形品(灯体)が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリプロピレン樹脂(A)50〜85質量%、ジエン系ゴム質重合体(b−1)5〜80質量%と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体20〜90質量%(b−2)と芳香族ビニル系単量体および/またはシアン化ビニル系単量体(b−3)60〜5質量%から構成されるグラフト共重合体(B)0質量%より大きく45質量%以下、並びにスチレン系エラストマー(C)5〜45質量%を含有するランプハウジング用のポリプロピレン樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、ポリプロピレン樹脂(A)50〜85質量%、ジエン系ゴム質重合体(b−1)5〜80質量%と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体20〜90質量%(b−2)と芳香族ビニル系単量体および/またはシアン化ビニル系単量体(b−3)60〜5質量%から構成されるグラフト共重合体(B)0質量%より大きく45質量%以下、並びにスチレン系エラストマー(C)5〜45質量%を含有するポリプロピレン樹脂組成物からなるランプハウジング部品と、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、又はスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の透明樹脂からなるレンズ部品を接合してなることを特徴とする灯体が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第の発明において、プロピレン樹脂組成物の線膨張係数(単位:cm/cm・℃)が、5×10−5〜13×10−5であることを特徴とする灯体が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第2又は3の発明において、スチレン系エラストマーが、スチレン−エチレン・ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体あるいはスチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体であることを特徴とする灯体が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第2〜4のいずれかの発明において、ポリプロピレン樹脂組成物が、さらに、ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して、無機充填剤を1〜400重量部含有することを特徴とする灯体が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、ポリプロピレン樹脂(A)50〜85質量%、ジエン系ゴム質重合体(b−1)5〜80質量%と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体20〜90質量%(b−2)と芳香族ビニル系単量体および/またはシアン化ビニル系単量体(b−3)60〜5質量%から構成されるグラフト共重合体(B)0質量%より大きく45質量%以下、スチレン系エラストマー(C)5〜45質量%を含有するポリプロピレン樹脂組成物からランプハウジング部品を成形する工程と、前記ランプハウジング部品とポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、又はスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の透明樹脂からなるレンズ部品と溶着する工程を含むことを特徴とする灯体の製造方法が提供される。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、耐熱性と寸法安定性のバランスに優れ、安価でしかもリサイクル性にも優れ、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、スチレン系樹脂等と熱溶着性に優れる樹脂組成物である。さらに、表層剥離が抑えられ、外観が良好な成形品が得られる。したがって、該ポリプロピレン樹脂組成物を用いたランプハウジング部品は、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、スチレン系樹脂等の透明樹脂をレンズ部品と容易に熱溶着することができ、各種工業部材、特に自動車用部材として好適に用いることができる。
本発明は、ポリプロピレン樹脂、グラフト共重合体、及びスチレン系エラストマーと、必要に応じて、無機フィラーを含有するポリプロピレン樹脂組成物、好ましくはランプハウジング部品用のポリプロピレン樹脂組成物である。また、本発明は、前記ポリプロピレン樹脂組成物からなるランプハウジング部品とポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、スチレン系樹脂等の透明樹脂からなるレンズ部品とを熱溶着することにより接合してなる灯体である。
以下に、各構成成分、樹脂組成物の物性、製法、及びそれを用いた成形体等について詳細に説明する。
[I]ポリプロピレン樹脂組成物
1.構成成分
(1)ポリプロピレン樹脂(A)
本発明で用いるポリプロピレン樹脂(A)は、その種類に特に制限はなく、プロピレン単独重合体、プロピレンブロック共重合体やプロピレンランダム共重合体等のいずれのものでも使用することができる。
上記プロピレンランダム共重合体としては、例えば、プロピレンとα−オレフィンを共重合してなる結晶性ポリプロピレン樹脂が挙げられる。α−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、2−メチルペンテン−1等から選ばれる一以上のα−オレフィンが挙げられる。
上記プロピレンブロック共重合体としては、例えば、プロピレンを重合又はプロピレンと少量のα−オレフィンを共重合してなる結晶性ポリプロピレン成分と、プロピレンとα−オレフィンとを共重合してなる低結晶性若しくは非晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体成分とから構成されたポリプロピレン樹脂が挙げられる。α−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、2−メチルペンテン−1等から選ばれる一以上のα−オレフィンが挙げられる。低結晶性若しくは非晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体成分におけるα−オレフィンは、エチレンが好ましく、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、2−メチルペンテン−1等から選ばれる一以上のα−オレフィンが共重合されていてもよい。
本発明で用いるポリプロピレン樹脂は、メルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分の範囲にあるものが好適である。MFRが0.1g/10分未満では成形性が不十分となる不都合があり、100g/10分を超えると耐衝撃性等の機械的強度が低下することがある。より好ましいMFRの下限値は1g/10分、さらに好ましくは5g/10分である。より好ましいMFRの上限値は50g/10分、さらに好ましくは30g/10分である。
なお、MFRは、JIS K7210に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定する値である。
なお、これらポリプロピレン樹脂の入手方法は、市販の樹脂を利用するほか、各種公知のプロピレン重合用触媒を用いて公知の重合方法によって製造されたものが利用できる。
(2)グラフト重合体(B)
本発明に用いられるグラフト重合体(B)は、ジエン系ゴム質重合体(b−1)の存在下に、不飽和カルボン酸エステル系単量体(b−2)、芳香族ビニル系単量体および/またはシアン化ビニル系単量体(b−3)をグラフト重合することにより得ることができる。その際のグラフト重合方法については特に制限はなく、公知の乳化重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合またはそれらの組合せた方法により得ることができる。
本発明のグラフト重合体に用いられるジエン系ゴム質重合体(b−1)としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンブロック又はランダム共重合体、スチレン−イソプレンブロック又はランダム共重合ゴム、ブチルゴムが例示され、単独または2種以上混合して使用することができる。これらのうち、特にポリブタジエン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ランダム共重合体(特にスチレン含有量5〜50質量%のもの)が好ましい。これらのジエン系ゴム質重合体の製造方法には特に制限がなく、例えば公知の乳化重合あるいはバルク重合法等により得ることができる。また、使用するジエン系ゴム質重合体の数平均粒子径についても特に制限はないが、0.05〜10μmの範囲内であることが好ましく、さらには0.1〜5μmの範囲内であることが特に好ましい。
本発明のグラフト重合体に用いられる不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体(b−2)としては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸n−ノニル、アクリル酸イソノニルなどを例示することができ、単独または2種以上混合して使用することができる。特にメタクリル酸メチルが好ましい。
また、芳香族ビニル系単量体(b−3)としては、スチレン、α−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ο−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどが例示され、単独または2種以上混合して使用することができる。これらのうち、特にスチレンが好ましい。一方、シアン化ビニル系単量体(b−3)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロロアクリロニトリルが例示され、単独または2種以上混合して使用することができる。これらのうち、特にアクリロニトリルが好ましい。
上記各単量体の構成比率は、ジエン系ゴム質重合体(b−1)5〜80質量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体(b−2)20〜90質量%、芳香族ビニル系単量体および/またはシアン化ビニル単量体(b−3)60〜5質量%であり、かかる範囲以外では樹脂成形体の制振性と剛性のバランスが低下するため好ましくない。より好ましくは、ジエン系ゴム質重合体(b−1)10〜80質量%、不飽和カルボン酸エステル単量体(b−2)30〜80質量%、芳香族ビニル系単量体及び/またはシアン化ビニル単量体(b−3)50〜10質量%である。
(3)スチレン系エラストマー(C)
本発明に用いるスチレン系エラストマー(C)は、ポリプロピレン樹脂中に細かく分散するため、プロピレン系樹脂成形品表層付近にも均一に存在し、灯体の形成における熱溶着に際してレンズ部品とプロピレン樹脂組成物との界面において優れた溶着効果を生ずると考えられる。さらに、ポリプロピレン樹脂とグラフト共重合体との相溶化剤としての機能も有するため、剛性など機械強度の低下を抑えることができる。
当該スチレン系エラストマーとしては、下記一般式(1)で表される構造を有するスチレンとブタジエンのブロック共重合体の水素添加物からなるエラストマーである。
A−B 又は、A−B−A …(1)
(但し、Aはポリスチレン構造セグメントを示し、Bはエチレン・ブテン又はエチレン・プロピレンの構造セグメントを示す)
上記Aポリスチレン構造セグメントの量は、40〜80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは下限値が45質量%である。下限値を下回ると灯体の形成におけるレンズ部品との溶着強度が低下するという不都合が生じる場合がある。好ましい上限値は75質量%、より好ましくは70質量%である。この値を上回るとポリプロピレン樹脂との相容性が低下するという不都合が生じる場合がある。
なお、ポリスチレン構造セグメント量は、赤外スペクトル分析法、13C−NMR法などの常法によって算出される値である。
また、Aセグメントの数平均分子量は、5,000〜200,000(A−B−Aの場合は、二つのAの合計が5,000〜200,000)が好ましく、Bセグメントの数平均分子量は、5,000〜200,000が好ましい。さらに、ブロック共重合体全体の数平均分子量は、10,000〜400,000が好ましい。Aセグメントの数平均分子量が5,000未満の場合やBセグメントの数平均分子量が5,000未満の場合は機械的性質が不十分となる傾向があり、Aセグメントの数平均分子量が200,000を超える場合やBセグメントの数平均分子量が200,000を超える場合は成形加工性が低下する傾向がある。さらに、ブロック共重合体全体の数平均分子量が10,000未満では機械的性質が劣り、400,000を超えると成形加工性が低下する場合がある。
スチレン系エラストマーのMFRは、好ましくは0.1〜100g/10分であり、より好ましくは下限値が1g/10分,さらに好ましくは5g/10分である。下限値を下回るとエラストマーの分散性が低下するために溶着が不十分となる。上限値はより好ましくは50g/10分,更に好ましくは30g/10分である。上限値を超えると機械的強度が低下する不都合が生じる。
なお、MFRは、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定する値である。
スチレン系エラストマーの具体例としては、スチレン−エチレン・ブタジエン共重合体(SEB)、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン−エチレン・ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体(SBBS)、部分水添スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、部分水添スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体等を挙げることができ、この中でも好ましいものは、SEBS、SEPSあるいはSBBSである。スチレン系エラストマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらスチレン系エラストマーは、エポキシ変性されたもの等が用いられる場合もあるが、変性されて反応性が高められたものは、例えば混練中に好ましくない副反応を起こすおそれがあるなど取り扱いに難がある。また臭い面でも問題がある。さらにはコスト面からも不利であり、何も変性されていないものを用いることが好ましい。
(4)無機フィラー
本発明で用いるポリプロピレン樹脂組成物には、必要に応じて、さらに無機フィラーを配合することができる。無機フィラーとしては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、天然マイカ、合成マイカ、ワラストナイト、及びモンモリロナイト等を挙げることができる。これらの無機フィラーの中では、タルク、炭酸カルシウムが好適に用いられる。無機フィラーを配合することで、寸法安定性の向上が期待できる。
また、本発明で使用される無機フィラーは、レーザー回折法によって測定した平均粒径が10μm以下、好ましくは0.5〜8μmである。平均粒径が10μm以下であれば寸法安定性をそこなわず、好ましい。
(5)その他の成分
本発明のポリプロピレン樹脂組成物には、上述した成分の他に、さらに本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、その他の成分が配合されていてもよい。この様な配合成分としては、顔料、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、帯電防止剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、紫外線吸収剤、有機アルミニウム化合物・燐酸エステル化合物等の各種造核剤、有機過酸化物、分散剤、中和剤、発泡剤、銅害防止剤、滑剤、難燃剤、カーボンブラック、ビニルエステル、カーボンナノチューブ、フラーレン、塗装改質剤、カップリング剤等を挙げることができる。
さらに、本発明で用いるポリプロピレン樹脂組成物には、ポリプロピレン樹脂組成物の性質を補足する他の樹脂、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体のような、各種ブレンド用高分子材料、鉱油、テルペン、クマロン樹脂のような、天然樹脂、天然ゴム、共役ジエン系ゴム、アクリロニトリル系ゴム、クロロプレン系ゴム、ブチルゴムなどの天然又は合成ゴムのような、いわゆる高分子可塑剤又は加工助剤として機能するもの、あるいは耐衝撃性改良に機能する、各種高分子材料を併用することもできる。
2.構成成分の配合割合
ポリプロピレン樹脂(A)、グラフト共重合体(B)、及びスチレン系エラストマー(C)の配合割合は、ポリプロピレン樹脂が50〜85質量%、グラフト共重合体が0より大きく45質量%以下、及びスチレン系エラストマーが5〜45質量%の範囲である。好ましくは、ポリプロピレン樹脂が50〜80質量%、グラフト共重合体が2〜25質量%、及びスチレン系エラストマーが7〜40質量%の範囲にあるものである。
グラフト共重合体がこの範囲の上限を超えると、有機溶剤に侵されやすくなるなど耐薬品性が損なわれたり、外観が悪化する傾向にある。グラフト共重合体がこの範囲の下限に満たないとレンズ部品との相溶性が劣り、接着性が低下する。
スチレン系エラストマーの配合割合が、この下限値を下回ると溶着強度が低下し接合しないという不都合が生じ、この上限値を超えると耐熱性や機械的特性が低下するなど不都合が生じる。また、スチレン系エラストマーが本発明の範囲外であると、ポリプロピレン樹脂と異樹脂間の層間剥離によってできる白いすじ(デラミネーション)が発生し外観も悪くなるという問題も発生する。
本発明における灯体の製造において、ポリプロピレン樹脂組成物とレンズ部品との溶着強度をより高めるためには、レンズ部品の違いに応じてスチレン系エラストマーの配合量を調節することが望ましい。例えば、レンズ材がPMMAの場合には、ポリプロピレン樹脂50〜70質量%、グラフト共重合体2〜10質量%、スチレン系エラストマー25〜35質量%が好ましい。また、レンズ材がPCの場合には、ポリプロピレン樹脂50〜65質量%、グラフト共重合体2〜10質量%、スチレン系エラストマー25〜40質量%が好ましい。
本発明においては、グラフト共重合体量とスチレン系エラストマーのスチレンモノマー単位の量(ポリスチレン構造セグメントの量)との合計量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは11〜50質量%である。10質量%未満では溶着性が低下傾向となる場合がある。
また、必要に応じて配合することができる無機フィラーの配合量は、ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して、1〜400重量部が好ましく、より好ましくは5〜100重量部である。無機フィラー成分の配合量が400重量部を超えると比重が大きくなり、脆くなるなどの機械的特性の低下するという不都合が生じる。
3.ポリプロピレン樹脂組成物の物性
本発明で用いるポリプロピレン樹脂組成物は、その線膨張係数が5×10−5〜13×10−5cm/cm・℃の範囲にあることが好ましい。線膨張係数が大きすぎても小さすぎても、灯体の製造に際してレンズ部品との寸法変化が合わずに接合部分が剥離又は破断することがある。
本発明の灯体の製造においては、レンズ部品は、一般に、その線膨張係数が6×10−5〜7×10−5cm/cm・℃の範囲にあるから、ポリプロピレン樹脂組成物とレンズ部品の当該係数の比が小さい範囲においては、溶着成形後のひずみが生じないか、あるいは生じても小さく、接合面が剥離する不都合は起こらない。当該係数の比が小さい範囲とは、ポリプロピレン樹脂組成物の線膨張係数/レンズ部品の線膨張係数が0.72〜1.33の範囲をいう。一方、ポリプロピレン樹脂組成物の線膨張係数の値が大きい領域は、変形によるひずみが蓄積され、接合部分の剥離あるいは破壊が起こりやすくなることが理論上予想されるが、本発明では、ポリプロピレン樹脂組成物の線膨張係数の上限値は、10×10−5cm/cm・℃であり、より好ましくは8×10−5cm/cm・℃である。
ここで、線膨張係数とは、物体が温度の上昇下降によって、膨張、収縮する比率の温度変化に対する割合で、特に長さの変化を表し、単位温度当たりのひずみで示される。単位はcm/cm・℃で表される。線膨張率とも呼ぶ。その測定法は、JIS K7197に準拠しておこなう。具体的には、試験片(寸法が長さ70mm、幅10mm、厚み4mmの角柱状)を状態調節し、石英管式縦型線膨張計を使用して、温度TとT(T=23℃、T=80℃)との間の平均の線膨張率として求める。算出は次の式を用いる。
α=ΔL/L×(T−T
(式中、α:線膨張率、ΔL:試験片について(Tのときの長さ)−(Tのときの長さ)の差、L:室温(23℃)での試験片の長さである。)
ポリプロピレン樹脂組成物の線膨張係数を本発明の範囲内におさめるためには、スチレン系エラストマーの配合量を増減させる方法および、無機フィラーの配合量を増減させる方法を採用すればよい。スチレン系エラストマーあるいは無機フィラーの配合量を増加させれば線膨張係数が低下するので、所望の値に制御することができる。あるいはベースとなるポリプロピレン樹脂の種類を適宜選択することも取りうる選択肢の一つである。
4.ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法
本発明で用いるポリプロピレン樹脂組成物は、上記ポリプロピレン樹脂、グラフト共重合体、スチレン系エラストマーおよび必要に応じて使用する成分を上記所定量配合して、通常の押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等を用いて、設定温度180〜250℃にて混練することにより製造できる。配合順序には特に制限はなく、ポリプロピレン樹脂、グラフト共重合体、スチレン系エラストマーを一括で混練機に投入してもよく、上記のうち二成分を混練した後に、残りの一成分を混練してもよい。分散をよくするため2軸混練機を使用することが好ましい。このようにして得られるプロピレン樹脂組成物は、モルフォロジー的に、ポリマーアロイを形成することが好ましい。
5.ポリプロピレン樹脂組成物の用途
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、従来接合が困難であるとされていたポリオレフィン系樹脂とポリカーボネート樹脂等の接合を可能にした樹脂組成物であり、自動車用部品、特にランプハウジングや自動車用リヤーフィニッシャーに用いることができる。ランプハウジングは、後述するレンズ部品と接合し灯体とすることができる。
6.ポリプロピレン樹脂組成物の成形
成形品(特にランプハウジング部品)の成形は、特に限定されず、押出成形、射出成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、インフレーション成形、モールドスタンピング成形などの公知の成形法が採用でき、成形法に応じて押出成形体、射出成形体、ブロー成形体、押出ブロー成形体、射出ブロー成形体、インフレーション成形体、モールドスタンピング成形体として得られる。成形方法としては射出成形法が好ましい。射出成形には、通常の射出成形のほか、サンドイッチ成形、二層成形、インサート成形などが含まれる。
[II]灯体
1.レンズ部品
本発明の灯体は、上記ポリプロピレン樹脂組成物と下記のポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、環状オレフィン重合体樹脂、及びスチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種類の透明樹脂からなるレンズ部品とを接合して得られる。
(1)ポリカーボネート樹脂
本発明に用いられるポリカーボネート樹脂(PC)は、市販品が特に制限なく使用できる。好ましくは灯体レンズ用に商業化されているような透明性が高く、耐衝撃性に優れるものを利用すると本発明の効果をより発揮できる。具体的には、好ましくは比重が1.2、引張強さが64〜66MPa、曲げ強さが93MPa、アイゾット衝撃強さが640〜854J/m、荷重たわみ温度が121〜132℃程度の物性を有するものが好ましい。市販品としては、例えば住友ダウ(株)製の「カリバー」等が挙げられる。
(2)ポリチルメタクリレート樹脂(PMMA)
本発明に用いられるポリチルメタクリレート樹脂(PMMA)は、メタクリル酸メチルを主体とする樹脂で、メチルメタクリレートの単独重合体、またはメチルメタクリレートとメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アクリロニトリル、無水マレイン酸、スチレンもしくはα−メチルスチレンの何れか1つ以上との共重合体、またはメチルメタクリレート単独重合体と上記共重合体との混合物等を挙げることができる。具体的には市販品を制限なく利用できるが、好ましくは比重が1.17〜1.20、引張強さが48〜73MPa、曲げ強さが73〜131MPa、アイゾット衝撃強さが11〜22J/m、荷重たわみ温度が68〜99℃程度の物性を有するものが好ましい。市販品としては、例えば三菱レイヨン(株)製の「アクリライト」等が挙げられる。あるいは公知の方法により製造されたものを利用できる。
(3)環状オレフィン重合体樹脂
本発明に用いられる環状オレフィン重合体は、重合性二重結合を環内に有するモノマーの環構造を維持した重合体であり、このような化合物であれば何等制限なく公知の化合物を用いることができる。
本発明においては、炭素数4〜20個の環状オレフィンの単独重合体、上記環状オレフィン同士の共重合体、上記環状オレフィン50mol%以上と他のモノマー50mol%以下との共重合体が好適に使用できる。
特に本発明において好適に使用できる環状オレフィンは、具体的には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、4−メチルシクロペンテン、4,4−ジメチルシクロペンテン、3,3,5,5−テトラメチルシクロペンテン、シクロヘキセン、4−メチルシクロヘキセン、4,4−ジメチルシクロヘキセン、1,3−ジメチルシクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3,5−シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、シクロドデセン等を挙げることができる。また、これらの環状オレフィンの環に、更に直鎖もしくは分枝アルキル基が置換されてもよい。
具体的には市販品を制限なく利用できる。あるいは公知の方法により製造されたものを利用できる。市販品としては、例えば三井化学(株)製の「アペル」(商標名)、日本ゼオン(株)製の「ゼオノア」(商標名)、ジェイエスアール(株)製の「アートン」(商標名)等が挙げられる。
(4)スチレン系樹脂
本発明に用いられるスチレン系樹脂は、スチレンの単独重合体又は共重合体からなる熱可塑性樹脂であって、懸濁重合法や乳化重合法などの各種製造方法によって得られる汎用ポリスチレン、更に耐熱性、耐薬品性、耐候性を向上させたアクリロニトリルとの共重合体であるAS樹脂等がある。具体的には市販品を制限なく利用でき、また、公知の方法により製造されたものも利用できる。市販品としては、ダイセルポリマー(株)製の「セビアンN」(商標名)等が挙げられる。
2.灯体の製造方法
本発明の灯体は、上記ポリプロピレン樹脂組成物で成形されたランプハウジングとレンズを接合して得られる。
接合方法としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、下記に説明する(イ)超音波溶着、(ロ)熱板溶着、(ハ)振動溶着、(ニ)レーザ溶着のいずれの方法も用いることができる。これら方法を総説した文献としては「成形加工」第16巻、第4号、2004,211〜216ページ)がある。
(イ)超音波溶着:超音波振動による摩擦が発生し、摩擦時の摩擦発熱による昇温、溶融を利用する溶着法である。
(ロ)熱板溶着:加熱溶着は、2種以上の樹脂成形品の接合する部分を、加熱した熱板により所定量だけ溶融させ、その後、両者を圧着することにより接合する工法である。高温熱板溶着法ともいう。
(ハ)振動溶着:振動機器によって部材を振動させ、部材界面での衝突ないし摩擦発熱によって溶着をおこなう方法である。
(ニ)レーザ溶着:レーザ溶着方法では、透過性樹脂材内を透過したレーザ光が吸収性樹脂材の当接面に到達して吸収され、この当接面に吸収されたレーザ光がエネルギーとして蓄積される。その結果、吸収性樹脂材の当接面が加熱溶融されるとともに、この吸収性樹脂材の当接面からの熱伝達により透過性樹脂材の当接面が加熱溶融される。この状態で、透過性樹脂材及び吸収性樹脂材の当接面同士を圧着させれば、両者を一体的に接合することができる。そして、上記吸収性樹脂材には、レーザ光に対して所定の吸収性を発揮しうるように、必要に応じて、カーボンブラック、染料や顔料等の所定の着色材、あるいは近赤外線吸収剤を添加される。また、この吸収性樹脂材には、必要に応じて、ガラス繊維、カーボン繊維等の補強繊維を添加してもよい。
近赤外線吸収剤としては各種公知のものが使用できる。例えば特公平4−75916号公報に記載されたフタロシアニン化合物を挙げることができる。レーザ光に対して所定の吸収性を発揮し光エネルギーを熱エネルギーに変換可能な染料の例としては、特表2002−526261号公報に記載されたシアニン染料、スクウォリリウム染料、およびクロコニウム染料(段落[0012])、あるいは金属フタロシアニン染料、メタレーテッド・アゾ染料もしくはメタレーテッド・インドアニリン染料(段落[0031])を挙げることができる。
レーザ光の種類や照射光の強度については、公知の技術が利用できるが、例えば前述の特表2002−526261号公報、特開2002−284895号公報あるいは「成形加工」第16巻、第4号、2004,211〜216ページに記載された内容を挙げることができる。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物からなるランプハウジングとレンズの溶着にあっては、ポリプロピレン樹脂組成物中に存在するスチレン系エラストマーが、ポリプロピレン樹脂とグラフト共重合体の相溶化を促進するのみならず、熱溶着において、ポリプロピレン樹脂組成物とレンズの接合界面の接着強度を改良する機能を果たす。本発明では、スチレン系エラストマーを配合することにより、両樹脂の相溶化と同時に両樹脂を含有するポリプロピレン樹脂組成物をポリカーボネート等に強固に熱溶着させることに特徴を有する。
以下に実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り、これによって限定されるものではない。
なお、実施例における各種物性の測定方法、使用材料、溶着方法を下記に示す。
1.物性の測定方法
(1)MFR(単位はg/10分):ポリプロピレン樹脂、スチレン系エラストマー;230℃、2.16kg荷重で測定した。
(2)線膨張係数:JIS K7197に準拠し、上述した方法に従って行った。
(3)溶着性:溶着した成形試験片を23℃で72時間状態調整し、その後、温度25℃、湿度50%の条件下で引張り試験機によって溶着面が破断する際の強度を測定する。なお、引張り速度は30mm/分を採用した。
剥離する際の強度が5MPa以上のとき○と評価し、それ以外のとき×と評価した。
(4)表層剥離:溶着性評価試験において、引張試験後に試験片の表層剥離の発生を目視で観察した。剥離が発生しないとき○と評価し、剥離が発生したとき×と評価した。
(5)耐熱性:熱変形温度(HDT)をASTM D 648(試験片 ;12.7mm(厚さ)×6.4mm(幅)×127mm(長さ)試験荷重;4.6kg/cm)に準拠し評価した。判定はフィラー(タルク)を含まないものは90℃以上、フィラーを40部配合した系は110℃以上が良好と判断できる。
(6)外観:射出成形試験片の表面を目視にて観察し、異樹脂間の層間剥離によってできる白いすじ(デラミネーション)が見られないものを良好(○)とし、白いすじ(デラミネーション)が見られたものを不良(×)とした。
2.使用材料
(1)ポリプロピレン樹脂(PP):ホモポリプロピレン;日本ポリプロ(株)製 商品名 MA3(230℃、2.16kg荷重で測定したMFRが10g/10分、比重0.90)
(2)グラフト共重合体(MBS):電気化学工業(株)製 MBS樹脂 TH−11
(3)スチレン系エラストマー(SEBS):スチレン−エチレン・ブタジエン−スチレン共重合体;旭化成ケミカルズ(株)製 商品名 タフテックH1043(230℃、2.16kg荷重で測定したMFR2.0g/10分、比重0.97、スチレン含有量67質量%)
(4)無機充填剤(Talc):富士タルク(株)製 MP−A25C (平均粒径 5ミクロン)
3.レーザ溶着方法
ポリプロピレン樹脂組成物の溶着予定表面(2mm×40mm)に、フタロシアニン系近赤外吸収剤(アビシア社製 PRO−JET830LDI)、イソプロピルアルコール溶液(濃度1%)を塗布した。塗布は綿棒を用いておこなった。同じ形状のレンズ用透明樹脂の成形品と50mm×40mm重なるように置き、スポット系1mm出力10Wのレーザー光(波長840nm)を2〜6mm/secの速度でレンズ用透明樹脂側から横断するように照射し溶融接合させた。使用したレーザ装置はファインデバイス(株)社製 FD−100である。
(実施例1)
ポリプロピレン樹脂組成物として、PPを75質量%、MBSを10質量%、SEBSを15質量%配合し、スーパーフローター(カワタ製)にてドライブレンドした後、1段目ローター部800回転/分、押出部160回転/分、押出温度200℃、吐出量80kg/hの条件下にて二軸タンデム混練機(神戸製鋼社製KCM50)を用いて溶融混練し、ペレット状のサンプルを得た。なお、溶融混練時の熱安定剤として、テトラキス[メチレン−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバスペシャルティケミカルズ社製 イルガノックス1010)を樹脂組成物100重量部に対して0.1重量部添加した。溶融混練によって得られたペレットを、射出成形(250℃、金型温度40℃)により試験片(長さ80mm×幅40mm×厚み2mm)を作製した。レンズ用樹脂材としては、ポリメチルメタクリレート樹脂(三菱レイヨン(株)社製 アクリライトXE001)樹脂板(厚み2mm)を所定の大きさ(長さ80mm×幅40mm×厚み2mm)の試験片に切断したものを評価用サンプルとして使用した。ポリプロピレン樹脂組成物とレンズとをレーザ溶着を行い、溶着強度の測定等の評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2〜9、比較例1〜6)
PP、MBS、SEBSを表1に示す量にする以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物の試験片を作製した。なお、実施例3〜9、比較例1〜6についてはPP、MBSとSEBSとの合計量100重量部に対してTalc40重量部を配合している。実施例1と同様にしてポリプロピレン樹脂組成物とレンズ(ポリメチルメタクリレート樹脂(三菱レイヨン(株)社製 アクリライトXE001))とをレーザ溶着を行い、溶着強度の測定等の評価を行った。結果を表1、2に示す。
Figure 0004958751
Figure 0004958751
表1、2より明らかなように、本発明のポリプロピレン樹脂組成物を用いた成形品は、優れた溶着強度を有し、また成形品に表層剥離は見られない(実施例1〜9)。一方、ポリプロピレン樹脂組成物中のポリプロピレン樹脂の含有量が多すぎると、溶着強度が劣る(比較例1)。ポリプロピレン樹脂の含有量が少なく、グラフト共重合体が多いと、表層剥離が生じ、耐熱性が低下するうえ、外観が悪化することもある(比較例2、4)。グラフト共重合体を使用しない場合には溶着強度が低下する(比較例3)。スチレン系エラストマーが少ないと表層剥離が生じ、外観が悪化する(比較例5)。スチレン系エラストマーが多いと耐熱性が低下する(比較例6)。
本発明の樹脂成形品(灯体)は、耐熱性と寸法安定性のバランスに優れ、安価でしかもリサイクル性にも優れるポリプロピレン樹脂を用いたポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、環状オレフィン樹脂等との熱溶着成形品であるので、従来接合が困難であるとされていたポリオレフィン系樹脂とポリカーボネート樹脂等の接合を可能にした成形品であり、自動車用部品、特に車両用灯具や自動車用リヤーフィニッシャーに用いることができる。

Claims (6)

  1. ポリプロピレン樹脂(A)50〜85質量%、ジエン系ゴム質重合体(b−1)5〜80質量%と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体20〜90質量%(b−2)と芳香族ビニル系単量体および/またはシアン化ビニル系単量体(b−3)60〜5質量%から構成されるグラフト共重合体(B)0質量%より大きく45質量%以下、並びにスチレン系エラストマー(C)5〜45質量%を含有するランプハウジング用のポリプロピレン樹脂組成物。
  2. ポリプロピレン樹脂(A)50〜85質量%、ジエン系ゴム質重合体(b−1)5〜80質量%と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体20〜90質量%(b−2)と芳香族ビニル系単量体および/またはシアン化ビニル系単量体(b−3)60〜5質量%から構成されるグラフト共重合体(B)0質量%より大きく45質量%以下、並びにスチレン系エラストマー(C)5〜45質量%を含有するポリプロピレン樹脂組成物からなるランプハウジング部品と、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、又はスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の透明樹脂からなるレンズ部品を接合してなることを特徴とする灯体。
  3. プロピレン樹脂組成物の線膨張係数(単位:cm/cm・℃)が、5×10−5〜13×10−5であることを特徴とする請求項記載の灯体。
  4. スチレン系エラストマー(C)が、スチレン−エチレン・ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体あるいはスチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体であることを特徴とする請求項2又は3に記載の灯体。
  5. ポリプロピレン樹脂組成物が、さらに、ポリプロピレン樹脂組成物100重量部に対して、無機充填剤を1〜400重量部含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の灯体。
  6. ポリプロピレン樹脂(A)50〜85質量%、ジエン系ゴム質重合体(b−1)5〜80質量%と不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体20〜90質量%(b−2)と芳香族ビニル系単量体および/またはシアン化ビニル系単量体(b−3)60〜5質量%から構成されるグラフト共重合体(B)0質量%より大きく45質量%以下、スチレン系エラストマー(C)5〜45質量%を含有するポリプロピレン樹脂組成物からランプハウジング部品を成形する工程と、前記ランプハウジング部品とポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、環状オレフィン重合体樹脂、又はスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の透明樹脂からなるレンズ部品と溶着する工程を含むことを特徴とする灯体の製造方法。
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