以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態である下顎動作検出装置150を備えた吹奏ユニット100の構成を示す斜視図である。また、図2は図1に示す下顎動作検出装置150のI−I’線における断面構造を示す図である。なお、図2には、下顎動作検出装置150の理解を容易にするため、演奏者の下顎付近の部分が吹奏ユニット100とともに図示されている。また、図2には、吹奏検出装置110も図示されているが、図面が煩雑になるのを防ぐため、吹奏検出装置110については透視図が示されている。図1に示すように、電子フルートの頭管部1には、その管軸方向に所定間隔を空けて2枚のフランジ2Aおよび2Bが固定されている。吹奏ユニット100は、回動軸101を有しており、この回動軸101は、頭管部1の管軸と平行な向きで、このフランジ2Aおよび2Bの各々に設けられた軸受け21(図1ではフランジ2Aの軸受け21のみが図示されている)に軸支されている。このような構成としたため、本実施形態における吹奏ユニット100は、ある程度の力を加えることにより回動軸101廻りに回動させることが可能である。
吹奏ユニット100は、大別して、吹奏検出装置110と、下顎動作検出装置150と、これらの吹奏検出装置110および下顎動作検出装置150を頭管部1の管軸方向両側から挟んで固定する側板部190Aおよび190Bとにより構成されている。上述した回動軸101は、側板部190Aおよび190Bに固定されている。
吹奏検出装置110の上部には、吹奏者の上唇までの距離を測定する上唇近接センサ111が設けられている。この上唇近接センサ111は、例えば赤外線リフレクタ等により構成されている。また、吹奏検出装置110において、吹奏者の口と対向する前面部分には、コーン状のジェットコレクタ112が設けられている(図2参照)。このジェットコレクタ112は、吹奏者の口から吹き込まれる呼気を集め、吹奏検出装置110の内部に設けられたジェット流量センサ113へと導く役割を果たす。このジェット流量センサ113は圧力センサである。
図2に示すように、下顎動作検出装置150は、軸受けベース160と、リッププレート上部170と、リッププレート下部180とを有する。ここで、軸受けベース160は、その管軸方向両側において側板部190Aおよび190B(図1参照)に固定されている。軸受けベース160からは、吹奏時に斜め上方にある吹奏者の口と対面する姿勢で支持板161が突き出しており、この支持板161の表面にはシート状の感圧抵抗162が固定されている。
本実施形態における下顎動作検出装置150は、リッププレート上部170およびリッププレート下部180の取り付けおよび取り外しが可能な構成となっている。図1および図2には、リッププレート上部170およびリッププレート下部180が取り付けられた状態の下顎動作検出装置150が図示されている。
リッププレート上部170は、吹奏時において吹奏者の口がある方向に出っ張っており、吹奏者の下唇付近の部分と当接するリップ当接面171Sを有するリップ当接部171と、このリップ当接部171から突き出した板部172と、この板部172の端部に形成された円柱状の回動軸173とからなる。リッププレート上部170において、リップ当接面171Sとは反対方向を向いた面は、感圧抵抗162と対向しており、この面には感圧抵抗162の表面と当接する押圧部174が設けられている。この押圧部174は、例えばゴム等のような弾性材料により構成されている。
リッププレート下部180は、表面が緩やかに外側に膨らむように湾曲した部材であり、その裏面には、リッププレート上部170の回動軸173を収容する凹部181が形成されている。上述した軸受けベース160にも、回動軸173を収容する凹部163が形成されている。
図3はリッププレート上部170およびリッププレート下部180の下顎動作検出装置150への取り付け手順を示す組立図である。図3に示すように、リッププレート下部180は、その下端付近が幅の狭い接続部182となっており、この接続部182には、雄ネジを挿通させるための2個の孔183Aおよび183Bが貫通している。また、軸受けベース160には、このリッププレート下部180の接続部182を受け入れる切り欠き部164が形成されており、この切り欠き部164には、接続部182の孔183Aおよび183Bと対応させて、雌ネジ孔165Aおよび165Bが形成されている。そして、リッププレート上部170およびリッププレート下部180を下顎動作検出装置150への取り付ける場合には、まず、リッププレート上部170の回動軸173がリッププレート下部180の凹部181に収容され、この状態で、リッププレート下部180の接続部182が軸受けベース160の切り欠き部164に挿入される。そして、接続部182に空いた孔183Aおよび183Bに雄ネジを各々挿入し(図示略)、切り欠き部164の雌ネジ孔165Aおよび165Bに螺着させることにより、リッププレート下部180が軸受けベース160に固定される。
このようにして、下顎動作検出装置150は、図1および図2に示す状態となる。これらの図に示すように、リッププレート下部180は、リッププレート上部170におけるリップ当接面171Sを吹奏時に吹奏者の口のある側に露出させ、かつ、リッププレート上部170におけるリップ当接面171S以外の部分を覆うように軸受けベース160に取り付けられている。また、その際に、リッププレート下部180の凹部181は、軸受けベース160の凹部163とともに軸受け用の孔を形成しており、この軸受け用の孔は、リッププレート上部170の回動軸173を回動自在に支持する。
図4は本実施形態における下顎動作検出装置150の動作を示す図である。この図4に示すように、吹奏者は、オクターブ切り換えを行おうとするとき、下顎を前後方向に微妙に動かす。ここで、吹奏者が下顎を前方に移動させると、リッププレート上部170が吹奏者の下唇付近の部分から圧力により、反時計廻りに回動し、押圧部174により支持板161上の感圧抵抗162を押す。この結果、リッププレート上部170が吹奏者の下唇付近の部分から受ける圧力が、押圧部174を介して感圧抵抗162に伝わり、感圧抵抗162の抵抗値を変化させる。この場合において、吹奏者の下顎の動きに対する感圧抵抗162の抵抗値の変化の感度は、リッププレート上部170において吹奏者の下唇付近の部分と接触するリップ当接面171Sの幅に依存する。
図5は本実施形態による下顎動作検出装置150を備えた電子フルートの電気的構成を示すブロック図である。図5において、複数の演奏用キーセンサ201は、電子フルートの主管部および足管部に設けられた演奏用キー(図示略)の状態を各々検出するセンサである。これらの演奏用キーセンサ201により、演奏用キーの各々がON状態(演奏用キーが押下されており、主管部または足管部のトーンホールを塞いだ状態)であるかOFF状態(演奏用キーが押下されておらず、トーンホールが開いた状態)であるかを示す運指パターンが発生され、制御部210に供給される。
リップ圧センサ162Sは、図2における感圧抵抗162の抵抗値に比例した電圧値のアナログ信号を出力するセンサである。ジェット流量センサ113および上唇近接センサ111については、図1および図2を参照して説明した通りである。
A/D変換器202、203および204は、リップ圧センサ162S、ジェット流量センサ113および上唇近接センサ111から出力される各アナログ信号のA/D変換を行い、デジタル形式のリップ圧信号、呼気流量信号および対上唇間距離信号を制御部210に出力する。
制御部210は、後段のMIDI音源220等、この電子フルートの各部の制御を行う装置であり、例えばCPUと、CPUによってワークエリアとして使用されるRAMと、CPUにより実行される各種のプログラムやCPUによって参照される各種のテーブルを記憶したROMにより構成されている(いずれも図示略)。図5には、制御部210のCPUがROM内のプログラムに従って実行する各種の処理が図示されている。
制御部210により実行される処理は、ノートナンバ、エクスプレッション値、ブレスコントロール値等、MIDI音源220を制御するMIDIメッセージの構成要素となるパラメータを生成する処理を含む。以下、これらの各処理について説明する。
ノートナンバ発生処理211では、複数の演奏用キーセンサ201から与えられる運指パターンに基づき、MIDI音源220に形成させる楽音信号のノートナンバを演算する。また、ノートナンバ発生処理211では、A/D変換器202から出力されるリップ圧信号を閾値と比較し、リップ圧信号が閾値を越えた場合に吹奏者が下顎を動かしてオクターブ切り換えの指示を行ったとみなし、運指パターンに基づいて決定されるノートナンバを1オクターブ高いノートナンバに切り換える。
音量制御パラメータ発生処理212は、A/D変換器202から与えられるリップ圧信号およびA/D変換器203から与えられる呼気流量信号に基づき、音量制御パラメータであるエクスプレッション値またはブレスコントロール値を決定する処理である。ベロシティ発生処理213は、A/D変換器203から与えられる呼気流量信号に基づき、楽音の立ち上がり時の強さを指示するベロシティを決定する処理である。
ピッチベンド制御処理214は、運指パターン、A/D変換器203から与えられる呼気流量信号、A/D変換器204から与えられる対上唇間距離信号に基づき、ピッチベンド値PBを決定する処理である。
MIDIメッセージ組立処理215は、以上説明した各処理により発生されるパラメータを用いてMIDIメッセージを組み立て、MIDI音源220に送信する処理である。さらに詳述すると、MIDIメッセージ組立処理215は、A/D変換器203から出力される呼気流量信号の値が閾値を越え、ノートオンの条件が満たされると、その時点においてノートナンバ発生処理211から与えられるノートナンバと、ベロシティ発生処理213から与えられるベロシティ値とを用いて、ノートオンメッセージを組み立て、MIDI音源220に送信する。
ノートオンは、呼気流量信号の値が閾値よりも高く、運指パターンが同一パターンを維持する期間持続する。このノートオン期間中、MIDIメッセージ組立処理215では、音量制御パラメータ発生処理212から与えられるエクスプレッション値またはブレスコントロール値を用いて、コントロールチェンジメッセージを組み立ててMIDI音源220に送信し、ピッチベンド制御処理214から与えられるピッチベンド値PBを用いて、ピッチベンドメッセージを組み立てMIDI音源220に送信する。ここで、吹奏者が下顎を微妙に動かしてオクターブ切り換えの指示を行った場合、ノートナンバ発生処理211では、リップ圧信号に基づいてこのオクターブ切り換えの指示が検知され、この指示に従ってノートナンバの切り換えが行われる。この場合には、MIDIメッセージ組立処理125では、切り換え後の新たなノートナンバへの変更を指示するMIDIメッセージを組み立ててMIDI音源220に送る。そして、呼気流量信号の値が閾値を下回り、あるいは運指パターンが変化した場合、MIDIメッセージ組立処理215は、ノートオン中である楽音信号を終了させるノートオフメッセージをMIDI音源220に送るのである。
MIDI音源220は、以上のようにして制御部210から送信されるMIDIメッセージに従い、デジタル形式の楽音信号を形成する装置である。サウンドシステム230は、MIDI音源220から出力される楽音信号をアナログ楽音信号に変換するD/A変換器と、このアナログ楽音信号を増幅するアンプと、このアンプにより駆動されるスピーカにより構成されている(図示略)。
以上が本実施形態による電子フルートの詳細である。本実施形態によれば、図4を参照して説明したように、吹奏者は下顎を前後方向に動かして、リッププレート上部170を回動させ、リッププレート上部170を介して感圧抵抗162に与える圧力を変化させ、感圧抵抗162の抵抗値を変化させることができる。そして、制御部210は、感圧抵抗162の抵抗値を反映したリップ圧信号をA/D変換器202から取得し、このリップ圧信号が閾値を越えている場合には、吹奏者がオクターブ切り換えを指示したとみなし、運指パターンにより決定されるノートナンバを1オクターブ高いノートナンバに切り換え、そのノートナンバでの放音をMIDI音源220に指示する。従って、吹奏者は、下顎を動かしてリッププレート上部170に与える圧力を変化させることによりオクターブ切り換えを電子フルートに行わせることができる。
本実施形態では、リッププレート上部170を各種の幅のリップ当接面171Sを持ったものに取り換えることが容易である。図6(a)および(b)は、リップ当接面171Sの幅WがW1であるリッププレート上部170がリッププレート下部180により固定された下顎動作検出装置150を示す斜視図および断面図である。また、図7(a)および(b)は、リップ当接面171Sの幅WがW1より大きいW2であるリッププレート上部170がリッププレート下部180により固定された下顎動作検出装置150を示す斜視図および断面図である。オクターブ切り換えを行おうとするときの下顎の動きが小さい吹奏者の場合、図7(a)および(b)に示すように、幅Wの大きなリッププレート上部170を下顎動作検出装置150に取り付けるのが好ましい。逆に、オクターブ切り換えを行おうとするときの下顎の動きが大きい吹奏者の場合、図6(a)および(b)に示すように、幅Wの小さなリッププレート上部170を下顎動作検出装置150に取り付けるのが好ましい。本実施形態では、このような吹奏者の吹奏スタイルに合った適切なリッププレート上部170を下顎動作検出装置150に容易に取り付けることができる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明にはこれ以外にも他の実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
(1)上記実施形態では、支持板161に支持された感圧抵抗162が吹奏者の口がある斜め上方を向いており、リッププレート上部170が吹奏者の下唇付近の部分に押されて斜め下方の感圧抵抗162に向けて接近するように構成した。従って、上記実施形態では、吹奏者の下顎の水平方向の動き、下方向への動きおよび斜め下方向への動きに、感圧抵抗162を反応させることが可能である。しかし、感圧抵抗162を如何なる方向の下顎の動きに強く反応させるかは、感圧抵抗162およびリッププレート上部170の姿勢を変えることにより変更可能である。例えば図8に示す構成例では、感圧抵抗162は垂直方向に起立した姿勢で支持板161に支持されており、リッププレート上部170において感圧抵抗162と対向する面も垂直方向を向いている。そして、この構成では、リッププレート上部170は水平方向に移動して感圧抵抗162に接近する。従って、この構成では、下顎の水平方向の動きに対して感圧抵抗162を強く反応させることが可能である。また。図9に示す構成例では、支持板161に支持された感圧抵抗162が斜め下方を向いており、リッププレート上部170は斜め上方に移動して、感圧抵抗162に接近するように構成した。従って、この構成では、吹奏者の下顎の水平方向の動き、上方向への動きおよび斜め上方向への動きに、感圧抵抗162を反応させることが可能である。
(2)上記実施形態では、リッププレート上部170において吹奏者の下唇付近の部分と接触する部分の表面形状は、外側に膨らんだ緩やかな曲面形状とした。しかし、緩やかな曲面に局所的に出っ張った部分を設けてもよい。あるいは、リッププレート上部170において吹奏者の下唇付近の部分と接触する部分の表面形状を曲面とせず、平面にしてもよい。
(3)上記実施形態では、リッププレート下部180および軸受けベース160の両方にリッププレート上部171の回動軸173を収容する凹部を設けたが、いずれか一方のみに凹部を設けてもよい。
(4)上記実施形態では、リッププレート上部170に回動軸173を設け、リッププレート下部180と軸受けベース160とがこの回動軸173を挟んで回動自在に支持した。しかし、リッププレート上部170を支持するための構成は、これに限定されるものではなく、例えば図10(a)および(b)に示す態様も考えられる。ここで、図10(a)は、軸受けベース160、感圧抵抗162、リッププレート上部170およびリッププレート下部180からなる下顎動作検出装置150の断面図、図10(b)は図10(a)のリッププレート上部170およびリッププレート下部180を感圧抵抗162側から見た図である。図示のように、この態様では、リッププレート上部170にレール176が設けられ、リッププレート下部180にはレール176を案内するガイド溝186が設けられている。そして、リッププレート上部170は、レール176をリッププレート下部180のガイド溝186に収容させ、リップ当接面171Sと反対側の面の押圧部174を感圧抵抗162に当接させた状態で、リッププレート下部180に摺動自在に支持されている。この態様においても、吹奏者の下顎の動きに応じて、リッププレート上部170が感圧抵抗162側に摺動するので、下顎の動きに応じた信号を感圧抵抗162から得ることができる。また、リッププレート上部170の取り替えも容易である。
(5)上記実施形態において、制御部210のノートナンバ発生処理211では、リップ圧信号を1種類の閾値と比較したが、大きさの異なった複数の閾値と比較し、比較結果に基づき、放音する楽音のノートナンバを運指パターンにより決定されるノードナンバから何オクターブだけシフトするかを決定するようにしてもよい。すなわち、例えば2種類の閾値th0、th1(>th0)を用意し、リップ圧信号の値PlipがPlip≦th0の範囲内であるときはオクターブ切り換えを行わず、th0<Plip≦th1の範囲内であるときは1オクターブだけノートナンバをシフトし、th1<Plipの範囲内であるときは2オクターブだけノートナンバをシフトする、といった制御の態様が考えられる。
(6)上記実施形態では、リップ当接面171Sに与えられる圧力を1箇所に設けた1個の感圧抵抗162により検出したが、この感圧抵抗162の他にさらに1個の感圧抵抗(例えば感圧抵抗162aとする)を感圧抵抗162とは別の位置に別の方向を向かせて配置し、リップ当接面171Sに与えられる圧力の第1の方向の成分を感圧抵抗162により検出するとともに、第1の方向と直交する第2の方向の成分を感圧抵抗162aにより検出するようにしてもよい。図11(a)〜(c)は前掲図4の下顎動作検出装置150に感圧抵抗162aを追加した構成例を各々示すものである。なお、これらの態様では、感圧抵抗162aはリッププレート下部180に設けてあるが、軸受けベース160に設けてもよい。
図11(a)に示す例では、リッププレート上部170の回動軸173が雨樋状の軸受け187に収容されている。この軸受け187は、回動軸173とは反対側の方向に突出した板部187aを有している。リッププレート下部180には、感圧抵抗162aが埋め込まれており、さらにこの感圧抵抗162aを板部187aの端部に当接させて、板部187aを収容する溝が設けられている。この態様によれば、演奏者の下唇付近の部分によりリップ当接面171Sが押され、リッププレート上部170が回動軸173廻りに円軌道を描いて移動するとき、その円の接線方向の成分が第1の感圧素子である感圧抵抗162により検出される。一方、円の中心に向かう方向の成分が第2の感圧素子である感圧抵抗162aにより検出される。
図11(b)に示す例では、リッププレート上部170の下端部と板部188の上端部とが共通の回動軸177により連結されている。ここで、リッププレート上部170および板部188は、いずれも回動軸177廻りに回動可能であり、回動軸177は、リッププレート上部170と板部188との関節の役割を果たす。図11(a)の構成と同様、リッププレート下部180には、感圧抵抗162aが埋め込まれており、さらにこの感圧抵抗162aを板部188の端部に当接させて、板部188を収容する溝が設けられている。この態様においても、図11(a)のものと同様な効果が得られる。
図11(c)に示す例では、リッププレート下部180において、リッププレート上部170の下端部と対面する領域に溝が設けられ、この溝の底に感圧抵抗162aが固定されている。そして、この感圧抵抗162aにリッププレート上部170の下端部が当接している。このリッププレート上部170の下端部に回動軸173はない。その代わりに、リッププレート上部170の下端部は、角が丸められており、当接した状態において感圧抵抗162aとの間に適度な摩擦力が発生するように表面が加工されている。リッププレート上部170における板部172のリッププレート下部180との対向面には、突起部178がある。一方、リッププレート下部180には、この突起部178を収容する溝189が設けられている。ここで、リップレート上部170に設けられた突起部178とリッププレート下部180に設けられた溝189は、リッププレート下部180と軸受けベース160との間のリッププレート上部170が図中左斜め上方に脱落するのを防止する役割を果たす。なお、図11(a)および(b)の構成にも同様な脱落防止機構を設けてもよい。この図11(c)の態様においても、図11(a)のものと同様な効果が得られる。
図11(a)〜(c)に示す各態様では、感圧抵抗162および162aを各々介すことにより2種類のリップ圧信号が得られる。この2種類のリップ圧信号の演奏制御への利用に関しては各種の態様が考えられる。ある好ましい態様において、制御部210(図1参照)では、例えば2種類のリップ圧信号を予め用意された関数に代入し、その関数値を例えば2値化することによりオクターブ切り換えを指示を発生する。他の好ましい態様では、2種類のリップ圧信号のうちの一方(例えば感圧抵抗162から得られるもの)を2値化してオクターブ切り換えの指示を発生し、他方(例えば感圧抵抗162aから得られるもの)を音色制御に用いる。さらに他の好ましい態様では、2種類のリップ圧信号を予め用意された第1の関数に代入し、その関数値を例えば2値化することによりオクターブ切り換えを指示を発生し、2種類のリップ圧信号を第1の関数とは別の第2の関数に代入し、その関数値を音色制御に用いる。なお、以上述べた各態様において、オクターブ切り換えの指示の発生や音色制御に用いる関数を複数種類用意しておき、演奏者が所望の関数を選択することができるように構成してもよい。
(7)前掲図9の下顎動作検出装置150に第2の感圧素子である感圧抵抗162aを追加してもよい。図12(a)〜(c)は、前掲図9の構成に対し、前掲図11(a)〜(c)の構成に倣って感圧抵抗162aを追加した下顎動作検出装置150を示すものであるる。なお、図12(a)〜(c)において、前掲図11(a)〜(c)または前掲図9に示された部分と対応する部分には、前掲図11(a)〜(c)または前掲図9において使用されたものと同じ符号が使用されている。
前掲図11(a)〜(c)の構成例では、感圧抵抗162aがリッププレート下部180に埋め込まれていた。これに対し、図12(a)〜(c)に示す構成例において、感圧抵抗162aは軸受けベース160に埋め込まれている。また、図12(a)〜(c)に示す構成例では、リッププレート上部170の脱落防止のための機構として、前掲図11(c)と同様、突起部178がリッププレート上部170に設けられ、溝189がリッププレート下部180に設けられている。
図12(a)に示す下顎動作検出装置150では、前掲図11(a)と同様な雨樋状の軸受け187の板部187aが軸受けベース160に設けられた溝に収容され、この板部187aの端部が感圧抵抗162aに当接している。図12(a)に示す下顎検出装置を組み立てるためには、リッププレート上部170の突起部178をリッププレート下部180の溝189に収容するとともに、リッププレート上部170の回動軸173を軸受けベース160側の軸受け187に載せ、リッププレート下部180を軸受けベース160にネジなどで固定すればよい。
図12(b)に示す下顎動作検出装置150では、前掲図11(b)と同様、関節としての回動軸177を介して、リッププレート上部170と板部188が連結されており、板部188の端部が軸受けベース160に設けられた溝に収容され、感圧抵抗162aに当接している。図12(b)に示す下顎検出装置を組み立てるためには、リッププレート上部170の突起部178をリッププレート下部180の溝189に収容するとともに、リッププレート上部170に連結された板部188の端部を軸受けベース160側の溝に収容し、リッププレート下部180を軸受けベース160にネジなどで固定すればよい。
図12(c)に示す下顎動作検出装置150では、前掲図11(c)と同様、丸め処理および摩擦力を発生するための表面処理が施されたリッププレート上部170の下端部が、軸受けベース160に固定された感圧抵抗162aと当接している。図12(c)に示す下顎検出装置150を組み立てるためには、リッププレート上部170の突起部178をリッププレート下部180の溝189に収容するとともに、リッププレート上部170の下端部を軸受けベース160側の感圧抵抗162aに当接させ、リッププレート下部180を軸受けベース160にネジなどで固定すればよい。
以上説明した図12(a)〜(c)の構成では、リップ当接面171Sへの圧力のうちリッププレート上部170の回動軸173、177または下端部廻りの旋回方向の成分が感圧抵抗162により検出され、この感圧抵抗162により検出される成分と直交する方向の成分が感圧抵抗162aにより検出される。
(8)相互に回動し得るように連結され、一体化されたリッププレート上部170およびリッププレート下部180からなるリッププレートであって、リップ当接面171Sの幅Wや表面形状が異なったものを各種用意しており、吹奏者が所望のリッププレートを選択し、頭管部1に固定されたベース(上記実施形態における軸受けベース160に相当するもの)に取り付けるようにしてもよい。
1……頭管、100……吹奏ユニット、150……下顎動作検出装置、160,187……軸受けベース、161……支持板、162,162a……感圧抵抗、163……凹部、170……リッププレート上部、171……リップ当接部、171S……リップ当接面、172,187a,188……板部、173,177……回動軸、174……押圧部、176……レール、180……リッププレート下部、181……凹部、186……ガイド溝、178……壁、189……溝。