JP4953933B2 - 磁性膜及びその製造方法、並びに磁気光学素子 - Google Patents

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本発明はファラデー回転角が大きくて、且つ可視光に透明な磁性膜及び磁性膜の製造方法に関するものであり、更にはこの可視光に透明な磁性膜と偏光子層とを組み合わせて設けた、ディスプレイ、光スイッチなどの用途に好適な磁気光学素子に関する。
透明磁性膜のファラデー効果を用いた磁気光学素子は、磁性膜の高い耐久性、即ち温度や湿度、薬品、光などに対する耐久性が高いことおよび、膜として高い柔軟性を有するために、支持体としてプラスチックフィルムを用いれば、フレキシブルな磁気光学素子として用いることが出来、またナノ秒という速い書き換えスピード、及び磁気ペンなどによる追記が可能などの多くの特徴がある。そのためいくつかの磁気光学素子の提案がある。
例えば従来のファラデー効果を用いた磁気光学素子においては、透明磁性膜として「希土類鉄ガーネット薄膜」を用いたもの(特許文献1)や、「希土類鉄ガーネット粉末を塗布膜として」用いたもの(特許文献2)や、「希土類鉄ガーネット単結晶」を用いた磁気光学素子(非特許文献1)が提案されている。しかし「希土類鉄ガーネット薄膜」は製膜のための加熱温度が500℃〜700℃と高いために、使用する支持体が大幅に制限されて、例えばプラスチックフィルムを用いることが出来ない。また「希土類鉄ガーネット粉末」を用いる場合には、結晶化のための高温は必要ないが、粒界による大きな光散乱のために、実用的な膜厚においては可視光の透明性が得られず、従って光遮断時/光透過時の光量によって表示するコントラスト比が小さく実用的なコントラスト比は得られなかった。また、「希土類鉄ガーネット単結晶」は大きな面積で得る事が困難であり、フレキシビリティも得られず、高価で有った。
また、ファラデー回転を利用した代表的素子としては、1990年代の米国カーネギーメロン大学とリットン社とで共同開発された空間光変調器がある(非特許文献1)。この素子ではLPE法で作製した3μmもの厚い単結晶希土類鉄ガーネット膜を用いており、また各ピクセルは分離されている。XとYのドライブラインを用いており、交点での局部的磁界強度を用いて磁化反転させる方法である。しかし効率が悪く従って大きな電流(250mA)を用いている。またX配線は磁界利用効率を高めるために、希土類鉄ガーネット膜中に埋め込むと言う複雑な構造がとられている。
ところで、透明磁性膜としては、既にチタニア磁性半導体ナノ薄膜が提案されている(特許文献3)。ここでは、チタニア磁性半導体ナノ薄膜と有機膜を1層ずつ、電気的なエネルギーを用いて積層していく製膜方法(交互自己組織化技術)(図1)がとられているが、この方法では時間がかかって生産性が低く、実用性が極めて低かった。またチタニア磁性半導体ナノ薄膜/有機膜の構成を30回程度繰り返すと、光散乱による白濁が発生して、膜の透明性が低下した。実用的なファラデー回転角を得るための膜厚は1μm程度であるので、1000回程度の積層が必要であり、この方法では磁気光学素子としての実用化は困難である。
また、Co置換とFe置換の2種類のチタニア磁性半導体ナノ薄膜を積層すると、30度/μmの回転角が得られることが既に報告されている(非特許文献2)。しかし、30度以上のファラデー回転角を得るためには、1μm程度の膜厚が必要になり、特許文献3に記載されているような従来の積層法では透明な膜は得られない。
このように、従来の各種のPVD(物理的真空製膜)法に従い真空装置において支持体を数百℃と加熱してなくとも、透明磁性膜を製膜する方法としてチタニアナノシートを用いる方法が考えられるが、上述したように、従来のナノシートと有機膜を1層ずつ交互に積層する方法は、生産性の点で現実的でないばかりか、30層程度以上で光散乱による白濁が生ずるという課題があった。
特公昭56−15125号公報 特開昭62−119758号公報 特開2006−199556号公報 J.Appl.Phys.,76,p1910(1994)J-k.Choほか Adv.Mater.,18,295-299(2006)
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、支持体加熱も必要なく、常温で、空気中製膜可能でプラスチックフィルムも支持体として用いることができ、更に高い可視光透過率(80%以上)と大きなファラデー回転角(10度以上)を有するために高いコントラスト比を得ることができる磁性膜、及びチタニアナノシート分散液をそのまま塗布することにより磁性膜を高生産性で得ることのできる磁性膜の製造方法を提供することを目的とし、さらに前記磁性膜を用いた磁気光学素子を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。
(1) 透明な支持体上にナノシートが形成され、該ナノシートは、Ti格子位置に磁性元素が置換した層状チタン酸化物粉末と分散剤と水溶性有機化合物とを含むナノシート分散液を塗布及び乾燥したものであり、前記水溶性有機化合物は、ゼラチンであり、且つ、5〜30重量%含有されてなり、前記ナノシートは、Ti格子位置に置換する元素がCo及びFeの2種類のナノシートの混合物からなることを特徴とする磁性膜。
) 前記ナノシートが、可視光に透明であることを特徴とする前記(1)に記載の磁性膜。
) 前記支持体は、表面接触角を低下させる表面処理層を有することを特徴とする前記(1)または)のいずれかに記載の磁性膜。
(4) 前記表面処理層は、水に対する表面接触角が10°以下であることを特徴とする請求項3に記載の磁性膜。
(5) 前記支持体表面に設けられた直線状で且つ一定ピッチの周期構造の溝の中に形成されてなることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の磁性膜。
(6) 前記ナノシート分散液が、磁場印加の下に乾燥されてなることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の磁性膜。
(7) 透明な支持体上にTi格子位置に磁性元素が置換した層状チタン酸化物粉末と分散剤と水溶性有機化合物とを含むナノシート分散液を塗布した後、磁場印加の下に乾燥して、Ti格子位置に磁性元素が置換した層状チタン酸化物からなるナノシートと、該ナノシートを包囲した分散剤と、水溶性有機化合物とを含む磁性膜を得て、前記水溶性有機化合物は、ゼラチンであり、且つ、5〜30重量%含有されてなり、前記ナノシートは、Ti格子位置に置換する元素がCo及びFeの2種類のナノシートの混合物からなることを特徴とする磁性膜の製造方法。
(8) 前記(1)〜(6)のいずれかに記載の磁性膜と偏光子層と磁場発生装置とからなり、該磁場発生装置によって前記磁性膜を磁化することにより偏光を透過または遮断することを特徴とする磁気光学素子。
(9) 前記磁性膜と、該磁性膜より屈折率の小さい誘電体薄膜との多層膜構造としたことを特徴とする前記(8)に記載の磁気光学素子。
本発明の磁性膜によれば、高い可視光透過率(80%以上)と大きなファラデー回転角(10度以上)を得ることができる。
本発明の磁性膜の製造方法によれば、常温で、空気中製膜可能でフレキシブルなプラスチックフィルムも支持体として用いることができ、高生産性で磁性膜を生産することができる。
本発明の磁気光学素子によれば、本発明の磁性膜が高い可視光透過率と大きなファラデー回転角を有することにより、高いコントラスト比を得ることができる。
以下に、本発明に係る磁性膜及びその製造方法、並びに磁気光学素子について説明する。
まず、本発明に係る磁性膜は、透明な支持体上に設けられ、Ti格子位置に磁性元素が置換した層状チタン酸化物からなるナノシートと、該ナノシートを包囲した分散剤と、水溶性有機化合物とを含むことを特徴とするものである。
ここで、支持体の材料としては、一般に、石英ガラス、GGG(ガリウムカドリウムガーネット)、サファイア、リチウムタンタレート、結晶化透明ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、Al23、Al23・MgO、MgO・LiF、Y23・LiF、BeO、ZrO2、Y23、ThO2・CaOなどの透明セラミック材料等の無機材料を用い得る。
また、本発明では、透明磁性体として有用なチタニア磁性超薄膜をナノシートとして用いる。この超薄膜は、化学式:Ti2-x4 (ただし、M=V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuから選ばれる少なくとも1種の遷移金属、0<x<2)で表され、Ti格子位置に磁性元素が少なくとも1種の金属が置換した層状チタン酸化物微結晶を化学的処理により結晶構造の基本最小単位である層1枚にまで剥離して得られる薄片粒子(以下ナノシートと呼ぶ)からなる磁性半導体ナノ薄膜である。以下にこのナノシート作製方法に関して述べる。
まず、層状構造を有するチタン酸化物粉末に塩酸などの酸水溶液を接触させ、生成物をろ過、洗浄後、乾燥させると処理前に層間に存在したアルカリ金属イオンがすべて水素イオンに置き換わり、水素型物質が得られる。次に得られた水素型物質をアミン等の水溶液中に入れ撹拌すると、コロイド化する。このとき、層状構造を構成していた層が1枚1枚にまで剥離することとなる。この前段の酸処理は、特公平6−88786号公報、特許第1966650号及び特公平6−78166号公報、特許第1936988号、特開平9−25123号公報、特許第2671949号に開示されている。
また出発化合物である層状チタン酸化物としては、レピドクロサイト型チタン酸塩のTi格子位置に遷移金属元素(V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu)が少なくとも1種置換した層状チタン酸化物Ti2-x4 (ただし、M=V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cuから選ばれる少なくとも1種、0<x<2)などを用いることができる。より好ましくは、Fe又はCo元素を0<x<0.8の範囲に置換することである。室温以上での強磁性特性を誘起する遷移金属元素としては、Fe又はCo元素を0<x<0.8の範囲に置換することが望ましいが、V,Cr,Mn,Fe,Co,Niから選ばれる少なくとも1種の遷移金属濃度の調整、2種以上の金属の組み合わせ、ドーパントの添加などにより強磁性特性、例えば、磁化率、磁気光学特性、磁気転移温度などを調整することが可能となる。CoとFeと言うように2種類の元素を同時に1つのナノシート中に置換することも、大きなファラデー回転角を得るための有力な方法である。
ついで、上記の層状チタン酸化物Ti2-x4を酸処理して水素型(H0.8Ti2-xMxO4・nH2O)に変換後、適当なアミンなどの水溶液中で振盪することにより、ゾル化する。このゾル溶液中には母結晶を構成していた層、すなわちナノシートが1枚ずつ水中に分散している。ナノシートの厚みはその出発母結晶の結晶構造に依存するが、1nm前後と極めて薄い。一方、横サイズはμmオーダーであり、非常に高い2次元異方性を有する。
ところで、従来技術の課題で述べたように、チタニアナノシートの分散液をそのままスピンコーターその他の塗布方法で1μm程度の厚みに塗布すると、ランダムに積層したナノシートからの光散乱によって透明性が得られないという課題がある。ここでチタニアナノシート分散液の分散剤としては、TBA(テトラ ブチル アンモニウム)が好ましく用いられる。勿論他の分散剤でも構わないが、チタニアナノシートはマイナス電荷を帯びているので、電気的な結合により凝集を発生させない材料が必要となる。TBAは水溶媒への分散剤として用いられ、製膜時にナノシートのほぼ全表面を一層で覆うような構造をとり、ナノシートを包囲する。
また、本発明は水溶性(水性)高分子を水溶性有機化合物として分散剤以外に追加して用いることにより、光散乱を低下させて、膜の透明性を確保するものである。ナノシートで散乱した光は、この追加した透明高分子により、光導波路のように磁性膜を通過すると思われる。
なお、水溶性(水性)高分子の使用量としてはあまり少ないと光の通過路としての機能が果たせない。またあまり多いと磁性膜としての機能が低下しすぎることになる。0〜40重量%の間で最適な混合量を検討したところ、透明性は混合量に比例して向上するが、5重量%〜30重量%が高い透過率が得られ、特に好ましいことが実験(実施例1)の結果わかった。31重量%以上では磁気的特性特にファラデー回転角の低下が著しいので、30重量%以下の混合量が好ましい。
また、水溶性(水性)高分子を用いることにより、TBAなどの分散剤によって抱き込まれた気泡を大幅に減少させる効果が生じる。水溶性(水性)高分子を用いない場合には、製膜乾燥後の膜中には多くの空孔(数百nmから数μmの長さ)が含まれ、光散乱を生しで膜の透明性が低下するが、水溶性(水性)高分子を用いた場合には、この空孔が断面TEM観察しても見られない。結果として膜の透明性が大幅に向上することになる。膜の透明性は本発明品を使用する場合に、光透過時の信号強度に寄与するので非常に重要である。
ここで言う水溶性(水性)高分子とは、水に溶解する高分子であり、例えば、でんぷん、カゼイン、にかわ、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ソーダ、ペクチンなどの天然高分子、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ビスコースなどの半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンなどの合成高分子が挙げられる。
なおこのようにして作製した磁性膜(透明磁性膜)は、製膜後、過熱又はUV照射によってTBAが吸収している水分を取り除く方が好ましく、よりナノシート層のファラデー効果を発揮することがわかった。加熱は100℃〜150℃、10分〜数時間程度で良い。またUV照射は数時間から数十時間と十分に照射することが好ましい。例えば1μmの厚みに塗布した場合のファラデー回転角は、チタニアナノシートの磁性原子置換条件によるが、5〜20°と実用上適用可能な値が得られた。
また本発明の磁性膜において、前記水溶性(水性)高分子は、ゼラチンであることが好適である。
本発明において、ナノシートは積層して用いられることが好ましいが、水溶性(水性)高分子の中でも、ゼラチンはこの点(ナノシートの積層化)において特に好ましい。ゼラチンと、他の水溶性高分子、例えば上記カルボキシメチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコールをナノシートの10重量%用いた場合に、膜厚みを1μmとして塗布すると、X線回折図における回折ピーク(2θ≒4.8°)強度はそれぞれ以下のとおりであった。
・カルボキシメチルセルロース 33 kcounts/s
・ヒドロキシエチルセルロース 11 kcounts/s
・ポリビニルアルコール 18 kcounts/s
・ゼラチン 75 kcounts/s
回折ピーク(2θ≒4.8°)強度はナノシートの積層周期によって生ずるもので、1次回折線と称され、他にも2次、3次などの回折線が現れる。回折ピーク強度は、図2のように支持体11上におけるナノシート12aの配列の規則性の高さ(図2(b)の状態が図2(a)の状態よりも配列の規則性が高い)に比例して大きくなるので、ゼラチンの場合には非常に好ましいと言える。またゼラチンを用いた場合の膜断面をTEM法で観察すると、上記3種類の水溶性高分子に比較して、最も膜中の空孔が少なくかつ表面凹凸が少ないため(平滑性が高い)に、膜の高い透明性が得られるので、ディスプレイにおいては高いコントラスト比が得られることとなり、最も好ましいことがわかった。なおゼラチンはたんぱく質の分解率を高めて用いた方が、ナノシートとの凝集発生が少なく好ましい。
また、本発明の磁性膜において、ナノシートはTi格子位置に置換する元素がCo及びFeの2種類のナノシートの混合物からなることが好ましい。
Ti格子位置に置換する元素がCoおよびFeである2種類のナノシート分散液を混合塗布した場合には、特にそれぞれのナノシートを別々に塗布した場合よりも大きなファラデー回転角が得られることがわかった。例えばCo置換ナノシートは単独で製膜すると、波長450nmにおけるファラデー回転角は2°/μmであり、Fe置換ナノシートは1°/μmで有るが、混合液塗布すると、回転角は6°/μmとなり大幅に増加することがわかった。膜中のナノシート積層の配列としては、以下の3種類が考えられる。すなわち、(1)Co置換ナノシートとFe置換ナノシートの積層、(2)Co置換ナノシートとCo置換ナノシートの積層、(3)Fe置換ナノシートとFe置換ナノシートの積層である。これらの組み合わせの内、(1)Co置換ナノシートとFe置換ナノシートの積層が含まれることによって、Co2+→Fe3+の遷移による層間相互作用に起因するファラデー回転角の大幅な増大が発生したと考えられる。
また、本発明の磁性膜において、前記支持体の表面に水に対する表面接触角を低下させる下地層(表面処理層)を設けることが好ましい。
ナノシートは上述してきたように、周期的配列性が非常に重要である。この配列性を高める要因としては、支持体の水に対する表面接触角があり、10°以下と低いことが重要なことがわかった。前記Ti格子位置に置換する元素がCoおよびFeである2種類のナノシート分散液(ゼラチン混合液)を用いて、膜厚みを1μmとしてガラスの支持体上にスピンコートすると、X線回折図における回折ピーク(2θ≒4.8°)強度に大きな差異が現れた。
また、図2(a)のようにナノシートの配列性が低いと、ファラデー回転角も小さくなることがわかった。表面接触角が高いと、分散液中のナノシートの支持体表面へのなじみがわるく、従ってその上へのナノシートの配列性に差異が生ずるものと考えられる。
なお、表面接触角を低下させる方法は従来から各種ある。例えば表面を酸素、オゾン、窒素、アルゴンなどの各種プラズマなどを用いて、支持体表面の汚れを落とす方法は良く用いられる。しかしこれらの表面清浄化方法は、処理後空気にさらすことによって汚れの再付着が生ずる。本発明のように塗布法を用いてプラスチックフィルムに設ける場合には、十分な接触角低下が得られず、適していないことがわかった。また塗布液は特殊形状(例えば厚さ1nm×縦1μm×横1μm)を呈しており、かつ電気的に強いマイナス電荷を帯びているという事情から、ナノシート分散液の濃度を高くすることができない。このために表面接触角の大小は特に重要で、長時間安定して低いことが要求される。そこで鋭意検討した結果、支持体表面に下地層を設けるなどの加工処理することにより長時間低い表面接触角が得られる方法が好ましいことがわかった。例えば空気中真空雰囲気でのイオンビームを利用し、反応基を樹脂表面へ注入する表面改質処理方法や、界面活性剤など各種の有機材料塗布する方法、表面に微細な凹凸を設ける方法、酸化チタンなどの触媒機能を有する透明無機材料をPVD法やCVD法及び塗布法などで設ける方法など、表面処理層を設けることが好ましい。
また、本発明の磁性膜において、該磁性膜が前記支持体表面に設けられた直線状で且つ一定ピッチの周期構造の溝の中に形成されてなることが好ましい。図3は、その状態を示す断面である。支持体11の表面に直線状の溝11aを複数列形成して直線状周期構造を形成した後、その溝11aそれぞれに本発明の磁性膜12を形成する。これにより、磁性膜12が支持体11の表面上で直線状で且つ一定ピッチの周期構造の筋となり、この筋状の磁性膜12の中で前記ナノシートが配列されるようになる。
本発明者は、支持体11の表面に直線状の溝11aを複数列形成して直線状周期構造を形成した後、その上に磁性膜をスパッタ法や真空蒸着法で形成すると大きなファラデー回転角が得られることは既に提案している(特許第3628859号公報、特許第3654553号公報)。しかし、いずれもドライプロセスによる製膜のために支持体加熱が必要であったり、真空装置が必要であったりした。
本発明はこれを改善するものであり、支持体加熱が不要で、真空装置も不要な新規な製膜法と磁気媒体を提供するものである。すなわち、本発明に用いてきたナノシートの形状から、ナノシート分散液を、溝11aを有する支持体11の表面上に放置するだけで、周期構造の溝11a中にナノシートが入り込み、好ましい透明磁性媒体が得られることがわかった。特に以下に述べる強磁場発生装置と組み合わせて所定の磁場の下で本発明の磁性膜12を形成すると、溝11a中にナノシートを縦(溝11aの深さ方向)に配列させることができ、垂直磁気異方性が大きな透明磁気媒体とすることができた。このとき、ナノシートは面内に大きな形状異方性を有しているので、溝11aにおいて立てて配列すると垂直磁気異方性が生じて、光との相互作用が大きくなる。即ちファラデー効果が大きくなる。
なお従来の透明磁性体を溝中に入れた場合の増大効果よりも、本発明の場合には磁性体の屈折率が従来は2以下であるのに対して、2.5〜3と特に大きいために、より大きく周期構造効果(光の進行方向に対して、直角な面の屈折率が周期的に大きく変化する)が重畳されて、平面均一塗布膜に比較して従来にない大きな回転角増大を得る事ができる。
また、本発明では、透明な支持体上にTi格子位置に磁性元素が置換した層状チタン酸化物粉末と分散剤と水溶性有機化合物とを含むナノシート分散液を塗布した後、所定の磁場印加の下に乾燥して、本発明の磁性膜を形成するとよい。
ナノシートの周期的配列(積層構造)は、ナノシート間電子遷移を効率的に得て、大きなファラデー効果を発現させる為に最も重要な因子である。この配列性向上の為に塗布後乾燥中に、磁場を印加することが大きな効果を発揮することがわかった。このとき、1枚のナノシートの飽和磁化が小さいので、従来の磁場配向方法よりは1桁以上磁場は大きいことが必要である。特に1テスラ以上の強磁場が好ましく、支持体面に垂直であったり、水平に磁場を印加することが好ましい。例えば、ナノシート分散液塗布後、乾燥中に3テスラの磁場を支持体面に水平に印加すると、前述したX線回折図の最大ピークは、同一厚みで印加しない場合に比較して、約10倍に増加することがわかった(図4)。
また、支持体面に垂直に磁場を印加すると、ナノシートが支持体面に垂直に配列する。ナノシートの磁気異方性はシート面内にあるが、この場合、全体的な磁性膜の異方性は支持体面に垂直となり(所謂垂直磁化膜となる)、支持体面に垂直に透過する光との相互作用がより強まり、ファラデー回転角が増大することがわかった。
なお、本発明で用いるナノシートは、従来の針状酸化鉄磁性体や鉄などの合金粉末磁性体とは形状が大きく異なる。例えば針状酸化鉄は針状の形状をしており、長軸/短軸の長さの比率は2〜20であり、この形状ゆえに磁束に沿って支持体面に平行に配列することが知られている。本発明のナノシートは、厚みが約1nmと極端に薄く、かつ縦と横の寸法は数百nmから数μmと厚みに対して大きい。このような従来の磁性体にはない特異な形状のナノシートが、本発明のような塗布方法において1テスラ以上の強磁場下において、シート配列性が一桁向上して、かつファラデー効果が向上することは全く知られていなかった。
つぎに、本発明に係る磁気光学素子について説明する。
本発明に係る磁気光学素子は、前述した本発明の磁性膜と偏光子層と磁場発生装置とからなり、該磁場発生装置によって前記磁性膜を磁化することにより偏光を透過または遮断することを特徴とするものである。
ここで言う磁場発生装置とは、導線を巻いた磁気コイルや永久磁石のことであり、好ましくは小さな磁気コイルを縦横に平面的に複数配列した、マイクロ磁気ヘッドアレイが用いられる。本発明では膜を磁化するために必要な磁界が従来よりも大幅に少なくて済むために、磁界発生には巻き線でなくても、直線配線でも良いし、また磁気コイルの配線数を少なくすることができる。また、従来のようにAu、Ag、Al、Ptのような金属配線でなくても、SnO、In、ZnOなどの透明導電膜を用いても、磁性微粒子の磁化方向を容易に反転することができる。更にはエチレンジオキシ基を有するBEDO−TTF錯体や、C60誘導体を用いたCT錯体などの有機物透明導電材料を用いることもできる。従って従来の磁性体連続膜や磁性体周期構造上膜よりも、はるかに大きな透明性が得られ、これに伴いコントラスト比の高いディスプレイが得られる。
また偏光子層としては、各種の市販の偏光フィルムを用いることができる。偏光フィルムには大別して多ハロゲン偏光フィルム、染料偏光フィルム、金属偏光フィルムなどがあるがこれらに限定されるものではない。また以下の偏光子を用いることもできる。
(1)特開平01−93702号公報記載の偏光子
強磁性体微粒子からなる多数の棒状素子を含む偏光層支持体表面に、一定方向に配列して固着形成することにより、製造が容易でかつ光学的特性の優れた偏光板である。
(2)ワイヤグリッド偏光子(東京農工大学 佐藤勝昭著「現代人の物理−光と磁気」(朝倉書店)1988年出版、ページ103に記載。)
透明支持体に微小な間隔で金やアルミニウムの線をひいたものある。この場合、線の間隔d、波長をλとすると、λ≫dの波長の光に対して、透過光は線に垂直な振動面を持つほぼ完全な直線偏光に成ることを利用している。偏光度は97%程度と言われている。
(3)コーニング社製「ポーラコア」
長く延伸させた金属銀をガラス自身の中に一方向に配列させることにより、偏光特性を持たせたガラスで、従来の有機物偏光素子と異なり耐熱性、耐湿性、耐化学薬品性、レーザーに対する耐性に非常に優れている。赤外線用が主であるが、特殊仕様として可視光用がある。
(4)積層型偏光子
東北大学電気通信研究所の川上彰二郎教授が1991年頃に発表したもので、可視光用にはRFスパッタリング法で、6〜8nmの厚みのGe(ゲルマニウム)と、1μm厚みのSiOを交互に60μm厚みになるまで積層して作製している。0.6μmの波長で測定した性能指数αTE/αTM(TE波とTM波に対する消衰定数の比)は400近く、0.8μmの波長で測定した消光比は35dB、挿入損失は0.18dBであり、可視光に対して十分なものである。
(5)反射型偏光子
住友3M株式会社が販売しているものである。屈折率の異なる薄膜を何百層も重ねて積層し、層間で反射・透過を繰り返して偏光を取り出す。SとP偏光の内一方を反射して、一方を通過させるために反射型という。全厚みは100μm程度である。吸収タイプに比較して、反射するので画像が明るく感じられる。米Moxtek社のアルミニウム細線を周期的に並べた、ワイヤグリッドタイプの反射型偏光子もある。
(6)偏光ビームスプリッター
光束を2本以上のビームに分割又は合成する光学素子をビームスプリッターという。その中でも分岐された2光束の偏光方向が異なるように分割するものを偏光ビームスプリッターという。2個の直角プリズムを接着した面に誘電体多層膜をコートしたものが一般的であり、P偏光成分は透過し、S偏光成分は90度反射するようになっている。透過率、反射率ともに98%以上のものが得られる。他には特殊なグレーティングを用いたようなものもある。
(7)偏光プリズム
1軸性結晶は、光学軸方向に垂直に振動する常光線と光学軸を含む主断面内に振動方向をもつ異常光線では異なった屈折率を持つので、1軸性結晶から切り出した2つのプリズムを組み合わせると、振動面の異なる光を分離することができる。ニコルプリズム、グラントムソンプリズム、グランフーコープリズム、グランテーラープリズム、ロションプリズム、ウォーラストンプリズムなどがある。
(8)回折格子
回折格子はピッチを小さくしていけば、TE波とTM波の透過率が異なり、偏光子として機能する。偏光子とは呼ばないが、偏光子機能を有するので、本発明に偏光子として用いることが可能である。
ところで、透明磁性膜と偏光子層を重ねたりして、組み合わせて設け、透明磁性膜を磁場発生装置によって部分的に磁化して、偏光を透過および遮断することにより、コントラスト比を発現させた磁気光学素子は既に本発明者によって提案されている(特許第3626576号公報、特許第3628859号公報、特許第3672211号公報ほか)。これら従来の発明に対して本発明では、従来に無かった以下の多くの特徴を有する透明磁性材料であるチタニアナノシートを磁性膜として用いることにより、大幅にコントラスト比の増大した磁気光学素子を提供できるようになった。
例えば、可視光透過率については、従来の希土類鉄ガーネットが500nm以下の波長で急激に低下するために、無色透明とはならなかった。このために表示素子としては黄色に着色したものとならざるを得なかったが、本発明では可視光域の透過率が1μm厚の場合に、80%以上であり無色透明である。これは前述したように、水溶性有機化合物をナノシートと合わせて用いた効果であり、このために得られた結果(高透過率)である。このことは磁気光学素子として用いた場合の光透過時の光量を上げるものであり、従って大きなコントラスト比が得られることになる。
また、屈折率が3.0程度と、従来の希土類鉄ガーネットなどの2程度から大幅に向上したナノシートを、図3に示したように周期構造を形成して用いることにより、面内の屈折率比が向上して、より薄くてより大きなファラデー回転角を得る事ができるようになり、やはり従来にない大きなコントラスト比が得られることになった。
なお、従来と最も大きな違い、効果はファラデー回転角が数倍大きいことである。従来の希土類鉄ガーネットの内でも特に大きいBi置換鉄ガーネットの回転角は、530nmの光に対して7°/μm程度であったが、本発明のナノシートの回転角は上述したように、透明性や配列性を向上させた結果、数十°/μmと大きな回転角が得られて、結果として大きなコントラスト比を有する磁気光学素子(表示素子)とすることができた。
また、本発明の磁気光学素子において、前記磁性膜と、該磁性膜より屈折率の小さいSiOなどの誘電体薄膜とを積層した多層膜構造とするとよい。
本発明で用いるチタニアナノシートの比誘電率は125と、酸化チタン(ルチル型)の75に比べて約1.7倍高い。しかし従来のレイヤーバイレイヤー方式で、例えば100nm(最短可視光400nmの1/4)の厚みに積層すると実用的に透明な膜は得られなかった。本発明の製膜方式を用いると、この高い誘電性を利用して誘電体多層膜構造が得られ、光の多重反射によるファラデー回転角の増大が可能になった。
以下に、2つの事例(複合透明磁性層)を示すが、従来との違いは高屈折膜としてナノシートを用いることである。
第1の複合透明磁性層は、誘電体をG、磁性体をMとすると、{(GM)n(MG)n}mの層構成を有するものである。nとmは層の繰り返し数である。誘電体層Gと磁性体層Mは、GMの次はMGのように積層順が逆になる。即ち磁性体層Mに関して対称となることが必要である。通常、nは1〜40、mは1〜40が適当である。また、光学膜厚(n・d)は1/4波長である。この場合誘電体層Gの屈折率は、磁性体層(ナノシート)Mよりも小さい。従来は大きな屈折率を有する透明磁性体が無かったために、逆の組み合わせでしか用いることができなかったが、従来よりも大きな屈折率差を持たせて形成することができるようになったために、従来よりも大きな回転角増大効果が得られるようになった。
第2の複合透明磁性層は、第1の複合透明磁性層において、上記Gの層を高屈折率層と低屈折率層の2層で構成したものである。
本発明の磁気光学効果を有する層(磁性膜)に誘電体膜を併せて用いる場合、その誘電体膜に用いられる材料は、透明でかつ熱的に安定な物質が適し、例えば金属や半金属の酸化物、窒化物、カルコゲン化物、フッ化物、炭化物、及びこれらの混合物であり、具体的にはSiO、SiO、Al、GeO、In、Ta、TeO、TiO、MoO、WO、ZrO、Si、AlN、BN、TiN、ZnS、CdS、CdSe、ZnSe、ZnTe、AgF、PbF、MnF、NiF、SiCなどの単体あるいはこれらの混合物である。これらの材料の中から透明磁性体層よりも屈折率が小さい材料を選択すればよい。各膜厚は5〜200nm、好ましくは5〜30nmの範囲にするのがよい。誘電体膜は複数の層構成としても良く、膜は各種のPVD、CVD法を用いて作製する。
なお、本発明に係る磁気光学素子は、必ずしも透過光のコントラスト比を用いるディスプレイにだけ利用するものではない。ファラデー回転角を用いる従来から利用されている光アイソレーターや、所謂光スイッチ機能を利用した通信用「光スイッチ」等にも用いることができる。即ち、磁気コイルに電流を流した場合と、逆方向に電流を流した場合の光透過率変化を利用した「光スイッチ」である。また、勿論磁気ヘッドとしてコイルを併設した方式の磁気記録媒体として、またコイルを別途磁気ヘッドとして設けて、ディスク状テープ状の磁気記録媒体として利用することも可能である。更には上記光スイッチ機能を利用して、電流によって連続的に光透過率を変化させる自動調光窓として用いることもできる。
また偏光変換素子を併用すれば、S波やP波だけの利用ではなく、光の70%程度を
利用する各種光学素子として利用することも可能となる。
以下、本発明を実施した例について説明する。
(実施例1)
まず、炭酸カリウム(K2CO3)、二酸化チタン(TiO2)、酸化コバルト(CoO)、酸化鉄(Fe2O3)をK0.8Ti1.6Co0.4O4、K0.8Ti1.2Fe0.8O4のモル比になるように秤量、混合し、800℃で40時間焼成して磁性元素置換チタン酸カリウム(K0.8Ti1.6Co0.4O4、K0.8Ti1.2Fe0.8O4)を合成した。
ついで合成した磁性元素置換チタン酸カリウム(K0.8Ti1.6Co0.4O4、K0.8Ti1.2Fe0.8O4)を粉末1gに対して1規定の塩酸溶液100cm3の割合で接触させ、時々撹拌しながら室温で反応させた。1日毎に新しい塩酸溶液に取り替える操作を3回繰り返した後、固相を濾過水洗して風乾した。
つぎに得られた層状チタン酸粉末(H0.8Ti1.6
Co0.4O4・nH2O、H0.8Ti1.2Fe0.8O4・nH2O)0.5gをテトラブチルアンモニウム水酸化物溶液100cm3に加えて室温で1週間程度振盪(150rpm)し、乳白色のチタニアゾルを得た。これを50倍に希釈した溶液を調製した。なお、本発明では、H0.8Ti1.6
Co0.4O4・nH2OをCo置換ナノシートと記し、H0.8Ti1.2Fe0.8O4・nH2OをFe置換ナノシート表す。またH0.8Ti1.6
Co0.4O4・nH2Oの分散液をCo置換ナノシート分散液と記し、H0.8Ti1.2Fe0.8O4・nH2Oの分散液をFe置換ナノシート分散液と表す。
ついで、水100gに対してゼラチン粉末5gを溶解して作製したゼラチン溶解液(5重量%)と上記Co置換ナノシート分散液、Fe置換ナノシート分散液それぞれとを混合して分散液を作製した。ここでは、上記Co置換ナノシート分散液とFe置換ナノシート分散液それぞれ10gに対して、ゼラチン1、3、5、10、15、20、30重量%となるように、ゼラチン溶解液(5重量%)とCo置換ナノシート分散液、Fe置換ナノシート分散液それぞれとを混合し、超音波分散器を用いて分散した。
分散液を良く洗浄した石英ガラス支持体上に、スピンコート法を用いて、乾燥後の厚みが約1μmとなるように製膜した後、空気中で自然乾燥した。
その結果、1重量%と3重量%ゼラチンを混合したナノシート膜は必ずしも十分な透明性では無かったが、5重量%以上のゼラチンを混合したCo置換ナノシート膜及びFe置換ナノシート膜はいずれも透明であった。30重量%以上混合した場合には、透過率は向上するものの、ファラデー回転角が低下するので好ましくない。
なお他の水溶性高分子として、CMCやPVAを同量用いた場合は使用量に関わらず、ゼラチンの場合より透明性は低かった。20重量%のゼラチンを混合した場合の吸光度は、400nm〜800nmの波長範囲で、0.5以下であった。
(実施例2)
上記Co置換ナノシート分散液、Fe置換ナノシート分散液、両分散液を混合した液(CoとFe置換の混合(混合比1/1)ナノシート分散液)それぞれに、前記ゼラチン溶解液(5重量%)を、ナノシート重量に対して20重量%のゼラチン含有量となるように混合し、それぞれ超音波分散器を用いて分散して3種類の分散液とした。
つぎに、分散液を、良く洗浄した平板の石英ガラス支持体上に、スピンコート法を用いて、乾燥後の厚みが約1μmとなるように製膜した後、空気中で自然乾燥した。その後電気炉中で140℃、10分間加熱した。Co置換ナノシートは単独で製膜すると、波長450nmにおけるファラデー回転角は2°であり、Fe置換ナノシートは1°で有るが、混合液塗布すると、回転角は6°となり大幅に増加することがわかった。
(実施例3)
実施例2で作製した3種類の試料の内、Co置換ナノシート分散液とFe置換ナノシート分散液の両分散液を混合した液を、5種類の異なる超親水化膜を形成・塗布した石英ガラス支持体上に実施例2と同様にして製膜、乾燥した。5種類の支持体の表面接触角(°)と、X線回折法による最大1次回折ピーク強度の平均値(kcounts/s)は次の通りであった。
(支持体1)4°:89kcounts/s
(支持体2)7°:74kcounts/s
(支持体3)10°:70kcounts/s
(支持体4)14°:12kcounts/s
(支持体5)19°:3kcounts/s
その結果、支持体の水に対する表面接触角が10°より高いと、前記X線回折図の最大回折ピーク強度が小さくなり、この場合のファラデー回転角も小さくなることがわかった。
(実施例4)
1mm厚の石英ガラス支持体上に図3のような2μm(L&S=1μm/1μm、深さ1μm)の周期構造となる溝11aをフォトリソグフィー法を用いて形成した。この支持体上に実施例2で作製したCoとFe置換の混合(混合比1/1)ナノシート分散液を滴下し放置した後、140℃加熱を行い、その後溝11a以外に付着したナノシートをナイフで剥離した。
ファラデー回転角を測定したところ、波長450nmのファラデー回転角はフラットな石英ガラス支持体上に1μm厚で塗布した場合には、3.3°で有ったが、本実施例の周期構造膜では18.3°と大きな回転角が得られた。
(実施例5)
実施例2で作製した3種類の試料を、平均3テスラの均一な磁場強度を有する磁場中(住友住機械工業株製ヘリウムフリー超伝導マグネット、電流値84A)で実施例2と同様にして製膜、乾燥した。なお、磁場の向きは石英ガラス支持体に平行とした。
その結果、3種類の試料のX線回折法による最大1次回折ピーク強度の平均値(kcounts/s)及び波長450nmのファラデー回転角(°)は次の通りであった。
・(磁場なし)30kcounts/s,3°
・(3テスラ磁場中乾燥)340kcounts/s,6.7°
このように、支持体面に平行に強い磁界を印加すると、前記X線回折図の最大回折ピーク強度が約10倍と大きくなり、この場合のファラデー回転角も大きくなることがわかった。なお上記と同様にして塗布した3種類の試料を、上記の中間磁場強度の0.5テスラの磁場中で乾燥させたが、X線回折強度の向上は観察できなかった。
(実施例6)
上記実施例4で作製したナノシート膜を用いて、図5に示す磁気光学素子を作製した。すなわち、上記実施例4で作製したナノシート膜(支持体11と磁性膜膜12からなるもの)を市販のヨウ素タイプの2枚の偏光子13ではさみ、片側には銀製の反射膜14を設けた。また、太さ25μmの銅線を外形14mmになるように、150回巻いた磁気コイル15を形成し、反射膜14のナノシート膜とは反対側に配置して、該磁気コイル15にスイッチ17によるON、OFF制御で電源16から直流電流を供給した。この磁気光学素子に入射した光は電流のON、OFFに応じて黒と白に変化するのが確認できた。コントラスト比は23であった。
(実施例7)
実施例2で作製したCoとFe置換の混合(1/1)ナノシート液を0.1mm厚の石英支持体に、スピンコート法で塗布して光学的膜厚が450nm/4となるように設けた後、140℃の加熱を行った。つぎにその膜上に更に市販のシリカエアロゾル(粒径nmオーダー超微粒子シリカを水に分散させたもの。日本化学工業株式会社製)を光学的膜厚が450nm/4となるように設けた。次いで以下同様にしてナノシート/シリカエアロゾルの積層を合計6回行った。
得られた試料の波長450nmのファラデー回転角は、フラットな石英ガラス支持体上にナノシートだけを6回塗布した場合は、3.3°であったが、周期構造膜では18.3°と大きな回転角が得られた。
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
チタニアナノシートとポリマー層との積層膜の構成を示す概略図である。 磁性膜形成時の磁場印加によるナノシートの配列性の向上の様子を示す概略図である。 本発明に係る磁性膜の構成例を示す断面図である。 強磁場を印加した磁性膜のX線回折図である。 本発明に係る磁気光学素子の構成例を示す断面図である。
符号の説明
11 支持体
11a 溝
12 磁性膜
12a ナノシート
13 偏光子
14 反射膜
15 磁気コイル
16 電源
17 スイッチ

Claims (9)

  1. 透明な支持体上にナノシートが形成され、
    該ナノシートは、Ti格子位置に磁性元素が置換した層状チタン酸化物粉末と分散剤と水溶性有機化合物とを含むナノシート分散液を塗布及び乾燥したものであり、
    前記水溶性有機化合物は、ゼラチンであり、且つ、5〜30重量%含有されてなり、
    前記ナノシートは、Ti格子位置に置換する元素がCo及びFeの2種類のナノシートの混合物からなることを特徴とする磁性膜。
  2. 前記ナノシートが、可視光に透明であることを特徴とする請求項1に記載の磁性膜。
  3. 前記支持体は、表面接触角を低下させる表面処理層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の磁性膜。
  4. 前記表面処理層は、水に対する表面接触角が10°以下であることを特徴とする請求項3に記載の磁性膜。
  5. 前記支持体表面に設けられた直線状で且つ一定ピッチの周期構造の溝の中に形成されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の磁性膜。
  6. 前記ナノシート分散液が、磁場印加の下に乾燥されてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の磁性膜。
  7. 透明な支持体上にTi格子位置に磁性元素が置換した層状チタン酸化物粉末と分散剤と水溶性有機化合物とを含むナノシート分散液を塗布した後、磁場印加の下に乾燥して、Ti格子位置に磁性元素が置換した層状チタン酸化物からなるナノシートと、該ナノシートを包囲した分散剤と、水溶性有機化合物とを含む磁性膜を得て、
    前記水溶性有機化合物は、ゼラチンであり、且つ、5〜30重量%含有されてなり、
    前記ナノシートは、Ti格子位置に置換する元素がCo及びFeの2種類のナノシートの混合物からなることを特徴とする磁性膜の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の磁性膜と偏光子層と磁場発生装置とからなり、該磁場発生装置によって前記磁性膜を磁化することにより偏光を透過または遮断することを特徴とする磁気光学素子。
  9. 前記磁性膜と、該磁性膜より屈折率の小さい誘電体薄膜との多層膜構造としたことを特徴とする請求項8に記載の磁気光学素子。
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