JP4953761B2 - 内視鏡用組織染色剤組成物 - Google Patents

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本発明は、内視鏡による診断に用いる組織染色剤組成物に関する。
内視鏡を用いた診断技術は、上部消化管及び下部消化管における消化管内視鏡検査を中心に、特に癌、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎等の疾患の診断に広く応用されている。これら内視鏡検査における組織の異常(病変部)の検出は、染色剤を用いることなく10〜500倍程度の可視光内視鏡によるのが一般的である。他方、組織表面に色素を含む溶液を撒布した状態で内視鏡観察する色素内視鏡法と呼ばれる方法がある。この色素内視鏡法は消化器内腔表面の形状を明確に観察することができるため、色調の変化によって微細な病変部であっても容易に発見することができる。これら色素内視鏡法に用いられる内視鏡としては可視光内視鏡及び蛍光内視鏡がある。
これらの色素内視鏡法に用いられる色素としては、例えば可視光下での消化管内腔の染色にはインジゴカルミン、蛍光染色にはフルオレセインなどが主に用いられている。
一方、診断においては、生体の組織表面だけでなく、生体組織内部の観察も重要である。生体組織内部を観察する方法としては、バイオプシーなどで採取した組織の微小部を実験室で薄切りし染色の後観察する方法が一般的である。また、生体組織の内部をその場で観察する方法では、例えば、MRI、PET、CT、軟X線法などが全身の観察のために適用されている。消化管内視鏡に関しては、生体組織の自家蛍光反応を応用した内視鏡が商業化されている。生体組織に特定波長の光を照射することで組織の内因性蛍光物質により自家蛍光が発生するので、その強度差及びスペクトラムにより正常部位と病変部位を視覚的に観察することができる。
しかし、通常の内視鏡観察では、病変部を経験的に判断し、組織片を切り取って、別途実験室内で組織染色等の手法により診断せざるを得ない。一方、最近開発された共焦点内視鏡によれば、組織を切り取ることなく、組織内部を観察することができる。すなわち、共焦点システムとは、検出器の前にピンホールを置くことにより、組織内の焦点面のみの反射光を検出し、明確な画像を得ることができる技術である。通常、共焦点光学システムは蛍光物質により染色された試料にレーザー光を走査してその蛍光像を観察する。そのため蛍光染色剤が必要となる。この共焦点システムを採用した共焦点内視鏡は、通常観察光学系と共焦点観察光学系の両者を有しているため、病変部のスクリーニングと、細胞を切り取らずに光学的な組織薄切りによる細胞の観察が低侵襲かつその場で可能となる点で有用である。
共焦点内視鏡による組織内観察を目的として用いられた蛍光色素としては、フルオレセイン及びアクリフラビンが知られている(非特許文献1)。この非特許文献1においては、多量のフルオレセインを静脈内投与し、消化管組織にフルオレセインが到達した時点で、共焦点内視鏡による組織内観察を行っている。また、アクリフラビンの場合には、消化管内に直接撒布して共焦点内視鏡による組織内観察を行っているが、明瞭な染色像が得られず、フルオレセインのほうが有用と記載されている。
Gastroenterology 2004, Vol.127, No.3, p.706-713
しかし、従来から色素内視鏡に使用されている色素であるフルオレセインなどでは重大な副作用がある等の問題がある。また、アクリフラビンの場合、抗生物質であることから生体に対する副作用が問題となる。さらに色素内視鏡、特に共焦点内視鏡では、短時間で細胞の染色が可能であり、さらに可視光観察及び蛍光励起光のいずれの光源に対しても組織表面の形状を鮮明にすることができる色素が求められており、さらに組織内部の染色も可能な色素が求められている。
従って、本発明の目的は、可視光波長領域における消化管内腔表面等の形状を鮮明化すると同時に、特定の波長の光により励起され蛍光を発する機能を有し、さらに生物学的に安全な内視鏡観察に適した染色剤を提供することにある。
そこで、本発明者は、安全性、可視光における染色性及び蛍光における染色性の点から、天然色素に着目して種々検討した結果、全く意外にもベニコウジ由来の色素が、可視光での染色性に優れるとともに、励起波長と異なる波長の蛍光を有し、通常の内視鏡における染色剤として有用であるばかりでなく、さらに共焦点内視鏡における組織内染色用蛍光色素としても有用であること、かつそれらの染色像が鮮明であり小さな病変部の検出に有用であること、また細胞核が染色されずに、細胞質のみが染色されるという特徴を有することから色素による細胞変異性の低いことを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、ベニコウジ由来の色素から選ばれる1種又は2種以上を含有する内視鏡用組織染色剤組成物を提供するものである。
本発明の組織染色剤組成物を用いれば、可視光及び共焦点内視鏡観察下において、すなわち組織を採取することなく、病変部の表面及び組織内部の可視化を同時に行うことができる。消化管からの撒布が可能であることから、その操作性も良好である。また天然色素であることから、人体に対する安全性も高い。
本発明の内視鏡には、消化管内視鏡、呼吸器内視鏡、血管内視鏡、関節内視鏡、腹腔内視鏡などの医療用内視鏡が挙げられる。このうち消化管内視鏡が特に好ましい。本発明において、可視光内視鏡には、可視光で観察する内視鏡が全て含まれ、通常の内視鏡、拡大内視鏡(10〜200倍)、及び可視光を観察する色素内視鏡が含まれる。一方、蛍光内視鏡には、励起光を照射して生じる蛍光を測定する内視鏡が含まれ、これには拡大蛍光内視鏡が含まれる。また、共焦点内視鏡は、共焦点システムを搭載した内視鏡をいう。なお、共焦点内視鏡は、通常観察光学系と共焦点観察光学系の両者を有している。
本発明の内視鏡用組織染色剤組成物は、ベニコウジ由来の色素から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする。ベニコウジとは、子のう菌類ベニコウジカビであり、モナスカス属に属するものであれば制限されず、例えばモナスカス・ピロサス(Monascus pilosus)、モナスカス・アンカ(Monascus anka)、モナスカス・パープレウス(Monascus perpureus)等が含まれる。かかるベニコウジ由来の色素としては、下記式(1)〜(5)で示される、アンカフラビン(式(1)、R1=C715、Ankaflavin)、モナスシン(式(1)、R1=C511、Monascin)、モナスコルブリン(式(2)、R2=C715、Monascorubin)、ルブロパンクタチン(式(2)、R2=C511、Rubropunctatin)、モナスコルブラミン(式(3)、R3=C715、R6=H、Monascorubramine)、ルブロパンクタミン(式(3)、R3=C511、Rubropunctamine)、ルブロパンクタリジン(式(3)、R3=C511、R6=(CH24CH(NH)COOH、Rubropunctalysine)、キサントモナシン類(式(4)又は(5)、R4、R5はC511又はC715、Xanthomonasin)が挙げられ、本発明の染色剤組成物にはこれらから選ばれる1種又は2種以上が含まれているのが好ましい。なお、式(4)又は(5)で、R4、R5がC511のものがキサントモナシンAであり、R4、R5=C715のものがキサントモナシンBである。
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ炭素数1〜11のアルキル基を示し、C511又はC715が好ましい。また、R6は水素原子又は(CH2nCH(NH2)COOH(ここで、nは2〜6の数を示す)で示される基を示す。ここで、nは4が好ましい。)
本発明の染色剤組成物においては、上記の成分のうち、アンカフラビン、モナスコルブリン、モナスコルブラミン及びキサントモナシン類から選ばれる1種又は2種以上を含むものが特に好ましい。
これらのベニコウジ由来の色素は、赤色色素又は黄色色素であり、従来から、魚肉ねり製品や味付たこに用いられ、また古代より中国において紅酒、紅豆腐などの発酵食品に用いられており、安全性上は全く問題がない。なお、ベニコウジ色素のマウスにおける経口投与のLD50は20g/kg以上であり、反復投与試験(13週間)の無毒性量は1.25g/kg/dayである。
これらのベニコウジ由来の色素は、例えば、ベニコウジカビの菌体より、室温〜微温時、含水エタノール、含水プロピレングリコール、塩酸酸性エタノール等で抽出することにより得ることができる。
これらのベニコウジ由来の色素の市販品としては、例えば三栄源エフエフアイ(株)製のサンレッドM、サンレッドMA、サンレッドMR、サンエローNo.1244;(株)タイショーテクノス製のモナスコA、モナスコG、モナスコZ、モナスコRX、TSレッドMP、TSイエローM、TSイエローMP;キリヤ化学(株)製のモナスコレッドAL450RA、モナスコイエローS;神戸化成(株)製のKCレッドMR、KCレッドMY−2;和光純薬(株)製のモナスカス色素等が挙げられる。
本発明の組織染色剤組成物中のベニコウジ由来の色素の含有量は、染色性及び染色像の鮮明さの点から、0.01〜70質量%、さらに0.01〜50質量%、特に0.01〜20質量%が好ましい。
本発明の組織染色剤組成物は、液体、顆粒、錠剤等の形態で使用することができる。消化管内で撒布する場合又は粘膜下投与する場合は液体が好ましく、経口投与する場合は液体、顆粒、錠剤等が好ましい。
本発明の組織染色剤組成物には、その形態(剤型)に応じて種々の成分を配合できる。例えば、粘稠剤、増粘剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、香料、pH調整剤、水等を配合できる。
pH調整剤としては、pHを5〜9にするもの、例えば、塩酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸及びこれらの塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウムなどが挙げられる。
また溶剤としてエタノール、水などを配合し得る。錠剤の場合は、結合剤、崩壊剤などの公知の錠剤用成分を用いることができる。
本発明の組織染色剤組成物は、組織を赤色系又は黄色系に染色することができるので、通常の可視光内視鏡観察時における組織表面染色剤として有用である。ここで用いられる内視鏡は通常の内視鏡及び拡大内視鏡であり、10〜500倍の倍率を有する可視光下での内視鏡観察に有用である。
また、ベニコウジ由来の色素は、487nm付近の光の励起により、514nm付近の強い蛍光を発生する。従って、蛍光内視鏡及び共焦点内視鏡観察用の組織表面染色用蛍光色素として有用である。
さらに、ベニコウジ由来の色素は、消化管内腔への撒布により、容易に組織内に浸透するので、共焦点内視鏡による組織内染色用蛍光色素としても有用である。共焦点内視鏡としては、例えば観察深度は250μm(観察範囲は500μm×500μmで拡大率500倍)のものが存在する。従って、本発明の組織染色剤組成物を撒布又は経口投与後に、この共焦点内視鏡を用いれば、組織内部(例えば、250μmまで)の蛍光染色断層像が、容易に得られる。
なお、共焦点光学システムを採用した内視鏡が、通常観察光学系と共焦点光学観察系との両者を有しているものであれば、通常光下での観察により病変部を肉眼観察し、次いで疑問になった病変部について、共焦点内視鏡により組織内部(例えば、250μmまで)の蛍光染色断層像を観察することにより、病変部組織を切り取ることなく消化管の組織表面及び組織内部の診断が可能となる。すなわち、生体組織の細胞や核の形状を生きた状態で観察することができる。この結果、前癌状態、癌、潰瘍、潰瘍性大腸炎等の消化管の疾患の診断が安全、迅速、低侵襲で可能となり、かつ精度が飛躍的に向上する。
これらの内視鏡観察においては、本発明の組織染色剤組成物は、消化管内腔に直接撒布又は粘膜下投与してもよく、経口的に投与してもよい。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制限されるものではない。
実施例1
各種の天然物色素について吸光スペクトル測定、蛍光励起スペクトル測定を行い、蛍光を発する物質を検証した。測定した色素のうち、ベニコウジ色素(黄)を除く各色素は、和光純薬より購入した。測定は、以下の手順により実施した。各色素を濃度1〜0.1mg/mLとなるように水に溶解した溶液を調製した。色素の吸収極大波長は、分光光度計(島津製作所製、BioSpec-1600)により波長200nm〜600nmまでの吸光度を連続的に測定し、吸収極大となる波長を決定した。各色素に対して吸収極大波長の光を励起光として照射し、その励起光の光軸に対して垂直方向に検出される散乱光の波長を分光蛍光光度計(島津製作所製、RF-1500)により測定、蛍光極大波長とした。
表1に示すようにベニコウジ色素(黄)及びベニコウジ色素(赤)は蛍光(散乱光)波長の励起波長よりも長波長側へのシフト(ストークスシフト)が観察された。ベニコウジ色素以外の色素ではストークスシフトが観察されなかった。また、図1にベニコウジ色素(赤)の吸収及び蛍光スペクトルを示す。ここでベニコウジ色素(赤)は和光純薬(株)製モナスカス色素を用いた。また、ベニコウジ色素(黄)は、キリヤ化学(株)製モナスコイエローを用いた。
実施例2
ホルマリン溶液で固定してあるラット大腸を5mm角の大きさに切断し、リン酸緩衝生理的食塩水(137mmol/l NaCl、8.1mmol/l Na2HPO4、2.7mmol/l KCl、1.5mmol/l KH2PO4、以下 PBS(−)と略す)で洗った。ベニコウジ色素(赤)(和光純薬(株)製モナスカス色素)水溶液(10mg/mL)に組織を入れて1分間静置し、PBS(−)内で10秒間洗った。その後、ホルマリン溶液で固定し、共焦点顕微鏡(ライカ社製 TCS SP2、本件の実施例で使用する共焦点顕微鏡は全てこの顕微鏡を用いた。)で観察した。488nmArレーザーにより励起、500〜535nmの波長で蛍光観察した。図2に共焦点顕微鏡像を示す。図は同一断面を表層側から内部方向(深部)へと約6μm毎に撮影した画像である。図2に示すように、大腸が染色され、組織内部まで染色されている蛍光染色像を得ることが分かった。
比較例1
蛍光を発しなかった天然色素(アナトー、ブドウ果皮、ビートレッド、コチニール)を用いて、実施例2と同様に共焦点顕微鏡観察したところ、蛍光染色像は得られなかった。
実施例3
実施例2で染色した大腸より薄切切片試料を作製した。試料は共焦点顕微鏡により、488nmArレーザーにより励起し、500〜535nmの波長で蛍光観察した。その結果、図3に示すように内腔側から筋膜側まで一様(粘膜下層を除く)に染色されている像を得ることが分かった。また、図からベニコウジ色素の染色深度は500〜1000μm以上であることが分かった。
実施例4
ホルマリン溶液で固定してあるラット小腸を10mm角の大きさに切断し、ベニコウジ色素(赤)(和光純薬(株)製モナスカス色素)水溶液(10mg/mL)を塗布し、可視光内視鏡により観察した。その結果、図4に示すように小腸は赤色に染色されており、未染色観察像では判別が困難であった絨毛の形状などの情報を、より鮮明に得ることが可能となった。
実施例5
ベニコウジ色素(黄)(キリヤ化学製モナスコイエローS)水溶液(6mg/mL)及びベニコウジ色素(赤)(キリヤ化学製モナスコレッド9000P)水溶液(10mg/mL)を用いたラットの大腸染色試験を行った。試料はホルマリン固定ラットの大腸を用い各色素溶液に1分間浸し、共焦点顕微鏡観察を行った。その結果、図5及び図6に示すように、モナスコレッド、モナスコイエロー共に組織内部にまで染色液が浸透しており、強い蛍光を呈した。観察の結果、細胞の核は染色されず、細胞質のみが鮮明に染色されていることがわかった。
実施例6
生体内を染色する際にpHによる染色性の違いは非常に重要な要素である。そこでモナスコイエローS(キリヤ化学製)の蛍光特性へのpHの影響についての試験を行った。結果を図7に示す。pH4.65、5.00、6.00、6.80、7.00、7.40、8.00、9.30の緩衝液での測定を行ったが、蛍光強度に大きな変化は無かった。モナスカス黄色素に関しての蛍光性はpHにより大きな影響を受けないことがわかった。
比較例2
ベニコウジ色素に代えてフルオレセインをpH9に調製したものを用いて実施例2及び5と同様にしてラット大腸を共焦点顕微鏡観察した。その結果、図8に示すように、フルオレセインによる蛍光強度は、組織を染色していたが、バックグラウンドまで高くなってしまい、観察がしづらかった。
実施例7
生体消化器内腔へのベニコウジ色素(黄)撒布による染色効果を下記方法により検証した。
マウス(8週齢、オス)の肛門よりモナスコイエロー(キリヤ化学製)(0.1mg/mL, 500μl)を注入、1分後に大腸を取り出し、染色状態を共焦点顕微鏡(ライカ社製)により観察した。
生体マウス大腸は色素撒布により大腸表面の粘膜組織が良好に染色された(図9)。大腸粘膜に存在する細胞は特に表層部に関して円柱上皮細胞、杯細胞のほかに粘膜固有層内に繊維芽細胞や白血球細胞などがある。モナスコイエローによりこれらの細胞の細胞質成分は染色されたが、杯細胞の粘液成分及び全ての細胞の核は染色性が低かった。
これらの結果は大腸組織を摘出後、試験管内にて染色することにより得られた顕微鏡像(図10)と同様であった。
実施例8
実施例7と同様の方法により生体マウス大腸をモナスコイエロー(キリヤ化学製)により染色後10分間及び60分間飼育した後、染色性の経時変化を観察した。観察は実施例7と同様の方法より行った。モナスコイエローの好染部位は投与後の飼育時間に対して変化しないが、組織の蛍光輝度は60分飼育後には低下していた(図11及び12)。
さらにその結果を総合的に判断して大腸粘膜の好染部位を表2にまとめた。
比較例3
蛍光度の差異
共焦点顕微鏡(ライカ社製)では受光部感度を調節することにより同程度の蛍光輝度を表示することができる。即ち、この機能を用いることで輝度の異なる試料の蛍光強度を相対的に見積もることが出来る。
同程度の蛍光輝度を与える受光感度の値をもとに計算した試料の蛍光輝度はベニコウジ色素(黄)に対してフルオレセインナトリウムでは10分経過時0.74倍、60分経過時0.85倍であった。
したがって同じ濃度の蛍光色素溶液で染色した場合、大腸組織の蛍光輝度はベニコウジ色素(黄)の方が高いといえる。
実施例9
ベニコウジ色素(黄)(1mg/mL,2mL)をマウスの心臓から灌流させて染色試験を行った。染色の結果、大腸組織は良好に染色された。染色の浸透性は摘出組織染色(実施例2)や肛門注入染色(実施例7)に比べて高かった。内腔側からの共焦点顕微鏡による観察では、粘膜を構成する細胞のほとんどの細胞質は好染されたが、杯細胞の粘液成分及び細胞核の染色性は低かった(図13)。即ち、好染部位に関しては実施例7、8と同様であった。
比較例4
同様にフルオレセインナトリウム(1mg/mL)についても実施例9と同様の方法で試験を行った。
実施例9と同様の染色像を与えるものであり、これにより粘膜組織を構成する細胞の多くは好染されたが、杯細胞の粘液部分は染色されなかった。細胞核に関しては染色の状態を判定できなかった(図14)。
これらの結果は撒布法による染色の結果得られた像と同様であったが、灌流染色法では染色範囲、濃度等の結果において、より良好な結果を得られた。
細胞の状態、核の形状を観察する目的においてはベニコウジ色素(黄)での観察はフルオレセインナトリウムと比較してより有用なデータを与えるといえる。
実施例10
ベニコウジ黄色素を高速液体クロマトグラフ(島津製作所製 SCL10A)にかけてその主成分であるキサントモナシンA及びキサントモナシンBを抽出し、精製を行った。
ベニコウジ黄色素をODSカラム(Wakosil25C18)に注入し、移動相20%アセトニトリル/水により分離を行った。得られたクロマトグラムから各ピークの成分を回収しエバポレーターにより濃縮し、再度同条件によりクロマトグラフィーを行った。各分画はLC−MS(Waters 製 AcquityUPLC-ZQ)により純度と質量数の分析を行い、それぞれ得られたクロマトグラムのピークが単一で、且つ質量数がキサントモナシンA及びBの質量数と一致する分画のみを濃縮し、精製キサントモナシンA、Bとした。
実施例11
実施例10で精製したキサントモナシンAを用いて、マウスの大腸染色試験を行った。
マウス(ddY、9週齢、オス)に麻酔をかけ、注射針を用いてキサントモナシンA(遠心乾燥サンプル、10mg/mL Saline)100μLを大腸内腔に注入し、染色を行った。
5分後にマウスの大腸を摘出し、共焦点顕微鏡(TCS SP2)による共焦点撮像観察を行った。
図15に20倍レンズで撮影した画像を示す。図16には63倍油浸レンズで撮影したものを示す。増幅率を表すゲイン値が348.2V、339.7Vであり、キサントモナシンAにより非常に鮮明な断面画像が得られた。
実施例12
実施例10で精製したキサントモナシンAを用いて、マウスの大腸染色試験及び凍結切片の観察を行った。
マウス(ddY、11週齢、オス)に麻酔をかけ、注射針を用いてキサントモナシンA(遠心乾燥サンプル、10mg/mL Saline)100μLを大腸内腔に注入し、染色を行った。
5分後にマウスの大腸を摘出し、OCTコンパウンドによって凍結包埋し、凍結切片は6μmに薄切した。薄切切片はヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)による観察と、キサントモナシンAの染色による蛍光観察を行った。
図17に40倍レンズで撮影したHE染色画像を、図18に63倍レンズで撮影したキサントモナシンA染色蛍光画像を示す。
二つの染色像より、キサントモナシンAによる染色によっては上皮細胞が比較的良好に染色されていたし、筋板も良好に染色されていた。また、増幅率を表すゲイン値が300〜500Vの範囲にあり、染色性は良好だといえる。
実施例13
マウス(ddY、9週齢、オス)に麻酔をかけ、注射針を用いてキサントモナシンA(遠心乾燥サンプル、1mg/mL Saline)100μLを大腸の内腔に注入し、染色を行った。
1分後と10分後にそれぞれマウスの大腸を摘出し、共焦点顕微鏡(TCS SP2)による共焦点撮像観察を行った。
図19に染色1分後に大腸を摘出したものの共焦点画像を示し、図20に染色10分後に大腸を摘出したものの共焦点撮影画像を示す。時間の変化により染色性及び染色剤の浸透性が異なるが、染色部位は同様である。10分間染色を行った方の大腸がより視認性が向上するといえる。
ベニコウジ色素(赤)の吸収及び蛍光スペクトルを示す図である。 ベニコウジ色素(赤)で染色したラットの大腸の観察結果を示す図(対物レンズ63倍使用)である。図中1)は表層部、2)は5.98μm深部、3)は11.96μm深部、4)は17.94μm深部の画像である。 ベニコウジ色素(赤)で染色したラット大腸の断面像である(10倍レンズ使用)。 ベニコウジ色素(赤)で染色したラット小腸の可視光内視鏡像である。上は染色像、下は未染色像である。 モナスコイエローで染色したラット大腸の観察結果を示す図である(対物レンズ:63倍油浸レンズ使用)。 モナスコレッドで染色したラット大腸の観察結果を示す図である(対物レンズ:63倍油浸レンズ使用)。 モナスコイエローのpHの違いによる蛍光強度の変化を示す図である。 フルオレセインで染色したラットの大腸の観察結果を示す図である。 モナスコイエローをマウス大腸に色素撒布1分後の染色像を示す図である。 モナスコイエローによる摘出マウス大腸の染色像を示す図である。 モナスコイエローをマウス大腸に色素撒布10分後の染色像を示す図である。 モナスコイエローをマウス大腸に色素撒布60分後の染色像を示す図である。 モナスコイエローをマウスの心臓から灌流させた場合の大腸の染色状態を示す図である。 フルオレセインナトリウムをマウスの心臓から灌流させた場合の大腸の染色状態を示す図である。 キサントモナシンAによるマウス大腸の染色像(20倍レンズ)を示す図である。 キサントモナシンAによるマウス大腸の染色像(63倍油浸レンズ)を示す図である。 ヘマトキシリン・エオシンによるマウス大腸の一般染色像(40倍レンズ)を示す図である。 キサントモナシンAによるマウス大腸の蛍光染色像(63倍レンズ)を示す図である。 キサントモナシンAによるマウス大腸の共焦点撮影画像(染色1分後)を示す図である。 キサントモナシンAによるマウス大腸の共焦点撮影画像(染色10分後)を示す図である。

Claims (7)

  1. ベニコウジ由来の色素から選ばれる1種又は2種以上を含有する内視鏡用組織染色剤組成物。
  2. ベニコウジ由来の色素が、次式(1)〜(5)
    (式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、それぞれ炭素数1〜11のアルキル基を示し、R6は水素原子又は−(CH2nCH(NH2)COOH(ここで、nは2〜6の数を示す)で示される基を示す。)
    から選ばれる化合物の1種又は2種以上を含むものである請求項1記載の染色剤組成物。
  3. ベニコウジ由来の色素が、アンカフラビン、モナスシン、モナスコルブリン、ルブロパンクタチン、モナスコルブラミン、ルブロパンクタチン、ルブロパンクタリジン及びキサントモナシン類から選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2記載の染色剤組成物。
  4. 内視鏡が、医療用内視鏡である請求項1〜3のいずれか1項記載の染色剤組成物。
  5. 内視鏡が、可視光内視鏡、蛍光内視鏡又は共焦点内視鏡である請求項1〜4のいずれか1項記載の染色剤組成物。
  6. 経口投与、消化管内直接投与又は粘膜下投与するものである請求項1〜5のいずれか1項記載の染色剤組成物。
  7. 消化管内腔表面及び/又は消化管内腔細胞内を染色するものである請求項1〜6のいずれか1項記載の染色剤組成物。
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