JP4953642B2 - 経口経腸栄養剤の投与前処置液 - Google Patents

経口経腸栄養剤の投与前処置液 Download PDF

Info

Publication number
JP4953642B2
JP4953642B2 JP2006014785A JP2006014785A JP4953642B2 JP 4953642 B2 JP4953642 B2 JP 4953642B2 JP 2006014785 A JP2006014785 A JP 2006014785A JP 2006014785 A JP2006014785 A JP 2006014785A JP 4953642 B2 JP4953642 B2 JP 4953642B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
meq
administration
aqueous electrolyte
treatment
oral
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006014785A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006232817A (ja
Inventor
昇 真壁
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Otsuka Pharmaceutical Co Ltd filed Critical Otsuka Pharmaceutical Co Ltd
Priority to JP2006014785A priority Critical patent/JP4953642B2/ja
Publication of JP2006232817A publication Critical patent/JP2006232817A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4953642B2 publication Critical patent/JP4953642B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Medicinal Preparation (AREA)

Description

本発明は、経口経腸栄養剤の投与前処置液に関する。
米国静脈経腸栄養学会および日本静脈経腸栄養学会が提唱するガイドラインによると、様々な要因により経口摂取が困難であるが、消化管を用いることが出来る場合には、経腸栄養法の選択が推奨されている。経腸栄養法は、生理的であり、経口摂取が困難な患者には最も理想的な手段として考えられており、一方では医療費の高騰を抑制する経済効果も報告されている。
しかしながら、経腸栄養法による合併症が原因で、経腸栄養法の継続が困難となる場合や、その合併症によって命を落とす可能性もある。実際の臨床現場では、合併症の存在が経腸栄養法を妨げ、高価な静脈栄養法を選択せざるを得ない場合も少なくない。この合併症の中で、致命的な存在として、投与した栄養剤が逆流して気管内に入ることにより惹起する逆流性の肺炎がある。
今日において、この逆流発生の予防策として、栄養剤の投与速度を遅くすることと、投与チューブの先端を十二指腸より肛門側に留置することが推奨されているが、手技的事情や栄養剤の粘度などの問題があるため、これらを即選択できない場合も多い。臨床現場では、一刻も早く手軽に行える逆流予防策が望まれている。
一方、経口摂取可能な患者においても、高齢者等の嚥下障害のある患者は、栄養補給として濃厚流動食を経口的に投与した場合、同様に逆流をきたして逆流性肺炎を起こすおそれが少なからずあり、医療現場における解決すべき大きな問題のひとつとなっている。
また、更に別の問題として、高齢者等の消化器機能の低下した人に液状の栄養剤や流動食を投与すると、逆流までには至らなくとも、逆流傾向に伴うげっぷ、胸やけ、胃のもたれなどの胃部不快症状をきたすことも挙げられる。
ところで、本邦に存在している経腸栄養法に関する教科書的書物および日本静脈経腸栄養学会のガイドラインにおいては、経口経腸栄養剤(例えば、経腸栄養剤、濃厚流動食など)のみで不足する水分は、これらの投与後に追加水分として注入すると示されており、本邦における医療機関の殆どは、この方法で行われていると考えられる。しかしながら、この根拠の妥当性は知られていない。
本発明の目的は、経口経腸栄養剤の投与により生じる逆流を防止し、ひいては逆流性肺炎などの合併症を防止しうる処置液、加えて、経口経腸栄養剤の投与により生じる胃部不快症状を防止しうる処置液を提供することである。
本発明者は、従来患者の栄養補給の後に行われていた水分補充に代えて、投与前に水分を予め投与したところ、驚くべきことに、従来の方法では少なからず起きていた逆流が、起こり難くなることを見出した。更に、より吸収の早い電解質水溶液を用いると、逆流防止効果が高まることを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 電解質水溶液からなることを特徴とする経口経腸栄養剤の投与前処置液、
[2] 電解質水溶液の浸透圧が略等張ないし低張である前記[1]に記載の処置液、
[3] 電解質水溶液が、ブドウ糖および下記組成の成分を含有し、ナトリウムイオンとブドウ糖のモル比が1:1.5〜2.5である前記[1]に記載の処置液、
Na : 40〜60mEq/L
: 16〜24mEq/L
Cl : 40〜60mEq/L
Mg2+ : 0〜3mEq/L
リン : 0〜3mmol/L
有機酸 : 0〜50mEq/L
[4] 電解質水溶液が、ブドウ糖および下記組成の成分を含有し、ナトリウムイオンとブドウ糖のモル比が1:1.8〜2.2である前記[1]に記載の処置液、
Na : 47.5〜52.5mEq/L
: 19〜21mEq/L
Cl : 47.5〜52.5mEq/L
Mg2+ : 1.9〜2.1mEq/L
リン : 1.9〜2.1mmol/L
有機酸 : 15〜50mEq/L
[5] 電解質水溶液が、乳酸を15〜33mEq/Lおよび/またはクエン酸を15〜45mEq/L含有している前記[1]〜[4]のいずれかに記載の処置液、
[6] 処置液が経口経腸栄養剤の逆流防止液である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の処置液、
[7] 処置液が経口経腸栄養剤投与後の胃部不快症状防止液である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の処置液、
[8] 経口経腸栄養剤投与の0〜60分前に、下記式で表される範囲内の投与量で経口経腸栄養剤と同じ投与経路により投与するものである前記[6]または[7]に記載の処置液、
{式中、A=25〜35(mL/kg)}
[9] 経口経腸栄養剤が経腸栄養剤または濃厚流動食である前記[1]〜[8]のいずれかに記載の処置液、
[10] 前記[1]〜[9]のいずれかに記載の処置液を、経口経腸栄養剤投与の0〜60分前に、下記式で表される範囲内の投与量を経口経腸栄養剤と同じ投与経路により投与することを特徴とする経口経腸栄養剤の逆流防止方法、
{式中、A=25〜35(mL/kg)}
[11] 前記[1]〜[9]のいずれかに記載の処置液を、経口経腸栄養剤投与の0〜60分前に、下記式で表される範囲内の投与量を経口経腸栄養剤と同じ投与経路により投与することを特徴とする経口経腸栄養剤投与後の胃部不快症状防止方法、
{式中、A=25〜35(mL/kg)}
に関する。
本発明の処置液は、経口経腸栄養剤を投与する前に患者に投与するだけで、患者や医師に過度な負担をかけることなく、容易に経口経腸栄養剤の逆流や経口経腸栄養剤の投与により生じる胃部不快症状を防止できるという効果を奏する。
本発明の処置液は、経口経腸栄養剤の投与前処置液であって、電解質水溶液からなることを特徴とする。
本発明にかかる電解質水溶液は、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)およびクロールイオン(Cl)を含有し、更に所望によりマグネシウムイオン(Mg2+)、リン、有機酸などが配合された水溶液が挙げられる。
本発明において、ナトリウムイオン、カリウムイオン、クロールイオン、マグネシウムイオン、リンまたは有機酸の供給源としては、自体公知のものを用いてよい。かかる電解質成分は、無機電解質成分であってもよいし、有機電解質成分であってもよい。無機電解質成分としては、塩化物、硫酸化物、炭酸化物、リン酸化物などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩類が挙げられる。また、有機電解質成分としては、酢酸、クエン酸、乳酸、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸など)、アルギン酸、リンゴ酸、グルコン酸などの有機酸、あるいはこれら有機酸とアルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩類が挙げられる。これらは単独で使用されてもよいし、2種以上を混合して使用されてもよい。
本発明においてナトリウムイオンの濃度は、好ましくは40〜60mEq/L、より好ましくは47.5〜52.5mEq/Lである。
ナトリウムイオンの供給源としては、例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムまたはリン酸2水素ナトリウムなどが挙げられ、中でも、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウムもしくはリン酸2水素ナトリウム、またはこれら任意の2種以上の混合物が好ましい。
本発明においてカリウムイオンの濃度は、好ましくは16〜24mEq/L、より好ましくは19〜21mEq/Lである。
カリウムイオンの供給源としては、例えば、塩化カリウム、硫酸カリウム、グリセロリン酸カリウム、乳酸カリウム、酢酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウムまたはリン酸2水素カリウムなどが挙げられ、中でも塩化カリウムが好ましい。
本発明においてクロールイオンの濃度は、好ましくは40〜60mEq/L、より好ましくは47.5〜52.5mEq/Lである。
クロールイオンの供給源としては、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩化物などが挙げられ、中でも塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、またはその混合物が好ましい。
本発明においてマグネシウムイオンの濃度は、好ましくは0〜3mEq/L、より好ましくは1.9〜2.1mEq/Lである。
マグネシウムイオンの供給源としては、例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、グリセロリン酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが挙げられ、中でも硫酸マグネシウムが好ましい。
本発明においてリンの濃度は、好ましくは0〜3mmol/L、より好ましくは1.9〜2.1mmol/Lである。ここで、リン酸は水溶液中で一部解離して、HPO 、HPO 2−またはPO 3−を生じる。したがって、本発明においては、これらのリンの総和を「mmol/L」として表す。
リンの供給源としては、例えば、リン酸、またはリン酸とアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属との塩などが挙げられ、中でもリン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸カルシウムまたはリン酸水素カルシウムが好ましく、リン酸2水素ナトリウムがより好ましい。
本発明において有機酸の濃度は、好ましくは0〜50mEq/L、より好ましくは15〜50mEq/L、さらに好ましくは乳酸で15〜33mEq/Lおよび/またはクエン酸で15〜45mEq/Lである。なお、有機酸として乳酸とクエン酸を併用する場合は、乳酸とクエン酸の含有量の合計が50mEq/Lを超えないものとする。
有機酸の供給源としては、例えば、クエン酸、乳酸、アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸など)、アルギン酸、リンゴ酸またはグルコン酸、あるいはこれらと、アルカリ金属またはアルカリ土類金属との塩類が挙げられる。またはこれらを2種以上混合してもよい。中でも、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸3ナトリウムまたはこれらの混合物が好ましい。
本発明においては、電解質水溶液として、上記のような電解質水溶液に更に糖が配合されたものが好適に挙げられる。糖としてはブドウ糖が好ましい。
本発明においてナトリウムイオンとブドウ糖のモル比が、好ましくは1:1.5〜2.5、より好ましくは1:1.8〜2.2となるように混合されていることが、本発明の好ましい態様である。
本発明にかかる電解質水溶液の浸透圧は、体液に対して略等張ないし低張であるのが好ましく、具体的には150〜500mOsm/L、好ましくは200〜350mOsm/L、より好ましくは250〜320mOsm/Lであるのが好適である。この程度の浸透圧は体液の浸透圧に近く、本発明にかかる電解質水溶液が吸収されやすいからである。
本発明にかかる電解質水溶液には、所望により上記成分以外にも各種の栄養素、ビタミン類、合成香料もしくは天然香料等の香料、着色料、チーズやチョコレート等の風味物質または合成甘味料等を添加配合してもよい。
ビタミン類としては、水溶性であっても脂溶性であってもよく、例えばパルミチン酸レチノール、トコフェロール、ビスベンチアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、シアノコバラミン、アスコルビン酸ナトリウム、コレカルシフェロール、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、葉酸、ビオチン、重酒石酸コリン等が挙げられる。
上記添加物は、単独で使用されてもよいし、任意の2種以上を組み合わせて使用されてもよい。上記添加物の配合割合は特に限定されるものではないが、例えば本発明にかかる電解質水溶液100重量部に対して約0〜20重量部程度の範囲から選択することができる。
本発明にかかる電解質水溶液の調製方法は特に制限されるものではなく、全ての成分を同時に混合してもよく、またいずれかの成分を別個に混合して調製された混合物に他の成分または他の成分の混合物を添加混合して調製してもよい。上記各成分の混合操作は、常温下に実施することもでき、また若干の加温下に実施することもできる。
かくして調製された電解質水溶液は、そのまま経口経腸栄養剤の投与前処置液、特に経口経腸栄養剤の逆流防止液または経口経腸栄養剤の投与により生じる胃部不快症状防止液として使用することができる。
前記経口経腸栄養剤は、経口または経腸で投与される栄養剤であり、栄養剤の種類としては、例えば、自然食品流動食(例えば、普通流動食、3分粥、5分粥、7分粥もしくは全粥などをブレンドしたミキサー食、濃厚流動食等)、消化態栄養剤、成分栄養剤などが挙げられる。また、前記経口経腸栄養剤は、経腸栄養剤(経腸で投与される濃厚流動食を含む)、または経口で投与される濃厚流動食であるのが好ましい。
本発明にかかる処置液は経口経腸栄養剤を投与する前、例えば直前〜60分前、好ましくは直前〜10分前に投与される。処置液の投与経路は経口経腸栄養剤の投与経路と同じであるのが好ましい。処置液の投与量は、投与する人の年齢や状態等により異なるので一概には言えないが、一般に経口経腸栄養剤の投与1回当たり下記式で表される範囲内の投与量である。
{式中、A=25〜35(mL/kg)}
尚、上記式において、Aは年齢区分係数(mL/体重kg)であり、該年齢区分係数を投与する人の年齢が25〜54歳であれば「35」、55〜64歳であれば「30」、65歳以上であれば「25」とするのが一般的で、さらに、これらの値を患者の症状等に応じて適宜増減できる。
本発明の処置液の効果を検証するための試験例を、実施例として挙げる。
(実施例1)
経腸栄養法でのみ栄養管理中であり、かつ市販経腸栄養剤ライフロン6(商品名、日研化学株式会社製)またはテルミール2.0α(商品名、テルモ株式会社製)の投与直後に、水を患者個々の必要量に応じて投与していた78±10歳の患者20名を対照とした。検討開始より、14日間をA期間(以下HO群)とし、その後14日間をB期間(OS群)とし、両群を比較した。また、20名のうち、誤嚥性肺炎の既往歴がある患者は、7名(79±6歳)である。
HO群は、従来法に基づき、市販経腸栄養剤ライフロン6またはテルミール2.0αの投与直後に、市販経腸栄養剤ライフロン6またはテルミール2.0αで不足する水分量を、水を用いて注入した。一方、OS群は、市販経腸栄養剤ライフロン6またはテルミール2.0αで不足する水分量として、市販の電解質水溶液オーエスワン(登録商標)(商品名、大塚製薬工場株式会社製、下記表2の組成)を先に注入し、その10分後に市販経腸栄養剤ライフロン6またはテルミール2.0αを投与した。両群共に、栄養剤の投与速度は約200mL/時、水または電解質水溶液の投与速度は800mL/時で、温度はいずれも常温とした。
尚、両群での投与量は、下記式より、一日当たりの必要量を算出し、ついでこれを投与回数で除することにより求めた。
(式中、A’は下記表1で表される年齢区分係数である。)
これらを両群ともに1日3回14日間行い、投与期間中に胸部レントゲン写真および臨床所見より、誤嚥性肺炎を疑った診断率を比較検討した。
結果を下記表3に示す。HO群よりOS群の方が、逆流に伴う誤嚥性肺炎の防止に効果があった。
(考察)
上記結果から明らかなように、投与前に本発明の処置液を注入することで、経腸栄養剤逆流の予防ができた。
従来の方法では、脂肪を含む栄養剤を先に胃内に投与することで、胃内での貯留時間を延長させ、さらに追加水分を投与することで胃内貯留量が増加し、逆流の危険率が高くなる可能性があると考えられる。
一方本発明では、脂肪分の無い、かつ吸収が迅速な電解質水溶液を栄養剤投与前に注入することで、早期に胃内貯留量が減少し、そこに栄養剤を投与するため、従来の方法と比較して胃内貯留量の増加を予防していることが考えられ、結果として逆流の防止効果を発揮できると考えている。
逆流を少しでも防止することは、医療費の高騰を防ぎ患者負担も減少させ、非常に大きなメリットである。
(実施例2)水との比較試験
SD雄性系ラット(平均体重380g)を18時間以上絶食した後に実験に供した。体重によって3群に群分けして各群3匹とした。
酢酸−1−13C(Cambrige Isotope Laboratories Inc.製)を安定同位体として使用し、これを前記市販の電解質水溶液オーエスワン(登録商標)または市販の飲料水(商品名クリスタルガイザー:大塚ビバレッジ(株))と混合し、13C−アセテートの投与量が32mg/kgとなるように濃度を設定した。これらの液をそれぞれのラット群に、ラットあたり1mL強制経口投与した。尚、残りの1群は、コントロール群として、何も投与しない群とした。
投与後、ラット呼気中の13CO12COの比を、呼気ガス分析装置(ARCO−1000:(有)アルコシステム)を用いて数分毎に測定し、呼気中13CO存在比がピークとなるまでの時間Tmaxを求めた(13C法液状食胃排出能検査:第44回日本平滑筋学会ワークショップ「標準法−90分法より」)。結果を図1に示す。
その結果、電解質水溶液投与群はTmaxが32.25分、飲料水投与群はTmaxが35.75分となった。このことから、電解質水溶液は速やかに胃から排出されるので、その後、経口経腸栄養剤を投与しても、胃内貯留物(流動物)の総体積が大きくならず、逆流が起きにくくなると考えられる。
また、上記の結果より、電解質水溶液が速やかに胃から排出され、経口経腸栄養剤を投与しても、胃部貯留物(流動物)の総体積が大きくならないことから、胃部貯留物(流動物)の総体積の増大による逆流傾向が生じにくくなり、げっぷ、胸やけ、胃のもたれなどの胃部不快症状が生じにくくなると推察される。
(実施例3)
胃管投与による経腸栄養管理を行った合計160名を無作為に2群(本発明群および従来群)に分けた。本発明群(計80名、平均年齢76.6±11.3歳)は、栄養剤のみで不足する水分を、前記市販電解質水溶液オーエスワンとして栄養剤投与10分前に注入(経腸投与)した。一方、従来群(計80名、平均年齢76.4±12.9歳)は、栄養剤投与直後に、不足する水分として水道水を注入する方法を採用した。両群共に、栄養剤の投与速度は約200ml/時、追加水分の投与速度は800ml/時で、温度はいずれも常温とした。これらを両群共に1日3回行い、投与期間中に胸部レントゲン写真および臨床所見より、誤嚥性肺炎を疑った診断率及びその他の臨床所見や操作手技を行った医療従事者の聞き取り調査を行い、比較検討した。従来群と本発明群の詳細を下記表4に示す。尚、両群での1回当りの投与量は、実施例1と同様にして1日当りの必要量を算出し、ついでこれを投与回数である3で除することで求めた。
逆流に伴う誤嚥性肺炎を疑った診断率を下記表5に示す。この表から明らかな通り、本発明群は、従来群に比べて逆流に伴う誤嚥性肺炎が有意に少なかった。また、研究の対象に関わる医療従事者の意見として、胸やけなどの胃部不快感を訴える症例が減じたとあった。
以上の結果から、本発明によれば、胃排泄が早い電解質水溶液を、胃排泄に時間を要する栄養剤の投与前に注入することで、胃内貯留量を抑制し、結果的に逆流の機会を少なくすることができる。さらに電解質水溶液を栄養剤投与前に注入することで、腸蠕動運動も亢進し、これらが総体的に逆流を予防していると考えられる。
また、胸やけなど胃部不快感が低減または消失する意見が多くあった点については、メカニズムは明確にはされていないが、本発明の方法によって、胃酸分泌量を抑制し、蠕動運動を促進し、結果的に逆流を抑制することで胸やけなどの胃部不快感症状が減じることが考えられる。
本発明の処置液は、経口経腸栄養剤の逆流を防止するための処置液または経口経腸栄養剤投与後の胃部不快症状防止液として利用できるため、医療の分野で、あるいは医薬品の分野で利用することができる。
実施例2の市販の電解質水溶液オーエスワン(登録商標)投与群、市販の飲料水投与群およびコントロール群の呼気ガス分析結果を示す図であり、縦軸はラット呼気中の13CO12COの比(単位:%)を表し、横軸は時間(分)を表す。

Claims (9)

  1. 電解質水溶液からなることを特徴とする経口経腸栄養剤の投与前処置液。
  2. 電解質水溶液の浸透圧が略等張ないし低張である請求項1に記載の処置液。
  3. 電解質水溶液が、ブドウ糖および下記組成の成分を含有し、ナトリウムイオンとブドウ糖のモル比が1:1.5〜2.5である請求項1に記載の処置液。
    Na : 40〜60mEq/L
    : 16〜24mEq/L
    Cl : 40〜60mEq/L
    Mg2+ : 0〜3mEq/L
    リン : 0〜3mmol/L
    有機酸 : 0〜50mEq/L
  4. 電解質水溶液が、ブドウ糖および下記組成の成分を含有し、ナトリウムイオンとブドウ糖のモル比が1:1.8〜2.2である請求項1に記載の処置液。
    Na : 47.5〜52.5mEq/L
    : 19〜21mEq/L
    Cl : 47.5〜52.5mEq/L
    Mg2+ : 1.9〜2.1mEq/L
    リン : 1.9〜2.1mmol/L
    有機酸 : 15〜50mEq/L
  5. 電解質水溶液が、乳酸を15〜33mEq/Lおよび/またはクエン酸を15〜45mEq/L含有している請求項1〜4のいずれかに記載の処置液。
  6. 処置液が経口経腸栄養剤の逆流防止液である請求項1〜5のいずれかに記載の処置液。
  7. 処置液が経口経腸栄養剤投与後の胃部不快症状防止液である請求項1〜5のいずれかに記載の処置液。
  8. 経口経腸栄養剤投与の0〜60分前に、下記式で表される範囲内の投与量で経口経腸栄養剤と同じ投与経路により投与するものである請求項6または7に記載の処置液。
    {式中、A=25〜35(mL/kg)}
  9. 経口経腸栄養剤が経腸栄養剤または濃厚流動食である請求項1〜8のいずれかに記載の処置液。
JP2006014785A 2005-01-25 2006-01-24 経口経腸栄養剤の投与前処置液 Active JP4953642B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006014785A JP4953642B2 (ja) 2005-01-25 2006-01-24 経口経腸栄養剤の投与前処置液

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005016660 2005-01-25
JP2005016660 2005-01-25
JP2006014785A JP4953642B2 (ja) 2005-01-25 2006-01-24 経口経腸栄養剤の投与前処置液

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006232817A JP2006232817A (ja) 2006-09-07
JP4953642B2 true JP4953642B2 (ja) 2012-06-13

Family

ID=37040859

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006014785A Active JP4953642B2 (ja) 2005-01-25 2006-01-24 経口経腸栄養剤の投与前処置液

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4953642B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
RU2479318C1 (ru) * 2012-03-29 2013-04-20 Общество с ограниченной ответственностью "ВИТТА" (ООО "ВИТТА") Способ получения лекарственных и биологически активных средств

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS59199626A (ja) * 1983-04-26 1984-11-12 Terumo Corp 糖質輸液
JPH06172191A (ja) * 1992-12-07 1994-06-21 Green Cross Corp:The ブドウ糖加電解質輸液
JP3907098B2 (ja) * 2001-02-13 2007-04-18 株式会社大塚製薬工場 栄養飲料またはゼリー

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006232817A (ja) 2006-09-07

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101325374B1 (ko) 신체 기능의 회복에 유용한 경구 또는 경장 조성물
JP3933702B2 (ja) 胃切除術後のミネラル補給用組成物
KR20070054739A (ko) 종합 경장 영양 조성물
JP2013516463A (ja) 栄養組成物およびその使用方法
Adamkin Nutritional strategies for the very low birthweight infant
KR20110008331A (ko) 에너지량, 수분량 및 식염 환산량을 조정할 수 있는 영양 조성물
JP4953642B2 (ja) 経口経腸栄養剤の投与前処置液
JP5527986B2 (ja) 医薬組成物
JP4319343B2 (ja) 水電解質補給用飲料またはゼリー
JP2001316278A (ja) 液状経腸栄養組成物
Brophy et al. Clinical drug therapy for Canadian practice
Reimers et al. Nutritional management of infants with bronchopulmonary dysplasia
JP4119640B2 (ja) 飲酒時の不快症状軽減剤
TW201242519A (en) Flowable nutrition composition containing L-arginine and method for producing the same
Tonozzi Nutritional status
Spinozzi et al. Nutrition support in the newborn intensive care unit
JP7085704B1 (ja) ゲル状栄養組成物
JP2019019105A (ja) 筋痙攣閾値増強剤
BS et al. Pyloric stenosis in full term babies. A postal survey of the management by paediatric anaesthetists
US6333055B1 (en) Use of ammonium compounds and/or urea
Matz Studies on the calcium content of blood of normal and tuberculous subjects
Dudrick et al. The nutritional care of the cancer patient
JPH0283327A (ja) 高カロリー輸液用ブドウ糖電解質製剤
Valentine et al. Nutritional support in children
JPH06172191A (ja) ブドウ糖加電解質輸液

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20081106

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111212

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120313

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120313

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 4953642

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150323

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250