JP4953371B2 - 耐硝酸腐食性に優れたNi基合金及びその製造方法 - Google Patents

耐硝酸腐食性に優れたNi基合金及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高酸化性の金属イオンを含有する高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下で使用される材料、特に使用済み核燃料の再処理プラント用材料として使用される材料であるNi基合金及びその製造方法に関する。
再処理機器のように硝酸が熱分解を起こして高酸化条件となる伝熱沸騰条件下において、粒界腐食性や耐応力腐食割れ性が要求される構造材料として、オーステナイト系ステンレス鋼やジルコニウム、Ni基合金等が用いられている。
オーステナイト系ステンレス鋼は、一般に硝酸のような酸化性の強い酸を含む環境において、表面に不働態皮膜を形成して、優れた耐食性を発揮するため、硝酸製造プラントの構造材料として汎用されている。しかしながら、使用済み核燃料の再処理プラントにおいて使用済み核燃料を高濃度の硝酸によって溶解するための溶解槽や、硝酸による溶解液を蒸発させて、この溶解液中から硝酸を回収するための酸回収蒸発缶等のように、セリウムイオン(Ce4+)、ルテニウムイオン(Ru3+)やクロムイオン(Cr6+)等の金属イオンが使用済核燃料から硝酸中に混入して酸化性が強くなると、粒界腐食を伴う激しい腐食を受けることになる。このように、硝酸が熱分解を起こして高酸化条件となる沸騰伝熱面では、皮膜の化学安定性が低下するため、粒界腐食優先型の過不働態腐食を起こすようになる。酸化性金属イオンを含有する高温の硝酸環境下で使用される材料としては、粒界腐食の原因であるCr欠乏層の生成を抑制するため、炭素含有量を極力低くし、必要に応じて少量のNbが添加され、溶体化熱処理を施されたオーステナイト系ステンレス鋼材が使用されている。
さらに、以下に記述するように多くの発明が開示されている。例えば、特許文献1には、「C:0.005wt%以下、Si:0.4wt%以下、Mn:0.1〜12wt%、P:0.005wt%以下、Ni:7〜28wt%、Cr:15〜30wt%、N:0.06〜0.30wt%を含有し、残部が実質的にFeから成るオーステナイト系ステンレス鋼」のように、P含有量を限定することにより、Pの粒界偏析を抑え、これにより耐粒界腐食性を改善した技術が開示されている。
また、特許文献2には、「C:0.015wt%以下、Si:0.5wt%以下、Mn:2wt%以下、P:0.015wt%以下、Cr:15〜30wt%、Ni:10〜22wt%、Al:0.01wt%以下、Ca:0.002〜0.010wt%を含有し、残部が実質的にFeから成るオーステナイト系ステンレス鋼」のように、Si、P、Al量を規制し、さらにCaを適量添加することにより、熱間加工性に優れ、高温硝酸中で優れた耐食性を有し、特に耐加工フロー腐食性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼に関する技術が開示されている。
また、特許文献3には、「Si:0.5wt%以下、Mn:0.5wt%以下、Ni:10〜16wt%、Cr:16〜20wt%、Mo:2.0〜3.0wt%、N:0.06〜0.15wt%、C:0.02wt%以下、P:0.03wt%以下、S:0.002wt%以下を含有し、残部が実質的にFeから成るオーステナイト系ステンレス鋼において、Ni(wt%)+60N(wt%)−4Mo(wt%)≧7式を満足し、さらにCa及び/またはCeを単独または合計で2×S(wt%)〜0.03wt%含有すること」により、トンネル状腐食に対する耐食性に優れた耐硝酸性オーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。
また、特許文献4には、「B含有量が30wt ppm以下であり、そのオーステナイト粒径をdとするとき、B(wt ppm)×d(μm)≦700であり、その製造方法においてB(wt ppm)×d(μm)を関数とする所定の温度以上に加熱し、固溶化処理を行うこと」により、耐粒界腐食性および耐粒界応力腐食割れ性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法が開示されている。
特開昭59−222563号公報 特開平6−306548号公報 特開平7−90497号公報 特開平7−113146号公報
一方、Ni基合金に関しては、原子炉内冷却水環境下で用いられる構造物用にインコネルX−750(商品名:Ni−15.5Cr−1Nb−0.7Al−2.5Ti−7Fe)等が商品化されている。しかし、インコネルX−750は熱処理条件によっては高温水圧水環境下で応力腐食割れ感受性が高くなることがあり、これらの欠点を改善し、また材料の安定性と信頼性とを高めることを目的としていくつかの合金が提案されている。
例えば、特許文献5乃至特許文献8に開示されている合金では、耐食性向上を目的としてCr量を20〜30wt%、Mo量を10wt%以下とし、さらに少量のAl、Tiと7wt%以下のNb、15wt%以下のFeの共存によってNbを含む金属間化合物を析出させている。
特開昭62−167836号 特開昭62−167837号 特開昭62−167838号 特開昭62−167839号
しかしながら、使用済み核燃料の再処理機器において、伝熱管外側からの蒸気による加熱沸騰により硝酸を蒸発させて、伝熱管中のウラン溶液やプルトニウム溶液を濃縮しようとするサーモサイフォン方式のウラン濃縮缶やプルトニウム濃縮缶、さらに使用済燃料のほとんどの核分裂生成物を含む分離サイクルからの抽出残液や溶媒洗浄液、酸回収蒸発缶の濃縮液、パルスフィルタでろ過した不溶解性残差などを濃縮するためのケトル−加熱コイル方式の高レベル廃液濃縮缶では、腐食環境が沸騰伝熱面腐食となるため、クロムを主体とする酸化皮膜の保護性によって耐食性が保持されているステンレス鋼では、皮膜の化学安定性が低下し、硝酸の蒸発−熱分解に伴う酸化性イオン生成と還元反応による溶解が同時に起こる過不働態腐食を起こすという本質的な問題がある。そのため、特許文献1乃至4の先行技術では根本的な解決になっていないのが事実である。特に、ウラン濃縮缶等は常圧沸点で運転されるため、腐食状況がより深刻である。
また、特許文献5乃至8に開示されている合金は、Niを合金ベースとし、多量のNbとFeとの共存によって、非常に硬くて脆い組織となりやすい上に、最適時効条件の範囲が狭く、過時効となりやすい。さらに、Niを合金ベースとし、CrとMoとを複合添加することにより、応力腐食割れ感受性は改善されるが、高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下での耐硝酸腐食性、すなわち、耐粒界腐食性や耐応力腐食割れ性に対しては、何ら効果を発揮しない。
なお、ジルコニウムに関しては、硝酸溶液中での溶解度が極めて低いZrO皮膜を形成して、極めて良好な耐食性を有するが、冷間加工性に劣るため、実機構造物への成形に際して細心の注意が必要であるばかりか、コストが高いために適用が限定される。
上記のように、酸化性イオンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下で使用される再処理機器用材料としては、過不働態腐食に対して優れた耐食性を有していることが必要であり、根本的対策の確立が望まれている。
本発明の目的は、酸化性イオンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下における過不働態腐食や応力腐食割れに対して優れた耐食性を有するNi基合金及びその製造方法を提供することである。
課題を解決するための手段及び効果
本発明者らが研究を重ねた結果、Crを主体とする酸化皮膜に代わって、より安定な酸化皮膜が形成されるように造膜特性に優れたCr、W及びSiを複合添加することにより、酸化性イオンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下における過不働態腐食や応力腐食割れに対する耐食性を高め得ることを見出した。具体的には、種々の合金元素に対する腐食電位を調査した結果、高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下における不働態域から過不働態腐食電位領域に対して、Cr、W及びSiが単独及び複合で形成する酸化皮膜が安定であることを見出し、これらの量を適切に制御することにより本発明のNi基合金を完成した。さらに、このNi基合金の鋼塊の溶製工程において、電子ビーム溶解法を採用して、不純物元素量を極力低減することにより、本発明の合金の優れた特性をさらに向上させることができることを見出した。
本発明の耐硝酸腐食性に優れたNi基合金は、C(炭素)を0.03wt%以下、Si(ケイ素)を2.0〜3.0wt%、Mn(マンガン)を0.5wt%以下、Fe(鉄)を0.5wt%以下、P(リン)を0.01wt%以下、S(硫黄)を0.01wt%以下、Cr(クロム)を25.0〜33.0wt%、W(タングステン)を7.0〜11.0wt%の比率でそれぞれ含有し、Ni(ニッケル)及び不可避的不純物を残部として成ることを特徴とする。
上記の構成によれば、造膜特性に優れたCr、W及びSiを複合添加し、Cr、W及びSiが単独及び複合で安定した酸化皮膜を形成するようにしたので、酸化性イオンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下における過不働態腐食や応力腐食割れに対して優れた耐食性を有することが可能となる。
また、本発明の耐硝酸腐食性に優れたNi基合金の製造方法は、Cを0.03wt%以下、Siを2.0〜3.0wt%、Mnを0.5wt%以下、Feを0.5wt%以下、Pを0.01wt%以下、Sを0.01wt%以下、Crを25.0〜33.0wt%、Wを7.0〜11.0wt%の比率でそれぞれ含有し、Ni及び不可避的不純物を残部として成るNi基合金の鋼塊の溶製工程で、電子ビーム溶解法による溶解を前記鋼塊に施すことを特徴とする。
上記の構成によれば、Ni基合金の鋼塊の溶製工程で、電子ビーム溶解法による溶解を鋼塊に施すことにより、不純物元素量が極力低減されるから、Ni基合金の耐食性を向上させることができて、酸化性イオンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下における過不働態腐食や応力腐食割れに対して優れた耐食性を有することが可能となる。
本発明の実施の形態を図1に基づいて以下に説明する。
(Ni基合金の構成)
本実施の形態におけるNi基合金は、具体的には、C:0.03wt%以下、Si:2.0〜3.0wt%、Mn:0.5wt%以下、Fe:0.5wt%以下、P:0.01wt%以下、S:0.01wt%以下、Cr:25.0〜33.0wt%、W:7.0〜11.0wt%を含有し、Niおよび不可避的不純物を残部として成る。
本実施の形態におけるNi基合金の成分を上述のように限定した理由は、以下のとおりである。
Cは結晶粒界に偏析し、熱処理や溶接を施した際に、合金中のCrやW、Si元素等と結合して炭化物を生成する不純物元素である。結晶粒界にCrやW、Siの炭化物を析出する結果、その近傍にこれら元素の欠乏した領域を生成して粒界の耐硝酸腐食性を劣化させる。このため、C含有量は極力少ない方が望ましく、0.03wt%以下とした。
Siは、特に高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面におけるより高腐食電位域における腐食環境下において、安定な造膜性能を得るために、2.0wt%以上必要である。しかしながら、固溶限界を越えるとシリサイドという化合物を析出して合金の延性を劣化させるため、その上限を3.0wt%とした。
Mnは少量存在すると組織の安定性を高めるが、添加しすぎると脆い相の析出を促進するばかりか、腐食電位を上昇させるので、その上限を0.5wt%とした。
Feは、多量に含むと造膜性能改善効果を阻害して沸騰伝熱面腐食下における耐硝酸腐食性、すなわち耐粒界腐食や耐応力腐食割れに対する耐性を損なうため、その上限を0.5wt%とした。
Pは粒界偏析することが知られており、P含有量を増加すると耐硝酸性が劣化する。このため、その含有量は低い方が望ましく、0.01wt%以下とした。
Sの増加は硫化物の生成を促進し、それらを基点とする選択的な腐食により耐硝酸性および耐孔食性を劣化させる。このため、その含有量は低い方が望ましく、0.01wt%以下とした。
Crは、過不働態域において安定な造膜性能改善効果を得て、鋼の耐食性を確保するために25.0wt%以上必要である。しかし、添加しすぎると脆い化合物を析出して合金の延性を劣化させるため、その上限を33.0wt%とした。
Wは、特に高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下において安定な造膜性能を得るために7.0wt%以上必要である。しかし、添加しすぎると脆い化合物を析出して合金の延性を劣化させるため、その上限を11.0wt%とした。
(電子ビーム溶解法)
ここで、Ni基合金の鋼塊の溶製工程において、電子ビーム溶解法を採用している。電子ビーム溶解法は、基本的にドリップ溶解法とコールドハース溶解法に大別される。ドリップ溶解法は、原料電極(電子ビーム溶解の原料は電子銃の対極となるため、こう表現する)の先端に電子ビームを照射し、生成した液滴を直接、水冷胴鋳型に落下させて積層凝固させる方法である。また、コールドハース溶解法は、原料先端で生成した液滴を一旦コールドハースと呼ばれる水冷の浅い銅製容器に溜め、ここからオーバーフローさせた溶湯を水冷胴鋳型に注いでスターティングブロックと称する土台の上に積層凝固させる方法である。本実施の形態においては、どちらの溶解法を用いてもよい。
電子ビーム溶解法の規定条件について記述する。溶解中の蒸発による精製効果を達成するためには、チャンバー内の真空度を1×10−2Pa以上にする必要がある。しかし、真空度を高めすぎると、Cr等の揮発性の高い元素が蒸発して成分調整が困難になるばかりか、工業的な実現が困難になるため、1×10−4Pa以下が望ましい。
(試験結果)
図1は、本実施の形態におけるNi基合金、及び、比較材としてのオーステナイト系ステンレス鋼(SUS310ULC、市販鋼)の伝熱面沸騰腐食試験結果を示したものである。腐食試験は、0.2g/LのCr6+を添加した8規定沸騰硝酸溶液を用い、系の圧力を調整して溶液温度を60℃に制御し、1バッチ48時間毎に試験液を更新しながら20バッチ継続した。なお、Cr6+の供給速度は1g/m・hである。
図1に示すように、オーステナイト系ステンレス鋼の場合には、60℃の低温においてもCr6+を含む硝酸溶液中の伝熱面では、表面酸化皮膜の保護性が低下して、過不働態化に伴う腐食速度の時間漸増傾向を示している。これに対し、造膜性能を改善した本実施の形態のNi基合金は、高酸化性イオンが共存する条件下の伝熱面腐食でも腐食速度が極めて小さく、非常に優れた耐食性を示している。
また、本実施の形態のNi基合金は、オーステナイト系ステンレス鋼に見られた時間漸増傾向をほとんど示さない。これら材料間の腐食挙動の違いは、試験後の材料表面性状にも現れる。即ち、オーステナイト系ステンレス鋼の場合には、過不働態腐食特有の脱粒を伴う激しい粒界腐食傾向が見られるのに対し、本実施の形態のNi基合金の場合には、腐食試験後の表面性状は極めて均一であり、造膜性能改善による防食効果が高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下においても十分保たれている。
このように、造膜特性に優れたCr、W及びSiを複合添加し、Cr、W及びSiが単独及び複合で安定した酸化皮膜を形成するようにしたので、酸化性イオンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下における過不働態腐食や応力腐食割れに対して優れた耐食性を有するNi基合金とすることができる。
また、Ni基合金の鋼塊の溶製工程で、電子ビーム溶解法による溶解を鋼塊に施すことにより、不純物元素量が極力低減されるから、Ni基合金の耐食性を向上させることができる。
(Ni基合金の製造方法)
次に、本実施の形態に係るNi基合金の製造方法について、以下の実施例を参照しながら説明する。
以下に、表1、表2を参照して実施例を説明する。
Figure 0004953371
表1に示す化学組成を有する合金、及び、比較鋼をそれぞれ150kg使用し、まず、真空誘導溶解(VIM)し、真空中で金型に鋳込み、鋳塊を得る。また、合金No.2〜13については、さらに鋳塊から電極を削りだし、電子ビーム溶解法による電子ビーム再溶解(EB)を施して円柱鋳塊とした。
ここで、No.3,4,5,8,9,12及び14は本実施の形態のNi基合金(本発明合金)、No.1,2,6,7,10,11及び13は比較合金である。
次に、比較鋼No.1を除いて、1100℃に加熱し、900℃以下とならない温度範囲において、鍛造及び熱間圧延を行い、厚さ20mmにした。
次いで、真空中で1200℃×1時間の加熱・保持後、アルゴンガス雰囲気中で室温まで急冷する中間熱処理を施した。さらに、これらを厚さ7mmまで冷間圧延した。ついで、真空中で1200℃×1時間の加熱・保持後、アルゴンガス雰囲気中で室温まで急冷する最終熱処理を施した。なお、比較鋼No.1については、オーステナイト系ステンレス鋼の製造工程の常法にしたがって厚さ7mmの板材とした。
以上にして得られた板材から、引張試験及び耐食性評価試験を行った。伝熱面腐食試験片は円盤状で、板の片側面にガラスセルを設置して腐食液を満たした状態で減圧し、反対面から加熱ロッドで加熱することにより、接液部に沸騰伝熱面腐食が起こるようにした。評価試験は8規定硝酸にCr6+イオンを0.2g/L添加した試験溶液を用い、圧力を120torrとし、熱流束を加熱ロッドの温度制御により50kW/mに設定して、液を更新しながら24時間を1バッチとする4バッチを行い、腐食減量を測定して腐食速度等を評価した。表2にそれらの結果を示す。
Figure 0004953371
表1及び表2から明らかなように、化学組成が本実施の形態のものであれば、良好な耐硝酸腐食性(耐食性)と機械的性質が得られることが分かる。さらに、電子ビーム溶解法による電子ビーム溶解工程を経ることにより、耐硝酸腐食性が向上することが分かる。
このように、造膜特性に優れたCr、W及びSiを複合添加し、Cr、W及びSiが単独及び複合で安定した酸化皮膜を形成するようにしたので、酸化性イオンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下における過不働態腐食や応力腐食割れに対して優れた耐食性を有するNi基合金とすることができる。
また、Ni基合金の鋼塊の溶製工程で、電子ビーム溶解法による溶解を鋼塊に施すことにより、不純物元素量が極力低減されるから、Ni基合金の耐食性を向上させることができる。
(本実施の形態の概要)
以上のように、本実施の形態の耐硝酸腐食性に優れたNi基合金は、Cを0.03wt%以下、Siを2.0〜3.0wt%、Mnを0.5wt%以下、Feを0.5wt%以下、Pを0.01wt%以下、Sを0.01wt%以下、Crを25.0〜33.0wt%、Wを7.0〜11.0wt%の比率でそれぞれ含有し、Ni及び不可避的不純物を残部として成る構成にされている。
上記の構成によれば、造膜特性に優れたCr、W及びSiを複合添加し、Cr、W及びSiが単独及び複合で安定した酸化皮膜を形成するようにしたので、酸化性イオンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下における過不働態腐食や応力腐食割れに対して優れた耐食性を有することが可能となる。
また、本実施の形態の耐硝酸腐食性に優れたNi基合金の製造方法は、Cを0.03wt%以下、Siを2.0〜3.0wt%、Mnを0.5wt%以下、Feを0.5wt%以下、Pを0.01wt%以下、Sを0.01wt%以下、Crを25.0〜33.0wt%、Wを7.0〜11.0wt%の比率でそれぞれ含有し、Ni及び不可避的不純物を残部として成るNi基合金の鋼塊の溶製工程で、電子ビーム溶解法による溶解を鋼塊に施す構成にされている。
上記の構成によれば、Ni基合金の鋼塊の溶製工程で、電子ビーム溶解法による溶解を鋼塊に施すことにより、不純物元素量が極力低減されるから、Ni基合金の耐食性を向上させることができて、酸化性イオンを含む高濃度硝酸溶液の沸騰伝熱面腐食環境下における過不働態腐食や応力腐食割れに対して優れた耐食性を有することが可能となる。
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
伝熱面沸騰腐食試験結果を示した図。

Claims (2)

  1. Cを0.03wt%以下、Siを2.0〜3.0wt%、Mnを0.5wt%以下、Feを0.5wt%以下、Pを0.01wt%以下、Sを0.01wt%以下、Crを25.0〜33.0wt%、Wを7.0〜11.0wt%の比率でそれぞれ含有し、Ni及び不可避的不純物を残部として成ることを特徴とする耐硝酸腐食性に優れたNi基合金。
  2. Cを0.03wt%以下、Siを2.0〜3.0wt%、Mnを0.5wt%以下、Feを0.5wt%以下、Pを0.01wt%以下、Sを0.01wt%以下、Crを25.0〜33.0wt%、Wを7.0〜11.0wt%の比率でそれぞれ含有し、Ni及び不可避的不純物を残部として成るNi基合金の鋼塊の溶製工程で、電子ビーム溶解法による溶解を前記鋼塊に施すことを特徴とする耐硝酸腐食性に優れたNi基合金の製造方法。

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