JP4953157B2 - 電子線架橋型熱可塑性ポリウレタンの製造方法 - Google Patents
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本発明で使用される1,2−ビニル結合体含有ポリブタジエンポリオールからなる熱可塑性ポリウレタンは、幅広い高物性能を有し、プラスチック性とゴム性とを有する樹脂であって、汎用加工機によって容易に成形することが可能であるため、各種工業用品に用いられるようになっている。
さらに、ポリウレタン分子内にポリブタジエンを導入して導電性ローラを製造する方法の際に、ローラの表面に電子線を照射して架橋させることにより、高耐久なロールを得る技術も提案されている(特許文献2)。しかしながら、特許文献2で開示している方法では、ポリブタジエンポリオールの1,2−ビニル体含有量の低いポリブタジエンを使用しているため、耐溶剤性や絶縁性が低くなる等の問題が発生する。また、公称平均官能基数が2以上であるため、成形された組成物は熱可塑性を有することができず、本発明の目的とする所から外れてしまう。
I. ポリブタジエンポリオール中のブタジエン単位の微細構造が1,2−ビニル体を50%以上含有するポリブタジエンポリオール(A)、鎖延長剤として側鎖アルキル基を有する炭素数4〜15のグリコール(B)、及び有機ポリイソシアネート(C)から得られる電子線架橋型熱可塑性ポリウレタンを、50〜3,000keVの電子線を照射することにより架橋させることにより高物性を得られる熱可塑性ポリウレタンを製造する方法。
II. (A)が、数平均分子量500〜5,000のポリブタジエンポリオールであり、かつポリブタジエンポリオール中のブタジエン単位の微細構造が1,2−ビニル体50モル%以上で、かつ公称平均官能基数が1.8以上2.0未満である上記I記載の製造方法。
III. (B)が、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールである上記I又はII記載の製造方法。
IV. (B)が、2−ブチル−2−エチル−プロパンジオールである上記I又はII記載の製造方法。
V. 有機ジイソシアネート(C)が、ジフェニルメタンジイソシアネートである上記I〜IVのうちいずれか一つに記載の製造方法。
VI. 上記I〜Vのいずれか記載の製造方法のより得られた樹脂であって、機械強度、耐水性、絶縁性に優れていることを特徴とする電線用被覆材。
VII. 上記I〜Vのいずれか記載の製造方法で得られた樹脂であって、機械強度、耐水性、絶縁性に優れていることを特徴とする高性能フィルム。
側鎖アルキル基を有しない、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンやモノエタノールアミン等の数平均分子量500未満のグリコール、ジアミン及びアミノアルコールについては、溶媒を利用した方法により使用することが可能であるが、溶媒の除去が必要であり合成方法としては好ましくない。
また、有機ポリイソシアネート(C)と水酸基含有成分((A)+(B))の当量比(NCO/OH)は0.8〜1.3であるのが好ましい。当量比が0.8未満だと機械強度が不十分となり、1.3を超えると、得られる組成物にフィッシュアイが発生するなどの外観不良が起き易いといった弊害がある。
使用するほうが反応時間の短縮、反応の完結等の利点があるので好ましい。この触媒としては、通常用いられているウレタン化触媒がいずれも使用できるが、例えばビスマス、鉛、錫、鉄、アンチモン、ウラン、カドミウム、コバルト、トリウム、アルミニウム、水銀、亜鉛、ニッケル、セリウム、モリブデン、バナジウム、銅、マンガン、ジルコニウム、カルシウム等の有機化合物、無機化合物等のうち1種又は2種以上の混合物が挙げられる。好ましい触媒は有機金属化合物であり、特に好ましいのはジアルキル錫化合物である。代表的な有機錫触媒としては、例えばオクタン酸第一錫、オレイン酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブジル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ドデシルメルカプチド、ジオクチル錫ジラウレート等が挙げられる。使用する触媒の量は他の原料の性質、反応条件、所望の反応時間等によって決定されるものであるので、特に制限されるものではないが、おおむね、触媒は反応混合物の全質量の3質量%以下、好ましくは2質量%以下の範囲で使用する。
上記方法により得られた電子線架橋型熱可塑性ポリウレタンの成形品は、次いで電子線を照射して硬化する。電子線を照射すると、1,2−ポリブタジエンのビニル基のラジカル重合により三次元架橋構造となり、成形品をより硬化させることが可能となる。電子線は、合成樹脂に対して透過性があり、その透過の程度は、成形品の厚みと、電子線の運動エネルギーンに依存する。その照射厚みに従って厚み方向に均一に透過可能に電子線のエネルギーを調整すると、厚み方向で架橋度を均一にした成形品とすることができる。
温度調整可能な混合タンクにポリブタジエンポリオール、KrasolLBH2000を19.52kg、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(EHD)を3.04kg、ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)を1.5g仕込み、均一に混合して70℃に温調した。この混合液はヘッドタンクに送液され、ここで85℃に温調される。二軸押出機のホッパー付近温度:190℃、中間部温度:200℃、先端部温度:190℃に温度調節し、そのホッパー口より、前記混合液を313.5g/min、MDIを106.3g/minの条件で連続的に原料供給し、ストランドダイから溶融樹脂を吐出・冷却固化後ストランドカットした。次いで25℃にて3日間エージングさせて熱可塑性ポリウレタン樹脂のペレットを得た。樹脂フィード量は25kg/hourである。得られたペレットを厚さ100μmのフィルムに加工したものを「PU−1」とする。
前記PU−1を、電子線照射装置を用いて、加速電圧165kV、照射線量10Mrad、酸素濃度800ppm以下の条件で電子線を照射し硬化させた。得られたフィルムをPU−1’とする。
温度調整可能な混合タンクにポリブタジエンオール、Krasol LBH 2000を16.01kg、オクタンジオールを4.49kg、ジオクチル錫ジラウレートを1.5g仕込み、均一に混合して70℃に温調した。この混合液はヘッドタンクに送液され、ここで85℃に温調される。二軸押出機のホッパー付近温度:190℃、中間部温度:200℃、先端部温度:190℃に温度調節し、そのホッパー口より、前記混合液を284.7g/min、MDIを136g/minの条件で連続的に原料供給し、ストランドダイから溶融樹脂を吐出・冷却固化後ストランドカットした。次いで25℃にて3日間エージングさせて熱可塑性ポリウレタン樹脂のペレットを得た。樹脂フィード量は25kg/hourである。得られたペレットを厚さ100μmのフィルムに加工したものを「PU−2」とする。
前記PU−2を、加速電圧165kV、照射線量10Mrad、酸素濃度800ppm以下の条件で電子線を照射し硬化させた。得られたフィルムをPU−2’とする。
温度調整可能な混合タンクにポリブタジエンオール、Krasol LBH 2000を17.60kg、2−ブチル−2−エチル−プロパンジオール(BEPD)を4.06kg、ジオクチル錫ジラウレートを1.5g仕込み、均一に混合して70℃に温調した。この混合液はヘッドタンクに送液され、ここで85℃に温調される。二軸押出機のホッパー付近温度:190℃、中間部温度:200℃、先端部温度:190℃に温度調節し、そのホッパー口より、前記混合液を300.8g/min、MDIを118.1g/minの条件で連続的に原料供給し、ストランドダイから溶融樹脂を吐出・冷却固化後ストランドカットした。次いで25℃にて3日間エージングさせて熱可塑性ポリウレタン樹脂のペレットを得た。樹脂フィード量は25kg/hourである。
得られたペレットを厚さ100μmのフィルムに加工したものを「PU−3」とする。
PU−3の電子線架橋方法
前記PU−3を電子線照射装置を用いて、加速電圧165kV、照射線量10Mrad、酸素濃度800ppm以下の条件で電子線を照射し硬化させた。得られたフィルムをPU−3’とする。
温度調整可能な混合タンクにポリブタジエンオールCを19.54kg、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(EHD)を2.96kg、ジオクチル錫ジラウレートを1.5g仕込み、均一に混合して70℃に温調した。この混合液はヘッドタンクに送液され、ここで85℃に温調される。二軸押出機のホッパー付近温度:190℃、中間部温度:200℃、先端部温度:190℃に温度調節し、そのホッパー口より、前記混合液を312.4g/min、MDIを107.3g/minの条件で連続的に原料供給し、ストランドダイから溶融樹脂を吐出・冷却固化後ストランドカットした。次いで25℃にて3日間エージングさせて熱可塑性ポリウレタン樹脂のペレットを得た。樹脂フィード量は25kg/hourである。
得られたペレットを厚さ100μmのフィルムに加工したものを「PU−4」とする。
PU−4の電子線架橋方法
前記PU−4を電子線照射装置を用いて、加速電圧165kV、照射線量10Mrad、酸素濃度800ppm以下の条件で電子線を照射し硬化させた。得られたフィルムをPU−4’とする。
PU−5の合成方法
温度調整可能な混合タンクにポリオールAを22.38kg、1,4−BDを2.52kg、オクチル錫ジラウレート(DOTDL)を1.5g仕込み、均一に混合して60℃に温調した。この混合液はヘッドタンクに送液され、ここで85℃に温調される。二軸押出機のホッパー付近温度:180℃、中間部温度:190℃、先端部温度:200℃に温度調節し、そのホッパー口より、前記混合液を358.8g/min、MDIを141.2g/minの条件で連続的に原料供給し、ストランドダイから溶融樹脂を吐出・冷却固化後ストランドカットした。次いで脱水、乾燥させて熱可塑性ポリウレタン樹脂のペレットを得た。樹脂フィード量は30kg/hourである。
得られたペレットを厚さ100μmのフィルムに加工したものを「PU−5」とする。
PU−6の合成方法
温度調整可能な混合タンクにポリオールBを21.42kg、1,4−BDを3.48kg、オクチル錫ジラウレート(DOTDL)を1.5g仕込み仕込み、均一に混合して80℃に温調した。この混合液はヘッドタンクに送液され、ここで90℃に温調される。二軸押出機のホッパー付近温度:190℃、中間部温度:200℃、先端部温度:200℃に温度調節し、そのホッパー口より、前記混合液を260g/min、MDIを156.7g/minの条件で連続的に原料供給し、ストランドダイから溶融樹脂を吐出・冷却固化後ストランドカットした。次いで脱水、乾燥させて熱可塑性ポリウレタン樹脂のペレットを得た。樹脂フィード量は25kg/hourである。
得られたペレットを厚さ100μmのフィルムに加工したものを「PU−6」とする。
温度調整可能な混合タンクにPolybd R−45HTを1950g、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールを312.5g仕込み、均一に混合して80℃に温調した。この容器にMDIを759.5g加え、高速攪拌・混合してバットに流延し、80℃で12時間反応させた。この反応物を粉砕、ペレット化を試みたが、溶融しないためにペレット化することができなかった。本製造例で用いたポリブタジエンポリオール(Polybd R−45HT)の公称平均官能基数は本発明の範囲外の2.3である
製造例1から8で得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂PU−1〜4、PU−1’〜PU−4’について、機械物性、ゲル分率、軟化点の測定を行った。その結果を表1に記載する。
製造例2、4、6、8で得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂PU−1’〜PU−4’、及び製造例9と10で得られたPU−5とPU−6について、硬さ、機械物性、体積固有抵抗、吸水率、軟化点を測定した。その結果を表2に記載する。実施例5〜7については、実施例1〜3の測定結果も併せて記載した。
(ポリブタジエンポリオール)
KrasolLBH2000:1,4−cis/1,4−trans/1,2−vinyl=10〜15質量%/20〜25質量%/60〜70質量%、官能基数=1.9、数平均分子量=2000のポリブタジエンポリオール、SARTOMER社製
Polybd R−45HT:1,4−cis/1,4−trans/1,2−vinyl=20質量%/60質量%/20質量%、官能基数=2.3、水酸基価=46.6mgKOH/g、数平均分子量=2800のポリブタジエンポリオール、出光社製
ポリブタジエンポリオールC:1,4−cis/1,4−trans/1,2−vinyl=0質量%/90質量%/10質量%、官能基数=1.8、水酸基価=35〜55mgKOH/g、数平均分子量=2000のポリブタジエンポリオール
(ポリオール)
ポリオールA:1,4−ブタンジオールとアジピン酸から得られる数平均分子量が2,000のポリエステルポリオール
ポリオールB:ポリテトラメチレングリコール、PTG−1000SN、保土谷化学社製
(鎖延長剤)
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール(EHD):オクタンジオール、協和発酵ケミカル社製
2−ブチル−2−エチル−プロパンジオール(BEPD):DMH、(株)チッソ社製
1,4−BD:1,4−ブタンジオール、三菱化学社製
(イソシアネート)
MDI:4、4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業株式会社製)
(樹脂)
TPU:熱可塑性ポリウレタン樹脂
フィルムをJIS K−6251、2号型試験片に打ち抜き、500gf/cm2 の荷重をかけ、乾燥器内に取り付け、昇温速度5℃/分で昇温させ、フィルムの伸びが3倍になった温度を軟化点とした。
JIS K6251に準じて測定を行なった。
メチルエチルケトン(MEK)中で130℃、5時間抽出し、以下の計算式でゲル分率を算出した。
ゲル分率(%)=(抽出後の質量/抽出前の質量)×100
JIS K7209に準じて測定を行なった。
JIS K6911に準じて測定を行なった。
JIS K6253に準じて測定を行なった。
Claims (7)
- ポリブタジエンポリオール中のブタジエン単位の微細構造が1,2−ビニル体を50%以上含有するポリブタジエンポリオール(A)、鎖延長剤として側鎖アルキル基を有する炭素数4〜15のグリコール(B)、及び有機ポリイソシアネート(C)から得られる電子線架橋型熱可塑性ポリウレタン樹脂を、50〜3,000keVの電子線を照射することにより架橋させることにより高物性を得られる熱可塑性ポリウレタンを製造する方法。
- (A)が、数平均分子量500〜5,000のポリブタジエンポリオールであり、かつポリブタジエンポリオール中のブタジエン単位の微細構造が1,2−ビニル体50モル%以上で、かつ公称平均官能基数が1.8以上2.0未満である請求項1記載の製造方法。
- (B)が、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールである請求項1又は2記載の製造方法。
- (B)が、2−ブチル−2−エチル−プロパンジオールである請求項1又は2記載の製造方法。
- 有機ジイソシアネート(C)が、ジフェニルメタンジイソシアネートである請求項1から4のうちいずれか1項に記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか記載の製造方法のより得られた樹脂であって、機械強度、耐水性、絶縁性に優れていることを特徴とする電線用被覆材。
- 請求項1〜5のいずれか記載の製造方法で得られた樹脂であって、機械強度、耐水性、絶縁性に優れていることを特徴とする高性能フィルム。
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