JP4952985B2 - 磁気抵抗効果素子及び不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ - Google Patents

磁気抵抗効果素子及び不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ Download PDF

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Description

本発明は、磁気抵抗効果素子及びセル選択にMOSトランジスタを用いない不揮発性ランダムアクセス磁気メモリに関する。
磁気抵抗効果素子を用いた不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ(MRAM)は、不揮発、高速動作、低消費電力、高集積度を実現可能な多機能メモリとして位置づけられており、その製品化が進められている。従来のMRAMには、強磁性トンネル接合素子が使用されている。さらに、磁気抵抗効果を高めるために強磁性二重トンネル接合素子の研究が行なわれている。
図7は、従来の強磁性二重トンネル接合素子50の断面構造を示す模式図である。強磁性二重トンネル接合素子50は、基板52上に第1の強磁性層53とトンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層54と第2の強磁性層55とトンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層56と第3の強磁性層57との順に積層されて構成されている。絶縁層54,56には、アルミニウムの酸化膜(AlO)や非特許文献1で報告されたMgO膜が用いられている。
しかしながら、MRAMの特徴を十分に発揮した高性能メモリの開発、特にDRAM並かそれ以上の高集積化を行なう場合には、磁気抵抗効果素子だけではなく、磁気抵抗効果素子と共に各メモリセルに配置され、メモリセルの選択に用いられているMOSトランジスタの小型化が解決困難な問題となっている。
一方、従来から、その実現可能性は別として、このMOSトランジスタに関する問題の解決方法として、MOSトランジスタを使わない、つまり、他のメモリセル選択法を用いたMRAMが種々提案されてきた。特許文献1はその一例であり、ここには、ナノ磁性粒子のクーロンブロッケイド、すなわち、単一電子トンネル効果をメモリセル選択に用いる方法が開示されている。
図8は、従来のクーロンブロッケイド現象を用いた磁気抵抗効果素子60の断面構造を示す模式図であり、下から磁性層61、絶縁層62、絶縁体63中に磁性金属からなるクラスター64が分散した層65、絶縁層66、磁性層67の順序に積層された多層膜から構成されている。ナノ磁性粒子を用いれば、メモリを担う要素素子がセル選択機能をも併せ持つことになり、従来にない飛躍的な高集積化が可能である。
しかし、固体メモリ素子構造において室温でクーロンブロッケイドを生じさせるためには、ナノ磁性粒子の粒子サイズは約1nm程度となり、現在実用可能などのような強磁性体を用いても磁化が熱揺ぎの影響を受けることになる。すなわち、ナノ磁性粒子のクーロンブロッケイドと磁化の熱的安定性の両方を室温で確保することは、従来の提案されたセル構造では不可能である。非特許文献2には、クーロンブロッケイドを用いた磁気抵抗効果素子ではバイアス電圧により素子抵及び磁気抵抗を変化させる機能があるが、4.2Kという極低温でしか動作せず、室温動作ができないということが報告されている。
特開平11−259817号公報 S.Yuasa他、Nature Materials、Vol.3、pp.868−871、2004年 薬師寺 啓 他、日本応用磁気学会誌、Vol.27、No.3、pp.111−117、2003年
従来のMRAMにおいて検討されているように、ナノ磁性粒子のクーロンブロッケイドをセル選択に用い、メモリ機能とセル選択機能の両方を一つの素子で兼用する構造では、高集積化は可能である。しかしながら、ナノ磁性粒子の磁化熱揺らぎのために、室温動作ができないという課題があった。
本発明は、上記課題に鑑み、ナノ粒子のクーロンブロッケイドを利用する磁気抵抗効果素子でありながら、磁化の熱揺らぎの影響を受けずに室温で動作する、新規な磁気抵抗効果素子及び不揮発性ランダムアクセス磁気メモリを提供することを目的としている。
上記の第1の目的を達成するため、本発明の磁気抵抗効果素子は、強磁性固定層となる第1の強磁性層と、MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、強磁性自由層となる第2の強磁性層と、が順に積層されてなり、上記第2の絶縁層内には、粒径が約1.5nm以下のAuからなる非磁性ナノ粒子が埋め込まれ、Auからなる非磁性ナノ粒子が単一電子トンネル効果を生起し、強磁性固定層と強磁性自由層との間に電流を流して、スピン注入磁化反転によって強磁性自由層の磁化反転を行なうことを特徴とする。
上記構成によれば、強磁性電極間にトンネル障壁層を介して金属からなる非磁性ナノ粒子を配した2重トンネル接合構造の磁気抵抗効果素子において、単一電子トンネル効果を生起させ、非磁性ナノ粒子を介する強磁性電極間のトンネル磁気抵抗効果により磁気抵抗の検出を行なうことができる。スピン注入磁化反転によって強磁性自由層の磁化反転を行なうことができるので、MRAMのメモリセルとして使用することができる。
本発明の第2の磁気抵抗効果素子は、強磁性固定層となる第1の強磁性層と、MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、強磁性自由層となる第2の強磁性層と、非磁性層からなるスペーサ層と、強磁性からなるスピン注入層と、が順に積層されてなり、第2の絶縁層内には、粒径が約1.5nm以下のAuからなる非磁性ナノ粒子が埋め込まれ、Auからなる非磁性ナノ粒子が単一電子トンネル効果を生起し、上記強磁性固定層と上記スピン注入層との間に電流を流して、スピン注入磁化反転によって上記強磁性自由層の磁化反転を行なうことを特徴とする。
上記構成によれば、非磁性層からなるスペーサ層と、強磁性からなるスピン注入層とを備えているので、スピン注入反転を低電流で行なうことができることから、MRAMのメモリセルとして使用することができる。
上記構成において、好ましくは、第1及び第2の絶縁層の障壁高さは0.2〜0.5eV以下であり、室温で動作する。非磁性ナノ粒子の面内数密度は1012個/cm以上であることが好ましい。この場合、室温で、非磁性ナノ粒子の単一電子トンネル効果を効率よく生起させることができる。
上記の第2の目的を達成するため、本発明の不揮発性ランダムアクセス磁気メモリは、強磁性固定層となる第1の強磁性層と、MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、強磁性自由層となる第2の強磁性層と、が順に積層されてなり、第2の絶縁層内には、Auからなる非磁性ナノ粒子が埋め込まれ、単一電子トンネル効果を生起し、強磁性固定層と強磁性自由層との間に電流を流して、スピン注入磁化反転によって強磁性自由層の磁化反転を行なう磁気抵抗効果素子をメモリセルとし、該メモリセルを二本のビット線が交差する各位置にマトリクス状にされて構成され、単一電子トンネル効果によりメモリセルの選択を行ない、磁気抵抗効果素子のトンネル磁気抵抗効果により読出しを行なうことを特徴とする。
上記構成によれば、単一電子トンネル効果によりメモリセルの選択を行ない、磁気抵抗効果素子のトンネル磁気抵抗効果により読出しを行なうことができる。
本発明の第2の構成の不揮発性ランダムアクセス磁気メモリは、強磁性固定層となる第1の強磁性層と、MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、強磁性自由層となる第2の強磁性層と、非磁性層からなるスペーサ層と、強磁性からなるスピン注入層と、が順に積層されてなり、上記第2の絶縁層内には、Auからなる非磁性ナノ粒子が埋め込まれ、単一電子トンネル効果を生起し、強磁性固定層とスピン注入層との間に電流を流して、スピン注入磁化反転によって強磁性自由層の磁化反転を行なう磁気抵抗効果素子をメモリセルとし、メモリセルが二本のビット線が交差する各位置にマトリクス状に配設されて構成され、メモリセルは、強磁性固定層と強磁性自由層との間に電流を流して、スピン注入により強磁性自由層を磁化反転し、単一電子トンネル効果によりメモリセルの選択を行ない、磁気抵抗効果素子のトンネル磁気抵抗効果により読出しを行なうことを特徴とする。
上記構成によれば、単一電子トンネル効果によりメモリセルの選択を行ない、磁気抵抗効果素子のトンネル磁気抵抗効果により読出しを行なうことができる。非磁性層からなるスペーサ層と、強磁性からなるスピン注入層とを備えているので、スピン注入反転を低電流で行なうことができることから、低消費電力のMRAMを提供することができる。
本発明の磁気抵抗効果素子によれば、ナノ粒子に非磁性体を用い、非磁性ナノ粒子のスピン蓄積による磁気抵抗効果を読出しに利用するので、室温で動作させることができる。非磁性ナノ粒子の大きさが室温で動作できる大きさ(約3nm以下)であっても、強磁性ナノ粒子のような磁化熱揺らぎの問題は生じないという効果が得られる。
本発明の不揮発性ランダムアクセス磁気メモリによれば、メモリセルにおいて非磁性ナノ粒子のクーロンブロッケイド効果と磁気抵抗効果の両方を利用し、スピン注入による強磁性電極層の磁化反転を行なうことができる。このため、単一のメモリセルで両効果を得ることで、従来のメモリセルに配置するMOSFETや磁化反転用の配線が不要となり、高集積化することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。各図において同一又は対応する部材には同一符号を用いる。
最初に、本発明による磁気抵抗効果素子について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の構造を模式的に示す断面図である。図1に示すように、磁気抵抗効果素子10は、強磁性固定層となる第1の強磁性電極層2と、第1のトンネルバリア層4と、第1のトンネルバリア層4上に形成される非磁性ナノ粒子1と、第2のトンネルバリア層5と、強磁性自由層となる第2の強磁性電極層3とが、順に積層された構造を有している。図示の場合には、非磁性ナノ粒子1は第2のトンネルバリア層5内に埋め込まれた構造を有している。なお、非磁性ナノ粒子1の粒径をdとする。
第1及び第2の強磁性電極層2,3は、FeやCoなどの強磁性材料やこれらの強磁性材料を含むFeCoBなどの合金材料で形成することができる。
厚さがtの第1のトンネルバリア層4は、絶縁体材料により形成することができる。第2のトンネルバリア層5は絶縁体材料により形成することができ、非磁性ナノ粒子1が半球形状の場合には、その厚さがt+d/2である。つまり、非磁性ナノ粒子1の最上部と強磁性電極層3との距離はtである。
非磁性ナノ粒子としては、非磁性の金(Au)や銅(Cu)からなる金属非磁性ナノ粒子を用いることができる。
情報は強磁性層2に記録され、その向きが2進法記録の“0”、“1”に対応する。読み出しは、非磁性ナノ粒子1を介した強磁性電極層間2,3のトンネル磁気抵抗効果によって行なう。すなわち、強磁性電極層2,3の磁化の方向が平行か反平行かによって抵抗値が異なることを利用する。クーロンブロッケイドは非磁性ナノ粒子において生じる。
非磁性ナノ粒子1にクーロンブロッケイドが生起するための条件は、下記(1)式で与えられる。
=e/2C=AkT (1)
ここで、Eは非磁性ナノ粒子1の帯電エネルギーであり、eは電子の電荷、Cは非磁性ナノ粒子1の容量、Aは5から10程度のマージンを表す定数、kはボルツマン定数、Tはメモリセルの動作温度(K)を示す。
非磁性ナノ粒子1において、300K程度の常温でクーロンブロッケイドを生起させ、さらに、クーロンブロッケイドが破れて電流が流れ始めるバイアス電圧、つまり、閾値電圧V(V=E/e)を150〜300mV程度とするためには、上記(1)式により非磁性ナノ粒子1の容量を求めればよい。この条件を満たす容量Cを得るには、非磁性ナノ粒子1の粒径dは約1.5nm以下とすればよい。
また、非磁性ナノ粒子1と強磁性電極2,3が接近しすぎても、キャパシタンスが小さくなるため、非磁性ナノ粒子1と強磁性電極2,3との距離は最低でも1nm程度の厚みが必要である。つまり、非磁性ナノ粒子1と第1の強磁性電極層2との間に挿入される第1のトンネルバリア層4の厚さt1と、非磁性ナノ粒子1と第2の強磁性電極層との間に挿入される第2のトンネルバリア層5の厚さt2は1nm程度の厚みが必要である。
磁気抵抗効果素子10の2重トンネル接合が実用的なデバイスとなるためには、その抵抗値が重要である。クーロンブロッケイドが生じる条件を満たすためには、非磁性ナノ粒子1個と強磁性電極2,3の間のトンネル抵抗は量子抵抗以上、例えば、10倍以上の数MΩとすればよい。複数の非磁性ナノ粒子1を含む図1の2重トンネル接合の全抵抗が、実用的な素子抵抗、すなわち、数kΩから数10kΩとなるためには、非磁性ナノ粒子1の個数は、100個から1000個程度となる。この場合には、非磁性ナノ粒子1の面内数密度は大凡1012個/cm以上となり、素子抵抗を下げることができる。容量を増加させないためには、s/dは約2以上必要である。d=1nmであるとすると、メモリセルの寸法(セルサイズ)は、数十nmから大きくても100nmであり、これまでにない高集積度のメモリを実現することができる。
非磁性ナノ粒子1個と強磁性電極2,3の間のトンネル抵抗を数MΩとするには、障壁の高さ、すなわち、バリアポテンシャルを、0.2〜0.5eV程度とする必要がある。典型的には約0.3eVであり、トンネル抵抗を数MΩとするには、第1及び第2のトンネルバリア層4,5の厚さt2,は、最大でも1nmを大きく上回る必要はなく、約1nm程度とすることが好適である。このような障壁の高さを満たす材料としては、MgOが挙げられる(非特許文献1参照)。さらに、このような低バリアポテンシャルを採用すると、高バイアス電圧を加えたとき非線形性が顕著に現われ、動作時に低抵抗、すなわち高速動作やスピン注入磁化反転が可能となる。
磁気抵抗効果素子10においては、強磁性固定層となる第1の強磁性電極層2からのスピン注入により強磁性自由層となる第2の強磁性電極層3の磁化反転、つまり、スピン注入磁化反転を行なうことができる。この場合、後述する第2の実施形態に係る磁気抵抗効果素子20に比較すると効率は悪いが、第1の強磁性電極層2からスピン分極した電流を第2の強磁性電極層3に流すことができる。第2の強磁性電極層3で失われるスピン角運動量が、第2の強磁性電極層3における磁化反転のためのトルクを与える。
図2は、図1の磁気抵抗効果素子10の電流電圧特性を模式的に示すものである。図において、横軸はバイアス電圧を示し、縦軸は電流を示している。
スイッチング電圧(以下、Vと称する。)以下では、電流値はほぼゼロ、スイッチング電圧以上では、高速読み出しとスピン注入磁化反転を実現するために、電流値は急激に増加する特性とする。電流は非線形的に増加することが望ましい。上記の低バリアポテンシャルバリアによればこの条件を自動的に満たす。但し、クーロンブロッケイドが消失しない条件、つまり、低バイアスでのトンネル抵抗が量子抵抗より十分大きい、例えば10倍以上を満たす場合である。
磁気抵抗効果素子10を後述する不揮発性ランダムアクセス磁気メモリのメモリセルとした場合、メモリセル間の干渉を生じないために、読み出しは、スイッチング電圧の3倍(3V)から動作余裕電圧(以下、適宜にマージン電圧と称する。)を差引いた電圧とした読み出し電圧で行なえばよい。書き込みは、磁化反転が生じる電流が流れる電圧に、マージン電圧を加えた書き込み電圧で行なえばよい。この書き込み電圧は、上記のように設定した読み出し電圧よりも大きく設定すればよい。但し、書き込み電圧は周辺のメモリセルに磁化反転が生じないように必要な電圧の2倍を越えないように設定する。図示の場合には、読み出し電圧を約2V以下とし、スピン注入による書き込み電圧を約2.5V とした例を示している。計算によれば、Vが0.2Vの場合には、読み出し電圧が約0.5V程度、上記(1)式のマージン定数Aは約7程度と見積もられる。書き込み電圧を読み出し電圧より大きい電圧、例えば900mVとすれば、そのときの抵抗値は、抵抗の非線形性より数kΩ以下となる。電流値は、900mV/数kΩ=0.1〜0.5mAとなる。セルサイズを数十nmとすれば、電流密度は0.1〜0.5mA/(数10nm)=10A/cm台となり、スピン注入磁化反転が十分に可能である。
本発明の第1の実施形態の磁気抵抗効果素子10によれば、情報は、第2の強磁性層3に記録され、その磁化の向きが2進法記録の“0”、“1”に対応する。読み出しは、非磁性ナノ粒子を介した強磁性電極層2,3間のトンネル磁気抵抗効果によって行なうことができる。すなわち、強磁性電極層2,3の磁化の方向が平行か反平行かによって抵抗値が異なることを利用する。
本発明の第2の実施形態に係る磁気抵抗効果素子について説明する。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る磁気抵抗効果素子20の構造を模式的に示す断面図である。図3に示すように、磁気抵抗効果素子20は、強磁性固定層となる第1の強磁性電極層2と、第1のトンネルバリア層4と、第1のトンネルバリア層4上に形成される非磁性ナノ粒子1と、第2のトンネルバリア層5と、強磁性自由層となる第2の強磁性層3と、非磁性金属からなるスペーサ層6と、スピン注入を行なうための強磁性層からなるスピン注入層7と、からなる。この磁気抵抗効果素子20は、図1に示す磁気抵抗効果素子10の第2の強磁性層3上に、さらに、スペーサ層6とスピン注入層7とを設けた点で構造が異なる。つまり、図1で示す磁気抵抗効果素子10の構造に、スピン注入磁化反転のための非磁性金属からなるスペーサ層6と、スピン注入を行なうための強磁性層7を追加した構造となっている。
非磁性金属からなるスペーサ層6としては、銅(Cu),金(Au),アルミニウム(Al)等の材料、あるいはこれらの非磁性金属からなる合金材料を用いることができる。この場合には、スペーサ層6の厚さは2〜5nmとすればよい。スペーサ層6には、電子がトンネル注入される厚さの絶縁層を用いてもよい。この絶縁層6には、AlOやMgOからなる1nm又は1nm以下の厚さの薄膜を用いることができる。この場合、スペーサ層6となる絶縁層の厚さを1nm以下とした場合には、磁気抵抗効果素子20の抵抗値を小さくすることができる。この絶縁層6の厚みを約1nmとした場合には、読み出し電圧近傍でのそのトンネル抵抗値は、非磁性ナノ粒子1を含む2重トンネル接合部分の抵抗値と同程度になる。この場合、読み出し出力が小さくなるという不利が生じるが、上部の強磁性電極層3とスピン注入層7の間の磁気抵抗効果を利用した読み出し動作も可能となる。
スピン注入を行なうための強磁性層7は、第1の強磁性電極層2や第2の強磁性層3と同様に、FeやCoなどの強磁性材料やこれらの強磁性体材料を含むFeCoBなどの合金材料で形成することができる。
磁気抵抗効果素子20の電流電圧特性は、図2に示した磁気抵抗効果素子10の電流電圧特性と同様である。磁気抵抗効果素子20は、スピン注入磁化反転のための非磁性金属からなるスペーサ層6とスピン注入を行なうための強磁性層7とを追加した構造である。このため、磁気抵抗効果素子10よりも小さい電流密度でスピン注入を生起させることができる。
次に、本発明の第1及び第2の実施形態に係る磁気抵抗効果素子をメモリセルとして用いた不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ30について説明する。
図4は、本発明の第1及び第2の実施形態に係る磁気抵抗効果素子10,20をメモリセルとして用いた不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ30の構成を模式的に示した図である。図4において、ランダムアクセスメモリ(MRAM)30は、X方向のビット線31とY方向のビット線32とが交差する各位置に、マトリクス状に本発明の磁気抵抗効果素子10,20を用いたメモリセルを配設した構成である。図においては、説明の簡略化のため周辺回路を除いている。
このMRAM30では、マトリクスを構成する各メモリセルに直接電流を流してスピン反転を行なうことで書き込みができる。この場合、第2の強磁性層の磁化を、第1及び第3の強磁性層の磁化に対して互いに平行又は反平行に制御することにより、“1”,“0”の記録、つまり、書き込みができる。
一方、読み出しは、TMR効果を利用して行なう。TMRの測定は、第2の強磁性層3の磁化反転が生じないように、上記書き込み時の電流とは異なる電流で行なえばよい。このため、本実施形態のMRAM30では、第2の強磁性層3の磁化が平行か反平行かで“1”、“0”の情報を規定でき、第2の強磁性層3の磁化は電源を切っても保持されるから不揮発メモリにできる。
これにより、本発明のMRAM30では、大きなTMRが得られる。それと同時に、従来のMRAMで必要であったMTJ素子に接続していたMOSトランジスタと強磁性自由層への書き込みを行なうための磁場印加用の電流配線とを不要とする、新規なMRAMセルを構成することができる。
また、本発明に用いるデバイス構造としては、実施例に記載した構造に限らず同一の物理原理によって室温で動作するデバイス構造であれば、特に限定されるものではない。
上記構成の本発明のメモリセルやそれを用いた不揮発性ランダムアクセス磁気メモリなどの磁気デバイスは、以下のようにして製作することができる。
最初に、基板上に、第1の強磁性層2と、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層4と、非磁性ナノ粒子1と、第2のトンネルバリア層5と、強磁性自由層となる第2の強磁性電極層3とを順にスパッタ法、MBE法などの薄膜形成方法により堆積させる。この基板としては、MgO基板や絶縁層で被覆したSi基板にMgOを堆積した基板を用いることができる。非磁性ナノ粒子1の形成には、トンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層4上への非磁性金属の成長が島状成長となることを利用することができる。メモリセルが磁気抵抗効果素子20の場合には、さらに、第2の強磁性層3上に非磁性金属からなるスペーサ層6と、スピン注入を行なうための強磁性層からなるスピン注入層7を積層すればよい。
次に、所定の厚さの絶縁膜を、スパッタ法やCVD法により堆積する。
続いて、主電極となる第1及び第2の強磁性層2,3とに電極を形成する領域の開口を形成すると共に、必要に応じてエッチングを行ない、各電極を形成する領域を露出させる。
そして、各電極を形成する領域の露出部に、所定の厚さの金属膜をスパッタ法などにより堆積させ、余分な金属膜を選択エッチングにより除去する。以上の工程で、メモリセルを製造することができる。
MRAM30やロジック用の集積回路の場合には、上記の工程で製作したメモリセル上をさらに絶縁膜で被覆し、メモリセル10,20の配線を行なう箇所だけに窓開けをした後に、ビット線やワード線の配線を行なえばよい。また、MRAMの周辺回路をSiのMOSトランジスタで形成する場合には、最初に、Siの周辺回路を形成し、その後で、MRAM30のメモリセルを形成してもよい。
ここで、各材料の堆積には、スパッタ法やCVD法以外には、蒸着法、レーザアブレーション法、分子線エピタキシャル成長法(MBE法)などの通常の薄膜成膜法を用いることができる。また、所定の形状の電極や集積回路の配線を形成するためのマスク工程には、光露光や電子線露光などを用いることができる。
次に、具体的実施例により本発明をさらに詳しく説明する。
MBE法を用いて、MgO基板2上に、Fe(10nm)とMgO(1.7nm)と金非磁性ナノ粒子(0.03nm)とMgO(1.7nm)とFe(5nm)の順に堆積し、実施例の磁気抵抗効果素子となる多層膜を作製した。上記カッコ内の数値は各層の膜厚である。次に、上記多層膜を電子線リソグラフィとArイオンミリングを用いて微細加工して、実施例の磁気抵抗効果素子10を製作した。
図5は、金からなる非磁性ナノ粒子の作製例を示す原子間力顕微鏡像である。図5から明らかなように、粒径が1.4nmで、その間隔が3.1nmの金ナノ粒子が形成されていることが分かる。
図6は、実施例1の磁気抵抗効果素子10における室温での電流電圧特性を、プローブ顕微鏡を用いて測定した結果を示す。図6において、横軸はバイアス電圧(V)を、縦軸は電流(nA)を示している。図6から明らかなように、室温において、金からなる非磁性ナノ粒子1のクーロンブロッケイドが生じ、0.7V以上の高バイアス電圧を印加したときにトンネル電流が流れていることが分かる。
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
本発明に係る磁気抵抗効果素子によれば、従来のMRAMで必要であったMTJ素子に接続していたMOSトランジスタを用いることなく、新規な不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ(MRAM)を構成することができる。さらには、メモリ以外に、例えばロジック等の様々な分野に適用可能である。
本発明の第1の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の構造を模式的に示す断面図である。 図1の磁気抵抗効果素子の電流電圧特性を模式的に示す図である。 本発明の第2の実施形態に係る磁気抵抗効果素子の構造を模式的に示す断面図である。 本発明の第1及び第2の実施形態に係る磁気抵抗効果素子をメモリセルとして用いた不揮発性ランダムアクセス磁気メモリの構成を模式的に示した図である。 金からなる非磁性ナノ粒子の作製例を示す原子間力顕微鏡像である。 実施例1の磁気抵抗効果素子における室温での電流電圧特性を示す図である。 従来の磁気抵抗効果ランダムアクセスメモリに用いられている強磁性二重トンネル接合素子の断面構造を示す模式図である。 従来のクーロンブロッケイド現象を用いた磁気抵抗効果素子の断面構造を示す模式図である。
符号の説明
1:非磁性ナノ粒子(クーロンブロッケイドを生じる部分)
2:第1の強磁性電極層(固定層)
3:第2の強磁性電極層(自由層)
4:第1のトンネルバリア層
5:第2のトンネルバリア層
6:非磁性スペーサ層
7:スピン注入層
10,20:磁気抵抗効果素子
30:不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ

Claims (6)

  1. 強磁性固定層となる第1の強磁性層と、
    MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、
    MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、
    強磁性自由層となる第2の強磁性層と、が順に積層されてなり、
    上記第2の絶縁層内には、粒径が約1.5nm以下のAuからなる非磁性ナノ粒子が埋め込まれ、
    上記Auからなる非磁性ナノ粒子が単一電子トンネル効果を生起し、
    上記強磁性固定層と上記強磁性自由層との間に電流を流して、スピン注入磁化反転によって上記強磁性自由層の磁化反転を行なうことを特徴とする、磁気抵抗効果素子。
  2. 強磁性固定層となる第1の強磁性層と、
    MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、
    MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、
    強磁性自由層となる第2の強磁性層と、
    非磁性層からなるスペーサ層と、
    強磁性からなるスピン注入層と、が順に積層されてなり、
    上記第2の絶縁層内には、粒径が約1.5nm以下のAuからなる非磁性ナノ粒子が埋め込まれ、
    上記Auからなる非磁性ナノ粒子が単一電子トンネル効果を生起し、
    上記強磁性固定層と上記スピン注入層との間に電流を流して、スピン注入磁化反転によって上記強磁性自由層の磁化反転を行なうことを特徴とする、磁気抵抗効果素子。
  3. 前記第1及び第2の絶縁層の障壁高さが0.2〜0.5eV以下であり、室温で動作することを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁気抵抗効果素子。
  4. 前記非磁性ナノ粒子の面内数密度が1012個/cm2以上であることを特徴とする、請求項1又2に記載の磁気抵抗効果素子。
  5. 強磁性固定層となる第1の強磁性層と、
    MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、
    MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、
    強磁性自由層となる第2の強磁性層と、が順に積層されてなり、
    上記第2の絶縁層内には、Auからなる非磁性ナノ粒子が埋め込まれ、単一電子トンネル効果を生起し、
    上記強磁性固定層と上記強磁性自由層との間に電流を流して、スピン注入磁化反転によって上記強磁性自由層の磁化反転を行なう磁気抵抗効果素子をメモリセルとし、該メモリセルを二本のビット線が交差する各位置にマトリクス状に配設した不揮発性ランダムアクセス磁気メモリであって、
    上記単一電子トンネル効果によりメモリセルの選択を行ない、
    上記磁気抵抗効果素子のトンネル磁気抵抗効果により読出しを行なうことを特徴とする、不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ。
  6. 強磁性固定層となる第1の強磁性層と、
    MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第1の絶縁層と、
    MgOからなりトンネル電子のバリアとなる第2の絶縁層と、
    強磁性自由層となる第2の強磁性層と、
    非磁性層からなるスペーサ層と、
    強磁性からなるスピン注入層と、が順に積層されてなり、
    上記第2の絶縁層内には、Auからなる非磁性ナノ粒子が埋め込まれ、単一電子トンネル効果を生起し、
    上記強磁性固定層と上記スピン注入層との間に電流を流して、スピン注入磁化反転によって上記強磁性自由層の磁化反転を行なう磁気抵抗効果素子をメモリセルとし、該メモリセルを二本のビット線が交差する各位置にマトリクス状に配設した不揮発性ランダムアクセス磁気メモリであって、
    上記メモリセルが、
    上記強磁性固定層と上記強磁性自由層との間に電流を流して、スピン注入により上記強磁性自由層を磁化反転し、
    上記単一電子トンネル効果によりメモリセルの選択を行ない、
    上記磁気抵抗効果素子のトンネル磁気抵抗効果により読出しを行なうことを特徴とする、不揮発性ランダムアクセス磁気メモリ。
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