JP4951817B2 - ガスバリア性容器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パルプモールドを主体とする容器であり、パルプ繊維のリサイクル性、生分解性を大きく損なうことなく、高いガスバリア性を有するガスバリア性容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境意識の高まりの中で、プラスチック容器や金属容器が主に使われている分野、たとえばトイレタリー関連製品、飲料、食品等の分野においても、紙容器が幅広く使われ始めている。たとえば、紙の両面にポリエチレン樹脂をコーティングし、それを6面体容器、またはゲーブルトップと呼ばれる屋根型の容器に成形したり、カップ形状に成形した紙容器がすでに一般的に用いられている。しかし、上記のような紙容器は、板紙を折り曲げ、貼り合わせて成形されるため、形状に自由度が無く、商品の独自性を十分に表現することは困難であった。また貼り合わせ部には必ず段差が生じるため、容器を蓋材で密封する場合には、密封不良を起こしやすかった。
【0003】
紙容器に形状の自由度を持たせる1つの手段として、パルプモールドがある。このパルプモールドによる容器は、一般的にパルプ材料を湿式にて抄型上で吸引脱水後、乾燥炉或いは加熱金型内で乾燥することで製造される。特に寸法安定性、美粧性が求められる場合には、抄型上でパルプを吸引脱水後、嵌合しあうプレス型内で加熱乾燥して製造される。更に、特開平11−314267号公報に記載の製造方法によれば、ボトル形状等の中空形状も成型可能である。このようにして製造されたパルプモールド容器は、形状の自由度に富み、また貼り合わせ部分が無いため、付加価値の高い商品を提供することがきる。
【0004】
一方、内容物の品質保持のために水蒸気や酸素等に対するガスバリア性も紙容器に要求されてきている。従来の板紙を折り曲げ、貼り合わせて成形される容器の場合、アルミニウム箔やSiOXやAl23等のガスバリア性を持つ金属酸化物の蒸着フィルム等を紙に貼り合わせてから成形することができるが、前述のようにして得られるパルプモールド容器はその複雑な三次元形状のために、ガスバリア層の形成が困難であった。また従来の板紙から成形した紙容器は、折り曲げ部や貼り合わせ部においてガスバリア層に欠陥を生じて、内容物の品質劣化を引き起こす場合があり、ガスバリア層に折り目や継ぎ目のない、高いガスバリア性を有する紙容器が求められていた。
【0005】
そこで我々は特願2000−102600号明細書にて、パルプモールドの表面にプラズマ重合による薄膜を形成してガスバリア性を付与したパルプモールド容器を提案している。プラズマ重合による薄膜、つまりプラズマ助成式CVD(化学的気相蒸着)にて薄膜を形成する場合、放電電極の形状をパルプモールド容器の形状に合わせて設計し、容器の内面または/および外面で安定したプラズマを発生させることで、三次元形状表面に、継ぎ目のない均一な薄膜を形成することができる。
【0006】
またパルプモールド基材のポーラスで不均一な表面を目止めするために、スプレーコートやディッピングコートによりパルプモールド容器の内面または/および外面に目止め剤をコーティングしてから、プラズマ重合による薄膜を形成することで、より安定したバリア性が得られる。しかし、不均一なパルプモールド表面を完全に目止めするためには厚い樹脂層を必要とし、そのため乾燥が困難となり、液垂れや気泡、表層に乾燥被膜ができてしまうことによる発泡等の不良が発生しやすかった。また目止め層の表面状態や樹脂の種類によって、プラズマ重合により形成される薄膜の膜質は変化し、薄膜のガスバリア性にも大きく影響する。これらの理由により、従来のプラズマ重合による薄膜を形成したパルプモールド容器のガスバリア性は、表面積換算で、酸素透過度が20cc/m2/day、水蒸気透過度が10g/m2/day程度で、ガスバリア性が十分とは言えなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらポリエチレンテレフタレート(PET)シートに同様のプラズマ重合による薄膜を形成すると、酸素透過度が1cc/m2/day、水蒸気透過度が1g/m2/dayのガスバリア性が得られる。従って良好な膜質のプラズマ重合薄膜が形成されさえすれば、パルプモールド容器においても、高いガスバリア性が得られるものと考え、鋭意研究を重ねた結果、パルプモールド基材の表面状態と、目止め層の表面状態とを総合的にコントロールすることが肝要であるという結論に達した。
【0008】
本発明は、形状の自由度が高く、折り目や継ぎ目のないパルプモールド容器であって、アルミニウム箔や金属酸化物の蒸着フィルムを貼った板紙を折り曲げ、貼り合わせて成形される従来のガスバリア性紙容器と同等以上の安定した高いガスバリア性を有し、かつ紙容器としての生分解性やリサイクル性を損なわない環境配慮型のガスバリア性容器を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、パルプモールド基材の内面または/および外面に目止め剤をコーティングして複数層からなる目止め層を設け、さらにその上にプラズマ重合によるシリカ系の薄膜を形成したガスバリア性容器であって、該パルプモールド基材が、JIS P8117に従って測定した透気度が60秒以上であり、また該パルプモールド基材のプラズマ重合による薄膜層を形成する側の表面の、JIS P8119に従った測定で平滑度が2秒以上であり、かつJIS B0601にて定義される算術平均粗さが6.3μm以下(カットオフ値を2.5mm、評価長さを12.5mmとする)であり、プラズマ重合による薄膜との界面となる側の目止め層は、スチレン・アクリル共重合樹脂を主成分とする樹脂層であることを特徴とするガスバリア性容器である。
【0013】
請求項の発明は、前記目止め層が、少なくとも生分解性を有する樹脂を主成分とする樹脂層とスチレン・アクリル共重合樹脂を主成分とする樹脂層を含む多層構成であることを特徴とする請求項に記載のガスバリア性容器である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例として容器の層構成を示した断面図である。本発明のガスバリア性容器(1)はパルプモールド基材(2)の内面に目止め層(3)を介してプラズマ重合薄膜層(4)が形成された例を示した。
【0017】
プラズマ重合による薄膜が安定した高いガスバリア性を発現するためには、薄膜の膜質が良好で均一な連続膜を形成する必要がある。その為に薄膜の下地となる目止め層表面(31)の物理的および化学的表面状態が、薄膜のバリア性に大きく影響する。
【0018】
まず目止め層表面(31)の物理的な表面形成には、目止め剤のコーティング条件と、パルプモールド基材(2)の表面状態(21)が大きく影響する。目止め剤のコーティング量が多いと、液垂れや発泡等により表面の乱れを生じやすい。一方パルプモールド基材表面(21)のうねりや、パルプ繊維の疎密、繊維間の空隙が大きいと、それが反映して目止め層表面(31)も劣化し、目止め層(3)の必要厚みも増す。またパルプモールド基材表面(21)の繊維の飛び出しや、細かな粗さによっても、目止め層(3)に気泡やピンホール等の欠陥が生じる。従って、パルプモールド基材表面(21)の、うねりや、パルプ繊維の疎密、繊維間の空隙等のマクロなレベルの表面平滑性から、繊維の飛び出しや、細かな粗さ等のミクロなレベルの表面平滑性までを制御することが、プラズマ重合による薄膜の高いガスバリア性を発現させる上で重要であると言える。
【0019】
そこで本発明の重要な特徴の1つは、パルプモールド基材の表層が緻密で、パルプモールド基材表面の平滑度が高く、表面粗さが小さい、具体的には、パルプモールド基材(2)は、JIS P8117に従って測定した透気度が60秒以上であり、またパルプモールド基材表面(21)は、JIS P8119に従って測定した平滑度が2秒以上で、かつJIS B0601にて定義される算術平均粗さが6.3μm以下(カットオフ値を2.5mm、評価長さを12.5mmとする)であることを特徴とし、その表面(21)上に目止め剤をコーティングして目止め層(3)を設け、さらにその上にプラズマ重合による薄膜層(4)を形成したことにある。
【0020】
パルプモールド基材の表面状態を上記のように規定することで、目止め層表面(31)の物理的表面状態を良好に形成することができる。また同時に、目止め層(3)の必要膜厚も薄くなるため、目止め剤コーティング時の乾燥を容易とし、液垂れや気泡、発泡といった不良も発生しにくく、より安定したプラズマ重合による薄膜層(4)を形成できる。
【0021】
パルプモールド基材表面(21)を上記のように緻密かつ平滑にする具体的な手法としては、パルプモールド成型時、或いは成型後に、表面が平滑な金型内で、機械的に高圧でプレスしたり、また、材料面から、ろ水度の低いパルプを使用したり、微細化パルプを使用したり、繊維間の水素結合を妨げずに結合点を増やすようなアルコキシシランの加水分解物を主成分とする内添剤を内添したりすることにより、上記に示すパルプモールド基材表面(21)が得られる。
【0022】
本発明に適用可能なパルプモールド基材(2)は上述の特性を満足すれば、そのパルプ材料の材質、成型方法は限定されるものではない。また、本発明の目的である、ガスバリア性と、生分解性、リサイクル性を損なわない範囲内であれば、一般的な製紙用の添加剤、例えばサイズ剤、紙力剤、填量、樹脂パルプ等が添加されても構わない。
【0023】
また、本発明のもう一つの重要な特徴は、プラズマ重合による薄膜が高いガスバリア性を発現する為の良好な膜質形成に、目止め層表面(31)の化学的表面状態の影響が大きいこと、つまり目止め層(3)と薄膜層(4)のマッチングが重要であることに着目した点であり、具体的には、目止め層(3)をオレフィン系、アミド系、石油系、ロジン系、エステル系、エポキシ系、イソシアネート系、ポリビニルアルコール系、アクリル系、酢酸ビニル系、ブタジエン系、ウレタン系、多糖類系のいずれか或いは複数を主成分とする樹脂層としたこと、特に好ましくは、少なくともプラズマ重合による薄膜との界面となる側の目止め層は、スチレン・アクリル共重合樹脂を主成分とする樹脂層としたことにある。
【0024】
目止め層(3)は、水溶液、或いは有機溶剤系溶液、或いはエマルション系の目止め剤を、上述したパルプモールド基材表面(21)にディップコートやスプレーコートすることにより設けることができる。但し目止め剤としては、作業環境の面から水溶液やエマルションのものを用いるほうが好ましい。目止め層(3)の塗工量としては、パルプモールド基材(2)の表面状態や目止め剤の種類により適宜設定することができるが、5〜50g/m2が好ましい。5g/m2未満ではパルプモールド基材表面の目止めが不充分で、高いガスバリア性を得られにくく、逆に50g/m2を超えると、前述したように目止め層に液垂れ、気泡、発泡等の欠陥が生じやすく、かえってガスバリア性が低下するとともに、紙容器としてのリサイクル性や生分解性を妨げやすいためである。
【0025】
特に、目止め層(3)として、スチレン・アクリル共重合樹脂を主成分とする樹脂を、少なくともプラズマ重合による薄膜との界面となる側の目止め層に用いると、上記薄膜層(4)との密着がよく、特にガスバリア性の高い良好な膜質のプラズマ重合薄膜が形成される。その化学的作用機構に関しては、まだ明確ではないが、スチレン・アクリル共重合樹脂の熱や水分に対する安定性と、スチレン成分由来の疎水性基が、薄膜のガスバリア性の高い膜質形成に寄与しているものと考察している。
【0026】
さらにスチレン・アクリル共重合樹脂は、耐水性がありながら、アルカリには可溶であるため、再生紙としてリサイクルされる際の離解工程で加えられるアルカリにより溶解して、パルプ繊維の離解性を損なわないという特長も持つ。
【0027】
さらに本発明の請求項4のガスバリア性容器では、図2にその一実施例としての容器の構成を示すように、目止め層(3)を第一目止め層(32)と第二目止め(プラズマ重合による薄膜の下地)層(33)に分けることにより、プラズマ重合による薄膜層(4)とマッチングのいい樹脂を第二目止め層(33)に設け、生分解性やアルカリ可溶性を持った樹脂を第一目止め層(32)に設けることで、高いガスバリア性を有しながら紙容器としての生分解性、リサイクル性を維持することができる。
【0028】
プラズマ重合による薄膜層(4)の形成は、パルプモールド基材(2)の形状に合わせた放電電極を作成し、以下に例示するモノマーガスを供給して、1〜10Pa程度の圧力下で適当な電力を供給することにより、パルプモールド容器の内面または/および外面に安定した放電プラズマを発生させて、所定時間処理することにより行われる。
【0029】
プラズマ重合により形成された薄薄の材質には特に制限はなく、たとえばシリカ系、フッ素系、炭素系等がある。その中でシリカ系は、プラズマ重合による薄膜の形成速度が速く、かつ比較的容易にできるため特に好ましい。また、上記シリカ系の薄膜に炭素原子を5%以上含有することにより、膜を通過する水蒸気透過度を低くすることができる。
【0030】
前記シリカ系薄膜の成膜に用いるモノマーとしては、1、1、3、3、−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の中から、目止め層(3)との相性や、求められるガスバリア性によって選択することができ、特に1、1、3、3、−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。ただし、これらに限定されるものではなくアミノシラン、シラザン等も用いることができる。いずれも液体である上記有機珪素化合物を気化させ、必要であれば酸素、二酸化炭素等の酸化力を有するガス、アルゴンやヘリウム等の希ガスと混合して用いる。
【0031】
一方炭素系薄膜を重合するために用いられるモノマーとしては、例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン類、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ブタジエン等のアルケン類、アセチレン等のアルキン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタリン等の芳香族炭化水素類、シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロパラフィン類、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン類、一酸化炭素、二酸化炭素、メチルアルコール、エチルアルコール等の含酸素炭素化合物、メチルアミン、エチルアミン、アニリン等の含窒素炭素化合物等を使用することができる。またこれらのガス単独で使用しても良いが、アルゴンやヘリウム等の希ガスと混合して用いても良い。
【0032】
これまで、容器の内面に目止め層(3)およびプラズマ重合による薄膜層(4)を形成した場合に関して述べたが、本発明のガスバリア性容器は、薄膜を形成する面は、容器の内面、外面あるいは両面いずれでも良い。また図面には図示していないが、プラズマ重合による薄膜層(4)の上やパルプモールド基材層(2)の上には保護コート層やヒートシール層、印刷層等を設けることが可能である。また形状に関しても、トレー、丼、ボトル形状等のパルプモールド成型が可能な形状であれば特に限定されるものではない。
【0033】
【実施例】
以下実施例により本発明のガスバリア性容器を、詳しく説明する。
【0034】
<実施例1〜5>
300csfまで叩解した広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)を原料とし、サイズ剤としてアルキルケテンダイマー(AKD)を乾燥パルプ重量当たり0.5%加え、0.4%濃度のパルプスラリーとした。このパルプスラリー4Lを雌型の抄型上に吸引脱水することでモールド中間体を得、嵌合しあうプレス型内で加熱乾燥して、図3に示すごとき、パルプモールド基材を得た。この際プレス型は、雌型側に吸引孔を設け、雄型の表面は平滑とし、型温度を160℃、プレス圧力、およびプレス時間を変えて表1に示す実施例1〜5のパルプモールド基材を得た。このパルプモールド基材の底部および側部よりサンプリングした試料について、以下の方法で透気度、パルプモールド基材内面の平滑度および算術平均粗さを求め、其々の平均値を表1に示した。
【0035】
透気度の測定に関しては、JIS P8117に従い、Gurley's Densometer(東洋テスター(株)製)にて透気度を測定した。平滑度の測定に関しては、JIS P8119に従い、BEKK SMOOTHNESSTESTER(熊谷理機工業(株)製)にて、容器内面側の平滑度を測定した。表面粗さの測定に関しては、JIS B0601に従い、表面粗さ形状測定機Surfcom((株)東京精密製)にて、カットオフ値2.5mm、評価長さ12.5mmで容器内面側の算術平均粗さを測定した。
【0036】
上記実施例1のパルプモールド基材の内面に、スチレン・アクリル共重合樹脂エマルション(ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル352)をスプレーコートして、塗工量20g/m2のアクリル系の目止め層を設けた。さらに、ヘキサメチルジシロキサン(以下HMDSOと略す)をモノマーとして、酸素との混合雰囲気にて、容器内面にプラズマ重合により膜厚30nmのシリカ系の薄膜を設け実施例1のガスバリア性容器を得た。
【0037】
上記実施例2のパルプモールド基材の内面に、スチレン・アクリル共重合樹脂エマルション(ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル352)をスプレーコートして、塗工量20g/m2のアクリル系の目止め層を設けた。以下実施例1と同様に、シリカ系の薄膜を設け実施例2のガスバリア性容器を得た。
【0038】
上記実施例3のパルプモールド基材の内面に、ポリビニルアルコール樹脂(クラレ(株)製 110)の固形分10%水溶液をスプレーコートして、塗工量15g/m2のポリビニルアルコール系の第一目止め層を設け、さらにその上にスチレン・アクリル共重合樹脂エマルション(ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル352)をスプレーコートして、塗工量5g/m2のアクリル系の第二目止め層を設けた。以下実施例1と同様に、シリカ系の薄膜を設け実施例3のガスバリア性容器を得た。
【0039】
上記実施例4のパルプモールド基材の内面に、ポリエステル樹脂エマルション(東洋紡績(株)製 バイロナールMD1200)をスプレーコートして、塗工量20g/m2のエステル系の目止め層を設けた。以下実施例1と同様に、シリカ系の薄膜を設け実施例4のガスバリア性容器を得た。
【0040】
上記実施例5のパルプモールド基材に、変性澱粉の水分散液(ミヨシ油化(株)製 ランディCP100S)をディッピングコートして、オーブン乾燥後、上記の雌雄型内で、120℃、0.5MPaの圧力で30秒間熱プレスすることにより、多糖類系の目止め層を設けた。以下実施例1と同様に、シリカ系の薄膜を設け実施例5のガスバリア性容器を得た。
【0041】
<比較例1〜4>
前記実施例と同様にして、プレス圧力、およびプレス時間を変えて表1に示す比較例1〜4のパルプモールド基材を得た。このパルプモールド基材の底部および側部よりサンプリングした試料について、上記実施例のパルプモールド基材と同様に、JIS P8117に従って透気度を測定し、JIS P8119に従って容器内面側の平滑度を測定し、さらに容器内面側のJIS B0601にて定義される算術平均粗さを求め、其々の平均値を表1に示した。
【0042】
上記比較例1のパルプモールド基材の内面に、スチレン・アクリル共重合樹脂エマルション(ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル352)をスプレーコートして、塗工量20g/m2のアクリル系の目止め層を設けた。以下実施例1と同様に、シリカ系の薄膜を設け比較例1の容器を得た。
【0043】
上記比較例2のパルプモールド基材の内面に、スチレン・アクリル共重合樹脂エマルション(ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル352)をスプレーコートして、塗工量20g/m2のアクリル系の目止め層を設けた。以下実施例1と同様に、シリカ系の薄膜を設け比較例2の容器を得た。
【0044】
上記比較例3のパルプモールド基材の内面に、ポリエステル樹脂エマルション(東洋紡績(株)製 バイロナールMD1200)をスプレーコートして、塗工量20g/m2のエステル系の目止め層を設けた。以下実施例1と同様に、シリカ系の薄膜を設け比較例3の容器を得た。
【0045】
上記比較例4のパルプモールド基材の内面に、HMDSOをモノマーとして、酸素との混合雰囲気にて、プラズマ重合により膜厚30nmのシリカ系の薄膜を設け比較例4の容器を得た。
【0046】
<比較例5>
下記構成の積層体シートから図3の形状のカップ形状の紙容器をカップ作成し、比較例5の容器を得た。
低密度ポリエチレン(20μm)/紙(300g/m2)/アイオノマー(20μm)/SiOx蒸着薄膜(40nm)/二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(12μm)/低密度ポリエチレン(50μm)
【0047】
【表1】
Figure 0004951817
【0048】
前記実施例1〜4、比較例1〜4の容器の開口部にヒートシールラッカーを塗布し、塩化カルシウムを100g充填して、アルミ箔入りラミネートフィルムを容器開口部にヒートシールして密閉した。これらを40℃90%RHの環境下に保存し、重量増加から容器の水蒸気透過度を求めた。容器の表面積から換算した水蒸気透過度を表2に示す。
【0049】
【表2】
Figure 0004951817
【0050】
上記表2より明らかなように実施例1〜5の容器は、水蒸気透過度が5g/m2/day以下とガスバリア性に優れ、板紙にガスバリアフィルムを貼り、折り曲げ貼り合わせて成形した紙容器(比較例5)と同等以上のガスバリア性を示した。折り目や継ぎ目がなくガスバリア性は安定しており、蓋材のシールにおいても段差がないため、よりガスバリア性を高めているものと考えれる。
【0051】
さらに、実施例3、実施例5、比較例1、比較例5の容器を畑土壌中深さ10cmのところに埋設し、分解の状態を観察した。実施例3および実施例5の容器は、5ヶ月後には容器がバラバラになり、1年後にはすべてが崩壊し、試料の回収ができなかった。一方比較例1および比較例5の容器は、1年後でも容器の形状のまま残存していた。パルプ繊維の主成分であるセルロースは本来生分解性の素材であるが、生分解性を持たない樹脂層が厚いと、細かくばらけることができず、セルロースを分解する微生物と十分に接触することができずに、分解せず環境中に残存したものと考えられる。一方実施例3の容器は、生分解性を持たないスチレン・アクリル共重合樹脂層が5g/m2と薄く膜強度が弱い為に、細かくばらけ、生分解性素材の分解を妨げなかったものと推察される。
【0052】
さらに、上記実施例、比較例の容器を、一般的な古紙回収ラインに乗せることを想定して、以下のリサイクル性の評価を行った。
3cm角に切った試料20gを、80℃の2%水酸化ナトリウム水溶液1Lに入れ、小型離解機(テスター産業(株)製)にて3分間離解して、上層の浮遊物を分離し、水洗後、手抄抄紙機にて手抄紙を作成した。その状態とパルプ繊維の回収率を計算したところ、比較例5では大きなフィルム片が混在し、パルプ繊維の回収率も60%と低かった。一方パルプモールド容器の実施例1〜5と比較例1〜4は、実施例4と比較例3にプラスチック片の混在と繊維の凝集物が見られたもの、その他はきれいな再生紙が抄紙でき、繊維の回収率も80%以上であった。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係わるガスバリア性容器は、形状の自由度が高く、折り目や継ぎ目のないパルプモールド容器であって、パルプモールド基材の表面状態と、目止め層表面層の状態とを総合的にコントロールすることで、金属酸化物の蒸着フィルム等を貼った板紙を折り曲げ、貼り合わせて成形された従来のガスバリア性紙容器と同等以上の優れたガスバリア性を有しながら、紙素材の生分解性やリサイクル性を損なうことなく、環境配慮型のガスバリア性容器を提供できる。従って従来プラスチック容器等が使われていた分野へも広く適用が可能となる。
【0054】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例として容器の構成を示した断面図である。
【図2】本発明の請求項4に関わる一実施例として容器の構成を示した断面図である。
【図3】本発明の一実施例として容器形態の示した断面図である。
【符号の説明】
1 ガスバリア性容器
2 パルプモールド基材
21 パルプモールド基材表面
3 目止め層
31 目止め層表面
32 第一目止め層
33 第二目止め層(プラズマ重合による薄膜の下地層)
4 プラズマ重合による薄膜層

Claims (2)

  1. パルプモールド基材の内面または/および外面に目止め剤をコーティングして複数層からなる目止め層を設け、さらにその上にプラズマ重合によるシリカ系の薄膜を形成したガスバリア性容器であって、該パルプモールド基材が、JIS P8117に従って測定した透気度が60秒以上であり、また該パルプモールド基材のプラズマ重合による薄膜層を形成する側の表面の、JIS P8119に従った測定で平滑度が2秒以上であり、かつJIS B0601にて定義される算術平均粗さが6.3μm以下(カットオフ値を2.5mm、評価長さを12.5mmとする)であり、プラズマ重合による薄膜との界面となる側の目止め層は、スチレン・アクリル共重合樹脂を主成分とする樹脂層であることを特徴とするガスバリア性容器。
  2. 前記目止め層が、少なくとも生分解性を有する樹脂を主成分とする樹脂層とスチレン・アクリル共重合樹脂を主成分とする樹脂層を含む多層構成であることを特徴とする請求項に記載のガスバリア性容器。
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