JP4950953B2 - 化学物質による発芽生育阻害を軽減除去した作物栽培方法 - Google Patents
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Description
本発明の作物栽培方法により、農薬などの化学物質が種子の発芽に与える発芽阻害、更にはその後の実生の生育に与える生育阻害などの悪影響を軽減もしくは除去することができ、作物を有効に栽培することが可能になる。
しかしながら、生育阻害作用を有しない農薬を選定する場合には、使用可能な農薬が限定され、使用したい農薬が使用できないという欠点がある。セーフナーを用いる場合には、適切なセーフナーの選択が困難であり、また選択できたとしても農薬費が嵩むという問題がある。農薬の使用時期を制限する場合には、特に雑草防除の必要のある発芽段階の作物に対して農薬が使用できない、あるいは使用できても使用できる薬剤の種類が限定されるという難点がある。
しかしながら、これらの方法のいずれもが、種子の発芽段階において除草剤などの農薬を使用しない方法であり、種子の発芽段階において除草剤などの農薬を使用した場合の、農薬による発芽および生育阻害を低減もしくは除去することについては、全く検討がなされていない。
従って、本発明は、種子を播種し、発芽段階において化学物質を適用して作物を栽培する作物栽培方法において、多孔性物質を種子に接触させることにより、化学物質の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去して作物を栽培することを特徴とする作物栽培方法に関する。
本発明で対象とする種子としては、特に限定されず、いずれの種子でもよい。例えば、稲、豆類、ソバ、トウモロコシなどの穀類、野菜類、芝、牧草、花木などの有用植物などが挙げられる。種子は、催芽または未催芽のいずれの種子であってもよい。
本発明では、このような種子を播種してその発芽段階において、化学物質を使用することができる。このような化学物質としては、例えば、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、殺虫・殺菌剤などの農薬、その他作物の発芽や実生の生育に悪影響を与える化学物質などが挙げられる。
なお、本発明では、これらの多孔性物質と共に、過酸化カルシウムなどの酸素発生剤、種子消毒剤などの農薬、植物成長調整剤などを併用することはなんらさしつかえない。
(1)粉末化した多孔性物質を種子に粉衣することにより、多孔性物質を種子に接触させることができる。粉衣するには、粉末化した多孔性物質と種子を混合すればよい。通常、種子100重量部当たり1重量部〜100重量部、好ましくは10重量部〜25重量部の多孔性物質を粉衣する。粉衣の際には、適量の水または0.1〜10重量%程度のα化デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を含む水溶液を添加して、多孔性物質と種子を混合して粉衣してもよい。このように粉末化した多孔性物質で粉衣した種子を水田、畑、育苗用培地、フェノール樹脂発泡体などから得られる支持マットなどに播種する。
(2)種子と多孔性物質を液状物に浸漬し攪拌して得られる種子と多孔性物質を含む液状物を、水田、畑、育苗用培地、フェノール樹脂発泡体などから得られる支持マットなどに播種することにより、多孔性物質を種子に接触させることができる。通常、乾燥種子100重量部当たり1重量部〜100重量部の多孔性物質を液状物に混入させ、攪拌する。液状物としては、水あるいは水に0.1〜10重量%程度のα化デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子を添加した水溶液などが挙げられる。
(3)種子の播種前の播種場所および/または播種後の種子に多孔性物質を散布または混入することにより、多孔性物質と種子との接触を行うことができる。例えば、播種前の水田、畑、育苗用培地、フェノール樹脂発泡体などから得られる支持マットなどに、および/またはこれらに播種後の種子に多孔性物質を散布または混入することができる。通常、多孔性物質を種子100重量部当たり10重量部〜1000重量部を散布し、種子に接触させる。
実施例1
(1)活性炭粉末で粉衣した種子の作成
種子籾(品種コシヒカリ)の乾物100重量部に対し過酸化カルシウム粉粒(商品名カルパー粉粒剤16)を200重量部、鋸屑を原料として得た活性炭粉末20重量部を混和し、水25重量部を加えながら乾籾表面に粉衣して活性炭粉衣種子を得た(以下Ca活性炭粉衣と略記する)。
対照として種子籾の乾物100重量部に対し過酸化カルシウム粉粒剤を200重量部を粉衣した(以下Ca粉衣と略記する)。
水田圃場に屋根を設置した温室内において1区あたり1m2の試験区を設け、代かきをした水田土壌の表面から0.5cmの深さにそれぞれの粉衣籾120粒をピンセットで条播し、水深を2cmにした後に水稲用除草剤((a)ピラゾレート粒剤(商品名サンバード粒剤)、(b)ブロモブチド・ペントキサゾン水和剤(商品名ショキニーフロアブル)、(c)プレチラクロール・ベンゾフェナップ水和剤(商品名ユニハーブフロアブル)、(d)ダイムロン・ペントキサゾン水和剤(商品名テマカットフロアブル)、(e)ダイムロン・テニルクロール水和剤(商品名ショッカーフロアブル)、(f)プレチラクロール・ベンゾビシクロン水和剤(商品名クサコントフロアブル)、(g)プレチラクロール粒剤(商品名ソルネット1キロ粒剤)、(h)クミルロン・ペントキサゾン水和剤(商品名草笛フロアブル)、(i)クロメプロップ・テニルクロール水和剤(商品名ターシャルカットフロアブル))をそれぞれ所定量処理した。また、対照区として薬剤処理を行わない区(無処理区)を設けた。
播種後5日目からイネが1葉期になるまで6日間落水して芽干しを行い、その後入水して3〜4cm湛水で管理した。
播種後20日目に苗立ち率及びイネ葉齢を調査し結果を表1に示した。苗立ち率は、無処理区における苗立ち数に対する各薬剤処理区における苗立ち数の割合を100分率で表したものである。値は3連の試験区の平均値を示す。葉齢は生育した葉の数で表した。
(1)活性炭粉末で粉衣した種子の作成
水25重量部にカルボキシメチルセルロース(商品名:セロゲンPR)を1重量部混合した水溶液にイネ乾燥種籾100重量部を混合した。その後活性炭(商品名:太閤活性炭)20重量部を添加した後よく混合して粉衣種子(CMC活性炭粉衣と略記)を作成した。また、実施例1と同等の方法によりCa活性炭粉衣およびCa粉衣のイネ種子を作成した。対照として粉衣処理を行わないイネ種子(無粉衣と略記)も供試した。
屋外の水田圃場において1区あたり0.8m2の試験区を設け、代かきをした水田土壌の表面に水深0〜0.5cmの状態でそれぞれの粉衣籾を4kg/10aずつ手振りにより散播し、水深を3cmにした後に水稲用除草剤((a)ピラゾレート粒剤(商品名サンバード粒剤)、(b)ブロモブチド・ペントキサゾン水和剤(商品名ショキニーフロアブル)、(d)ダイムロン・ペントキサゾン水和剤(商品名テマカットフロアブル)、(e)ダイムロン・テニルクロール水和剤(商品名ショッカーフロアブル)、(g)プレチラクロール粒剤(商品名ソルネット1キロ粒剤)、(j)イマゾスルフロン・エトベンザミド・ダイムロン粒剤(商品名キックバイ1キロ粒剤)、(k)カフェンストロール・ダイムロン・ベンスルフロンメチル水和剤(商品名ラクダーLフロアブル)(l)シクロスルファムロン・ペントキサゾン粒剤(商品名ユートピア1キロ粒剤)、(m)ピリミノバックメチル・ブロモブチド・ベンスルフロンメチル・ペントキサゾン水和剤(商品名トップガンLフロアブル))をそれぞれ所定量処理した。また、対照区として薬剤処理を行わない区(無処理区)を設けた。
処理後15日間試験区内には入水せず、自然減水のまま放置し芽干しを行った。その後は3〜5cmの水深を維持した。
播種後28日目に苗立ち率を調査し結果を表3に示した。苗立ち率は、播種数に対する各薬剤処理区における苗立ち数の割合を100分率で表したものである。値は2連の試験区の平均値を示す。
(1)活性炭粉末で粉衣した種子の作成、該種子の播種および除草剤の適用
実施例2の方法に基づいてアズキ種子のCMC活性炭粉衣を作成した。25℃前後に温度管理された温室内において、プラスチック製コンテナポット(縦29×横17×深さ10cm)に火山灰壌土を充填し深さ1cm程度の播種穴を設置し粉衣種子を播種し供試土壌で覆土(粉衣区)した。併せて無粉衣種子も供試した(無粉衣区)。播種後の土壌表面に除草剤フルミオキサジン水和剤(商品名Sumisoya)を所定量の水で希釈し、10g/10a、散布水量100L/10aとなるようにポットの土壌表面に均一に散布した。その後は土壌表層が乾かないように適宜散水した。
処理後16日後に生育状況の調査を行い、その結果を表4に示す。発芽率は、播種数に対する各薬剤処理区における発芽数の割合を100分率で表したものである。値は2連の試験区の平均値を示す。
(1)種子播種後の活性炭粉末の散布および除草剤の適用
実施例3で用いたものと同型のプラスチック製コンテナポットに火山灰壌土を充填し深さ1cm程度の播種穴を設置しソバ種子を播種し活性炭粉末で覆った(活性炭覆土区)。対照として供試土壌覆土した区(普通覆土区)を設けた。播種後の土壌表面に除草剤アラクロール乳剤(商品名ラッソー)を所定量の水で希釈し、300ml/10a、散布水量100L/10aとなるようにポットの土壌表面に均一に散布した。その後は土壌表層が乾かないように適宜散水した。
処理後16日後に生育状況の調査を行い、その結果を表5に示す。発芽率は、播種数に対する各薬剤処理区における発芽数の割合を100分率で表したものである。値は2連の試験区の平均値を示す。
Claims (3)
- 種子を畑に直接播種し、発芽段階において化学物質である除草剤を適用して作物を栽培する作物直播栽培方法において、植物系活性炭および石炭系活性炭から選ばれる少なくとも一種の多孔性物質を種子に粉衣することにより、あるいは、種子と該多孔性物質を液状物に浸漬し攪拌して得られる種子と該多孔性物質を含む液状物を播種することにより、化学物質である除草剤の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去して作物を栽培することを特徴とする作物直播栽培方法。
- アズキまたはソバ種子を畑に直接播種し、発芽段階において化学物質である除草剤を適用して作物を栽培する作物直播栽培方法において、植物系活性炭および石炭系活性炭から選ばれる少なくとも一種の多孔性物質を種子に粉衣することにより、あるいは、種子と該多孔性物質を液状物に浸漬し攪拌して得られる種子と該多孔性物質を含む液状物を播種することにより、化学物質である除草剤の発芽および生育に対する阻害作用を軽減もしくは除去して作物を栽培することを特徴とする作物直播栽培方法。
- 多孔性物質とともにカルボキシメチルセルロースを用いる請求項1または2の作物直播栽培方法。
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