JP4690687B2 - 植物成長調整資材およびそれを用いた植物成長調整方法 - Google Patents
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非特許文献2において、ヒノキ葉からメタノールにより抽出された物質に植物の発芽抑制効果があることが記載されており、メタノール抽出物質であったことから難水溶性物質が主成分であるという推測がなされているが、メタノール抽出物質の中にも水溶性物質が含まれている可能性があることから、発芽抑制効果の主物質を同定するには至っていない。特許文献3の植物に対する生理活性抑制剤もその抑制活性が十分に満足がいくものとはいえない。特許文献4の農園芸用組成物は松かさによる植物成長阻害効果が記載されているが、十分な成長阻害効果は認められず、また、特許文献5では、マツ科植物の球果の抽出物については、何ら報告されていない。
即ち、本発明は、ヒノキ科またはマツ科の球果の乾燥粉末あるいはヒノキ科またはマツ科の球果から抽出される植物成長調整物質を、主たる構成成分とする植物成長調整資材に関する。
ヒノキ科またはマツ科の球果の乾燥粉末の粒径は8mm以下であるのが好ましい。
植物成長調整物質は、ヒノキ科またはマツ科の球果乾燥粉末を水により抽出して得られる抽出液から調製される水溶性の植物成長調整物質であるのが好ましい。
植物成長調整物質は、ヒノキ科またはマツ科の球果乾燥粉末を低級アルコールもしくは含水低級アルコールによって抽出し、得られる抽出液を濃縮後に水を加えて水溶液とし、この水溶液を中性の範囲に調整した後に、有機溶媒で抽出して得られる抽出液から調製される植物成長調整物質、あるいは、該水溶液を酸性の範囲に調整した後に、または該有機溶媒で抽出後の水層を更に酸性に調整した後に、有機溶媒で抽出して得られる抽出液から調製される脂溶性の植物成長調整物質であるのが好ましい。ここで、低級アルコールもしくは含水低級アルコールは、70%以上のメタノール、エタノールまたはブタノールが好ましい。有機溶媒は、メタノール、エタノール、ブタノール、酢酸エチル、ヘキサンまたはアセトンが好ましい。
植物成長調整資材の構成成分は、ヒノキ科の球果乾燥粉末あるいはヒノキ科の球果から抽出される植物成長調整物質であって、植物成長抑制作用を有するものが好ましい。このような構成成分は、特にマメ科、キク科、アブラナ科、シソ科、ヒユ科、ゴマノハグサ科、ツリフネソウ科またはイネ科の植物の成長抑制作用を有するものである。
あるいは、構成成分は、マツ科の球果乾燥粉末あるいはマツ科の球果から抽出される植物成長調整物質であって、植物成長促進作用を有するものが好ましい。このような構成成分は、特にキク科またはマメ科の植物の成長促進作用を有するものである。
植物成長調整資材は、土壌に混合するのが好ましい。
植物成長調整資材の構成成分が、ヒノキ科の球果乾燥粉末あるいはヒノキ科の球果から抽出される植物成長調整物質であって、植物成長抑制作用を有するものである植物成長調整資材は、植物の胚軸長、幼根長、発芽率および本葉発生率の少なくともいずれか一つを抑制し、および/または植物の根端褐変率を上昇させる。構成成分が、マツ科の球果乾燥粉末あるいはマツ科の球果から抽出される植物成長調整物質であって、植物成長促進作用を有するものである植物成長調整資材は、植物の胚軸長、幼根長、発芽率および本葉発生率の少なくともいずれか一つを促進し、および/または植物の根端褐変率を抑制する。
マツ科の球果乾燥粉末を、土壌表面に散布する場合には400g/m2以上となる量で、土壌に混合する場合には乾燥土に対して15g/L以上となる量で施用するのが好ましい。
マツ科の球果から抽出される植物成長調整物質が400〜850ppmになるように調整された植物成長調整資材を使用するのが好ましい。
乾燥粉末は、球果を例えば自然乾燥させた後に、粉砕機、製粉機または食繊機を用いて摩砕して粉末状に加工することにより得られる。乾燥粉末の粒径は、通常8mm以下であり、好ましくは1mm以下、更に好ましくは500μm以下、特に好ましくは125μm以下であり、粒径が細かい程効果は大きい。
植物成長調整物質を得るための材料としては、ヒノキ科またはマツ科の球果粉末が好ましく、球果粉末を得るには、採取した球果を粉砕機、製粉機または食繊機を用いて摩砕することにより得ることができる。また、ヒノキ科またはマツ科の球果粉末は、乾燥粉末が好ましい。
マツ科の球果乾燥粉末を、土壌表面に散布する場合には、該粉末が200g/m2以上、好ましくは400g/m2以上となる量であり、その上限は、散布量をそれ以上多くしてもその効果が大きくならない量であり、それは当業者によって容易に決定できるものである。また、土壌に混合する場合は、該粉末の濃度が、乾燥土に対して15g/Lから200g/の範囲、好ましくは80g/Lから170g/Lの範囲となる量を混合する。このような量で施用することにより、特に、植物の成長を有効に促進することができる。
マツ科の球果から得られる植物成長調整物質を土壌表面に散布する場合は、該植物成長調整物質が400〜850ppmになるように、好ましくは700〜800ppmになるように調整した植物成長調整資材を、使用することが好ましく、このような量に調整された植物成長調整資材を施用することにより、特に、植物の成長を有効に促進することができる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
愛媛県新居浜市の山林に人工造林したヒノキ球果を採集し、また、茨城県つくば市内のマツ球果を採集し、材料として用いた。採取したヒノキ球果およびマツ球果を、自然乾燥させた後、ミルを用いて粉末状に加工した。この粉末 10g を 100ml の蒸留水に加え 160rpm で 2 時間ほど回旋して抽出し、上清をろ過した。抽出ろ液を発芽において電気伝導度による阻害のないように1mS/cm以下に調整し水抽出液とする。
水抽出液を 6 穴シャーレに入れた 2.5cm 角に切った綿に 1.5ml 添加した。各供試植物の種 9 粒を播種し、イチゴパックで蓋をして 25℃暗黒下で培養した。168 時間後、発芽率、幼根長、胚軸長、根端褐変率を測定した。その結果を表1に示した。
上記検定方法と同様の方法により、各種の植物に対するヒノキ球果の植物成長に対する抑制効果を調べた。検定期間は各植物の平均発芽日数とした。結果を表2に示した。
愛媛県新居浜市の山林に人工造林したヒノキの球果を採集し、材料として用いた。採取したヒノキ球果を、自然乾燥させた後、ミルを用いて粉末状に加工した。この粉末 10g を 80% メタノール 500ml 中で攪拌し、更に超音波処理を施した。処理後、吸引ろ過を行い、メタノール抽出液を得た。得られたメタノール抽出液を濃縮し、溶媒を溜去させ水溶液とした。この水溶液を中性、好ましくはpH7に調整した後、n−ヘキサン、酢酸エチル、n−ブタノールで逐次抽出し、中・塩基性のヘキサン画分、酢酸エチル画分、ブタノール画分を得た。次いで残りの水層を酸性、好ましくはpH2に調整した後、上記と同様に、n−ヘキサン、酢酸エチル、n−ブタノールの順で抽出していき、酸性のヘキサン画分、酢酸エチル画分、ブタノール画分を得た。これら6画分を乾固した後、それぞれの重量を測定した。重量測定後、各画分を 100% メタノールに溶解し、発芽試験に用いた。
各画分の収量を表3に示した。
(1)5画分の発芽試験
各抽出物をアッセイに使用したい濃度になるように、メタノールにより濃度を調整し、6 穴シャーレに入れた 2.5cm 角に切った綿に 1.5ml添加する。シャーレの蓋をして、デシケーターにいれ3時間減圧乾固した。メタノールがとんだら 2mlの蒸留水を添加し、白クローバーの種 9 粒を播種し、イチゴパックで蓋をして 25℃暗黒下で培養した。168時間後、発芽率、幼根長、胚軸長、根端褐変率を測定した。
その結果を表4に示した。
ヒノキ資材またはマツ資材の施用量の違いにおける発芽率の違いを調査した。実験には育苗用セルトレイ(5×5×5)を用いた。培土は試験区ごと 75ml にした。検定する検定種子の播種状況は、自然界における雑草種子の存在状況を考え、5 つの条件を設定した。
資材を散布する場合では、(1)散布したヒノキ資材の上から種子が飛んでくる場合、(2)表面に落ちている種子の上からヒノキ資材を散布する場合、(3)土中に埋没種子(土中1cm下)があり表面にヒノキ資材を散布する場合の3条件を設定した。資材を土と混合する場合では、(4)資材混合の土の上に種子が乗っている場合、(5)種子が資材混合土中に耕起によって混ぜ込まれる場合(土中1cm下)の2条件を設定した。コントロール区には、(6)種子が表面に落ちている場合の区と、(7)種子が土中に埋没している場合の2条件を設定した。
散布法は適当な割合で資材を実験区に散布し、混和法では土 1L あたり適当量の資材を混合したものを各セルに 75ml つめた。白クローバーの種を 9 粒あるいは 16 粒/cellずつ播種し、毎日各セル毎に最大容水量 36mlの水道水をあたえ、生育させた。3 週間後に発芽率と本葉発生率を測定し、その後抜き取り、胚軸長、根長を測定する。
ヒノキ資材の施用量における発芽率を調査した。ヒノキ資材として、粒径が 125μm 以下が 7 重量%、125μm から 500μm が 63重量%、500μm から 8μm が 30 重量%で構成されるヒノキ球果乾燥粉末を用いた。この粉末は、粉砕機(東京アトマイザー製造株式会社製のアトマイザーTAP−5Wを用いて製造した。実験の条件は上記の方法で行った。検定植物には白クローバーを用いた。この試験には散布法では(1)、混和法では(5)の条件を用いた。資材施用量については、散布法は 0.16,0.32,0.64,1.28,1.6g/cell(m2あたり 100, 200, 400, 800, 1000g)の割合で資材を実験区に散布し、混和法では土1Lあたりそれぞれ資材を 3.75,7.5,15,30,60g混合したものを用いた。
得られた結果を表5および表6に示した。
ヒノキ球果資材とマツ球果資材における発芽率の違いを調査した。ヒノキ球果資材として、粒径が 125μm 以下が 7 重量%、125μm から 500μm が 63重量%、500μm から8μm が 30 重量%で構成されるヒノキ球果乾燥粉末を用いた。この粉末は、粉砕機(東京アトマイザー製造株式会社製のアトマイザーTAP−5Wを用いて製造した。マツ球果資材として、同様の粉砕機を用いて製造される、粒径が 125μm 以下が 7 重量%、125 μm から 500μm が 63 重量%、500μm から 8μm が 30 重量%で構成されるマツ球果乾燥粉末を用いた。実験には育苗用セルトレイ(5×5×5)を用いた。培土は試験区ごと75mlにした。検定植物にはレタスと白クローバーを用いた。播種状況は、上記5つの条件でおこなった。資材施用量については、上記の結果から散布法は0.64 g/cell(m2あたり400g)の割合で資材を実験区に散布し、混和法では土1Lあたりそれぞれ資材を15g/L混合したものを用いた。3週間後に発芽率と本葉発生率を測定し、その後抜き取り、胚軸長、根長を測定した。
得られた結果を表7に示した。
ヒノキ球果の粉砕粒径における発芽率の違いを調査した。実験には育苗用セルトレイ(5×5×5)を用いた。培土は試験区ごと 75ml にした。検定植物には白クローバーを用いた。検定する検定種子の播種状況は、上記5つの条件でおこなった。資材施用量については、散布法は 0.64 g/cell(m2あたり400g)の割合で資材を実験区に散布し、混和法では土 1L あたりそれぞれ資材を 15g/L 混合したものを用いた。散布資材はヒノキ球果の微粉砕(粒径 500μm 以下)、3mm(粒径 500μm から 3mm)、8mm(粒径 3mm から 8mm)の三段階の粒径を使用した。
散布法は適当な割合で資材を実験区に散布し、混和法では土 1L あたり適当量の資材を混合したものを各セルに 75ml つめた。白クローバーの種を 16 粒/cell ずつ播種し、毎日各セル毎に最大容水量 36mlの水道水をあたえ、生育させ 3 週間後に発芽率を測定した。
得られた結果を表9に示した。
Claims (12)
- ヒノキ科の球果の乾燥粉末を構成成分として含む植物成長調整資材。
- ヒノキ科の球果の乾燥粉末の粒径が8mm以下である請求項1の植物成長調整資材。
- ヒノキ科の球果から抽出される植物成長調整物質を構成成分として含む植物成長調整資材。
- 植物成長調整物質が、ヒノキ科の球果乾燥粉末を水により抽出して得られる抽出液から調製される水溶性の植物成長調整物質である、請求項3の植物成長調整資材。
- ヒノキ科またはマツ科の球果から抽出される植物成長調整物質を構成成分として含む植物成長調整資材であって、植物成長調整物質が、ヒノキ科またはマツ科の球果乾燥粉末をメタノール、エタノールもしくはブタノールまたは70%以上の含水メタノール、含水エタノールもしくは含水ブタノールによって抽出し、得られる抽出液を濃縮後に水を加えて水溶液とし、この水溶液をpH6から8の範囲に調整した後に、有機溶媒で抽出して得られる抽出液から調製される植物成長調整物質、あるいは、該水溶液をpH2から4の範囲に調整した後に、または該有機溶媒で抽出後の水層を更に酸性に調整した後に、有機溶媒で抽出して得られる抽出液から調製される脂溶性の植物成長調整物質である、植物成長調整資材。
- マツ科球果乾燥粉末を水により抽出して得られる抽出液から調製される水溶性の植物成長調整物質を構成成分として含み、植物成長促進作用を有する植物成長調整資材。
- 構成成分が、ヒノキ科の球果乾燥粉末であるか、あるいはヒノキ科の球果から抽出される植物成長調整物質であり、植物成長抑制作用を有するものである、請求項1から5のいずれかの植物成長調整資材。
- マツ科の球果乾燥粉末、あるいはマツ科の球果から抽出される植物成長調整物質を構成成分として含み、植物成長促進作用を有する、植物成長調整資材。
- 請求項1から8のいずれかの植物成長調整資材を、植物が成育している土壌表面に散布および/または土壌に混合することにより、あるいは植物が成育している水中に浸漬することにより、植物の成長を調整する、植物成長調整方法。
- 植物成長調整資材を、土壌に混合する、請求項9の植物成長調整方法。
- 請求項7の植物成長調整資材を用いて、植物の胚軸長、幼根長、発芽率および本葉発生率の少なくともいずれか一つを抑制し、および/または植物の根端褐変率を上昇させる、請求項9または10の植物成長調整方法。
- 請求項6または8の植物成長調整資材を用いて、植物の胚軸長、幼根長、発芽率および本葉発生率の少なくともいずれか一つを促進し、および/または植物の根端褐変率を抑制する、請求項9または10の植物成長調整方法。
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