以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
先ず第1の実施形態を図1乃至図11により説明する。図1は電界放出型冷陰極装置の縦断面図であり、図2乃至図11は電界放出型冷陰極装置の製造過程における第1の工程乃至第10の工程をそれぞれ示す断面図である。
図1において、電界放出型冷陰極装置1は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極部4とアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成されたゲート電極6を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3とゲート電極6の間に所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。
カソード電極部4は、カソード配線を兼ねると共に、例えば曲率半径が十数nm程度の先鋭な先端を有する略4角錐状に形成され、例えば高さが0.7μm程度の複数のエミッタ3が上面の所定部分に突設されたエミッタ金属層7と、このエミッタ金属層7の上下両面にそれぞれ設けられた上側保護膜8、下側保護膜9とを備えて構成されている。そして、エミッタ3とエミッタ金属層7は、例えばMo、Ta、W、Cr、Ni、Cu等の少なくとも1つの材料でなる、あるいは、いずれかを主材料としてなる導電材料により形成されている。
また、エミッタ金属層7の上面の所定位置には、エミッタ3の高さよりも若干高い4角錐台状に形成され、先端面が上側保護膜8の上面と同じ高さ、または若干突出する高さとなるようにして、例えば上端面形状が正方形のマーク、あるいは正方形を中心に各辺の直交方向に微小間隔を設けて4つの長方形を略十文字状となるよう配してなるマークのアライメントマーク10が突設されている。さらにエミッタ金属層7の上面に設けられた上側保護膜8については、エミッタ3上方の所定部分にエミッタ開口11が形成されており、エミッタ開口11の内底部分に1つまたは複数のエミッタ3が露出するようになっている。なお、ゲート電極6は、上側保護膜8と同じ位置にエミッタ開口11が、内方に開口縁がせり出しオーバーハング状態となるように形成され、また全体形状が所要の形状となるように形成されている。
また、上側保護膜8と下側保護膜9の材料については、エミッタ金属層7の材料と異なったもので、製造過程での温度上昇でエミッタ金属層7の材料と結合しない材料であり、さらに、エミッタ金属層7にダメージを与えない材料となっている。また上側保護膜8と下側保護膜9とは、エミッタ金属層7の表側と裏側との間での熱変形力をバランスさせ、変形が生じないよう両者の熱膨張率が略同じものとなっており、例えば10μm程度の厚さのNi層で形成されたエミッタ金属層7に対し、両保護膜8,9は、エミッタ3の高さよりも厚い、数μm(2〜5μm程度)の厚さのCu膜で形成した同一材料、同一厚さのものとなっている。なお、エミッタ3の大きさが大きくなり、高さが高くなった場合には、それに応じて両保護膜8,9の厚さも厚いものとなり、また両保護膜8,9は温度変化に対して変形量が略等しく、両保護膜8,9間の力がエミッタ金属層7の表側と裏側とでバランスするよう熱膨張率が略等しい異種材料の異なる厚さのものの組み合わせ等でもよく、金属膜に限るものでもない。
また、このように構成されたカソード電極部4は、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に、接着材13によって固着され、支持されている。
また、支持基板12上に支持されたカソード電極部4の上側保護膜8の上には、ゲート電極部14が設けられている。このゲート電極部14は、上側保護膜8の上面に、例えばポリイミド樹脂を所定厚さに成層した絶縁膜15と、その上に導電材料を薄厚に成層したゲート電極6とでなるゲート積層部材16を積層することにより形成されている。さらに、ゲート積層部材16のゲート電極6の上面には、例えばポリイミド樹脂で形成された所定厚さの保護絶縁膜17が成層されている。
また、このように各成層されたゲート積層部材16、保護絶縁膜17にも、エミッタ開口11が上側保護膜8と同じ位置に、開口縁部分が下方にアンダーカット部分11aを形成するようオーバーハング状態に形成されており、開口内底部分にエミッタ3が露出するようになっている。さらに上側保護膜8上のゲート積層部材16、保護絶縁膜17には、アライメントマーク10上方の所定位置にアライメント開口18が形成されており、開口内にはアライメントマーク10の上面が露出するようになっている。なお、アライメント開口18は、上方に成層された上側保護膜8、ゲート積層部材16、保護絶縁膜17を透過してアライメントマーク10が、例えば光学的視認、あるいは他の手法等で確認できる場合は、設けなくてもよく、あるいは確認できる深さのものであってもよい。
一方、ゲート電極6を間に設け、所定の離間距離を設けるようにしてカソード電極部4のエミッタ3の上方に対向配置されるアノード電極5は、アノード基体である例えばガラス等の透明材料で形成されたアノード基板19と、このアノード基板19のエミッタ3の側である下面に被着された例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等の透明電極材料の薄膜で形成されたアノード電極膜20と、アノード電極膜20の下面に被着された例えば光電変換膜や蛍光膜等の機能膜21とを備えて形成されている。そして、アノード電極5とカソード電極部4やゲート電極6との間には、所定の離間距離が設けられるように、スぺーサ22が設けられている。
そして、このように構成されたものは、図2乃至図11に示す各工程を経ることによって形成される。
すなわち、図2に示す第1の工程において、先ずp型で(100)結晶面方位のSi単結晶基板(Si基板)23の表面に、厚さ0.1μm程度のSi酸化膜を形成する。このSi酸化膜は、Si窒化膜やレジスト等のいずれによって形成してもよい。さらに、形成したSi酸化膜上にレジスト材をスピンコート法により塗布する。塗布、形成されたレジストに露光・現像等のパターニングを行い、エミッタ3を形成する所定部分に例えば1μm角の正方形開口を有し、またこの正方形開口の一辺より大きい数μmの最小辺を有する正方形、あるいは正方形と長方形を組み合せる等した方形開口をアライメントマーク10形成位置である所定位置に有するマスクを形成する。形成したマスクを用い、NH4・HF混合溶液によりSi酸化膜のみを選択的にエッチングする。レジストを除去し、例えば1μm角と数μm角の正方形開口が形成されたSi酸化膜のマスクを得る。
続いて、正方形開口が形成されたSi酸化膜をマスクとし、KOH水溶液等を用いてSi基板23の異方性エッチングを行う。異方性エッチングを所定時間行った後、NH4・HF混合溶液によりSi酸化膜を除去する。これにより、図2(a)の断面図に示すように、1μm角の正方形開口部分のSi基板23に、深さ0.7μmの略4角錐状のエミッタ用凹部24を形成し、また最小辺が数μmの方形開口部分のSi基板23に、0.7μmよりも深い所要深さの4角錐台状のマーク用凹部25を形成する。なお、異方性エッチングのエッチング時間は、方形開口部分に0.7μmよりも深い所要深さの4角錐台状のマーク用凹部25が形成されるまでの時間とする。この際、1μm角の正方形開口部分に深さ0.7μmの略4角錐状のエミッタ用凹部24が形成された後にもエッチングが継続されるが、異方性エッチングの特性から、エッチングの時間が長くなってもエミッタ用凹部24の深さは0.7μmのままとなる。
その後、図2(b)の断面図に示すように、略4角錐状のエミッタ用凹部24内及び4角錐台状のマーク用凹部25内を含めてSi基板23に、ウエット熱酸化法、スパッタリング法、ドライ熱酸化法等のいずれかの方法によりSi酸化膜26を形成する。
次に、図3に示す第2の工程において、Si酸化膜26が形成されたSi基板23に、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、電気めっき法のいずれかを用い、略4角錐状のエミッタ用凹部24及び4角錐台状のマーク用凹部25を埋め込むようにして、例えば10μm厚さのNi層のエミッタ金属層7を形成する。これにより、エミッタ用凹部24にエミッタ3が形成され、マーク用凹部25にアライメントマーク10が形成されることになる。さらに、エミッタ金属層7の表面に、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、電気めっき法のいずれかを用いて、例えば数μm厚さのCu膜の下側保護膜9を形成する。
次に、図4に示す第3の工程において、先ず、図4(a)の断面図に示すように、エミッタ金属層7と下側保護膜9が積層されているSi基板23から、水圧あるいはガス圧等を用いて、下側保護膜9が成膜されているエミッタ金属層7を分離する。
その後、図4(b)の断面図に示すように、エミッタ金属層7のエミッタ3やアライメントマーク10が形成されている面に、下側保護膜9と同様の方法を用いて、下側保護膜9と同一材料、同一厚さである数μm厚さのCu膜の上側保護膜8を形成し、カソード電極部4を形成するための3層構造部材を形成する。形成された3層構造部材は、略4角錐状のエミッタ3が上側保護膜8に埋もれた状態で、その頂点が上側保護膜8の上面から突出しない状態となっており、また4角錐台状のアライメントマーク10も、その頂面が上側保護膜8の上に露出せず、薄い上側保護膜8の下に埋もれた状態となっている。
なお、上記の第2、第3の工程において、Si基板23に形成したままのエミッタ金属層7に下側保護膜9を形成し、その後でSi基板23から分離したエミッタ金属層7に上側保護膜8を形成するようにして3層構造部材を形成したが、エミッタ金属層7をSi基板23に形成した後、エミッタ金属層7をSi基板23から分離し、分離したエミッタ金属層7の両面に、同時に上側保護膜8と下側保護膜9を形成するようにして3層構造部材を形成してもよい。
次に、図5に示す第4の工程において、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に、カソード電極部4を形成するための3層構造部材を、その下側保護膜9を接着材13で接着し固定する。
次に、図6に示す第5の工程において、支持基板12に支持された3層構造部材の上側保護膜8の上面に、ゲート積層部材16を構成する、例えばポリイミド樹脂でなる絶縁膜15を成膜する。成膜方法については、上側保護膜8の上面にポリイミド液を滴下し、遠心力を用いて製作するスピンコート法や、ポリイミドシートやイミドシート等の貼り付け法等のいずれかを用いる。こうして形成されたポリイミド樹脂膜は、膜厚さが均一にでき、薄膜化できる。なお、スピンコート法により形成する場合は、スピンコートした後に所定温度で本焼成を行いポリイミド樹脂膜とする。またポリイミドシートやイミドシート等の貼り付け法については、熱可塑性接着剤、紫外線硬化接着剤、又は熱硬化性接着剤の接着力による接合方法、熱融着接合方法等のいずれかの接着機構を用い、真空中で貼り付けを行う。
次に、図7に示す第6の工程において、先ず、図7(a)の断面図に示すように、先の工程で形成された絶縁膜15の上に、ゲート電極6を形成する金属層6aを蒸着法、スパッタリング法、CVD法等で形成する。その後、図示しないがゲート電極6を形成する金属層6aを、フォトレジストを用いたエッチング等によりパターニングし、全体形状を所要の形状に形成する。さらにゲート電極6を形成する金属層6aの上に、例えばポリイミド樹脂でなる保護絶縁膜17をスピンコート法や、ポリイミドシートやイミドシート等の貼り付け法等のいずれかを用いて形成する。
続いて、図7(b)の断面図に示すように、保護絶縁膜17をレーザー等によって、エミッタ3やアライメントマーク10の上方にそれぞれ所定形状のエミッタ開口11やアライメント開口18が形成されるようにパターニングを行う。これにより、エミッタ開口11やアライメント開口18内にゲート電極6を形成する金属層6aの上面が露出する。
なお、保護絶縁膜17等のポリイミド樹脂膜のパターニングについては、上記工程に限るものでなく、先ずポリイミド液をスピンコート法で金属層6aの上に塗布した後、低温(100℃以下)で仮焼成を行う。そして、仮焼成後のポリイミド膜上にフォトレジストを塗布し、さらに露光・現像等によってフォトレジストを所定形状のエミッタ開口11やアライメント開口18が形成されるようにパターニングし、フォトレジストを除去してマスクを形成するようにしてもよい。
次に、図8に示す第7の工程において、パターニングした保護絶縁膜17とエミッタ開口11やアライメント開口18内に露出した金属層6aの上にフォトレジスト27を塗布し、露光・現像等によってフォトレジスト27を、所定形状のエミッタ開口11やアライメント開口18が形成されるようにパターニングする。これにより、再びエミッタ開口11やアライメント開口18内に、ゲート電極6を形成する金属層6aの上面を露出させる。
次に、図9に示す第8の工程において、パターニングしたフォトレジスト27をマスクとして、エミッタ開口11やアライメント開口18内に露出する金属層6aをエッチングし、エミッタ開口11、アライメント開口18を有するゲート電極6を形成する。またこれにより、開口11,18内に絶縁膜15の上面が露出する。なお、ゲート電極6を形成する金属層6aのエッチングを、フォトレジスト27をマスクにして行ったが、エミッタ開口11やアライメント開口18が形成された保護絶縁膜17をマスクにして金属層6aをエッチングするようにしてもよい。
次に、図10に示す第9の工程において、エミッタ開口11やアライメント開口18内に露出する絶縁膜15をレーザー等によって除去し、パターニングする。これにより、絶縁膜15にもエミッタ開口11とアライメント開口18を形成し、開口11,18内に上側保護膜8の上面を露出させる。そして、パターニングされた1つの絶縁膜15と1つのゲート電極6とを積層して形成した1つのゲート積層部材16によるゲート電極部14が形成される。
また、ゲート電極6を形成する金属層6a、ポリイミド樹脂の絶縁膜15と保護絶縁膜17のパターニングについては、上記各工程によらず、先ず上側保護膜8の上面にポリイミド樹脂の絶縁膜15、ゲート電極6を形成する金属層6a、ポリイミド樹脂の保護絶縁膜17を順に積層する。その後、レーザーで同時に、上側保護膜8を除き、その上方の保護絶縁膜17、金属層6a、絶縁膜15を、所定形状のエミッタ開口11やアライメント開口18が形成されるように除去することにより、パターニングを行うようにしてもよい。
次に、図11に示す第10の工程において、エミッタ3、エミッタ金属層7をエッチングしないエッチャントを用いて、エミッタ開口11やアライメント開口18内に露出する上側保護膜8をエッチングし、エミッタ開口11内にエミッタ3を、またアライメント開口18内にアライメントマーク10を露出、形成する。このエッチングにより上側保護膜8は、厚さ方向だけでなく横方向にもエッチングされ、開口縁部分に、ゲート電極6を形成する金属層6a、絶縁膜15等がオーバーハング状態に残り、アンダーカット部分11aが形成される。そして、エミッタ開口11内にエミッタ3を露出させた上側保護膜8、エミッタ金属層7、下側保護膜9とによる3層構造のカソード電極部4が形成される。
上記各工程を経て支持基板12上にカソード電極部4及びゲート電極部14等を形成した後、さらに所定の離間距離を設けるようスぺーサ22を間に設け、カソード電極部4のエミッタ3の上方にアノード電極5を対向配置することによって、図1に示す電界放出型冷陰極装置1が形成される。
そして、本実施形態は、以上の通りの構成を有していて、エミッタ金属層7の上面に所定厚さ、すなわちエミッタ3の高さより厚い上側保護膜8を設けてエミッタ3全体を覆うことにより、製造過程において発生するごみや汚れがエミッタ3の先端に付着することを防止でき、またゲート電極部14の絶縁膜15を形成する際のパターニングで、エミッタ3の先端を損傷してしまうといった事態を回避することができる。これにより、特に清浄度が高いクリーンルーム等で製造工程の各作業を行う必要がなくなるため、製造コストを低減することができる。
さらに、複数の略4角錐状のエミッタ3を設けたエミッタ金属層7の両面に上側保護膜8と下側保護膜9を形成することにより、エミッタ金属層7と両保護膜8,9の線膨張係数が異なることによって熱応力が発生して生じる曲げの影響を低減でき、エミッタ金属層7の平坦度を保つことができる。すなわち、エミッタ金属層7の片面側にのみ、エミッタ金属層7の材料との線膨張係数の差が大きい材料で保護膜を形成すると、製造過程の温度を上昇させる工程で、線膨張係数が大きい一方の金属材料が他方の材料より伸びる。そして、これら材料の伸びが、弾性変形範囲を超えて塑性変形範囲に至る伸びとなると、形状が元の状態に戻らず一部に変形が残り、曲がったままの状態になる。しかし、エミッタ金属層7の両面に、温度変化に対して変形量が略等しくなるよう熱膨張率が等しい同一材料、同一厚さのもので形成する等した上側保護膜8と下側保護膜9とを設け、エミッタ金属層7の表側と裏側との間での力をバランスさせることで、エミッタ金属層7の変形を防止できることになる。
また、エミッタ3を設けたエミッタ金属層7の形成を、略4角錐状のエミッタ用凹部24を形成したSi基板23から剥離するようにして行うものであるから、Si基板23は、複数回のエミッタ金属層7の形成に使用でき、エミッタ金属層7を形成する度にSi単結晶基板の除去やSiO2層の除去等が不要となるため、製造コストを低減でき、さらに製造過程での工数を少なくすることができる。
またさらに、ゲート電極6の上面に保護絶縁膜17を設けているので、保護絶縁膜17を設けた後の製造工程での取り扱いが、特段の注意を要することがなく、容易となり、製造性が良好なものとなる。
なお、カソード電極部4の上側保護膜8とゲート電極6の間に設けられた絶縁膜15を、例えばポリイミド樹脂で形成することにより、その厚さを1μmより厚いものとすることが容易であり、またエミッタ開口11部分において、ゲート電極6の下方の上側保護膜8がアンダーカットされ、ゲート電極6の開口縁がオーバーハング状態に設けられるために、ゲート電極6とカソード電極部4の上側保護膜8との間の沿面距離が大きくなり、さらに絶縁膜15の厚さを所要の厚さとすることで、エミッタ3とゲート電極6との絶縁距離を大きく取ることができ、絶縁耐力を向上させることができる。
[第2の実施形態]
次に第2の実施形態を図12乃至図21により説明する。図12は電界放出型冷陰極装置の縦断面図であり、図13は電界放出型冷陰極装置の横断面図であり、図14乃至図21は電界放出型冷陰極装置の製造過程における第1の工程乃至第8の工程をそれぞれ示す平面図または断面図である。なお、本実施形態は、上記第1の実施形態と主としてエミッタ金属層、ゲート電極の構成が異なるものである。このため、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
図12及び図13において、電界放出型冷陰極装置31は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極部32とアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成されたゲート電極33を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3とゲート電極33の間に所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。
カソード電極部32は、カソード配線を兼ねると共に、例えば曲率半径が十数nm程度の先鋭な先端を有する略4角錐状に形成され、例えば高さが0.7μm程度の複数のエミッタ3が、上面全面、または略全面に分布する正三角形の頂点となる位置に突設されたエミッタ金属層34と、このエミッタ金属層34の上下両面にそれぞれ設けられた上側保護膜35、下側保護膜9とを備えて構成されている。そして、エミッタ3とエミッタ金属層34は、例えばMo、Ta、W、Cr、Ni、Cu等の少なくとも1つの材料でなる、あるいは、いずれかを主材料としてなる導電材料により形成されている。また、エミッタ金属層34の上面に設けられた上側保護膜35については、所定部分に所要形状(例えば方形、三角形、円形、多角形、長円等)のエミッタ開口36が形成されており、エミッタ開口36の内底部分に複数(例えば3つ以上)のエミッタ3が露出するようになっている。なお、ゲート電極33は、上側保護膜35と同じ位置に、エミッタ開口36が内方に開口縁がせり出しオーバーハング状態となるように形成され、また全体形状が所要の形状となるように形成されている。
また、上側保護膜35と下側保護膜9の材料については、第1の実施形態と同様に、エミッタ金属層34の材料と異なったもので、製造過程での温度上昇でエミッタ金属層34の材料と結合しない材料であり、さらに、エミッタ金属層34にダメージを与えない材料となっている。また上側保護膜35と下側保護膜9とは、エミッタ金属層34の表側と裏側との間での熱変形力をバランスさせ、変形が生じないよう両者の熱膨張率が略同じものとなっており、例えば10μm程度の厚さのNi層で形成したエミッタ金属層34に対し、上側保護膜35と下側保護膜9は、エミッタ3の高さよりも厚い、数μm(2〜5μm程度)の厚さのCu膜で形成した同一材料、同一厚さのものとなっている。
また、このように構成されたカソード電極部32は、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に、接着材13によって固着され、支持されている。
また、支持基板12上に支持されたカソード電極部32の上側保護膜35の上には、ゲート電極33を有するゲート電極部37が設けられている。このゲート電極部37は、上側保護膜35の上面に、例えばポリイミド樹脂の絶縁膜15と、その上に成層したゲート電極33とでなるゲート積層部材38を積層することにより形成されている。さらに、ゲート積層部材38のゲート電極33の上面には、例えばポリイミド樹脂の保護絶縁膜17が成層されている。また、このように各成層されたゲート積層部材38のゲート電極33と絶縁膜15、保護絶縁膜17にも、所定部分に所要形状(例えば方形、三角形、円形、多角形、長円等)のエミッタ開口36が上側保護膜35と同じ位置に、開口縁部分が下方にアンダーカット部分36aを形成するようオーバーハング状態に形成されており、開口内底部分に複数のエミッタ3が露出するようになっている。
そして、このように構成されたものは、図14乃至図21に示す各工程を経ることによって形成される。なお、以下の各工程は略第1の実施形態と同様に行われる。
すなわち、図14に示す第1の工程において、先ずp型で(100)結晶面方位のSi単結晶基板(Si基板)39の表面に、厚さ0.1μm程度のSi酸化膜を形成する。さらに、形成したSi酸化膜上にレジスト材を塗布し、写真蝕刻法でパターニングしてエミッタ3を形成する所定部分に例えば1μm角の正方形開口を有するマスクを形成する。正方形開口の形成位置は、Si基板39表面に分布する正三角形の頂点となる位置となっている。そして、このマスクを用いてSi酸化膜のみを選択的にエッチングし、レジストを除去して、例えば1μm角の正方形開口が形成されたSi酸化膜のマスクを得る。
続いて、正方形開口が形成されたSi酸化膜をマスクにしてSi基板39の異方性エッチングを行う。異方性エッチング後にSi酸化膜を除去する。これにより、図14(a)の平面図及び図14(b)の断面図に示すように、1μm角の正方形開口部分のSi基板39に、深さ0.7μmの略4角錐状のエミッタ用凹部24を形成する。その後、図14(c)の断面図に示すように、略4角錐状のエミッタ用凹部24内を含めてSi基板39に、Si酸化膜26を形成する。
次に、図15に示す第2の工程において、Si酸化膜26が形成されたSi基板39に、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、電気めっき法等のいずれかを用い、略4角錐状のエミッタ用凹部24を埋め込むようにして、例えば10μm厚さのNi層のエミッタ金属層34を形成する。これにより、エミッタ用凹部24にエミッタ3が形成されることになる。さらに、エミッタ金属層34の表面に、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、電気めっき法のいずれかを用いて、例えば数μm厚さのCu膜の下側保護膜9を形成する。
次に、図16に示す第3の工程において、先ず、図16(a)の断面図に示すように、エミッタ金属層34と下側保護膜9が積層されているSi基板39から、水圧あるいはガス圧等を用いて、下側保護膜9が成膜され、エミッタ3が略全面に分布する正三角形の頂点となる位置に形成されているエミッタ金属層34を分離する。
その後、図16(b)の断面図に示すように、エミッタ金属層34のエミッタ3が形成されている面に、下側保護膜9と同様の方法を用いて、下側保護膜9と同一材料、同一厚さである数μm厚さのCu膜の上側保護膜35を形成し、カソード電極部32を形成するための3層構造部材を形成する。形成された3層構造部材は、略4角錐状のエミッタ3は上側保護膜35に埋もれた状態で、頂点が上面から突出しない状態となっている。なお、第1の実施形態に記したように、エミッタ金属層34をSi基板39から分離した後、エミッタ金属層34の両面に上側保護膜35と下側保護膜9を同時に形成するようにして3層構造部材を形成してもよい。
次に、図17に示す第4の工程において、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に、カソード電極部4を形成するための3層構造部材を、その下側保護膜9を接着材13で接着し固定する。
次に、図18に示す第5の工程において、第1の実施形態と同様にして、先ず、図18(a)の断面図に示すように、支持基板12に支持された3層構造部材の上側保護膜35の上面に、例えばポリイミド樹脂でなるゲート積層部材38を構成する絶縁膜15を成膜する。さらに、絶縁膜15の上に、ゲート電極33を形成する金属層6aを形成する。その後、図示しないがゲート電極33を形成する金属層6aをパターニングし、全体形状を所要の形状に形成する。またさらにゲート電極33を形成する金属層6aの上に、例えばポリイミド樹脂でなる保護絶縁膜17を形成する。
続いて、図18(b)の断面図に示すように、保護絶縁膜17をレーザー等によって、エミッタ3の上方位置に所定形状のエミッタ開口36が形成されるようにパターニングを行う。これにより、エミッタ開口36の内底部にゲート電極33を形成する金属層6aの上面が露出する。
次に、図19に示す第6の工程において、パターニングした保護絶縁膜17とエミッタ開口36内に露出した金属層6aの上にフォトレジスト27を塗布し、露光・現像等によってフォトレジスト27を、所定形状のエミッタ開口36が形成されるようにパターニングする。これにより、再びエミッタ開口36内に、ゲート電極33を形成する金属層6aの上面が露出する。続いて、パターニングしたフォトレジスト27をマスクとして、エミッタ開口36内に露出する金属層6aをエッチングし、エミッタ開口36を形成し、ゲート電極33を形成する。またこれにより、開口36内に絶縁膜15の上面が露出する。
次に、図20に示す第7の工程において、フォトレジスト27を除去した後、エミッタ開口36内に露出する絶縁膜15をレーザー等によって除去し、パターニングする。これにより、絶縁膜15にもエミッタ開口36を形成し、エミッタ開口36内に上側保護膜35の上面を露出させる。こうして、パターニングされた1つの絶縁膜15と1つのゲート電極33とを積層して形成される1つのゲート積層部材38によるゲート電極部37が形成される。なお、ゲート電極33を形成する金属層6a、ポリイミド樹脂の絶縁膜15と保護絶縁膜17のパターニングについては、第1の実施形態と同様に、それぞれを順に積層した後に、レーザーで所定形状のエミッタ開口36が形成されるよう、上側保護膜35を除き、その上方の保護絶縁膜17、絶縁膜15、金属層6aについて、同時にパターニングを行うようにしてもよい。また以下に示す各実施形態においても同様に行ってもよい。
次に、図21に示す第8の工程において、エミッタ3、エミッタ金属層34をエッチングしないエッチャントを用いて、エミッタ開口36内に露出する上側保護膜35をエッチングし、エミッタ開口36内に複数のエミッタ3を露出、形成する。これにより、エミッタ開口36内に複数のエミッタ3を露出させた上側保護膜35、エミッタ金属層34、下側保護膜9とによる3層構造のカソード電極部32が形成される。また、このエッチングにより上側保護膜35のアンダーカットが行われ、開口縁部分で、ゲート電極33を形成する金属層6a、絶縁膜15等がオーバーハング状態になり、アンダーカット部分36aが形成される。
上記各工程を経て支持基板12上にカソード電極部4及びゲート電極部32等を形成した後、さらに所定の離間距離を設けるようスぺーサ22を間に設け、カソード電極部32のエミッタ3の上方にアノード電極5を対向配置することによって、図12に示す電界放出型冷陰極装置31が形成される。
なお、図示しないが、エミッタ金属層34には、その所定位置に、第1の実施形態と同様に形成されたアライメントマークが設けられている。
そして、本実施形態は、以上の通りの構成を有しているので、上述の第1の実施形態と同様の効果を有する共に、エミッタ金属層34がエミッタ3を全面、または略全面に分布するものであるため、エミッタ金属層34と所要の形状を有するゲート電極33との製造時の位置合わせに高精度を必要とせず、加工が容易なものとなる。
[第3の実施形態]
次に第3の実施形態を図22乃至図31により説明する。図22は電界放出型冷陰極装置の縦断面図であり、図23乃至図31は電界放出型冷陰極装置の製造過程における第1の工程乃至第9の工程をそれぞれ示す断面図である。なお、本実施形態は、上記第1の実施形態と主としてゲート電極部の構成が異なるものである。このため、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
図22において、電界放出型冷陰極装置41は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極部4とアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成された複数、例えば2つの第1ゲート電極42、第2ゲート電極43を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3と各ゲート電極42,43の間に各所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。またエミッタ3と第1ゲート電極42、第2ゲート電極43との間に電位差を与える際、エミッタ3から離れた側(アノード電極5側)の第2ゲート電極43に与える電位差を所定の値とすることで、放出電子がアノード電極5に対し広がって移動するのを抑制したり、放出電子の移動速度を加速したり、減速したりすることができる。
カソード電極部4は、第1の実施形態と同様の構成を有するもので、例えば略4角錐状に形成され、高さが0.7μm程度の複数のエミッタ3が上面の所定部分に突設されたNi層でなるエミッタ金属層7と、このエミッタ金属層7の上下両面にそれぞれ設けられた同じ厚さのCu膜でなるエミッタ3上方の所定部分にエミッタ開口11が形成された上側保護膜8と、下側保護膜9とを備えて構成されており、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に、接着材13によって固着され、支持されている。なお、エミッタ金属層7の上面の所定位置には、エミッタ3の高さよりも若干高い4角錐台状に形成され、先端面が上側保護膜8の上面と同じ高さ、または若干突出する高さとなるようにアライメントマーク10が突設されている。
また、支持基板12上に支持されたカソード電極部4の上側保護膜8の上には、2つの第1ゲート電極42、第1ゲート電極43を備えるゲート電極部44が、第1ゲート電極42をエミッタ3側にして設けられている。このゲート電極部44は、上側保護膜8の上面に、例えばポリイミド樹脂を所定厚さに成層した第1絶縁膜15aと、その上に導電材料を薄厚に成層した第1ゲート電極42とでなる第1ゲート積層部材45と、第1ゲート電極42の上面に、例えばポリイミド樹脂を所定厚さに成層した第2絶縁膜15bと、その上に導電材料を薄厚に成層した第2ゲート電極43とでなる第2ゲート積層部材46とを積層した構成となっている。さらに、第2ゲート積層部材46の第2ゲート電極43の上面には、例えばポリイミド樹脂で形成された所定厚さの保護絶縁膜17が成層されている。
また、このように成層された各ゲート積層部材45,46、保護絶縁膜17にも、エミッタ開口11が上側保護膜8と同じ位置に、内方に開口縁がせり出し、下方にアンダーカット部分11aを形成するようオーバーハング状態に形成されており、開口内底部分に1つまたは複数のエミッタ3が露出するようになっている。さらに上側保護膜8上の各ゲート積層部材45,46、保護絶縁膜17には、アライメントマーク10上方の所定位置にアライメント開口18が形成されており、開口内にアライメントマーク10の上面が露出するようになっている。なお、アライメント開口18は、上方に成層された上側保護膜8、ゲート積層部材45,46、保護絶縁膜17を透過してアライメントマーク10が、例えば光学的視認、あるいは他の手法等で確認できる場合は、設けなくてもよく、あるいは確認できる深さのものであってもよい。
そして、このように構成されたものは、第1の実施形態における第1の工程乃至第4の工程を経て、カソード電極部4を形成するための3層構造部材を、その下側保護膜9を接着材13で支持基板12の上面に接着し固定したものを得、さらに、図23乃至図32に示す各工程を経ることによって形成される。
すなわち、図23に示す第1の工程において、第1の実施形態と同様にして、支持基板12に支持された3層構造部材の上側保護膜8の上面に、例えばポリイミド樹脂でなる第1ゲート積層部材45を構成する第1絶縁膜15aを成膜する。さらに、第1絶縁膜15aの上に、第1ゲート電極42を形成する第1金属層42aを形成する。
次に、図24に示す第2の工程において、第1ゲート電極42を形成する第1金属層42aの上にフォトレジスト27を塗布し、露光・現像等によってフォトレジスト27を、所定形状のエミッタ開口11やアライメント開口18を有し、所要の全体形状とした第1ゲート電極42が形成されるようにパターニングする。これにより、形成された開口内には第1ゲート電極42を形成する第1金属層42aの上面が露出する。
次に、図25に示す第3の工程において、パターニングしたフォトレジスト27をマスクとして、露出する第1金属層42aをエッチングし、エミッタ開口11、アライメント開口18を有する所要全体形状の第1ゲート電極42を形成する。またこれにより、開口11,18内には第1絶縁膜15aの上面が露出する。
次に、図26に示す第4の工程において、先ず図26(a)の断面図に示すように、開口11,18を埋めるようにして、第1ゲート電極42及び開口11,18内等に露出する第1絶縁膜15aの上面に、第2ゲート積層部材46を構成する、例えばポリイミド樹脂でなる第2絶縁膜15bを成膜する。
続いて、図26(b)の断面図に示すように、第2絶縁膜15bの上に、第2ゲート電極43を形成する第2金属層43aを形成する。
次に、図27に示す第7の工程において、第2ゲート電極43を形成する第2金属層43aの上にフォトレジスト27を塗布し、露光・現像等によってフォトレジスト27を、所定形状のエミッタ開口11やアライメント開口18を有し、所要の全体形状とした第2ゲート電極43が形成されるようにパターニングする。これにより、形成された開口内には第2ゲート電極43を形成する第2金属層43aの上面が露出する。
次に、図28に示す第6の工程において、パターニングしたフォトレジスト27をマスクとして、露出する第2金属層43aをエッチングし、エミッタ開口11、アライメント開口18を有する所要全体形状の第2ゲート電極43を形成する。またこれにより、開口11,18内には第2絶縁膜15bの上面が露出する。
次に、図29に示す第7の工程において、開口11,18を埋めるようにして、第2ゲート電極43及び開口11,18内に露出する第2絶縁膜15bの上面に、例えばポリイミド樹脂でなる保護絶縁膜17を形成する。
次に、図30に示す第8の工程において、第1ゲート電極42や第2ゲート電極43に形成したエミッタ開口11とアライメント開口18を埋める第2絶縁膜15bと保護絶縁膜17と、その直下の第1絶縁膜15aをレーザー等によって除去し、パターニングする。これにより、第1絶縁膜15a、第2絶縁膜15b、保護絶縁膜17にもエミッタ開口11とアライメント開口18が形成され、開口11,18内に上側保護膜8の上面が露出する。そして、パターニングされた第1絶縁膜15aと第1ゲート電極42を積層して形成した第1ゲート積層部材45と、第2絶縁膜15bと第2ゲート電極43を積層して形成した第2ゲート積層部材46とによるゲート電極部44が形成される。
次に、図31に示す第9の工程において、エミッタ3、エミッタ金属層7をエッチングしないエッチャントを用いて、エミッタ開口11やアライメント開口18内に露出する上側保護膜8をエッチングし、エミッタ開口11内にエミッタ3を、またアライメント開口18内にアライメントマーク10を露出、形成する。これにより、エミッタ開口11内にエミッタ3を露出させた上側保護膜8は、厚さ方向だけでなく横方向にもエッチングされ、開口縁部分に、ゲート電極42,43を形成する金属層42a,43a、絶縁膜15a,15b等がオーバーハング状態に残り、アンダーカット部分11aが形成される。そして、エミッタ開口11内にエミッタ3を露出させた上側保護膜8、エミッタ金属層7、下側保護膜9とによる3層構造のカソード電極部4が形成される。
上記各工程を経て支持基板12上にカソード電極部4及びゲート電極部44等を形成した後、さらに所定の離間距離を設けるようスぺーサ22を間に設け、カソード電極部4のエミッタ3の上方にアノード電極5を対向配置することによって、図22に示す電界放出型冷陰極装置41が形成される。
そして、本実施形態は、以上の通りの構成を有しているので、上述の第1の実施形態と同様の効果を有する共に、第1、第2ゲート電極42,43を有するものであるから、各ゲート電極42,43に与えるエミッタ3との電位差を、それぞれ所定の値とすることで、放出電子の移動を所望のものとすることができる。なお、上記と同様にしてゲート電極の数を多くすることで、放出電子の移動をより精度良く制御することができる。
また、本実施形態においても、上述の第2の実施形態と同様に、エミッタ金属層7は、その上面の全面に分布するよう複数のエミッタ3が突設されているものでもよい。
[第4の実施形態]
次に第4の実施形態を図32乃至図40により説明する。図32は電界放出型冷陰極装置の縦断面図であり、図33乃至図37は電界放出型冷陰極装置の製造過程における第1の工程乃至第5の工程をそれぞれ示す断面図であり、図38は電界放出型冷陰極装置の変形形態の要部を示す縦断面図であり、図39は電界放出型冷陰極装置の変形形態におけるエミッタ部分の温度対応を説明する図であり、図40は電界放出型冷陰極装置の変形形態の製造工程の断面図である。なお、本実施形態は、上記第1の実施形態と主としてカソード電極部の構成が異なるものである。このため、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
図32において、電界放出型冷陰極装置51は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極部52とアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成されたゲート電極6を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3とゲート電極6の間に所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。
カソード電極部52は、カソード配線を兼ねると共に、例えば曲率半径が十数nm程度の先鋭な先端を有する略4角錐状に形成され、例えば高さが0.7μm程度の複数のエミッタ3が上面の所定部分に突設されたエミッタ金属層7と、このエミッタ金属層7の上面に絶縁膜のSi酸化膜26と数μm厚から数十μm厚に薄層化したSi層53、さらに、例えばSiO2あるいはSiN、ポリイミド樹脂等でなる所定厚さに成層した絶縁層54を順に積層するようにして構成されている。そして、エミッタ3とエミッタ金属層7は、例えばMo、Ta、W、Cr、Ni、Cu等の少なくとも1つの材料でなる、あるいは、いずれかを主材料としてなる導電材料により形成されている。また、エミッタ金属層7の上面に設けられたSi酸化膜26とSi層53、絶縁層54については、エミッタ3上方の所定部分にエミッタ開口11が形成されており、エミッタ開口11の内底部分に1つまたは複数のエミッタ3が露出するようになっている。なお、ゲート電極6は、Si層53と同じ位置にエミッタ開口11が、内方に開口縁がせり出しオーバーハング状態となるように形成され、また全体形状が所要の形状となるように形成されている。
また、このように構成されたカソード電極部52は、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に、接着材13によって固着され、支持されている。
また、支持基板12上に支持されたカソード電極部52の絶縁層54の上面には、ゲート電極6が設けられている。さらに、ゲート電極6の上面には、例えばポリイミド樹脂で形成された所定厚さの保護絶縁膜17が成層されている。またさらに、このように各成層されたゲート電極6、保護絶縁膜17にも、エミッタ開口11がSi層53と同じ様に形成されており、開口内底部分にエミッタ3が露出するようになっている。
そして、このように構成されたものは、第1の実施形態における第1の工程を経て、Si基板23の表面の所定部分に深さ0.7μmの略4角錐状のエミッタ用凹部24が形成され、さらにエミッタ用凹部24内を含め表面にSi酸化膜26が形成されたSi基板23を得、さらに、図33乃至図37に示す各工程を経ることによって形成される。
すなわち、図33に示す第1の工程において、先ず図33(a)の断面図に示すように、第1の実施形態と同様にして、Si酸化膜26が形成されたSi基板23に、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、電気めっき法のいずれかを用い、略4角錐状のエミッタ用凹部24を埋め込むようにして、例えば10μm厚さのNi層のエミッタ金属層7を形成し、加熱してエミッタ金属層7をSi基板23に接合する。これにより、エミッタ用凹部24にエミッタ3が形成されることになる。
続いて、図33(b)の断面図に示すように、エミッタ金属層7を形成したSi基板23を、エミッタ金属層7を接着材13で接着するようにして、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に固定する。
次いで、図34に示す第2の工程において、先ず図34(a)の断面図に示すように、Si基板23のエミッタ金属層7を形成した面の反対面を、エミッタ用凹部24に達しない厚さの数μmから数十μm(例えば2μm〜50μm程度)の厚さにまで研磨し、薄層化してSi層53を形成する。
続いて、図34(b)の断面図に示すように、Si層53の研磨した面上に、例えばSiO2あるいはSiN、ポリイミド樹脂等で形成された所定厚さの絶縁層54を、蒸着法、スパッタリング法、スピンコート法、シートによる貼り付け法等のいずれかを用いて形成する。
次いで、図35に示す第3の工程において、先ず図35(a)の断面図に示すように、絶縁層54の上に、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、電気めっき法等のいずれかを用いることにより、ゲート電極6を形成する金属層6aを蒸着法、スパッタリング法、CVD法等で形成する。その後、図示しないがゲート電極6を形成する金属層6aを、フォトレジストを用いたエッチング等によりパターニングし、全体形状を所要の形状に形成する。さらに、パターニングしたゲート電極6を形成する金属層6a等の上に、例えばポリイミド樹脂でなる保護絶縁膜17をスピンコート法や、ポリイミドシートやイミドシート等の貼り付け法等のいずれかを用いて形成する。
続いて、図35(b)の断面図に示すように、保護絶縁膜17をレーザー等によって、エミッタ3の上方に所定形状のエミッタ開口11が形成されるようにパターニングを行う。これにより、エミッタ開口11内にゲート電極6を形成する金属層6aの上面が露出する。
次いで、図36に示す第4の工程において、先ず図36(a)の断面図に示すように、パターニングした保護絶縁膜17とエミッタ開口11内に露出した金属層6aの上にフォトレジスト27を塗布し、露光・現像等によってフォトレジスト27を、所定形状のエミッタ開口11が形成されるようにパターニングする。
続いて、図36(b)の断面図に示すように、パターニングしたフォトレジスト27をマスクとして、エミッタ開口11内に露出する金属層6aをエッチングし、エミッタ開口11を有するゲート電極6を形成する。これにより、エミッタ開口11内に絶縁層54の上面が露出する。
次いで、図37に示す第5の工程において、エミッタ開口11内に露出する絶縁層54を、ゲート電極6をマスクにしてエッチングあるいはレーザー等で除去する。絶縁層54が、例えばSiO2の絶縁層である場合には、HF等の酸溶液を用いてエッチング除去する。続いて、絶縁層54をマスクにして、Si層53をドライエッチングあるいはウェットエッチング等する。これにより、エミッタ開口11が形成される。このエッチングによりSi層53は、厚さ方向だけでなく横方向にもエッチングされ、開口縁部分に絶縁層54、ゲート電極6等がオーバーハング状態に残り、アンダーカット部分11aが形成される。さらに、エミッタ開口11内底部分に露出するSi酸化膜26をHF等の酸溶液を用いてエッチング除去し、エミッタ開口11内にエミッタ3を露出させ、エミッタ金属層7にSi酸化膜26、Si層53、絶縁層54を順に積層してなるカソード電極部52が形成される。
上記各工程を経て支持基板12上にカソード電極部52及びゲート電極6等を形成した後、さらに所定の離間距離を設けるようスぺーサ22を間に設け、カソード電極部52のエミッタ3の上方にアノード電極5を対向配置することによって、図32に示す電界放出型冷陰極装置51が形成される。
そして、本実施形態は、以上の通りの構成を有していて、エミッタ金属層7の上面に所定厚さ、すなわちSi基板23をエミッタ3の高さより厚い薄層化したSi層53を設けてエミッタ3全体を覆うことにより、製造過程において発生するごみや汚れがエミッタ3の先端に付着することを防止でき、また製造過程におけるエミッタ3の先端を損傷してしまうといった事態を回避することができる。これにより、特に清浄度が高いクリーンルーム等で製造工程の各作業を行う必要がなくなるため、製造コストを低減することができる。
さらに、エミッタ3を形成したエミッタ金属層7とゲート電極6の間に、薄膜のSi酸化膜26と、Si基板23を薄層化したSi層53、さらに所定厚さの絶縁層54を設けるようにしているので、エミッタ3とゲート電極6との絶縁距離を大きく取ることができ、絶縁耐力を向上させることができる。
なお、上記の第4の実施形態においては、エミッタ金属層7を、例えば10μm厚と比較的厚く形成したものとしたが、図38に示す変形形態のように、比較的薄い厚さ、例えばエミッタ3の高さ寸法(例えば0.7μm)と同程度、またはそれ以下の厚さにエミッタ金属層7aを形成し、他の部分を第4の実施形態と同様に構成したものとしてもよい。すなわち、同一部分には同一符号を付した図38において、エミッタ金属層7aは、その層厚がエミッタ3の高さ寸法よりも薄いものとなっており、エミッタ3の形成部位の背面部分に、凹部55が形成されている。そして、エミッタ金属層7aが、凹部55を接着材13で埋め込むようにして支持基板12に接着されている。
また、このように構成された本変形形態の製造過程は、上記の第4の実施形態の各工程と同様のものとなっており、Si基板23にエミッタ金属層7aを設ける工程が、図40に断面図を示すようなものとなっている。すなわち、Si酸化膜26が形成されエミッタ用凹部24が形成されたSi基板23に、スパッタリング法、蒸着法、電気めっき法等のいずれかを用い、略4角錐状のエミッタ用凹部24を埋め込むようにして、例えばエミッタ用凹部24の深さ寸法よりも薄いエミッタ金属層7aを形成する。これにより、エミッタ用凹部24にエミッタ3が形成され、エミッタ金属層7aのエミッタ3の形成部位の背面部分に凹部55が形成される。
そして、このように構成された本変形形態においては、上記第4の実施形態で得られる効果の他に、エミッタ金属層7aがエミッタ3の形成部位の背面部分に凹部55を有しているため、この凹部55が製造過程や運転状況によって生じる熱膨張差を吸収することができる。
すなわち、例えばエミッタ金属層7aとゲート電極6間の絶縁層54,Si層53、Si酸化膜26の材料であるSi、SiO2、ポリイミド等とエミッタ金属層7aでは線膨張係数が異なる。これら熱膨張係数が異なる材料同士の組み合わせでは、温度上昇する製造過程や運転状況によって、異材料間による熱膨張差が吸収できず、剥離やクラックが発生する問題がある。しかし、図39に示すように、エミッタ金属層7aに形成された凹部55は、温度上昇に伴い2点鎖線で示す形状であったものが、エミッタ金属層7aの熱膨張の伸びを実線矢印で示すように変形し、凹部55で吸収する。エミッタ金属層7aに設けられた複数のエミッタ3の全てに凹部55が有り、またエミッタ3間は数十μm程度と小さく、その熱膨張の伸び量は小さいため、それぞれの凹部55が小さいものであっても、異材料間の熱膨張差を吸収することができる。
[第5の実施形態]
次に第5の実施形態を図41乃至図48により説明する。図41は電界放出型冷陰極装置の縦断面図であり、図42乃至図48は電界放出型冷陰極装置の製造過程における第1の工程乃至第7の工程をそれぞれ示す断面図である。なお、本実施形態は、上記第1の実施形態と主としてカソード電極部の構成が、また第4の実施形態とは主としてSi層が異なるものである。このため、第1の実施形態及び第4の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態及び第4の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
図41において、電界放出型冷陰極装置61は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極部62とアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成されたゲート電極6を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3とゲート電極6の間に所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。
カソード電極部62は、カソード配線を兼ねると共に、例えば曲率半径が十数nm程度の先鋭な先端を有する略4角錐状に形成され、例えば高さが0.7μm程度の複数のエミッタ3が上面の所定部分に突設されたエミッタ金属層7と、このエミッタ金属層7の上面に絶縁膜のSi酸化膜26と数μm厚から数十μm厚に薄層化したSi層63、さらに、所定厚さのSiO2の絶縁体層64を順に積層した構成となっている。そして、エミッタ3とエミッタ金属層7は、例えばMo、Ta、W、Cr、Ni、Cu等の少なくとも1つの材料でなる、あるいは、いずれかを主材料としてなる導電材料により形成されている。また、エミッタ金属層7の上面に設けられたSi酸化膜26とSi層63、絶縁体層64については、エミッタ3上方の所定部分にエミッタ開口11が形成されており、エミッタ開口11の内底部分に1つまたは複数のエミッタ3が露出するようになっている。なお、ゲート電極6は、Si層63と同じ位置にエミッタ開口11が、内方に開口縁がせり出しオーバーハング状態となるように形成され、また全体形状が所要の形状となるように形成されている。
また、このように構成されたカソード電極部62は、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に、接着材13によって固着され、支持されている。
また、支持基板12上に支持されたカソード電極部62の絶縁体層64の上面には、ゲート電極6が設けられている。さらに、ゲート電極6の上面には、例えばポリイミド樹脂で形成された所定厚さの保護絶縁膜17が成層されている。またさらに、このように各成層されたゲート電極6、保護絶縁膜17にも、エミッタ開口11がSi層53と同じ位置に、開口縁部分が下方にアンダーカット部分11aを形成するようオーバーハング状態に形成されており、開口内底部分にエミッタ3が露出するようになっている。
そして、このように構成されたものは、図42乃至図48に示す各工程を経ることによって形成される。
すなわち、図42に示す第1の工程において、先ず図42(a)の断面図に示すように、p型で(100)結晶面方位のSi単結晶で基板が形成され、基板中に所定厚さのSiO2の絶縁体層64を有するSOI(Silicon On Insulator)基板65の片面側65aを研磨し、片面側65aに所定厚(例えば10μm厚以下)の薄層のSi層63を形成する。Si層63の形成後、Si層63の表面に、厚さ0.1μm程度のSi酸化膜を形成する。このSi酸化膜は、Si窒化膜やレジスト等のいずれによって形成してもよい。
続いて、形成したSi酸化膜上にレジスト材をスピンコート法により塗布する。塗布、形成されたレジストに露光・現像等のパターニングを行い、エミッタ3を形成する所定部分に例えば1μm角の正方形開口を有するマスクを形成する。形成したマスクを用い、NH4・HF混合溶液によりSi酸化膜のみを選択的にエッチングする。レジストを除去し、例えば1μm角の正方形開口が形成されたSi酸化膜のマスクを得る。さらに、正方形開口が形成されたSi酸化膜をマスクとし、KOH水溶液等を用いてSi層63の異方性エッチングを行う。異方性エッチングを所定時間行った後、NH4・HF混合溶液によりSi酸化膜を除去する。これにより、1μm角の正方形開口部分のSi層63に、深さ0.7μmの略4角錐状のエミッタ用凹部24を形成する。
その後、図42(b)の断面図に示すように、略4角錐状のエミッタ用凹部24内を含めてSi層63に、ウエット熱酸化法、スパッタリング法、ドライ熱酸化法等のいずれかの方法によりSi酸化膜26を形成する。
次いで、図43に示す第2の工程において、先ず図43(a)の断面図に示すように、第4の実施形態と同様にして、SOI基板65のSi酸化膜26が形成されたSi層63に、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、電気めっき法のいずれかを用い、略4角錐状のエミッタ用凹部24を埋め込むようにして、例えば10μm厚さのNi層のエミッタ金属層7を形成し、加熱してエミッタ金属層7をSi層63に接合する。これにより、エミッタ用凹部24にエミッタ3が形成されることになる。
続いて、図43(b)の断面図に示すように、Si層63にエミッタ金属層7を形成したSOI基板65を、エミッタ金属層7を接着材13で接着するようにして、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に固定する。
次いで、図44に示す第3の工程において、SOI基板65の他面側65b、すなわちエミッタ金属層7を形成したSi層63とは反対側の面を、所定の厚さとなるまで、例えばSiO2の絶縁体層64が露出する厚さにまで研磨及びエッチング等する。
次いで、図45に示す第4の工程において、先ず図45(a)の断面図に示すように、研磨等した後の面である絶縁体層64の上に、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、電気めっき法等のいずれかを用いることにより、ゲート電極6を形成する金属層6aを蒸着法、スパッタリング法、CVD法等で形成する。その後、図示しないがゲート電極6を形成する金属層6aを、フォトレジストを用いたエッチング等によりパターニングし、全体形状を所要の形状に形成する。さらにゲート電極6を形成する金属層6aの上に、例えばポリイミド樹脂でなる保護絶縁膜17をスピンコート法や、ポリイミドシートやイミドシート等の貼り付け法等のいずれかを用いて形成する。
続いて、図45(b)の断面図に示すように、保護絶縁膜17をレーザー等によって、エミッタ3の上方に所定形状のエミッタ開口11が形成されるようにパターニングを行う。これにより、エミッタ開口11内にゲート電極6を形成する金属層6aの上面が露出する。
次いで、図46に示す第5の工程において、パターニングした保護絶縁膜17とエミッタ開口11内に露出した金属層6aの上にフォトレジスト27を塗布し、露光・現像等によってフォトレジスト27を、所定形状のエミッタ開口11が形成されるようにパターニングする。
次いで、図47に示す第6の工程において、パターニングしたフォトレジスト27をマスクとして、エミッタ開口11内に露出する金属層6aをエッチングし、エミッタ開口11を有するゲート電極6を形成する。これにより、エミッタ開口11内に絶縁体層64の上面が露出する。
次いで、図48に示す第7の工程において、エミッタ開口11内に露出する絶縁体層64を、ゲート電極6をマスクにしてエッチングあるいはレーザー等で除去する。絶縁体層64が、例えばSiO2である場合には、HF等の酸溶液を用いてエッチング除去する。続いて、絶縁体層64をマスクにして、Si層63をドライエッチングあるいはウェットエッチング等する。これにより、エミッタ開口11が形成される。このエッチングによりSi層63は、厚さ方向だけでなく横方向にもエッチングされ、開口縁部分に絶縁層64、ゲート電極6等がオーバーハング状態に残り、アンダーカット部分11aが形成される。
さらに、エミッタ開口11内底部分に露出するSi酸化膜26をHF等の酸溶液を用いてエッチング除去し、エミッタ開口11内にエミッタ3を露出させ、エミッタ金属層7にSi酸化膜26、Si層63、絶縁体層64を順に積層してなるカソード電極部62が形成される。
上記各工程を経て支持基板12上にカソード電極部62及びゲート電極6等を形成した後、さらに所定の離間距離を設けるようスぺーサ22を間に設け、カソード電極部62のエミッタ3の上方にアノード電極5を対向配置することによって、図41に示す電界放出型冷陰極装置61が形成される。
そして、本実施形態は、以上の通りの構成を有することで、上述の第4の実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態においても、エミッタ金属層7を、上述の第4の実施形態で示した変形形態のエミッタ金属層7aと同様に、その層厚がエミッタ3の高さ寸法と同程度、またはそれ以下の厚さの薄いものとすることにより、同様の効果が得られるものである。
[第6の実施形態]
次に第6の実施形態を図49及び図50により説明する。図49は電界放出型冷陰極装置の縦断面図であり、図50は電界放出型冷陰極装置の横断面図である。なお、本実施形態は、上記第1の実施形態と主としてゲート電極の構成が異なるものである。このため、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
図49及び図50において、電界放出型冷陰極装置71は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極部4とアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成されたゲート電極72を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3とゲート電極72の複数条の狭幅の帯状ゲート電極膜72a,72b,72c,……,72nの選択した電極膜の間に所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。
カソード電極部4は、カソード配線を兼ねると共に、例えば曲率半径が十数nm程度の先鋭な先端を有する略4角錐状に形成され、高さが例えば0.7μm程度の1つまたは複数複数のエミッタ3が、例えばNi層で形成され、1つまたは複数ずつがマトリックス状に配置されるよう上面の所定部分に突設されたエミッタ金属層7と、このエミッタ金属層7の上下両面にそれぞれ設けられた例えばCu膜で形成された同一厚さの上側保護膜8、下側保護膜9とを備えて構成されている。そして、上側保護膜8には、所定部分に所要形状のエミッタ開口11が形成されており、エミッタ開口11の内底部分に1つまたは複数のエミッタ3が露出するようになっている。さらに、カソード電極部4は、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に、接着材13によって固着され、支持されている。なお、エミッタ金属層7の上面の所定位置には、エミッタ3の高さよりも若干高い4角錐台状に形成されたアライメントマーク10が突設されている。
また、カソード電極部4の上側保護膜8の上には、例えばポリイミド樹脂の絶縁膜15を介してゲート電極72が設けられている。ゲート電極72は、ライン状(狭幅の帯状)に形成された複数条のゲート電極膜72a,72b,72c,……,72nによって構成されており、各ゲート電極膜72a,72b,72c,……,72nのライン方向は、マトリックス状に配置されたエミッタ3の一方の配列方向と同方向となっている。さらに、各ゲート電極膜72a,72b,72c,……,72nには、ライン方向に等間隔にエミッタ開口11が形成されており、その内底部分に、それぞれマトリックス状に配置されたエミッタ3が露出するようになっている。
また、ゲート電極72の複数条のゲート電極膜72a,72b,72c,……,72nと、絶縁膜15の上に、例えばポリイミド樹脂で形成された所定厚さの保護絶縁膜17が成層されている。さらに保護絶縁膜17にも、エミッタ開口11が形成されている。なお、上側保護膜8上の絶縁膜15、ゲート電極膜72a,72b,72c,……,72nのうちの対応する位置にある電極膜、保護絶縁膜17には、アライメントマーク10上方の所定位置にアライメント開口18が形成されており、開口内にアライメントマーク10の上面が露出するようになっている。
そして、上記のように構成された本実施形態は、上述の第1の実施形態と同様にして形成される。
上記のように構成された本実施形態は、上述の第1の実施形態と同様の効果を有すると共に、ゲート電極72がライン状となっているので、エミッタ3とゲート電極72の各ゲート電極膜72a,72b,72c,……,72nとの間に与える電位差をライン毎に選択することができる。このため、例えばアノード電極5のアノード電極膜20を、ゲート電極72の各ゲート電極膜72a,72b,72c,……,72nのライン方向に直交する方向をライン方向とする複数条のものとすることで、ゲート電極膜72a,72b,72c,……,72nのうちの電位が与えられた電極膜と、アノード電極膜20の電位が与えられたラインとの交点の下方に位置するエミッタ3が選択され、選択されたエミッタ3から電子を放出することができることになる。さらに機能膜21を、ゲート電極膜72a,72b,72c,……,72nとライン化したアノード電極膜20との各交点に対応する部分毎に独立させたものとし、各交点に対応するエミッタ3のうちから選択したものから電子を放出させることで、機能膜21を各部分毎に例えば画素として動作させることができるようになる。
[第7の実施形態]
次に第7の実施形態を図51及び図52により説明する。図51は電界放出型冷陰極装置の縦断面図であり、図52は電界放出型冷陰極装置の横断面図である。なお、本実施形態は、上記第3の実施形態と主としてゲート電極の構成が異なるものである。このため、第3の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第3の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
図51及び図52において、電界放出型冷陰極装置75は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極部4とアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成された複数、例えば2つの第1ゲート電極76、第2ゲート電極77を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3と第1ゲート電極76の複数条の狭幅の帯状ゲート電極膜76a,76b,76c,……,76n、第2ゲート電極77の複数条の狭幅の帯状ゲート電極膜77a,77b,77c,……,77nの各選択した電極膜の間に所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。またエミッタ3と第1ゲート電極76、第2ゲート電極77の電極膜との間に電位差を与える際、エミッタ3から離れた側(アノード電極5側)の第2ゲート電極77に与える電位差を所定の値とすることで、放出電子がアノード電極5に対し広がって移動するのを抑制したり、放出電子の移動速度を加速したり、減速したりすることができる。
カソード電極部4は、カソード配線を兼ねると共に、例えば曲率半径が十数nm程度の先鋭な先端を有する略4角錐状に形成され、高さが例えば0.7μm程度の1つまたは複数複数のエミッタ3が、例えばNi層で形成され、1つまたは複数ずつがマトリックス状に配置されるよう上面の所定部分に突設されたエミッタ金属層7と、このエミッタ金属層7の上下両面にそれぞれ設けられた例えばCu膜で形成された同一厚さの上側保護膜8、下側保護膜9とを備えて構成されている。そして、上側保護膜8には、所定部分に所要形状のエミッタ開口11が形成されており、エミッタ開口11の内底部分に1つまたは複数のエミッタ3が露出するようになっている。さらに、カソード電極部4は、支持基体である例えばガラスやセラミックス、金属等の材料で形成された支持基板12の上面に、接着材13によって固着され、支持されている。なお、エミッタ金属層7の上面の所定位置には、エミッタ3の高さよりも若干高い4角錐台状に形成されたアライメントマーク10が突設されている。
また、カソード電極部4の上側保護膜8の上面に、例えばポリイミド樹脂の絶縁膜15aを介し、等間隔のライン状(狭幅の帯状)に形成された複数条のゲート電極膜76a,76b,76c,……,76nにより構成された第1ゲート電極76が設けられ、さらに第1ゲート電極76の上面に、例えばポリイミド樹脂の絶縁膜15bを介し、第1ゲート電極76のライン方向に交差、例えば直交する方向に、同じく等間隔のライン状(狭幅の帯状)に形成された複数条のゲート電極膜77a,77b,77c,……,77nにより構成された第2ゲート電極77が設けられている。なお、第1ゲート電極76と第2ゲート電極77の各ライン方向は、マトリックス状に配置されたエミッタ3の配列方向と同方向となっている。
またさらに、絶縁膜15a、第2ゲート電極77の上面には、最上層を形成するように、例えばポリイミド樹脂で形成された所定厚さの保護絶縁膜17が成層されている。そして、第1ゲート電極76と第2ゲート電極77の複数条の各電極膜には、ライン方向に等間隔にエミッタ開口11が形成され、さらにその上層の保護絶縁膜17にもエミッタ開口11が形成されており、その内底部分に、それぞれマトリックス状に配置されたエミッタ3が露出するようになっている。なお、アライメントマーク10上方の各膜には、対応する位置に、開口内にアライメントマーク10の上面が露出するようにアライメント開口18が形成されている。
そして、上記のように構成された本実施形態は、上述の第3の実施形態と同様にして形成される。
上記のように構成された本実施形態は、上述の第3の実施形態と同様の効果を有すると共に、第1、第2ゲート電極76,77がそれぞれライン状の交差直交するものとなっているので、エミッタ3と各第1、第2ゲート電極76,77の各ゲート電極膜76a,76b,76c,……,76n,77a,77b,77c,……,77nとの間に与える電位差を各ライン毎に選択することができる。このため、第1、第2ゲート電極76,77の選択され電位が与えられた電極膜の交点に対応するエミッタ3から電子を放出することができることになる。なお、機能膜21を、各第1、第2ゲート電極76,77の電極膜のライン交点に対応する部分毎に独立させたものとし、各交点に対応するエミッタ3のうちから選択したものから電子を放出させることで、機能膜21を各部分毎に例えば画素として動作させることができるようになる。
[第8の実施形態]
次に第8の実施形態を図53及び図54により説明する。図53は電界放出型冷陰極装置の縦断面図であり、図54は電界放出型冷陰極装置の図53に直交する方向の縦断面図である。なお、本実施形態は、上記第1の実施形態と主として支持基板とカソード電極部の構成が異なるものである。このため、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
図53及び図54において、電界放出型冷陰極装置81は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極部82とアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成されたゲート電極6を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3とゲート電極6の間に所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。
カソード電極部82は、カソード配線を兼ねると共に、例えば曲率半径が十数nm程度の先鋭な先端を有する略4角錐状に形成され、例えば高さが0.7μm程度の複数のエミッタ3が上面の所定部分に突設された直方体形状のライン状(狭幅の帯状)をなすエミッタ金属層7と、このエミッタ金属層7の上下両面にそれぞれ設けられた上側保護膜8、下側保護膜9とを備えて構成されている。そして、エミッタ3とエミッタ金属層7は、例えばMo、Ta、W、Cr、Ni、Cu等の少なくとも1つの材料でなる、あるいは、いずれかを主材料としてなる導電材料により形成されている。また上側保護膜8は、エミッタ3が突設されているエミッタ金属層7の上面に、エミッタ3上方にエミッタ開口11が形成されるよう設けられている。なお、エミッタ開口11は、その内底部分に1つまたは複数のエミッタ3が露出するようになっている。
また、上側保護膜8と下側保護膜9の材料については、エミッタ金属層7の材料と異なったもので、製造過程での温度上昇でエミッタ金属層7の材料と結合しない材料であり、さらに、エミッタ金属層7にダメージを与えない材料となっている。また上側保護膜8と下側保護膜9とは、エミッタ金属層7の表側と裏側との間での熱変形力をバランスさせ、変形が生じないよう両者の熱膨張率が略同じものとなっており、例えば10μm程度の厚さのNi層で形成されたエミッタ金属層7に対し、両保護膜8,9は、エミッタ3の高さよりも厚い、数μm(2〜5μm程度)の厚さのCu膜で形成した同一材料、同一厚さのものとなっている。なお、エミッタ3の大きさが大きくなり、高さが高くなった場合には、それに応じて両保護膜8,9の厚さも厚いものとなり、また両保護膜8,9は温度変化に対して変形量が略等しく、両保護膜8,9間の力がエミッタ金属層7の表側と裏側とでバランスするよう熱膨張率が略等しい異種材料の異なる厚さのものの組み合わせ等でもよく、金属膜に限るものでもない。
また、上側保護膜8の上には、例えばポリイミド樹脂を所定厚さに成層した絶縁膜15と、その上に導電材料を薄厚に成層したゲート電極6が設けられている。さらに、ゲート電極6の上面には、例えばポリイミド樹脂で形成された所定厚さの保護絶縁膜17が成層されている。
また、このように構成されたカソード電極部82は、支持基体である例えばガラスやセラミックス等の絶縁材料で形成された支持基板83の上部の所定方向に複数条削設された断面形状が凹形状の細長くライン状の支持溝84内に、それぞれ接着材13によって固着され、支持されている。なお、支持溝84の深さは、支持したカソード電極部82のエミッタ金属層7の上面が、支持基板83の上面と同じ高さとなる程度となっている。また、支持基板83の支持溝84が削設されていない部分の上面にも、カソード電極部82と同様に、上側保護膜8と同様構成の保護膜85と、絶縁膜15、さらにゲート電極6を形成した金属層6a、保護絶縁膜17が、支持基板83の上面から順に成層されている。
そして、上記のように構成された本実施形態は、上述の第1の実施形態の第3の工程で得たエミッタ金属層7の両面に上側保護膜8と下側保護膜9を備えた3層構造部材を、直方体形状のライン状(狭幅の帯状)に形成した後、保護膜85が成層された支持基板83の支持溝84内に固着する。さらに、3層構造部材を支持した支持基板83の上側保護膜8と保護膜85の上に絶縁膜15を成層し、さらに、ゲート電極6を形成する金属層6a、保護絶縁膜17を成層する。その後、上側保護膜8上の各膜、各層をそれぞれエッチングやレーザー等を用いて除去し、さらにアノード電極5を設けることにより形成される。
その結果、上記のように構成された本実施形態は、上述の第1の実施形態と同様の効果を有すると共に、カソード電極部82のエミッタ金属層7を支持溝84内に支持している構成であるため、エミッタ金属層7間の絶縁が、支持溝84間に設けられる溝壁によって確保されることになり、絶縁性能が向上したものとなる。
[第9の実施形態]
次に第9の実施形態を図55乃至図62により説明する。図56は電界放出型冷陰極装置の縦断面図であり、図56乃至図62は電界放出型冷陰極装置の製造過程における第1の工程乃至第7の工程をそれぞれ示す断面図である。なお、本実施形態は、上記第4の実施形態と主として支持基板とカソード電極部分の構成が異なるものである。このため、第4の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第4の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
図55において、電界放出型冷陰極装置91は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極92とアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成されたゲート電極6を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3とゲート電極6の間に所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。
カソード電極92は、例えば曲率半径が十数nm程度の先鋭な先端を有する略4角錐状に形成され、例えば高さが0.7μm程度の複数のエミッタ3と、カソード配線を兼ねると共にエミッタ3が上面の所定部分に突設された直方体形状でライン状(狭幅の帯状)をなす複数条のエミッタ金属層7とで構成されている。さらにカソード電極92は、支持基体である例えばガラスやセラミックス等の絶縁材料で形成された支持基板93の上部の所定方向に複数条削設された断面が凹形状の細長くライン状の支持溝94内に、それぞれ接着材13によって固着され、支持されている。
また、カソード電極92を支持した支持基板93上には、絶縁膜のSi酸化膜26と数μm厚から数十μm厚に薄層化したSi層53、さらに、例えばSiO2あるいはSiN、ポリイミド樹脂等でなる所定厚さに成層した絶縁層54を順に積層するようにして構成されている。そして、エミッタ3とエミッタ金属層7は、例えばMo、Ta、W、Cr、Ni、Cu等の少なくとも1つの材料でなる、あるいは、いずれかを主材料としてなる導電材料により形成されている。
さらに、支持基板93上の絶縁層54の上面には、ゲート電極6が設けられ、ゲート電極6の上面には、例えばポリイミド樹脂で形成された所定厚さの保護絶縁膜17が成層されている。またさらに、このように各成層されたSi酸化膜26とSi層53、絶縁層54、さらにゲート電極6、保護絶縁膜17には、エミッタ3上方の所定部分にエミッタ開口11が形成されており、エミッタ開口11の内底部分に1つまたは複数のエミッタ3が露出するようになっている。
そして、このように構成されたものは、第1の実施形態における第1の工程を経て、Si基板23の表面の所定部分に深さ0.7μmの略4角錐状のエミッタ用凹部24が形成され、さらにエミッタ用凹部24内を含め表面にSi酸化膜26が形成されたSi基板23を得、さらに、図56乃至図62に示す各工程を経ることによって形成される。
すなわち、図56に示す第1の工程において、先ず図56(a)の断面図に示すように、第1の実施形態と同様にして、Si酸化膜26が形成されたSi基板23に、スパッタリング法、蒸着法、印刷法、電気めっき法のいずれかを用い、略4角錐状のエミッタ用凹部24を埋め込むようにして、例えば10μm厚さのNi層のエミッタ金属層7を形成し、加熱してエミッタ金属層7をSi基板23に接合する。これにより、エミッタ用凹部24にエミッタ3が形成されることになる。
続いて、図56(b)の断面図に示すように、エミッタ金属層7を形成したSi基板23の接合側の反対面にレジスト95を塗布し、露光・現像によりパターニングして、エミッタ3形成部分の背面にライン状にレジスト95を残したマスクを形成する。
次いで、図57に示す第2の工程において、前工程で形成したマスクを用い、エミッタ金属層7とSi酸化膜26をそれぞれエッチングして、Si基板23にライン状に形成した複数条のエミッタ金属層7を形成する。
次いで、図58に示す第3の工程において、先ず図58(a)の断面図に示すように、予め反応性イオンエッチングで所定部分に所定形状の支持溝94を形成した支持基板93に、ライン状のエミッタ金属層7が形成されたSi基板23を、支持溝94内に接着剤13でエミッタ金属層7を固着するようにしながら固定する。
続いて、図58(b)の断面図に示すように、Si基板23のエミッタ金属層7を形成した面の反対面を、エミッタ用凹部24に達しない厚さの数μmから数十μm(例えば2μm〜50μm程度)の厚さにまで研磨し、薄層化してSi層53を形成する。
次いで、図59に示す第3の工程において、Si層53の研磨した面上に、例えばSiO2あるいはSiN、ポリイミド樹脂等で形成された所定厚さの絶縁層54を、蒸着法、スパッタリング法、スピンコート法、シートによる貼り付け法等のいずれかを用いて形成する。さらに絶縁層54の上に、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、電気めっき法等のいずれかを用いることにより、ゲート電極6を形成する金属層6aを蒸着法、スパッタリング法、CVD法等で形成する。その後、図示しないがゲート電極6を形成する金属層6aを、フォトレジストを用いたエッチング等によりパターニングし、全体形状を所要の形状に形成する。またさらにゲート電極6を形成する金属層6aの上に、例えばポリイミド樹脂でなる保護絶縁膜17をスピンコート法や、ポリイミドシートやイミドシート等の貼り付け法等のいずれかを用いて形成する。
次いで、図60に示す第5の工程において、先ず図60(a)の断面図に示すように、保護絶縁膜17をレーザー等によって、エミッタ3の上方に所定形状のエミッタ開口11が形成されるようにパターニングを行う。これにより、エミッタ開口11内にゲート電極6を形成する金属層6aの上面が露出する。
続いて、図60(b)の断面図に示すように、パターニングした保護絶縁膜17とエミッタ開口11内に露出した金属層6aの上にフォトレジスト27を塗布し、露光・現像等によってフォトレジスト27を、所定形状のエミッタ開口11が形成されるようにパターニングする。
次いで、図61に示す第6の工程において、パターニングしたフォトレジスト27をマスクとして、エミッタ開口11内に露出する金属層6aをエッチングし、エミッタ開口11を有するゲート電極6を形成する。これにより、エミッタ開口11内に絶縁層54の上面が露出する。
次いで、図62に示す第7の工程において、エミッタ開口11内に露出する絶縁層54を、ゲート電極6をマスクにしてエッチングあるいはレーザー等で除去する。絶縁層54が、例えばSiO2の絶縁層である場合には、HF等の酸溶液を用いてエッチング除去する。続いて、絶縁層54をマスクにして、Si層53をドライエッチングあるいはウェットエッチング等する。これにより、エミッタ開口11が形成される。このエッチングによりSi層53は、厚さ方向だけでなく横方向にもエッチングされ、開口縁部分に絶縁層54、ゲート電極6等がオーバーハング状態に残り、アンダーカット部分11aが形成される。さらに、エミッタ開口11内底部分に露出するSi酸化膜26をHF等の酸溶液を用いてエッチング除去し、エミッタ開口11内にエミッタ3を露出させて、複数条のエミッタ金属層7でなるカソード電極92を形成する。
上記各工程を経て支持基板93にカソード電極92及びゲート電極6等を形成した後、さらに所定の離間距離を設けるようスぺーサ22を間に設け、カソード電極部52のエミッタ3の上方にアノード電極5を対向配置することによって、図55に示す電界放出型冷陰極装置91が形成される。
そして、このように構成された本実施形態においては、上述の第4の実施形態と同様の効果を有すると共に、複数条のエミッタ金属層7でなるカソード電極92を、支持基板93の支持溝94内に支持している構成であるため、エミッタ金属層7間の絶縁が、支持溝94間に形成される溝壁によって確保されることになり、絶縁性能が向上したものとなる。
[第10の実施形態]
次に第10の実施形態を図63及び図64により説明する。図63は電界放出型冷陰極装置の冷陰極部の平面図であり、図64は電界放出型冷陰極装置の冷陰極部の縦断面図である。なお、本実施形態は、上記第1の実施形態と主として支持基体の構成が異なるものである。このため、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
図63及び図64において、電界放出型冷陰極装置101は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極部4と図示しないアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成されたゲート電極6を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3とゲート電極6の間に所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。
カソード電極部4は、例えば曲率半径が十数nm程度の先鋭な先端を有する略4角錐状に形成され、例えば高さが0.7μm程度の複数のエミッタ3が上面の所定部分に突設された、例えば所定層厚のNi層でなるエミッタ金属層7と、このエミッタ金属層7の上下両面にそれぞれ設けられた所定材料、例えばCu膜でなる所定厚さの上側保護膜8、下側保護膜9とを備えて構成されている。
また、上側保護膜8の上には、例えばポリイミド樹脂を所定厚さに成層した絶縁膜15と、その上に導電材料を薄厚に成層したゲート電極6が設けられている。さらに、ゲート電極6の上面には、例えばポリイミド樹脂で形成された所定厚さの保護絶縁膜17が成層され、カソード電極部4の上にゲート電極6を配した所定の大きさの冷陰極部102が構成される。なお、ゲート電極6については、必要に応じ設けなくてもよい。
そして、上記ように構成された複数の冷陰極部102は、支持基体である例えばガラスやセラミックス等の絶縁材料で形成され、冷陰極部102よりも大きい比較的大面積の支持基板103の上面の所定位置に、それぞれ接着材13により固定される。さらに、複数の冷陰極部102が固定された支持基板103に対し、図示しないが、所定離間距離を設けて冷陰極部102に対向するようアノード電極5が配置されて、大型の電界放出型冷陰極装置101が形成される。なお、104は、支持基板103に形成される等して設けられた各冷陰極部102の電極線であり、外部の図示しない回路と接続に用いられる。
そして、上記のように構成された本実施形態は、上述の第1の実施形態の第3の工程で得たエミッタ金属層7の両面に上側保護膜8と下側保護膜9を備えた3層構造部材を、仮基板に接着し、さらに第1の実施形態の第5の工程から第10の工程までを行い、ゲート電極6等を形成する。その後、仮基板を分離し、3層構造部材にゲート電極6等が形成されたフィルム状の各冷陰極部102を形成する。そして、形成した各冷陰極部102を支持基板103の所定位置に固定し、アノード電極5を配置することにより形成される。
その結果、上記のように構成された本実施形態は、上述の第1の実施形態と同様の効果を有すると共に、通常、装置サイズを大きくする場合には、それに対応した大型の金型や製造装置等が必要となり、製造コストが高くなるものが、任意形状を有するサイズの大きい装置を、複数の製造し易く低廉なサイズの冷陰極部102によって形成でき、安価な製造コストで実現することができる。また電極線104を介し、外部回路により支持基板103上の複数の冷陰極部102を選択し、独立にあるいは連係して適宜動作させることができる。なお、冷陰極部102については、先ず上側保護膜8にエミッタ開口11を形成せずに支持基板103に固定し、その後、実装した状態で内底部にエミッタ3が露出するようにエミッタ開口11を形成する。このように、最後にエミッタ開口11を形成することによって、実装過程等においてエミッタ3を損傷する虞がなくなり、製造歩留まりを向上させることができる。
[第11の実施形態]
次に第11の実施形態を図65及び図66により説明する。図65は電界放出型冷陰極装置の冷陰極部の斜視図であり、図66は電界放出型冷陰極装置の冷陰極部の縦断面図である。なお、本実施形態は、上記第1及び第10の実施形態と主として支持基体の構成が異なるものである。このため、第1及び第11の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
図65及び図66において、電界放出型冷陰極装置105は、例えば10−6Torr程度の高真空状態に保持した真空空間2を間に設け、先鋭な先端を有する複数のエミッタ3が突設されたカソード電極部4と図示しないアノード電極5とを、その間に所要の形状に形成されたゲート電極6を配置するようにして構成されている。そして、図示しない電源部によりエミッタ3とゲート電極6の間に所定の電位差を与えることで、エミッタ3から電子を放出させ、さらにアノード電極5に所定の電位を与えることで、放出された電子がアノード電極5に向かうよう動作する。
カソード電極部4は、例えば曲率半径が十数nm程度の先鋭な先端を有する略4角錐状に形成され、例えば高さが0.7μm程度の複数のエミッタ3が上面の所定部分に突設された、例えば所定層厚のNi層でなるエミッタ金属層7と、このエミッタ金属層7の上下両面にそれぞれ設けられた所定材料、例えばCu膜でなる所定厚さの上側保護膜8、下側保護膜9とを備えて構成されている。
また、上側保護膜8の上には、例えばポリイミド樹脂を所定厚さに成層した絶縁膜15と、その上に導電材料を薄厚に成層したゲート電極6が設けられている。さらに、ゲート電極6の上面には、例えばポリイミド樹脂で形成された所定厚さの保護絶縁膜17が成層され、カソード電極部4の上にゲート電極6を配した所定の大きさの冷陰極部102が構成される。なお、ゲート電極6については、必要に応じ設けなくてもよい。
そして、上記ように構成された複数の冷陰極部102は、例えばガラスやセラミックス等の絶縁材料で形成された、断面形状が円形や楕円、長円等の筒体や柱体、またそれらの部分体などでなる支持基体である、例えば支持円筒体106の曲面状外面に、接着材13により固定される。さらに、冷陰極部102が固定された支持円筒体106に対し、図示しないが、所定離間距離を設けて冷陰極部102に対向するようアノード電極5が配置されて、筒体状の電界放出型冷陰極装置105が形成される。
そして、上記のように構成された本実施形態は、第10の実施形態と同様にして、フィルム状の冷陰極部102を形成する。そして、形成した冷陰極部102を支持円筒体106の曲面状外面に固定し、アノード電極5を配置することにより形成される。
その結果、上記のように構成された本実施形態は、上述の第1の実施形態と同様の効果を有すると共に、支持基体を例えば円筒状とすることで、直方体形状の装置に比較し真空空間2の形成が容易となり、コストを低減することができ、例えば照明装置等に利用可能となる。また、冷陰極部102については、第10の実施形態と同様に、先ず上側保護膜8にエミッタ開口11を形成せずに支持円筒体106に固定し、その後、実装した状態で最後にエミッタ開口11を形成することによって、エミッタ3の損傷が防止でき、製造歩留まりを向上させることができる。
なお、上記の各実施形態においては、ゲート電極の上に保護絶縁膜17を設けるようにしたが、装置の製造過程が充分クリーンな環境である場合等においては、特に設けなくてもよい。
また、上述の各実施形態において、エミッタ3をエミッタ金属層の所定部分だけに突設させたものについては、上述の第2の実施形態と同様に、複数のエミッタ3をエミッタ金属層の上面の全面に分布するよう突設させたものでもよい。さらに、ゲート電極をカソード電極の上方に1層だけ設けたものについては、カソード電極の上方に複数のゲート電極をそれぞれの間に絶縁膜を設けるようにして設け、各ゲート電極にそれぞれ所定の電位を与えることで、放出電子の移動をより複雑なものにするようにしてもよい。
また、上述の第10、第11の実施形態において、フィルム状の冷陰極部102の固着する側の面に、冷陰極部102と略同じ熱膨張率の材料の補強板を予め固着しておき、補強板を介在させて支持基体に固着するようにしてもよい。
またさらに、本発明は、上述した各実施形態に記載した範囲で、各構成、各工程を種々組み合せるようにして構成することができる。