JP4948878B2 - 電極材料ならびにそれを用いた二次電池およびキャパシタ - Google Patents
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Description
従来のリチウム系二次電池においては、正極材料には、主に、リチウム含有金属複合酸化物が用いられているが、その容量に限界があることから、近年、これに替わる材料として、有機硫黄化合物が注目されている。
例えば、特許文献1には、下記式(2)に示すように、テトラチオナフタレン(以下、TTNと略記する。)の2つのジチオール環の開裂・環化によるレドックス反応によって、1分子当たり4電子の授受が可能であり、理論容量が425mAh/gと非常に大きいことが記載されている。
これに対しては、下記式(3)に示すように、TTNの2つのジチオール環に、正の電荷を付与することにより、該ジチオール環を開環することなく、2電子反応を生じ、理論容量は213mAh/gと上記の場合より劣るものの、現行のリチウム系二次電池と同等の動作電圧が得られることが認められている(例えば、特許文献2参照)。
具体的には、下記式(4)に示すように、TTNの両末端を分子修飾した後、チオエーテル結合(−S−)を介してポリマー化し、チアントレン骨格を形成することにより、電解液への溶出を抑制し、さらに、連結部にレドックス活性点を付与することで、モノマーユニット当たり3電子反応となり、理論容量およびサイクル特性を向上させることができる。
上記のように、イミノ基を連結部としてTTNをポリマー化することにより、サイクル特性および電気容量の向上のみならず、導電性の向上も図ることができる。
上記のように電気化学的特性に優れた本発明に係る電極材料は、リチウム系二次電池に好適に用いることができる。
本発明に係る電極材料は、二次電池のみならず、キャパシタにおいても、その優れた電気化学的特性を発揮し得る。
また、本発明に係る電極材料は、二次電池およびキャパシタの正極材料として好適に用いることができるのみならず、エレクトロクロミック表示材料、有機半導体としての電子供与体および受容体の材料等にも応用可能である。
本発明に係る電極材料は、上記式(1)で表される硫黄含有芳香族ポリマーからなるものである。
すなわち、本発明に係る電極材料である式(1)に示す化合物は、レドックス活性物質であるTTNをモノマーユニットに含み、TTNのポリマー化手段としてイミノ結合を用いて芳香族環を連結させ、該連結部を2個のイミノ結合を対称位置に含む環構造、または、1個のイミノ結合で連結したものである。
このため、分子量の低減により、モノマーユニット当たりの理論容量を258mAh/gから289mAh/gに増大させることができる。
したがって、1S/cm以上の金属に近い導電率を発現することができ、電極作製時に、活物質に添加される炭素粒子等の導電助剤の使用量の低減化が可能であるという利点も有している。
具体的には、例えば、既報論文(E.Klingsberg et.al., Tetrahedron,28,963-965(1972))に基づいて合成される2,3,6,7-tetrachloro-1,4,5,8-tetrathionaphthalene(以下、TTN−4Clと略記する。)を原料として、下記反応式に示すように、有機溶媒中でナトリウムアミドと還流反応させることにより、イミノ結合を連結部とするTTNのポリマー(以下、poly(TTN)と略記する。)を合成することができる。
また、有機溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリジノン(NMP)等の非プロトン性溶媒を用いることが好ましい。
また、反応温度は100〜200℃であることが好ましく、1〜48時間程度で行うことができる。
前記電極は、充放電の初期段階から、室温付近でも0.1〜3mA/cm2程度の実用的な電流密度を達成することができる。
前記金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等のレッドクス活性物質、また、poly(TTN)を層間に固定可能な層状金属化合物である五酸化バナジウム(V2O5)等が挙げられる。
また、金属錯体としては、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFeO4)等のリチウム塩等を例示することができる。
前記基板の形状は、poly(TTN)によるレドックス活性膜を形成できるものであれば、特に限定されないが、表面に凹凸を有するもの、または、網状のもの等が被覆膜との接触面積が大きく、好ましい。
前記負極は、金属リチウム、リチウム−アルミニウム等のリチウム合金、または、炭素等のリチウムインターカレーション材料により構成することができる。これらの材料は、電池の軽量化の観点から、箔の形態で使用されることが好ましい。
前記非水系電解液の濃度は、溶質の種類やイオン伝導性の目標レベルに応じて、適宜定めることができるが、約0.1〜3mol/l、好ましくは、0.5〜2mol/lの範囲である。
前記ポリマーとしては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、または、これらの共重合体や、ポリエチレンとポリエチレングリコールのグラフト重合体等が挙げられる。
前記電極材料は、キャパシタにおいても、エネルギー密度の向上に寄与し得るものである。
また、前記非水系溶媒としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物を単独で、または、他の有機溶媒と混合して使用することができる。
(TTN−4Clの合成)
オクタクロロナフタレン15gと硫黄6gを200mlフラスコに入れ、窒素気流下で310℃まで昇温した。途中で二塩化硫黄が大量発生したが、310℃で約20分間保持した後、放冷した。
室温まで冷却した後、二硫化炭素での還流および洗浄を2度繰り返した。
ろ過後、真空乾燥を行い、TTN−4Clを収率75%で得た。
なお、生成物の元素分析測定の結果、C:30.8%、H:0.2%以下、S:33.7%、Cl:36.3%(重量比)であり、TTN−4Clの理論値(C:30.8%、S:32.8%、Cl:36.4%(重量比))とほぼ一致していた。
TTN−4Clを390mgとナトリウムアミド156mgとを粉砕混合し、DMF溶媒100ml中に投入した。反応溶液は、アルゴンガスでバブリングし、不活性ガス置換を行った。
バブリングを継続したまま、反応溶液を160℃まで昇温し、加熱還流を24時間行ったところ、反応溶液中に黒色粉末が析出していた。
得られた黒色粉末を、水、アセトン、DMFで還流および洗浄を繰り返し、未反応原料を除去した。
ろ過後、100℃で真空乾燥を行い、目的化合物を195mg得た。生成物がpoly(TTN)と仮定した場合の収率は約70%であった。
(元素分析)
前記生成物の元素分析測定の結果、C:43.0%、H:0.7%、N:10.3%、S:46.5%(重量比)であり、poly(TTN)(分子式:(C10H2N2S4)n)の理論値(C:43.2%、H:0.72%、N:10.1%、S:46.0%(重量比))とほぼ一致していた。
また、赤外分光スペクトル測定の結果、得られた生成物の赤外分光スペクトルは、原料であるTTN−4Clとは異なり、新たに、1100〜1200cm-1に比較的強い数本のピークが検出された。
これは、伸縮振動が1050〜1250cm-1の領域に生じるC−N結合に帰属するものと推定され、TTNモノマー間がC−N結合で連結されたことを示唆している。
ポリマー化における原料であるTTN−4Clと得られたpoly(TTN)について、熱重量分析を行った。
TTN−4Clについては、300℃付近から急激な重量減少が見られたが、これと比較して、生成物であるpoly(TTN)は300℃からの急激な重量減少は見られなかった。
このことから、生成物は、重合反応が進行したオリゴマーまたはポリマーであると推測される。
生成物70mgを、分散媒としてNMPを用いて分散させ、導電助剤としてカーボンブラック粉末20mgおよびバインダーのポリマー10mgを加えてペースト状にした。これをアルミニウム箔に塗布し、乾燥して、電池正極とした。電極の厚さは約30μmであった。
この電極を20mm×20mmに切断し、アルミニウム金属をタブ付けして、正極とした。
電池負極には、30mm×30mmに切断した金属リチウムを用いた。
電解液は、エチレンカーボネート(EC)/ジエチルカーボネート(DEC)の混合液(重量比1/3)に、電解質塩として四フッ化ホウ酸リチウムを用い、1.0M電解液を調製した。
その際の放電容量は、活物質であるpoly(TTN)に対して約270mAh/gと理論容量(289mAh/g)に近い結果となった。
図1に、サイクル特性の評価結果を示す。poly(TTN)は、ポリマー化の原料であるTTN−4Clに比べて、充放電の繰り返しによっても、電気容量はほとんど低下することなく、良好なサイクル特性を示すことが認められた。
背景技術において述べたpoly(TTN)(チオエーテル(−S−)連結ポリマー)と本生成物poly(TTN)(イミノ(−NH−)連結ポリマー)とをそれぞれ用いて、上記手法により、2種類の電池を作製した。
各電池に、3.8Vの電圧において10mVの交流電圧を印加して、交流インピーダンス測定を行い、コール−コールプロットを解析することにより、アニオンドープ時の電極抵抗の比較を行った。
この結果は、イミノ基連結部にアニオンがドープされることによって、電極の導電性が向上したことを示唆している。すなわち、他の導電性高分子(例えば、ポリアニリン)と同様に、アニオンドープに伴い、イミノ基で連結されたpoly(TTN)がπ共役電子系を形成していると考えられ、イミノ基(−NH−)で連結したことによる導電性の向上が確認された。
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