JP4948608B2 - 粉末ミックス、食品および粉末ミックス用配合材料 - Google Patents
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Description
しかし、ゼラチンを溶かして溶液を得る際において、加熱のための手間と時間を要し、また、冷却固化させる際にも、加熱工程を経た分だけ、冷却にエネルギーと時間が余分に必要となる。
そのため、近時、非加熱タイプの粉末ミックスが提案されている。非加熱タイプとは、常温以下の水や牛乳に加えて撹拌混合した後、加熱することなく冷却固化させるものを言う。
ゼラチンを用いた非加熱タイプの粉末ミックスも提案されている。具体的には、例えば、水可溶性ゼラチンに所定の乳化剤を配合した水可溶性ゼラチン組成物(特許文献4参照)、冷水可溶性顆粒状ゼラチン(特許文献5参照)、無定形分子状態の魚ゼラチンを乾燥・粉砕し、必要に応じて顆粒化してなる低温ゲル化性ゼラチン(特許文献6参照)などが提案されている。これらは、冷水可溶性でゲル化能を有するゼラチンにおいて、脱泡性や分散性、低融点(低凝固点)などの特性を改良する工夫が検討されたものであるが、これら従来技術で用いられるゼラチンは、種々な粉末ミックスに用いられる、保形性、増粘性、保水性などの性能を、単独で十分に発揮させる粉末ミックス用配合材料ではない。
その過程において、まず、重量平均分子量が1万〜3万の分解ゼラチン粉末が、常温以下の液体に速やかに溶解するため、この分解ゼラチン粉末を配合した粉末ミックスであれば、常温以下の液体と撹拌混合させて、加熱を行うことなく冷却を行っても、ある程度の性能は発揮させることができるとともに、この非加熱タイプの粉末ミックスを用いて得られる食品は、口溶けの良い優れた食感を与えることに着目した。なお、このように重量平均分子量を1万〜3万に調整した分解ゼラチン粉末について、本出願人は、特に優れた製造方法を既に提案している(特開2009−24036号公報参照)。
そこで、さらなる検討を重ねた結果、上記分解ゼラチン粉末とともに、通常のゼラチン、すなわち、未分解ゼラチンの粉末を併用することを考えた。そして、優れた分散性や滑らかな食感を得させる粉末ミックスとするために、前記未分解ゼラチン粉末は70メッシュ標準篩を通過するものであることが重要であることを見出した。2種のゼラチン粉末のこのような併用により、常温以下の液体と撹拌混合させたのちに加熱を行う必要がないという分解ゼラチン粉末の利点を失うことなく、かつ、分解ゼラチン粉末を多量に使用しなくとも、保形性などの粉末ミックスに求められる諸機能を発揮するものとなり、しかも、分解ゼラチン粉末単独の場合と比べて融点の高いものが得られ、喫食温度帯や喫食時間が制限されないものとなることを見出した。
2種のゼラチン粉末のこのような併用による相乗効果について、本発明者は次のように推測している。すなわち、その保形性を例にとれば、まず、上記分解ゼラチン粉末は、常温以下の液体に完全に溶解し、一方、上記未分解ゼラチン粉末は、常温以下の液体中で1粒1粒が速やかに吸水、膨潤して粒状のゲルとなるという性質を有している。そして、分解ゼラチン粉末は低分子化されているものの、高濃度であればなおゲル化能力を有するのであるが、この分解ゼラチン粉末は、未分解ゼラチン粉末に基づく粒状ゲルの表面、または、未分解ゼラチン粉末が吸水しきれなかった液体に高濃度で溶解することとなり、時間の経過とともに完全なゲル状になると推測されるのである。
本発明にかかる食品は、上記粉末ミックスから得られ、冷やして食される、ことを特徴とする。
そして、本発明にかかる粉末ミックス用配合材料は、重量平均分子量が1万〜3万の分解ゼラチン粉末と、未分解ゼラチンの70メッシュ標準篩通過粉末とからなる、ことを特徴とする。
また、単独であれば保形性などの諸機能を得るために多量を要する分解ゼラチン粉末が、未分解ゼラチン粉末との併用により、単独での使用の場合よりも少量でも十分に所望の機能を発現するため、コスト低減が可能である。
〔粉末ミックス用配合材料〕
本発明の粉末ミックス用配合材料は、以下に詳述する分解ゼラチン粉末と未分解ゼラチン粉末からなる。
<分解ゼラチン粉末>
分解ゼラチン粉末の原料となるゼラチンは、コラーゲンから従来公知の方法で得ることができ、具体的には、例えば、コラーゲンから熱水抽出することにより得ることができる。前記コラーゲンについては、牛や豚などの哺乳動物の骨、皮部分や、サメなどの魚類の骨、皮、鱗部分などから得ることができ、骨などの各種材料に脱脂・脱灰処理、抽出処理など、従来公知の処理を施すことにより得ることが可能である。
前記酵素としては、ゼラチンのペプチド結合を切断することが可能な酵素であれば、特に限定されないが、通常、タンパク質分解酵素あるいはプロテアーゼと呼ばれる酵素が用いられる。具体的には、例えば、コラゲナーゼ、チオールプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、メタルプロテアーゼなどが挙げられ、これらを単独で、あるいは複数組み合わせて用いることができる。前記チオールプロテアーゼとしては、植物由来のキモパパイン、パパイン、プロメライン、フィシン、動物由来のカテプシン、カルシウム依存性プロテアーゼなどが知られている。また、前記セリンプロテアーゼとしては、トリプシン、カテプシンDなどが、前記酸性プロテアーゼとしては、ペプシン、カテプシンDなどが知られている。
前記アルカリとしては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどが挙げられる。
酵素により加水分解した場合には、該酵素を失活させる必要がある。例えば、70〜90℃で加熱処理することにより酵素を失活させることができる。
前記加水分解処理を終えた段階では、分解ゼラチンは加水分解処理液中に分散してゾル状となっている。このゾルに、濾過や遠心分離などの従来公知の固液分離処理を施すことによって、不純物などを除去することが可能である。
分解ゼラチン粉末は可溶性に優れるので、その粒径は、特に限定されず、粉末ミックスに配合される粉末成分として一般的に設定される粒径であってよい。例えば、粒度200〜24メッシュとすることができる。
未分解ゼラチン粉末は、70メッシュ標準篩を通過するという条件を満たすものであれば、その原料や粉末化の方法などは限定されない。70メッシュ標準篩を通過するものであることで、膨潤時に、粒状ゲルごとの食感や集合体となった場合の脆さ(非連結性)は感じにくくなり、滑らかな食感を呈する。分散性や食感を考慮し、好ましくは、粒度200〜70メッシュとする。
未分解ゼラチン粉末の原料となるゼラチンも、分解ゼラチン粉末の原料となるゼラチンと同様、従来公知のものを用いることができる。
未分解ゼラチン粉末が70メッシュ標準篩を通過するものとなるよう粒度調整する方法は、特に限定されず、例えば、粉末化の際の条件を適宜設定したり、あるいは、さらに、粉末化後に、公知の方法で分級すればよい。
〔粉末ミックス〕
本発明の粉末ミックスは、必須の配合材料としてゼラチンを含むものであり、各用途に応じて、他の配合材料をも含むことができる。
前記他の配合材料としては、砂糖、乳糖、ブドウ糖、麦芽糖、オリゴ糖、デキストリン、水あめ、澱粉、加工澱粉などの糖類が好ましく挙げられ、糖類を微粉末として含有させることで、その親水作用により、液体への粉末ミックスの溶解を促進させることができ、ママコの発生を抑制できる利点がある。その他、粉末ミックスを適用する各用途に応じて、各用途に通常使用される材料を配合することができ、例えば、大豆油、ナタネ油、コーン油などから得られる粉末油脂類粉や、グリセリンモノ脂肪酸エステル、シュガーエステル、ナトリウムカゼイネートなどの粉末乳化剤のほか、粉末乳製品類、乾燥卵類、粉末果汁類、粉末調味料類、粉末香料類、増粘多糖類粉末などが挙げられる。
本発明の粉末ミックスにおける必須の配合材料としての上記ゼラチンの配合割合としては、用途に応じて、好適な値は異なるが、例えば、粉末ミックスを液体に投入した際の上記ゼラチンの濃度が1.0〜5.0重量%となることが好ましい。ただし、上記ゼラチン以外の成分として吸水性を持つ糖類を配合する場合にその吸水性の影響を考慮するなど、状況に応じて、適宜調整して良い。
また、必須の配合材料としての上記ゼラチンとして、分解ゼラチン粉末と未分解ゼラチン粉末を併用する際の相互割合についても、特に限定されないが、1:99〜99:1が好ましく、1:9〜9:1がより好ましい。比較的固形分の少ないゼリー類などに適用する場合は、未分解ゼラチン粉末をより多く配合し、比較的固形分の多いプリン類やアイスクリーム類などに適用する場合は分解ゼラチン粉末をより多く配合することで、各用途に望ましい食感を発現させることができる。本発明では、分解ゼラチン粉末と未分解ゼラチン粉末を併用することで、単独では保形性その他の諸機能のために高濃度で使用する必要のある分解ゼラチン粉末の量を低減することができる。具体的には、本発明では、分解ゼラチン粉末を、通常必要とされる濃度(粉末ミックスを液体に投入した際の濃度で6.0重量%)以下の濃度で用いることができる。
本発明の粉末ミックスの適用例としては、例えば、冷やして食される食品、具体的には、冷蔵して食されるものとして、フルーツの果汁やピューレを用いたフルーツゼリーや、インスタントコーヒー粉末やエキスを用いたコーヒーゼリーなどのゼリー類;牛乳や卵を用いたミルクプリンやカスタードプリンなどのプリン類;油脂を用いて気泡させたホイップクリームやムース、ババロアなどのムース類などが挙げられ、また、冷凍して食されるものとして、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベットなどのアイスクリーム類などの冷菓が挙げられる。
なお、以下において、分解ゼラチンの重量平均分子量はパギイ法により測定した。ここで「パギイ法」とは、高速液体クロマトグラフィーを用いたゲル濾過法によって、試料溶液のクロマトグラムを求め、分子量分布を推定する方法である。具体的には、以下の方法により測定した。
試料0.2gを100ml容メスフラスコに取り、0.1Mリン酸二水素カリウムと0.1Mリン酸水素二ナトリウムの等量混合液からなる溶離液を加えて1時間膨張させた後、40℃で60分間加熱して溶かし、室温に冷却後、溶離液を正確に10倍に希釈して、得られた溶液を検液とした。
カラム:Shodex Asahipak GS 620 7Gを2本直列に装着したものを用いた。
流速:1.0ml/分
カラム温度:50℃
測定波長:230nm
上記条件で保持時間を横軸にとり、対応した230nmの吸光度を縦軸にして、試料の分子量分布曲線を作成し、重量平均分子量を算出した。
「酸処理豚皮ゼラチン」(新田ゼラチン社製)1kgを75℃の温水2.0kgに溶解した。前記ゼラチンゾルにタンパク質分解酵素としてパパイン(天野エンザイム社製)を0.2g添加し、前記酵素の加水分解最適条件下となるように温度60℃、pH7.5に調整した。分解ゼラチンの重量平均分子量を調整するために、ゾルの粘度を経時的に測定し、粘度3mPa・sとなった時点で、ゾルを90℃に加熱することにより、酵素を失活させた。
酵素を失活後、煮沸することによって分解ゼラチンゾルを殺菌した後、これをスプレードライヤーによって乾燥・粉末化し、重量平均分子量1万の分解ゼラチン粉末を得た。
製造例1−1において、酵素を失活する際のゾルの粘度を、それぞれ、6mPa・s、9mPa・s、2mPa・s、11mPa・sに変更し、重量平均分子量2万、3万、5千、3万5千の各分解ゼラチン粉末を得た、
〔製造例2〕
「酸処理豚皮ゼラチン」(新田ゼラチン社製)1kgを75℃の温水2.0kgに溶解した。煮沸することによってゼラチンゾルを殺菌した後、これをスプレードライヤーによって乾燥・粉末化したのちに分級し、重量平均分子量10万で70メッシュ標準篩を通過する未分解ゼラチン粉末を得た。
上記各製造例で得た分解ゼラチン粉末および未分解ゼラチン粉末とともに、重量平均分子量10万で42メッシュ標準篩を通過するが70メッシュ標準篩は通過しない大粒径で未分解の酸処理豚皮ゼラチン粉末(新田ゼラチン社製)を用い、表1,表2に示す配合で材料を混合し、各粉末ミックスを得た。
(作業性)
各粉末ミックス70gを、水300gに添加し、撹拌混合した際、速やかに溶解あるいは分散した順に◎、○、△、×とした。水の温度は、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃とし、それぞれについて評価を行った。
上記において、水の各温度は、
「5℃」は作業時に使用する液温として想定した最低温度、
「10℃」は冷蔵庫に保存しておいた液体を使用する際の作業開始時点での目安温度、
「15℃」は冷蔵庫に保存しておいた液体を使用する際の作業完了時点での目安温度、
「20℃」は人が生活する建物(室内)の一般的な温度、また、水道水の目安温度、
「25℃」は作業時に使用する液温として想定した、最高温度、
である。
結果を表1,2に併せて示す。
(保形性)
各粉末ミックス70gを、20℃の水300gで加水し、ミキサーで1分間撹拌混合したのち、容器に90gずつ充填し、冷蔵庫(5℃)で12時間冷却固化して、ゼリーを調製した。
(食感)
上記保形性試験の方法で得られた各ゼリーについて、弾力感の評価はゼラチンゼリーとして適当な弾力感を有する順に◎、○、△、×とし、口溶け感の評価はより味立ちに優れ、滑らかな食感を有するものから順に◎、○、△、×で評価した。結果を表1,2に併せて示す。
表1に示す結果から、実施例1〜6全てが作業性、保形性、食感のいずれの評価においても○以上の合格レベルに達しており、非加熱タイプでありながら、ゼリー用粉末ミックスに要求される性能(ここでは保形性)を発揮し、優れた食感をも与えるものであることが分かる。特に、実施例1〜4では、5℃の水にも速やかに溶解することが分かり、このことは、例えば、冷蔵下の液体を常温に戻すことなくそのまま使用し得ることを意味するものであり、非加熱タイプの粉末ミックスとして非常に優れたものと評価できる。
これに対して、重量平均分子量が1万未満の分解ゼラチン粉末を用いる比較例1では、冷水可溶性の分解ゼラチン粉末を用いているため、作業性の評価は合格レベルに達しているが、保形性が十分に発揮されず、食感も弾力感のないものであった。比較例4は、比較例1よりも分解ゼラチン粉末の配合割合を多くしたものであるが、やはり、保形性、弾力感が十分でなく、しかも、口溶け感が失われてしまっていた。
比較例3,6は、未分解ゼラチンの70メッシュ標準篩通過粉末を用いる代わりに、大粒径で未分解のゼラチン粉末(42メッシュ標準篩は通過するが70メッシュ標準篩を通過しないもの)を用いたものであるが、作業性、保形性、食感の全ての評価が合格レベルに達しておらず、特に、配合割合を多くした比較例6での評価が低かった。
実施例1の粉末ミックスで得られたゼリーは、やや柔らかい、滑らかな食感を有するゼリーであった。
実施例2の粉末ミックスで得られたゼリーは、加熱溶解を要する通常のゼラチンゼリーに近い、程よい弾力感と口溶け感を有するゼリーであった。
実施例3の粉末ミックスで得られたゼリーは、加熱溶解を要する通常のゼラチンゼリーに近い、程よい弾力感と極めて優れた口溶け感を有するゼリーであり、さらに、ゼリーの温度帯による食感の変化が極めて少なかった。
実施例5の粉末ミックスで得られたゼリーは、しっかりとした保形性と、加熱溶解を要する通常のゼラチンゼリーのような弾力感とやや重い口溶け感を有するゼリーであった。
実施例6の粉末ミックスで得られたゼリーは、しっかりとした保形性と、加熱溶解を要する通常のゼラチンゼリー以上の弾力感と重い口溶け感を有するゼリーであった。
比較例1の粉末ミックスで得られたゼリーは、柔らかい、べた付きのある食感を有するゼリーであった。
比較例3の粉末ミックスで得られたゼリーは、大きなゼラチン膨潤粒が不均一に集合したような固い食感を有するゼリーであった。
比較例4の粉末ミックスで得られたゼリーは、柔らかく、粘りのあるペースト様の食感を有するゼリーであった。配合割合のみ異なる比較例1の粉末ミックスで得られたゼリーと比べると、未分解ゼラチン粉末のゼリー形成能が阻害される傾向があった。
比較例5の粉末ミックスで得られたゼリーは、加熱溶解を要する通常のゼラチンゼリー以上の強すぎる食感と非常に重い口溶け感を有するゼリーであった。配合割合のみ異なる比較例2の粉末ミックスで得られたゼリーと比べると、未分解ゼラチン粉末のゼリー形成能が阻害される傾向があった。
〔実施例7、比較例7,8〕
製造例1−2で得られた分解ゼラチン粉末、製造例2で得られた未分解ゼラチン粉末を用いて、表3に示す配合で材料を混合し、プリン用の各粉末ミックスを得た。
実施例7、比較例7,8の各粉末ミックス50gを、20℃の牛乳200gに投入し、ミキサーで2分間撹拌混合したのち、3等分して容器に充填し、冷蔵庫(5℃)で2時間冷却固化し、プリンを作製した。このプリンを作製する際の作業性や得られたプリンの性能について、下記の基準で評価を行った。結果を表3に併せて示す。
(作業性)
上記において、ミキサーでの撹拌混合の際、粉末ミックスの牛乳への溶解が速やかであった順に◎、○、△、×とした。
得られたプリンをスプーンですくい、別容器に移した際、均一な組織として保形性を維持できたものから順に、◎、○、△、×で評価した。
(食感)
品温5℃、15℃のそれぞれの条件下で、程よい弾力感と滑らかな口溶け感を有するものから順に◎、○、△、×で評価した。
<考察>
表3に示すように、実施例7の粉末ミックスを用いたプリンは、作業性が○で、他の評価はすべて◎であり、非加熱タイプでありながら、プリン用粉末ミックスに要求される性能(ここでは保形性)を発揮する、極めて優れたプリンであることが分かる。このプリンは、表面に光沢があり、食感に関しては、口溶けが特に良好であった。
また、比較例8の粉末ミックスを用いたプリンは、作業性、保形性の評価は○であるものの、品温5℃での食感、品温15℃での食感は△であった。詳細を述べれば、食感は、品温5℃、品温15℃のいずれにおいても、ややざらつきのある食感であった。
〔実施例8、比較例9,10〕
製造例1−2で得られた分解ゼラチン粉末、製造例2で得られた未分解ゼラチン粉末を用いて、表4に示す配合で材料を混合し、アイスクリーム用の各粉末ミックスを得た。
実施例8、比較例9,10の各粉末ミックス500gを、20℃の牛乳1000gに投入し、ミキサーで3分間撹拌混合したのち、別途準備しておいた生クリーム900gと凍結卵黄(20%加糖品)150gを順に加え、さらに3分間撹拌混合した。これを、バットに流し、冷凍庫(−20℃)で1時間冷却した後、撹拌混合した。さらに2時間冷却し、盛り付け作業を行い、アイスクリームを作製した。このアイスクリームを作製する際の作業性や得られたアイスクリームの性能について、下記の基準で評価を行った。結果を表4に併せて示す。
上記において、ミキサーでの撹拌混合の際、粉末ミックスの牛乳への溶解が速やかであった順に◎、○、△、×とした。
(成形性)
アイスクリームの盛り付け作業時に、スプーンですくい易く、より均一な表面組織を有する順に◎、○、△、×とした。
(保形性)
常温下で10分経過した後、アイスクリームの溶解が緩やかで、盛り付け作業後の原形をより長く維持できたものから順に、◎、○、△、×で評価した。
品温−8℃において、ソフトで滑らかな口溶け感を有するものから順に◎、○、△、×で評価した。
<考察>
表4に示すように、実施例8の粉末ミックスを用いたアイスクリームは、作業性、食感が○で、他の評価はすべて◎であり、非加熱タイプでありながら、アイスクリーム用粉末ミックスに要求される性能(ここでは成形性、保形性)を発揮し、食感にも優れる、極めて優れたアイスクリームであることが分かる。
また、比較例10の粉末ミックスを用いたアイスクリームは、作業性の評価は○であるものの、その他の評価は全て×であった。特に、成形性試験では、冷却固化が十分でなく、液様であり、成形が困難であった。
さらに、実施例8の方が、比較例9よりも分解ゼラチン粉末の量を低減できている点で優位性がある。
製造例1−2で得られた分解ゼラチン粉末、製造例2で得られた未分解ゼラチン粉末を用いて、表5に示す配合で材料を混合し、ゼリー用の各粉末ミックスを得た。
実施例9、比較例11,12の各粉末ミックス350gを、20℃の水600gに投入し、ミキサーで2分間撹拌混合したのち、ミックス野菜ジュース(業務用、3倍希釈品)400gを投入し、さらに1分間静かに撹拌混合した。これを、容器に100gずつ充填し、冷蔵庫(5℃)で2時間冷やし固めた。このゼリーを作製する際の作業性や得られたゼリーの性能について、下記の基準で評価を行った。結果を表5に併せて示す。
(作業性)
上記において、ミキサーでの撹拌混合の際、粉末ミックスのミックス野菜ジュースへの溶解が速やかであった順に◎、○、△、×とした。
得られたゼリーをスプーンですくい、別容器に移した際に、均一な組織として保形性を維持できたものから順に、◎、○、△、×で評価した。
(保水性)
品温10℃において、ゼリー作製から24時間経過後、経時的な変化がなく、安定した組織を有するものから順に◎、○、△、×で評価した。
(食感)
品温10℃において、程よい弾力感と滑らかな口溶け感を有するものから順に◎、○、△、×で評価した。
表5に示すように、実施例9の粉末ミックスを用いたゼリーは、作業性が○で、他の評価はすべて◎であり、非加熱タイプでありながら、ゼリー用粉末ミックスに要求される性能(ここでは保形性、保水性)を発揮し、食感にも優れる、極めて優れたゼリーであることが分かる。
一方、比較例11の粉末ミックスを用いたゼリーは、保水性の評価は○であるものの、食感の評価は△であり、作業性、保形性の評価が×であった。詳細を述べれば、作業性試験では、撹拌混合時にママコが生じてしまい、保形性試験では、すぐに崩れてしまうものであり、また、食感は柔らかいゲル様の食感であった。
さらに、実施例9の方が、比較例11よりも分解ゼラチン粉末の量を低減できている点で優位性がある。
〔実施例10、比較例13,14〕
製造例1−2で得られた分解ゼラチン粉末、製造例2で得られた未分解ゼラチン粉末を用いて、表6に示す配合で材料を混合し、インスタントムースベース用の各粉末ミックスを得た。
実施例10、比較例13,14の各粉末ミックス100gを、100gの砂糖と粉体混合した。この粉体混合物を200gのフルーツピューレにふり入れて、ヘラを用いて2分間撹拌混合した。これを、生クリーム900gをホイップして得たクリームに加えて、さらに撹拌混合を行った。撹拌混合後、容器に定量充填し、冷蔵庫(5℃)で1時間冷やし固めてから、盛り付け作業を行った。このムースベースを作製する際の作業性や得られたムースベースの性能について、下記の基準で評価を行った。結果を表6に併せて示す。
(作業性)
上記において、フルーツピューレとの撹拌混合の際、粉末ミックスの溶解が速やかであった順に◎、○、△、×とした。
容器への充填や成形作業時に、より扱い易く、安定した物性を有する順に、◎、○、△、×で評価した。
(保水性)
品温10℃において、盛り付け作業から24時間後、経時的に変化がなく、安定した組織を有する順に◎、○、△、×で評価した。
(食感)
品温10℃において、ソフトで滑らかな口溶け感を有するものから順に◎、○、△、×で評価した。
表6に示すように、実施例10の粉末ミックスを用いたムースベースは、全ての評価が◎であり、非加熱タイプでありながら、ムースベース用粉末ミックスに要求される性能(ここでは成形性、保水性)を発揮し、食感にも優れる、極めて優れたムースベースであることが分かる。
一方、比較例13の粉末ミックスを用いたムースベースは、成形性、保水性、食感の評価は○であるものの、作業性の評価は△であり、非加熱タイプの粉末ミックスとしての使用には不向きであった。詳細を述べれば、作業性試験では、撹拌混合時にママコが生じてしまうものであった。また、成形性、食感は○であり、一応合格レベルには達しているが、成形性試験ではややダレ易い傾向が認められ、また、食感もやや重たいものであって、これらの評価が◎である実施例10よりも明らかに性能の劣るものであった。
さらに、実施例10の方が、比較例13よりも分解ゼラチン粉末の量を低減できている点で優位性がある。
Claims (3)
- 必須の配合材料としてゼラチンが含まれており、前記ゼラチンとして、重量平均分子量が1万〜3万の分解ゼラチン粉末と、未分解ゼラチンの70メッシュ標準篩通過粉末を併用してなる、粉末ミックスであって、
前記分解ゼラチン粉末と、前記未分解ゼラチンの70メッシュ標準篩通過粉末との割合が、10:90〜99:1である、粉末ミックス。 - 請求項1に記載の粉末ミックスから得られ、冷やして食される、食品。
- 重量平均分子量が1万〜3万の分解ゼラチン粉末と、未分解ゼラチンの70メッシュ標準篩通過粉末とからなる、粉末ミックス用配合材料であって、
前記分解ゼラチン粉末と、前記未分解ゼラチンの70メッシュ標準篩通過粉末との割合が、10:90〜99:1である、粉末ミックス用配合材料。
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