以下、本発明の実施の形態に係る放送電波識別方法、アナログ放送受信装置およびデジタル放送受信装置を、図面に基づいて説明する。アナログ放送受信装置は、実施の形態1においてアナログラジオ放送受信装置を例に説明する。デジタル放送受信装置は、実施の形態2においてデジタルラジオ放送受信装置を例に説明する。放送電波識別方法は、これらの放送受信装置の動作の一部として説明する。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るアナログラジオ放送受信装置1を示すブロック図である。このアナログラジオ放送受信装置1は、アナログラジオ放送電波とデジタルラジオ放送電波とが混在するAM(Amplitude Moduration)周波数帯中のアナログラジオ放送電波を受信するものである。
図2は、AM方式で変調されたアナログラジオ放送電波と、たとえばDRM(Digital Radio Mondiale)方式のデジタルラジオ放送電波とが混在するAM周波数帯の一例を示す説明図である。図2の横軸は周波数であり、縦軸は電界強度である。図2のAM周波数帯には、複数のAMラジオ放送電波と複数のDRMラジオ放送電波とが交互に配置されている。
AMラジオ放送電波の電界強度分布は、そのチューニング周波数、たとえば左側のa1を中心として、たとえばプラスマイナス9kHzの帯域範囲に広がる略三角形のスペクトラムの包絡線を有する。なお、スペクトラムが広がる帯域範囲は、プラスマイナス10kHzなどであってもよい。また、DRMラジオ放送電波の電界強度分布は、そのチューニング周波数、たとえば左側のd1を中心として、たとえばプラスマイナス9kHzの帯域範囲に広がる略矩形のスペクトラムの包絡線を有する。
図1のアナログラジオ放送受信装置1は、1つのチューナ部として、アンテナ11、高周波増幅回路12、生成手段の一部としての局部発振回路13、生成手段の一部としてのミキサ回路14、IF(中間周波数)増幅回路15、復調手段としてのAM検波回路16、低周波増幅回路17、スピーカ18を有する。アンテナ11は、電波を受信する。高周波増幅回路12は、受信電波による高周波信号を増幅する。局部発振回路13は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)31、分周回路32、発振回路33、比較回路34およびLPF(Low Pass Filter)35を有し、発振回路33が生成する所定の周波数の発振信号を分周回路32に設定された分周率により分周した局発信号を出力する。ミキサ回路14は、高周波増幅回路12により増幅された高周波信号と局発信号とを混合し、高周波信号より低い周波数帯成分を有する中間周波数信号を生成する。IF増幅回路15は、このミキサ回路14により生成された中間周波数信号を増幅する。AM検波回路16は、IF増幅回路15により増幅された中間周波数信号から、音声帯域信号(アナログラジオ放送信号)を復調する。低周波増幅回路17は、AM検波回路16により復調された音声帯域信号を増幅する。スピーカ18は、低周波増幅回路17により増幅された音声帯域信号に基づく音を出力する。この構成により、アナログラジオ放送受信装置1は、分周回路32に設定された分周率に応じた周波数帯のアナログラジオ放送電波を受信し、その電波のアナログラジオ放送信号による音をスピーカ18から出力することができる。
また、図1のアナログラジオ放送受信装置1は、この他にも、中間周波数測定回路21、電界強度検出回路22、マイクロコンピュータ23などを有する。
中間周波数測定回路21は、ミキサ回路14が生成した中間周波数信号の中間周波数を測定する。中間周波数測定回路21は、測定した中間周波数の情報をマイクロコンピュータ23へ出力する。なお、中間周波数測定回路21は、たとえば、中間周波数信号の所定の帯域(たとえば各放送電波の帯域に相当するプラスマイナス9kHz)を、図示外の複数のバンドパスフィルタにより複数の狭帯域(たとえば1kHz毎の狭帯域)成分に分離し、その中の最も電界強度が高い狭帯域成分の中央値を、中間周波数信号の測定した中間周波数とすればよい。
電界強度検出回路22は、IF増幅回路15により増幅された中間周波数信号を用いて、その中間周波数成分の電界強度の強さを検出する。電界強度検出回路22は、検出した電界強度の強さの情報をマイクロコンピュータ23へ出力する。なお、電界強度検出回路22は、図示外のバンドパスフィルタにより中間周波数信号から中間周波数成分を抽出し、その抽出した中間周波数成分の電界強度の強さを検出すればよい。
マイクロコンピュータ23は、図示外のCPU(Central Processing Unit)、メモリ24などを有する。CPUは、メモリ24に記憶される図示外のプログラムを読み込んで実行する。これにより、マイクロコンピュータ23には、サーチ周波数設定部26、オフセット周波数設定部27、サーチ制御部28などの機能が実現される。また、メモリ24は、サーチ周波数データ29、電界強度データ30を記憶する。
サーチ周波数設定手段および中間周波数判断手段としてのサーチ周波数設定部26は、アナログラジオ放送受信装置1が受信する周波数帯を所定のサーチ間隔(たとえば9kHz間隔や10kHz間隔)でサーチするための複数のサーチ周波数を、分周回路32に設定する。実際には、サーチ周波数設定部26は、各サーチ周波数に対応する分周率を分周回路32に設定する。また、サーチ周波数設定部26は、中間周波数測定回路21が測定する中間周波数と、電界強度検出回路22が検出する中間周波数成分の受信電界強度とに基づいて、設定したサーチ周波数においてラジオ放送電波が検出されたか否かを判断する。さらに、サーチ周波数設定部26は、ラジオ放送電波を検出したと判断した場合、その時のサーチ周波数の値と受信電界強度の値とをメモリ24に記憶させる。これにより、メモリ24には、サーチ周波数設定部26によりラジオ放送電波が検出されたときのサーチ周波数データ29と電界強度データ30とが記憶される。
オフセット周波数設定手段としてのオフセット周波数設定部27は、メモリ24に記憶されているサーチ周波数(サーチ周波数データ29の値)を基準として、サーチ間隔より小さい所定の周波数(たとえば5kHz)で高周波側にずれたオフセット周波数と、低周波側にずれたオフセット周波数とを、分周回路32に設定する。実際には、オフセット周波数設定部27は、各オフセット周波数に対応する分周率を分周回路32に設定する。また、オフセット周波数設定部27は、メモリ24に記憶されている電界強度データ30と電界強度検出回路22が検出する中間周波数成分の受信電界強度を用いて、設定したオフセット周波数での電界強度差を演算し、その電界強度差と所定の閾値(後述する第二閾値T2)との比較結果に基づいて、AMラジオ放送電波が検出されたか否かを判断する。
サーチ制御手段としてのサーチ制御部28は、AMラジオ放送電波のサーチ動作の終了処理を実行する。サーチ制御部28は、メモリ24に記憶されているサーチ周波数(サーチ周波数データ29の値)を、分周回路32に設定する。実際には、サーチ制御部28は、メモリ24に記憶されているサーチ周波数に対応する分周率を分周回路32に設定する。
次に、以上の構成を有する実施の形態1に係るアナログラジオ放送受信装置1による受信サーチ動作を説明する。アナログラジオ放送受信装置1は、図示外のサーチボタンの操作に基づいて、受信サーチ動作を開始する。
図3は、図1のアナログラジオ放送受信装置1による受信サーチ動作の流れを示すフローチャートである。受信サーチ動作では、まず、サーチ周波数設定部26が、最初のサーチ周波数を分周回路32に設定する(ステップST1)。この最初のサーチ周波数は、たとえばアナログラジオ放送受信装置1が受信する周波数帯の最も低い周波数とすればよい。
局部発振回路13の分周回路32は、VCO31が生成する局発信号をその設定に応じた分周率で分周する。比較回路34は、分周回路32により分周された信号と発振回路33が生成する発振信号とを比較し、それらの位相差に応じた波形の信号を出力する。LPF35は、この位相差に応じた波形の信号からレベル信号を生成する。VCO31は、このレベル信号のレベルに応じた周波数の局発信号を生成する。これにより、LPF35の出力レベルが安定した状態においては、VCO31は、発振信号を所定の分周率で分周した局発信号を生成する。
局部発振回路13のVCO31が生成した局発信号は、ミキサ回路14へ供給される。ミキサ回路14は、アンテナ11で受信された高周波信号とこの局発信号とを混合し、中間周波数信号を生成する。この中間周波数信号は、IF増幅回路15により増幅される。また、中間周波数測定回路21は、このミキサ回路14が生成した中間周波数信号の中間周波数を測定し、電界強度検出回路22は、IF増幅回路15により増幅された中間周波数信号から、受信した中間周波数成分の受信電界強度の強さを検出する。
分周回路32に最初のサーチ周波数を設定した後、サーチ周波数設定部26は、電界強度検出回路22から供給される受信電界強度の強さが、所定の第一閾値T1以上であるか否かを判断する(ステップST2)。
図4は、AMラジオ放送電波とDRMラジオ放送電波との識別方法を示す説明図である。図4には、AMラジオ放送電波とDRMラジオ放送電波とがそれらのチューニング周波数において重なるように描画されている。図4に示すように、第一閾値T1は、DRMラジオ放送電波のチューニング周波数の受信電界強度より低く、且つ、AMラジオ放送電波のチューニング周波数の受信電界強度より低く設定されている。
したがって、たとえば最初のサーチ周波数にラジオ放送電波が存在する場合、サーチ周波数設定部26は、ステップST2において電界強度検出回路22から供給される中間周波数成分の受信電界強度の強さが、所定の第一閾値T1以上であると判断する。逆に、最初のサーチ周波数にラジオ放送電波が存在しない場合、サーチ周波数設定部26は、ステップST2において電界強度検出回路22から供給される中間周波数成分の受信電界強度の強さが、所定の第一閾値T1以上ではないと判断する。
後者の場合(ステップST2においてNoの場合)、サーチ周波数設定部26は、分周回路32に次のサーチ周波数を設定し(ステップST1)、再び受信電界強度の強さが第一閾値T1以上であるか否かを判断する(ステップST2)。分周回路32に設定される周波数が変化すると、高周波信号から中間周波数として抽出される周波数帯が変化する。したがって、電界強度検出回路22および中間周波数測定回路21の測定対象である中間周波数信号も変化する。また、サーチ周波数設定部26は、ステップST2において受信電界強度の強さが第一閾値T1以上であると判断するまで、分周回路32への次のサーチ周波数の設定処理(ステップST1)を繰り返す。
設定したサーチ周波数にラジオ放送電波が存在し、その結果として電界強度検出回路22から供給される中間周波数成分の受信電界強度の強さが第一閾値T1以上であると判断すると、サーチ周波数設定部26は、次に、そのときに中間周波数測定回路21が測定している中間周波数が、たとえば分周回路32に設定したサーチ周波数を基準として、所定の中間周波数公差(たとえばプラスマイナス1kHz)以内であるか否かを判断する(ステップST3)。
測定された中間周波数が所定の公差以内でない場合(ステップST3においてNoの場合)、サーチ周波数設定部26は、分周回路32にさらに次のサーチ周波数を設定し(ステップST1)、その新たな設定の下での上述した2つの判断処理(ステップST2およびST3)を繰り返す。
測定された中間周波数が所定の公差以内である場合(ステップST3においてYesの場合)、サーチ周波数設定部26は、そのとき設定しているサーチ周波数と、そのとき計測されている受信電界強度の強さとをメモリ24に保存する。これにより、メモリ24には、サーチ周波数データ29および電界強度データ30として、ラジオ放送電波が検出されたときのサーチ周波数と受信電界強度の強さとが記憶されることになる。
メモリ24に新たなサーチ周波数データ29および電界強度データ30が記憶されると、オフセット周波数設定部27は、メモリ24からサーチ周波数データ29を読み込み、その読み込んだサーチ周波数より所定の周波数(たとえば5kHz)で高周波側にずれたオフセット周波数を、分周回路32に設定する(ステップST4)。また、オフセット周波数設定部27は、メモリ24に記憶されている受信電界強度を基準として、その時に測定される中間周波数の受信電界強度の電界強度差が所定の第二閾値T2以上であるか否かを判断する(ステップST5)。
メモリ24に記憶されるサーチ周波数がAMラジオ放送電波あるいはDRMラジオ放送電波のチューニング周波数であるとき、この高周波側にずれたオフセット周波数によりその放送電波の高周波側の一部の信号成分が中間周波数信号として抽出される。たとえば、図4で言えば、チューニング周波数から5kHz高周波側にずれた周波数成分が中間周波数成分として抽出されるようになる。この5kHz高周波側にずれた周波数成分の受信電界強度は、チューニング周波数の受信電界強度と比較したとき、DRMラジオ放送電波の場合には殆ど低下していないが、AMラジオ放送電波の場合には大きく低下している。第二閾値T2は、このDRMラジオ放送電波でのチューニング周波数とその+5kHzとにおいて生じ得る最大の電界強度差より大きく、且つ、AMラジオ放送電波でのチューニング周波数とその+5kHzとにおいて生じ得る最小の電界強度差より小さい値に設定されている。
したがって、オフセット周波数設定部27は、メモリ24に記憶されているサーチ周波数がAMラジオ放送電波のチューニング周波数である場合、ステップST5において電界強度差が所定の第二閾値T2以上であると判断し、メモリ24に記憶されているサーチ周波数がDRMラジオ放送電波のチューニング周波数である場合、電界強度差が所定の第二閾値T2以上でないと判断する。後者の判断の場合(ステップST5においてNoの場合)、サーチ周波数により受信したラジオ放送電波はAMラジオ放送電波ではないので、サーチ周波数設定部26は、再びサーチ周波数の設定処理を開始する(ステップST1)。サーチ周波数設定部26は、メモリ24に記憶させたサーチ周波数の次のサーチ周波数を、分周回路32に設定する。
高周波側のオフセット周波数での電界強度差が所定の第二閾値T2以上であると判断した場合(ステップST5においてYesの場合)、オフセット周波数設定部27は、さらに、メモリ24に記憶されているサーチ周波数より所定の周波数(たとえば5kHz)で低周波側にずれたオフセット周波数を、分周回路32に設定する(ステップST6)。また、オフセット周波数設定部27は、メモリ24に記憶されている受信電界強度を基準として、その時に測定される中間周波数の受信電界強度の電界強度差が所定の第二閾値T2以上であるか否かを判断する(ステップST7)。
メモリ24に記憶されているサーチ周波数がAMラジオ放送電波のチューニング周波数である場合、オフセット周波数設定部27は、このステップST7での二回目の判断においても電界強度差が所定の第二閾値T2以上であると判断し、それ以外の場合には、電界強度差が所定の第二閾値T2以上でないと判断する。後者の判断の場合(ステップST7においてNoの場合)、サーチ周波数により受信したラジオ放送電波はAMラジオ放送電波ではないので、サーチ周波数設定部26は、再びサーチ周波数の設定処理を開始する(ステップST1)。サーチ周波数設定部26は、メモリ24に記憶させたサーチ周波数の次のサーチ周波数を、分周回路32に設定する。
二回目の判断においても電界強度差が所定の第二閾値T2以上であるとオフセット周波数設定部27が判断した場合(ステップST7においてYesの場合)、サーチ制御部28は、メモリ24からサーチ周波数データ29を読み込み、その読み込んだサーチ周波数を分周回路32に設定する(ステップST8)。
以上の一連のサーチ処理により、アナログラジオ放送受信装置1における1回の受信サーチ動作が終了する。この1回の受信サーチ動作が終了したとき、分周回路32には、AMラジオ放送電波のチューニング周波数が設定されている。そのため、ミキサ回路14は、AMラジオ放送電波のチューニング周波数を中間周波数とする中間周波数信号を生成する。
その結果、AM検波回路16は、IF増幅回路15から出力される中間周波数信号からAMラジオ放送電波に基づく音声帯域信号を復調し、低周波増幅回路17は、その音声帯域信号を増幅し、スピーカ18は、そのAMラジオ放送電波により放送される音声などを出力する。
以上のように、この実施の形態1のアナログラジオ放送受信装置1は、サーチ周波数設定部26とオフセット周波数設定部27とにより、AMラジオ放送電波とDRMラジオ放送電波とが混在するAM周波数帯を複数のサーチ周波数によりサーチし、AM検波回路16は、AMラジオ放送電波がサーチされたときだけ復調をする。特に、サーチ周波数設定部26およびオフセット周波数設定部27は、局部発振回路13に対して所定のサーチ周波数と所定のオフセット周波数とを設定し、オフセット周波数設定部27は、それぞれの設定の下での中間周波数信号の受信電界強度差と第二の閾値T2とを比較することにより、受信放送電波がAMラジオ放送電波であるか否かを判断している。
したがって、この実施の形態1のアナログラジオ放送受信装置1では、DRMラジオ放送電波を受信し、それにより中間周波数信号の受信電界強度が所定の第一閾値T1以上となったとしても、そこでサーチがストップしてしまうことはない。その結果、AM検波回路16がDRMラジオ放送電波を復調した場合に発生する非常に大きなノイズ(信号)が、AM検波回路16により復調されてしまわないようにすることができる。また、AM検波回路16がDRMラジオ放送電波を復調した場合に発生する非常に大きな音が再生されてしまうことはなく、ユーザに不快感を与えてしまうことがない。
また、この実施の形態1のアナログラジオ放送受信装置1では、受信したラジオ放送電波がAMラジオ放送電波であるかあるいはDRMラジオ放送電波であるかを判断するために、受信する各電波の全体の電力やその一部の電力を演算する必要はない。そのため、このアナログラジオ放送受信装置1は、このような演算を必要とする場合に比べて、より迅速にその判断をすることができる。その結果、たとえば受信サーチなどのようにユーザが待機している状態において次々に受信可能な電波をサーチする場合において、AMラジオ放送電波のみが存在する帯域をサーチする場合と比べて遜色ない速さにて、受信可能な電波を次々にサーチすることができる。
また、この実施の形態1では、ステップST3においてサーチ周波数設定部26が中間周波数信号の中間周波数公差が所定値以内であるか否かを判断し、オフセット周波数設定部27は、中間周波数公差が所定値以内である場合に、ミキサ回路14に対してオフセット周波数を設定している。したがって、ミキサ回路14により所望のサーチ周波数の中間周波数信号が生成されていないときに、オフセット周波数が設定されてしまったり、AM検波回路16により復調がなされてしまったりすることを防止することができる。
また、この実施の形態1では、オフセット周波数設定部27は、ステップST4およびST6において、サーチ周波数より高周波側にずれたオフセット周波数と、低周波側にずれたオフセット周波数とを設定し、サーチ制御部28は、それら2つのオフセット周波数により得られる中間周波数信号の受信電界強度に基づく2つの電界強度差がともに所定の第二閾値T2以上である場合に、サーチ周波数設定部26によるサーチを終了させてAM検波回路16により復調をさせ、それ以外の場合にはサーチ周波数設定部26によるサーチを継続させる。したがって、2つのオフセット周波数における二重のチェックにより、AMラジオ放送電波をDRMラジオ放送電波から確実に識別することができる。仮にたとえばDRMラジオ放送電波において1つのオフセット周波数成分がたまたま少なくなってしまっていたり、サーチ周波数がDRMラジオ放送電波の占有帯域の端にあるような場合であっても、このDRMラジオ放送電波を誤って復調してしまわないようにすることができる。
図5は、サーチ周波数がチューニング周波数ではなく、DRMラジオ放送電波の周波数帯の高周波側にある状況を説明する図である。図5では、高周波側のオフセット周波数においてDRMラジオ放送電波がなくなっているため、ステップST5では、電界強度差が第二閾値T2以上であると判断してしまう。しかしながら、低周波側のオフセット周波数においてDRMラジオ放送電波があるため、ステップST7では、電界強度差が第二閾値T2以上であると判断しない。オフセット周波数設定部27は、ステップST7においてNoと判断する。その結果、サーチ制御部28は、図5の状態の検波をしたときには、そのサーチ周波数においてサーチ処理を終了してしまうことはなく、ひいてはサーチ制御部28がこのときのサーチ周波数を分周回路32に設定してしまうことはない。
その結果、たとえばサーチする周波数帯においてDRMラジオ放送電波とAMラジオ放送電波とが等間隔に整列しておらず、その結果、図5に示すような状況(チューニング周波数とはずれているサーチ周波数によるラジオ放送電波の検出)が生じたとしても、このアナログラジオ放送受信装置1では、図5のDRMラジオ放送電波などを誤って復調することなく、AMラジオ放送電波のみを適切にサーチして復調することができる。
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係るデジタルラジオ放送受信装置2を示すブロック図である。このデジタルラジオ放送受信装置2は、AMラジオ放送電波とDRMラジオ放送電波とが混在する周波数帯中のDRMラジオ放送電波を受信するものである。
図6のデジタルラジオ放送受信装置2は、1つのチューナ部として、アンテナ11、高周波増幅回路12、局部発振回路13、ミキサ回路14、IF増幅回路15、検波回路41、低周波増幅回路17、音声信号生成回路42、スピーカ18を有する。また、デジタルラジオ放送受信装置2は、中間周波数測定回路21、電界強度検出回路22、マイクロコンピュータ23などを有する。マイクロコンピュータ23には、サーチ周波数設定部26、オフセット周波数設定部43、サーチ制御部28などの機能が実現される。
検波回路41は、IF増幅回路15により増幅された中間周波数信号から、DRMラジオ放送信号を復調する。音声信号生成回路42は、低周波増幅器により増幅されたDRMラジオ放送信号から音声信号を生成する。スピーカ18は、音声信号生成回路42により生成された音声信号に基づく音を出力する。
オフセット周波数設定手段としてのオフセット周波数設定部43は、メモリ24に記憶されているサーチ周波数を基準として、サーチ間隔より小さい所定の周波数(たとえば5kHz)で高周波側にずれたオフセット周波数と、低周波側にずれたオフセット周波数とを、分周回路32に設定する。実際には、オフセット周波数設定部43は、各オフセット周波数に対応する分周率を分周回路32に設定する。また、オフセット周波数設定部43は、メモリ24に記憶されている電界強度データ30と電界強度検出回路22が検出する2つの中間周波数成分の受信電界強度を用いて、設定した2つのオフセット周波数での電界強度差を演算し、その2つの電界強度差が共に所定の閾値(後述する第二閾値T2)以内である場合に、DRMラジオ放送電波が検出されたと判断する。
上述した以外の各構成要素は、図1に示すアナログラジオ放送受信装置1の同名の構成要素と同様の機能を有するものであり、実施の形態1と同一の符号を付してその説明を省略する。
図7は、図6のデジタルラジオ放送受信装置2による受信サーチ動作の流れを示すフローチャートである。受信サーチ動作では、まず、サーチ周波数設定部26が、複数のサーチ周波数を分周回路32に順番に設定し(ステップST11)、それぞれのときの電界強度と中間周波数公差とに基づいて、ラジオ放送電波が受信されたか否かを判断する(ステップST12およびST13)。また、サーチ周波数設定部26は、ラジオ放送電波を受信したと判断したときのサーチ周波数と電界強度とをメモリ24に記憶させる。
サーチ周波数設定部26によりラジオ放送電波が受信されたと判断されると、オフセット周波数設定部43は、メモリ24に記憶されるサーチ周波数(サーチ周波数データ29の値)を基準として、そのサーチ周波数より所定の周波数(たとえば5kHz)で高周波側にずれたオフセット周波数を、分周回路32に設定する(ステップST14)。また、オフセット周波数設定部43は、メモリ24に記憶されている受信電界強度(電界強度データ30の値)を基準として、その時に測定される中間周波数の受信電界強度の電界強度差が所定の第二閾値T2以内であるか否かを判断する(ステップST15)。
この高周波側のオフセット周波数での電界強度差が所定の第二閾値T2以内であると判断した場合、オフセット周波数設定部43は、さらに、メモリ24に記憶されているサーチ周波数より所定の周波数(たとえば5kHz)で低周波側にずれたオフセット周波数を、分周回路32に設定する(ステップST16)。また、オフセット周波数設定部43は、メモリ24に記憶されている受信電界強度を基準として、その時に測定される中間周波数の受信電界強度の電界強度差が所定の第二閾値T2以内であるか否かを判断する(ステップST17)。
メモリ24に記憶されているサーチ周波数がDRMラジオ放送電波のチューニング周波数である場合、オフセット周波数設定部43は、ステップST15およびST17の二回の判断において共に電界強度差が所定の第二閾値T2以内であると判断し、それ以外の場合には、電界強度差が所定の第二閾値T2以内でないと判断する。後者の判断の場合、サーチ周波数により受信したラジオ放送電波はDRMラジオ放送電波ではないので、サーチ周波数設定部26は、再びサーチ周波数の設定処理を開始する(ステップST11)。サーチ周波数設定部26は、メモリ24に記憶させたサーチ周波数の次のサーチ周波数を、分周回路32に設定する。
ステップST15およびST17の二回の判断において共に電界強度差が所定の第二閾値T2以内であるとオフセット周波数設定部43が判断した場合、サーチ制御部28は、メモリ24からサーチ周波数(サーチ周波数データ29の値)を読み込み、その読み込んだサーチ周波数を分周回路32に設定する(ステップST18)。
以上の一連のサーチ処理により、デジタルラジオ放送受信装置2における1回の受信サーチ動作が終了する。この1回の受信サーチ動作が終了したとき、分周回路32には、DRMラジオ放送電波のチューニング周波数が設定されている。そのため、ミキサ回路14は、DRMラジオ放送電波のチューニング周波数を中間周波数とする中間周波数信号を生成する。
その結果、検波回路41は、IF増幅回路15から出力される中間周波数信号からDRMラジオ放送信号を復調し、音声信号生成回路42は、このDRMラジオ放送信号から音声信号を生成し、スピーカ18は、この音声信号に基づく音を出力する。
以上のように、この実施の形態2のデジタルラジオ放送受信装置2は、サーチ周波数設定部26とオフセット周波数設定部43とにより、AMラジオ放送電波とDRMラジオ放送電波とが混在するAM周波数帯を複数のサーチ周波数によりサーチし、検波回路41は、DRMラジオ放送電波がサーチされたときだけ復調をする。特に、サーチ周波数設定部26およびオフセット周波数設定部43は、局部発振回路13に対して所定のサーチ周波数と所定のオフセット周波数とを設定し、オフセット周波数設定部43は、ステップST15およびST17において、それぞれの設定の下での中間周波数信号の受信電界強度差と第二の閾値T2とを比較することにより、受信放送電波がDRMラジオ放送電波であるか否かを判断している。
したがって、この実施の形態2のデジタルラジオ放送受信装置2では、AMラジオ放送電波を受信し、それにより中間周波数信号の受信電界強度が所定の第一閾値T1以上となったとしても、そこでサーチがストップしてしまうことはない。
また、この実施の形態2のデジタルラジオ放送受信装置2では、受信したラジオ放送電波がAMラジオ放送電波であるかあるいはDRMラジオ放送電波であるかを判断するために、受信する各電波の全体の電力やその一部の電力を演算する必要はない。そのため、このデジタルラジオ放送受信装置2は、このような演算を必要とする場合に比べて、より迅速にその判断をすることができる。その結果、たとえば受信サーチなどのようにユーザが待機している状態において次々に受信可能な電波をサーチする場合において、AMラジオ放送電波のみが存在する帯域をサーチする場合と比べて遜色ない速さにて、受信可能な電波を次々にサーチすることができる。
また、この実施の形態2では、ステップST13においてサーチ周波数設定部26が中間周波数信号の中間周波数公差が所定値以内であるか否かを判断し、オフセット周波数設定部43は、中間周波数公差が所定値以内である場合に、ミキサ回路14に対してオフセット周波数を設定する。したがって、ミキサ回路14により所望のサーチ周波数の中間周波数信号が生成されていないときに、オフセット周波数が設定されてしまったり、検波回路41により復調がなされてしまったりすることを防止することができる。
また、この実施の形態2では、オフセット周波数設定部43は、サーチ周波数より高周波側にずれたオフセット周波数と、低周波側にずれたオフセット周波数とを設定し、サーチ制御部28は、それら2つのオフセット周波数により得られる中間周波数信号の受信電界強度に基づく2つの電界強度差がともに所定の第二閾値T2以内である場合に、サーチ周波数設定部26によるサーチを終了させて検波回路41により復調をさせ、それ以外の場合にはサーチ周波数設定部26によるサーチを継続させる。したがって、2つのオフセット周波数における二重のチェックにより、DRMラジオ放送電波をAMラジオ放送電波から確実に識別することができる。その結果、たとえばサーチする周波数帯においてDRMラジオ放送電波とAMラジオ放送電波とが等間隔に整列していない場合であっても、AMラジオ放送電波などを誤って復調することなく、また、サーチ周波数がチューニング周波数からずれている状態においてDRMラジオ放送電波を復調し難くなり、DRMラジオ放送電波のみを適切に復調することができる。
以上の各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態の例であるが、本発明は、これに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形や変更が可能である。
上記各実施形態では、オフセット周波数は、サーチ周波数のプラスマイナス5kHzに設定されている。この他にも、オフセット周波数は、たとえば中間周波数公差以上であって、且つ、サーチ間隔以下であればよい。ただし、AMラジオ放送電波が山形の法絡線となったり、DRMラジオ放送電波の法絡線が台形化したりする可能性を考慮して、それらを好適に判別するために、オフセット周波数は、サーチ周波数の40%以上且つ60%以下の範囲内の所定の周波数ずれたものとするのが望ましい。
上記各実施の形態では、アナログラジオ放送受信装置1およびデジタルラジオ放送受信装置2は、1つのチューナ部を有する。この他にもたとえば、アナログラジオ放送受信装置1およびデジタルラジオ放送受信装置2は、2つあるいはそれ以上のチューナ部を有するものであってもよい。
図8は、2つのチューナ部を有するアナログラジオ放送受信装置3の変形例を示すブロック図である。このアナログラジオ放送受信装置3は、アンテナ11、高周波増幅回路12、局部発振回路13、ミキサ回路14、IF増幅回路15、AM検波回路16、低周波増幅回路17、スピーカ18、中間周波数測定回路21、および電界強度検出回路22からなる第一チューナ部51と、アンテナ61、高周波増幅回路62、他の生成手段の一部としての局部発振回路63、他の生成手段の一部としてのミキサ回路64、IF増幅回路65、および電界強度検出回路66からなる第二チューナ部52と、を有する。
また、マイクロコンピュータ23には、サーチ周波数設定手段および中間周波数判断手段としてのサーチ周波数設定部53、オフセット周波数設定手段としてのオフセット周波数設定部54、サーチ制御手段としてのサーチ制御部55などの機能が実現される。なお、各構成要素は、図1に示す実施の形態1の同名の構成要素と同様の機能を有するものであり、その説明を省略する。
図9は、図8の変形例のアナログラジオ放送受信装置3による受信サーチ動作の流れを示すフローチャートである。この変形例の場合、サーチ周波数設定部53は、ラジオ放送電波を受信した(ステップST23においてYes)と判断するまで、サーチ周波数を第一チューナ部51の局部発振回路13に設定し(ステップST21)、サーチ周波数データ29のみをメモリ24に記憶させる。また、オフセット周波数設定部54は、第二チューナ部52の局部発振回路63に、メモリ24に記憶されるサーチ周波数(サーチ周波数データ29の値)を基準とした高周波側のオフセット周波数と低周波側のオフセット周波数とを設定し(ステップST24およびST26)、第一チューナ部51の電界強度検出回路22により検出されているサーチ周波数での電界強度と、第二チューナ部52の電界強度検出回路66により検出されているオフセット周波数での電界強度との電界強度差を、第二閾値T2と比較している(ステップST25およびST27)。そして、この2回の電界強度差の判断において共に電界強度差が第二閾値T2以上であるとオフセット周波数設定部54により判断されると、サーチ制御部28は、サーチ周波数設定部53およびオフセット周波数設定部54によるサーチ処理を終了させる。
したがって、図8および図9に示す変形例のアナログラジオ放送受信装置3では、メモリ24に電界強度データ30を記憶させたり、サーチ終了時にサーチ制御部28によりメモリ24に記憶されているサーチ周波数を設定させたりする必要はない。この変形例のアナログラジオ放送受信装置3では、図1のアナログラジオ放送受信装置1のように局部発振回路13の分周回路32に対する設定周波数をオフセット周波数からサーチ周波数へ戻す処理をすることなく、AM検波回路16による復調処理を開始することができる。サーチ処理を終えたら直ちに復調を開始させることができる。
上記各実施の形態では、中間周波数測定回路21および電界強度検出回路22,66は、電子回路により実現されている。この他にもたとえば、中間周波数測定回路21および電界強度検出回路22,66の中の少なくとも1つは、マイクロコンピュータ23のメモリ24に記憶される図示外のプログラムをCPUが実行することにより、マイクロコンピュータ23において実現されるようにしてもよい。
なお、このマイクロコンピュータ23のメモリ24に記憶される図示外のプログラムは、アナログラジオ放送受信装置1,3やデジタルラジオ放送受信装置2の出荷前にメモリ24に記憶されたものであっても、アナログラジオ放送受信装置1,3やデジタルラジオ放送受信装置2の出荷後にメモリ24に記憶されたものであってもよい。また、プログラムの一部が、アナログラジオ放送受信装置1,3やデジタルラジオ放送受信装置2の出荷後に記憶されたものであってもよい。このように出荷後にメモリ24に記憶されるプログラムは、たとえばCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)や半導体メモリなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してサーバ装置などからダウンロードしたものであってもよい。
上記各実施の形態では、AMラジオ放送電波とDRMラジオ放送電波とを区別している。この他にも、アナログラジオ放送電波には、FM(Frequency Moduration)ラジオ放送電波などがある。FMラジオ放送電波は、チューニング周波数の上下に分かれた2つの山形状の包絡線の電界強度分布などを有する。また、デジタルラジオ放送電波には、ISDB(Integrated Services Digital Broadcasting)−SB方式のデジタル放送電波、DAB(Digital Audio Broadcast)方式のデジタル放送電波、IBOC(In−band on−channel)方式のデジタル放送電波などがある。これらのデジタル放送電波は、DRMラジオ放送電波と同様の略矩形の包絡線の電界強度分布などを有する。
そして、本発明のアナログラジオ放送受信装置1,3やデジタルラジオ放送受信装置2は、これらの中から選択されたアナログラジオ放送電波とこれらの中から選択されたデジタルラジオ放送電波とを識別し、所定のラジオ放送電波を受信するものであってもよい。さらに他にもたとえば、ラジオ放送受信装置は、アナログ放送電波およびデジタル放送電波をサーチにおいて識別し、その識別に応じてアナログ放送電波およびデジタル放送電波を受信するものであってもよい。
また、本発明は、たとえば短波帯、長波帯などのAM帯(中波帯)以外のラジオ放送帯域をサーチして受信するラジオ放送受信装置や、VHF(Very High Frequency)帯やUHF(Ultra High Frequency)帯のテレビジョン放送帯をサーチして受信するテレビジョン放送受信装置などにおいても、アナログ放送電波とデジタルラジオ放送電波とを識別して所望の方式の電波を受信するために利用することができる。