JP4942018B2 - 抗アカラン硫酸抗体とその応用 - Google Patents
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Description
GAG:グリコサミノグリカン
HA:ヒアルロン酸
HEP:ヘパリン
HS:ヘパラン硫酸
EHS−HS:マウスのエンジェルブレス−ホーム−スワーン腫瘍組織(Engelbreth−Holm−Swarm sarcoma)由来のHS
Bi−GAG:ビオチン標識GAG
Bi−HEP誘導体:ビオチン標識HEP誘導体
GlcNS:N−硫酸化グルコサミン
GlcNAc:N−アセチルグルコサミン
IdoA:イズロン酸
IdoA(2S):2−O−硫酸化イズロン酸
NAH:N−アセチルヘパロザン
AS:アカラン硫酸
Bi−AS:ビオチン標識AS
RA−AS:還元アミノ化AS
PDP−AS:2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化AS
SH−AS:チオプロピオニル化AS
ACH:2−O−脱硫酸化AS
NH2−HEP:N−脱硫酸化HEP
NAc−HEP:N−アセチル化−HEP
2DSH;2−O−脱硫酸化HEP
NH2−6SH:(2−O・N)−脱硫酸化HEP
6SH:(2−O・N)−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
6DSH:6−O−脱硫酸化HEP
NAc−6DSH:N−アセチル化6DSH
NSH:(2−O・6−O)−脱硫酸化HEP
NAc−NSH;N-アセチル化NSH
NH2−2SH:(6−O・N)−脱硫酸化HEP
2SH:(6−O・N)−脱硫酸化・N−アセチル化HEP
NH2−CDSH:完全脱硫酸化HEP
CDSH:完全脱硫酸化・N−アセチル化HEP
Ch;コンドロイチン
CS:コンドロイチン硫酸
CS−A(W);クジラ由来コンドロイチン硫酸A
CS−A(S);サメ由来コンドロイチン硫酸A
CS−B;コンドロイチン硫酸B
CS−C;コンドロイチン硫酸C
CS−D;コンドロイチン硫酸D
CS−E;コンドロイチン硫酸E
KS:ケラタン硫酸
HRP:ホースラディッシュペルオキシダーゼ
BSA:ウシ血清アルブミン
KLH:ヘモシアニン
PDP−KLH:2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化KLH
TMB:テトラメチルベンジジン
SPDP:N−スクシンイミジル−3−[2−ピリジルジチオ]プロピオン酸
EDC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
ELISA法:酵素標識抗体測定法
ASは、アフリカマイマイ(学名:Achatina fulica)から単離されたGAGの一種として知られている。ASは、N−アセチルグルコサミンと2−O−サルフォイズロン酸とからなる二糖(−[IdoA(2S)−GlcNAc]−)の繰り返し構造を基本糖鎖構造として有する多糖であり、HS及びHEPと極めて類似した構造を有していることが知られている(非特許文献1)。ASに反応する抗体としては、MW3G3が知られているが、ASに反応し、ウシ腎臓由来のヘパラン硫酸に対して反応しない抗体は知られていない(非特許文献2)。
(1)ASに対して反応し、ウシ腎臓由来のHSに対して実質的に反応しない抗体(以下、「本発明抗体」という)。
(2)ブタ腸由来のHEPに対して実質的に反応しない、上記(1)に記載の抗体。
(3)EHS−HSに対して実質的に反応しない、上記(1)又は(2)に記載の抗体。
(4)ウシ角膜由来のケラタン硫酸に対して実質的に反応しない、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の抗体。
(5)HAに対して実質的に反応しない、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の抗体。
(6)NAHに対して実質的に反応しない、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の抗体。
(7)モノクローナル抗体である、上記(1)〜(6)のいずれか1つに記載の抗体。
(8)タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と、哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体である、上記(7)に記載の抗体。
(9)リンパ球及びミエローマ細胞がマウス由来である、上記(8)に記載の抗体。
(10)独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P-20823、FERM P-20824、FERM P-20825、FERM P-20826又はFERM P-20827であるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体。
(11)タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質であって、ASに対して反応する抗体を産生させ得る抗原性を有する物質(以下、「本発明抗原」という)。
(12)タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマ(以下、「本発明ハイブリドーマ」という)。
(13)リンパ球及びミエローマ細胞がマウス由来である、上記(12)に記載のハイブリドーマ。
(14)独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号が、FERM P-20823、FERM P-20824、FERM P-20825、FERM P-20826又はFERM P-20827であるハイブリドーマ。
(15)上記(1)〜(10)のいずれか1つに記載の抗体を試料に接触させる工程を少なくとも含むことを特徴とする、当該試料中に存在するASの検出方法(以下、「本発明AS検出方法」という)。
(16)試料が、体液、細胞、組織、又は、細胞若しくは微生物の培養物から選択されるものに由来する、上記(15)に記載の検出方法。
(17)上記(1)〜(10)のいずれか1つに記載の抗体を少なくとも含む、試料中に存在するASの検出キット(以下、「本発明AS検出キット」という)。
(18)試料が、体液、細胞、組織、又は、細胞若しくは微生物の培養物から選択されるものに由来する、上記(17)に記載の検出キット。
本発明抗体は、ASに対して反応し、ウシ腎臓由来のHSに対して実質的に反応しない抗体である。
HEP誘導体群;6DSH、NH2−6SH、6SH、NH2−2SH、NSH、NAc−NSH、NH2−CDSH、CDSH。
<2>本発明抗原
本発明抗原は、タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質であって、ASに対して反応する抗体を産生させ得る抗原性を有する物質である。
<3>本発明ハイブリドーマ
本発明ハイブリドーマは、タンパク質とASとを化学的に結合させてなる物質を抗原として免疫した哺乳動物由来のリンパ球と哺乳動物由来のミエローマ細胞との細胞融合により形成されるハイブリドーマである。
<4>本発明検出方法
以下、本発明検出方法について説明する。
<5>本発明検出キット
以下、本発明検出キットについて説明する。
ASはヨン S.キムらの方法(前記の非特許文献1に記載の方法)に従って、アフリカマイマイ(学名:Achatina fulica)から調製した。得られたASを原料として、M.イシハラ(M. Ishihara)ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー、1997年、第121巻、第2号、p.345−349に記載の方法に従ってACHを調製した。
(参考例2) PDP−KLHの調製
KLHへの2−ピリジルジスルフィド構造の導入は、Carlsson, J.らの方法(Biochem. J., 173, 723(1978))に従って行った。
(参考例3) ウロン酸を介したAS−BSAコンジュゲートの調製
AS及びBSA(バイエル社製)を、それぞれ0.1M MES緩衝液(pH5.5)に、終濃度が10mg/mlになるように溶解し、AS溶液及びBSA溶液を得た。AS溶液 300 μlとBSA溶液 150 μlとを混合し、EDC(PIERCE社製) 400 μgを添加した後、撹拌しながら20時間室温に保持した。得られた反応後の溶液は、蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥し、ウロン酸を介したAS-BSAコンジュゲート 3.5mgを得た。
(参考例4) Bi−GAG及びBi−HEP誘導体の調製
ASおよび、ACHは参考例1で調製したものを使用した。ブタ皮由来のHA(以下、単に「HA」と記載する)、CS−A(W)、CS−A(S)、CS−B、CS−C、CS−D、CS−E、ウシ腎臓由来のHS(以下、単に「HS」と記載する)、及びウシ角膜由来のKS(以下、単に「KS」と記載する))は、生化学工業株式会社製のものを使用した。NAHは特開2004-18840に記載の方法に従って、大腸菌K5の培養物から調製した。ブタ腸由来のHEP(以下、単に「HEP」と記載する)はサイエンティフィックプロテインラボラトリーズ社から購入した。また、EHS−HSは、特公平7−53756号公報に記載の方法により調製した。
(参考例5) ストレプトアビジン固相化マイクロプレートの作製
ストレプトアビジン(Vector社製)をPBS(−)で20μg/mlに希釈し、マキシソープ(登録商標) 96ウェルマイクロプレート(ヌンク社製)の各ウェルに50μlずつ加えた。このプレートを18時間、4℃で保存することにより、ストレプトアビジンをプレート上に均一に固相化した後、PBS(−)で2回洗浄した。続いて、ブロッキング剤としてApplieDuo(登録商標、生化学工業株式会社製)を用い、以下の方法によりストレプトアビジンでコーティングされていない部分をブロッキングした。すなわち、防腐剤として0.05%プロクリン300(登録商標、SUPELCO社製)を含むリン酸緩衝液(pH7.2〜7.5:以下、「PB」という)を用いて、ApplieDuo(登録商標)の5倍希釈液(以下、「ブロッキング液」という)を調製し、これを各ウェルに250μlずつ加え、室温で2時間静置した。静置後、ブロッキング液を充分に除去し、37℃で2時間乾燥させることにより、所望するストレプトアビジン固相化マイクロプレートを得た。得られたプレートは乾燥剤とともにアルミラミネート袋に封入し、冷蔵保存した。
(参考例6) 各種GAG固相化マイクロプレート及び各種HEP誘導体固相化マイクロプレートの作製
1) AS固相化マイクロプレートの作製
参考例3で調製したAS−BSA (50 ng)を、マキシソープ(登録商標) 96ウェルマイクロプレートに添加し、18時間、4℃に保持した後、防腐剤として0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で4倍希釈したブロックエース(登録商標、大日本製薬社製)を用いてブロッキングした。1時間、室温で静置した後、所望のAS固相化マイクロプレートを得た。このAS固相化マイクロプレートは、後述する実施例3において血清中の抗体価の検証のために使用した。
2) 各種Bi−GAG固相化マイクロプレート及び各種Bi−HEP誘導体固相化マイクロプレートの作製
上記参考例4に記載の各種Bi−GAG及び各種Bi−HEP誘導体を、終濃度が1 μg/mlになるように、0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍希釈したApplieDuo(登録商標)溶液に溶解した(以下この溶液を、「各種Bi−GAG溶液」及び「各種Bi−HEP誘導体溶液」という)。参考例5で作製したストレプトアビジン固相化マイクロプレートの各ウェルを、300 μlの0.05%プロクリン300(登録商標)及び0.05%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを含むPBS(−)(以下、「洗浄緩衝液」と言う)で4回洗浄した。各種Bi−GAG溶液及び各種Bi−HEP誘導体溶液をそれぞれ100 μlずつ各ウェルに分注し、室温で30分間静置したのち、各ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄することにより、所望の各種Bi−GAG固相化マイクロプレート及び各種Bi−HEP誘導体固相化マイクロプレートを得た。これらのプレートは、後述する実施例3におけるクローニング、及び後述する実施例5における反応性試験において使用した。
1) RA−ASの調製
実施例1の参考例1で調製したAS 4mgを、2M 塩化アンモニウム水溶液 160μlに溶解した。この溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム12mgを添加し、70℃で2日間、還元アミノ化反応を行った。反応後の溶液に、シアノ水素ホウ素ナトリウム 5mgを添加し、さらに2日間、上記と同一の条件で反応を行った。反応後の溶液を氷浴中で冷却した後、酢酸 32μlを添加して反応を完全に停止させた。2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法により、RA−ASを回収した。得られた沈殿を、エタノール洗浄した後に凍結乾燥し、RA−ASの凍結乾燥物 3.3mgを得た。
2) PDP−ASの調製
上記1)で調製したRA−AS 3.3mgを、0.1M食塩/0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5) 1mlに溶解した。この溶液に5mM SPDPエタノール溶液 80μlを添加した後、室温にて一晩静置し、2−ピリジルジスルフィドプロピオニル化反応(PDP反応)を行った。過剰のSPDPを除くために蒸留水を用いて透析を行った後、凍結乾燥し、PDP−ASの凍結乾燥物 3.8mgを得た。
3) SH−ASの調製
上記2)で調製したPDP−AS 2.0mgを、0.1M食塩/0.1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5) 160μlに溶解した。この溶液に、終濃度が25mMになるようにジチオスレイトールを添加し、60分間室温にて還元反応を行った。2倍量のエタノールを用いた溶媒沈殿法でSH−ASを回収した。得られた沈殿を、エタノール洗浄した後に凍結乾燥し、SH−ASの凍結乾燥物 1.5mgを得た。
4) ジスルフィド結合を介したAS−KLHコンジュゲートの調製
上記3)で調製したSH−AS 1.5mg及び参考例2で調製したPDP−KLH 0.75mgを、0.1M食塩/0.1Mリン酸緩衝液(pH7.5) 1mlに溶解し、2時間室温にてコンジュゲーション反応を行った。反応中に生成されるピリジル−2−チオンを除くため、上記反応後の溶液を、蒸留水に対して一晩透析した後、凍結乾燥し、AS−KLHコンジュゲートの凍結乾燥物1.9mgを得た。得られた凍結乾燥物は、後述する実施例3において、AS抗原として用いた。
1) マウスの免疫化
少量の蒸留水に溶解したAS抗原 1 mgとTiterMAX Gold(登録商標、シグマ社製)2mlとを混合し、抗原溶液を調製した。また、免疫する動物としては、4匹のBALB/Cマウス(6週齢のメス、日本チャールズリバー社製)を用いた。上記の抗原溶液 100μl/匹 を、2週間毎に2又は3回皮下投与した。血清の抗体価が充分な値に達した時、最終免疫として、アジュバントを含まないAS抗原溶液 100μl/匹を投与した。最終免疫から3日後、免疫したマウスを安楽死させ、脾臓を摘出した。
2)ハイブリドーマの創製
1)で摘出した脾臓から得られた免疫感作されたリンパ球と、マウスミエローマP3U1細胞(シマ研究所製)とを、4対1ないし5対1の混合比で混合した後、50%のポリエチレングリコール1500(ロシュ社製)中で共遠心分離することによって細胞融合を実施した。なお、上記の細胞融合に用いるミエローマ細胞には、細胞融合の1週間前より、8-アザグアニンを含んだHAT培地で生育させたものを用いた。細胞融合後、HAT培地中で細胞を生育させた細胞を、以下のクローンの選抜に用いた。
3)クローンの選抜及び評価
3−1) クローニング
クローニングには限界希釈法を採用した。すなわち、細胞数がウェル当り1以下になるようにHAT培地で細胞を希釈し、これを96ウェルマイクロプレートに播種した。これを常法に従って培養し、培養上清液を得た。培養上清液の抗体価の評価を、参考例6 2)で作製したBi−AS固相化マイクロプレートを用いたELISA法により行い、クローンを選抜した。以上のクローンニングの工程は、少なくとも2回以上実行した。以上の結果として、6つのクローンを選抜し、取得した。
3−2) クローンの評価
上記3−1)で取得した各クローンの活性が維持されていることを確認するため、当該クローンを24ウェルプレートの培養スケールにて培養し、得られた培養上清液の抗体価の評価を、参考例6 2)で作製したBi−AS固相化マイクロプレート、及びHRP標識ヤギ抗マウス免疫グロブリン抗体(以下、「HRP抗マウスIg」と記載する、ダコ社製)を用いたELISA法により行った。以下に詳細を示す。
[クローンの抗体価の評価]
予め洗浄緩衝液によって4回洗浄した、Bi−AS固相化マイクロプレートに、培養上清液 100μlを分注し、室温にて1時間静置した。さらに洗浄緩衝液で4回洗浄した後に、反応緩衝液(0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍に希釈したApplieDuo(登録商標)溶液)で2000倍に希釈したHRP抗マウスIg 100μlを、各ウェルに分注した。このプレートを室温にて1時間静置した後、洗浄緩衝液で4回洗浄し、TMB溶液(HRP基質溶液、BIOFX社製) 100μlを各ウェルに加え、30分間、37℃で酵素反応を行った。反応終了後、発色試薬(BIOFX社製) 100μlを各ウェルに添加し、630nmをバックグラウンド補正として、450nmの吸光度を測定した。なお、反応緩衝液をネガティブブランクとして用いた。その結果、各クローンが抗AS抗体を生産していることが確認された。樹立したハイブリドーマのクローン番号はAS17、AS22、AS25、AS38、AS48であったことから、このハイブリドーマによって産生される抗体を、それぞれAS17抗体、AS22抗体、AS25抗体、AS38抗体及びAS48抗体と名付けた。上記のハイブリドーマは、平成18年3月1日に、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託され、それぞれ受託番号として、FERM P-20823、FERM P-20824、FERM P-20825、FERM P-20826又はFERM P-20827が付与された。常法に従って抗体の免疫グロブリンクラスおよびそのサブクラスを調べた結果、AS17抗体はIgG2aに分類され、AS25抗体及びAS38抗体はIgG1に分類され、AS22抗体及びAS48抗体はIgMに分類されることを確認した。
1) 抗ASモノクローナル抗体の生産
目的の抗ASモノクローナル抗体を生産する方法としては、マウス腹水法を採用した。すなわち、上記実施例3 3)で樹立した各ハイブリドーマ(AS17、AS22、AS25、AS38、AS48) 5×106個を、それぞれ予めプリスタン(2,6,10,14-Tetrametylpentadecane:東京化成工業)処理した3匹のBALB/Cマウス(15週齢の雌)の腹腔に注入した。注射後10〜20日の間に、マウスの腹水を数回に分けて採取し、合計約10mlの腹水を得た。
2) 抗ASモノクローナル抗体の精製
以下に、IgGタイプ抗体(AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体)の精製方法を示す。すなわち、上記1)により得られた腹水を、それぞれ吸着バッファ1(20 mMリン酸緩衝液(pH 7.0))に対して一晩透析した。透析内液をメンブランフィルタ(孔径:0.45 μm)によって濾過した後、濾過液を事前に吸着バッファ1で平衡化したHiTrap Protein G HPカラム(5ml、アマシャム・バイオサイエンス社製)にアプライし、同バッファでカラムを洗浄した。通過液の280nmの吸収がほぼ0になった時、0.1 M グリシンバッファ(pH 2.7) をカラムに通過させ、AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体をそれぞれ溶出した。各抗体を含む溶液をそれぞれ回収し、PBS(−)に対して十分に透析した。透析内液は必要に応じて限外ろ過濃縮等で適切な濃度に適宜調整し、それらを精製抗体として使用した。精製したAS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体の量はそれぞれ、30.8mg、4.6mg及び11.5mgであった。
各精製抗体の各種GAG及び各種HEP誘導体に対する反応性を検証した。
1) 各精製抗体の反応性試験その1−ASに対する反応性試験
1)−1 方法
Bi−GAGの固相化量の異なるマイクロプレートを作製するために、Bi−AS溶液中のBi−ASの終濃度を、0.001, 0.004, 0.012, 0.037, 0.111, 0.333, 1.000 μg/mlと変化させた溶液を用いて、参考例6 2)と同様の方法でBi−AS固相化マイクロプレートを作製した後、それぞれ洗浄緩衝液で4回洗浄した。その後各ウェルに、添加剤としてApplieDuo(登録商標。最終希釈率20倍、生化学工業株式会社製)、防腐剤として0.05%プロクリン300を含むPBS(−)(以下、「反応液A」という)を用いて、それぞれ、0.025 mg/ml(AS17抗体)、0.07mg/ml(AS22抗体)、0.006 mg/ml(AS25抗体)、0.006 mg/ml(AS38抗体)、0.1 mg/ml(AS48抗体)に調製した各精製抗体からなる各試験溶液を100μlずつ加え、これを常温で60分間静置し、抗原抗体反応させた。反応終了後、各ウェルを洗浄緩衝液で4回洗浄し、二次抗体溶液として、反応液Aで2000倍希釈したHRP抗マウスIg(ダコ社製)溶液を100μlずつ加え、これを常温で60分間静置して抗原抗体反応させた。反応終了後、このプレートを洗浄緩衝液で4回洗浄し、ペルオキシダーゼの基質としてTMB溶液(BIOFX社製)を100μlずつ 加え、常温で30分間反応させて発色させた。続いて、プレートに反応停止液(BIOFX社製)を100μlずつ 加えて反応を停止させた後、TMB分解によって増加する波長450nmの吸光度(対照波長630nm)をウェルリーダーSK−603(登録商標、生化学工業株式会社販売)で測定した。なお、抗体の反応性は、上記の各濃度のBi−GAGを用いて作製したBi−GAG固相化マイクロプレートを用いて上記測定を行った場合の吸光度から、Bi−GAG溶液の代わりにBi−GAGを含まない0.05%プロクリン300(登録商標)を含むPBS(−)で20倍希釈したApplieDuo(登録商標)溶液を用いることの他、参考例6 2)と同様の方法により作製したコントロール測定用マイクロプレートを用いて上記の測定方法に準じて測定を行った場合の吸光度(ブランク値)を減算した吸光度差(以下、単に「吸光度差」と記載する)(以下、単に「吸光度差」と記載する)によって評価した。
1)−2 結果
結果を、図2に示す。ASに対するAS22抗体とAS48抗体の相対感度は、AS17抗体、AS25抗体及びAS38抗体のそれよりも100倍の強度があった。Bi−AS濃度が1.0 μg/ mL(0.1μg/ウェル)のとき、すべての抗体は強い反応性(吸光度差;≧1)を示した。
2) 各精製抗体の反応性試験その2−各種GAGに対する反応性試験
2)−1 方法
用いる各種Bi−GAGの濃度を、1.0 μg/ mL(0.1μg/ウェル)に固定することの他、上記1)−1と同様の方法により、各種GAGに対する各精製抗体の反応性を評価した。
2)−2 結果
図3に各種GAGに対する各精製抗体の反応性の結果を示す。
3) 各精製抗体の反応性試験その3−各種HEP誘導体に対する反応性試験
エピトープ解析の一助とするために、実施例1の参考例6に記載の各種Bi−HEP誘導体固相化プレートを用いることの他、上記2)−1に記載の方法に準じて反応性の評価を行うことにより、抗原のグルコサミン残基のN位の修飾状態が、各抗体の反応性にどのように影響するかを検証した。以下、グルコサミン残基のN位が「NH2−」となっている状態を「未修飾」と記載する。
ラット小脳凍結切片を用いて免疫組織染色における染色性を検討した。
この後0.1%BSAを含むPBS(−)で洗浄し、0.1%BSA及び0.1%カゼインを含むPBS(−)で1μg/mLに希釈したAS25抗体を4℃で一晩反応させた。0.1%BSAを含むPBS(−)で洗浄後、10%ラット血清を含むビオチン標識抗マウスIgG+IgM(JACKSON社製)をPBSで500倍に希釈し、常温で30分間反応させた。0.1%BSAを含むPBS(−)で洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(ニチレイ社製)を常温にて30分間反応させた。0.1%BSAを含むPBS(−)で洗浄後、DAB発色キット(Zymed社製)にて茶色の発色反応を行った。
Claims (6)
- 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P−20824又はFERM P−20827であるハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体。
- 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターにおける受託番号がFERM P−20824又はFERM P−20827であるハイブリドーマ。
- 請求項1に記載の抗体を試料に接触させる工程を少なくとも含むことを特徴とする、当該試料中に存在するアカラン硫酸の検出方法。
- 試料が、体液、細胞、組織、又は、細胞若しくは微生物の培養物から選択されるものに由来する、請求項3に記載の検出方法。
- 請求項1に記載の抗体を少なくとも含む、試料中に存在するアカラン硫酸の検出キット。
- 試料が、体液、細胞、組織、又は、細胞若しくは微生物の培養物から選択されるものに由来する、請求項5に記載の検出キット。
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