JP4941796B1 - 水洗大便器 - Google Patents

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Abstract

【課題】リム部を流れる洗浄水が便器の外側に飛び出すことを防ぐことができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器1は、ボウル形状の汚物受け面14と、上縁部に形成されその内周面17がほぼ鉛直方向に立ち上がるように形成されたリム部16と、このリム部と汚物受け面との間に形成された棚部18と、を備えたボウル部8と、このボウル部の棚部上に洗浄水を吐水して旋回流f1を形成するリム吐水口26と、このリム吐水口に洗浄水を供給するリム導水路10dと、を有し、リム吐水口は、リム部の前方側領域F内の前端部16a付近に形成され、リム部の後方側領域Rは、リム部の前方側領域F1の前端の曲率半径ρ1よりも大きく且つ左右対称にほぼ一定の曲率半径ρ3により形成され、リム吐水口は、前方に向けて吐水し、リム部の前方側領域内の前端を経て、リム部の後方側領域に流れる旋回流を形成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器に関する。
従来から、便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器として、特許文献1に記載されているように、水洗大便器のボウル部の上縁に形成されたリム部の内周が垂直又は外側に広がる形状に形成され、このリム部の後方側に形成されたリム吐水口から水平方向に洗浄水を吐水して旋回流を形成すると共に、ボウル部の下方且つ前端に設けられたゼット吐水口から排水トラップに向けて吐水してサイホン作用を発生させ、汚物を排出するものが知られている。
また、特許文献2に記載されているように、便器のボウル部上縁に外側に広がる形状に形成されたリム部における前方側領域と後方側領域のそれぞれについて、互いに同一且つ一定の曲率半径で円弧形状を形成し、便器の後方側の吐水口とリム部の前方側領域との間に直線状に形成された側部からこの側部近傍のリム部の前方側領域に、便器の内方に突出して洗浄水による便器外側への飛び出しを防ぐ手段である棚返し部を設けた水洗大便器も知られている。
特開2005−98003号公報 特開2007−169964号公報
しかしながら、上述したな特許文献1に記載されている水洗大便器においては、ボウル部の上縁に形成されたリム部の内周が垂直又は外側に広がる形状に形成されており、リム部の内周面の全周に亘ってリム部の内周面の曲率半径が変化する箇所が多数設けられているため、リム吐水口から吐水された洗浄水が、リム部に沿って旋回しながら流れている際に、リム部を乗り越えて便器の外側に飛び出してしまう可能性があるという問題がある。
さらに、上述した特許文献2に記載されている水洗大便器においては、便器の後方側の吐水口から吐水された洗浄水の流れが、リム部の円弧状の前方側領域を通過し、直線状の側部から円弧状の後方側領域へ移行した際に、リム部の導水路の軌道に沿ってスムーズに移行することができない可能性があることに加え、リム部の後方側領域においては、ほぼ鉛直方向に立ち上がる形状であるにもかかわらず、上述した棚返し部が設けられていないため、洗浄水が便器の外側に飛び出す可能性もあるという問題がある。
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題を解決するためになされたものであり、リム部を流れる洗浄水が便器の外側に飛び出すことを防ぐことができる水洗大便器を提供することを目的としている。
上述した目的を達成するために、本発明は、洗浄水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、上縁部に形成されその内周面がほぼ鉛直方向に立ち上がるように形成されたリム部と、このリム部と上記汚物受け面との間に形成された棚部と、を備えたボウル部と、このボウル部の下方にその入口が接続され汚物を排出する排水路と、上記ボウル部の棚部上に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水部と、この吐水部に洗浄水を供給する導水路と、を有し、上記吐水部は、上記リム部の前方側領域内の前端付近に形成され、上記リム部の後方側領域は、上記リム部の前方側領域の前端の曲率半径よりも大きく且つ左右対称にほぼ一定の曲率半径により形成され、上記吐水部は、前方に向けて吐水し、上記リム部の前方側領域内の前端を経て、リム部の後方側領域に流れる旋回流を形成することを特徴としている。
このように構成された本発明においては、リム部の前方側領域内の前端付近に形成された吐水部から前方に向けて吐水された洗浄水は、リム部の前方側領域内の前端を経て、リム部の前端の曲率半径よりも大きい後方側領域へ吐水の勢いを保ちながら滑らかに流れ、さらに、リム部の後方側領域は左右対称にほぼ一定の曲率半径により形成されているので、吐水の勢いを減少させることなく洗浄水に作用する遠心力を利用し、洗浄水を周回させることができる。この結果、本発明によれば、リム部の内周面がほぼ鉛直方向に立ち上がる形状であっても、リム部を流れる洗浄水が便器の外側に飛び出すことを防ぐことができ、ボウル部内の広範囲を比較的強い水勢で洗浄することができる。
本発明において、好ましくは、上記ボウル部のリム部は、上記前方側領域内において、上記後方側領域の曲率半径よりも大きい曲率半径により形成された上記前端付近に近接する領域を備えている。
このように構成された本発明においては、ボウル部のリム部が、前方側領域内において、後方側領域の曲率半径よりも大きい曲率半径により形成された前端付近に近接する領域を備えているので、吐水部から吐水されてリム部の前端を通過した洗浄水は、ボウル部のリム部の前方側領域内の前端付近に近接する領域に比較的強い水勢を維持した状態で流れる。この洗浄水は、リム部の後方側領域の曲率半径よりも大きい曲率半径により形成されたリム部の前方側領域内の前端付近に近接する領域を流れることにより、リム部の前方側領域からの洗浄水の比較的強い水勢を維持しつつ安定した状態でリム部の後方側領域に滑らかに流れるため、リム部の内周面がほぼ鉛直方向に立ち上がる形状であっても、リム部を流れる洗浄水が便器の外側に飛び出すことを防ぐことができる。
本発明において、好ましくは、上記リム部の前方側領域内の前端は、上記リム部の全周の中で最小の曲率半径により形成され、上記吐水部は、上記リム部の前端の左右の何れか一方の側に隣接し且つ大きな曲率半径から小さな曲率半径に変化している部分に形成されている。
このように構成された本発明においては、吐水部からリム部の前方側領域内の前端に向けて強い水勢で吐水される洗浄水は、最小曲率半径により形成されたリム部の前方側領域内の前端を通過する際に生ずる適度なエネルギー損失により、水勢が適度に抑制されるため、洗浄水が、勢いが強すぎることにより便器の外側に飛び出すことを防ぐことができる。
本発明において、好ましくは、上記ボウル部のリム部は、上記吐水部から上記リム部の前方側領域内の前端付近までの部分の上縁部が内方へ突出したオーバーハング形状により形成されている。
このように構成された本発明においては、特に水飛びが発生しやすい、吐水部から最小の曲率半径を備えたリム部の前方側領域内の前端までの部分の上縁部が、内方へ突出したオーバーハング形状により形成されているので、万一、リム部を旋回する洗浄水が吐水部からリム部の前方側領域内の前端に至る部分において水撥ねが発生したとしても、この水撥ねがリム部のオーバーハング形状の上縁部に当たるため、便器の外部への水飛びを防ぐことができる。
本発明の水洗大便器によれば、リム部を流れる洗浄水が便器の外側に飛び出すことを防ぐことができる。
本発明の一実施形態による水洗大便器を示す概略斜視図である。 本発明の一実施形態による水洗大便器において便座及び便蓋を省略した状態の側面断面図である。 本発明の一実施形態による水洗大便器からの便器本体を示す平面図である。 図3のIV−IV線に沿って見た断面図である。 図3のV−V線に沿って見た断面図である。 図3のVI−VI線に沿って見た断面図である。 図3のVII−VII線に沿って見た断面図である。 本発明の一実施形態による水洗大便器の導水路全体を示す斜視図である。 本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内の前側領域のリム吐水口を後方側斜め下方から見た拡大斜視図である。 図3に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の前方部分を拡大した部分拡大平面図である。 図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器のリム吐水口部分を拡大した部分拡大斜視図である。 本発明の一実施形態による水洗大便器における接着工程前の状態の便器本体を示す側面図である。 本発明の一実施形態による水洗大便器における接着工程前の状態の便器本体を示す正面断面図である。 本発明の一実施形態による水洗大便器においてゼット洗浄開始後にリム洗浄が行われているときのリム吐水の第1周目の第1旋回軌道と第2周目の第2旋回軌道を概略的に説明する斜視図である。 本発明の一実施形態による水洗大便器においてリム吐水の旋回流が凹部内へ流下している状態を概略的に説明する斜視図である。 図16の(a)は、本発明の一実施形態による水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったときのリム吐水及びゼット吐水に関する流速分布を解析した結果の一例を示す。また、図16の(b)は、図16の(a)に示す解析結果の比較例として、従来の水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったときのリム吐水及びゼット吐水に関する流速分布を解析した結果を示す。 図17の(a)は、本発明の一実施形態による水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったときのゼット吐水に関する流速分布と流れの様子を解析した結果の一例を示す。また、図17の(b)は、図17の(a)に示す解析結果の比較例として、従来の水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったときのゼット吐水に関する流速分布と流れの様子を解析した結果を示す。
以下、本発明の一実施形態による水洗大便器について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態による水洗大便器の便座を示す概略斜視図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、洗い落し式の水洗大便器であり、陶器製の便器本体2と、この便器本体2の上面に配置された便座(図示せず)を覆う便蓋4と、便器本体2の後部に取り付けられ、便器洗浄に使用される洗浄水を貯水して便器本体2へ給水する洗浄水源である重力給水式の貯水タンク6とを備えている。
なお、便器本体2へ洗浄水を供給する洗浄水源としては、本実施形態で示した重力給水式の貯水タンク6のようなタンク式のものに限定されず、水道水の給水圧を直接利用した水道直圧式のものや、フラッシュバルブ式のものや、ポンプの補圧を利用して洗浄水を供給するものであってもよい。
図2は本発明の一実施形態による水洗大便器において便座及び便蓋を省略した状態の側面断面図であり、図3は本発明の一実施形態による水洗大便器を示す平面図である。
図2及び図3に示すように、便器本体2の前方上部にはボウル部8が形成されている。 また、便器本体2の後方上部には、貯水タンク6から供給された洗浄水をボウル部8に吐水する導水路10が形成されている。
さらに、ボウル部8の下方には、ボウル部8内の汚物を排出する排水路である排水トラップ管路12が形成されている。
ボウル部8は、ボウル形状の汚物受け面14と、ボウル部8の上縁部に沿って形成されたリム部16と、これら汚物受け面14とリム部16との間に形成された棚部18を備えている。
また、ボウル部8は、汚物受け面14よりも下方の領域に形成されて排水トラップ管路12に接続される凹部20を備え、この凹部20は、底面20aと、この底面20aと汚物受け面14の下縁部14aとを接続する壁面20bを備えている。
さらに、ボウル部8の左右方向を二等分する中心線A1(図3参照)に対して便器本体2の前方側から見て凹部20の左側の側壁面20bにはゼット吐水口22が形成され、このゼット吐水口22は、詳細は後述する導水路10の共通導水路10aから分岐したゼット導水路10bに接続されており、ゼット吐水口22から吐水された洗浄水の主流が凹部20内で旋回するようになっている。これにより、ゼット吐水口22から洗浄水が吐水された際、ゼット吐水の旋回流f4によりボウル部8の凹部20内の溜水が外側に広がりにくくなり、浮遊系汚物を凹部20内の溜水のほぼ中央に集めて確実に排出することができるようになっている。また、ボウル部8の凹部20内から洗浄水が外側へ飛び出そうとするときに、後述するリム吐水口26から吐水されて旋回したリム吐水がボウル部8を流下して衝突することにより生ずる水撥ねをより効果的に抑制することができるようになっている。
また、ボウル部8の汚物受け面14の凹部20の後方且つ下方には、上述した排水トラップ管路12の入口12aが開口し、この入口12aから上昇路12bが後方に延びている。この上昇路12bには下降路12cが連続し、下降路12cの下端は排水ソケット24を介して床下の排出管(図示せず)に接続されている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、排水トラップ管路12の下降路12cの下端が床下の排出管(図示せず)に接続されている床排水形の水洗大便器を一例として説明しているが、このような形態に限定されず、下降路12cの末端が水洗大便器の後壁側に配置されて床上の排出管と接続される床上排水形の水洗大便器においても適用可能である。
つぎに、図2〜図8を参照して、水洗大便器1の導水路10について詳細に説明する。
図4〜図7のそれぞれは、図3のIV−IV線、V−V線、VI−VI線及びVII−VII線のそれぞれに沿って見た断面図であり、図8は、本発明の一実施形態による水洗大便器の導水路全体を示す斜視図である。
図2〜図8に示すように、導水路10は、貯水タンク6の排水口6aに接続される入口部10cからボウル部8の背面側近傍まで延びる共通導水路10aと、この共通導水路10のボウル部8の背面側近傍においてそれぞれ分岐するゼット導水路10bとリム導水路10dを備えている。
リム導水路10dは、ボウル部8の背面側近傍で共通導水路10aから分岐し、ボウル部8の左右方向を二等分する中心線A1(図3参照)に対して便器本体2の前方側から見て左側に位置するリム部16の内部に沿って前方へ延び、リム部16の前方側領域F内の便器本体2の前方側から見て左側に配置されている単一のリム吐水口26(詳細は後述する)まで延びている。
ゼット導水路10bは、ボウル部8の背面側近傍で共通導水路10aから分岐し、ボウル部8の左右方向を二等分する中心線A1(図3参照)に対して便器本体2の前方側から見てボウル部8の凹部20の左側壁面20bの外側を迂回するように前方へ延び、凹部20の左側壁面20bに形成されたゼット吐水口22まで延びている。このゼット吐水口22は、ボウル部8を前後方向及び左右方向にそれぞれ等分したときに、リム部16のリム吐水口26に対して後方側且つボウル部8を前方から見て左側に配置されている。
なお、リム吐水口26とゼット吐水口22は、ボウル部8の左右の何れか一方の同側に形成されていればよい。
また、リム吐水口26は、ゼット吐水口22より前側に形成されていることにより、ゼット吐水口22から吐水された洗浄水の旋回流(後述する「斜め旋回流f4」)がボウル部8の凹部20内から外側へ飛び出したとしても、リム吐水口26から吐水された洗浄水の旋回流(後述する「旋回流f5」)の勢いにより抑え込むことができるようになっている。
さらに、共通導水路10aからリム導水路10dを経てリム吐水口26に導水された洗浄水のリム吐水が開始する前に、共通導水路10aからゼット導水路10bを経てゼット吐水口22に導水された洗浄水のゼット吐水が開始するように吐水のタイミングを設定するための手段として、リム導水路10dの経路長さL1が、ゼット導水路10bの経路長さL2よりも長くなるように設定されている。このように設定されていることにより、洗浄開始時に共通導水路10a内に存在している空気をゼット導水路10bを経てゼット吐水口22から抜くことができるようになっており、リム吐水口26で吐水が開始される際にリム吐水口26から排出される空気を簡単な構造で減少させることができようになっている。また、共通導水路10aからリム導水路10dへ洗浄水と共に流れ込んだ空気がリム導水路10d内で圧縮されてリム吐水口26から排出される際に生ずる吐出音と水撥ねを防ぐことができ、便器1の外部への水飛びを防ぐことができるようになっている。
また、ゼット通水路10b内で圧縮された空気がゼット吐水口22で洗浄水と共に排出される際に水撥ねが生じたとしても、ゼット吐水口22がボウル部8内の下方、すなわち、汚物受け面14と排水トラップ管路12との間の凹部20の側壁面20bに位置しているため、便器1の外部への水飛びを防ぐことができるようになっている。
さらに、洗浄開始時に共通導水路10a内に存在している空気が共通導水路10aからリム導水路10dに流れる洗浄水に混入したとしても、リム吐水口26がボウル部8の前方側領域Fに形成されているので、リム導水路10dが共通導水路10aのボウル部8の背面側近傍からリム吐水口26まで延びる比較的長い経路となるため、リム導水路10d内を流れるうちに空気が十分に砕かれた状態となり、リム吐水口26から吐水される際に生ずる吐出音と水撥ねが抑制されるようになっている。
なお、本実施形態においては、ゼット吐水がリム吐水の開始前に開始するための手段の例として、リム導水路10dの経路長さL1をゼット導水路10bの経路長さL2よりも長くなるように設定した形態について説明するが、このような形態に限定されず、ゼット吐水がリム吐水の開始前に開始されるようにリム導水路内とゼット導水路内のそれぞれの流速や容積を調整してもよい。
また、共通通水路10a内の空気を抜くための手段として、ゼット導水路10bの代わりに、共通通水路10aと凹部20内を連通して接続する管部材を設けてもよい。
つぎに、図3、図5〜図7及び図9〜図11を参照して、水洗大便器1のボウル部8のリム部16、棚部18及びリム吐水口26について詳細に説明する。
図9は本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内の前側領域のリム吐水口を後方側斜め下方から見た拡大斜視図であり、図10は図3に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の前方部分を拡大した部分拡大平面図であり、図11は図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器のリム吐水口部分を拡大した部分拡大斜視図である。
図3及び図10に示すように、ボウル部8は、このボウル部8の左右方向に延びた中心線A2(図3参照)によりボウル部8を前後方向に二等分される前方側領域Fと後方側領域Rを備えている。
また、ボウル部8の前方側領域Fは、中心線A1及びリム部16の内周面17の前端部16a(内周側前端部16a)に対して左右対称に配置され且つ前端部16aを含む領域F1と、この領域F1よりも後方側に位置する領域F2と、この領域F2よりもさらに後方側に位置する領域F3を備えている。
リム部16の前方側領域F1内の前端部16aがリム部16の全周の中で最小の曲率半径ρ1を備え、リム吐水口26は、リム部16の前方側領域F1内の前端部16aよりも後方側に位置する前方側領域F2内に形成されており、この前端部16aに向けて洗浄水が吐水されるようになっている。
すなわち、リム吐水口26が、リム部16の前端部16aに位置する曲率半径最小部の近傍に配置され、この曲率半径最小部に向けて洗浄水を吐水することにより、リム吐水口26から吐水された洗浄水の吐水方向ベクトルと水勢を安定化させることができ、比較的強い水勢を維持した状態で、リム部16の前端部16aを経由した後、リム部16の後方側領域Rへ旋回することができるようになっている。それにより、汚れやすいボウル部8の後方側領域Rをしっかり洗浄することができ、後方側領域Rを通過後の洗浄水は勢いを保った状態で旋回を続けるため、リム部16の前端部16a付近も旋回することができずに洗浄不良となることを防ぐことができるようになっている。
また、リム吐水口26から吐水された洗浄水は、リム部16の前端部16aの曲率半径最小部を通過した後にリム部16に沿って第1周目の旋回を行うが、このリム部16の曲率半径最小部を通過したときにリム部16の外側に作用する遠心力の影響により、リム吐水口26から棚部18に流下する洗浄水の流れが抑制されるため、すでに第1周目を旋回し終えて第2周目の旋回に差しかかろうとする棚部18上の旋回流との衝突を抑制することができるようになっている。
また、リム吐水口26は、ボウル部8のリム部16の前方側領域F1内の前端部16aに対して、便器本体2の前方側から見て左側に隣接し且つ後方から前方に向って曲率半径ρ2が大きな曲率半径から小さな曲率半径に変化している部分である前方側領域F2内に形成されている。これにより、リム吐水口26から吐水された洗浄水が、強い水勢を維持した状態で、直ちにリム部16の前端部16aに到達し、その後、リム部16の後方側領域Rへ旋回することができるため、最小の曲率半径のリム部16の前端部16aにおいて洗浄水が旋回することができずに洗浄不良となることを防ぐことができるようになっている。さらに、リム吐水口26からリム部16の前方側領域F1内の前端部16aに向けて強い水勢で吐水される洗浄水は、最小曲率半径ρ1により形成されたリム部16の前方側領域F1内の前端を通過する際に生ずる適度なエネルギー損失により、水勢が適度に抑制され、洗浄水が、勢いが強すぎることにより便器の外側に飛び出すことを防ぐことができるようになっている。
さらに、ボウル部8の棚部18の後方側領域Rは、その大部分が一定の半径(曲率半径ρ3)を備えた正円の一部(円弧形状)を形成している。これにより、ボウル部8のリム部16の後方側領域Rの大部分において曲率半径ρ3(正円の半径)が変化しないため、リム部16の後方側領域Rを通過する際の洗浄水のエネルギー損失を抑制することができ、洗浄水をより確実に旋回させることができるようになっており、リム部16の後方側領域Rまで比較的強い水勢を維持した状態で旋回することができるため、汚れやすいボウル部8の後方側領域Rも確実に洗浄することができるようになっている。また、ボウル部8のリム部16の後方側領域Rの大部分が所定の半径(曲率半径ρ3)の正円の一部を形成することにより、使用者が前方斜め上方から見たとき、最も目立ちやすいボウル部8のリム部16の後方側領域Rの大部分が所定の半径(曲率半径ρ3)の正円の一部を形成しているので、ボウル部8の全体の美観を向上させることができるようになっている。
ボウル部8のリム部16は、前方側領域F内において、曲率半径ρ2と等しく、かつ後方側領域Rの曲率半径ρ3よりも大きい曲率半径ρ4(ρ4=ρ2>ρ3)により形成された前方側領域F3を備え、この前方側領域F3は、前方側領域F1内の前端部16aの付近に近接しており、前方側領域F2と後方側領域Rとの間に配置されている。これにより、リム吐水口26から吐水されてリム部16の前端部16aを通過した洗浄水は、ボウル部8のリム部16の前方側領域F1内の前端部16a付近に近接する領域F2を経て領域F3に比較的強い水勢を維持した状態で流れるようになっている。この洗浄水は、リム部16の後方側領域Rの曲率半径ρ3よりも大きい曲率半径ρ4により形成されたリム部16の前方側領域F3を流れることにより、前方側領域F3よりも前方側のリム部16の前方側領域F1,F2からの洗浄水の比較的強い水勢を維持しつつ安定した状態でリム部16の後方側領域Rに滑らかに流れることができようになっており、リム部16の内周面17がほぼ鉛直方向に立ち上がる形状であっても、リム部16を流れる洗浄水が便器1の外側に飛び出すことを防ぐことができるようになっている。
なお、本実施形態では、リム部16の前方側領域F1の曲率半径ρ1がリム部16の後方側領域Rの曲率半径ρ3よりも小さくなるように設定した形態について説明するが、このような形態に限定されず、リム部16の前方側領域F1の曲率半径ρ1をリム部16の後方側領域Rの曲率半径ρ3と等しくなるように設定してもよい。或いは、リム部16の各前方側領域F1の各前方側領域F1,F2,F3の各曲率半径ρ1,ρ2,ρ4の少なくとも1つの曲率半径をリム部16の後方側領域Rの曲率半径ρ3と等しくなるように設定してもよい。
ボウル部8のリム部16は、前方側領域F2内のリム吐水口26から前方側に向ってリム部16の前方側領域F1内の前端部16a付近までの部分の上縁部が局所的に内方へ突出するオーバーハングした形状に形成されたオーバーハング部16bを備え、このオーバーハング部16bにより、リム吐水口26の上方が覆われるようになっている。
また、ボウル部8のリム部16は、オーバーハング部16b以外の内周面17の領域がほぼ鉛直方向に立ち上がる形状となっている立ち上がり部16cを備えている。
このように、リム部16の内周面17の前端部16a付近の前方側領域F1,F2ではオーバーハング部16bにより内方に向かってオーバーハングした形状に形成され、リム部16の前端部16a付近以外の前方側領域F3及び後方側領域Rでは、ほぼ鉛直方向に立ち上がる形状に形成されているので、最小の曲率半径ρ1のリム部16の前端部16a付近において、便器1の外部への水飛びが発生することがなく、リム吐水口26から吐水された洗浄水の水勢を高めることができるようになっている。また、リム部16の後方側領域Rまで比較的強い水勢を十分に維持した状態で旋回することができ、汚れやすいボウル部16の後方側領域Rもより確実に洗浄することができるようになっている。
また、リム部16の前端部16a付近の前方側領域F1,F2のオーバーハング部16bにより、特に水飛びが発生しやすいリム部16のリム吐水口26近傍において、水撥ねが発生したとしても、この水撥ねがリム部16のオーバーハング部16bの上縁部に当たるため、便器1の外部への水飛びを防ぐことができるようになっている。
さらに、ボウル部8のリム部16の内周面17は、前端部16a付近以外ではほぼ鉛直方向に立ち上がる形状に形成されているので、万一汚れが付着したとしても、拭き取りやすくなっている。
なお、本実施形態の水洗大便器1においては、例として、リム部16の内周面17が立ち上がり部16cを備えた形態について説明するが、この立ち上がり部16cの代わりに、リム部の内周面のほぼ全周に亘ってオーバーハングした形状に設定してもよいし、リム部16の周方向に沿って形成されたリム導水路の内側が開放されている、いわゆる、オープンリムタイプの形態としてもよい。
また、リム吐水口26は、ボウル部8の棚部18の高さ位置よりも所定距離h上方に位置しており、ボウル部8のリム部16の上端側に形成されている。これにより、リム吐水口26から吐水された洗浄水は、曲率半径が小さいリム部16の前端部16a付近を通過してリム部16の後方側へと旋回する流れ(旋回流f1)を形成すると共に、リム部16の上端側から下降する流れ(下降流f2)を形成し、これらの旋回流f1と下降流f2により、ボウル部8内を効果的に洗浄することができるようになっている。また、リム部16の上端側に配置された比較的高い位置にあるリム吐水口26から吐水された洗浄水によって、ボウル部8のリム部16の前端部16a付近を確実に洗浄することができるようになっている。
さらに、リム吐水口26が棚部18から所定距離h上方のリム部16に形成されていることにより、リム吐水口26から吐水された洗浄水は、詳細は図14及び図15を用いて後述するが、第1週目の第1旋回軌道T1の旋回流f1が棚部18上に流下することなく旋回し、第2週目の第2旋回軌道T2の旋回流f3が棚部18上を旋回し、特に水飛びが発生しやすいリム吐水口26付近において、リム部16を旋回する第1旋回軌道T1と第2旋回軌道T2の洗浄水同士の衝突による水撥ねの発生を抑制することができるようになっている。
また、リム吐水口26がボウル部8のリム部16の上端側に形成されていることにより、ボウル部8を前方斜め上方から見た使用者に対して、リム吐水口26が確実にリム部16のオーバーハング部16bの死角に入るため、リム吐水口26を使用者がより視認し難くなるようになっている。さらに、使用者が感じる清潔感を向上させることができると共に、ボウル部8の全体の美観を向上させることができるようになっている。
さらに、リム吐水口26は、ボウル部8の棚部18の内縁部18aよりも外側(棚部18の外縁部18b側)に位置するリム部16に形成されており、詳細は図14及び図15を用いて後述するが、第1旋回軌道T1が第2旋回軌道T2に対して平面視において外側に位置している。これにより、特に水飛びが発生しやすいリム吐水口26付近において、第1旋回軌道T1と第2旋回軌道T2の洗浄水同士の衝突による水撥ねの発生を効果的に抑制することができるようになっている。
さらに、ボウル部8のリム部16は、リム吐水口26内に形成された通水路26aの上面を形成する上縁部26bから下流側に向かって延びるリム部16の内周面17の立ち上がり部16cにかけて連続的に形成された連続形成部26cを備え、この連続形成部26cは、便器本体2の前方側から見て中心線A1(図3参照)に対して右側のリム部16の内周面17に位置している。このような連続形成部26cにより、リム吐水口26の上面とリム部16のオーバーハング部16bが連続的に形成されているので、リム吐水口26から吐水された洗浄水がリム部16の内周面17に沿って滑らかに流れるようになっている。また、曲率半径が小さいリム部16の前端部16a付近を通過する旋回流f1と下降流f2が形成されるので、ボウル部8のリム部16の前端部16a付近を確実に洗浄することができるようになっている。さらに、リム吐水口26を形成する通水路26aの上側面を形成する上縁部26bとリム部16の内周面17が連続的に形成されていることにより、リム吐水口26から吐水された洗浄水が遠心力でリム部16の内周面17に沿って滑らかに流れることができるようになっており、旋回する洗浄水同士が衝突して水撥ねが発生することを抑制することができるようになっている。
また、リム部16の前方側領域F1,F2のオーバーハング部16bは、リム吐水口26から前方側に向ってリム部16の前方側領域F1内の前端部16aまで延び、この前端部16aから連続形成部26cまで延びており、ボウル部8内を上方から見てリム部16の前端部16aに対して左右対称に配置されている。このように、リム吐水口26がリム部16の前端部16a付近に形成され、リム部16のオーバーハング部16bがリム吐水口26を覆うので、使用者は、前方斜め上方から見たときに、リム吐水口26を視認することができないようになっている。さらに、リム部16のオーバーハング部16bがボウル部8のリム部16の前端部16a付近に左右対称に形成されているので、ボウル部8の全体の美観を向上させることができるようになっている。
また、リム吐水口26の後方側の口縁部26dは、リム吐水口26の吐水方向に向って下方から上方に傾斜している。これにより、リム吐水口26から吐水された洗浄水は、下方から上方に傾斜したリム吐水口26の口縁部26dにより、曲率半径が小さいリム部16の前端部16a付近を通過してリム部16の後方側へと旋回する流れ(旋回流f1)を形成すると共に、リム部16の上端側から下降する流れ(下降流f2)を形成し、これらの旋回流f1と下降流f2により、ボウル部8のリム部16の前端部16a付近を確実に洗浄することができるようになっている。
また、リム吐水口26の口縁部26dが吐水方向に向って下方から上方に傾斜していることにより、第1旋回軌道T1と第2旋回軌道T2の境界に不洗浄部ができたとしても、リム吐水口26から吐水される洗浄水が下降して流れ、この不洗浄部が生じることを防止することができるようになっている。
さらに、このような吐水方向に向って下方から上方に傾斜しているリム吐水口26の口縁部26dにより、リム吐水口26から吐水された洗浄水の一部を下降させることができるようになっており、この下降する洗浄水により、ゼット吐水口22から吐水された洗浄水の旋回流f4が凹部20の外側に飛び出そうとするのをより効果的に抑え込むことができるようになっている。また、ボウル部8の凹部20内において、ゼット吐水口22からの吐水に、このような下降するリム吐水が加わることにより、横方向の旋回流と縦方向の旋回流が組み合わされた、強力な回転力を備えた旋回流f4が生成され、汚物の排出性能を高めることができようになっている。さらに、リム吐水とゼット吐水とが衝突した際に生じる水撥ねについてもより効果的に抑制することができるようになっている。
ボウル部8のリム部16は、使用者がボウル部8の前方斜め上方から視認できるボウル部8内の後方側領域Rや前方側領域F3領域において左右対称に形成されおり、リム吐水口26については、内周側が開放されているが、上方がオーバーハング部16bにより覆われているため、ボウル部8の前方斜め上方からリム部16を見た使用者から視認できないようになっており、ボウル部8の全体の美観を向上させることができるようになっている。
特に、図9〜図11に示すように、リム吐水口26は、ボウル部8のリム部16の前端部16a付近に形成され、リム部16の前方側領域F1内の内周面17が、リム部16の前端部16a付近において、鉛直面17aとこの鉛直面17aから内方に向かって延びる水平面17bとによりオーバーハングした形状に形成されている。そして、この鉛直面17aと水平面17bとにより、リム部16の内周側前端部16a付近の棚部18上に前方に突出した凹み空間Bを形成し、この凹み空間B内において、リム吐水口26とリム部16の鉛直面17とが面一となるように連続して形成されている。
すなわち、リム吐水口26は、ボウル部8のリム部16の前方側領域F1,F2において、ボウル部8のリム部16の後方側領域R及び前方側領域F3のほぼ鉛直方向に立ち上がる立ち上がり部16cを形成する内周面17と面一となる仮想面16dに対して前方に且つ左右方向に所定の幅で突出するように形成された凹み空間B内に形成されている。この凹み空間Bの上縁部は、オーバーハング部16bと一致し、凹み空間B内の内周面16fの前端部16aの下端は、棚部18の外縁部18bの前端18cと一致している。
また、リム吐水口26は、凹み空間Bの上縁部16bの後縁16eよりも前方に且つ棚部18の外縁部18bの前端18cよりも後方に位置し、凹み空間B内には、リム吐水口26の口縁部26dの後端から凹み空間B内の内周面16fに沿って前端部16a付近まで延びる通水路26aが形成され、この通水路26aから凹み空間B内の内周面16fの最前部16aを通過して延びた延長部分26eは、凹み空間B内からその後方側のリム部内周面16cの連続形成部26cにかけて連続的に形成されている。これにより、ボウル部8を前方斜め上方から見た使用者がリム吐水口26を視認し難くなり、使用者が感じる清潔感を向上させることができるようになっている。
さらに、詳細は図14及び図15を用いて後述するが、リム吐水口26から吐水された洗浄水の旋回方向と、ゼット吐水口22から吐水された洗浄水の旋回方向が、平面視で、同一方向になるようになっている。また、ゼット吐水口22における吐水方向D1(図14の矢印D1)は、前方に向って斜め下方となっており、リム吐水口26における吐水方向D2(図14の矢印D2)とほぼ同一となるようになっている。
つぎに、図6、図10、図12及び図13を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器1の陶器製の便器本体2の製造時の接着工程について説明する。
図12は本発明の一実施形態による水洗大便器における接着工程前の状態の便器本体を示す側面図であり、図13は本発明の一実施形態による水洗大便器における接着工程前の状態の便器本体を示す正面断面図である。
図12及び図13に示すように、本実施形態の水洗大便器1の陶器製の便器本体2は、汚物受け面14及び棚部18を形成し且つリム部16を除くボウル部8を備えた下側便器本体部2aと、リム部16を備えた下側便器本体部2aとは、便器本体2の製造時に、予め別々に成形された後に、接着工程において下側便器本体部2aの上端部2cの全周に亘って下端部2dが接着される上側便器本体部2bを備えている。この上側便器本体部2bは、接着工程において下側便器本体2aのボウル部2本体の上端部に接着されるリム部16を備えている。
また、図13に示すように、上側便器本体部2bのリム部16は、このリム部16の内周及び外周をそれぞれ形成するリム内壁部16g及びリム外壁部16hと、これらリム内壁部16gとリム外壁部16hの両下端部を結合するリム底面部16iと、リム内壁部16gとリム外壁部16hの両上端部を結合するリム上面部16jを備え、これらリム内壁部16g、リム外壁部16h、リム底面部16i及びリム上面部16jによりリム導水路10dが形成されている。これにより、リム部16のリム内壁部16g、リム外壁部16h、リム底面部16i及びリム上面部16jにより形成された空間をリム導水路10dとして利用することにより、別途導水路を設ける必要がなく、便器本体2を簡易な構造にすることができるようになっている。また、リム吐水口26が、ボウル部8の前方位置にあるリム内壁部16gに形成されていることにより、さらに、簡易な構造となっている。
さらに、図6及び図10は、下側便器本体部2aと上側便器本体部2bとの接着工程後の状態の便器本体2を示しているが、リム部16を除く下側便器本体部2aのボウル部8と上側便器本体部2bのリム部16との接着部を示す接着ラインC(境界線)は、上方から見た平面視においてリム底面部16iの下方領域内に位置している。これにより、リム部16とこのリム部16を除くボウル部8との接着部である接着ラインCが便器本体2の外側表面に表れた状態であっても、この境界線Cが上方から見たときリム底面部16iの下方領域内に位置しているため、リム部のリム底面部によって隠れて視認することができなくなり、便器1の外側全体の美観を向上させることができるようになっている。
また、図6及び図13に示すように、下側便器本体部2aのボウル部8の本体と上側便器本体部2bのリム部16との接着部である接着ラインCは、接着工程においてボウル部8の上端部8aとリム内壁部16gの下端部16kとが線接触することにより、ボウル部8の本体とリム部16との境界線を形成し、この境界線は、ボウル部8の本体及びリム部16の内側から視認可能となっている。これにより、便器本体2の製造時にリム部16とこのリム部16を除くボウル部8とを接着させる際に、リム内壁部16gの下端部とリム部16を除くボウル部8の上端部8aとが線接触することにより形成される境界線(接着ラインC)が、ボウル部8の内側から視認可能であるため、便器本体2の製造におけるリム部16とリム部16を除くボウル部8との接着作業を容易に行うことができる。
つぎに、図1〜図17により、本発明の一実施形態による水洗大便器の作用(動作)を説明する。
図14は、本発明の一実施形態による水洗大便器においてゼット洗浄開始後にリム洗浄が行われているときのリム吐水の第1周目の第1旋回軌道と第2周目の第2旋回軌道を概略的に説明する斜視図であり、図15は、本発明の一実施形態による水洗大便器においてリム吐水の旋回流が凹部内へ流下している状態を概略的に説明する斜視図である。
まず、使用者が、便器洗浄のための操作レバー(図示せず)を操作すると、便器洗浄が開始され、貯水タンク6内の洗浄水が共通導水路10aを経てゼット導水路10bとリム導水路10cに分岐して流れる。そして、最初にゼット吐水口22からの吐水が開始された後に、リム吐水口26からの吐水が遅れて開始される。この際、ゼット吐水口22における吐水方向D1(図14の矢印D1)は、前方に向って斜め下方となっており、リム吐水口26における吐水方向D2(図14の矢印D2)とほぼ同一となっている。
また、図11及び図14に示すように、リム吐水口26から吐水されたリム吐水は、その主流がリム部16の内周面に沿って前方側へ流れ、曲率半径が最小となるリム部16の前端部16a付近を通過してリム部16の後方側へと左回りに旋回する流れ(旋回流f1)を形成すると共に、リム吐水の一部がリム部16の上端側から下降する流れ(下降流f2)を形成する。また、第1周目を旋回した後のリム吐水は、第1周目の旋回流f1の内側に第2周目の左回りの旋回流f3を形成する。
一方、ゼット吐水口22から前方に向って斜め下方(吐水方向D1)に吐水されたゼット吐水は、凹部20内の前方側の壁面20b及び底面20aに沿って流れ、後方側に向って下方から斜め上方に上昇しながら旋回した後、凹部20内の後方側の壁面20bに沿って前方且つ斜め下方に旋回する斜め旋回流f4を形成する。この斜め旋回流f4は、凹部20内を上方から平面視で見て左回りの旋回流を形成しており、リム吐水の旋回方向とゼット吐水の旋回方向は、平面視において同一方向(左回り)となっている。
また、図14に示すように、リム吐水口26から吐水された洗浄水がリム部16に沿って第1周目の旋回流f1で旋回しているときの第1旋回軌道T1は、この第1旋回軌道T1で第1周目の旋回を終えた次にリム部16及び棚部18に沿って第2周目の旋回流f3で旋回しているときの第2旋回軌道T2よりも上方且つ外側に位置している。
つぎに、図14に示すように、リム吐水は、左回りの旋回流の方向の勢いを概ね維持しながら汚物受け面14に沿って凹部20内へ流下し、凹部20内のゼット吐水の旋回流に合流し、凹部20内において比較的強力で速い回転力を備えた斜め旋回流f4を生成する。
また、図15に示すように、リム吐水が凹部20内のゼット吐水の斜め旋回流f4に合流した後も新たなリム吐水がリム吐水口26から継続して行われ、汚物受け面14上を旋回するリム吐水の水量が増すと、水勢を増したリム吐水の旋回流f5が、凹部20内のゼット吐水の斜め旋回流f4に向けて流下して合流し、凹部20内の汚物を排水トラップ管路12の入口12aに向けて強力に押し込む流れを形成する。
最終的には、リム吐水合流後の凹部20内の斜め旋回流f4の比較的強力な回転力により、比重が大きい汚物をボウル部8から排水トラップ管路12内に押しこむことができ、比重が小さい浮遊系汚物については、合流後の比較的速い回転の斜め旋回流f4により、ボウル部8から排水トラップ管路12内へ送出することができる。
つぎに、図16の(a)は、本発明の一実施形態による水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったときのリム吐水及びゼット吐水に関する流速分布を解析した結果の一例を示し、図16の(b)は、図16の(a)に示す解析結果の比較例として、従来の水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったときのリム吐水及びゼット吐水に関する流速分布を解析した結果を示す。
まず、図16の(a)に示す洗浄水の色の濃淡は、洗浄水の流速の大きさを示しているが、上述した本実施形態の水洗大便器1の便器本体2を上方から見たときに、ボウル部内のリム吐水口からリム部前端を経て左回りに旋回した後方側の領域にかけて、及び凹部のゼット吐水口付近とその前側の領域において、洗浄水の比較的大きな流速が得られている。
これに対し、図16の(b)に示す比較例の水洗大便器は、本実施形態の水洗大便器1の形態とは異なり、リム部の後方側の領域に2つのリム吐水口(第1及び第2リム吐水口)とボウル部内の凹部の片側の側壁面にゼット吐水口が設けられている形態であるが、ボウル部内のリム部前端から後方側の第2リム吐水口付近までの領域において、本実施形態の水洗大便器1に比べて洗浄水の流速が比較的小さくなっており、本実施形態の水洗大便器の洗浄力が従来の水洗大便器に比較してより向上していることがわかる。
つぎに、図17の(a)は、本発明の一実施形態による水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったときのゼット吐水に関する流速分布と流れの様子を解析した結果の一例を示し、図17の(b)は、図17の(a)に示す解析結果の比較例として、従来の水洗大便器を用いて便器洗浄を行ったときのゼット吐水に関する流速分布と流れの様子を解析した結果を示す。
まず、図17の(a)に示す洗浄水の流線の色の濃淡は、洗浄水の流速の大きさを示しているが、上述した本実施形態の水洗大便器1の便器本体2を側方から見たときに、ボウル部の凹部のゼット吐水口から前方に向って斜め下方に吐水されたゼット吐水が、凹部内の前方側壁面及び底面に沿って流れ、後方側に向って下方から斜め上方に上昇しながら旋回した後、凹部内の後方側の壁面に沿って前方且つ斜め下方に旋回する斜め旋回流f4を形成していることがわかる。
これに対し、図17の(b)に示す比較例の水洗大便器は、図16の(b)に示す比較例の水洗大便器と同一の形態であり、ゼット吐水口から吐水されたゼット吐水が、ゼット吐水口と対向する凹部の側壁面に向けて吐水された後に凹部の底面に下降する流れを形成している。したがって、比較例による水洗大便器の凹部内の旋回流の流速及び回転力は、図17の(a)に示す本実施形態の水洗大便器1の強力な斜め旋回流f4の流速及び回転力に比べて弱まっており、排水トラップ管路へ押し込む流れも小さいため、本実施形態の水洗大便器が従来の水洗大便器に比較して汚物の排出性能がより向上していることがわかる。
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、リム部16の前方側領域F1内の前端部16a付近に形成された前方側領域F2のリム吐水口26から前方に向けて吐水された洗浄水は、リム部16の前方側領域F1内の前端部16aを経て、リム部16の前端部16aの曲率半径ρ1よりも大きい後方側領域Rへ吐水の勢いを保ちながら滑らかに流れ、さらに、リム部16の後方側領域Rは、左右対称にほぼ一定の曲率半径ρ3により形成されているので、吐水の勢いを減少させることなく洗浄水に作用する遠心力を利用し、洗浄水を周回させることができる。この結果、リム部16の内周面17がほぼ鉛直方向に立ち上がる形状であっても、リム部16を流れる洗浄水が便器1の外側に飛び出すことを防ぐことができ、ボウル部内の広範囲を比較的強い水勢で洗浄することができる。
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、ボウル部8のリム部16が、前方側領域F3内において、後方側領域Rの曲率半径ρ3よりも大きい曲率半径ρ4により形成されているので、リム吐水口26から吐水されてリム部16の前端部16aを通過した洗浄水は、ボウル部8のリム部16の前方側領域F1内の内周側前端部16aに近接する前方側領域F2に比較的強い水勢を維持した状態で流れる。この洗浄水は、リム部16の後方側領域Rの曲率半径ρ3よりも大きい曲率半径ρ4により形成されたリム部16の前方側領域F3を流れることにより、リム部16の前方側領域F1からの洗浄水の比較的強い水勢を維持しつつ安定した状態でリム部の後方側領域Rに滑らかに流れるため、リム部16の内周面17がほぼ鉛直方向に立ち上がる形状であっても、リム部16を流れる洗浄水が便器1の外側に飛び出すことを防ぐことができる。
さらに、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、リム吐水口26からリム部16の前方側領域F1内の内周側前端部16aに向けて強い水勢で吐水される洗浄水は、最小曲率半径ρ1により形成されたリム部16の前方側領域F1内の前端部16aを通過する際に生ずる適度なエネルギー損失により、水勢が適度に抑制されるため、洗浄水が、勢いが強すぎることにより便器1の外側に飛び出すことを防ぐことができる。
さらに、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、特に水飛びが発生しやすい、リム吐水口26から最小の曲率半径ρ1を備えたリム部16の前方側領域F1内の前端部16aまでの部分の上縁部が、内方へ突出したオーバーハング形状により形成されたオーバーハング部16bを備えているので、万一、リム部16を旋回する洗浄水がリム吐水口26からリム部16の前方側領域F1内の前端部16aに至る部分において水撥ねが発生したとしても、この水撥ねがリム部16のオーバーハング部16bに当たるため、便器1の外部への水飛びを防ぐことができる。
なお、上述した本実施形態による水洗大便器1においては、例として、洗い落し式の水洗大便器について説明したが、サイホン作用を利用してボウル部内の汚物を吸い込んで排水トラップ管路から一気に外部に排出する、いわゆる、サイホン式の水洗大便器であってもよい。
また、上述した本実施形態による水洗大便器1においては、ゼット導水路10b及びゼット吐水口22によるゼット吐水を行うと共に、リム導水路10d及びリム吐水口26によるリム吐水を行うような形態について説明したが、このような形態に限定されず、ゼット導水路10b及びゼット吐水口22によるゼット吐水を省略し、リム導水路10d及びリム吐水口26によるリム吐水のみを行うような形態についても適用可能である。
1 水洗大便器
2 便器本体
2a 下側便器本体部
2b 上側便器本体部
2c 下側便器本体部の上端部
2d 上側便器本体部の下端部
4 便蓋
6 貯水タンク(洗浄水給水手段)
6a 貯水タンクの排水口
8 ボウル部
8a ボウル部の本体の上端部
10 導水路
10a 共通導水路
10b ゼット導水路
10c 導水路の入口部
10d リム導水路
12 排水トラップ管路(排水路)
12a 排水トラップ管路の入口
12b 排水トラップ管路の上昇路
12c 排水トラップ管路の下降路
14 汚物受け面
14a 汚物受け面の下縁部
16 リム部
16a リム部の前端部
16b リム部のオーバーハング部
16c リム部の立ち上がり部
16d リム部の立ち上がり部の内周面と面一となる仮想面
16e リム部のオーバーハング部の後縁
16f リム部の凹み空間内の内周面
16g リム部内壁部
16h リム部外壁部
16i リム部底面部
16j リム部上面部
16k リム部内壁部の下端部
17 リム部の内周面
17a 鉛直面
17b 水平面
18 棚部
18a 棚部の内縁部
18b 棚部の外縁部
18c 棚部の外縁部の前端
20 凹部
20a 凹部の底面
20b 凹部の壁面
22 ゼット吐水口(ゼット吐水部)
24 排水ソケット
26 リム吐水口(リム吐水部)
26a リム吐水口内の通水路
26b リム吐水口内の通水路の上縁部
26c 連続形成部
26d リム吐水口の口縁部
26e リム吐水口内の通水路の延長部分
A1 ボウル部の前後方向中心線
A2 ボウル部の左右方向中心線
B 凹み空間
C 接着ライン
D1 ゼット吐水の吐水方向
D2 リム吐水の吐水方向
F ボウル部の前方側領域
F1 ボウル部の前方側領域
F2 ボウル部の前方側領域
F3 ボウル部の前方側領域
f1 第1周目の旋回流(主流)
f2 下降流
f3 第2周目の旋回流
f4 斜め旋回流
f5 旋回流
R ボウル部の後方側領域
T1 第1旋回軌道
T2 第2旋回軌道

Claims (4)

  1. 洗浄水源から供給される洗浄水により便器を洗浄して汚物を排出する水洗大便器であって、
    ボウル形状の汚物受け面と、上縁部に形成されその内周面がほぼ鉛直方向に立ち上がるように形成されたリム部と、このリム部と上記汚物受け面との間に形成された棚部と、を備えたボウル部と、
    このボウル部の下方にその入口が接続され汚物を排出する排水路と、
    上記ボウル部の棚部上に洗浄水を吐水して旋回流を形成する吐水部と、
    この吐水部に洗浄水を供給する導水路と、を有し、
    上記吐水部は、上記リム部の前方側領域内の前端付近に形成され、上記リム部の後方側領域は、上記リム部の前方側領域の前端の曲率半径よりも大きく且つ左右対称にほぼ一定の曲率半径により形成され、上記吐水部は、前方に向けて吐水し、上記リム部の前方側領域内の前端を経て、リム部の後方側領域に流れる旋回流を形成することを特徴とする水洗大便器。
  2. 上記ボウル部のリム部は、上記前方側領域内において、上記後方側領域の曲率半径よりも大きい曲率半径により形成された上記前端付近に近接する領域を備えている請求項1記載の水洗大便器。
  3. 上記リム部の前方側領域内の前端は、上記リム部の全周の中で最小の曲率半径により形成され、上記吐水部は、上記リム部の前端の左右の何れか一方の側に隣接し且つ大きな曲率半径から小さな曲率半径に変化している部分に形成されている請求項1記載の水洗大便器。
  4. 上記ボウル部のリム部は、上記吐水部から上記リム部の前方側領域内の前端付近までの部分の上縁部が内方へ突出したオーバーハング形状により形成されている請求項3に記載の水洗大便器。
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