JP4935703B2 - 溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法 - Google Patents

溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法 Download PDF

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本発明は、石油または天然ガス等の輸送用ラインパイプとして使用される電縫鋼管の製造方法に関する。
天然ガス輸送用パイプライン等に使用される鋼管(ラインパイプ)では、その要求特性の厳格化がすすみ、極低温環境(≦−45℃)にも耐えるよう極低温でも高靭性となる鋼管の必要性が高まっている。
電縫鋼管は、ラインパイプとしても従来からよく用いられているが、こうした極低温靭性要求に対しては、電縫シーム部(電縫溶接部)の品質に課題があり、ほとんど適用された実績が無い。これは、電縫溶接(電気抵抗溶接)の際に生成する微小な酸化物が溶接完了後もシーム部(溶接部)内に残留し、これが極低温でのシャルピー試験における吸収エネルギー値の低下要因となり、必要とされる靭性値を安定して得ることができないためである。
従来から、こうした残留微小酸化物の削減のために、様々な試みが実施されてきた。溶接装置と溶接部周辺の鋼管をすっぽり覆ってしまい、不活性ガス等で酸素濃度を低下させた状態で電縫溶接を行う、所謂シールド溶接などが代表的な技術である(例えば、特許文献1参照)。
なお、[発明が解決しようとする課題]の項において、本出願人の未公開先行出願を引用するので、その出願番号をここに記載しておく。すなわち、特願2005−362722号(未公開出願1)である。
また、[発明を実施するための最良の形態]の項において、下記の特許文献2(本願の優先日より後に出願された)を引用するので、ここに合わせて記載しておく。
特開平4−178281号公報 特開2007−163470号公報
上述したような、溶接装置と溶接装置の周辺をすっぽり覆ってしまい、大気から遮断して不活性ガスで置換するシールド溶接は、主に外径がφ165mm以下の小径管を製造するミルでは広く実用化されているが、外径が大きくなるに従い、溶接装置も大型化し、シールド領域も大型化しなければならず、完全な密閉が工業的に難しくなるため、外径がφ165mmを越える中径管あるいは大径管を製造するミルでシールド溶接を実用化しているところはほとんどない。
これに対して、本出願人は、前記未公開出願1において、シールド溶接を用いることなく、極低温でも靭性が良好な電縫鋼管を得ることができる電縫鋼管の製造方法を提案している。
すなわち、電縫鋼管は、所定の幅に切断された鋼帯をロールフォーミング装置によって連続的にロール成形して略管形のオープン管とし、そのオープン管の両エッジを電縫溶接する(詳しくは、オープン管のそれぞれのエッジに高周波電流を通電し、それによって生じるジュール熱で両エッジを加熱・溶融し、その後、両エッジを突き合わせて圧接する)ことで製造される。
その際に、従来の電縫溶接では、図8(a)に横断面形状を示すように、オープン管のエッジの形状は単純な矩形であるため、通電の際にエッジの外表面と内表面近傍に電流が集中し、板厚中心では電流密度が低くなることから、この板厚方向の電流密度の不均一は、そのまま温度分布の不均一となり、ひいては板厚中心の温度が低いことによる酸化物排出不良を引き起こす本質的な原因であった。
そこで、前記未公開出願1では、図8(b)に横断面形状を示すように、オープン管のエッジの外表面と内表面のコーナー部に、所定のテーパー形状(開先形状)を付与しておき、それによって、前述の板厚方向の電流密度不均一を解消し、溶接部から酸化物を効率的に排出して、極低温でも高靭性を有する電縫鋼管を得ようとしている。
しかし、実際の操業においては、母材となる鋼帯のキャンバー(曲がり)などの寸法変動や強度のばらつきなどによって、エッジに付与した開先形状が所定の形状どおりにならない場合がある。その場合には、溶接部の温度分布が変動して、所望の靭性を有する電縫鋼管を安定して製造することができない可能性がある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、母材となる鋼帯に寸法変動等があっても、所望の溶接部靭性を有する電縫鋼管を安定して製造することが可能な、溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
[1]鋼帯を略管形のオープン管に成形し、そのオープン管の両エッジを電縫溶接する電縫鋼管の製造方法において、
予めオープン管のエッジに開先形状を付与しておき、電縫溶接を行う前に前記開先形状を計測するとともに、電縫溶接後に当該溶接部の酸化物量を計測し、それらの計測結果に基づいて、電縫溶接の溶接電力を調節することを特徴とする溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法。
[2]電縫鋼管の製造前に予め、開先形状の開先高さに対する靭性と溶接電力の関係を求め、その靭性と溶接電力の関係から、開先高さと所望の靭性が得られる溶接電力との関係を求めておくとともに、溶接電力と溶接部の酸化物量との関係も求め、その溶接電力と溶接部の酸化物量との関係から、溶接部の酸化物量と溶接電力の補正係数との関係を求めておき、
その後、電縫鋼管の製造中において、
付与された開先形状の開先高さを電縫溶接を行う前に計測し、前記計測された開先高さならびに前記開先高さと所望の靭性が得られる溶接電力との関係から、前記計測された開先高さに対し所望の靭性が得られる溶接電力を求め、この求められた溶接電力に基づいて電縫溶接の溶接電力を調節するとともに、
電縫溶接後に当該溶接部の酸化物量を計測し、前記計測された酸化物量ならびに前記溶接部の酸化物量と溶接電力の補正係数との関係から、前記計測された酸化物量に対し溶接電力の補正係数を求め、この求められた溶接電力の補正係数に基づいて電縫溶接の溶接電力を調節することを特徴とする前記[1]に記載の溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法。
[3]オープン管のエッジにレーザースリット光を照射し、そのレーザースリット光で照射されたオープン管のエッジをカメラで撮影することによって、開先形状を計測することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法。
[4]超音波を用いて当該溶接部の酸化物量を計測することを特徴とする前記[1]乃至[3]のいずれかに記載の溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法。
[5]予めオープン管のエッジに開先形状を付与しておく方法は、エッジ切削装置で付与する方法、ロールフォーミング装置で付与する方法、または孔型ロールを用いて付与する方法のいずれかであることを特徴とする前記[1]乃至[4]のいずれかに記載の溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法。
[6]鋼帯を略管形のオープン管に成形するオープン管成形手段と、オープン管の両エッジを電縫溶接する電縫溶接手段を備えた電縫鋼管の製造設備において、
予めオープン管のエッジに開先形状を付与する開先形状付与手段と、電縫溶接を行う前に前記開先形状を計測する開先形状計測手段と、電縫溶接後に当該溶接部の酸化物量を計測する酸化物量計測手段と、前記開先形状計測手段と酸化物量計測手段の計測結果に基づいて電縫溶接の溶接電力を調節する溶接電力調節手段を設けたことを特徴とする電縫鋼管の製造設備。
本発明においては、大量生産となる実操業において、母材となる鋼帯の寸法変動や強度のばらつき等の不可避的要因によって、オープン管のエッジに付与した開先形状が変動した場合でも、溶接部靭性値のばらつきを抑止して、所望の靭性を有する電縫鋼管(特に、これまで製造が困難であった極低温用途にも適した電縫鋼管)を安定して製造することができる。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態における電縫鋼管の製造ラインを示すものである。
通常の電縫鋼管の製造ラインと同様に、所定の幅に切断されたコイル(鋼帯)1のエッジをエッジ切削装置2によって切削した後、ロールフォーミング装置3によって連続的にロール成形して略管形のオープン管4とし、そのオープン管4の両エッジ4a、4bを電縫溶接する、すなわち、オープン管4のそれぞれのエッジ4a、4bに溶接電力発生装置(溶接機)6によって高周波電流を通電し、それによって生じるジュール熱で両エッジ4a、4bを加熱・溶融し、その後、スクイズロール(図示せず)によって両エッジ4a、4bを突き合わせて圧接することで、電縫鋼管7を製造するようになっている。なお、電縫溶接装置(溶接電力発生装置6とスクイズロール)の下流側の近接した位置に、電縫溶接で形成されたビード(余盛り)を切削するビード切削バイト(図示せず)が設けられている。
その上で、この実施形態においては、エッジ切削装置2、ロールフォーミング装置3、または両エッジ4a、4bを適切に加工するための孔型ロール(図示せず)を用いて、鋼帯1幅両端部の外表面と内表面のコーナー部にテーパー加工を施すことによって、図8(b)に示したような開先形状(テーパー形状)をオープン管4のエッジ4a、4bに付与しておき、電縫溶接を行う直前にエッジ4a、4bをエッジ形状モニター(高精度モニターカメラ)11によって連続的に撮影し、その撮影画像を溶接機6に連結した演算処理装置14にリアルタイムで入力して画像処理することによって開先形状の微妙な変化を計測するとともに、電縫溶接後に当該溶接部(開先形状を計測した個所に対応する溶接部)を超音波探傷器15によって検査し、その検査データを演算処理装置14にリアルタイムで入力して演算処理することによって当該溶接部の酸化物分布を計測し、それら開先形状の計測結果(寸法データ)と酸化物分布の計測結果(酸化物量)に基づいて最適な溶接電力を求めて、溶接電力発生装置6からの溶接電力を調節するようにしている。
図2は、上記のエッジ形状モニター11を用いた開先形状の計測の詳細説明図である。図2(a)は上面図、図2(b)は図2(a)のA−A矢視図(横断面図)である。
図2に示すように、エッジ形状モニター11は、レーザースリット光照射装置12と画像計測カメラ13を組み合わせたもの(光切断)であり、ここでは、オープン管4の一方のエッジ4aにレーザースリット光を所定の照射角度θで斜め方向から照射するレーザースリット光照射装置12aと、そのレーザースリット光で照射されたエッジ4aを撮影する画像計測カメラ13aと、オープン管4の他方のエッジ4bにレーザースリット光を所定の照射角度θで斜め方向から照射するレーザースリット光照射装置12bと、そのレーザースリット光で照射されたエッジ4bを撮影する画像計測カメラ13bとからなっている。
これによって、レーザースリット光照射装置12a、12bからのレーザースリット光で照射されたエッジ4a、4bを画像計測カメラ13a、13bで撮影し、その撮影画像を演算処理装置14で画像処理して、それぞれの開先形状5a、5bを計測する。ここでは、特に、図2(b)に示す4個所の開先高さhを計測するようにしている。
そして、上記のようにして開先形状を計測した個所について、電縫溶接後の残留酸化物の量を超音波探傷器15を用いて計測するようにしている。
次に、前述したように、上記の開先高さhの計測結果と当該溶接部の酸化物量の計測結果に基づいて最適な溶接電力を演算して、溶接電力発生装置6からの溶接電力を調節することになるが、その際の基本的な考え方を以下に述べる。
図3は、オープン管4の両エッジ4a、4bに開先形状5a、5bを付与して電縫鋼管を製造した場合について、開先高さhをパラメータにして、溶接電力(図3では、単位時間当たり・単位面積当たりに換算してあり、単位はkW/(sec・mm2)である)と溶接シーム部の靭性(シャルピー試験遷移温度)との関係を整理した一例を示すものである。ここでは、溶接シーム部の靭性をシャルピー試験遷移温度(以下、単に遷移温度)で表し、コイル厚tを12.7mm、開先高さhを2mm、3mm、4mmと変化させるとともに、比較のために、開先形状を付与しない場合(開先なし)も示している。なお、図3は溶接電力と溶接シーム部の靭性(シャルピー試験遷移温度)の関係を定性的に示したものであり、溶接電力の値は省略してある。
図3から明らかなように、開先形状を付与しない場合に比べて、開先形状を付与した場合は、遷移温度が大きく低下して、靭性が大幅に向上しており、開先形状を付与した効果が現れている。
ただし、開先高さが同じ場合に遷移温度が最も低くなる溶接電力(図3中の白抜きの点)は、開先高さによって変化している。言い換えれば、ある開先高さに対応して最適な溶接電力で電縫溶接していても、開先高さが変化すると、そのままの溶接電力では、最適な溶接電力から外れることになり、靭性(遷移温度)が大きく変動してしまうことになる。
そこで、この実施形態においては、開先高さhの変化に対応して、溶接電力をその開先高さhにおける最適な溶接電力となるように調節することによって、靭性(遷移温度)の変動(ばらつき)を最小化するようにしている。
すなわち、図4に示すように、横軸を最適溶接電力(図4では、単位時間当たり・単位面積当たりに換算してあり、単位はkW/(sec・mm2)である)に、縦軸を(開先高さ合計2h/コイル厚さt)にとり、遷移温度が最も低くなる溶接電力(図3中の白抜きの点)をプロットして得られる曲線が、開先高さhの変化に対応した溶接電力最適化曲線(溶接電力補正曲線)ということになる。そして、前述した開先高さhの計測結果に基づいて、この溶接電力最適化曲線からその開先高さhに最適な溶接電力を求め、溶接電力をその最適溶接電力に設定するようにする。なお、図4は最適溶接電力と縦軸(開先高さ合計2h/コイル厚さt)を定性的に示したものであり、最適溶接電力の値は省略してある。
あるいは、溶接電力を当初目標の開先高さhm(例えば、3mm)で最適な溶接電力に設定しておき(すなわち、図4において、開先高さ3mmの場合を原点としておき)、開先高さのズレ量に応じて、最適な溶接電力の変動量だけ溶接電力を補正するようにしてもよい。
なお、図4の溶接電力最適化曲線(溶接電力補正曲線)は、電縫鋼管の製造(操業)を開始する前に予め作成しておき、同一種類の電縫鋼管を製造する際には、同じ溶接電力最適化曲線(溶接電力補正曲線)を利用する。
しかし、前記のような制御を行っても、操業条件等の変動により、溶接部に微細な酸化物が残留して脆性の低下を招くことがある。
そこで、この実施形態においては、電縫溶接後の溶接部の酸化物量を計測し、その計測結果を演算処理装置14を介して溶接電力発生装置6にフィードバックして溶接電力を調節し、溶接部の残留酸化物を安定して低減化することとした。その際、通常は、残留酸化物が多い場合には、溶接電力を増加させて酸化物の浮上除去を促進させる。
溶接部の残留酸化物量(特に溶接部の靭性に影響のある微小残留酸化物(数100μm以下)量)の計測手段は既知の手段が使える。たとえば、前記特許文献2に開示されたアレイ型探触子を用いた超音波探傷法や同文献内に開示された方法により計測可能である。
以下にアレイ型探触子を用いた超音波探傷器15を使用した際のフィードバックの方法を例示する。
図5に超音波探傷器15の計測値(平均エコー高さ)と吸収エネルギーの関係の一例を示す。なお、平均エコー高さは微細な酸化物量に相当する。したがって、ここでは、平均エコー高さが0〜20%ならば溶接部の酸化物量は少なく十分な靭性が得られている。
そこで、図4に基づいて設定した溶接電力で、種々の条件(素材の形状、材質、造管速度等々)で電縫溶接した後の溶接部の平均エコー高さ(=酸化物量)と溶接電力(単位はkW/(sec・mm2)である)の関係を、あらかじめ、図6のように求めておく。
次に、たとえば図5の例のように、平均エコー高さが20%程度であれば高靭性が確保できる場合は、基準値を20%として、図6に基づいて、平均エコー高さがx%の時の溶接電力の補正係数を下式により求める。なお、図6は平均エコー高さと溶接電力の関係を定性的に示したものであり、溶接電力の値は省略してある。
補正係数=(溶接電力)エコー高さ=20%/(溶接電力)エコー高さ=x%
ここで、(溶接電力)エコー高さ=20%は、図6における平均エコー高さ20%の時の溶接電力であり、(溶接電力)エコー高さ=x%は、図6における平均エコー高さx%の時の溶接電力である。
例えば、計測された溶接部の平均エコー高さが100%ならば、図6と上式から、補正係数は1.05となる。したがって、この場合は、設定された溶接電力を1.05倍する。
一方、計測された平均エコー高さが0〜20%ならば溶接条件は変更しなくてよい(補正係数は1)。
図7は、上記のようにして求めた平均エコー高さと補正係数の関係を示している。
なお、図7の溶接電力の補正係数は、電縫鋼管の製造(操業)を開始する前に予め作成しておき、同一種類の電縫鋼管を製造する際には、同じ補正係数を利用する。例えば、ある条件で設定した溶接電力で溶接した後に超音波探傷器15で測定された平均エコー高さが100%のときは、図7から補正係数が1.05なので、設定した溶接電力に1.05を乗じた溶接電力に制御する。なお測定された平均エコー高さが0〜20%ならば、図7から補正係数は1となるので溶接条件は変更しなくてよい。
また、超音波探傷器15による残留酸化物量の計測は、電縫溶接の直後に行うことが好ましい。具体的には、ビード切削バイトの直後に超音波探傷器15を配置することが好ましい。電縫溶接装置から離れれば離れるほど時間がたつので、フィードバックする情報としては、精度が落ちるからである。
上記の制御方法は一例であり、たとえば平均エコー高さが0〜20%の範囲に収まるように、溶接電力をチューニングするような他の手段を採用しても良いのは言うまでもない。
このようにして、ここでは、開先高さhの計測結果に基づくフィードフォワード制御と、残留酸化物量の計測結果(平均エコー高さ)に基づくフィードバック制御を組み合わせて、溶接電力の最適化を図っている。
以上述べたように、この実施形態においては、オープン管4のエッジ4a、4bに開先形状(テーパー形状)5a、5bを付与することによって、電縫溶接時の板厚方向の電流密度すなわち温度分布を均一化して、電縫溶接後のシーム内の残留微小酸化物を低減し、良好な極低温靭性を得られるようになっているとともに、付与した開先形状5a、5bの変化と当該溶接部の残留酸化物量を計測して、溶接電力をその開先形状5a、5bに対応した最適な溶接電力に調整することによって、母材となる鋼帯1の寸法変動や強度のばらつき等の不可避的要因で開先形状5a、5bが変化した場合でも、溶接部靭性のばらつきを抑止して、所望の靭性を有する電縫鋼管(特に、これまで製造が困難であった極低温用途にも適した電縫鋼管)を安定して製造することができるようになっている。
ちなみに、実操業においては、いったん製造を開始してしまうと、連続的に流れるコイル1あるいはオープン管4の開先形状5a、5bは、マニュアルでは測定不可能である。仮に開先形状5a、5bを測定できたとしても、リアルタイムに自動的に溶接機6の溶接電力を変化させる仕組みなしには、工業生産として効果を発揮できない。したがって、本発明の有用性は極めて高いものがある。
なお、上記において、開先形状5a、5bを付与するのは、エッジ切削装置2で付与してもよいし、ロールフォーミング装置3の中(例えば、フィンパスロールによる)で付与してもよいし、または孔型ロール(図示無し)を用いて付与してもよいが、できるだけ溶接機6に近い段階で開先形状5a、5bを付与する方が寸法精度は良くなるので好ましい。
また、場合によっては、開先形状5a、5bの計測は、オープン管4のいずれか一方の表面側(例えば、外表面側)の開先高さのみでもよい。この場合、図4の縦軸は、(計測されたいずれか一方の開先高さh/コイル厚さt)にて整理される。
また、開先形状5a、5bの計測は、レーザースリット光照射装置12を用いずに画像計測カメラ13でオープン管4のエッジ4a、4bを撮影し、その撮影画像の陰影に基づいて、開先高さhを算定することでも可能である。
さらに、オープン管4の外表面側と内表面側のいずれか一方の表面側に開先形状を付与する場合もある。
また、図4に一例を示した溶接電力最適化曲線(溶接電力補正曲線)は、演算処理装置14に、実験式として保持していても良いし、開先高さや開先高さとコイル厚さとの比や溶接電力等をパラメータとしたデータベースとして保持していても良く、計測された開先高さをこの実験式に当てはめて溶接電力を算出したり、計測された開先高さからデータベースを参照して(必要があればデータベースの値を補間して)溶接電力を算出したりしても良い。これは、図7に一例を示した残留酸化物(平均エコー高さ)による補正係数(補正係数曲線)についても同様である。
また、上記の実施形態において、図3から最も低い遷移温度となる溶接電力から図4の溶接電力最適化曲線(溶接電力補正曲線)を作成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、所望の靭性(例えば、電縫鋼管に要求される仕様)が得られる遷移温度に対応する溶接電力の範囲から、溶接電力最適化曲線(溶接電力補正曲線)を作成しても良い。この場合は、溶接電力最適化曲線(溶接電力補正曲線)は帯状となり、この帯状の範囲内で溶接電力を調整することとなる。図7に一例を示した残留酸化物(平均エコー高さ)による補正係数(補正係数曲線)についても同様である。
本発明の一実施形態を示す図である。 本発明の一実施形態の部分詳細図である。 本発明の一実施形態における溶接電力最適化曲線の作成を説明するための図である。 本発明の一実施形態における溶接電力最適化曲線の一例を示す図である。 本発明の一実施形態における溶接電力の補正を説明するための図である。 本発明の一実施形態における溶接電力の補正係数の算定を説明するための図である。 本発明の一実施形態における溶接電力の補正係数の一例を示す図である。 オープン管のエッジの形状を示す図である。
符号の説明
1 鋼帯(コイル)
2 エッジ切削装置
3 ロールフォーミング装置
4 オープン管
4a、4b オープン管のエッジ
5a、5b 開先形状
6 溶接電力発生装置(溶接機)
7 電縫鋼管
11 エッジ形状モニター
12、12a、12b レーザースリット光照射装置
13、13a、13b 画像計測カメラ
14 演算処理装置
15 超音波探傷器

Claims (6)

  1. 鋼帯を略管形のオープン管に成形し、そのオープン管の両エッジを電縫溶接する電縫鋼管の製造方法において、
    予めオープン管のエッジに開先形状を付与しておき、電縫溶接を行う前に前記開先形状を計測するとともに、電縫溶接後に当該溶接部の酸化物量を計測し、それらの計測結果に基づいて、電縫溶接の溶接電力を調節することを特徴とする溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法。
  2. 電縫鋼管の製造前に予め、開先形状の開先高さに対する靭性と溶接電力の関係を求め、その靭性と溶接電力の関係から、開先高さと所望の靭性が得られる溶接電力との関係を求めておくとともに、溶接電力と溶接部の酸化物量との関係も求め、その溶接電力と溶接部の酸化物量との関係から、溶接部の酸化物量と溶接電力の補正係数との関係を求めておき、
    その後、電縫鋼管の製造中において、
    付与された開先形状の開先高さを電縫溶接を行う前に計測し、前記計測された開先高さならびに前記開先高さと所望の靭性が得られる溶接電力との関係から、前記計測された開先高さに対し所望の靭性が得られる溶接電力を求め、この求められた溶接電力に基づいて電縫溶接の溶接電力を調節するとともに、
    電縫溶接後に当該溶接部の酸化物量を計測し、前記計測された酸化物量ならびに前記溶接部の酸化物量と溶接電力の補正係数との関係から、前記計測された酸化物量に対し溶接電力の補正係数を求め、この求められた溶接電力の補正係数に基づいて電縫溶接の溶接電力を調節することを特徴とする請求項1に記載の溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法。
  3. オープン管のエッジにレーザースリット光を照射し、そのレーザースリット光で照射されたオープン管のエッジをカメラで撮影することによって、開先形状を計測することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法。
  4. 超音波を用いて当該溶接部の酸化物量を計測することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法。
  5. 予めオープン管のエッジに開先形状を付与しておく方法は、エッジ切削装置で付与する方法、ロールフォーミング装置で付与する方法、または孔型ロールを用いて付与する方法のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の溶接部の靭性が良好な電縫鋼管の製造方法。
  6. 鋼帯を略管形のオープン管に成形するオープン管成形手段と、オープン管の両エッジを電縫溶接する電縫溶接手段を備えた電縫鋼管の製造設備において、
    予めオープン管のエッジに開先形状を付与する開先形状付与手段と、電縫溶接を行う前に前記開先形状を計測する開先形状計測手段と、電縫溶接後に当該溶接部の酸化物量を計測する酸化物量計測手段と、前記開先形状計測手段と酸化物量計測手段の計測結果に基づいて電縫溶接の溶接電力を調節する溶接電力調節手段を設けたことを特徴とする電縫鋼管の製造設備。
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