ところで、ステアリングコラムには、一般にキーシリンダやイグニッションスイッチと組み合わされたステアリングロック装置(以下、単に「ロック装置」という。)が設けられる。しかしながら、上記した従来例では、このようなロック装置に対する考慮は特になされていない。
本発明は、上記事実を考慮して、ニーエアバッグが展開すると共に衝撃吸収のためにステアリングコラムが収縮する際に、コラムカバーとロック装置との干渉を抑制して、該ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することを目的とする。
請求項1の発明は、所定値以上の荷重入力により収縮可能に構成され該収縮時における固定側部位にロック装置が固定されたステアリングコラムの車両下側に固定され、ガスの供給を受けて車室側へ膨張展開可能なニーエアバッグが折畳み収納されたニーエアバッグモジュールと、該ニーエアバッグモジュール及び前記ロック装置を含む前記ステアリングコラムの後端側を覆い、該ステアリングコラムの収縮時における可動側部位に固定され、前記ニーエアバッグの膨張圧により車室側へ展開するエアバッグドアを有するコラムカバーと、を有し、前記ニーエアバッグの展開時には、前記コラムカバーのうち前記ロック装置を覆うロックカバー部が、通常位置から離脱するように構成されていることを特徴としている。
請求項1に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、前面衝突時に折畳み状態のニーエアバッグにガスが供給され、該ニーエアバッグが膨張展開し始める。このニーエアバッグの膨張圧がコラムカバーに作用すると、該コラムカバーに設けられているエアバッグドアが車室側へ展開する。またこのとき、コラムカバーのうちロック装置を覆うロックカバー部が、通常位置から離脱する。ニーエアバッグは、このエアバッグドア及びロックカバー部の展開により形成される開口部を通じて車室側へ膨張展開する。
一方、ステアリングコラムに対して所定値以上の荷重が入力されると、該ステアリングコラムが収縮することで衝撃吸収が行われる。このとき、コラムカバーは、ステアリングコラムにおける可動側部位と共にステアリングコラムのうちロック装置が固定された固定側部位に対して相対的にストロークする。ここで、上記したように、コラムカバーにおけるロックカバー部が通常位置から離脱しているので、ステアリングコラムの収縮時において、コラムカバーとロック装置との干渉が抑制される。これにより、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる。
請求項2の発明は、請求項1に記載のコラム付けニーエアバッグ装置において、前記コラムカバーには、前記エアバッグドアの後縁及び前記ロックカバー部の後縁に沿って車幅方向に延びる横破断予定部と、前記エアバッグドアと前記ロックカバー部との間を車両前後方向に延びる縦破断予定部とが設定され、前記ニーエアバッグの展開時に、前記エアバッグドアは車両下方へ展開し、前記ロックカバー部は車幅方向へ展開するように構成されていることを特徴としている。
請求項2に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、ニーエアバッグの膨張圧がコラムカバーに作用すると、該コラムカバーに設定されている横破断予定部及び縦破断予定部が破断する。これにより、エアバッグドアが車両下方へ展開し、ロックカバー部が車幅方向へ展開する。即ち、ロックカバー部が、通常位置から離脱する。ニーエアバッグは、このエアバッグドア及びロックカバー部の展開により形成される開口部を通じて車室側へ膨張展開する。
一方、ステアリングコラムが衝撃吸収のために収縮する際には、コラムカバーが、ステアリングコラムにおける可動側部位と共にステアリングコラムのうちロック装置が固定された固定側部位に対して相対的にストロークする。ここで、上記したように、コラムカバーにおけるロックカバー部が通常位置から離脱しているので、ステアリングコラムの収縮時において、コラムカバーとロック装置との干渉が抑制される。このように、請求項2に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、横破断予定部及び縦破断予定部が破断してエアバッグドア及びロックカバー部が夫々展開することで、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる。
請求項3の発明は、請求項1に記載のコラム付けニーエアバッグ装置において、前記コラムカバーは、車両上側のアッパカバーと車両下側のロアカバーとを有する分割構造とされ、該ロアカバーは、車両後方側に位置する後方カバー部と、車両前方側に位置し前記ロックカバー部を含んで構成された前方カバー部とを有する分割構造とされ、前記前方カバー部は、前記ニーエアバッグの展開時に車室側へ展開可能に構成されていることを特徴としている。
請求項3に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、ニーエアバッグの膨張圧がコラムカバーのロアカバーに作用すると、該ロアカバーのうちロックカバー部を含む前方カバー部が車室側へ展開する。即ち、ロックカバー部が通常位置から離脱する。ニーエアバッグは、この前方カバー部の展開により形成される開口部を通じて車室側へ膨張展開する。
一方、ステアリングコラムが衝撃吸収のために収縮する際には、コラムカバーが、ステアリングコラムにおける可動側部位と共にステアリングコラムのうちロック装置が固定された固定側部位に対して相対的にストロークする。ここで、上記したように、コラムカバーにおけるロックカバー部が通常位置から離脱しているので、ステアリングコラムの収縮時において、コラムカバーとロック装置との干渉が抑制される。このように、請求項3に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、ロックカバー部を含む前方カバー部が展開することで、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる。
請求項4の発明は、請求項3に記載のコラム付けニーエアバッグ装置において、前記前方カバー部の後端部における車幅方向両側の角部には、車両前後方向に延びる切れ目が設定されていることを特徴としている。
請求項4に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、前方カバー部の後端部における車幅方向両側の角部に、車両前後方向に延びる切れ目が設定されているので、ニーエアバッグの膨張圧がコラムカバーのロアカバーに作用すると、該ロアカバーのうち切れ目の間に位置する下壁部がエアバッグドアとなって車両下方へ展開し、切れ目より車両上方側のロックカバー部が車幅方向へ展開する。ロアカバーに切れ目を設定することで、ニーエアバッグの展開時にエアバッグドア及びロックカバー部を容易に展開させることができる。
請求項5の発明は、請求項1に記載のコラム付けニーエアバッグ装置において、前記エアバッグドアは、前記コラムカバーの下部に別体として組み付けられると共に、伸張可能なヒンジを介して前記コラムカバーに連結されており、前記ニーエアバッグの膨張圧により該コラムカバーから離脱し前記ヒンジにより支持された状態で車室側へ展開可能に構成されていることを特徴としている。
請求項5に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、ニーエアバッグの膨張圧がコラムカバーに作用すると、該コラムカバーの下部に別体として組み付けられているエアバッグドアが該コラムカバーから離脱し、ヒンジに支持された状態で車室側へ展開する。
一方、ステアリングコラムが衝撃吸収のために収縮する際には、コラムカバーが、ステアリングコラムにおける可動側部位と共にステアリングコラムのうちロック装置が固定された固定側部位に対して相対的にストロークし、エアバッグドアを車室側に残しつつ、インストルメントパネル内に入り込む。このとき、エアバッグドアとコラムカバーとを連結しているヒンジが伸張することで、エアバッグドアとインストルメントパネルとの干渉を抑制することが可能である。このため、請求項5に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、インストルメントパネルとエアバッグドアとの干渉を抑制することで、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる。
請求項6の発明は、請求項1に記載のコラム付けニーエアバッグ装置において、前記エアバッグドアは、前記ロックカバー部を含むように前記コラムカバーの下壁部から側壁部へ回り込んで形成され、前記ニーエアバッグの展開時に車両前方側のヒンジ部を中心として展開可能な前側ドア部と、該前側ドア部の車両後方側に隣接して設けられ、前記ニーエアバッグの展開時に車両後方側のヒンジ部を中心として展開可能な後側ドア部と、を有して構成されていることを特徴としている。
請求項6に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、ニーエアバッグの膨張圧がコラムカバーに作用すると、エアバッグドアにおける前側ドア部が車両前方側のヒンジ部を中心して展開し、かつ該エアバッグドアにおける後側ドア部が車両後方側のヒンジ部を中心して展開する。前側ドア部は、ロックカバー部を含むようにコラムカバーの下壁部から側壁部へ回り込んで形成されているので、該前側ドア部が展開することで、ロックカバー部が通常位置から離脱する。ニーエアバッグは、この前側ドア部及び後側ドア部の展開により形成される開口部を通じて車室側へ膨張展開する。
一方、ステアリングコラムが衝撃吸収のために収縮する際には、コラムカバーが、ステアリングコラムにおける可動側部位と共にステアリングコラムのうちロック装置が固定された固定側部位に対して相対的にストロークする。ここで、上記したように、コラムカバーにおけるロックカバー部が通常位置から離脱しているので、ステアリングコラムの収縮時において、コラムカバーとロック装置との干渉が抑制される。このように、請求項6に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、ロックカバー部を含む前側ドア部が展開することで、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる。
請求項7の発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載のコラム付けニーエアバッグ装置において、前記コラムカバーのうち前記ロック装置の車両後方に位置する側壁部には、前記ステアリングコラムの軸方向の荷重に対して脆弱な脆弱部が設けられていることを特徴としている。
請求項7に記載のコラム付けニーエアバッグ装置では、ステアリングコラムの収縮に伴いコラムカバーがストロークする際に、該コラムカバーの側壁部がロック装置と干渉しても、該側壁部に設けられている脆弱部がより容易に変形することで、その干渉を抑制することができる。これにより、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる。
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載のコラム付けニーエアバッグ装置によれば、ニーエアバッグが展開すると共に衝撃吸収のためにステアリングコラムが収縮する際に、コラムカバーとロック装置との干渉を抑制して、該ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる、という優れた効果が得られる。
請求項2に記載のコラム付けニーエアバッグ装置によれば、横破断予定部及び縦破断予定部が破断してエアバッグドア及びロックカバー部が夫々展開することで、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる、という優れた効果が得られる。
請求項3に記載のコラム付けニーエアバッグ装置によれば、ロックカバー部を含む前方カバー部が展開することで、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる、という優れた効果が得られる。
請求項4に記載のコラム付けニーエアバッグ装置によれば、ニーエアバッグの展開時にエアバッグドア及びロックカバー部を容易に展開させることができる、という優れた効果が得られる。
請求項5に記載のコラム付けニーエアバッグ装置によれば、インストルメントパネルとエアバッグドアとの干渉を抑制することで、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる、という優れた効果が得られる。
請求項6に記載のコラム付けニーエアバッグ装置によれば、ロックカバー部を含む前側ドア部が展開することで、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる、という優れた効果が得られる。
請求項7に記載のコラム付けニーエアバッグ装置によれば、コラムカバーの側壁部に設けた脆弱部が変形することで、ステアリングコラムの衝撃吸収ストロークを確保することができる、という優れた効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図1において、本実施の形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置10は、ステアリングコラム12の車両下側に固定されるニーエアバッグモジュール14と、該ニーエアバッグモジュール14と別体構造とされたコラムカバー16とを有している。
まず、ステアリングコラム12の構成例について簡単に説明する。ステアリングコラム12は、例えば小型車用の操舵機構の一部であり、軸芯部に配置されたステアリングメインシャフト18と、該ステアリングメインシャフト18を覆うと共に車体に支持されるコラムチューブ22と、テレスコピック機構(図示せず)とを含んで構成されている。ステアリングメインシャフト18の後端部には、ステアリングホイール24が、図示しないロックナットを用いて固定されている。
図1において、コラムチューブ22は、所定値以上の荷重入力によりステアリングコラム12が収縮する際の固定側部位であるアウタチューブ26と、可動側部位であるインナチューブ(図示せず)とを有している。ステアリングメインシャフト18及びコラムチューブ22は、テレスコピック機構による調整、及び所定値以上の荷重がステアリングホイール24側からステアリングメインシャフト18に対して軸方向前側に作用した際に、所定ストロークの範囲内で軸方向に収縮可能とされている。具体的には、可動側部位であるステアリングメインシャフト18及びインナチューブが、固定側部位であるアウタチューブ26に対して、相対的にストローク(軸方向移動)するように構成されている。
コラムチューブ22の後端部付近、例えばインナチューブには、所謂コンビネーションスイッチ28が取り付けられている。このコンビネーションスイッチ28は、インナチューブの後端部付近の外周部に配置される環状の本体部34と、該本体部34の例えば両側から突出してコラムカバー16の貫通孔32を貫通した状態で配置される左右一対の操作レバー(図示せず)とを備えている。なおステアリングコラム12やコンビネーションスイッチ28の構成は、上記構成及び図示の例には限られない。
コラムチューブ22のアウタチューブ26には、車幅方向の一側方、例えば車幅方向右側に張り出したロック装置36が設けられている。このロック装置36は、例えばキーシリンダ58やイグニッションスイッチ(図示せず)と組み合わされており、例えば環状の取付け部38を用いてアウタチューブ26に締結固定されている(図8(B)も参照)。
またロック装置36におけるキーシリンダ58は、ステアリングコラム12から斜め下方に延びる一般的なキーシリンダ(図示せず)と比較して、ステアリングコラム12の軸方向と平行に近い角度に配置されている。このため、図8(B)に示されるように、ロック装置36のキー差込み部42は、略車両後方を向いた状態となっている。このようにしたのは、小型車では、車室内スペースの確保のために、インストルメントパネル92(図7参照)からのステアリングコラム12の突出量が限られており、一般的な角度でキーシリンダを配置すると、キー差込み部42を乗員側に露出させ難いからである。なお、このロック装置36は、所定のキー操作を行った際に、ステアリングメインシャフト18にピン等(図示せず)を係合させて該ステアリングメインシャフト18の回動をロックできるようになっている。
次に、ニーエアバッグモジュール14は、ステアリングコラム12の車両下側に固定され、ガスの供給を受けて車室側へ膨張展開可能なニーエアバッグ44が折畳み収納されている。具体的には、ニーエアバッグモジュール14は、モジュールケース46内に、折畳み状態のニーエアバッグ44と、該ニーエアバッグ44に対して膨張用のガスを供給可能なインフレータ48とを収納して構成されている。インフレータ48には、複数本のスタッドボルト52が立設されており、該スタッドボルト52はモジュールケース46を貫通して外部に突出している。
一方、コラムチューブ22におけるアウタチューブ26には、ニーエアバッグ44を該アウタチューブ26に固定するための取付けブラケット54が設けられている。ニーエアバッグモジュール14は、この取付けブラケット54にスタッドボルト52を差し込み、該スタッドボルト52に対してナット56を締結することで、アウタチューブ26の車両下側に固定されている。即ち、ニーエアバッグモジュール14は、コラムカバー16側ではなく、ステアリングコラム12側に固定されている。
インフレータ48は、例えばニーエアバッグ44内に収納され、モジュールケース46内の車両後方端部において、例えばステアリングコラム12の軸方向と直交する方向に沿って配設されている。このインフレータ48は、図示しないエアバッグECUからの作動電流を受けて作動するように構成され、エアバッグECUは、例えば前突センサ(何れも図示せず)からの信号に基づいて前面衝突の発生を判定した際に、インフレータ48に対して作動電流を流すように構成されている。
なお、ニーエアバッグ44の折畳み方や、インフレータ48の配置は、図1に示される例には限られない。
次に、コラムカバー16の構成について説明する。図1において、コラムカバー16は、ニーエアバッグモジュール14及びロック装置36を含むステアリングコラム12の後端側を覆い、該ステアリングコラム12の収縮時における可動側部位に固定され、ニーエアバッグ44の膨張圧により車室側へ展開するエアバッグドア60を有している。
具体的には、コラムカバー16は、例えば合成樹脂製の成形品であり、例えば車両上側のアッパカバー62と車両下側のロアカバー64とを有する分割構造とされ、該アッパカバー62及びロアカバー64を筒状に組み合わせて構成されている。このコラムカバー16は、例えばコラムチューブ22のインナチューブ又は該インナチューブに設けられたコンビネーションスイッチ28に固定されている。
図2(A)に示されるように、コラムカバー16の後端には、ステアリングメインシャフト18(図1)を通すための開口部66が設けられている。コラムカバー16の側部には、ロック装置36を覆うように車幅右側に張り出した張出し部16Aが形成されている。この張出し部16Aの後面16Bには、ロック装置36のキーシリンダ58(図8(B))に対してキー(図示せず)を抜差し可能とするためのキー孔16Cが設けられている。このキー孔16C及び左右の貫通孔32は、夫々アッパカバー62とロアカバー64との合せ目68に位置している。即ち、キー孔16C及び貫通孔32の上側の孔壁はアッパカバー62に形成され、下側の孔壁はロアカバー64に形成されており、アッパカバー62とロアカバー64とを筒状に組み合わせた際に、キー孔16C及び貫通孔32が形成されるようになっている。
ロアカバー64の内面には、エアバッグドア60の後縁及びロックカバー部64Cの後縁に沿って車幅方向に延びる横破断予定部70と、エアバッグドア60とロックカバー部64Cとの間を車両前後方向に延びる縦破断予定部72とが設定されている。ここで、本実施形態におけるロックカバー部64Cは、ロアカバー64において、ロック装置36を覆う張出し部16Aの少なくとも一部と、該張出し部16Aの車両後方の側壁部64Rとを含んでいる。
縦破断予定部72は、エアバッグドア60と、車幅方向においてロックカバー部64Cの反対側に位置するロアカバー64の側壁部64Lとの間にも設定されている。横破断予定部70及び縦破断予定部72は、コラムカバー16の見栄えを考慮して、ロアカバー64の内面に、例えば溝状の薄肉部として構成されており、ニーエアバッグ44の膨張圧により破断するように肉厚が設定されている。
エアバッグドア60の前縁には、両側の縦破断予定部72の前端同士を結ぶように車幅方向に延びるヒンジ部74が設定されている。このヒンジ部74は、ロアカバー64に一体的に形成されたインテグラルヒンジであり、ロアカバー64のうち張出し部16Aに位置する領域、及び該領域の車幅方向反対側の側壁部64Lまで夫々延長されている。ロアカバー64において、ヒンジ部74は、張出し部16Aの後面16Bよりも車両前方側に形成されている。一方横破断予定部70は、ロアカバー64において張出し部16Aの後面16Bよりも車両後方側の下壁部64D及び側壁部64R,64Lに形成されている。横破断予定部70及びヒンジ部74は、例えばアッパカバー62とロアカバー64との合せ目68まで延びている。
このように、本実施形態では、ロアカバー64のロック装置36側の側部において、横破断予定部70、縦破断予定部72及びヒンジ部74により囲まれ、アッパカバー62との合せ目68に至る領域を、ロックカバー部64Cとしている。なお、ロックカバー部64Cは、コラムカバー16のうちロック装置36を覆う部分(張出し部16A)の全体である必要はなく、ロック装置36を覆う部分の少なくとも一部を含んでいればよい。但し、ロックカバー部64Cは、ロック装置36の後端部に位置するキー差込み部42を覆う部分を含んでいることが望ましい。衝撃吸収のためにステアリングコラム12(図1)が収縮する際において、コラムカバー16とロック装置36との干渉を、より効率的に抑制できるからである。
エアバッグドア60は、ニーエアバッグ44(図1)の展開時に、横破断予定部70及び縦破断予定部72が破断することで、ヒンジ部74を中心として車両下方へ展開するように構成されている。またこのとき、ロックカバー部64Cは、ヒンジ部74を中心として車幅方向右側へ展開し、通常位置から離脱するように構成されている。また側壁部64Lは、ヒンジ部74を中心として車幅方向左側へ展開するように構成されている。
図1に示されるように、ロアカバー64の内面には、ニーエアバッグ44の展開方向を規制して、車室側への膨張展開を促すための縦壁部76,78が、例えば該ロアカバー64と一体的に立設されている。具体的には、縦壁部76はニーエアバッグモジュール14の車両前側に隣接して設けられ、縦壁部78はニーエアバッグモジュール14の車両後側に隣接して設けられている。ロアカバー64の下壁部64Dのうち、この縦壁部76,78の間の部位がエアバッグドア60に設定されている。図示されるように、横破断予定部70は、縦壁部78の車両前方側の根元部に形成され、ヒンジ部74は縦壁部76の車両後方側の根元部に形成されている。
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1において、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置10では、図示しない前突センサからの信号に基づいてエアバッグECUが前面衝突の発生を判定すると、該エアバッグECUからインフレータ48に作動電流が流される。インフレータ48は、該作動電流を受けて作動して、多量のガスを噴出させる。このガスがニーエアバッグ44へと供給されることで、該ニーエアバッグ44が膨張展開し始める。
ニーエアバッグ44の膨張圧がコラムカバー16のロアカバー64に作用すると、該ロアカバー64に設定されている横破断予定部70及び縦破断予定部72が破断し、図2(B)に示されるように、エアバッグドア60がヒンジ部74を中心として車両下方へ展開する。またこのとき、ロックカバー部64Cが、ヒンジ部74を中心として車幅方向右側へ展開し、通常位置から離脱する。更にこのとき、車幅方向においてロックカバー部64Cの反対側に位置する側壁部64Lが、ヒンジ部74を中心として車幅方向左側へ展開する。
図1に示されるように、ニーエアバッグモジュール14の前後(エアバッグドア60の前後)には、縦壁部76,78が設けられているので、ニーエアバッグ44がコラムカバー16内において車両前後方向に展開することはない。具体的には、コラムカバー16内における車両前方側へのニーエアバッグ44の展開は、縦壁部76により規制され、コラ車両後方側への展開は、縦壁部78により規制される。これにより、ニーエアバッグ44の車室側への膨張展開が促される。
このようにして、ニーエアバッグ44は、このエアバッグドア60、ロックカバー部64C及び側壁部64Lの展開により形成される開口部80を通じて車室側へ膨張展開する。エアバッグドア60に加えて、ロックカバー部64C及び側壁部64Lが展開することで、ニーエアバッグ44は、車両下方だけでなく、コラムカバー16の車幅方向両側にも迅速に展開することができ、乗員の膝部(図示せず)を効率的に拘束することが可能である。
一方、図1において、所定値以上の荷重がステアリングホイール24側からステアリングメインシャフト18に対して軸方向前側に作用すると、その衝撃吸収のためにステアリングコラム12が収縮する。この際、ステアリングコラム12の後端側を覆うコラムカバー16は、可動側部位であるインナチューブやコンビネーションスイッチ28等と共に、ステアリングコラム12の固定側部位でありロック装置36が固定されたアウタチューブ26に対して、車両前方に相対的にストローク(軸方向移動)する。
このとき、上記したように、コラムカバー16におけるロックカバー部64Cは、通常位置から離脱しており、ロック装置36のキー差込み部42付近に残存するコラムカバー16の体積が減少しているので、通常時と比較してコラムカバー16の強度が低下している。これにより、コラムカバー16とロック装置36との干渉が生じたとしても、該コラムカバー16が容易に変形することで、その干渉を抑制することができる。
このように、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置10では、ニーエアバッグ44の展開時に横破断予定部70及び縦破断予定部72が破断してエアバッグドア60、ロックカバー部64C及び側壁部64Lが夫々展開することで、ステアリングコラム12の衝撃吸収ストロークを確保することができる。
[第2実施形態]
図3(A)において、本実施の形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置20では、コラムカバー16のロアカバー64が、車両後方側に位置する後方カバー部64Bと、車両前方側に位置しロックカバー部64Cを含んで構成された前方カバー部64Aとを有する分割構造とされている。
前方カバー部64Aと後方カバー部64Bとの合せ目82の位置は、例えば第1実施形態における横破断予定部70の位置に対応している。前方カバー部64Aは、ニーエアバッグ44(図1)の展開時に、例えば合せ目68の車両前方側の端部に設けられたヒンジ部84を中心として車両下方に回動することで、車室側へ展開可能に構成されている。
本実施形態におけるロックカバー部64Cは、前方カバー部64Aのうち、例えばコラムカバー16の張出し部16Aに位置する領域の全体と、該張出し部16Aの車両後方の側壁部64Rとを含んでいる。また本実施形態におけるロックカバー部64Cの下壁部64Dは、エアバッグドア60に相当する。
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。またステアリングコラム12及びニーエアバッグモジュール14の構成は、第1実施形態(図1)と同様である。
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。ニーエアバッグ44(図1)が膨張展開し始めるまでの作用については第1実施形態と同様である。図3(B)において、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置20では、ニーエアバッグ44の膨張圧がコラムカバー16のロアカバー64に作用すると、該ロアカバー64のうちロックカバー部64Cを含む前方カバー部64Aが、例えば合せ目68の車両前方側の端部に設けられたヒンジ部84を中心として車両下方に回動することで、車室側へ展開する。これにより、エアバッグドア60に相当する下壁部64Dと、ロックカバー部64Cと、車幅方向においてロックカバー部64Cの反対側に位置する側壁部64Lとが通常位置から離脱する。
ニーエアバッグ44は、この前方カバー部64Aの展開により形成される開口部80を通じて車室側へ膨張展開する。前方カバー部64Aが上記のように展開することで、ニーエアバッグ44は、車両下方だけでなく、コラムカバー16の車幅方向両側にも迅速に展開することができ、乗員の膝部(図示せず)を効率的に拘束することが可能である。
一方、図1に示される第1実施形態と同様に、所定値以上の荷重がステアリングホイール24側からステアリングメインシャフト18に対して軸方向前側に作用すると、その衝撃吸収のためにステアリングコラム12が収縮する。このとき、上記したように、コラムカバー16におけるロックカバー部64Cは、前方カバー部64Aが全体的に展開することで通常位置から離脱しており、ロック装置36のキー差込み部42付近に残存するコラムカバー16の体積が減少しているので、通常時と比較してコラムカバー16の強度が低下している。これにより、コラムカバー16とロック装置36との干渉が生じたとしても、該コラムカバー16が容易に変形することで、その干渉を抑制することができる。
このように、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置20では、ロックカバー部64Cを含む前方カバー部64Aが展開することで、ステアリングコラム12の衝撃吸収ストロークを確保することができる。
なお、本実施形態においては、ロアカバー64の前方カバー部64Aが、合せ目68の車両前方側の端部に設けられたヒンジ部84を中心として回動するように展開するものとしたが、該前方カバー部64Aの展開の仕方はこれに限られるものではなく、前方カバー部64Aが全体的に車両下方へ離脱するように構成してもよい。
[第3実施形態]
図4(A)において、本実施の形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置30では、コラムカバー16のロアカバー64が、車両後方側に位置する後方カバー部64Bと、車両前方側に位置しロックカバー部64Cを含んで構成された前方カバー部64Aとを有する分割構造とされている。前方カバー部64Aの後端部における車幅方向両側の角部には、車両前後方向に延びる切れ目86が設定されている。この切れ目86は、例えば連続的又は断続的なスリットとして構成されている。
本実施形態におけるロックカバー部64Cは、ロアカバー64のロック装置36(図4(B))側の側部において、前方カバー部64Aと後方カバー部64Bとの合せ目82、切れ目86及びヒンジ部74により囲まれ、アッパカバー62とロアカバー64との合せ目68に至る領域に設定されている。このロックカバー部64Cには、張出し部16Aの車両後方の側壁部64Rも含まれる。
他の部分については、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。またステアリングコラム12及びニーエアバッグモジュール14の構成は、第1実施形態(図1)と同様である。
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。ニーエアバッグ44(図1)が膨張展開し始めるまでの作用については第1実施形態と同様である。図4(B)において、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置30では、前方カバー部64Aの後端部における車幅方向両側の角部に、車両前後方向に延びる切れ目86が設定されているので、ニーエアバッグ44の膨張圧がコラムカバー16のロアカバー64に作用すると、該ロアカバー64のうち切れ目86の間に位置する下壁部64Dがエアバッグドア60となってヒンジ部74を中心として車両下方へ展開する。またこのとき、切れ目86より車両上方側のロックカバー部64Cが、ヒンジ部74を中心として車幅方向右側へ展開し、通常位置から離脱する。更にこのとき、車幅方向においてロックカバー部64Cと反対側の側壁部64Lが、ヒンジ部74を中心として車幅方向左側へ展開する。このようにロアカバー64に切れ目86を設定することで、ニーエアバッグ44の展開時にエアバッグドア60、ロックカバー部64C及び側壁部64Lを容易に展開させることができる。
ニーエアバッグ44は、このエアバッグドア60、ロックカバー部64C及び側壁部64Lの展開により形成される開口部80を通じて車室側へ膨張展開する。前方カバー部64Aが上記のように展開することで、ニーエアバッグ44は、車両下方だけでなく、コラムカバー16の車幅方向両側にも迅速に展開することができ、乗員の膝部(図示せず)を効率的に拘束することが可能である。
一方、図1に示される第1実施形態と同様に、所定値以上の荷重がステアリングホイール24側からステアリングメインシャフト18に対して軸方向前側に作用すると、その衝撃吸収のためにステアリングコラム12が収縮する。このとき、上記したように、コラムカバー16におけるロックカバー部64Cは、通常位置から離脱しており、ロック装置36のキー差込み部42付近に残存するコラムカバー16の体積が減少しているので、通常時と比較してコラムカバー16の強度が低下している。これにより、コラムカバー16とロック装置36との干渉が生じたとしても、該コラムカバー16が容易に変形することで、その干渉を抑制することができる。
このように、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置30では、ロアカバー64における前方カバー部64Aに切れ目86を設定することで、ニーエアバッグ44の展開時にエアバッグドア60、ロックカバー部64C及び側壁部64Lを容易に展開させることができる。またこれによって、ステアリングコラム12の衝撃吸収ストロークを確保することができる。
[第4実施形態]
図5(A)において、本実施の形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置40では、エアバッグドア60が、コラムカバー16におけるロアカバー64の下部に別体として組み付けられている。エアバッグドア60の後縁の位置は、例えば横破断予定部70の位置に対応し、該エアバッグドア60の前縁の位置は、例えばヒンジ部74の位置に対応している。またエアバッグドア60の側縁の位置は、例えば第1実施形態における縦破断予定部72(図2(A))の位置に対応している。言い換えれば、エアバッグドア60の側縁の位置は、ロアカバー64の後端部における車幅方向両側の角部に設定されている。
エアバッグドア60は、コラムカバー16の車両下方から見て、ロアカバー64の下壁部64Dと面一となるように組み付けられている。この項エアバッグドア60は、例えば係止爪96によりロアカバー64に係止されている。また図6(A)又は図6(B)に示されるように、エアバッグドア60は、伸張可能なヒンジ88を介してコラムカバー16のロアカバー64に連結されている。このエアバッグドア60は、ニーエアバッグ44の膨張圧によりコラムカバー16におけるロアカバー64から離脱し、ヒンジ88により支持された状態で車室側へ展開可能に構成されている。
図6(A)に示されるように、ヒンジ88としては、伸張性を有する例えばメッシュヒンジを用いることが可能である。この例では、ヒンジ88は、若干の余長部を有して構成されており、通常時において該余長部はエアバッグドア60の上面側において折り畳まれている。このヒンジ88は、エアバッグドア60の前縁と、ロアカバー64における縦壁部76の下部とに、例えば接着されている。
また図6(B)に示されるように、ヒンジ88としては、例えばインテグラルヒンジを用いることが可能である。この例では、ヒンジ88は、例えばエアバッグドア60の上面に一体成形されると共に、伸張用の余長部を有して構成されており、該余長部はエアバッグドア60の上面側において例えば2つ折り状態とされている。このヒンジ88の端部90は、ロアカバー64における下壁部64Dの上面側に、例えば接着又は溶着されており、これによりエアバッグドア60の前縁がロアカバー64と連結されている。
なお、ヒンジ88については、比較的大きな伸張性を有する材質を用いて余長部を設けない構成としてもよい。また逆に、比較的伸張性が小さい材質や非伸張性の材質を用いつつ、余長部を設ける構成としてもよい。
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。またステアリングコラム12及びニーエアバッグモジュール14の構成は、第1実施形態(図1)と同様である。
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。ニーエアバッグ44(図1)が膨張展開し始めるまでの作用については第1実施形態と同様である。図5(B)において、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置40では、ニーエアバッグ44の膨張圧がコラムカバー16のロアカバー64に作用すると、該ロアカバー64の下部に別体として組み付けられているエアバッグドア60が該ロアカバー64から離脱し、ヒンジ88に支持された状態で車室側へ展開する。
またニーエアバッグ44の膨張圧がコラムカバー16のロアカバー64に作用した際には、ロックカバー部64Cが、ヒンジ部74を中心として車幅方向右側へ展開し、通常位置から離脱する。更にこのとき、車幅方向においてロックカバー部64Cの反対側に位置する側壁部64Lが、ヒンジ部74を中心として車幅方向左側へ展開する。
ニーエアバッグ44は、このエアバッグドア60、ロックカバー部64C及び側壁部64Lの展開により形成される開口部80を通じて車室側へ膨張展開する。上記のように、エアバッグドア60に加えて、ロックカバー部64C及び側壁部64Lが展開することで、ニーエアバッグ44は、車両下方だけでなく、コラムカバー16の車幅方向両側にも迅速に展開することができ、乗員の膝部(図示せず)を効率的に拘束することが可能である。
ここで、図7(A)において、エアバッグドア60の展開について更に詳しく説明すると、ニーエアバッグ44の膨張圧がエアバッグドア60に作用すると、エアバッグドア60の係止爪96がロアカバー64から離脱して、該エアバッグドア60の係止状態が解除され、該エアバッグドア60がロアカバー64から離脱する。エアバッグドア60の前縁は、ヒンジ88によりロアカバー64と連結されているので、エアバッグドア60は該ヒンジ88により支持された状態で車室94側(車両下方)へ展開する。
一方、図7(B)に示されるように、所定値以上の荷重がステアリングホイール24側からステアリングメインシャフト18に対して軸方向前側に作用すると、その衝撃吸収のためにステアリングコラム12が収縮する。この際、コラムカバー16は、ステアリングコラム12における可動側部位と共にステアリングコラム12のうちロック装置36が固定された固定側部位に対して相対的にストロークし、エアバッグドア60を車室94側に残しつつ、インストルメントパネル92内に入り込む。
このとき、エアバッグドア60とコラムカバー16のロアカバー64とを連結しているヒンジ88が伸張することで、エアバッグドア60とインストルメントパネル92との干渉を抑制することができる。またこれによって、エアバッグドア60が車室94側に残っていても、ステアリングコラム12は円滑にストロークすることができる。このため、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置40では、インストルメントパネル92とエアバッグドア60との干渉を抑制することで、ステアリングコラム12の衝撃吸収ストロークを確保することができる。
また第1実施形態と同様に、コラムカバー16とロック装置36との干渉を抑制することによっても、ステアリングコラム12の衝撃吸収ストロークを確保することが可能である。
[第5実施形態]
図8(A)において、本実施の形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置50では、エアバッグドア60が、前側ドア部60Fと、後側ドア部60Rとを有して構成されている。この前側ドア部60F及び後側ドア部60Rは、ロアカバー64と一体成形されている。
前側ドア部60Fは、ロックカバー部64Cを含むようにコラムカバー16におけるロアカバー64の下壁部64Dから車両右側の側壁部64R及び車両左側の側壁部(図示せず)へ夫々回り込んで形成され、ニーエアバッグ44の展開時に、車両前方側のヒンジ部74を中心として、矢印F方向に展開可能に構成されている。この前側ドア部60Fは、全体として断面U字形となっている。
後側ドア部60Rは、前側ドア部60Fの車両後方側に隣接して設けられ、ニーエアバッグ44の展開時に、車両後方側のヒンジ部98を中心として、矢印R方向に展開可能に構成されている。この後側ドア部60Rも、前側ドア部60Fと同様に、下壁部64Dから車両右側の側壁部64R及び車両左側の側壁部(図示せず)に回り込んで形成され、全体として断面U字形となっている。
本実施形態におけるロックカバー部64Cは、ロック装置36を覆う張出し部16Aの少なくとも一部と、該張出し部16Aの車両後方の側壁部64Rの一部とを含んでいる。補足すると、ロックカバー部64Cは、車幅方向においてロック装置36のキーシリンダ58と部分的に重なるように設定されている。なお、前側ドア部60Fの範囲を、アッパカバー62とロアカバー64との合せ目68まで車両上方に拡大してもよい。
車両前方側のヒンジ部74と、車両後方側のヒンジ部98との間隔は、ニーエアバッグモジュール14(図1参照)の大きさに対応して設定されている。ロアカバー64には、ヒンジ部74,98を除く前側ドア部60F及び後側ドア部60Rの輪郭に沿って、破断予定部100が設定されている。この破断予定部100は、ロアカバー64の内面に、例えば溝状の薄肉部として構成されており、ニーエアバッグ44(図1参照)の膨張圧により破断するように肉厚が設定されている。
コラムカバー16のうちロック装置36の車両後方に位置する側壁部には、ステアリングコラム12の軸方向の荷重に対して脆弱な脆弱部102が設けられている。図8(B)において、この脆弱部102は、側壁部の薄肉部として構成されている。脆弱部102は、車両前後方向においては、例えばコラムカバー16の後面16Bから、後側ドア部60Rの後端付近までの領域に形成されている。また脆弱部102は、車両上下方向においては、例えばロック装置36のキーシリンダ58の直径よりも大きい範囲に形成されている。またこの脆弱部102は、コラムカバー16におけるアッパカバー62からロアカバー64に跨って形成され、一部は例えばエアバッグドア60の領域内に達している。
なお、脆弱部102は、薄肉部には限られず、例えば車両上下方向に延びる溝を車両前後方向に複数本配列したものであってもよい。即ち、脆弱部102は、ステアリングコラム12の軸方向の荷重に対して脆弱であり、ロック装置36との干渉が生じた際に容易に変形可能な構成となっていればよい。
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。またステアリングコラム12及びニーエアバッグモジュール14の構成は、第1実施形態(図1)と同様である。
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。ニーエアバッグ44(図1)が膨張展開し始めるまでの作用については第1実施形態と同様である。図8(A)において、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置50では、ニーエアバッグ44の膨張圧がコラムカバー16のロアカバー64に作用すると、破断予定部100が破断し、エアバッグドア60における前側ドア部60Fが、車両前方側のヒンジ部74を中心して矢印F方向に展開すると共に、該エアバッグドア60における後側ドア部60Rが、車両後方側のヒンジ部98を中心して矢印R方向に展開する。
前側ドア部60Fは、ロックカバー部64Cを含むようにコラムカバー16におけるロアカバー64の下壁部64Dから側壁部64Rへ回り込んで形成されているので、該前側ドア部60Fが展開することで、ロックカバー部64Cが通常位置から離脱する。本実施形態では、エアバッグドア60として前側ドア部60F及び後側ドア部60Rを設けることで、ニーエアバッグ膨出用の開口部(図示せず)を効率的に形成することができる。
ニーエアバッグ44は、この開口部を通じて車室側へ膨張展開する。前側ドア部60F及び後側ドア部60Rが上記のように展開することで、ニーエアバッグ44は、車両下方だけでなく、コラムカバー16の車幅方向両側にも迅速に展開することができ、乗員の膝部(図示せず)を効率的に拘束することが可能である。
一方、ステアリングコラム12が衝撃吸収のために収縮する際には、コラムカバー16が、ステアリングコラム12における可動側部位と共にステアリングコラム12のうちロック装置36が固定された固定側部位に対して相対的にストロークする。ここで、上記したように、コラムカバー16におけるロックカバー部64Cは、前側ドア部60Fが展開することで通常位置から離脱しており、ロック装置36のキー差込み部42付近に残存するコラムカバー16の体積が減少しているので、通常時と比較してコラムカバー16の強度が低下している。
これに加えて、コラムカバー16のうちロック装置36の車両後方に位置する側壁部には、ステアリングコラム12の軸方向の荷重に対して脆弱な脆弱部102が設けられているので、該側壁部がロック装置36と干渉しても、該脆弱部102が容易に変形することで、その干渉をより一層抑制することができる。
このように、本実施形態に係るコラム付けニーエアバッグ装置50では、ロックカバー部64Cを含む前側ドア部60Fが展開し、かつコラムカバー16の側壁部に設けられている脆弱部102が変形することで、ステアリングコラム12の衝撃吸収ストロークを確保することができる。
なお、脆弱部102については、第1実施形態、第3実施形態及び第4実施形態に対しても適用することが可能である。また逆に、本実施形態において、脆弱部102を設けない構成とすることも可能である。