JP4934936B2 - 電池用包装材料 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明の電池用包装材料は、防湿性、耐内容物性を有する、液体または固体有機電解質(高分子ポリマー電解質)を持つ電池、または燃料電池、コンデンサ、キャパシタ等に用いられ、密封シールの安定性がよく、また、エンボスタイプの外装体における成形性に優れた積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明における電池とは、化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換する素子を含むもの、例えば、リチウムイオン電池、リチウム電池、燃料電池等や、または、液体、固体セラミック、有機物等の誘電体を含む液体コンデンサ、固体コンデンサ、二重層コンデンサ等の電解型コンデンサを示す。
電池の用途としては、パソコン、携帯端末装置(携帯電話、PDA等)、ビデオカメラ、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星等に用いられる。
前記電池の外装体としては、金属をプレス加工して円筒状または直方体状に容器化した金属製缶、あるいは、プラスチックフィルム、金属箔等のラミネートにより得られる複合フィルムからなる積層体を袋状にしたもの(以下、外装体)が用いられていた。
電池の外装体として、次のような問題があった。金属製缶においては、容器外壁がリジッドであるため、電池自体の形状が決められてしまう。そのため、ハード側を電池にあわせる設計をするため、該電池を用いるハードの寸法が電池により決定されてしまい形状の自由度が少なくなる。
そのため、前記袋状の外装体を用いる傾向にある。前記外装体の材質構成は、電池としての必要な物性、加工性、経済性等から、少なくとも基材層、バリア層、シーラント層と前記各層を接着する接着層からなり、必要に応じて中間層を設けることがある。
電池の前記構成の積層体からパウチを形成し、または、少なくとも片面をプレス成形して電池の収納部を形成して電池本体を収納し、パウチタイプまたは、エンボスタイプ(蓋体を被覆して)において、それぞれの周縁の必要部分をヒートシールにより密封することによって電池とする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、積層体を袋状にして電池本体を収納するパウチタイプまたは、前記積層体をプレス成形して凹部を形成し、該凹部に電池本体を収納するエンボスタイプが開発されている。エンボスタイプは、パウチタイプと比較して、よりコンパクトな包装体が得られる。いずれのタイプの外装体であっても、電池としての防湿性あるいは耐突き刺し性等の強度、絶縁性等は、電池の外装体として欠かせないものである。
そして、電池用包装材料としては、少なくとも、基材層、バリア層、シーラント層からなる積層体とする。そして、前記各層の層間の接着強度が、電池の外装体として必要な性質に影響をあたえることが確認されている。例えば、バリア層とシーラント層との接着強度が不十分であると、外部から水分の浸入の原因となり、電池を形成する成分の中の電解質と前記水分との反応により生成するフッ化水素酸により前記アルミニウム面が腐食して、バリア層とシーラント層との間にデラミネーションが発生する。また、前記エンボスタイプの外装体とする際に、前記積層体をプレス成形して凹部を形成するが、この成形の際に基材層とバリア層との間にデラミネーションが発生することがある。
また、シーラント層に引張り弾性率の高い樹脂を使用した場合、エンボス成形において、シーラント層が白化したりその表面に軽微なクラックが発生することがあり、また、成形安定性が悪く、ピンホールが発生したり、成形しわやクラックが発生することがあった。
さらに、電池用包装材料として不可欠な性能として、内容物充填、シール後の密封シール性が挙げられる。例えば包装材料のシール強度が低い場合、内容物充填シールラインでのシールに充分時間をかける必要があり、サイクル短縮に著しく支障をきたし、生産効率が悪くなる場合がある。
本発明の目的は、電池包装に用いる材料として、電池本体の保護物性とともに、エンボス成形工程および内容物充填シール工程等において生産性のよい電池用包装材料の製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。すなわち、請求項1に記載した発明は、電池本体を挿入し周縁部をヒートシールにより密封する電池の外装体を形成する包装材料が、少なくとも基材層、接着層1、バリア層、接着層2、シーラント層から構成される積層体であって、シーラント層がメタロセン系の線状低密度ポリエチレンを含む樹脂層を少なくとも1層以上積層されていることを特徴とする電池用包装材料からなる。請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したシーラント層がメタロセン系線状低密度ポリエチレン樹脂から形成されていることを特徴とするものである。請求項3に記載した発明は、請求項1に記載したシーラント層がメタロセン系線状低密度ポリエチレン樹脂10%以上を含むポリエチレン系樹脂から形成されていることを特徴とするものである。請求項4に記載した発明は、請求項1に記載したシーラント層が、少なくともメタロセン系線状低密度ポリエチレン樹脂からなる層を含む多層構成からなることを特徴とするのである。請求項5に記載した発明は、請求項1に記載したシーラント層が、メタロセン系線状低密度ポリエチレン樹脂10%以上を含むポリエチレン系樹脂層を含む多層構成からなることを特徴とするものである。請求項6に記載した発明は、請求項1に記載した接着層2がドライラミネート法により形成されたことを特徴とするものである。請求項7に記載した発明は、請求項1に記載した接着層2が酸変性ポリオレフィンの塗布焼付け層であることを特徴とするものである。請求項8に記載した発明は、請求項1に記載した接着層2が酸変性ポリオレフィンの押出層であることを特徴とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の電池用包装材料は、少なくとも基材層、接着層、化成処理層1、アルミニウム、化成処理層2、接着層、シーラント層から構成される電池の外装体において、少なくとも、メタロセン系の線状低密度ポリエチレン(以下、メタロセン系LLDPE)樹脂を含むシーラント層にすることによって、安定したエンボス加工性およびシール適性を得ることができる。
また、アルミニウムとシーラント層とのラミネート方法によってデラミネーションのない包装材料とするものである。以下、図面等を参照して詳細に説明する。
【0006】
図1は、本発明の電池用包装材料を説明する図で、(a)積層体の実施例を示す断面図、(b)別の積層体の実施例を示す断面図である。図2は、シーラント層の構成を説明する図で、(a)単層シーラントの断面図、(b)2層シーラントの断面図、(c)3層シーラントの場合の断面図である。図3は、本発明の電池用包装材料をラミネート方法別に示した断面図であり、(a)ドライラミネート法、(b)熱ラミネート法、(c)サンドイッチラミネート法、(d)共押出ラミネート法である。図4は、電池のパウチタイプの外装体を説明する斜視図である。
図5は、電池のエンボスタイプの外装体を説明する斜視図である。図6は、エンボスタイプにおける成形を説明する、(a)斜視図、(b)エンボス成形された外装体本体、(c)X2−X2部断面図、(d)Y1部拡大図である。
【0007】
電池用包装材料としては、少なくとも、基材層、バリア層、シーラント層からなる積層体とする。そして、前記各層の層間の接着強度が、電池の外装体として必要な性質に影響をあたえることが確認されている。例えば、バリア層とシーラント層との接着強度が不十分であると、外部から水分の浸入の原因となり、電池を形成する成分の中の電解質と前記水分との反応により生成するフッ化水素酸により前記アルミニウム面が腐食して、バリア層とシーラント層との間にデラミネーションが発生する。また、前記エンボスタイプの外装体とする際に、前記積層体をプレス成形して凹部を形成するが、この成形の際に基材層とバリア層との間にデラミネーションが発生することがある。
【0008】
電池用包装材料は、図1(a)に示すように、少なくとも基材層11、接着層16、アルミニウム12、化成処理層15、接着層13、シーラント層14から構成される積層体であり、また、外装体がエンボスタイプの場合には、図1(b)に示すように、前記積層体が基材層11、接着層16、化成処理層15(1)、アルミニウム12、化成処理層15(2)、接着層13、シーラント層14とすることが望ましい。
外装体がエンボスタイプの場合、シーラント層に引張り弾性率の高い樹脂を使用した場合、エンボス成形においてシーラント層が白化したりその表面に軽微なクラックが発生することがあり、また、成形安定性が悪く、ピンホールが発生したり、成形しわやクラックが発生することがあった。
さらに、電池用包装材料として不可欠な性能として、内容物充填、シール後の密封シール性が挙げられる。例えば包装材料のシール強度が低い場合、内容物充填シールラインでのシールに充分時間をかける必要があり、サイクル短縮に著しく支障をきたし、生産効率が悪くなる場合がある。
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、電池本体を挿入し周縁部をヒートシールにより密封する電池の外装体を形成する包装材料が、図1(a)に示すように、例えば、基材層11、接着層16、バリア層12、化成処理層15、接着樹脂層13、シーラント層14から構成される積層体のシーラント層14をメタロセン系の線状低密度ポリエチレンを含む樹脂層を少なくとも1層以上積層することによって前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
前記メタロセン系線状低密度ポリエチレンとは、メタロセン触媒(シングルサイト触媒)を使用して重合したポリエチレンのことで、一般の線状低密度ポリエチレンと比べ側鎖の分岐が少なく、分子量、コモノマーの分布が均一である。このため、透明性が高い、低融点である、耐衝撃性に強い等、優れた特性を有する。
【0010】
本発明における電池用包装材料のシーラント層について説明する。シーラント層において、図2(a)に示すように、前記メタロセン系の線状低密度ポリエチレンを含む樹脂層は、メタロセン系の線状低密度ポリエチレン樹脂(以下、MLL)からなる単層SあるいはMLLを少なくとも10重量%以上をブレンドしたポリエチレン系樹脂からなる単層Sであってもよい。前記MLLをブレンドしたポリエチレン系樹脂とする場合、MLLのブレンド比が10重量%未満では、本発明の課題である成形性を向上させる効果が発現しない。
【0011】
また、本発明における電池用包装材料のシーラント層は、図2(b)に示すように、前記MLLからなる樹脂層S3と他のMLLからなる樹脂層S2との2層、あるいは、図2(c)に示すように、さらに他のMLLからなる層S1との3層構成としてもよい。前記MLLからなる樹脂層S1〜S3は、MLLをブレンドしたポリエチレン系樹脂層としてもよいが、最内層となる樹脂層S3は、MLLが望ましい。
【0012】
本発明において、図2(b)または図2(c)に示すように、シーラント層14をMLL層S3またはMLL樹脂を10重量%以上含むブレンド樹脂層S3と他の層S1、S2との多層構成とする場合、他の層S1、S2を形成する樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン系樹脂あるいはこれらの樹脂を不飽和カルボン酸でグラフトさせた酸変性ポリオレフィン等を用いることができる。
【0013】
本発明において、シーラント層14をMLL層またはMLL樹脂を10重量%以上含むブレンド樹脂層(以下、MLLブレンド層)と他の層との多層構成とする場合、前記MLL層やMLLブレンド層の厚さは、シーラント層の総厚さの少なくとも15%以上とすることが望ましい。MLL層またはMLLブレンド層の厚さがシーラント層の総厚さの15%未満では、成形性の向上効果が発現しない。
【0014】
本発明の電池用包装材料の積層体を形成する際の、バリア層とシーラント層とのラミネート方法としては、ドライラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出ラミネート法、熱ラミネート法等を用いることができる。
【0015】
本発明者らは、安定した接着強度を示す積層方法について鋭意研究の結果、少なくともシーラント層をラミネートする面に化成処理したバリア層12と基材層11とをドライラミネートした後、バリア層に設けられた化成処理層とシーラント層との接着法として、図3(a)に示すように、ドライラミネート法によりラミネート13dする、あるいは、図3(b)に示すように、前記化成処理層に酸変性ポリエチレンのエマルジョンを化成処理層に塗布乾燥焼付けた(13h)後、シーラント層となるメタロセン系LLDPEフィルムを熱ラミネート法により積層することによっても所定の接着強度が得られることを確認した。
【0016】
また、次のようなラミネート方法によっても安定した接着強度が得られることを確認した。
すなわち、基材層11と両面に化成処理したバリア層12の片面とをドライラミネートし、図3(c)に示すように、バリア層12の他の面に、酸変性ポリエチレン13esを押出してシーラント層14をサンドイッチラミネートする、または、図3(d)に示すように、酸変性ポリエチレン樹脂13ecとシーラント層14となるメタロセン系LLDPE樹脂とを共押出しして積層体とし、該積層体を前記酸変性ポリエチレン樹脂がその軟化点以上になる条件に加熱することによって、所定の接着強度を有する積層体とすることができた。
前記加熱の具体的な方法としては、熱ロール接触式、熱風式、近または遠赤外線等の方法があるが、本発明においてはいずれの加熱方法でもよく、前述のように、接着樹脂がその軟化点温度以上に加熱できればよい。
【0017】
また、別の方法としては、前記、サンドイッチラミネートまたは共押出しラミネートの際に、アルミニウム12のシーラント層側の表面温度が酸変性ポリオレフィン樹脂13eの軟化点に到達する条件に加熱した状態にしてラミネート加工することによっても接着強度の安定した積層体とすることができた。
また、ポリエチレン樹脂を接着樹脂として用いることも可能であるが、この場合には、押出したポリエチレンの溶融樹脂膜のアルミニウム側のラミネート面をオゾン処理しながらラミネートする方法が有効である。
【0018】
更に別の方法としては、基材層11と両面に化成処理したバリア層12の片面とをドライラミネートし、図3(c)に示すように、バリア層12の他の面に、酸変性ポリエチレン13esのみを押出して中間積層体とし、該中間積層体を前記酸変性ポリエチレン樹脂がその軟化点以上になる条件に加熱した後、シーラント層14となるメタロセン系LLDPE樹脂を押出して積層体とする方法である。上記2回の押出しは、タンデム機を使用してインラインで行っても良いし、一般の押出し機でもオフラインならば行うことができる。
加熱はメタロセン系LLDPE樹脂を押出した後に行っても良いが、上記の様に酸変性ポリエチレン13esを押出した後に(メタロセン系LLDPE樹脂を押出す前に)行う方が、積層体のシーラント層14の滑り性を損なうことがないので、エンボス加工での成形性がより良好となる。
【0019】
以上に述べたように、本発明は、そのラミネート方法によって、バリア層とシーラント層(または接着樹脂層)とのデラミネーションが防止でき、また、シーラント層をメタロセン系LLDPEまたはメタロセン系LLDPEを含む樹脂構成とすることで、エンボス成形工程において、しわやピンホール等を防止することができる。また、上記シーラントを使用することで一般のLLDPEと比べて強いシール強度を得ることができるため、密封性の向上や充填シール工程でのサイクル短縮など、成形品質および生産性の向上に極めて顕著な効果を奏するものである。
【0020】
電池用包装材料は電池本体を包装する外装体を形成するものであって、その外装体の形式によって、図4に示すようなパウチタイプと、図5(a)、図5(b)または図5(c)に示すようなエンボスタイプとがある。前記パウチタイプには、三方シール、四方シール等およびピロータイプ等の袋形式があるが、図4は、ピロータイプとして例示している。
エンボスタイプは、図5(a)に示すように、片面に凹部を形成してもよいし、図5(b)に示すように、両面に凹部を形成して電池本体を収納して周縁の四方をヒートシールして密封してもよい。また、図5(c)に示すような折り部をはさんで両側に凹部形成して、電池を収納して3辺をヒートシールする形式もある。
電池用包装材料をエンボスタイプとする場合、図6(a)〜図6(d)に示すように、積層された包装材料10をプレス成形して凹部7を形成する。
【0021】
次に、本発明の電池用包装材料を構成する各層について説明する。
外装体における前記基材層11は、延伸ポリエステルまたはナイロンフィルムからなるが、この時、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。またナイロンとしては、ポリアミド樹脂、すなわち、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
前記基材層11は、電池として用いられる場合、ハードと直接接触する部位であるため、基本的に絶縁性を有する樹脂層がよい。フィルム単体でのピンホールの存在、および加工時のピンホールの発生等を考慮すると、基材層は6μm以上の厚さが必要であり、好ましい厚さとしては12〜30μmである。
【0022】
基材層11は耐ピンホール性および電池の外装体とした時の絶縁性を向上させるために、積層化することも可能である。
基材層を積層体化する場合、基材層が2層以上の樹脂層を少なくとも一つを含み、各層の厚みが6μm以上、好ましくは、12〜30μmである。基材層を積層化する例としては、次の1)〜8)が挙げられる。
1)延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
2)延伸ナイロン/延伸延伸ポリエチレンテレフタレート
また、包装材料の機械適性(包装機械、加工機械の中での搬送の安定性)、表面保護性(耐熱性、耐電解質性)、2次加工とて電池用の外装体をエンボスタイプとする際に、エンボス時の金型と基材層との摩擦抵抗を小さくする目的あるいは電解液が付着した場合に基材層を保護するために、基材層を多層化、基材層表面にフッ素系樹脂層、アクリル系樹脂層、シリコーン系樹脂層、ポリエステル系樹脂層、またはこれらのブレンド物からなる樹脂層等を設けることが好ましい。例えば、
3)フッ素系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート(フッ素系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
4)シリコーン系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート(シリコーン系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
5)フッ素系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
6)シリコーン系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
7)アクリル系樹脂/延伸ナイロン(アクリル系樹脂はフィルム状、または液状コーティング後乾燥で硬化)
8)アクリル系樹脂+ポリシロキサングラフト系アクリル樹脂/延伸ナイロン(アクリル系樹脂はフィルム状、または液状コーティング後乾燥で硬化)
【0023】
前記バリア層12は、外部から電池の内部に特に水蒸気が浸入することを防止するための層で、バリア層単体のピンホール、および加工適性(パウチ化、エンボス成形性)を安定化し、かつ耐ピンホールをもたせるために厚さ15μm以上のアルミニウム、ニッケルなどの金属、または、無機化合物、例えば、酸化珪素、アルミナ等を蒸着したフィルムなども挙げられるが、バリア層として好ましくは厚さが20〜80μmのアルミニウムとする。
ピンホールの発生をさらに改善し、電池の外装体のタイプをエンボスタイプとする場合、エンボス成形におけるクラックなどの発生のないものとするために、本発明者らは、バリア層として用いるアルミニウムの材質が、鉄含有量が0.3〜9.0重量%、好ましくは0.7〜2.0重量%とすることによって、鉄を含有していないアルミニウムと比較して、アルミニウムの展延性がよく、積層体として折り曲げによるピンホールの発生が少なくなり、かつ前記エンボスタイプの外装体を成形する時に側壁の形成も容易にできることを見出した。前記鉄含有量が、0.3重量%未満の場合は、ピンホールの発生の防止、エンボス成形性の改善等の効果が認められず、前記アルミニウムの鉄含有量が9.0重量%を超える場合は、アルミニウムとしての柔軟性が阻害され、積層体として製袋性が悪くなる。
【0024】
また、冷間圧延で製造されるアルミニウムは焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性・腰の強さ・硬さが変化するが、本発明において用いるアルミニウムは焼きなましをしていない硬質処理品より、多少または完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウムがよい。
【0025】
本発明者らは、電池用包装材料のバリア層12であるアルミニウムの表、裏面に化成処理を施すことによって、前記包装材料として満足できる積層体とすることができた。前記化成処理とは、具体的にはリン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性皮膜を形成することで、前記耐酸性皮膜形成物質の中でも、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸の3成分から構成されたものを用いるリン酸クロメート処理が良好である。または、少なくともフェノール樹脂を含む樹脂成分に、モリブデン、チタン、ジルコン等の金属、または金属塩を含む化成処理剤が良好であった。前記耐酸性皮膜が形成されることによってエンボス成形時のアルミニウムと基材層との間のデラミネーション防止と、電池の電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、エンボス成形時、ヒートシール時の基材層11とアルミニウム12とのデラミネーション防止、電解質と水分との反応により生成するフッ化水素によるアルミニウム内面側でのデラミネーション防止効果が得られた。
各種の物質を用いて、アルミニウム面に化成処理を施し、その効果について研究した結果、前記耐酸性皮膜形成物質の中でも、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸の3成分から構成されたものを用いるリン酸クロメート処理が良好であった。
または、少なくともフェノール樹脂を含む樹脂成分に、モリブデン、チタン、ジルコン等の金属、または金属塩を含む化成処理剤が良好であった。
【0026】
アルミの化成処理は、外装体がパウチタイプである場合、シーラント層側のみの片側または基材層側とシーラント層側の両面のどちらでもよい。電池の外装体がエンボスタイプの場合には、アルミニウムの両面に化成処理することによって、エンボス成形の際のアルミニウムと基材層との間のデラミネーションを防止することができる。
【0027】
本発明の電池用包装材料において、バリア層とシーラント層とをサンドイッチラミネート法または共押出ラミネート法によってラミネートする場合の接着樹脂としては、酸変性ポリエチレンを用いることが好ましい。酸変性ポリエチレンは、不飽和カルボン酸をグラフト重合したポリエチレンであり、バリア層の化成処理層の面とシーラント層のラミネート面樹脂とのいずれにも良好な接着性を示す。
【0028】
本発明の電池用包装材料におけるシーラント層は、前述のように、メタロセン系PE樹脂からなる単層、または、メタロセン系PEをブレンドした樹脂からなる単層、または少なくとも前記単層を含む多層構成とする。
【0029】
本発明において、外装体を形成する前記の各層には、適宜、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性を向上、安定化する目的のために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理をしてもよい。
【0030】
【実施例】
本発明の電池用包装材料ついて、実施例によりさらに具体的に説明する。
実施例および比較例における共通の条件は以下の通りとした。
(1)外装体はいずれもエンボスタイプとし、
延伸ナイロン25μm/接着層(1)/化成処理層/ALM40μm/化成処理層/接着層(2)/シーラント層30μm
実施例、比較例に用いた積層体の製造方法は、特に記載のない場合、次の様に積層した。
アルミニウム(厚さ40μm)の両面にクロメート処理による化成処理層を設け、その一方の面に延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)をドライラミネートして接着層(1)を形成し、他の面に、それぞれの方法によって接着層(2)を形成してシーラント層(厚さ30μm)をラミネートして積層体とした。
なお、前記クロメート処理は、実施例、比較例ともに、処理液として、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸からなる水溶液を、ロールコート法により、塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件において焼き付けた。クロムの塗布量は、2mg/m2(乾燥重量)とした。
次に、得られた積層体をエンボス成形してトレイを成形した。成形しない積層体を蓋体として外装体とした。
(2)外装体のタイプ
いずれも片面エンボスタイプとし、前記トレイのエンボス成形型は、その凹部(キャビティ)の形状を30mm×50mmとし、成形深さは凸部の押し込み量によって0.5mmきざみで調整した。
(3)略称
以下の説明に用いる略称は次の通りである。
・主要樹脂
ON:延伸ナイロンフィルム
ALM:アルミニウム箔
LL:密度が0.925の一般の線状低密度ポリエチレン
MLL1:密度が0.92のメタロセン系LLDPE
MLL2:密度が0.90のメタロセン系LLDPE
MD:密度が0.93の中密度ポリエチレン
LD:密度が0.90の低密度ポリエチレン
PEa:酸変性ポリエチレン
PEaH:酸変性ポリエチレンエマルジョン
[実施例1]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の化成処理面にシーラント層となるフィルムをドライラミネートして実施例1の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、ラミネート側をLL(厚さ25μm)、内面側をMLL1(厚さ5μm)の2層構成とした。
[実施例2]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の化成処理面にシーラント層となるフィルムをドライラミネートして実施例2の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、MLL1(厚さ30μm)の単層とした。
[実施例3]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の化成処理面に、接着樹脂としてPEaを15μmの厚さで押出しシーラント層フィルム30μmをサンドイッチラミネートし、得られた積層体をPEaの軟化点以上の温度になるように加熱して実施例3の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、ラミネート側をLL(厚さ25μm)、内面側をMLL1(厚さ5μm)の2層構成とした。
[実施例4]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の化成処理面をPEaの軟化点以上の温度に加熱して、接着樹脂としてPEaを15μmの厚さで押出しシーラント層フィルム30μmをサンドイッチラミネートして実施例4の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、ラミネート側をMD(厚さ10μm)、内面側をMLL2とMDとのブレンド樹脂(厚さ20μm)(ブレンド比は重量比でMLL2:MD=9:1)の2層構成とした。
の2層構成とした。
[実施例5]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の化成処理面をPEaの軟化点以上の温度に加熱して、接着樹脂としてPEaを15μmの厚さで押出しシーラント層フィルム30μmをサンドイッチラミネートし、て実施例4の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、MLL1(厚さ30μm)の単層とした。
[実施例6]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の化成処理面に、接着樹脂のPEa(15μm)とシーラント層樹脂(30μm)とを共押出ラミネートして、得られた積層体をPEaの軟化点以上の温度になるように加熱して実施例6の積層体とした。
シーラント層樹脂は、MLL1とLDとのブレンド樹脂(ブレンド比は重量比でMLL1:LD=7:3)とした。
[実施例7]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の化成処理面に接着樹脂のPEaを押出し、続いてシーラント層樹脂(30μm)を押出して、得られた積層体をPEaの軟化点以上の温度になるように加熱して実施例7の積層体とした。
シーラント層樹脂は、MLL1とLDとのブレンド樹脂(ブレンド比は重量比でMLL1:LD=7:3)とした。
[実施例8]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の化成処理面に、接着樹脂のPEaを押出した後、得られた中間積層体をPEaの軟化点以上の温度になるように加熱してから、シーラント層樹脂(30μm)を押出して、実施例8の積層体とした。
シーラント層樹脂は、MLL1とLLとのブレンド樹脂(ブレンド比は重量比でMLL1:LL=8:2)とした。
[実施例9]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の化成処理面にPEaHをロールコート法を用いて塗布乾燥し、さらに加熱焼付して、該焼付層にシーラント層となるフィルムを熱ラミネートして実施例9の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、MLL1(厚さ30μm)とした。
【0031】
[比較例1]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の面にシーラント層となるフィルムをドライラミネートして比較例1の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、LL(厚さ30μm)の単層とした。
[比較例2]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施さず、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の面にシーラント層となるフィルムをドライラミネートして比較例2の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、MLL1(厚さ30μm)の単層とした。
[比較例3]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMアルミニウムの他の化成処理面に、接着樹脂としてPEaを15μmの厚さで押出しシーラント層フィルム30μmをサンドイッチラミネートし、得られた積層体をPEaの軟化点以上の温度になるように加熱して比較例3の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、LL(厚さ30μm)とした。
[比較例4]
ALM(厚さ40μm)に化成処理を施さず、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の面に接着樹脂としてPEaを15μmの厚さで押出し、シーラント層フィルム30μmをサンドイッチラミネートし、得られた積層体をPEaの軟化点以上の温度になるように加熱して比較例4の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、ラミネート側をLL(厚さ25μm)、内面側をMLL1(厚さ5μm)の2層構成とした。
[比較例5]
ALM(厚さ40μm)の両面に化成処理を施し、一方の面にON(厚さ25μm)をドライラミネートし、ALMの他の化成処理面にPEaHをロールコート法を用いて塗布乾燥し、さらに加熱焼付して、該焼付層にシーラント層となるフィルムを熱ラミネートして実施例9の積層体とした。
シーラント層となるフィルムは、LL(厚さ30μm)とした。
【0032】
<評価方法>
(1)デラミネーションの確認
それぞれの積層体を用いて形成した外装体に電解液を充填後、ドライラミネートによる積層体については60℃、の条件に24時間、接着樹脂による押出しラミネートによる積層体については、85℃の条件に24時間、それぞれ保存した時のアルミニウム(化成処理層)と接着層(2)とのデラミネーションの有無を確認した。
電解液:1M LiPF6となるようにしたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(容積比1:1:1)の混合液、3g。
(2)成形性
実施例、比較例とも各50個を成形して、安定してピンホール、シワ、白化の発生のないトレイを得られる成形押し込み量(mm)を記載した。
(3)シール強度
190℃、面圧1.0MPa、3.0秒の条件で密封シール後、シール部の剥離強度を測定した。単位:N/15mm。
【0033】
<結果>
実施例1〜実施例9は、いずれも、デラミネーションの発生はなく、成形性についても、ピンホール、シワの発生等もなく良好であった。ヒートシール部のシールも安定した強度を示した。
また、実施例における成形性、シール強度はは以下の通りであった。
Figure 0004934936
一方、比較例1においては、デラミネーションの発生はなく、成形性も良好であったが、シール強度が低かった。比較例2および比較例4においては、成形性、シール強度ともに問題はなかったがデラミネーションが発生した。
比較例3および比較例5は、デラミネーションの発生はなく、成形性も良好であったが、シール強度が低かった。
また、比較例における成形性、シール強度はは以下の通りであった。
Figure 0004934936
【0034】
【発明の効果】
電池用包装材料において、少なくともシーラント層またはその最内層をメタロセン系LLDPE樹脂またはメタロセン系LLDPEをブレンドした樹脂とすることによって、一般のLLDPEと比べてエンボス成形における成形性が向上し、しわやピンホールの発生を防止することができた。
さらに、シール強度においても一般のLLDPEと比べて強いシール強度を得ることができた。
また、外装体のアルミニウムの両面に施した化成処理によって、エンボス成形時、およびヒートシール時の基材層とアルミニウムとの間でのデラミネーションの発生を防止することができ、また、シーラント層を、ドライラミネート法、熱ラミネート法、サンドイッチラミネート法または共押出ラミネート法により形成した場合に、積層体の形成時の加熱、または積層体形成後の加熱によって、電池の電解質と水分との反応により発生するフッ化水素によるアルミニウム面の腐食を防止できることにより、アルミニウムとの内容物側の層とのデラミネーションをも防止できる外装体である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池用包装材料を説明する図で、(a)積層体の実施例を示す断面図、(b)別の積層体の実施例を示す断面図である。
【図2】シーラント層の構成を説明する図で、(a)単層シーラントの断面図、(b)2層シーラントの断面図、(c)3層シーラントの場合の断面図である。
【図3】本発明の電池用包装材料をラミネート方法別に示した断面図であり、(a)ドライラミネート法、(b)熱ラミネート法、(c)サンドイッチラミネート法、(d)共押出ラミネート法である。
【図4】電池のパウチタイプの外装体を説明する斜視図である。
【図5】電池のエンボスタイプの外装体を説明する斜視図である。
【図6】エンボスタイプにおける成形を説明する、(a)斜視図、(b)エンボス成形された外装体本体、(c)X2−X2部断面図、(d)Y1部拡大図である。
【符号の説明】
H ヒートシール熱板
1 電池
2 電池本体
3 セル(蓄電部)
4 リード線(電極)
5 外装体
7 凹部
8 側壁部
9 シール部
10 積層体(電池用包装材料)
11 基材層
12 アルミニウム(バリア層)
13 接着層
13d ドライラミネート層
13h 酸変性ポリオレフィンの焼付層
13es サンドイッチラミネート法の場合の酸変性ポリ
オレフィンの押出層
13ec 共押出ラミネート法の場合の酸変性ポリオレフィン
の押出層
14 シーラント層
S1 シーラント層の外層
S2 シーラント層の中間層
S3 シーラント層の内層
15 化成処理層
16 基材側ドライラミネート層
20 プレス成形部
21 オス型
22 メス型
23 キャビティ

Claims (8)

  1. 電池本体を挿入し周縁部をヒートシールにより密封する電池の外装体を形成する包装材料が、少なくとも基材層、接着層1、バリア層、接着層2、シーラント層から構成される積層体であって、シーラント層がメタロセン系の線状低密度ポリエチレンを含む樹脂層を少なくとも1層以上積層されていることを特徴とする電池用包装材料。
  2. シーラント層がメタロセン系の線状低密度ポリエチレン樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1に記載した電池用包装材料。
  3. シーラント層がメタロセン系の線状低密度ポリエチレン樹脂10%以上を含むポリエチレン系樹脂から形成されていることを特徴とする請求項1に記載した電池用包装材料。
  4. シーラント層が、少なくともメタロセン系の線状低密度ポリエチレン樹脂からなる層を含む多層構成からなることを特徴とする請求項1に記載した電池用包装材料。
  5. シーラント層が、メタロセン系線状低密度ポリエチレン樹脂10%以上を含むポリエチレン系樹脂層を含む多層構成からなることを特徴とする請求項1に記載した電池用包装材料。
  6. 接着層2がドライラミネート法により形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載した電池用包装材料。
  7. 接着層2が酸変性ポリオレフィンの塗布焼付け層であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載した電池用包装材料。
  8. 接着層2が酸変性ポリオレフィンの押出層であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載したの電池用包装材料。
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