JP5157034B2 - リード線用フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明の電池のリード線用フィルム及びそれを用いた電池用包装材は、防湿性、耐内容物性を有する、液体または固体有機電解質(高分子ポリマー電解質)を持つ電池、または燃料電池、コンデンサ、キャパシタ等に用いる包装材料であって電池本体を包装する外装体と前記電池のリード線部と外装体との間に介在させるリード線用フィルム及びそれを用いたリード線、電池用包装材、該包装材を外装体とする電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明における電池とは、化学的エネルギーを電気的エネルギーに変換する素子を含む物、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、燃料電池等や、または、液体、固体セラミック、有機物等の誘電体を含む液体コンデンサ、固体コンデンサ、二重層コンデンサ等の電解型コンデンサを示す。
電池の用途としては、パソコン、携帯端末装置(携帯電話、PDA等)、ビデオカメラ、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星等に用いられる。
前記電池の外装体としては、金属をプレス加工して円筒状または直方体状に容器化した金属製缶、あるいは、プラスチックフィルム、金属箔等のラミネートにより得られる複合フィルムからなる積層体を袋状にしたもの(以下、外装体)が用いられていた。
電池の外装体として、次のような問題があった。金属製缶においては、容器外壁がリジッドであるため、電池自体の形状が決められてしまう。そのため、ハード側を電池にあわせる設計をするため、該電池を用いるハードの寸法が電池により決定されてしまい形状の自由度が少なくなる。
そのため、前記袋状の外装体を用いる傾向にある。前記外装体の材質構成は、電池としての必要な物性、加工性、経済性等から、少なくとも基材層、バリア層、シーラント層と前記各層を接着する接着層からなり、必要に応じて中間層を設けることがある。
電池の前記構成の積層体からパウチを形成し、または、少なくとも片面をプレス成形して電池の収納部を形成して電池本体を収納し、パウチタイプまたは、エンボスタイプ(蓋体を被覆して)において、それぞれの周縁の必要部分をヒートシールにより密封することによって電池とする。
前記シーラント層としては、シーラント層同士のヒートシール性とともにリード線(金属)に対してもヒートシール性を有することが求められ、金属接着性を有する酸変性ポリオレフィン樹脂をシーラント層とすることでリード線部との密着性は確保される。
【0003】
しかし、酸変性ポリオレフィン樹脂を外装体のシーラント層として積層すると、一般的なポリオレフィン樹脂と比較してその加工性が劣ること、また、コストが高いこと等のために、外装体のシーラント層として一般的なポリオレフィン樹脂層とし、リード線部にシーラント層とリード線との両方に熱接着可能なリード線用フィルムを介在させる方法が採用されていた。
具体的には、図8(a)に示すように、リード線4’と積層体10’のシーラント層14’との間に、リード線4’と積層体10のシーラント層14’との双方に対してヒートシール性を有するリード線用フィルム20’を介在させることにより、リード線部での密封性を確保していた。
前記リード線用フィルム20’としては、前記不飽和カルボングラフトポリオレフィン、金属架橋ポリエチレン、エチレンまたはプロピレンとアクリル酸、またはメタクリル酸との共重合物からなるフィルムを用いていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、電池の外装体(以下、外装体)を構成する積層体のシーラント層がポリオレフィン系樹脂からなる場合、電池本体を外装体に収納し、その周縁をシールして密封するが、例えば、酸変性ポリオレフィン単層からなるリード線用フィルム20’を用いる場合、リード線が存在する部分において、図8(b)に示すように、ヒートシールのための熱と圧力によって前記積層体のシーラント層14’とリード線用フィルム層20’とがともに溶融し、また、加圧によって加圧部の領域の外に押出されることがある。その結果、積層体10’のバリア層12’であるアルミニウム箔と金属からなるリード線4’とが接触(S)しショートすることがあった。
本発明の目的は、電池包装において、ポリオレフィン系樹脂をシーラント層とする外装体に電池本体を挿入してその周縁をヒートシールして密封する際に、ヒートシールの熱と圧力によって外装体のバリア層とリード線とがショートすることなく安定して密封可能な電池のリード線用フィルム及びそれを用いた電池用包装材料を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、以下の本発明により解決することができる。すなわち、請求項1に記載した発明は、内面にヒートシール性を有する積層体からなる外装体に電池本体を収納した外装体の周縁シール部に、細長の板または棒状の金属からなるリード線本体を挟持して、前記外装体の周縁部を密封シールする際に、前記積層体とリード線本体との間に介在させるフィルムが耐熱樹脂層を含む多層構成フィルムであって、前記耐熱樹脂層が不飽和カルボン酸でグラフト変性された4−メチル−1−ペンテン単独重合体からなると共に、少なくとも前記耐熱樹脂層の一方の面が前記積層体の内面とヒートシール性を有する層であり、他の面が金属に対してヒートシール性を有する層であることを特徴とするリード線用フィルムからなる。請求項2に記載した発明は、請求項1に記載したリード線用フィルムにおいて、前記積層体の内面とヒートシール性を有する層が、(1)α・オレフィン重合体、(2)エチレンとα・オレフィンとの共重合体、(3)プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、(4)不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、(5)エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、(6)エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、(7)金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体の中から選択される樹脂からなることを特徴とするものである。請求項3に記載した発明は、請求項1に記載したリード線用フィルムにおいて、前記金属に対してヒートシール性を有する層が、(1)不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、(2)エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、(3)エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、(4)金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体の中から選択される樹脂からなることを特徴とするものである。請求項4に記載した発明は、内面にヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂のシーラント層を備えた積層体からなる外装体に、セルとリード線からなる電池本体を前記リード線を外部に突出した状態で密封してなる電池であって、前記外装体と前記リード線との間に請求項1〜請求項3のいずれかに記載のリード線用フィルムを介在させてなることを特徴とする電池からなる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、金属箔からなるバリア層を含み、内面にヒートシール性を有する積層体からなる外装体の周縁シール部に、細長の板または棒状の金属からなるリード線本体を挟持して、前記外装体の周縁部を密封シールする際に、前記積層体とリード線本体との間に介在させるリード線用フィルムを、少なくとも不飽和カルボン酸でグラフト変性された4−メチル−1−ペンテン系の重合体からなる耐熱樹脂層を含む多層構成フィルムとするもので、電池用包装材料からなる外装体に電池本体を収納して、外装体の周縁をヒートシールにより密封する際に、リード線部分において、電池用包装材料のバリア層とリード線とがショートすることのない安定した電池包装をすることができることを特徴とするものである。以下、本発明について、図等を利用してさらに詳細に説明する。
【0007】
図1は、本発明のリード線用フィルムを説明する図で、(a)リード線用フィルムの層構成を示す断面図、(b)電池リード線、外装体、リード線用フィルムの材質及び位置関係(片側)を説明する図、(c)ヒートシール後のリード線部の模式断面図である。図2は、電池の外装体を形成する積層体の層構成例を示す断面図である。図3は、電池用包装材料とリード線との接着におけるリード線用フィルムの装着方法を説明する斜視図である。図4は、本発明におけるリード線用フィルムのリード線と外装体との間への介在方法を説明する図である。図5は、電池のパウチタイプの外装体を説明する斜視図である。図6は、電池のエンボスタイプの外装体を説明する斜視図である。図7は、エンボスタイプにおける成形を説明する、(a)斜視図、(b)エンボス成形された外装体本体、(c)X2−X2部断面図、(d)Y1部拡大図である。
【0008】
電池のリード線としては、細長の板状または棒状の金属からなり、板状のリード線としては、厚さが50〜2000μm、 巾 が2.5〜20mm程度であって、その材質としては、 AL、Cu(Niメッキを含む)、Ni、等である。
【0009】
また、電池の外装体のシーラント層は該シーラント層(多層の場合はその最内樹脂層)同士がヒートシール可能な樹脂により形成される。そして、外装体のシーラント層(多層の場合はその最内樹脂層)はリード線に対しても直接ヒートシール可能な樹脂とすることか望ましい。しかし、前述したように、一般的なポリオレフィン例えばポリエチレンやポリプロピレンの単体、またはブレンド物の単層あるいは多層構成からなる樹脂物をシーラント層とし、リード線と該シーラント層との間には、シーラント層とリード線とのいずれにも熱接着性を有するリード線用フィルムを介在させることにより相互にヒートシールして密封する方法がとられている。
【0010】
電池の外装体は、電池本体の性能を長期にわたって維持する性能を有することが求められ、基材層、バリア層、シーラント層等を各種のラミネート法によって積層している。特に、電池の外装体(以下、外装体)を構成する積層体のシーラント層がポリオレフィン系樹脂等からなる場合、電池本体を外装体に収納し、その周縁をシールして密封する際、リード線が存在する部分において、例えば、リード線用フィルムとして酸変性ポリオレフィンを用いる場合、図8(a)及び図8(b)に示すようにヒートシールのための熱と圧力によって前記外装体のシーラント層とリード線用フィルム層とがともに溶融し、また、加圧によって、絶縁層となっていた外装体のバリア層12’より内側の層、及び、リード線用フィルム層20’が、ともに加圧部の領域の外に押し出されることがある。その結果、外装体のバリア層12’であるアルミニウム箔と金属からなるリード線本体4’とが接触しショートSすることがあった。
【0011】
本発明者らは、前記ショートの発生を防止する方法について鋭意研究の結果、内面にヒートシール性を有する積層体からなる外装体に電池本体を収納した外装体の周縁シール部に、細長の板または棒状の金属からなるリード線本体を挟持して、前記外装体の周縁部を密封シールする際に、前記積層体とリード線本体との間に介在させるリード線用フィルムを、少なくとも不飽和カルボン酸でグラフト変性された4−メチル−1−ペンテン系の重合体からなる耐熱樹脂層を含む多層構成フィルムとすることによって、ヒートシールの際の熱と圧力により、熱融着層が流動化しても、前記耐熱樹脂層は流動化することが殆どなくヒートシール時にも絶縁膜として残存し、外装体の積層体のバリア層とリード線とが接触することによるショートを防止することができることを見出し本発明を完成するに到った。
【0012】
前記不飽和カルボン酸でグラフト変性された4−メチル−1−ペンテン系の重合体からなる耐熱樹脂層としては、以下に述べるように、単独成分でも良いし、他の重合体や共重合体をブレンドしても良い。例えば、耐熱樹脂層が不飽和カルボン酸グラフト変性された4−メチル−1−ペンテン単独重合体(A樹脂)のみから構成された層とすることができる。
また、前記A樹脂に、
(1)4−メチル−1−ペンテン単独重合体とエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの炭素数が2〜20のα・オレフィン(4−メチル−1−ペンテンは除く)との共重合体、
(2)α・オレフィン重合体、エチレンとα・オレフィンとの共重合体、プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、ブタジエンゴムから選択されるブレンド用樹脂の(1)または(2)に記載の少なくとも1つをブレンドした樹脂であってもよい。A樹脂に前記の樹脂等をブレンドして耐熱樹脂層とすることによって、該耐熱樹脂層とシーラント側樹脂層との共押出しにおける層間の接着性がよくなる効果を奏する。
【0013】
また、本発明のリード線用フィルムの耐熱樹脂層としては、4−メチル−1−ペンテン単独重合体とエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの炭素数が2〜20のα・オレフィン(4−メチル−1−ペンテンは除く)とを共重合させたものを不飽和カルボン酸でグラフト変性した樹脂(B樹脂)を用いることもできる。
更に、B樹脂に、
(1)4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン単独重合体とエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの炭素数が2〜20のα・オレフィン(4−メチル−1−ペンテンは除く)との共重合体、
(2)α・オレフィン重合体、エチレンーα・オレフィン共重合体、プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、ブタジエンゴムから選択されるブレンド用樹脂
の(1)または(2)に記載の少なくとも1つをブレンドしてもよい。
【0014】
前記ブレンド用樹脂としてのα・オレフィン重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等であり、エチレンとα・オレフィンとの共重合体は、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとヘキセンとの共重合体あるいはエチレンとブテンとの共重合体等である。さらに、プロピレンとα・オレフィンとの共重合体は、ポリプロピレンとブテンとの共重合体あるいはポリプロピレンとエチレンとブテンとの共重合体である。
また、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体とは、不飽和カルボン酸でグラフト変性されたポリエチレンや不飽和カルボン酸でグラフト変性したプロピレン等の不飽和カルボン酸でグラフト変性されたα・オレフィン重合体、不飽和カルボン酸でグラフト変性したエチレンとプロピレンとの共重合体である不飽和カルボン酸でグラフト変性したエチレンとのα・オレフィンとの共重合体あるいは、不飽和カルボン酸でグラフト変性したプロピレンとエチレンとの共重合体や不飽和カルボン酸でグラフト変性したプロピレンとエチレンとブテンとの共重合体等の不飽和カルボン酸でグラフト変性したプロピレンとα・オレフィンとの共重合体である。
【0015】
本発明のリード線用フィルムは、少なくとも耐熱樹脂層の一方の面が積層体のシーラント面とヒートシール性を有する層(シーラント側樹脂層)であり、他の面がリード線(金属)に対してヒートシール性を有する層(リード線側樹脂層)として構成される多層フィルムであり、その積層方法としては共押出し製膜法が望ましい。
前記シーラント側樹脂層は、
(1)α・オレフィン重合体、
(2)エチレンとα・オレフィンとの共重合体、
(3)プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、
(4)不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、
(5)エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、
(6)エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、
(7)金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体の中から選択される樹脂から形成される。
【0016】
また、リード線側樹脂層は、
(1)不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィン共重合体
(2)エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、
(3)エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、
(4)金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体の中から選択される。
【0017】
本発明のリード線用フィルムは、少なくとも耐熱樹脂層の両側に、シーラント側樹脂層とリード線側樹脂層とを配する構成とするが、相互の層間の接着強度を安定させる等のために、耐熱樹脂層を多層化したり、接着樹脂層を付加してもよい。以下、本発明のリード線用フィルムの構成例をシーラント側樹脂層をポリエチレン系樹脂した場合を例として説明する。
以下、略号により例示するが、左側がシーラント層側樹脂層、右側がリード線側樹脂層であり、また、それぞれの略号の示す層を構成する樹脂およびブレンド内容は次の通りである。
PE:ポリエチレン
PEa:不飽和カルボン酸グラフト変性されたポリエチレン
TPX:4−メチル−1−ペンテン単独重合体
TPX共重合体:4−メチル−1−ペンテン単独重合体とエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの炭素数が2〜20のα・オレフィン(4−メチル−1−ペンテンは除く)とを共重合させた樹脂
TPXブレンド:TPXに
(1)4−メチル−1−ペンテン単独重合体とエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの炭素数が2〜20のα・オレフィン(4−メチル−1−ペンテンは除く)との共重合体、
(2)α・オレフィン重合体、エチレンーα・オレフィン共重合体、プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、ブタジエンゴムから選択されるブレンド用樹脂
の(1)または(2)に記載の少なくとも1つがブレンドされた樹脂
TPX共重合体ブレンド:TPX共重合体に、
(1)4−メチル−1−ペンテン単独重合体
(2)α・オレフィン重合体、エチレンーα・オレフィン共重合体、プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、ブタジエンゴムから選択されるブレンド用樹脂
の(1)または(2)に記載の少なくとも1つがブレンドされた樹脂
TPXa:不飽和カルボン酸グラフト変性された4−メチル−1−ペンテン単独重合体
TPX共重合体a:4−メチル−1−ペンテン単独重合体とエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの炭素数が2〜20のα・オレフィン(4−メチル−1−ペンテンは除く)とを共重合させたものを不飽和カルボン酸でグラフト変性した樹脂
TPXaブレンド:TPXaに、
(1)4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン単独重合体とエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの炭素数が2〜20のα・オレフィン(4−メチル−1−ペンテンは除く)との共重合体、
(2)α・オレフィン重合体、エチレンーα・オレフィン共重合体、プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、ブタジエンゴムから選択されるブレンド用樹脂
の(1)または(2)に記載の少なくとも1つがブレンドされた樹脂
TPX共重合体aブレンド:TPX共重合体aに
(1)4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン単独重合体とエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの炭素数が2〜20のα・オレフィン(4−メチル−1−ペンテンは除く)との共重合体、
(2)α・オレフィン重合体、エチレンーα・オレフィン共重合体、プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、ブタジエンゴムから選択されるブレンド用樹脂
の(1)または(2)に記載の少なくとも1つがブレンドされた樹脂
【0018】
3層構成としては、
PE/TPXa/PEa
PEa/TPXa/PEa
PE/TPXaブレンド/PEa
PE/TPXa共重合体/PEa
PE/TPXa共重合体ブレンド/PEa
【0019】
耐熱樹脂層に、TPX、TPX共重合体、TPXブレンドなどの層とともに多層化することもでき、また、
(1)α・オレフィン重合体、
(2)エチレンとα・オレフィンとの共重合体、
(3)プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、
(4)不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、
(5)エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、
(6)エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、
(7)金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体
等からなる層を含む多層構成としてもよい。
例えば、4層構成としては、
PE/TPX/TPXa/PEa
PE/TPXブレンド/TPXa/PEa
PEa/TPX共重合体/TPXa/PEa
PE/TPX共重合体ブレンド/TPXaブレンド/PEa
PP/TPXブレンド/TPXa共重合体ブレンド/PEa
【0020】
また、5層構成としては、
PEa/TPXブレンド/TPXaブレンド/TPXブレンド/PEa
PEa/TPXaブレンド/TPX/TPXaブレンド/PEa
PE/TPXaブレンド/TPXa共重合体ブレンド/TPXaブレンド/PEa
等である。
【0021】
本発明のリード線用フィルムを適用する電池用包装材料は、少なくとも基材層、接着層、アルミニウム、化成処理層、ポリオレフィン系樹脂のシーラント層から構成される積層体であって、該積層体を用いて形成した外装体に電池本体を挿入し、外装体周縁をヒートシールする際に、前記外装体とリード線との間に前記いずれかに記載のリード線用フィルムを介在させるものである。そして、セルとリード線からなる電池本体が、前記外装体に封入され密封され、電池として機能する状態となる。
【0022】
以上に述べたように、前記A樹脂あるいはB樹脂等の不飽和カルボン酸でグラフト変性された4−メチル−1−ペンテン系の重合体(耐熱樹脂層)は、外装体のシーラント層として用いられる通常のポリオレフィン、リード線用フィルムとして用いる酸変性ポリオレフィン等と比較して、室温下では勿論融点以上の高温下での機械的強度、例えば引張り強度、突き刺し強度、圧縮強度に優れており、外装体のヒートシール条件にて加圧加熱しても熔融流動化することがなく、前記バリア層とリード線とのショートを防止することができる。本発明のリード線用フィルムは、TPXa系樹脂層を中心層として、少なくとも片面に電池用包装材料のシーラント層にヒートシール性を有する示す樹脂層、他の面にはリード線にヒートシール性を有する樹脂層をラミネートした少なくとも3層構造とするが、前記各樹脂層間の接着強度を安定化するために前述のように他の樹脂等をブレンドしても良い。または耐熱樹脂層を多層化してもよい。
【0023】
本発明のリード線用フィルム20を外装体とリード線との間に介在させて密封シールをした場合に、前記リード線用フィルムは、図1(c)に示すように、前記密封のための熱、圧力によっても耐熱樹脂層22は膜状の層として、外装体のバリア層12とリード線4との間に残存し、バリア層12とリード線4とのショートを防止する絶縁層として機能して、前記ショートを回避することができる。
【0024】
本発明のリード線用フィルム20は共押出し製膜することが望ましい。例えば、3層構成とする場合、例えば、図1(a)において、ポリオレフィン層21,耐熱樹脂層22、酸変性ポリオレフィンの層23の構成とする層の厚さとしては、耐熱樹脂層22が5μm以上、該リード線用フィルム20の総厚は、使用されるリード線の1/3以上あればよく、たとえば、100μmの厚さのリード線であれば、リード線用フィルム20の総厚は30μm以上あれば良い。
【0025】
電池用包装材料は電池本体を包装する外装体を形成するものであって、その外装体の形式によって、図5に示すようなパウチタイプと、図6(a)、図6(b)または図6(c)に示すようなエンボスタイプとがある。前記パウチタイプには、三方シール、四方シール等及びピロータイプ等の袋形式があるが、図5は、ピロータイプとして例示している。
エンボスタイプは、図6(a)に示すように、片面に凹部を形成しても良いし、図6(b)に示すように、両面に凹部を形成して電池本体を収納して周縁の四方をヒートシールして密封しても良い。また、図6(c)に示すような折り部をはさんで両側に凹部形成して、電池を収納して3辺をヒートシールする形式もある。
【0026】
外装体5とリード線4との間にリード線用フィルム20を介在させるがその具体的方法は、例えば、図3(a)及び図3(b)に示すように、電池本体2のリード線部密封シール部の上下にリード線用フィルム20をおいて(実際には仮着シールにより固定して)外装体5に挿入しリード線部を挟持した状態でヒートシールすることによって密封する。
【0027】
リード線用フィルム20のリード線4への介在方法として、図3(d)または図3(e)に示すように、リード線4の所定の位置にリード線用フィルム20のフィルムを巻き付けてもよい。
リード線4とリード線用フィルム20は、図4(a)に示すように、リード線4にリード線用フィルム20を予め溶着mkさせて用いてもよい。あるいは、図4(b)に示すように、リード線4とリード線用フィルム20とを仮着wkさせた状態で用いてもよい。さらに、図4(c)または図4(d)に示すように、予め外装体10のシーラント層14の面に仮着wkまたは溶着mkさせてもよい。
【0028】
次に、本発明の電池リード線用フィルム20を適用する電池用包装材料(積層体)10の材質について説明する。
前記積層体10は、図2(a)に示すように、少なくとも基材層11、接着層16、バリア層12、化成処理層15、接着樹脂層13、シーラント層14から構成されるものである。または、図2(b)および図2(c)に示すように、少なくとも基材層11、接着層16、化成処理層15(1)、バリア層12、化成処理層15(2)、接着樹脂層13、シーラント層14から構成されるものである。
【0029】
前記基材層11は、電池として用いられる場合、ハードと直接接触する部位であるため、基本的に絶縁性を有する樹脂層がよい。フィルム単体でのピンホールの存在、及び加工時のピンホールの発生等を考慮すると、基材層は6μm以上の厚さが必要であり、好ましい厚さとしては12〜30μmである。
【0030】
外装体における前記基材層11としては、延伸ポリエステルまたはナイロンフィルムからなるが、この時、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。またナイロンとしては、ポリアミド樹脂、すなわち、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。
【0031】
基材層11は耐ピンホール性及び電池の外装体とした時の絶縁性を向上させるために、積層化することも可能である。
基材層を積層体化する場合、基材層が2層以上の樹脂層を少なくとも一つを含み、各層の厚みが6μm以上、好ましくは、12〜30μmである。基材層を積層化する例としては、次の1)〜8)が挙げられる。
1)延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
2)延伸ナイロン/延伸延伸ポリエチレンテレフタレート
また、包装材料の機械適性(包装機械、加工機械の中での搬送の安定性)、表面保護性(耐熱性、耐電解質性)、2次加工とて電池用の外装体をエンボスタイプとする際に、エンボス時の金型と基材層との摩擦抵抗を小さくする目的あるいは電解液が付着した場合に基材層を保護するために、基材層を多層化、基材層表面にフッ素系樹脂層、アクリル系樹脂層、シリコーン系樹脂層、ポリエステル系樹脂層、またはこれらのブレンド物からなる樹脂層等を設けることが好ましい。
例えば、
3)フッ素系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート(フッ素系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
4)シリコーン系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート(シリコーン系樹脂は、フィルム状物、または液状コーティング後乾燥で形成)
5)フッ素系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
6)シリコーン系樹脂/延伸ポリエチレンテレフタレート/延伸ナイロン
7)アクリル系樹脂/延伸ナイロン(アクリル系樹脂はフィルム状、または液状コーティング後乾燥で硬化)
8)アクリル系樹脂+ポリシロキサングラフト系アクリル樹脂/延伸ナイロン(アクリル系樹脂はフィルム状、または液状コーティング後乾燥で硬化)
また、少なくとも基材層11にエルカ酸アマイド、オレイン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ビスエルカ酸アマイド、ビスオレイン酸アマイド、ビスステアリン酸アマイドに代表される一般的にはポリオレフィン系樹脂に内部添加する滑剤の少なくとも一つを、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエン、メチルーエチルーケトン等の溶剤で溶液状とし塗工、塗布することで表面の滑り性が改善され成形性が向上することも判明した。
【0032】
前記バリア層12は、外部から電池の内部に特に水蒸気が浸入することを防止するための層で、バリア層単体のピンホール、及び加工適性(パウチ化、エンボス成形性)を安定化し、かつ耐ピンホールをもたせるために厚さ15μm以上のアルミニウム、ニッケルなどの金属、または、無機化合物、例えば、酸化珪素、アルミナ等を蒸着したフィルムなども挙げられるが、バリア層として好ましくは厚さが20〜80μmのアルミニウムとする。
ピンホールの発生をさらに改善し、電池の外装体のタイプをエンボスタイプとする場合、エンボス成形におけるクラックなどの発生のないものとするために、本発明者らは、バリア層として用いるアルミニウムの材質が、鉄含有量が0.3〜9.0重量%、好ましくは0.7〜2.0重量%とすることによって、鉄を含有していないアルミニウムと比較して、アルミニウムの展延性がよく、積層体として折り曲げによるピンホールの発生が少なくなり、かつ前記エンボスタイプの外装体を成形する時に側壁の形成も容易にできることを見出した。前記鉄含有量が、0.3重量%未満の場合は、ピンホールの発生の防止、エンボス成形性の改善等の効果が認められず、前記アルミニウムの鉄含有量が9.0重量%を超える場合は、アルミニウムとしての柔軟性が阻害され、積層体として製袋性が悪くなる。
【0033】
また、冷間圧延で製造されるアルミニウムは焼きなまし(いわゆる焼鈍処理)条件でその柔軟性・腰の強さ・硬さが変化するが、本発明において用いるアルミニウムは焼きなましをしていない硬質処理品より、多少または完全に焼きなまし処理をした軟質傾向にあるアルミニウムがよい。
前記、アルミニウムの柔軟性・腰の強さ・硬さの度合い、すなわち焼きなましの条件は、加工適性(パウチ化、エンボス成形)に合わせ適宜選定すればよい。
例えば、エンボス成形時のしわやピンホールを防止するためには、成形の程度に応じた焼きなましされた軟質アルミニウムを用いることが望ましい。
【0034】
本発明者らは、電池用包装材料のバリア層12であるアルミニウムの表、裏面に化成処理を施すことによって、前記包装材料として満足できる積層体とすることができた。前記化成処理とは、具体的にはリン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物等の耐酸性皮膜を形成することによってエンボス成形時のアルミニウムと基材層との間のデラミネーション防止と、電池の電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、エンボス成形時、ヒートシール時の基材層11とアルミニウム12とのデラミネーション防止、電解質と水分との反応により生成するフッ化水素によるアルミニウム内面側でのデラミネーション防止効果が得られることを確認している。
各種の物質を用いて、アルミニウム面に化成処理を施し、その効果について研究した結果、前記耐酸性皮膜形成物質のなかでも、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸の3成分から構成されたものを用いるリン酸クロメート処理が良好であった。
または、少なくともフェノール樹脂を含む樹脂成分に、モリブデン、チタン、ジルコン等の金属、または金属塩を含む化成処理剤が良好であった。
【0035】
電池の外装体がパウチタイプの場合には、アルミの化成処理はパウチで用いる場合、シーラント層側のみの片側または基材層側とシーラント層側の両面のどちらでも良い。電池の外装体がエンボスタイプの場合には、アルミニウムの両面に化成処理することによって、エンボス成形の際のアルミニウムと基材層との間のデラミネーションを防止することができる。
【0036】
本発明のリード線用フィルム20を適用する場合の外装体のシーラント層は、
前述のように、
(1)α・オレフィン重合体、
(2)エチレンとα・オレフィンとの共重合体、
(3)プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、
(4)不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、
(5)エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、
(6)エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、
(7)金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体
の中から選択されるが、例えば、α・オレフィン重合体や共重合体としては、低密度ポリエチレン、中高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、不飽和カルボン酸をグラフト重合させたポリエチレン、また、ホモタイプポリプロピレン、ブロックタイプポリプロピレン、ランダムタイプポリプロピレン等、エチレンとプロピレンとの共重合体物、エチレンとプロピレンとブテンの共重合体物、不飽和カルボン酸をグラフトさせたポリプロピレンの単体、またはブレンド物を用いた単層または多層からなる層等を用いることができる。
また、ポリオレフィン系樹脂からなるシーラント層14および接着樹脂層にはブテン成分、エチレンとブテンとプロピレンの3成分共重合体からなるターポリマー成分、密度が900kg/m3の低結晶のエチレンとブテンの共重合体、非晶性のエチレンとプロピレンの共重合体、プロピレンα・オレフィン共重合体成分、イソプレンゴム成分等を添加することもできる。
【0037】
本発明のリード線用フィルムに適用する外装体を形成する電池用包装材料を積層する場合の、バリア層に設けた化成処理層とシーラント層との接着は、例えば、リチウムイオン電池等における電解液と水分との反応により発生するフッ化水素酸などによるデラミネーション防止のために、以下に述べるラミネートおよび接着安定化処理を行うことが望ましい。
【0038】
本発明者らは、安定した接着強度を示す積層方法について鋭意研究の結果、少なくともシーラント層をラミネートする面に化成処理したバリア層12と基材層11とをドライラミネートした後、図2(a)に示すように、バリア層12に設けられた化成処理層15とシーラント層14との接着法としてドライラミネート法によりラミネート13dする、あるいは、図2(c)に示すように、前記化成処理層に酸変性ポリオレフィンのエマルジョンを化成処理層に塗布乾燥焼付けた13h後、シーラント層となるフィルム14を熱ラミネート法により積層することによっても所定の接着強度が得られることを確認した。
【0039】
また、次のようなラミネート方法によっても安定した接着強度が得られることを確認した。
例えば、基材層11とバリア層12の片面とをドライラミネートし、図2(b)に示すように、バリア層12の他の面(化成処理層)に、酸変性ポリオレフィン13eを押出してシーラント層14をサンドイッチラミネートする場合、または、酸変性ポリオレフィン樹脂13とシーラント層とを共押出しして積層体とした後、得られた積層体を前記酸変性ポリオレフィン樹脂がその軟化点以上になる条件に加熱することによって、所定の接着強度を有する積層体とすることができた。
前記加熱の具体的な方法としては、熱ロール接触式、熱風式、近または遠赤外線等の方法があるが、本発明においてはいずれの加熱方法でもよく、前述のように、接着樹脂がその軟化点温度以上に加熱できればよい。
【0040】
また、別の方法としては、前記、サンドイッチラミネートまたは共押出しラミネートの際に、アルミニウム12のシーラント層側の表面温度が酸変性ポリオレフィン樹脂の軟化点に到達する条件に加熱することによっても接着強度の安定した積層体とすることができた。
また、ポリエチレン樹脂を接着樹脂として用いることも可能であるが、この場合には、押出したポリエチレンの溶融樹脂膜のアルミニウム側のラミネート面をオゾン処理しながらラミネートすることが望ましい。
【0041】
本発明の電池用包装材料において、外装体を形成する積層体における前記の各層には、適宜、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性を向上、安定化する目的のために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理をしてもよい。
【0042】
【実施例】
本発明の電池リード線用フィルムについて、実施例によりさらに具体的に説明する。実施例、参考例および比較例における共通の条件は以下の通りとした。
(1)外装体に用いた積層体の層構成は、延伸ナイロン25μm/接着剤層/化成処理層/ALM40μm/化成処理層/接着樹脂層15/シーラント30μm(シーラントはポリプロピレンまたは線状低密度ポリエチレンとしそれぞれ個別に記載する)。実施例、比較例に用いた積層体の製造方法は、特に記載のない場合、次の様に積層した。外装体はいずれもエンボスタイプとした。40μmのアルミニウムの両面にクロメート処理による化成処理層を設け、その一方の面に延伸ナイロンフィルム25μmをドライラミネートし、他の面に、接着樹脂15μmを押出してシーラントフィルム30μmをサンドイッチラミネートして一次積層体とし、この一次積層体を前記接着樹脂の軟化点以上に加熱して二次積層体を得た。(接着樹脂はシーラントがポリプロピレンの場合は不飽和カルボン酸グラフトプロピレンとし、シーラントが線状低密度ポリエチレンの場合には、不飽和カルボン酸グラフトポリエチレンとした)。なお、前記クロメート処理は、実施例、比較例ともに、処理液として、フェノール樹脂、フッ化クロム(3)化合物、リン酸からなる水溶液を、ロールコート法により、塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件において焼き付けた。クロムの塗布量は、2mg/m2(乾燥重量)とした。次に、得られた二次積層体をエンボス成形してトレイを成形した。成形しない二次積層体を蓋体として外装体とした。
(2)外装体のタイプ
いずれも片面エンボスタイプとし、前記トレイのエンボス成形型は、その凹部(キャビティ)の形状を30mm×50mm,深さ3.5mmとした。
(3)リード線
リード線の材質は、アルミニウムおよびニッケルとし、その巾は4mm、厚さは100μmとした。
(4)略称
以下の説明に用いる略称は次の通りである。
・主要樹脂
PE:線状低密度ポリエチレン
PEa:不飽和カルボン酸でグラフトされたポリエチレン
PP:エチレンとプロピレンとの共重合体
PPa:不飽和カルボン酸でグラフト変性されたエチレンとプロピレンとの共重合体
TPX:4−メチル−1−ペンテン単独重合体
TPX共重合体:4−メチル−1−ペンテン単独重合体とエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの炭素数が2〜20のα・オレフィン(4−メチル−1−ペンテンは除く)とを共重合させた樹脂
TPXブレンド:TPXに他の樹脂{()内}をブレンド
TPXa:不飽和カルボン酸グラフト変性された4−メチル−1−ペンテン重合体
TPX共重合体a:4−メチル−1−ペンテン単独重合体とエチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセンなどの炭素数が2〜20のα・オレフィン(4−メチル−1−ペンテンは除く)とを共重合させたものを不飽和カルボン酸でグラフト変性した樹脂
TPXaブレンド:TPXaに他の樹脂{()内}をブレンド
・TPXと共重合するα・オレフィン
TPX−H:1−ヘキセン
・ブレンド樹脂
PB:ポリブテン
EP:エチレンとプロピレンとの共重合体
EB:エチレンとブテンとの共重合体
(5)多層の標記
多層からなるリード線用フィルムの層の標記は、耐熱樹脂層を中心層として、シーラント側の層をS層、リード線側の層をM層とした。
(6)リード線用フィルムの製造方法
多層リード線用フィルムを多層とする製造方法すべて共押出し製膜法を用いた。
[実施例1]
外装体のシーラントを線状低密度ポリエチレンとし、リード線用フィルムをリード線の所定の位置に仮着させた電池本体を、外装体のトレイ内に載置し、蓋体を被覆して、トレイの周縁をヒートシールにより密封し検体実施例1とした。リード線用フィルムは、S層をPEa15μm、耐熱樹脂層をTPXブレンド(EB)5μmとTPXa60μmとTPXブレンド(EB)5μmとの3層とし、M層をPEa15μmとしてリード線用フィルムとしては5層構成とした。
[参考例1]
外装体のシーラントを線状低密度ポリエチレンとし、リード線用フィルムをリード線の所定の位置に仮着させた電池本体を、外装体のトレイ内に載置し、蓋体を被覆して、トレイの周縁をヒートシールにより密封し検体参考例1とした。リード線用フィルムは、S層をPE20μm、耐熱樹脂層をTPX共重合体a(TPX−H)50μm、M層をPEa30μmとする3層フィルムとした。
[参考例2]
外装体のシーラントをポリプロピレンとし、リード線用フィルムをリード線の所定の位置に仮着させた電池本体を、外装体のトレイ内に載置し、蓋体を被覆して、トレイの周縁をヒートシールにより密封し検体参考例2とした。リード線用フィルムは、S層をPP60μm、耐熱樹脂層をTPXaブレンド(EP)10μm、M層をPPa30μmとする3層フィルムとした。
[参考例3]
外装体のシーラントをポリプロピレンとし、リード線用フィルムをリード線の所定の位置に仮着させた電池本体を、外装体のトレイ内に載置し、蓋体を被覆して、トレイの周縁をヒートシールにより密封し検体参考例3とした。リード線用フィルムは、S層をPP40μm、耐熱樹脂層をTPXaブレンド(PB)5μmとTPX10μmとTPXaブレンド(PB)5μmの3層とし、M層をPPa40μmとするリード線用フィルムとしては5層の構成とした。
【0043】
[比較例1]
外装体のシーラントをポリプロピレンとし、リード線用フィルムをリード線の所定の位置に仮着させた電池本体を、外装体のトレイ内に載置し、蓋体を被覆して、トレイの周縁をヒートシールにより密封し検体比較例1とした。リード線用フィルムは、PPa100μmの単層フィルムとした。
[比較例2]
外装体のシーラントをポリプロピレンとし、リード線用フィルムをリード線の所定の位置に仮着させた電池本体を、外装体のトレイ内に載置し、蓋体を被覆して、トレイの周縁をヒートシールにより密封し検体比較例2とした。リード線用フィルムは、S層をPP60μm、耐熱樹脂層をTPXa10μm、M層をPP40μmの3層とした。
【0044】
<評価方法>
(1)ヒートシールによる短絡の確認
190℃、2.0MPa、3.0秒の条件で密封シール後、リード線とバリア層との間における通電(短絡)の有無により判定した。
(2)モレ
外装体に電解液を充填後、60℃、90%RHの条件に7日間保存した時のリード線のヒートシール部分からの漏れを確認した。
電解液:1M LiPF6となるようにしたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(1:1:1)の混合液、3g。
(3)ヒートシール品の耐熱短絡
190℃、1.0MPa、3.0秒の条件で密封シールしたものを、160℃2時間保存後、リード線とバリア層との間における通電(短絡)の有無により判定した。
(4)デラミネーションの確認
外装体に電解液を充填後、80℃、24時間保存し、内容物側の積層体のデラミネーション(以下デラミ)を確認した。
電解液:1M LiPF6となるようにしたエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート(1:1:1)の混合液、3g。
【0045】
<結果>
実施例1、および、参考例1〜3は、いずれも、ヒートシール時の短絡、漏れ、ヒートシール後の耐熱短絡はなかった。しかし、比較例1においては、漏れおよびデラミの発生はなかったが、ニッケルリード線においてヒートシール時の短絡、ヒートシール後の耐熱短絡の発生があった。比較例2においては、ヒートシール時の短絡、ヒートシール後の耐熱短絡の発生およびデラミはなかったが、リード線のヒートシール部分からの漏れが発生した。
【0046】
【発明の効果】
本発明の電池用包装材料から形成された外装体のパウチまたはエンボス成形部に電池本体を収納しその周縁をヒートシールして密封する際、電池のリード線と外装体との間介在させるリード線用フィルムを、少なくとも不飽和カルボン酸でグラフト変性された4−メチル−1−ペンテン系の重合体からなる耐熱樹脂層を含む多層構成とすることによって、電池の密封シールの際に、外装体のバリア層とリード線とが接触(ショート)することがなくなった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリード線用フィルムを説明する図で、(a)リード線用フィルムの層構成を示す断面図、(b)電池リード線、外装体、リード線用フィルムの材質及び位置関係(片側)を説明する図、(c)ヒートシール後のリード線部の模式断面図である。
【図2】電池の外装体を形成する積層体の層構成例を示す断面図である。
【図3】電池用包装材料とリード線との接着におけるリード線用フィルムの装着方法を説明する斜視図である。
【図4】本発明におけるリード線用フィルムのリード線と外装体との間への介在方法を説明する図である。
【図5】電池のパウチタイプの外装体を説明する斜視図である。
【図6】電池のエンボスタイプの外装体を説明する斜視図である。
【図7】エンボスタイプにおける成形を説明する、(a)斜視図、(b)エンボス成形された外装体本体、(c)X2−X2部断面図、(d)Y1部拡大図である。
【図8】従来のリード線用フィルムを用いてバリア層とリード線とがショートした状態を示す断面図である。
【符号の説明】
S リード線とバリア層とのショート部
H ヒートシール熱板
wk 仮着
mk 溶着
1 電池
2 電池本体
3 セル(蓄電部)
4 リード線(電極)
5 外装体
7 凹部
8 側壁部
9 シール部
10 積層体(電池用包装材料)
11 基材層
12 アルミニウム(バリア層)
13 バリア層とシーラント層との接着層(接着樹脂層)
13d ドライラミネート層
13e 酸変性ポリオレフィンの押出層
13h 酸変性ポリオレフィンの塗布焼付け層
14 シーラント層
15 保護層
16 基材層とバリア層間の接着層
20 リード線用フィルムの積層体
21 シーラント側樹脂層
22 耐熱樹脂層
23 リード線側樹脂層
30 プレス成形部
31 オス型
32 メス型
33 キャビティ
Claims (4)
- 内面にヒートシール性を有する積層体からなる外装体に電池本体を収納した外装体の周縁シール部に、細長の板または棒状の金属からなるリード線本体を挟持して、前記外装体の周縁部を密封シールする際に、前記積層体とリード線本体との間に介在させるフィルムが耐熱樹脂層を含む多層構成フィルムであって、前記耐熱樹脂層が不飽和カルボン酸でグラフト変性された4−メチル−1−ペンテン単独重合体からなると共に、少なくとも前記耐熱樹脂層の一方の面が前記積層体の内面とヒートシール性を有する層であり、他の面が金属に対してヒートシール性を有する層であることを特徴とするリード線用フィルム。
- 前記積層体の内面とヒートシール性を有する層が、(1)α・オレフィン重合体、(2)エチレンとα・オレフィンとの共重合体、(3)プロピレンとα・オレフィンとの共重合体、(4)不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、(5)エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、(6)エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、(7)金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体の中から選択される樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載したリード線用フィルム。
- 前記金属に対してヒートシール性を有する層が、(1)不飽和カルボン酸グラフト変性されたα・オレフィン重合体およびα・オレフィンの共重合体、(2)エチレンとアクリル酸またはアクリル酸誘導体との共重合体、(3)エチレンとメタクリル酸またはメタクリル酸誘導体との共重合体、(4)金属イオン架橋されたα・オレフィン重合体またはエチレンとα・オレフィンとの共重合体の中から選択される樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載したリード線用フィルム。
- 内面にヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂のシーラント層を備えた積層体からなる外装体に、セルとリード線からなる電池本体を前記リード線を外部に突出した状態で密封してなる電池であって、前記外装体と前記リード線との間に請求項1〜請求項3のいずれかに記載のリード線用フィルムを介在させてなることを特徴とする電池。
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