以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
基本構成1
図1は本発明の第1の基本構成のマイクロバルブ機構1を示した図であり、図1(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図を示し、図1(b)は図1(a)のB−B’線における断面図を示している。
本基本構成のマイクロバルブ機構1は、圧力制御ポート2と流体素子チップ3と支持基板4とから構成されている。流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2のポリジメチルシロキサン(PDMS)の変形可能な弾性部材で製作し、流体素子チップ3の高さは本基本構成では1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは本基本構成では1mmとした。
圧力制御ポート2は流体素子チップ3上のバルブ領域Aに立設されており、圧力制御ポート2を介し押圧体7の圧力を流体素子チップ3に給排することによって、流体の通過と遮断が行われる領域であるバルブ領域Aにおける流体素子チップ3が変形し、円状空隙部6が開閉して、流体の通過と遮断を行う。
マイクロバルブ機構1は特定の流れの方向はもたないが、流体素子チップ3中の2つのアクセスポートは、便宜上、入口ポート(In)及び出口ポート(Out)と呼ぶ。また、マイクロバルブ機構1において、バルブを開閉して流体の通過と遮断が行われる領域はバルブ領域Aと呼ぶ。流体素子チップ3はマイクロ加工で製作された幅200μm、深さ40μmのマイクロ流路5と平面形状が半径0.5mmの円で深さ40μmの円状空隙部6とが支持基板4とシールして形成されている。マイクロ流路5は流体を通す微小流路であり、円状空隙部6はバルブ領域Aにおいて流体の通過と遮断を行う空隙である。流体素子チップ3は支持基板4に固着する。マイクロ流路5は入口ポートIn及び出口ポートOutからきてバルブ領域Aにおいて円状空隙部6と合する。
図2は図1のバルブ領域AのC−C’線における断面図である。図2(a)はバルブ開状態における断面図を示し、図2(b)はバルブ閉状態における断面図を示している。マイクロバルブ機構1は通常は円状空隙部6が開放して開いている。圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7は外部に設けられた圧力制御部8に接続されている。圧力制御部8は押圧体7を駆動して圧力を制御するコントローラである。押圧体7を駆動することによって圧力が圧力制御ポート2を介してバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給され、バルブ領域Aにおける円状空隙部6はマイクロバルブ機構1を閉じる方向に変形し、押圧体7による荷重が100gf以上になるとマイクロバルブ機構1を完全に閉じることができる。押圧体7は電磁駆動式の直進型アクチュエータを使用する。
なお、ヤング率1000N/cm2の流体素子チップ3の代わりにヤング率100N/
cm2や2000N/cm2のシリコン樹脂製の流体素子チップ3を使用しても、本基本構成と同様に押圧体7による荷重が100gf以上になるとマイクロバルブ機構1を完全に閉じることができる。また、これらの流体素子チップ3において、流体素子チップ3の高さを0.5mmとし、かつ、押圧体7の押圧曲面の曲率半径を0.5mmまたは2mmとしても、本基本構成と同様に押圧体7による荷重が100gf以上になるとマイクロバルブ機構1を完全に閉じることができる。さらに、押圧体7による荷重を100gf未満で制御することによって、円状空隙部6を通過する流量を調節することも可能となる。
本基本構成のマイクロバルブ機構1の開閉評価を行なった結果について説明する。図3は開閉評価に使用した実験装置である。図3において、(a)真空ポンプ、(b)真空レギュレータ、(c)廃液タンク、(d)マイクロバルブ機構1、(e)純水を充填したチューブを示す。図3におけるマイクロバルブ機構1は、2つの入口ポート(In1,In2)と1つの出口ポート(Out)を形成して、マイクロ流路5が入口ポートIn1,In2及び出口ポートOutからきて流体素子チップ3の中央で合する。それぞれの入口ポートIn1,In2からこの中央までのマイクロ流路5の途上に円形空隙部6を形成して、バルブ領域A1,A2に2つのバルブを設けた。流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2のPDMSの変形可能な弾性部材で製作し、流体素子チップ3の高さは1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは1mmとした。
マイクロ流路5は幅200μm、深さ40μm、円状空隙部6は平面形状が直径1mmの円で深さ40μmとして形成した。水を吸い込むために20〜30kPaの負圧を利用した。負圧は真空ポンプによって供給され、水の吸い込み制御のために真空レギュレータを使用して調節した。出口ポートOutから汲み上げられた水は真空レギュレータへの吸い込みを避けるために廃液タンクに溜められる。入口ポートIn1,In2は純水を満たしたチューブに接続した。
チューブの他端は大気圧に開放される。このとき、圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7を駆動して、100gfの荷重をバルブ領域A1における流体素子チップ3に供給したところ、バルブ領域A2における流体は通過できるが、バルブ領域A1における流体の流れを完全に遮断することができた。同様に、押圧体7を駆動して、100gfの荷重をバルブ領域A2における流体素子チップ3に供給したところ、バルブ領域A1における流体は通過できるが、バルブ領域A2における流体の流れを完全に遮断することができた。このようにして、複数の入口ポートより供給される流体の流れを選択的に遮断することができた。
次に、本基本構成1のマイクロバルブ機構1の製作方法について説明する。マイクロバルブ機構1の製作過程を図4に示す。マイクロ流路5と円状空隙部6とを製作するための反転パターンを形成するために、超厚膜フォトレジスト9(SU−8)をシリコン基板10の上にスピンコートする。その後、反転パターンを露光し、現像する(図4(a))。溶液を保持する型枠を使用して、PDMSの未重合溶液をシリコン基板10上に注ぐ(図4(b))。PDMSチップをシリコン基板10から剥離して、流体素子チップ3が得られる(図4(c))。真鍮パイプを使用して流体素子チップ3にシリコン接着剤で固定して入口ポートIn及び出口ポートOutを形成する。流体素子チップ3のマイクロ流路5及び円状空隙部6が形成されている側の面とガラス製の支持基板4との両固着面を酸素プラズマで表面処理して、流体素子チップ3とガラス製の支持基板4とを固着して、マイクロバルブ機構1を得る(図4(d))。
以上、本基本構成形態によれば、バルブの開閉を確実に行なうことができ、かつ、駆動素子チップを必要とせず流体素子チップのみのチップ構造とすることによってマイクロバルブ機構を簡素化することができる。よって、本基本構成ではチップを低コスト化することが可能となる。さらに、ヤング率100N/cm2から2000N/cm2までの範囲の流体素子チップにおいて、流体素子チップの高さの0.5倍以上、かつ、押圧体の押圧曲面における曲率半径の0.25倍から1倍までの範囲を満たす半径を有する平面形状が円である円状空隙部を設けることによって、押圧体による荷重を100gf未満で制御することで円状空隙部を通過する流量を調節することができ、押圧体による荷重を100gf以上にするとバルブを完全に閉じることができる。
基本構成2
図5は本発明の第2の基本構成のマイクロバルブ機構1を示した図であり、図5(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図を示し、図5(b)は図5(a)のB−B’線における断面図を示している。
本基本構成のマイクロバルブ機構1は、圧力制御ポート2と流体素子チップ3と支持基板4とから構成されている。流体素子チップ3はPDMSなどのシリコン樹脂の変形可能な弾性部材で製作する。支持基板4はガラスまたは、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PPP)などの熱可塑性樹脂で製作する。
圧力制御ポート2は流体素子チップ3上のバルブ領域Aに立設されており、圧力制御ポート2を介し押圧体7の圧力を流体素子チップ3に給排することによって、流体の通過と遮断が行われる領域であるバルブ領域Aにおける流体素子チップ3が変形し、楕円状空隙部11が開閉して、流体の通過と遮断を行う。
マイクロバルブ機構1は特定の流れの方向はもたないが、流体素子チップ3中の2つのアクセスポートは、便宜上、入口ポート(In)及び出口ポート(Out)と呼ぶ。また、マイクロバルブ機構1において、バルブを開閉して流体の通過と遮断が行われる領域はバルブ領域Aと呼ぶ。流体素子チップ3はマイクロ加工で製作されたマイクロ流路5と平面形状がマイクロ流路5に沿った方向に楕円の長手方向を有する楕円である楕円状空隙部11とが支持基板4とシールして形成されている。マイクロ流路5は流体を通す微小流路であり、楕円状空隙部10はバルブ領域Aにおいて流体の通過と遮断を行う空隙である。流体素子チップ3は支持基板4に固着する。マイクロ流路5は入口ポートIn及び出口ポートOutからきてバルブ領域Aにおいて楕円状空隙部11と合する。
マイクロバルブ機構1は通常は楕円状空隙部11が開放して開いている。圧力制御ポート2内に設置された押圧体7は外部に設けられた圧力制御部8に接続されている。圧力制御部8は押圧体7を駆動して圧力を制御するコントローラである。押圧体7を駆動することによって圧力が圧力制御ポート2を介してバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給され、バルブ領域Aにおける楕円状空隙部11はマイクロバルブ機構1を閉じる方向に変形する。押圧体7は電磁駆動式などの直進型アクチュエータまたは、空気などによるガス圧、シリコンオイルなどによる静水圧を使用する。
本基本構成のマイクロバルブ機構1の開閉評価を行なった結果について説明する。流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2のPDMSの変形可能な弾性部材で製作し、流体素子チップ3の高さは1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは1mmとした。マイクロ流路5は幅200μm、深さ40μm、楕円状空隙部11は平面形状が長手方向の直径1mm、短手方向の直径0.5mmの楕円で深さ40μmとして形成した。入口ポートInより水を吸い込むために20〜30kPaの負圧を利用した。負圧は真空ポンプによって供給され、水の吸い込み制御のために真空レギュレータを使用して調節した。出口ポートOutから汲み上げられた水は真空レギュレータへの吸い込みを避けるために廃液タンクに溜められる。
入口ポートInは純水を満たしたチューブに接続した。チューブの他端は大気圧に開放される。このとき、圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7を駆動して、圧力をバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給したところ、流体の流れを完全に遮断することができた。また、基本構成1では円状空隙部6の平面形状が円であるため、1つのチップ上に複数のバルブを配置する場合に高密度化が困難であったが、本基本構成では楕円状空隙部11の平面形状が楕円であるため、楕円の短手方向の幅を短くすることによって、複数のバルブを密に配置することができた。
以上、本基本構成形態によれば、バルブの開閉を確実に行なうことができ、かつ、駆動素子チップを必要とせず流体素子チップのみのチップ構造とすることによってマイクロバルブ機構を簡素化することができる。よって、本基本構成ではチップを低コスト化することが可能となる。さらに、平面形状が楕円である楕円状空隙部を構成することによって、バルブ領域おける楕円の短手方向の幅を狭くすることができるため、1つのチップ上に複数のバルブを配置する場合、バルブ配置の高密度化が可能となる。
基本構成3
図6は本発明の第3の基本構成のマイクロバルブ機構1を示した図であり、図6(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図を示し、図6(b)は図6(a)のB−B’線における断面図を示している。
本基本構成のマイクロバルブ機構1は、圧力制御ポート2と流体素子チップ3と支持基板4とから構成される。流体素子チップ3はPDMSなどのシリコン樹脂の変形可能な弾性部材で製作する。支持基板4はガラスまたは、PETやPPPなどの熱可塑性樹脂で製作する。圧力制御ポート2は流体素子チップ3上のバルブ領域Aに立設されており、圧力制御ポート2を介し押圧体7の圧力を流体素子チップ3に給排することによって、流体素子チップ3における凹形状の凹部12が変形し、円状空隙部6が開閉して、流体の通過と遮断を行う。
マイクロバルブ機構1は特定の流れの方向はもたないが、流体素子チップ3中の2つのアクセスポートは、便宜上、入口ポート(In)及び出口ポート(Out)と呼ぶ。また、マイクロバルブ機構1において、バルブを開閉して流体の通過と遮断が行われる領域はバルブ領域Aと呼ぶ。流体素子チップ3の片面にはマイクロ加工で製作されたマイクロ流路5と平面形状が円である円状空隙部6とが支持基板4とシールして形成され、もう一方の面のバルブ領域Aには凹形状の凹部12が形成されている。マイクロ流路5は流体を通す微小流路であり、円状空隙部6はバルブ領域Aにおいて流体の通過と遮断を行う空隙である。凹部12の直上には圧力制御ポート2が隣接している。流体素子チップ3は支持基板4に固着する。マイクロ流路5は入口ポートIn及び出口ポートOutからきてバルブ領域Aにおいて円状空隙部6と合する。
図7は図6のバルブ領域AのC−C’線における断面図である。図7(a)はバルブ開状態における断面図を示し、図7(b)はバルブ閉状態における断面図を示している。マイクロバルブ機構1は通常は円状空隙部6が開放して開いている。圧力制御ポート2内に設置された押圧体7は外部に設けられた圧力制御部8に接続されている。圧力制御部8は押圧体7を駆動して圧力を制御するコントローラである。押圧体7を駆動することによって圧力が圧力制御ポート2を介してバルブ領域Aにおける流体素子チップ3の凹部12に供給され、バルブ領域Aにおける円状空隙部6はマイクロバルブ機構1を閉じる方向に変形する。押圧体7は電磁駆動式などの直進型アクチュエータまたは、空気などによるガス圧、シリコンオイルなどによる静水圧を使用する。
なお、円状空隙部6は平面形状が楕円である楕円状空隙部11や、平面形状が多角形、矩形、角が丸められた矩形などの空隙としてもよい。
本基本構成のマイクロバルブ機構1の開閉評価を行なった結果について説明する。流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2のPDMSの変形可能な弾性部材で製作し、流体素子チップ3の高さは1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは1mmとした。バルブ領域Aにおける凹部12は平面形状が直径4mmの円で深さ0.5mm、マイクロ流路5は幅200μm、深さ40μm、円状空隙部6は平面形状が直径1mmの円で深さ40μmとして形成した。入口ポートInより水を吸い込むために20〜30kPaの負圧を利用した。負圧は真空ポンプによって供給され、水の吸い込み制御のために真空レギュレータを使用して調節した。出口ポートOutから汲み上げられた水は真空レギュレータへの吸い込みを避けるために廃液タンクに溜められる。
入口ポートInは純水を満たしたチューブに接続した。チューブの他端は大気圧に開放される。このとき、圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7を駆動して、圧力をバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給したところ、流体の流れを完全に遮断することができた。また、基本構成1,2では、バルブを完全に閉じるために押圧荷重が100gf以上必要であったが、本基本構成では、凹部12を設けることによって、この部分の流体素子チップ3の厚みを薄くできるため、100gf未満の荷重でバルブを完全に閉じることができた。
以上、本基本構成形態によれば、バルブの開閉を確実に行なうことができ、かつ、駆動素子チップを必要とせず流体素子チップのみのチップ構造とすることによってマイクロバルブ機構を簡素化することができる。よって、本基本構成ではチップを低コスト化することが可能となる。さらに、凹形状の凹部を構成することによって、円状空隙部の直上の流体素子チップの厚みが薄くなるため、低荷重でバルブを閉じることができる。すなわち、押圧体の低出力駆動が可能となる。
基本構成4
図8は本発明の第4の基本構成のマイクロバルブ機構1を示す図であり、図8(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図を示し、図8(b)は図8(a)のB−B’線における断面図を示している。
本基本構成のマイクロバルブ機構1は、圧力制御ポート2と流体素子チップ3と支持基板4とから構成されている。流体素子チップ3はバルブ領域Aにおける弾性部材の変形部13と変形部13以外の剛性部材の非変形部14とにより構成される。
圧力制御ポート2は流体素子チップ3上のバルブ領域Aに立設されており、圧力制御ポート2を介し押圧体7の圧力を流体素子チップ3に給排することによって、流体素子チップ3における弾性部材の変形部13が変形し、円状空隙部6が開閉して、流体の通過と遮断を行う。
マイクロバルブ機構1は特定の流れの方向はもたないが、流体素子チップ3中の2つのアクセスポートは、便宜上、入口ポート(In)及び出口ポート(Out)と呼ぶ。また、マイクロバルブ機構1において、バルブを開閉して流体の通過と遮断が行われる領域はバルブ領域Aと呼ぶ。変形部13はPDMSなどのシリコン樹脂の変形可能な弾性部材で製作し、非変形部14はPETやPPPなどの熱可塑性樹脂の剛性部材で製作する。支持基板4はガラスまたは、PETやPPPなどの熱可塑性樹脂で製作する。流体素子チップ3はマイクロ加工で製作されたマイクロ流路5と平面形状が円である円状空隙部6とが支持基板4とシールして形成され、バルブ領域Aにおいて弾性部材の変形部13が形成されている。マイクロ流路5は流体を通す微小流路であり、円状空隙部6はバルブ領域Aにおいて流体の通過と遮断を行う空隙である。流体素子チップ3は支持基板4に固着される。マイクロ流路5は入口ポートIn及び出口ポートOutからきてバルブ領域Aにおいて円状空隙部6と合する。
マイクロバルブ機構1は通常は円状空隙部6が開放して開いている。圧力制御ポート2内に設置された押圧体7は外部に設けられた圧力制御部8に接続されている。圧力制御部8は押圧体7を駆動して圧力を制御するコントローラである。押圧体7を駆動することによって圧力が圧力制御ポート2を介してバルブ領域Aにおける流体素子チップ3の変形部13に供給され、バルブ領域Aにおける円状空隙部6はマイクロバルブ機構1を閉じる方向に変形する。押圧体7は電磁駆動式などの直進型アクチュエータまたは、空気などによるガス圧、シリコンオイルなどによる静水圧を使用する。
なお、円状空隙部6は平面形状が楕円である楕円状空隙部11や、平面形状が多角形、矩形、角が丸められた矩形などの空隙としてもよい。流体素子チップ3には凹部12を形成してもよい。
本基本構成のマイクロバルブ機構1の開閉評価を行なった結果について説明する。バルブ領域Aは平面形状が2mm×2mmの矩形の範囲として、流体素子チップ3のバルブ領域Aにおける変形部13はヤング率1000N/cm2のPDMSの変形可能な弾性部材で製作し、非変形部14はPETの剛性部材で製作した。流体素子チップ3の高さは1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは1mmとした。マイクロ流路5は幅200μm、深さ40μm、円状空隙部6は平面形状が直径1mmの円で深さ40μmとして形成した。入口ポートInより水を吸い込むために20〜30kPaの負圧を利用した。負圧は真空ポンプによって供給され、水の吸い込み制御のために真空レギュレータを使用して調節した。出口ポートOutから汲み上げられた水は真空レギュレータへの吸い込みを避けるために廃液タンクに溜められる。
入口ポートInは純水を満たしたチューブに接続した。チューブの他端は大気圧に開放される。このとき、圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7を駆動して、圧力をバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給したところ、流体の流れを完全に遮断することができた。また、基本構成1〜3では、流体素子チップ3の全てをPDMSなどのシリコン樹脂で製作したため、PETやPPPなどの熱可塑性樹脂に比べて材料コストが割高となったが、本基本構成では、流体素子チップ3の非変形部14を熱可塑性樹脂で製作することによって、製作にかかるコストを抑えることができた。
以上、本基本構成形態によれば、バルブの開閉を確実に行なうことができ、かつ、駆動素子チップを必要とせず流体素子チップのみのチップ構造とすることによってマイクロバルブ機構を簡素化することができる。よって、本基本構成ではチップを低コスト化することが可能となる。さらに、非変形部をPETやPPPなどの熱可塑性樹脂の剛性部材で構成することによって、チップコストをより低減することができる。
基本構成5
図9は本発明の第5の基本構成のマイクロバルブ機構1を示した図であり、図9(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図を示している。また、図9(b)は図9(a)のB−B’線におけるバルブ開状態の断面図を示し、図9(c)は図9(a)のB−B’線におけるバルブ閉状態の断面図を示している。
本基本構成のマイクロバルブ機構1は、圧力制御ポート2と流体素子チップ3と支持基板4により構成されている。流体素子チップ3はPDMSなどのシリコン樹脂の変形可能な弾性部材で製作される。支持基板4はガラスまたは、PETやPPPなどの熱可塑性樹脂で製作する。圧力制御ポート2は流体素子チップ3上のバルブ領域Aに立設されており、圧力制御ポート2を介し押圧体7の圧力を流体素子チップ3に給排することによって、流体素子チップ3における凸形状の凸部15が変形し、マイクロ流路5が開閉して、流体の通過と遮断を行う。
マイクロバルブ機構1は特定の流れの方向はもたないが、流体素子チップ3中の2つのアクセスポートは、便宜上、入口ポート(In)及び出口ポート(Out)と呼ぶ。また、マイクロバルブ機構1において、バルブを開閉して流体の通過と遮断が行われる領域はバルブ領域Aと呼ぶ。流体素子チップ3はマイクロ加工で製作されたマイクロ流路5が支持基板4とシールして形成されている。マイクロ流路5はバルブ領域Aにおいて凸形状の凸部15が形成されている。マイクロ流路5は流体を通す微小流路とバルブ領域Aにおいて流体の通過と遮断を行う微小流路とで構成されている。流体素子チップ3は支持基板4に固着する。マイクロ流路5は入口ポートInからきてバルブ領域Aを通過して出口ポートOutに合する。
マイクロバルブ機構1は通常はマイクロ流路5が開放して開いている。圧力制御ポート2内に設置された押圧体7は外部に設けられた圧力制御部8に接続されている。圧力制御部8は押圧体7を駆動して圧力を制御するコントローラである。押圧体7を駆動することによって圧力が圧力制御ポート2を介してバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給され、バルブ領域Aにおけるマイクロ流路5はマイクロバルブ機構1を閉じる方向に変形する。押圧体7は電磁駆動式などの直進型アクチュエータまたは、空気などによるガス圧、シリコンオイルなどによる静水圧を使用する。
なお、支持基板4を加工して、支持基板4上のバルブ領域Aにおいて凸形状の台座16を立設してもよい。流体素子チップ3には凹部12を形成してもよい。流体素子チップ3は弾性部材の変形部13と剛性部材の非変形部14とで構成してもよい。
本基本構成のマイクロバルブ機構1の開閉評価を行なった結果について説明する。流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2のPDMSの変形可能な弾性部材で製作し、流体素子チップ3の高さは1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは1mmとした。マイクロ流路5は幅120μm、深さ50μm、凸部15は平面形状が1mm×120μmの矩形で高さ20μm、台座16は平面形状が1mm×120μmの矩形で高さ10μmとして形成した。
入口ポートInより水を吸い込むために20〜30kPaの負圧を利用した。負圧は真空ポンプによって供給され、水の吸い込み制御のために真空レギュレータを使用して調節した。出口ポートOutから汲み上げられた水は真空レギュレータへの吸い込みを避けるために廃液タンクに溜められる。入口ポートInは純水を満たしたチューブに接続した。チューブの他端は大気圧に開放される。このとき、圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7を駆動して、圧力をバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給したところ、流体の流れを完全に遮断することができた。また、基本構成1では円状空隙部6の平面形状が円であるため、1つのチップ上に複数のバルブを配置する場合に高密度化が困難であったが、本基本構成では、マイクロ流路5のバルブ領域Aに凸部を設けることによって円状空隙部6が不要となるため、複数のバルブを密に配置することができた。
以上、本基本構成形態によれば、バルブの開閉を確実に行なうことができ、かつ、駆動素子チップを必要とせず流体素子チップのみのチップ構造とすることによってマイクロバルブ機構を簡素化することができる。よって、本基本構成ではチップを低コスト化することが可能となる。さらに、バルブ領域において流体の通過と遮断を行うマイクロ流路を構成することによって、バルブ領域を狭くすることができるため、1つのチップ上に複数のバルブを配置する場合、バルブ配置の高密度化が可能となる。
基本構成6
図10は本発明の第6の基本構成のマイクロバルブ機構1を示した図であり、図10(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図、図10(b)は図10(a)のB−B’線におけるバルブ開状態の断面図、図10(c)は図10(a)のB−B’線におけるバルブ閉状態の断面図を示している。図11は図10のバルブ領域AのC−C’線における断面図である。図11(a)はバルブ開状態における断面図を示し、図11(b)はバルブ閉状態における断面図を示している。また、図12は図10のバルブ領域Aにおける斜視図である。
本基本構成のマイクロバルブ機構1は、圧力制御ポート2と流体素子チップ3と支持基板4により構成されている。流体素子チップ3はPDMSなどのシリコン樹脂の変形可能な弾性部材で製作される。支持基板4はガラスまたは、PETやPPPなどの熱可塑性樹脂で製作する。圧力制御ポート2は流体素子チップ3上のバルブ領域Aに立設されており、圧力制御ポート2を介し押圧体7の圧力を流体素子チップ3に給排することによって、流体素子チップ3に形成された円状空隙部6内の凹状構造21が変形し、円状空隙部6が開閉して、流体の通過と遮断を行う。このような凹状構造21を設けることによって、マイクロバルブ機構1を製作する際に円状空隙部6が形成されている流体素子チップ3の部分がたわんで支持基板4に固着してしまうことがなく、かつ、圧力制御ポート2と押圧体7とからなる押圧機構の正確な位置合わせが不要になるという効果が得られる。
マイクロバルブ機構1は特定の流れの方向はもたないが、流体素子チップ3中の2つのアクセスポートは、便宜上、入口ポート(In)及び出口ポート(Out)と呼ぶ。また、マイクロバルブ機構1において、バルブを開閉して流体の通過と遮断が行われる領域はバルブ領域Aと呼ぶ。流体素子チップ3はマイクロ加工で製作されたマイクロ流路5と平面形状が円である円状空隙部6とが支持基板4とシールして形成されている。マイクロ流路5は流体を通す微小流路である。平面形状が円である円状空隙部6は、圧力制御ポート2が備えられている方向に向かってこの円状空隙部6の円内に凹状構造21が形成され、バルブ領域Aにおいて流体の通過と遮断を行う空隙である。流体素子チップ3は支持基板4に固着する。マイクロ流路5は入口ポートIn及び出口ポートOutからきてバルブ領域Aにおいて円状空隙部6と合する。なお、円状空隙部6は平面形状が楕円である楕円状空隙部11や、平面形状が多角形、矩形、角が丸められた矩形などの空隙としてもよい。流体素子チップ3には凹部12を形成してもよい。流体素子チップ3には凹部12を形成してもよい。流体素子チップ3は弾性部材の変形部13と剛性部材の非変形部14とで構成してもよい。
圧力制御ポート2が備えられている方向に向かって円状空隙部6の円内に形成される凹状構造21は、マイクロバルブ機構1を製作する際に、円状空隙部6が形成されている流体素子チップ3の部分が流体素子チップ3の自重によってたわんで支持基板4に固着することを防止する役割をもつ。例えば、流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2の
PDMSの変形可能な弾性部材で製作し、流体素子チップ3の高さは1mmとする。支持基板4はガラスで製作する。このとき、平面形状が直径1mmの円で深さ10μmの円状空隙部6を製作すると、この円状空隙部6が形成されている流体素子チップ3の部分がたわんで支持基板4に固着してしまう。しかし、圧力制御ポート2が備えられている方向に向かって円状空隙部6の円内に平面形状が直径0.9mmの円で深さ40μmの凹状構造21を形成して製作すると、円状空隙部6が形成されている流体素子チップ3の部分がたわんでも支持基板4に固着することはない。
マイクロバルブ機構1は通常は円状空隙部6が開放して開いている。圧力制御ポート2内に設置された押圧体7は外部に設けられた圧力制御部8に接続されている。圧力制御部8は押圧体7を駆動して圧力を制御するコントローラである。押圧体7を駆動することによって圧力が圧力制御ポート2を介してバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給される。この供給された圧力が円状空隙部6内に形成された凹状構造21を変形させることによって、凹状構造21の段差部分が支持基板4に接触して、流体を遮断する。このようにして、マイクロバルブ機構1は円状空隙部6が閉鎖して閉じる。なお、押圧体7は電磁駆動式などの直進型アクチュエータまたは、空気などによるガス圧、シリコンオイルなどによる静水圧を使用する。
本基本構成のマイクロバルブ機構1における圧力制御ポート2と押圧体7とで構成される押圧機構の配置位置について説明する。図13は本基本構成における押圧機構の配置位置に関する図である。図13(a)は図10(a)と同じくマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図である。図13(b)は円状空隙部6の中心の流体素子チップ3上に押圧機構が配置される場合の図13(a)のB−B’線におけるバルブ閉状態の断面図であって、図13(c)は円状空隙部6の中心からずれた位置の流体素子チップ3上に押圧機構が配置される場合の図13(a)のB−B’線におけるバルブ閉状態の断面図である。バルブの開閉は円状空隙部6内に形成された凹状構造21の段差部分が支持基板4に離着することによって行なわれるので、バルブ閉状態において、押圧体7の駆動により凹状構造21の段差部分さえ支持基板4に接触していれば、円状空隙部6の中心から押圧機構の配置位置がずれていても、効果的に流体を遮断させることができる。したがって、押圧機構は円状空隙部6との正確な位置合わせを行なう必要がないので、押圧機構を配置する際、その位置合わせを容易化することが可能となる。
本基本構成のマイクロバルブ機構1の開閉評価を行なった結果について説明する。流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2のPDMSの変形可能な弾性部材で製作し、流体素子チップ3の高さは1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは1mmとした。マイクロ流路5は幅120μm、深さ50μm、円状空隙部6は平面形状が直径1mmの円で深さ10μm、凹状構造21は圧力制御ポート2が備えられている方向に向かって円状空隙部6の円内に平面形状が直径0.9mmの円で深さ40μmとして形成した。入口ポートInより水を吸い込むために20〜30kPaの負圧を利用した。負圧は真空ポンプによって供給され、水の吸い込み制御のために真空レギュレータを使用して調節した。出口ポートOutから汲み上げられた水は真空レギュレータへの吸い込みを避けるために廃液タンクに溜められる。入口ポートInは純水を満たしたチューブに接続した。チューブの他端は大気圧に開放される。このとき、圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7を駆動して、圧力をバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給したところ、流体の流れを完全に遮断することができた。また、基本構成1〜5では押圧機構と空隙部との正確な位置合わせが必要であったが、本基本構成では押圧機構と円状空隙部6との正確な位置合わせを行なうことなく、マイクロバルブ機構1の開閉が可能であった。なお、押圧体7は電磁駆動式の直進型アクチュエータを使用した。
以上、本基本構成形態によれば、バルブの開閉を確実に行なうことができ、かつ、駆動素子チップを必要とせず流体素子チップのみのチップ構造とすることによってマイクロバルブ機構を簡素化することができる。よって、本基本構成ではチップを低コスト化することが可能となる。また、円状空隙部の円内に凹状構造を設けることによって、マイクロバルブ機構を製作する際に円状空隙部が形成されている流体素子チップの部分がたわんで支持基板に固着してしまうことがない。さらに、この凹状構造によって、押圧機構の正確な位置合わせが不要になるので、押圧機構を配置する際、その位置合わせを容易化することが可能となる。
図14は本発明の実施例のバルブ開状態におけるマイクロバルブ機構1を示した図であって、図14(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図を示し、図14(b)は図14(a)のB−B’線における断面図を示している。また、図15は本実施例のバルブ閉状態におけるマイクロバルブ機構1を示した図であって、図15(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図を示し、図15(b)は図15(a)のB−B’線における断面図を示している。
本実施例のマイクロバルブ機構1は、圧力制御ポート2と流体素子チップ3と支持基板4により構成されている。流体素子チップ3はPDMSなどのシリコン樹脂の変形可能な弾性部材で製作される。支持基板4はガラスまたは、PETやPPPなどの熱可塑性樹脂で製作する。圧力制御ポート2は流体素子チップ3上のバルブ領域Aに立設されており、圧力制御ポート2を介し押圧体7の圧力を流体素子チップ3に給排することによって、流体素子チップ3に形成された円状空隙部6内のミアンダ形流路23が開閉して、流体の通過と遮断を行う。このように、円状空隙部6内にミアンダ形流路23を設けることによって、圧力制御ポート2と押圧体7とからなる押圧機構の正確な位置合わせが不要になるという効果が得られる。
マイクロバルブ機構1は特定の流れの方向はもたないが、流体素子チップ3中の2つのアクセスポートは、便宜上、入口ポート(In)及び出口ポート(Out)と呼ぶ。また、マイクロバルブ機構1において、バルブを開閉して流体の通過と遮断が行われる領域はバルブ領域Aと呼ぶ。流体素子チップ3はマイクロ加工で製作されたマイクロ流路5と平面形状が円である円状空隙部6とが支持基板4とシールして形成されている。マイクロ流路5は流体を通す微小流路である。円状空隙部6は、この円状空隙部6内にミアンダ形流路23が形成され、バルブ領域Aにおいて流体の通過と遮断を行う空隙である。ミアンダ形流路23は、円状空隙部6内に形成された複数の壁22によって構成される。流体素子チップ3は支持基板4に固着する。マイクロ流路5は入口ポートIn及び出口ポートOutからきてバルブ領域Aにおいて円状空隙部6と合する。なお、円状空隙部6は平面形状が楕円である楕円状空隙部11や、平面形状が多角形、矩形、角が丸められた矩形などの空隙としてもよい。流体素子チップ3には凹部12を形成してもよい。流体素子チップ3は弾性部材の変形部13と剛性部材の非変形部14とで構成してもよい。
マイクロバルブ機構1は通常は円状空隙部6内のミアンダ形流路23が開放して開いている。圧力制御ポート2内に設置された押圧体7は外部に設けられた圧力制御部8に接続されている。圧力制御部8は押圧体7を駆動して圧力を制御するコントローラである。押圧体7を駆動することによって圧力が圧力制御ポート2を介してバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給される。この供給された圧力が円状空隙部6内におけるミアンダ形流路23を構成する複数の壁22を変形させることによって、ミアンダ形流路23を閉じるように隣り合った壁22同士の側面が接触して、流体を遮断する。このようにして、マイクロバルブ機構1はミアンダ形流路23が閉鎖して閉じる。なお、押圧体7は電磁駆動式などの直進型アクチュエータまたは、空気などによるガス圧、シリコンオイルなどによる静水圧を使用する。
次に、本実施例のマイクロバルブ機構1における圧力制御ポート2と押圧体7とで構成される押圧機構の配置位置について説明する。図16は本実施例における押圧機構の配置位置に関する図である。図16(a)は図14(a)と同じくマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図である。図16(b)は円状空隙部6の中心の流体素子チップ3上に押圧機構が配置される場合の図16(a)のB−B’線におけるバルブ閉状態の断面図であって、図16(c)は円状空隙部6の中心からずれた位置の流体素子チップ3上に押圧機構が配置される場合の図16(a)のB−B’線におけるバルブ閉状態の断面図である。バルブの開閉は円状空隙部6内の隣り合った壁22同士の側面が離着することによって行なわれるので、バルブ閉状態において、押圧体7の駆動により隣り合った壁22同士の側面が接触してミアンダ形流路23が閉じてさえいれば、円状空隙部6の中心から押圧機構の配置位置がずれていても、効果的に流体を遮断させることができる。したがって、押圧機構は円状空隙部6との正確な位置合わせを行なう必要がないので、押圧機構を配置する際、その位置合わせを容易化することが可能となる。
本実施例のマイクロバルブ機構1の開閉評価を行なった結果について説明する。流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2のPDMSの変形可能な弾性部材で製作し、流体素子チップ3の高さは1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは1mmとした。マイクロ流路5は幅120μm、深さ50μm、円状空隙部6は平面形状が直径1mmの円で深さ50μmとして形成した。円状空隙部6内のミアンダ形流路23は、幅40μmの壁22を70μmの間隔で4つ形成することによって製作した。入口ポートInより水を吸い込むために20〜30kPaの負圧を利用した。
負圧は真空ポンプによって供給され、水の吸い込み制御のために真空レギュレータを使用して調節した。出口ポートOutから汲み上げられた水は真空レギュレータへの吸い込みを避けるために廃液タンクに溜められる。入口ポートInは純水を満たしたチューブに接続した。チューブの他端は大気圧に開放される。このとき、圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7を駆動して、圧力をバルブ領域Aにおける流体素子チップ3に供給したところ、流体の流れを完全に遮断することができた。
また、基本構成1〜5では押圧機構と空隙部との正確な位置合わせが必要であったが、本実施例では押圧機構と円状空隙部6との正確な位置合わせを行なうことなく、マイクロバルブ機構1の開閉が可能であった。なお、押圧体7は電磁駆動式の直進型アクチュエータを使用した。
以上、本実施形態によれば、バルブの開閉を確実に行なうことができ、かつ、駆動素子チップを必要とせず流体素子チップのみのチップ構造とすることによってマイクロバルブ機構を簡素化することができる。よって、本実施例ではチップを低コスト化することが可能となる。さらに、円状空隙部内にミアンダ形流路を設けることによって押圧機構の正確な位置合わせが不要になるので、押圧機構を配置する際、その位置合わせを容易化することが可能となる。
基本構成7
図17は、本発明の第7の基本構成のマイクロバルブ機構1を示した図であり、図17(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図、図17(b)は図17(a)のB−B’線におけるバルブ閉状態の断面図、図17(c)は図17(a)のB−B’線におけるバルブ開状態の断面図を示している。図18は図17のバルブ領域AのC−C’線における断面図である。図18(a)はバルブ閉状態における断面図を示し、図18(b)はバルブ開状態における断面図を示している。また、図19は図17のバルブ領域Aにおける斜視図である。
本基本構成のマイクロバルブ機構1は、圧力制御ポート2と流体素子チップ3と支持基板4と平板25とにより構成されている。流体素子チップ3はPDMSなどのシリコン樹脂の変形可能な弾性部材で製作される。支持基板4はガラスまたは、PETやPPPなどの熱可塑性樹脂で製作する。平板25はガラスまたは、PETやPPPなどの熱可塑性樹脂、鉄や銅などの金属の剛性部材で製作する。
マイクロバルブ機構1は通常、流体素子チップ3に形成されたマイクロ流路5内の閉子24によってマイクロ流路5が遮断されて閉じている。平板25は流体素子チップ3上のバルブ領域Aに接着され、圧力制御ポート2は平板25上に立設されており、圧力制御ポート2を介し押圧体7の圧力を平板25に供給することによって、閉子24上の流体素子チップ3が変形してマイクロ流路5が連通し、マイクロバルブ機構1が開く。このように、マイクロ流路5内の閉止24と流体素子チップ3上の平板25とを設けることによって、常閉型の押圧駆動式バルブとすることができる。
マイクロバルブ機構1は特定の流れの方向はもたないが、流体素子チップ3中の2つのアクセスポートは、便宜上、入口ポート(In)及び出口ポート(Out)と呼ぶ。また、マイクロバルブ機構1において、バルブを開閉して流体の通過と遮断が行われる領域はバルブ領域Aと呼ぶ。流体素子チップ3はマイクロ加工で製作されたマイクロ流路5が支持基板4とシールして形成されている。マイクロ流路5は流体を通す微小流路である。支持基板4は流体素子チップ3とシールされる側に、マイクロ加工で製作された凸状構造の閉子24が形成されている。
閉子24は、バルブを閉じた状態、つまり、閉子24が流体素子チップ3に形成されたマイクロ流路5内の壁面に接触した状態で、入口ポートInと出口ポートOutとが連通しないように、マイクロ流路5を遮断するように設けられている。流体素子チップ3は支持基板4に固着する。平板25は閉子24と閉子24に隣接する流体素子チップ3の部分との範囲にわたって流体素子チップ3上に接着されている。圧力制御ポート2は閉子24に隣接する流体素子チップ3の部分における平板25上に立設されている。なお、流体素子チップ3は弾性部材の変形部13と剛性部材の非変形部14とで構成してもよい。
マイクロバルブ機構1は通常は閉子24によってマイクロ流路5が遮断されて閉じている。圧力制御ポート2内に設置された押圧体7は外部に設けられた圧力制御部8に接続されている。圧力制御部8は押圧体7を駆動して圧力を制御するコントローラである。押圧体7を駆動することによって圧力が圧力制御ポート2を介して閉子24に隣接する流体素子チップ3の部分における平板25に供給される。
この供給された圧力が平板25の一端部(閉子24に隣接する流体素子チップ3の部分における平板25)に接着された流体素子チップ3を押し下げることによって、平板25の他端部(閉子24の部分における平板25)に接着された流体素子チップ3が引き上がり、閉子24と閉子24上の流体素子チップ3との間に空隙が生じ、マイクロ流路5が連通して流体が通過する。このようにして、閉子24上に生じた空隙を介してマイクロ流路5が連通し、マイクロバルブ機構1が開く。なお、押圧体7は電磁駆動式などの直進型アクチュエータまたは、空気などによるガス圧、シリコンオイルなどによる静水圧を使用する。
本基本構成のマイクロバルブ機構1の開閉評価を行なった結果について説明する。流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2のPDMSの変形可能な弾性部材で製作し、流体素子チップ3の高さは1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは1mmとした。マイクロ流路5は幅120μm、深さ50μm、閉子24は平面形状が2mm×120μmの矩形で高さ50μmとして形成した。平板25はガラスで製作し、平面形状が2mm×2mmの矩形で高さ1mmとした。平板25と流体素子チップ3とは、両接着面を酸素プラズマで表面処理して接着した。入口ポートInより水を吸い込むために20〜30kPaの負圧を利用した。
負圧は真空ポンプによって供給され、水の吸い込み制御のために真空レギュレータを使用して調節した。出口ポートOutから汲み上げられた水は真空レギュレータへの吸い込みを避けるために廃液タンクに溜められる。入口ポートInは純水を満たしたチューブに接続した。チューブの他端は大気圧に開放される。このとき、圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7を駆動して、200gfの荷重を閉子24に隣接する流体素子チップ3の部分における平板25に供給したところ、マイクロ流路5が連通して流体を通過させることができた。また、押圧体7を駆動せず圧力を供給しないときは、閉子24によって流体の流れを完全に遮断することができた。また、実施例および基本構成1〜6では、常開型のバルブであったが、本基本構成では、閉止24と平板25とを設けることによって、常閉型のバルブとすることができた。
また、図17のマイクロバルブ機構1は、低荷重でバルブを開くことができるように、閉子24に隣接する流体素子チップ3に空隙部26が形成されていることが好ましい。図20は図17のマイクロバルブ機構1に空隙部26を形成したマイクロバルブ機構1を示した図であり、図20(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図、図20(b)は図20(a)のC−C’線におけるバルブ閉状態の断面図、図20(c)は図20(a)のC−C’線におけるバルブ開状態の断面図を示している。また、図21は図20のバルブ領域Aにおける斜視図である。
図20のマイクロバルブ機構1は、圧力制御ポート2と流体素子チップ3と支持基板4と平板25とにより構成されている。流体素子チップ3はPDMSなどのシリコン樹脂の変形可能な弾性部材で製作される。支持基板4はガラスまたは、PETやPPPなどの熱可塑性樹脂で製作する。平板25はガラスまたは、PETやPPPなどの熱可塑性樹脂、鉄や銅などの金属の剛性部材で製作する。
図20のマイクロバルブ機構1は特定の流れの方向はもたないが、流体素子チップ3中の2つのアクセスポートは、便宜上、入口ポート(In)及び出口ポート(Out)と呼ぶ。また、図20のマイクロバルブ機構1において、バルブを開閉して流体の通過と遮断が行われる領域はバルブ領域Aと呼ぶ。流体素子チップ3はマイクロ加工で製作されたマイクロ流路5と空隙部26とが支持基板4とシールして形成されている。マイクロ流路5は流体を通す微小流路である。
支持基板4は流体素子チップ3とシールされる側に、マイクロ加工で製作された凸状構造の閉子24が形成されている。閉子24は、バルブを閉じた状態、つまり、閉子24が流体素子チップ3に形成されたマイクロ流路5内の壁面に接触した状態で、入口ポートInと出口ポートOutとが連通しないように、マイクロ流路5を遮断するように設けられている。空隙部26は閉子24に隣接して形成されている。流体素子チップ3は支持基板4に固着する。平板25は閉子24と空隙部26との範囲にわたって流体素子チップ3上に接着されている。圧力制御ポート2は空隙部26の部分における平板25上に立設されている。なお、流体素子チップ3は弾性部材の変形部13と剛性部材の非変形部14とで構成してもよい。
図20のマイクロバルブ機構1は通常は閉子24によってマイクロ流路5が遮断されて閉じている。圧力制御ポート2内に設置された押圧体7は外部に設けられた圧力制御部8に接続されている。圧力制御部8は押圧体7を駆動して圧力を制御するコントローラである。押圧体7を駆動することによって圧力が圧力制御ポート2を介して空隙部26の部分における平板25に供給される。この供給された圧力が平板25の一端部(空隙部26の部分における平板25)に接着された流体素子チップ3を押し下げることによって、平板25の他端部(閉子24の部分における平板25)に接着された流体素子チップ3が引き上がり、閉子24と閉子24上の流体素子チップ3との間に空隙が生じ、マイクロ流路5が連通して流体が通過する。このようにして、閉子24上に生じた空隙を介してマイクロ流路5が連通し、マイクロバルブ機構1が開く。なお、押圧体7は電磁駆動式などの直進型アクチュエータまたは、空気などによるガス圧、シリコンオイルなどによる静水圧を使用する。
図20のマイクロバルブ機構1の開閉評価を行なった結果について説明する。流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2のPDMSの変形可能な弾性部材で製作し、流体
素子チップ3の高さは1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは1mmとした。マイクロ流路5は幅120μm、深さ50μm、閉子24は平面形状が2mm×120μmの矩形で高さ50μm、空隙部26は平面形状が2mm×1.88mmの矩形で高さ50μmとして形成した。
平板25はガラスで製作し、平面形状が2mm×2mmの矩形で高さ1mmとした。平板25と流体素子チップ3とは、両接着面を酸素プラズマで表面処理して接着した。入口ポートInより水を吸い込むために10〜20kPaの負圧を利用した。負圧は真空ポンプによって供給され、水の吸い込み制御のために真空レギュレータを使用して調節した。出口ポートOutから汲み上げられた水は真空レギュレータへの吸い込みを避けるために廃液タンクに溜められる。入口ポートInは純水を満たしたチューブに接続した。チューブの他端は大気圧に開放される。このとき、圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7を駆動して、100gfの荷重を空隙部26の部分における平板25に供給したところ、マイクロ流路5が連通して流体を通過させることができた。
図17のマイクロバルブ機構1では、バルブを開くために押圧荷重が最低200gf必要であったが、図20のマイクロバルブ機構1では、空隙部26を設けることによって、最低100gfの荷重でバルブを開くことができた。また、押圧体7を駆動せず圧力を供給しないときは、閉子24によって流体の流れを完全に遮断することができた。したがって、図20のマイクロバルブ機構1は、図17のマイクロバルブ機構1を改善し、閉子24に隣接する流体素子チップ3に空隙部26を形成することによって、低荷重でバルブを開くことができる、すなわち、押圧体の低出力駆動が可能となる。
また、図20のマイクロバルブ機構1は、流体の圧力が高い場合でもバルブ閉状態において空隙部26から流体が通過しないように、閉子24の幅を広げて閉子24が空隙部26内に突き出す構造とすることが好ましい。図22は図20のマイクロバルブ機構1における閉子24を空隙部26内に突き出す構造としたマイクロバルブ機構1を示した図であり、図22(a)はマイクロバルブ機構1を上方から見た平面図、図22(b)は図22(a)のC−C’線におけるバルブ閉状態の断面図、図22(c)は図22(a)のC−C’線におけるバルブ開状態の断面図を示している。
また、図23は図22のバルブ領域Aにおける斜視図である。閉子24はバルブを閉じた状態、つまり、閉子24が流体素子チップ3に形成されたマイクロ流路5内の壁面に接触した状態で、入口ポートInと出口ポートOutとが連通しないように、マイクロ流路5を遮断するように設けられ、かつ、閉子24は空隙部26内に突き出す構造として、この突き出した閉子24の部分は空隙部26内の壁面に接触するように形成されている。
図23のマイクロバルブ機構1の開閉評価を行なった結果について説明する。流体素子チップ3はヤング率1000N/cm2のPDMSの変形可能な弾性部材で製作し、流体
素子チップ3の高さは1mmとした。支持基板4はガラスで製作し、支持基板4の高さは1mmとした。マイクロ流路5は幅120μm、深さ50μm、閉子24は平面形状が2mm×500μmの矩形で高さ50μm、空隙部26は平面形状が2mm×1.88mmの矩形で高さ50μmとして形成した。閉子24は、平面形状が2mm×380μmの矩形で高さ50μmの部分が空隙部26内に突き出すように設けられている。
平板25はガラスで製作し、平面形状が2mm×2mmの矩形で高さ1mmとした。平板25と流体素子チップ3とは、両接着面を酸素プラズマで表面処理して接着した。入口ポートInより水を吸い込むために10〜40kPaの負圧を利用した。負圧は真空ポンプによって供給され、水の吸い込み制御のために真空レギュレータを使用して調節した。出口ポートOutから汲み上げられた水は真空レギュレータへの吸い込みを避けるために廃液タンクに溜められる。入口ポートInは純水を満たしたチューブに接続した。チューブの他端は大気圧に開放される。
このとき、圧力制御ポート2内に設置された押圧曲面の曲率半径1.5mmの押圧体7を駆動して、100gfの荷重を空隙部26の部分における平板25に供給したところ、マイクロ流路5が連通して流体を通過させることができた。また、押圧体7を駆動せず圧力を供給しないときは、閉子24によって流体の流れを完全に遮断することができた。したがって、図23のマイクロバルブ機構1は、図20のマイクロバルブ機構1を改善し、閉子24を空隙部26内に突き出す構造とすることによって、流体の圧力が高い場合でもバルブを閉じることができる、すなわち、流体に対して高耐圧化することが可能となる。
以上、本基本構成形態によれば、バルブの開閉を確実に行なうことができ、かつ、駆動素子チップを必要とせず流体素子チップのみのチップ構造とすることによってマイクロバルブ機構を簡素化することができる。よって、本基本構成ではチップを低コスト化することが可能となる。また、マイクロ流路内に閉子を形成し、流体素子チップ上に平板を設けることによって、常閉型の押圧駆動式バルブが可能となる。さらに、流体素子チップ内に空隙部を設けて、閉子を空隙部内に突き出す構造とすることによって、押圧体の下方の流体素子チップの厚みが薄くなるため低荷重でバルブを開くことができ、かつ、空隙部の密閉性が高くなるため流体の圧力が高くてもバルブを閉じることができる。