以下、本発明の参考例及び実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の参考例であるペダル装置の構造を示す模式的な側面図である。
図1に示す参考例のペダル装置10は、車両に搭載されるアクセルペダル装置であり、ペダル11と、シャフト12と、変位部材13と、シャフト12および変位部材13を内部に収容するケーシング14とを備え、ペダル11の踏込み量に対応してアクセル開度が調整されるものである。
ペダル11は、一端の軸支部11Cがシャフト(回動軸)12に軸支されたペダルアーム11Aと、そのペダルアーム11Aの他端に設けられたペダル踏面11Bとを備える。ペダルアーム11Aは、軸支部11Cから変位部材13に設けられた後記の前係合部13Cと後係合部13Dとの間を通って、ケーシング14の開口部14Aからケーシング14の外部へと延出されている。このペダル11は、図示しない付勢手段(例えば、シャフト12周りに設けられるリターンスプリング)によりシャフト(回動軸)12を軸中心として常に矢印Aと反対の向きに付勢されている。ペダル11のペダル踏面11Bが踏み込まれると、ペダル11は、付勢力に抗してシャフト12を軸として回動され、図1の矢印Aで示される方向へ押し下げられる。また、ペダル11は、ペダル踏面11Bから踏み込みが解除されると図示しない付勢手段の付勢力によって初期位置に復帰する。すなわち、ペダル11はシャフト12を回動軸としてペダル踏面11Bの操作に連動して回動する。なお、ペダル11の踏込み量は、例えば、ペダル11やシャフト12の変位を検知するセンサ(図示せず)により検知され、そのセンサからの信号に基づいてアクセル開度が制御される。
変位部材13は、シャフト12の径方向に拡がった略扇形の部材であり、一端がペダル11の軸支部11Cに遊嵌・軸支されている。この変位部材13は、その外縁の端面に、円弧状の摺接部13Aと、その摺接部13Aに設けられた凹部(被係合部)13Bとを有する。凹部13Bは、例えば、V字形の断面形状を有する溝、切欠き、あるいは窪部からなる。この変位部材13は、シャフト12を軸中心として、ケーシング14内でペダル11の操作に連動して回動される。
また、変位部材13は、シャフト12を軸中心として回動するペダル11のペダルアーム11Aの回動方向に沿って間隔Lだけ離隔して対面配置され、回動するペダルアーム11Aの前側面11Cおよび後側面11Dのそれぞれと係合する前係合部13Cと後係合部13Dとを有する。
前係合部13Cと後係合部13Dの間の間隔Lは、ペダルアーム11Aの幅よりも広く、すなわち、前側面11Cおよび後側面11Dの間の距離Hよりも大きく設定され、ペダルアーム11Aは前係合部13Cと後係合部13Dの間を動く。ここで、ペダル11が踏み込まれるとペダルアーム11Aがシャフト12の周りに回動して矢印Aの方向に変位し、ペダルアーム11Aの前側面11Cが前係合部13Cに係合すると、ペダルアーム11Aの矢印Aの方向への回動が変位部材13に伝達され、変位部材13はシャフト12を軸中心として矢印Bの方向に回動される。また、ペダル11の踏み込みが解除または踏み込み量が軽減されると、ペダルアーム11Aは、矢印Aと逆の方向に動き、ペダルアーム11Aの前側面11Cは前係合部13Cから後係合部13Dに向かって離接する。ペダルアーム11Aが変位してペダルアーム11の後側面11Dが変位部材13の後係合部13Dに係合すると、ペダルアーム11Aの矢印Aと逆の方向への回動が変位部材13に伝達され、変位部材13はシャフト12を軸中心として矢印Bと逆の方向に回動される。一方、ペダルアーム11Aが、変位部材13の前係合部13Cと後係合部13Dのいずれにも係合せずに、前係合部13Cと後係合部13Dとの間にある状態では、変位部材13は、ペダルアーム11Aの回動に連動せず、変位しない。
ケーシング14は、車体に固定され、変位部材13の摺接部13Aに対面する内面に、例えば、砲弾形や球状の部材からなる凸部材(係合部材)15Aが取り付けられ、この凸部材15Aは、バネや弾性体などの付勢部材15Bにより変位部材13の摺接部13Aに向けて付勢され、摺接部13Aに押圧・当接される。また、開口部14Aは、ペダル操作によるペダルアーム11Aの動きを阻害しない開口径および形状に形成される。
参考例において、前記変位部材13の摺接部13Aおよび凹部(被係合部)13Bと、ケーシング14の凸部材(係合部材)15Aとが、本発明の踏み込み感発生機構を構成する。この踏み込み感発生機構を有するペダル装置10において、変位部材13が、ペダル11の動きに連動して変位すると、変位部材13の摺接部13Aは、ケーシング14に設けられた凸部材15Aと摺接する。そして、変位部材13がペダル操作に連動してシャフト12の周りに回動されると、変位部材13は、摺接部13Aと凸部材15Aとの接触を維持しながら変位する。ペダル11が踏み込まれて変位部材13が所定の位置まで変位すると、凸部材15Aの先端が凹部13Bに嵌入し、さらに、変位部材13がこの位置から移動されると、凸部材15Aの先端が凹部13Bから脱嵌される。その凸部材15Aの先端の凹部13Bへの嵌入、脱嵌によって発生する衝撃がペダル11にクリック感として伝達され、操作者に踏込み感を与える。この踏込み感によって、操作者は、ペダル11の操作位置を正確に認識することができる。
ここで、変位部材13の摺接部13Aに凹部13Bを設ける位置を、常用のペダル11の踏み込み量、すなわち、ペダル11の初期位置から踏み込まれて、常用の踏み込み位置に至るまでのペダル11のシャフト12を軸中心とする回動角度(踏み込み角度)に対応する位置とすることによって、ペダル11が常用の踏み込み量に達したときに、操作者にクリック感を伝達して、操作者に踏み込み感を与えることができる。これによって、操作者は、常用の踏み込み量、例えば、車両の巡航速度に対応するアクセルペダルの踏み込み位置を正確に認識して、車両の速度制御を容易かつ正確に行うことができる。
さらに、参考例のペダル装置10においては、変位部材13は、凸部材15Aの先端の凹部13Bへの嵌入、脱嵌によって衝撃(クリック感)が発生した後、ペダル操作、すなわちペダル11の変位に連動して変位するが、ペダル11が、その踏み込み感を発生した踏み込み位置の近傍で変位する場合、変位部材13がペダル11の変位に連動しない不感帯が設けられている。この不感帯は、変位部材13に設けられた前係合部13Cおよび後係合部13Dによって形成される。すなわち、ペダルアーム11Aの前側面11Cおよび後側面11Dが変位部材13の前係合部13Cと後係合部13Dのいずれにも係合せずに、前係合部13Cと後係合部13Dとの間にある状態では、変位部材13は、ペダルアーム11Aの回動に連動せず、変位しない。このペダルアーム11Aが前係合部13Cと後係合部13Dの間を移動して前側面11Cまたは後側面11Dが変位部材13の前係合部13Cと後係合部13Dのいずれにも係合しない間、ペダル11と変位部材13の間の連動に遊びが設けられ、ペダル11の踏み込みに対して、ペダル11から変位部材13に運動が伝達されることがなく、この遊びが不感帯に対応する。図1では、ペダルアーム11Aの前側面11Cおよび後側面11Dが前係合部13Cおよび後係合部13Dのそれぞれと係合する間に設けられた遊びが、遊び角Δθ1として表される。また、図1においては、ペダル11が矢印Aの方向に踏み込まれ、それに連動して変位部材13がB方向に変位するときの様子が示され、ペダルアーム11Aの前側面11Cは前係合部13Cに係合されている。そして、ペダルアーム11Aが前係合部13Cおよび後係合部13Dの何れとも係合していないとき、変位部材13は摺接部13Aと凸部材15Aの間の摩擦力によりその位置が保持される。
次に、図2〜図4を参照して参考例のペダル装置10の作用について説明する。図2および図3は、ペダル操作におけるペダルの踏込み量の時系列的な変化の一例を示すグラフであり、横軸は時間(t)、縦軸はペダルの踏込み角を示す。図2は、クリック機構を備えた従来のペダル装置を用いた場合のクリック感の発生箇所を示し、図3は参考例のペダル装置10を用いた場合のクリック感の発生箇所を示す。また、図4は、ペダル11の踏込み角と変位部材13の角度との関係を示すグラフであり、横軸はペダル踏込み角θ、縦軸は変位部材の角度φである。
参考例において、ペダル11の踏込み時に変位部材13に設けられた凹部13Bが凸部材15Aと嵌入してクリック感が与えられる踏込み角度(クリック点)は、例えば、巡航速度におけるペダル11の踏み込み位置に対応する踏み込み角度に設定されており、操作者に巡航速度に対応した踏込み量に至ったことを知らせる。クリック点が巡航速度におけるアクセルペダルの踏み込み位置に対応する踏み込み角度に設定されている場合、図2、図3に示されるように、車両の走行時、ペダルの踏み込み角度は主にクリック点の前後を往復して微調整される。そのため、ペダル踏込み角の経時変化を示す曲線Sは、頻繁にクリック点を跨いで変動する。
これに対して、従来のペダル装置では、ペダルが所定の踏み込み位置(クリック点)に到達する度に、すなわち、図2に示される曲線Sがクリック点を通過する度(点P1〜P6)に頻繁にクリック感が発生することとなる。
一方、参考例のペダル装置10では、一旦クリック点を超えてペダル11が踏込まれると、設定されたクリック点からペダル11が遊び角Δθ1分戻されペダルアーム11Aの後側面11Dが後係合部13Dに係合するまで、変位部材13は変位せず、再び変位部材13に設けられた凹部13Bが凸部材15Aと嵌入することはない。したがって、図3に示されるように、曲線Sが図2のP2〜P6に対応するクリック点に至っても、ペダル11がクリック点から更に遊び角Δθ1分戻されることがなければ、クリック感が発生することはない。図3の例においては、ペダル11の踏込みが開始され、ペダルアーム11Aの前側面11Cが変位部材11の前係合部11Cに係合して変位部材11がペダル11と連動して矢印Bの方向に変位して、変位部材13の摺接部13Aを摺接していた凸部材15Aの先端が凹部13に嵌入し、さらに脱嵌するとき、すなわち、曲線Sが初めてクリック点を通過する点P1と、ペダル11の踏み込み力が軽減されてペダルアーム11Aの前側面11Cが変位部材13の前係合部13Cを離接してペダルアーム11Aが矢印Aと逆の方向に戻り、ペダルアーム11Aの後側面11Dが後係合部13Dに係合して、変位部材11が変位するとき、すなわち、曲線Sがクリック点を越えて遊び角Δθ1分戻った点P7でのみクリック感が発生する。なお、一旦、クリック点から遊び角Δθ1分ペダル踏込み角が小さくなれば、さらに、ペダルが踏み込まれて、再びクリック点に達したときにクリック感が発生する。
このとき、図4に示されるように、変位部材13の角度は、ペダル操作によるペダル踏込み角θの変化に対して、例えば、平行四辺形C1に沿った経路を矢印方向を辿って推移する。ペダル11が初期位置(θ=0)から踏込まれるとき、ペダル11が遊び角Δθ1分踏込まれるまで、ペダル踏込み角θと変位部材13の角度φの関係は、水平線H1に沿って推移し変位部材13の角度はφ=0と一定値に維持される。
踏込み角がθ=Δθ1に達すると、ペダルアーム11Aの前側面11Cが前係合部13Cに係合するため、変位部材13はペダル11と連動して回動され、変位部材13の角度は直線L1に沿って踏込み角θとともに増大する。また、ペダル操作が反転され、踏込み角が小さくなるとき、ペダルアーム11Aの後側面11Dが後係合部13Dに係合するまで、すなわち、ペダル11が遊び角Δθ1分戻されるまで、ペダル踏込み角θと変位部材13の角度φとの関係は、例えば水平線H2に沿って推移し、角度φは一定値に保たれる。
ペダル11が遊び角Δθ1以上戻されると、ペダルアーム11Aの後側面11Dが後係合部13Dに係合し、変位部材13はペダル11と連動して回動され、ペダル踏込み角θが小さくなるとともに変位部材13の角度φは直線L2に沿って小さくなる。
したがって、直線L1に沿って変位部材13の角度φが増大するときには、クリック点が設定された踏込み角θ1においてクリック感が発生し、直線L2に沿ってペダル踏込み角が減少するときには、変位部材13の角度がφ=θ1となる位置、すなわちペダル踏込み角θがθ1より遊び角Δθ1分小さいθ=θ0(=θ1−Δθ1)のときにクリック感が発生する。なお遊び角Δθ1、すなわち不感帯は、ペダル操作の微調整においてペダル踏込み角がクリック点から戻される角度よりも大きく設定されることが好ましい。
以上のように、本発明の参考例によれば、ペダル操作において、所定の踏込み角でクリック感(踏込み感)を与えて操作者にペダルの操作位置を正確に認識させるとともに、ペダル位置を微調整する際に不要なクリック感(踏込み感)の発生を防止することができる。これにより、ペダルの過剰な踏込みを防止するとともに、使用感の向上も図ることができる。
なお、参考例では、ペダルと変位部材との間のリンク機構に遊びを設けることによりペダルの変位に対して変位部材が変位しない不感帯を設けたが、ペダルの変位が反転される際、変位部材がペダルの変位に対して応答しない不感帯が存在する構成であればよく、参考例の構成に限定されるものではない。例えば、変位部材に所定の長さの円弧状のガイド溝を設けるとともに、ペダルにガイド溝と嵌合するピンを設け、これによりペダルの運動を変位部材に伝達する構成とすることも可能である。
また、参考例では、凹部を備える摺接部が変位部材に設けられ、凸部材がケーシングに設けられた構成を示したが、変位部材に凸部材を設けケーシングに摺接部を設けてもよい。また、参考例では凸部材が摺接部に向けて押圧付勢される構成を示したが、凹部が設けられた摺接部全体を凸部に向けて押圧する構成としてもよい。
さらに、参考例では、車両の巡航速度時のアクセルペダルの踏み込み位置に対応して凸部材15Aの先端が嵌入する凹部13Bの位置を設ける踏み込み感発生機構について説明したが、本発明における踏み込み感発生機構は、これに限定されず、ペダル装置10が装備される装置の性格、操作目的等に応じて適宜決定することができる。例えば、巡航速度ではなく、駆動機関(エンジン)の駆動特性に応じて、最大加速力が得られるアクセルペダル位置にクリック感が発生するように、摺接部における凹部の位置を選択することもできる。
次に、図5〜図8を参照して、本発明の実施形態について説明する。図5は、実施形態のペダル装置の斜視図である。なお、図5においては、ケーシングを省略している。
実施形態のペダル装置20も、参考例と同様に車輌のアクセルペダルを例としたものであり、不図示のケーシングを除くと、主にペダル21、シャフト22、およびガイド部材(変位部材)23から構成される。
ペダル21は、ペダルアーム21A、ペダル踏面21B、軸支部21C、および被駆動部21Dを備える。ペダル21は、軸支部21Cにおいてシャフト(回動軸)22に回動可能に軸支され、ペダルアーム21Aおよび被駆動部21Dは、互いに略反対向きに軸支部21Cからシャフト22の径方向に向けて延出する。ペダル踏面21Bは、ペダルアーム21Aの先端に設けられ、被駆動部21Dは、本実施形態においては略扇形状をなす。なお、参考例と同様に、ペダル21は、図示しない付勢手段によりシャフト22を軸中心として矢印Cと逆の方向に常に付勢されている。そして、ペダル21のペダル踏面21Bが踏み込まれると、ペダル21は、付勢力に抗してシャフト22を軸として回動され、図5の矢印Cで示される方向へ押し下げられる。また、ペダル21は、ペダル踏面21Bの踏み込みが解除されると図示しない付勢手段の付勢力によって初期位置に復帰する。すなわち、ペダル21はシャフト22を回動軸としてペダル踏面21Bの操作に連動して回動する。なお、ペダル21の踏込み量は、例えば、ペダル21やシャフト22の変位を検知するセンサ(図示せず)により検知され、そのセンサからの信号に基づいてアクセル開度が制御される。
ペダル21の被駆動部21Dは、シャフト22を軸中心として径方向に拡がった扇形の部材であり、その最外縁の端面に円弧状のペダル側摺接部21Eと、そのペダル側摺接部21Eに設けられたペダル側凹部21Fとを有する。ペダル側凹部21Fは、例えば、V字形の断面形状を有する溝、切欠き、あるいは窪部からなり、ケーシング(図示せず)に設けられる凸部材24Aが嵌入する。凸部材24Aは、付勢部材24Bによりペダル側摺接部21Eに向けて付勢され、その先端はペダル側摺接部21Eに当接・押圧される。この被駆動部21Dは、シャフト22を軸中心としてペダル21の操作に連動してシャフト22周りに回動され、ペダル側摺接部21Eが凸部材24Aの先端と摺接しながら変位する。また、被駆動部21Dのガイド部材23に対面する側面には、シャフト22の軸方向に沿ってガイドピン21Gが突設されている。
一方、ガイド部材23は、軸受部23Aと回動部23Bとを有し、軸受部23Aがシャフト22に回動可能に遊嵌され、ガイド部材23がシャフト22に軸支されている。
ガイド部材23の回動部23Bは軸受部23Aからシャフト22の径方向に延出する扇形の部材であり、その径方向の最外縁の端面に、ペダル21のペダル側摺接部21Eと同一面をなすガイド側摺接部23Cを備える。本実施形態においては、回動部23Bは被駆動部21Dと同形状とされる。また、回動部23Bのガイド側摺接部23Cには、ペダル側摺接部21Eと同様に、凸部材24Aが嵌入する溝、切欠き、窪部などからなるガイド側凹部23Dが所定の位置に形成されている。凸部材24Aは、付勢部材24Bによりガイド側摺接部23Cに向けて付勢され、その先端はガイド側摺接部23Cに当接・押圧される。
回動部23Bのガイド側摺接部23Cに設けられるガイド側凹部23Dの位置はペダル側凹部21Fと同じ位置に設けられ、回動部23Bと被駆動部21Dをずれがないように重ねるとガイド側凹部23D、21Fは同じ位置で重なり合うように設けられる。本実施形態において、ペダル側凹部21F、23Dは、例えば、V字断面形状を有する溝(切欠き)として構成され、ペダル側凹部21Fとガイド側凹部23Dの位置が一致すると、ペダル側凹部21F、23Dは、ペダル21の被駆動部21Dとガイド部材23の回動部23Bとの間を隔てて連続する1つのV字断面の溝を形成する。なお、凸部材24Aは例えばシャフト22の軸に垂直な断面が砲弾型のシャフト軸方向に幅広な部材であり、その幅は両ペダル側摺接部21E、23Cに渡って凸部材24Aの先端が当接するのに十分な大きさである。したがって、凸部材24Aはペダル側凹部21F、23Dの位置が一致して連続する1つの溝を形成するときのみ、これらの溝に嵌入し、回動部23Bの位置が被駆動部21Dからずれ、ペダル側凹部21F、23Dの位置が一致しない場合には、凸部材24Aは何れのペダル側凹部21F、23Dにも嵌入することはない。
また、回動部23Bには、シャフト22の軸を中心とする円弧状のガイド溝23Eが設けられる。回動部23Bは、ペダル21の被駆動部21Dに隣接して配置され、被駆動部21Dの側面に突設されたガイドピン21Gが、ガイド溝23Eに遊動可能に嵌入されている。ガイドピン21Gは、被駆動部21Dの変位にともなって、ガイド溝23E内において溝に沿って遊動し、ガイド溝23Eの両端の前係合部25Aおよび後係合部25Bにおいて、回動部23Bに係合する。
本実施形態において、前記ペダル21の被駆動部21Dにおけるペダル側摺接部21Eおよびペダル側凹部(被係合部)21Fと、ガイド部材23の回動部23Bにおけるガイド側摺接部23Cおよびガイド側凹部23Dと、ケーシング(図示せず)に突設された凸部材(係合部材)24Aとが、本発明の踏み込み感発生機構を構成する。この踏み込み感発生機構を有するペダル装置20において、操作者がペダル21を踏み込むと、ペダル21の動きに連動して被駆動部21Dがシャフト22を軸中心として回動し、ガイドピン21Gがガイド部材23のガイド溝23E内を遊動してガイド溝23Eの前係合部25Aに係合して、ガイド部材23は、被駆動部21Dと連動して変位する。このとき、被駆動部21Dのペダル側摺接部21Eおよびガイド部材23のガイド側摺接部23Cが、ケーシング(図示せず)から突設された凸部材24Aと摺接する。そして、ペダル21が、さらに踏み込まれると、被駆動部21Dとガイド部材23の回動部23Bは、そのペダル21の踏み込みに連動してシャフト22周りに回動されるに伴って、ペダル側摺接部21Eおよびガイド側摺接部23Cと、凸部材24Aとの接触を維持しながら変位する。ペダル21が踏み込まれて被駆動部21Dが所定の位置まで変位すると、凸部材24Aの先端が被駆動部21Dのペダル側凹部21Fおよび回動部23Bのガイド側凹部23Dに嵌入し、さらに、被駆動部21Dがこの位置から移動されると、凸部材24Aの先端がペダル側凹部21Fおよびガイド側凹部23Dから脱嵌される。この凸部材24Aの先端のペダル側凹部21Fおよびガイド側凹部23Dへの嵌入、脱嵌によって発生する衝撃がペダル21にクリック感として伝達され、操作者に踏込み感を与える。この踏込み感によって、操作者は、ペダル21の操作位置を正確に認識することができる。
ここで、ペダル21の被駆動部21Dのペダル側摺接部21Eにペダル側凹部21Fを設ける位置を、ペダル21の常用の踏み込み量、すなわち、ペダル21の初期位置から踏み込まれて、常用の踏み込み位置に至るまでのペダル21のシャフト22を軸中心とする回動角度(踏み込み角度)に対応する位置とすることによって、ペダル21が常用の踏み込み量に達したときに、操作者にクリック感を伝達して、操作者に踏み込み感を与えることができる。これによって、操作者は、常用の踏み込み量、例えば、車両の巡航速度に対応するアクセルペダルの踏み込み位置を正確に認識して、車両の速度制御を容易かつ正確に行うことができる。
さらに、実施形態のペダル装置20においては、ガイドピン21Gは、ペダル21の踏み込みによる被駆動部21Dの変位にともなって、ガイド溝23E内において溝に沿って遊動し、ガイド溝23Eの両端(前係合部25A、後係合部25B)において、回動部23Bに係合する。すなわち、ペダル21が踏み込まれると、ピン21Gがガイド溝23E内を遊動し、さらにペダル21を踏み込むと、ピン21Gがガイド溝23の前係合部25Aに係合する。このとき、ペダル側凹部21Fとガイド側凹部23Dとは、側面からみて同一線状に並ぶ。更に、ペダル21を踏み込むと、ピン21Gがガイド溝23Eに係合した状態で、ガイド部材23は、被駆動部21Dとともに一体的に変位(回動)する。このとき、被駆動部21Dとガイド部材23の回動部23Bは、そのペダル21の踏み込みに連動してシャフト22周りに回動されるに伴って、ペダル側摺接部21Eおよびガイド側摺接部23Cと、凸部材24Aとの接触を維持しながら変位する。そして、ペダル21が踏み込まれて被駆動部21Dが所定の位置まで変位すると、凸部材24Aの先端がペダル側凹部21Fおよびガイド側凹部23Dに嵌入、脱嵌することによってクリック感が発生し、ペダル21にクリック感として伝達され、操作者に踏込み感を与える。次に、凸部材24Aの先端がペダル側凹部21Fおよびガイド側凹部23Dから脱嵌した後、ペダル21への踏み込みが解除または軽減されると、ペダル21の被駆動部21Dは、矢印Dと逆の方向に回動し、これとともに、ガイドピン21Gは、ガイド部材23の回動部23Bのガイド溝23E内を後係合部25Bに向けて遊動する。そして、ピン21Gがガイド溝23Eの後係合部25Bに係合するまで、ガイド部材23は、ペダル21の被駆動部21Dの動きに連動せず、被駆動部21Dのみが変位し、ガイド部材23は変位しない。このとき、凸部材24Aの先端は、ガイド部材23のガイド側摺接部23Cと摺接するため、ペダル21の矢印Cと逆方向に変位する被駆動部21Dのペダル側凹部21Fの位置を通過しても、そのペダル側凹部21Fに嵌入しない。そのため、クリック感が発生しない。すなわち、ガイドピン21Gが、ガイド溝23E内を一端の前係合部25Aから他端の後係合部25Bの間を遊動する間、ペダル21の変位に連動しない不感帯が形成される。
なお、ペダル21に踏み込み感(クリック感)が発生してから、ガイドピン21Gが、ガイド溝23E内を一端の前係合部25Aから他端の後係合部25Bの間を遊動して、ペダル21の変位に連動しない不感帯が生じる踏み込み角度の範囲、すなわち、不感帯の幅は、ガイド溝23Eの長さとガイドピン21Gの大きさ(例えば、外径)との関係によって規定され、例えば、ガイドピン21Gがガイド溝23Eの各端部(前係合部25A、後係合部25B)に係合するときの両位置におけるガイドピン21Gの中心間の距離に対応する回転角度Δθ2(図6参照)に対応する。
次に図6〜図8を参照して実施形態のペダル装置20の作用について説明する。図6(a)〜図6(d)は、被駆動部21Dと回動部23Bの変位と、ペダル側凹部21F、ガイド側凹部23D、および凸部材24Aとの位置関係を模式的に示すものである。また、図7はペダル操作におけるペダルの踏込み量の時系列的な変化の一例を示すグラフであり、実施形態のペダル装置20を用いて、図2、図3と同様の踏込みを行ったときのクリック感の発生箇所が示される。また、図8はペダル21の踏込み角θとガイド部材(変位部材)23の角度φとの関係を示すグラフである。
図6(a)〜図6(d)において、被駆動部21Dおよび回動部23Bは、模式的に扇形に描かれており、扇の要である点Oは、シャフト22の回転軸に対応する。また、被駆動部21Dは実線、回動部23Bは破線で示す。
図6(a)は、ペダル21の初期位置から踏込みが開始されて、被駆動部21Dに設けられたガイドピン21Gが、回動部23Bに設けられたガイド溝23Eの踏込み方向側(図6において右側)の端部(前係合部25A)に初めて係合した状態に対応する(図8の点a)。このときペダル側凹部21Fとガイド側凹部23Dは完全に重なり合い1つの溝を形成する。また、凸部材24Aは、ペダル側摺接部21E、およびガイド側摺接部23C上において、踏込み方向側の扇の辺(第1辺)とペダル側凹部21F、23Dとの間であって、ペダル側凹部21F、23Dに隣接する位置にある。
図6(a)の状態から更にペダル21が踏込まれると、被駆動部21Dが図6において時計回りに回転される(図6(a)実線矢印)。このときガイドピン21Gとガイド溝23Eの前係合部25Aとの係合により、回動部23Bが被駆動部21Dと一体的(ずれることなく)に変位し(図6(a)破線矢印)、ペダル21の踏込み角θがクリック点にまで達すると、凸部材24Aがペダル側凹部21Fとガイド側凹部23Dの両方に嵌入し、クリック感が発生する(図7、図8の点P1に対応)。なお、本実施形態においてクリック点は、例えば最大踏込み角の約1/4の角度に設定され、ペダル側凹部21F、23Dは、ペダル側摺接部21E、23Cにおいて、第1辺から円弧の略1/4の位置に設けられる。
クリック点P1から更にペダル21が踏み込まれ、被駆動部21Dおよび回動部23Bが時計回りに回動されると、凸部材24Aはペダル側凹部21F、ガイド側凹部23Dから脱離し、図6(b)の状態となる(図8の点b)。
図6(b)の位置からペダル21が戻され(開放され)、被駆動部21Dの回動方向が反転されると、ガイドピン21Gはガイド溝23Eの前係合部25Aから離接し被駆動部21Dの移動とともにガイド溝23E内を遊動する。ガイドピン21Gは、ガイド溝23Eにおいて、前係合部25Aとは反対側の端部である後係合部25Bに係合するまで、回動部23Bに力を伝達しない。すなわち、この間はペダル踏込み角θの変化に対しガイド部材(変位部材)23の角度φは変化しない。また、このとき回動部23Bは凸部材24Aとの接触による摩擦力により、図6(b)の位置に維持され、被駆動部21Dのみが反時計回りに回動(図6(b)実線矢印)されて被駆動部21Dと回動部23Bの位置にずれが生じる。これにより、被駆動部21Dのペダル側凹部21Fと回動部23Bのガイド側凹部23Dは重ならなくなる。
図6(c)にガイドピン21Gがガイド溝23Eの後係合部25Bにまで達し、ペダル側凹部21Fとガイド側凹部23Dの位置が全く重ならない状態が示される(図8の点c)。なお、図6(c)の状態は、ペダル21がクリック点を超えて戻された状態に対応する。また、被駆動部21Dのペダル側凹部21Fが、図6(b)の位置から図6(c)の位置に戻るまでの間にペダル21はクリック点を通過するが、回動部23Bのガイド側凹部23Dの位置は、ピン21Gが前係合部25Aから後係合部25Bへと移動した分(角度Δθ2)、駆動部21Dのペダル側凹部21Fからずれているため、凸部材24Aの先端はガイド部材23の回動部23Bに設けられたガイド側摺接部23Cの円弧面によりその位置が保持され、被駆動部21Dのペダル側凹部21Fに凸部材24Aの先端が嵌入することはない。すなわち、ペダル踏込み角θがクリック点に達してもクリック感が発生せず、不感帯を形成する。
また、ペダル21が図6(c)の位置から再び踏込まれても、回動部23Bのガイド側凹部23Dはクリック点を超えた位置に維持されているので、ペダル21がクリック点を通過しても、凸部材24Aがペダル側凹部21Fに嵌入されることはなく、クリック点においてクリック感を発生することはない。このような状態はガイド部材23が変位して回動部23Bのガイド側凹部23Dが凸部材24Aの位置に合致するまで維持されるので、一旦、ペダル踏込み位置がクリック点を通過すると、ペダルが略初期位置まで戻されるまで、再度クリック感が発生せず、不感帯が形成される。
図6(d)には、図6(c)の状態からペダル21が初期位置まで戻された状態が示される(図8の点d)。ペダル21が初期位置に向けて回動される間、被駆動部21Dのガイドピン21Gはガイド溝23Eの後係合部25Bに係合し、これにより回動部23Bは、被駆動部21Dとともに被駆動部21Dに対して角度Δθ2だけずれた状態で反時計周りに回転される(図6(c)実線矢印および破線矢印)。なお、初期位置において、回動部23Bは、図6(a)における回動部23Bの位置と同じ位置にある。すなわち、凸部材24Aは回動部材23Bの第1辺とガイド側凹部23Dとの間であって、ガイド側凹部23Dに隣接する位置にあり、被駆動部21Dは、その第1辺が凸部材24Aの先端に位置する。
したがって、図7の曲線Sに沿ってペダル21が踏込まれるとき、クリック感は点P1でのみ発生し、それ以後、ペダル21が初期位置に復帰するまでクリック感を発生することはない。なお、図6(図8)に示された例では、厳密にはペダル21が初期位置の直前まで戻された後、再度ペダル21がクリック点まで踏込まれたときには、クリック感が発生することとなるが、実質上はペダル21が略初期位置に復帰しなければクリック感が発生しない。
次に、図8に示されるペダル21の踏込み角θとガイド部材(変位部材)23あるいは回動部材23Bの角度φとの関係を示すグラフを参照して上記作用を説明する。ペダル操作に対してガイド部材23の角度φは、例えば、平行四辺形C2に沿った経路を矢印方向に辿って推移する。ペダル21が初期位置θ=0(図6(d))から踏込まれると、ペダル21がガイド溝23Eによって規定される角度Δθ2分踏み込まれるまで、ペダル踏込み角θとガイド部材23の角度φとの関係は、水平線H3に沿って推移し、ガイド部材23の角度はφ=0に維持される。
踏込み角がθ=Δθ2に達すると、ガイドピン21Gがガイド溝23Eの前係合部25Aに係合する。すなわち、踏込み時における不感帯の終端部においてガイドピン21Gがガイド溝23Eの前係合部25Aに係合する。また、このときペダル側凹部21F、23Dの位置が一致する。ペダル21が更に踏込まれ踏込み角θが増大すると、ガイド部材23はガイドピン21Gとガイド溝23Eの前係合部25Aとの係合により被駆動部21Dとともに回動されるので、ガイド部材23の角度φは直線L3に沿って増大する。
ペダル操作が反転され、すなわち、ペダル21の踏み込みが解除または踏み込み力が軽減され、踏込み角θが小さくなるときには、ペダル21がガイド溝23Eによって規定される角度Δθ2分戻され、ガイドピン21Gがガイド溝23Eの後係合部25Bに係合するまで、ペダル踏込み角θとガイド部材23の角度φとの関係は、例えば水平線H4に沿って推移し、角度φは一定値に維持される(図6(b)、(c))。その後、更にペダル21が戻されると、ガイド部材23はガイドピン21Gとガイド溝23Eの後係合部25Bとの係合により被駆動部21Dから角度Δθ2ずれた状態で被駆動部21Dとともに回転されるので、ガイド部材23の角度φはペダル踏込み角θの減少とともに、直線L4に沿って減少する。
本実施形態において、凸部材24Aは、ペダル側凹部21F、23Dの位置が一致しているときのみペダル側凹部21F、23Dに嵌入できるので、クリック感はペダル側凹部21F、23Dの位置が一致している直線L3に沿ってガイド部材23の角度φが増大するときのみ、クリック点が設定された踏込み角θ=θ3において発生する。したがって直線L4に沿ってペダル踏込み角θが減少するときなど、ペダル側凹部21F、23Dの位置がずれているときにはクリック感は発生しない。
また、本実施形態では不感帯に対応する角度Δθ2がクリック点に対応する踏込み角θ3に略一致するように設定されているので、ペダル踏込み角θが略初期位置θ=0まで戻らなければ、再びペダル21が踏込まれてもクリック感が発生することはない。なお、Δθ2=θ3のときには、ペダル21が一度完全に初期位置に復帰した後でなければ、踏込み時においてもクリック感が発生することはない。
以上のように、実施形態によれば、ペダル操作において、所定の踏込み角でクリック感(踏込み感)を与えて操作者にペダルの操作位置を正確に認識させるとともに、ペダル位置を微調整する際に不要なクリック感(踏込み感)の発生を防止することができる。そして、クリック感を踏込み時にのみ発生させることができるので、踏込み過ぎを抑制する観点でのインフォメーションの重要度の高い踏込み時にのみ踏込み感を与えることが可能となる。
なお、実施形態では、回動部の形状は被駆動部の形状と同一としたが、回動部の摺接部が上記不感帯(Δθ2)をもって被駆動部の運動に連動される構成であれば、いかなる形状であってもよい。また、実施形態では、ペダルに設けたガイドピンとガイド部材に設けたガイド溝とによって不感帯を形成したが、ペダルの変位が反転される際の不感帯の幅が、踏込み感が与えられる踏込み角度に対応していればよく、その構成は本実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、参考例に類似の構成を用いることも可能である。また、被駆動部にガイド溝を設け、回動部にピンを設ける構成としてもよい。
また、参考例および実施形態では、摺接部に凹部を1つのみ設けたが、凹部を複数設けることも可能である。この場合、複数の凹部の間隔は不感帯の幅以上の大きさに設けられる。例えば、実施形態において、クリック点はペダル最大踏込み角度の1/4に設定されたが、この場合には、凹部を、例えば、最大踏込み角度の1/4毎に3つ摺接部に設けることが考えられる。