JP4933279B2 - 機能性不織布製造方法、機能性不織布、および、立体マスク - Google Patents
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Description
このような要望に対して、従来、リン酸カルシウムなどのような吸着作用を有する物質を担持させた機能性不織布が広く用いられている。
しかしながら、不織布の含浸や不織布へのコーティングなどによってリン酸カルシウムを担持させる方法では、リン酸カルシウムを不織布の繊維に十分固定させるのが困難であり、たとえ、製造段階において大量にリン酸カルシウムを固着させたとしても使用時において脱落して吸着作用を持続させることが困難である。
このことに対し、結合剤を増量してリン酸カルシウムの脱落を防止することも考え得るが、その場合には、リン酸カルシウムの吸着性を結合剤が低下させてしまうばかりでなく、空気の流通性を低下させるおそれを有する。
しかしながら、抄紙する方法で得られた機能性不織布は、通常、通気性に乏しいため、マスクや空気清浄機のフィルターの様な通気性を必要とする用途にそのまま用いることは困難である。
すなわち、従来の機能性不織布製造方法は、通気性に優れ、吸着作用の持続性に優れた機能性不織布を製造することが困難であるという問題を有している。
また、本発明は、通気性に優れ、吸着作用の持続性に優れた機能性不織布の提供を課題としている。
さらに、本発明は、このような通気性に優れ、吸着作用の持続性に優れた立体マスクの提供を課題としている。
また、通気性に優れ、吸着作用の持続性に優れた機能性不織布を着用者の鼻及び口を覆うマスク本体に用いることで、立体マスクを通気性に優れ、吸着作用の持続性に優れたものとし得る。
本実施形態の機能性不織布製造方法においては、(1)パルプとリン酸カルシウムとが水中に分散されたスラリーを作製するスラリー工程、(2)該スラリー工程後に、スラリーを脱水する脱水工程、(3)該脱水工程で脱水されたパルプを乾燥する乾燥工程、(4)該乾燥工程で乾燥されたパルプを粉砕することによりリン酸カルシウムが担持されたパルプ繊維を作製する粉砕工程、(5)該粉砕工程で作製されたパルプ繊維と合成樹脂繊維とを用いてウェブ形成させるウェブ工程、(6)該ウェブ工程にて形成されたウェブを加熱して、前記合成樹脂繊維と前記パルプ繊維とを接着させる接着工程とを実施する。
このスラリー工程における、パルプとリン酸カルシウムとが水中に分散されたスラリーを作製する方法としては、特に限定されるものではなく一般的なスラリー作製方法を採用することができる。
例えば、特公平4−61807号報に記載されている方法により水中に非晶質リン酸カルシウムを析出させ、この非晶質リン酸カルシウムが析出された水中にさらにパルプを含有させてスラリーを作製する方法や、この析出させた非晶質リン酸カルシウムを一旦乾燥させた後に再びパルプと共に水中に分散させてスラリーを作製する方法を採用することができる。
すなわち、水酸化カルシウム懸濁液(以下「石灰乳スラリー」ともいう)に攪拌下で約85%リン酸水溶液を加えてpH11近傍までpHを低下させた後に、約85%リン酸水溶液を2〜4倍に水で希釈したリン酸水溶液を加え、さらに、約85%リン酸水溶液を5倍以上に水で希釈したリン酸水溶液を加えてpHを10〜9に調整することにより水中に非晶質リン酸カルシウムを析出させて非晶質リン酸カルシウムスラリーを作製した後に、この非晶質リン酸カルシウムスラリーにパルプを加える方法は、パルプとリン酸カルシウムとが分散されたスラリーを簡便な工程で作製でき、スラリー工程に要するコストを低減させ得る。
この叩解処理とは、繊維を叩き解す処理であり、より具体的には、パルプ繊維を水中で分散・膨潤させ、機械によって圧潰・せん断、更に繊維表面に毛羽立ちを与える処理である。
この叩解処理には、一般的な叩解処理方法を採用することができ、例えば、ビーターあるいはリファイナーと称する装置を用いて実施することができる。
この叩解処理によって、いわゆる「内部フィブリル化」と呼ばれるパルプの繊維の膨潤および柔軟性の付与、あるいは「外部フィブリル化」と呼ばれるパルプの繊維の2次壁中層の露出などの効果を奏するとともにパルプの繊維を切断することができる。
このフリーネスが上記の範囲であることが好ましいのは、フリーネスが250ml(C.S.F.)未満の場合には、叩解が過剰になりパルプが短く切断されすぎたり、パルプの水切れが悪くなって脱水時間が長くなったりするおそれがあるためである。
また一方で、フリーネスが650mlを超えると、前述したように叩解の効果を十分発揮させることが困難となるためである。
より具体的には、上記例示したような、非晶質リン酸カルシウムを使用することが好ましい。なお、リン酸カルシウムが非晶質リン酸カルシウムであることは、粉末X線回折により結晶相を同定した際に、Joint Committee on Powder Diffraction Standards(「JCPDS」ともいう)にて編集、刊行されているカードNo.18−0303に示されるCa3(PO4)2・xH2OのX線回折パターンと一致することで確認することができる。
なお、本発明において用いられるリン酸カルシウムは、本発明の効果を損ねない範囲において、抗体や酵素などのタンパク質を吸着させて用いることもできる。
パルプに対するリン酸カルシウムの添加量がこのような範囲であることが好ましいのは、パルプ100重量部に対してリン酸カルシウムの添加量が2重量部未満である場合には、最終的に機能性不織布に担持されるリン酸カルシウムの量が少なすぎて、機能性不織布にリン酸カルシウムの十分な吸着作用を付与させることが困難となるおそれがあるためである。
また一方で、パルプ100重量部に対するリン酸カルシウムの添加量を20重量部を超える割合としても、それ以上に機能性不織布に担持されるリン酸カルシウムの量を増大させることが困難であり、リン酸カルシウムの量の添加量に見合う吸着作用を機能性不織布に付与させることが困難となるおそれがあるためである。
この無機材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、アナターゼ型あるいはルチル型酸化チタン等が挙げられる。
この脱水工程における前記スラリーの脱水方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、遠心脱水装置、加圧脱水装置、フィルタープレス等の方法一般的なスラリーの脱水方法を採用することができる。
前記脱水工程で脱水されたパルプを乾燥する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、棚式乾燥機を用いて80℃〜150℃の温度で乾燥させる方法など一般的な乾燥方法を採用することができる。
なお、要すれば、円網抄紙機や長網抄紙機を用いることによって前記脱水工程とこの乾燥工程とを連続的に実施させることも可能である。
前記乾燥工程で乾燥されたパルプを粉砕する方法としては、特に限定されるものではなく、ハンマーミルや、ディスクリファイナーなど一般的な粉砕装置を用いて実施することができる。
このとき粉砕されて形成されるパルプ繊維の多くが長さ0.2〜5mmとなるように粉砕工程を実施することが好ましい。
この粉砕工程によって、パルプ繊維に余分に付着しているリン酸カルシウムをパルプ繊維から脱落させることができる。したがって、この粉砕工程後のパルプ繊維からさらにリン酸カルシウムが脱落することを抑制することができ、機能性不織布の使用中にリン酸カルシウムが脱落して吸着作用が低下することを抑制させ得る。
なお、この時のリン酸カルシウムの脱落量は、乾燥工程直後にパルプが担持しているリン酸カルシウムの量に対して、通常、10〜30%である。
したがって、粉砕工程後のパルプ繊維に対するリン酸カルシウム担持量を設計する際には、粉砕工程前に、パルプにリン酸カルシウムが10〜30%多い量で担持された状態となるように、スラリー工程において作製するスラリー中のパルプとリン酸カルシウムとの割合や、スラリーの固形分濃度を調整すればよい。
前記粉砕工程で形成されたパルプ繊維と合成樹脂繊維とを用いてウェブ形成する方法としては、特に限定されるものではなく、一般的なウェブ形成方法を採用することができる。
例えば、エアレイド法やカード法などを採用することができる。
特に、エアレイド法を用いてウェブ形成された短繊維不織布は、構成する短繊維がランダムに配列しているために、不織布の強度に異方性が生じにくいというメリットがある。
すなわち、合成樹脂繊維と、リン酸カルシウムが担持されたパルプ繊維とをハンマーミルや、ディスクリファイナーなどの一般的な装置を用いて解繊し、この解繊された合成樹脂繊維とパルプ繊維との混合物を空気流に均一分散させながら搬送し、細孔を有するスクリーンから吐出させて、該吐出部の下部に設置され、金属またはプラスチックのネットにより形成されている捕集コンベア上に落下させ且つ捕集コンベアの下部側で空気を吸引して吐出された繊維を捕集コンベア上に堆積させることでウェブを形成させることができる。
このように、エアレイド法でウェブ形成された不織布は、不織布の長さ方向、幅方向および厚み方向へ繊維をランダムに3次元配向させることが可能である。そして、この3次元配向された繊維が後段の接着工程で熱接着されるため層間剥離の発生が抑制され、しかも、均一性が良好で性能のバラツキを少なくすることができる。
このポリオレフィン系の熱接着性合成繊維としては、芯鞘型や偏芯サイドバイサイド型の複合繊維が好適である。この複合繊維の鞘部や繊維外周部を構成するポリオレフィンとしては、ポリエチレンやポリプロピレンなどが挙げられる。芯部や繊維内層部を構成するポリマーとしては、鞘部に用いられたポリオレフィンより高融点であり、後段の接着工程における加熱温度で変化しないポリマーが好ましく、ポリプロピレン、ポリエステルなどが挙げられる。
この鞘部や繊維外周部を構成する低融点ポリマーの融点は110〜160℃であることが好ましい。より好ましくは、120〜155℃である。
したがって、熱接着性合成繊維の太さは用途に応じて選択すればよいが、好ましい繊度は、0.5dt〜50dtであり、さらに、好ましくは、0.8dt〜30dtである。
このような繊度が好ましいのは、50dtを超えると機能性不織布からパルプ繊維が容易に脱落してしまうおそれがあり、0.5dt未満では機能性不織布の生産性が低下するおそれがある。
熱接着性合成繊維の長さがこのような範囲であることが好ましいのは、熱接着性合成繊維の長さが短いとパルプ繊維との混合性がよくなり、より均一な機能性不織布を得られやすくはなるものの、1mm未満になると粉末状に近づき、繊維間結合による網目構造が作りにくくなり機能性不織布からパルプ繊維が容易に脱落してしまうおそれがあり、一方で、15mmより長くなるとウェブ形成における繊維の空気輸送において繊維どうしが絡まりやすくなるためである。
ウェブ形成に用いられる熱接着性合成繊維とパルプ繊維との混合比率がこのような範囲とされるのは、熱接着性合成繊維が20%未満では、機能性不織布が十分な強度とならないおそれがあり、60%を超えて熱接着性合成繊維を用いると、結果、機能性不織布中に占めるリン酸カルシウムの量が少なくなって機能性不織布が十分な吸着作用を発揮できなくなるおそれがあるためである。
ウェブ形成後にウェブを加熱してパルプ繊維と熱接着性合成繊維とを接着させる方法としては、特に限定されるものではなく、一般的な不織布のウェブ形成後の加熱接着方法を採用することができる。
例えば、エアレイドにより形成されたウェブを熱接着性繊維の低融点成分(鞘部や繊維外周部を形成する材料)の融点以上、高融点成分(芯部や繊維内層部を形成する材料)の融点以下の加熱気流の中に導入し熱融着させて熱接着性繊維とパルプ繊維とを接着させる方法(以下「熱風処理」ともいう)や、エアレイドにより形成されたウェブを熱カレンダーローラーまたは熱エンボスローラーなどで圧着することにより加熱して熱接着性繊維とパルプ繊維とを接着させる方法(以下「熱圧処理」ともいう)などが挙げられる。
しかしながら、低融点成分の融点よりも30℃以上高い場合、あるいは高融点成分の融点以上の場合は、熱接着性複合繊維の熱収縮が大きくなり易くいため、熱風処理温度は、例えば、低融点成分にポリエチレンが用いられ、高融点成分にポリプロピレンが用いられているような熱接着性複合繊維を用いる場合には、好ましくは110〜190℃、より好ましくは120〜175℃の温度に加熱された気流中にウェブを導入する熱風処理を実施することが好ましい。
なお、上記熱風処理と熱圧処理とは、適宜、組み合わせて実施することも可能であり、例えば、熱風処理した後に、熱圧処理を加えても良い。
すなわち、熱接着性合成繊維を主体とする繊維を堆積させ、該堆積された繊維上にリン酸カルシウムが担持されたパルプ繊維と熱接着性合成繊維とを混合して堆積させ、再び熱接着性合成繊維を主体とする繊維を堆積させたものに接着工程を実施することにより、パルプ繊維を含まない繊維でリン酸カルシウムが担持されたパルプ繊維がサンドイッチされた3層構造の機能性不織布を作製することができ、同様に2層構造の機能性不織布や、4層以上に積層された機能性不織布を作製することもできる。
図25は、本実施形態にかかる立体マスク1の斜視図である。
図25に示すように、本実施形態にかかる立体マスク1は、着用者の鼻及び口を覆うマスク本体3と、該マスク本体3の両側部に取り付けられた装着紐5とから構成されている。
前記マスク本体3は、着用者の鼻や口を覆うように前方に膨出した立体形状、具体的には略円錐形状を成している。
前記重ね部4は、立体マスク1の着用時に着用者の鼻に当たらない位置、詳しくは着用者の口の前方位置にくるように配されている。
該重ね部4は、マスク本体3の略中心部から下端部まで延在しており、下方に向いて幅が広がるようにテーパー状の形態を成している。
この機能性不織布は、例えば、表面印刷を施してマスク本体3に用いたり、ガーゼなどの他の部材と組み合わせてマスク本体3に用いたりすることができる。
また、機能性不織布には、リン酸カルシウムが非晶質リン酸カルシウムの状態で担持されていることが好ましく、その担持量は、機能性不織布全体に占める非晶質リン酸カルシウムの量が重量で1〜10%であることが好ましい。
しかも、この吸着作用の長期持続性も立体マスクに発揮させることができる。
(実施例1)
(操作1)リン酸カルシウムの合成
工程A.水冷ジャケットおよび攪拌機を備えたタンク(容量300リットル)にイオン交換水180リットルおよび水酸化カルシウム(95%)20kgを投入し、30分間攪拌することによって石灰乳スラリーを調整した。
工程B.これとは別に20.06kgのオルトリン酸(純度75%)をイオン交換水60リットルで希釈し、良く混合した後20℃以下になるまで冷却し、リン酸水を調整した。
工程C.ダイヤフラムポンプを用いて、工程Aの石灰乳の中に0.5 l/minの速度でpHが12になるまで工程Bのリン酸水を加えた。
工程D.次に残ったリン酸水に3倍量のイオン交換水を加え、良く攪拌し全量を0.25 l/minの速度で加えた。
工程E.リン酸の添加終了後2時間攪拌を続けてリン酸カルシウムを析出させリン酸カルシウムスラリーを作製した。
また、試料を硝酸で溶解しICP発光分光分析によりカルシウムおよびリンを定量し、Ca/Pモル比を求めたところCa/Pモル比は1.67であった。
さらに、乾燥粉体のBET多点法による比表面積を求めたところ75 m2/gであった。
操作1によりCa/P=1.67組成に調整されたリン酸カルシウム(Ca3(PO4)2・xH2O)を含むリン酸カルシウムスラリー(固形分濃度10重量%)100kgにパルプ(Weyerhaeuser社製・NB416Kraft)100kgとイオン交換水とを加えて固形分(パルプおよびリン酸カルシウム)濃度を4%に調整した後、ダブルディスクリファイナー((株)芦沢鉄工所 製)を用いてろ水度が600 ml(C.S.F.)になるまで叩解してスラリー工程を実施した。
さらに、このリン酸カルシウムを担持したパルプからなるパルプシートを、KAMAS社製のハンマーミルを用いて、パルプシートの送り速度8.5m/分、粉砕機ブレード回転数3,000RPM、メッシュ6mmの条件で粉砕する粉砕工程を実施し、リン酸カルシウム(Ca3(PO4)2・xH2O)を担持したパルプ繊維を得た。
また、走査型電子顕微鏡(SEM)により繊維表面を観察したところその表面にはリン酸カルシウムが担持されていることを確認した(図1、2)。
また、パルプ繊維をエポキシ系樹脂に埋設しカミソリでカットした断面をSEMにより観察したところ繊維の断面の一部にリン酸カルシウムと思われる粒子状の物質が存在することを確認した(図9〜12)。
ダンウエブ社(デンマーク)製の多層エアレイド装置を用いて下記の様に2層構造の機能性不織布を製造した。
第1層:帝人ファイバー株式会社製熱接着性合成繊維、商品名「F6」、繊度2.2dt、長さ5mm(ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート複合繊維)のみで、目付10g/m2となるよう形成。
第2層:操作2にて作製された、リン酸カルシウムが担持されたパルプ繊維と、熱接着性合成繊維(チッソポリプロ繊維株式会社製、商品名「インタック」、繊度1.7dt、長さ5mm(芯部がポリプロピレンで鞘部が共重合ポリエチレンの複合繊維))との混合状態で目付40g/m2(混合割合=パルプ繊維:熱接着性合成繊維(「インタック」)=30g/m2:10g/m2)となるよう形成。
得られた不織布のSEM観察結果を図3、4に示す。
図3ではリン酸カルシウムを担持したパルプ繊維と、熱融着性繊維とが交絡していることが判る。
また図4は、パルプ繊維部を拡大したものであるが、パルプ繊維の表面にリン酸カルシウムが担持されていることが判る。
リン酸カルシウムスラリーとして、第3リン酸カルシウム(分子式:3Ca3(PO4)2・Ca(OH)2)が固形分濃度10%で含有されている太平化学産業製、商品名「TCP−10U」を用いたこと、ならびに、パルプ100重量部に対しリン酸カルシウムの固形分が15重量部になる様に調整したこと以外は実施例1と同様にスラリー工程を実施した。
なお、「TCP−10U」を吸引ろ過後80℃に設定した乾燥機を用いて20時間乾燥した後に粉末X線回折により結晶相を同定したところCa5(PO4)3(OH)を示すJCPDS カードNo.09−0432のX線回折パターンと一致した。
また、試料を硝酸で溶解しICP発光分光分析によりカルシウムおよびリンを定量し、Ca/Pモル比を求めたところCa/Pモル比は1.73であった。
さらに、乾燥粉体をBET多点法による比表面積を求めたところ、48m2/gであった。
そして、このパルプ繊維と熱接着性合成繊維(「インタック」)とを、(パルプ繊維:熱接着性合成繊維)=(30g/m2:15g/m2)となる混合割合で用いて、単層の機能性不織布(45g/m2)を作製したこと以外は、実施例1と同様にウェブ工程、接着工程を実施して機能性不織布を作製した。
スラリー工程を、リン酸カルシウムスラリー(固形分濃度10重量%)100kgを用いることに代えて、アナターゼ型二酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名「ST−01」(平均粒子径7nm))1kgを9kgのイオン交換水に分散させた二酸化チタン分散液10kgとリン酸カルシウムスラリー90kgとの混合液を用いて実施した以外は実施例1と同様にして機能性不織布を得た。
叩解処理を実施せずにスラリー工程を実施したこと以外、実施例1と同様にして機能性不織布を作製した。
なお、粉砕工程後のパルプ繊維のろ水度(フリーネス)は700mlであった。
リン酸カルシウムが担持されているパルプ繊維に代えて、市販のパルプ繊維(Weyerhaeuser社製、商品名「NB416Kraft」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして不織布を作製した。
そして、この不織布をA4版サイズに切り出したものをリン酸カルシウムスラリー500mlが入ったステンレス製バットに30分間浸漬し、脱水後、100℃の恒温槽中で10時間乾燥することによって不織布にリン酸カルシウムを担持させて機能性不織布を作製した。
リン酸カルシウムスラリー浸漬後(乾燥後)の機能性不織布のリン酸カルシウム担持量は4.7%(2.45g/m2)であった。
得られた不織布をSEM観察したところ、図15、16に示す様にパルプ繊維および熱融着繊維共に繊維の表面にリン酸カルシウムが担持されていた。また、得られた不織布をエポキシ系樹脂に埋設しカミソリでカットした断面をSEMにより観察したところ繊維の内部には粒子状の物質は見られなかった(図17〜20)。
実施例1の操作1で作製されたリン酸カルシウムスラリーをスプレードライヤー(大川原加工機社製、商品名「L−8型」)を用いて、熱風入り口温度250℃ アトマイザー回転数35000rpmの条件で噴霧乾燥し、リン酸カルシウム顆粒を作製した。
このリン酸カルシウム顆粒のBET多点法による比表面積を求めたところ81m2/gであった。
また、試料を硝酸で溶解しICP発光分光分析によりカルシウムおよびリンを定量し、Ca/Pモル比を求めたところCa/Pモル比は1.67であった。
さらに、結晶相を粉末X線回折により同定したところCa3(PO4)2・xH2O(JCPDS カードNo.18−0303)のX線回折パターンと一致した。
この分散液に市販のポリエステル不織布(目付36g/m2)を含浸し、乾燥してリン酸カルシウムを不織布に担持させて機能性不織布を作製した。
得られた機能性不織布のリン酸カルシウム担持量は14.6重量%であった。
リン酸カルシウム顆粒が分散剤、結合剤とともに分散された分散液の使用量を比較例2で用いた量の1/3の量にした以外は比較例2と同様にして、機能性不織布を作製した。
得られた機能性不織布のSEM観察結果を図7、8に示す。
得られた機能性不織布のリン酸カルシウム担持量は5.5重量%であった。
リン酸カルシウム粒子や得られた機能性不織布に対しては、以下のような評価方法を採用した。
JIS L 1013「化学繊維フィラメント糸試験方法」の“8.3繊度 8.3.1正量繊度 B法(簡便法)”に準拠し、繊度(tex)を算出し、デシテックス(dt)にて表示した。
すなわち、初荷重をかけて正確に長さ90cmの試料20本をとり、105℃で10時間乾燥後各試料の質量を量り、次式によって正量繊度(tex)を算出し、デシテックス(dt)にて表示した。
F0=1000×m/L×(100+R0)/100
ここにおいて、各記号は下記を表している。
F0:正量繊度(tex)
L:試料の長さ(m)
m:試料の質量(g)
R0:JIS L 0105の3.1に規定されている公定水分率
JIS P 8121「パルプのろ水度試験方法」の“4.カナダ標準ろ水度試験方法”によりろ水度を測定した。
メノウ乳鉢を用いて試料を粉砕した後、ガラスセルに詰め、リガク電機製X線回折装置、型名「RAD−2C」を用いてCuKα線を用いて管球電圧40kV、電流15mAの条件で2θが5〜70°となる範囲でX線回折を行った。
機能性不織布を150mm×150mmに切りだしたサンプルを、恒量した磁器製のルツボ(直径80mm、高さ60mm)に投入し、電気炉で550℃×5時間の加熱を実施し、冷却後秤量し、加熱前後の重量差から機能性不織布の灰分を求め、求められた灰分の重量を機能性不織布に担持させたリン酸カルシウム重量に換算し、このリン酸カルシウム重量を加熱前の機能性不織布重量で除してリン酸カルシウムの担持量(%)を求めた。
また、リン酸カルシウム重量を不織布の面積(150mm×150mm)で除して、単位面積あたりのリン酸カルシウム担持量(g/m2)を求めた。
(空試験)
気体攪拌用のファンと、表面温度70℃の蒸発皿を備えた約8リットルの密閉容器を用い、この蒸発皿に4μlの酢酸を注入後、30分経過した時点でこの密閉容器内の酢酸の濃度をガス検知菅(ガステック社製、「No.81」)で測定した。
(機能性不織布による吸着性能試験)
機能性不織布を15cm×15cmに切り取って試験片とし、気体攪拌用のファンと、表面温度70℃の蒸発皿を備えた約8リットルの密閉容器中に、この試験片を設置するとともに蒸発皿に4μlの酢酸を注入し、30分経過後の密閉容器内の酢酸の濃度をガス検知菅(ガステック社製、「No.81」)で測定した。
この空試験により観察された酢酸濃度をAc1、機能性不織布を用いた場合の酢酸濃度をAc2としたときに、下記式により酢酸消臭率を計算し、各試験片の酢酸消臭率が大きいものを消臭性能が優れていると判定した。
酢酸消臭率(%)={(Ac1−Ac2)/Ac1}×100(%)
結果を表1に示す。
(空試験)
気体攪拌用のファンと、表面温度70℃の蒸発皿を備えた約8リットルの密閉容器を用い、この蒸発皿に2μlの濃度25%のアンモニア水を注入後、30分経過した時点でこの密閉容器内のアンモニア濃度をガス検知菅(ガステック社製、「No.3L」)で測定した。
(機能性不織布による吸着性能試験)
機能性不織布を15cm×15cmに切り取って試験片とし、気体攪拌用のファンと、表面温度70℃の蒸発皿を備えた約8リットルの密閉容器中に、この試験片を設置するとともに蒸発皿に2μlの濃度25%のアンモニア水を注入し、30分経過後の密閉容器内のアンモニアの濃度をガス検知菅(ガステック社製、「No.3L」)で測定した。
この空試験により観察された酢酸濃度をAn1、機能性不織布を用いた場合の酢酸濃度をAn2としたときに、下記式により酢酸消臭率を計算し、各試験片の酢酸消臭率が大きいものを消臭性能が優れていると判定した。
アンモニア消臭率(%)={(An1−An2)/An1}×100(%)
結果を表1に示す。
図25に示す装置を用いて、空気流量を12 l/分に設定し、不織布を通過させ、機能性不織布を空気が通過する前後における圧力差を差圧計で測定することにより、圧力損失を測定した。
結果を、表1に示す。
なお、機能性不織布を立体マスクのマスク本体に用いる場合には、上記評価において圧力損失が5.0mmH2O(49.033Pa)を超えるとマスク装着者に息苦しさを感じさせ易いことから、上記評価による圧力損失が49Pa以下であることが好ましい。
直径180mm×長さ195mmの円筒状の収容部が形成されたボールミルの内周面に沿って、長さ350mm×幅150mmに切り出した不織布を両面テープを用いて貼り付けた後に、直径16.5mmのYSZ製ボール(ニッカトー社製)を70個投入して蓋をし、44rpmの回転速度で1時間回転させた。
この後不織布を取り出し、両面テープが付着していない部位を採取して灰分を測定し、「(4)リン酸カルシウム担持量の測定」において説明した方法と同様の方法で灰分を測定した。
このボールミルによるリン酸カルシウムの脱落後の灰分と、初期(リン酸カルシウムの脱落前)の機能性不織布の灰分の重量の違いからリン酸カルシウムの脱落性を評価した。
結果を、表1に示す。
一方で、比較例1の機能性不織布においては、リン酸カルシウム脱落試験前後の灰分測定の結果、試験前後で16%の灰分の減少が見られた。
すなわち、本発明の機能性不織布製造方法においては、機能性不織布にリン酸カルシウムを強固に担持させ得ることがわかる。
また、その際に、結合剤を多量に用いる必要性もない。したがって、本発明の機能性不織布製造方法により形成された機能性不織布は、通気性に優れ、吸着作用の持続性に優れていることがわかる。
なお、比較例2、3においては、表1の結果からは、実施例1と同等の通気性が得られると考えられるが、例えば、比較例2では、実施例の機能性不織布に対して、約2.5〜約4倍ものリン酸カルシウム担持量であるにもかかわらず、実施例の機能性不織布よりもアンモニアの吸着作用に劣るものである。
また、比較例3の機能性不織布では、実施例の機能性不織布と同等のリン酸カルシウム担持量であるにもかかわらず、酢酸吸着作用、アンモニア吸着作用のいずれにも劣るものである。
Claims (6)
- リン酸カルシウムが担持されている機能性不織布を作製する機能性不織布製造方法であって、
パルプとリン酸カルシウムとが分散されたスラリーを作製して、該スラリー中に分散されたパルプを乾燥させて粉砕することによりリン酸カルシウムが担持されたパルプ繊維を作製し、該パルプ繊維と合成樹脂繊維とを用いてウェブ形成した後に加熱して、前記合成樹脂繊維と前記パルプ繊維とを接着させることを特徴とする機能性不織布製造方法。 - 前記スラリー中において前記パルプを叩解する叩解処理を前記乾燥前にさらに実施する請求項1記載の機能性不織布製造方法。
- リン酸カルシウムが担持されている機能性不織布であって、
リン酸カルシウムが担持されているパルプ繊維と合成樹脂繊維とが用いられてウェブ形成され、前記パルプ繊維が前記合成樹脂繊維と接着されて形成されており、前記パルプ繊維と前記合成樹脂繊維との合計量に占める前記合成樹脂繊維の割合が重量で20〜60%であり、しかも、前記パルプ繊維は、パルプとリン酸カルシウムとが分散されたスラリーが作製され、該スラリー中に分散されたパルプが乾燥されて粉砕されることにより作製されたものであることを特徴とする機能性不織布。 - 前記パルプ繊維は、前記スラリー中において叩解される叩解処理が施されたものである請求項3記載の機能性不織布。
- 着用者の鼻及び口を覆うマスク本体が備えられており、前記マスク本体が立体形状に形成されている立体マスクであって、
前記マスク本体には、リン酸カルシウムが担持された機能性不織布が用いられており、前記機能性不織布は、リン酸カルシウムが担持されているパルプ繊維と合成樹脂繊維とが用いられてウェブ形成され、前記パルプ繊維が前記合成樹脂繊維と接着されて形成されており、前記パルプ繊維と前記合成樹脂繊維との合計量に占める前記合成樹脂繊維の割合が重量で20〜60%であり、しかも、前記パルプ繊維が、パルプとリン酸カルシウムとが分散されたスラリーが作製されて、該スラリー中に分散されたパルプが乾燥されて粉砕されることにより作製されたものであることを特徴とする立体マスク。 - 前記パルプ繊維は、前記スラリー中において叩解される叩解処理が施されたものである請求項5記載の立体マスク。
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