以下、本発明の湿式抄造体の製造方法について詳細に説明する。本発明の製造方法は、有色粒子、繊維状物、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー及び水を含むスラリーから、湿式抄造により抄造成形体を製造する方法である。先ず、これら各成分について説明する。
本発明で用いられる有色粒子は、白色ではない有色の粒子であり、代表的には活性炭が挙げられる。活性炭は、黒色の粒子で、細孔構造を有する多孔性物質で大きな比表面積を有し、高い吸着性を有する特徴があり、消臭剤や保水剤として機能し得る。活性炭の原料には通常、ヤシ殻、木材等の炭化物、石炭が使用されるが、本発明では何れでも良い。また活性炭の賦活法には、水蒸気や二酸化炭素により高温で処理するガス賦活法、あるいは塩化亜鉛、リン酸、濃硫酸処理等で処理する薬品賦活法があるが、本発明では何れの方法により得られたものでも良い。また活性炭は、形状によって繊維状活性炭と粒子状活性炭とに分けられ、更に粒子状活性炭として破砕炭、造粒炭、顆粒炭及び球状炭が挙げられ、その他粉末状の活性炭微粒子があるが、本発明では何れでも良い。
活性炭以外の有色粒子としては、例えば、カーボンブラック、木炭等の有色顔料;鉄粉、アルミニウム粉、亜鉛粉、マンガン粉、マグネシウム粉、カルシウム粉等の金属粉(被酸化性金属粉)等が挙げられる。本発明では、有色粒子の1種(例えば活性炭)を単独で又は2種以上(例えば活性炭及び金属粉)を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられる繊維状物としては、湿式抄造可能なものであれば良く、その例としては有機天然繊維状物や有機合成繊維状物が挙げられる。有機天然繊維状物としては、植物繊維、動物繊維等を用いることができる。植物繊維としては、例えば、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプ繊維;楮、三椏、雁皮等の靱皮繊維;藁、竹、ケナフ、麻、コットン等の非木材パルプ繊維等が挙げられる。動物繊維としては、例えば、羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルカパ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維、等が挙げられる。一方、有機合成繊維状物としては、例えば、アセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックス、塩化ゴム及び塩酸ゴム等の半合成繊維等が挙げられる。また、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、デンプン、ポリビニルアルコール若しくはポリ酢酸ビニル又はこれらの共重合体若しくは変性体等の単繊維、又はこれらの樹脂成分を鞘部に有する芯鞘構造の複合繊維を用いることができる。これらの繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
繊維状物のフリーネスは、有色粒子の定着率等に少なからず影響を及ぼす。フリーネスは、JIS P8121に規定するカナダ標準ろ水度(C.S.F.)で示される値であり、繊維状物の叩解(水の存在下で繊維状物を機械的に叩き、磨砕する処理)の度合いを示す値である。繊維状物の叩解は、繊維状物の分散液に対して、ビーダー、ディスクリファイナー等の公知の叩解機を用いて常法に従って実施することができる。通常、フリーネスの値が小さいほど、叩解の度合いが強く、叩解による繊維状物の損傷が大きくてフィブリル化が進行している。フィブリル化が進行している繊維状物においては、該繊維状物を形成する比較的大きなフィブリルが適度に解れて、繊維状物表面に微細なミクロフィブリルが毛羽立った状態となっているところ、この毛羽立ったミクロフィブリルによって形成された空間は、活性炭の如き有色粒子の保持部として機能し、該空間内に入り込んだ有色粒子は、極端な移動や脱落を起こし難い。従って、フリーネスの値が比較的小さくフィブリル化が進行している繊維状物を用いることは、有色粒子の定着率の向上に有効である。しかし、繊維状物のフリーネスの値が小さすぎると、スラリーを抄紙機に導入して湿式抄造する抄造工程において、湿式抄紙機のワイヤー上に形成される湿潤ウエブの脱水速度が著しく低下するため、脱水不良による生産性の低下を招くおそれがある。以上のことから、本発明で用いられる繊維状物のフリーネスは、好ましくは300ml以上、更に好ましくは400ml以上、そして、好ましくは740ml以下、更に好ましくは700ml以下、より具体的には、好ましくは300〜740ml、更に好ましくは400〜700mlである。
本発明で用いられるカチオン性ポリマーとしては、従来公知の湿潤紙力増強剤を用いることができる。例えば、エポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂(PAE)、尿素−ホルマリン樹脂、メラミン−ホルマリン樹脂、ジアルデヒドデンプン、ポリエチレンアミン、メチロール化ポリアミド等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明で用いられるカチオン性ポリマーは、湿潤紙力増強剤として使用することができ、抄造成形体の湿潤強度(湿潤引張強度等)を向上させることができる。カチオン性ポリマーとしては、PAEが好ましい。
本発明で用いられるアニオン性ポリマーとしては、従来公知の乾燥紙力増強剤を用いることができる。例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びその塩、アニオン性ポリアクリルアミド系樹脂(PAM)及びその塩、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。CMCの塩、アニオン性PAMの塩としては、それぞれ、ナトリウム塩が主に用いられる。本発明で用いられるアニオン性ポリマーは、乾燥紙力増強剤として使用することができ、抄造成形体の乾燥強度(乾燥引張強度等)を向上させることができる。アニオン性ポリマーとしては、アニオン性PAM又はその塩が好ましい。更に、カチオン性ポリマーを添加した後、アニオン性PAM又はその塩を添加することで、有色粒子の繊維状物への定着性を向上させることができる。
アニオン性ポリマーの重量平均分子量は、有色粒子の繊維状物への定着性の向上の観点から、好ましくは500万以上、更に好ましくは1000万以上、そして、好ましくは3000万以下、更に好ましくは2000万以下、より具体的には、好ましくは500万以上3000万以下、更に好ましくは1000万以上2000万以下である。
また、同様の観点から、アニオン性ポリマーは弱アニオン性又は中アニオン性であることが好ましい。ここで、弱アニオン性とは、コロイド当量値(meq/g)で0より小さく、−2.0より大きいものをいう。また、中アニオン性とは、コロイド当量値(meq/g)で−2.0〜−5.0であるものをいう。つまり、本発明で好ましく用いられるアニオン性ポリマーは、コロイド当量値(meq/g)が0〜−5.0の範囲にあるものである。特に、コロイド当量値(meq/g)が0〜−2.0の範囲にあるもの、即ち、弱アニオン性のアニオン性ポリマーが好ましい。コロイド当量値の測定方法は以下の通りである。
<コロイド当量値の測定方法>
50ppm水溶液(純水で希釈)に希釈したアニオン性ポリマーを100mlメスシリンダーに採取して200mlビーカーに移す。回転子を入れて攪拌しながら2N水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業(株)製)0.5mlをホールピペットで加えた後、N/200メチルグリコールキトサン溶液(和光純薬工業(株)製)5mlをホールピペットで加える。トルイジンブルー指示薬(和光純薬工業(株)製)を2〜3滴入れ、N/400ポリビニルアルコール硫酸カリウム溶液(和光純薬工業(株)製)で滴定する。青色が赤紫色に変わり数秒経っても赤紫色が消えない点を終点とする。同様に純水にて空試験を行う(ブランク)。
コロイド当量値(meq/g)=〔アニオン性ポリマーの測定値(ml)−空試験の滴定量(ml)〕/2
本発明におけるカチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとの好ましい組み合わせとしては、例えば、PAE(カチオン性ポリマー)とアニオン性PAMの塩(アニオン性ポリマー)との組み合わせが挙げられる。斯かる組み合わせにおいて、両ポリマーの使用質量比(抄造成形体における含有質量比)は、PAE:アニオン性PAMの塩=40:1〜10:1の範囲にあることが好ましい。
本発明の製造目的物である抄造成形体には、前記必須成分(有色粒子、繊維状物、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマー)以外の他の成分を含んでいても良い。この他の成分としては、例えば、地合調整剤、剥離剤、タルク等の填料、抗菌剤、pH調整剤、耐水化剤、消泡剤等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の製造目的物である抄造成形体に含有可能な他の成分の一例として、金属担持多孔質粒子が挙げられる。金属担持多孔質粒子は消臭剤として機能し得る。ここでいう消臭剤とは、臭気に直接作用して(即ち臭気を吸着、中和、分解等して)消臭効果を発現するもののみならず、例えば抗菌性物質のように、臭気の発生源に作用して臭気の発生を抑制することで消臭効果を発現するものも含む。活性炭(有色粒子)は前者に該当し、金属担持多孔質粒子は後者に該当する。金属担持多孔質粒子は白色である。活性炭と金属担持多孔質粒子とを併用することにより、抄造成形体に優れた消臭機能を付与することが可能となる。以下、この金属担持多孔質粒子について説明する。
金属担持多孔質粒子は、金属又は金属イオンを担持(含有)している多孔質粒子であり、多孔質粒子が無機多孔質粒子であるもの(金属担持無機多孔質粒子)と有機多孔質粒子であるもの(金属担持有機多孔質粒子)とに大別される。本発明では何れの金属担持多孔質粒子も使用可能であり、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明で用いられる金属担持無機多孔質粒子において、金属を担持する無機多孔質粒子としては、例えば、カンクリナイト様鉱物、ゼオライト、酸化亜鉛、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
特に好ましい金属担持無機多孔質粒子は、抗菌性を有する金属を含むカンクリナイト様鉱物(以下、金属置換カンクリナイト様鉱物ともいう)である。金属置換カンクリナイト様鉱物は、カンクリナイト様鉱物中の金属元素が、抗菌性を有する金属元素で置換されたものである。金属置換カンクリナイト様鉱物は、広い消臭スペクトルをもち、種々の悪臭、例えばアンモニア、アミン、ピリジン等のアルカリ性臭、低級脂肪酸、メルカプタン等の酸性臭、その他エステル、ケトン、アルデヒド等の中性臭からなる悪臭に対して良好な消臭作用を有する。また、金属置換カンクリナイト様鉱物の粒子は、テトラポッド状、金平糖状ないしウニ状の形状を有し、その形状に起因してパルプなどの繊維材料への付着性が極めて良いという利点も有している。
カンクリナイト様鉱物は、アルミノシリケート系化合物に類似の構造を有するものである。本発明においてカンクリナイト様鉱物とは、JCPDS(ジョイント・コミッティ・オン・パウダー・ディフラクション・スタンダーズ)No.20−379、20−743、25−776、25−1499、25−1500、30−1170、31−1272、34−176、35−479、35−653、38−513、38−514、38−515及び45−1373からなる群より選ばれる1種以上のX線回折パターンを有するものをいう。X線回折パターンにおいて、d=0.365±0.015nmに主たるピークを有するものが好ましい。
金属置換カンクリナイト様鉱物における抗菌性を有する金属としては、例えば銀、銅、亜鉛、ジルコニウム等が挙げられる。金属置換カンクリナイト様鉱物としては、本出願人の先の出願に係る特開2005−232654号公報及び特開2006−307404号公報に記載のものを用いることができる。本発明で好ましく用いられる金属担持無機多孔質粒子としては、例えば、銀カンクリナイト様鉱物、銀ゼオライト、銅ゼオライト等が挙げられる。
また、本発明で用いられる金属担持有機多孔質粒子において、金属を担持する有機多孔質粒子としては、例えば、2,6−ジフェニルーp−フェニレンオキサイドベースポリマー、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−2−ビニルピリジン共重合体等が挙げられる。更に、該金属担持有機多孔質粒子として特開2008−62029号公報及び特開2008−63711号公報に記載のものを用いることができる。
特に好ましい有機多孔質粒子は、架橋性ビニルモノマー及びヘテロ芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られる粒子(以下、ビニル共重合粒子ともいう)である。即ち、特に好ましい金属担持(有機)多孔質粒子は、ビニル共重合粒子で且つ金属イオンを担持している粒子である。とりわけ、BET比表面積が10m2/g以上のビニル共重合粒子は、大きなBET比表面積による物理消臭能を備えており、該ビニル共重合粒子を含んで構成される金属担持有機多孔質粒子は、該ビニル共重合粒子による物理消臭能と、担持した金属イオンによる化学消臭能とを兼ね備え、格段に高い消臭能を持つため、本発明で好ましく用いられる。
前記架橋性ビニルモノマーは、ビニル基を二つ以上有するモノマーである。架橋性ビニルモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジビニルベンゼンが好ましい。モノマー成分中の架橋性ビニルモノマーの割合が大きいほど、BET比表面積の大きいビニル共重合粒子が得られる。従って、全モノマー成分中における架橋性ビニルモノマーの割合は、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。該割合の上限は、98質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
前記ヘテロ芳香環を有するビニルモノマーは、ビニル基及びヘテロ芳香環を含む化合物であれば特に制限されない。ヘテロ芳香環とは、環状の有機化合物による芳香環であって、構成要素として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等を含むものをいう。窒素原子を含むものとしては、ピリジン、ピロール、キノリン等の窒素原子を環に1個有するもの、イミダゾール、ピリミジン、ピラジン、ピラゾール等の窒素原子を環に2個有するものが例示される。また、チオフェン、チアゾール等の硫黄原子を環に有するもの、フラン等の酸素を環に有するものが例示される。ヘテロ原子の有する孤立電子対が悪臭物質の吸着を高め、また、金属イオンの化学結合に関与するものと考えられる。これらの中でも、ピリジン、イミダゾール、ピリミジンが好ましい。ヘテロ芳香環を有するビニルモノマーとしては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリミジン等が挙げられ、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンが好ましい。
前記ビニル共重合粒子においては、モノマー成分として、架橋性ビニルモノマー及びヘテロ芳香環を有するビニルモノマー以外に、これらと共重合可能な他のモノマーを用いることができる。該他のモノマーとしては、例えば、芳香族系ビニルモノマー、不飽和酸エステル、不飽和酸等が挙げられる。芳香族系ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド等が例示され、不飽和酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が例示され、不飽和酸としては、(メタ)アクリル酸が例示される。また、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等も用いることができる。これらの中では芳香族系ビニルモノマーが好適であり、特にスチレンが好ましい。尚、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
前記ビニル共重合粒子(有機多孔質粒子)に担持(含有)される金属イオンとしては、例えば、銀イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、コバルトイオン、ジルコニウムイオン、セリウムイオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、白金イオン等が挙げられ、銀イオン、亜鉛イオンが好ましい。ビニル共重合粒子は、そのポリマー表層に存在するヘテロ芳香環との配位結合により、その細孔表面に金属イオンを担持させることが可能である。この場合、アンモニア、アミン類、メルカプタン類、脂肪酸等の悪臭ガスは、金属イオンとの配位結合によりビニル共重合粒子に吸着される。ビニル共重合粒子における金属イオン含有率は、ビニル共重合粒子に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。ビニル共重合粒子における金属イオン含有率の上限は、特に制限されないが、ビニル共重合粒子に対して、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。ビニル共重合粒子における金属イオン含有率は、例えば、モノクロ励起EDX蛍光X線を用いて測定することができる。
前記ビニル共重合粒子(有機多孔質粒子)に金属イオンを担持させるために用いられる金属塩は、水又は有機溶剤に溶解するものであれば特に制限されない。該金属塩としては、例えば、硝酸銀、硝酸アルミニウム、硝酸コバルト、硝酸ジルコニウム、硝酸セリウム、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸銅、硝酸ニッケル、酢酸銀、塩化セリウム、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化亜鉛、塩化銅、過塩素酸銀、過塩素酸アルミニウム、過塩素酸白金、過塩素酸亜鉛、過塩素酸ジルコニウム、硫酸銀、硫酸アルミニウム、硫酸銅、硫酸亜鉛等が挙げられ、これらを単独で用いても、2種類以上用いてもよい。特に好ましくは硝酸銀、酢酸銀、及び塩化亜鉛である。
前記ビニル共重合粒子(有機多孔質粒子)のBET比表面積は、架橋性ビニルモノマーの割合や、重合に用いる有機溶剤の選定により任意に設定することができるが、大きいほど消臭効果が高い。高い物理消臭能を有する観点から、BET比表面積は10m2/g以上であり、50m2/g以上が好ましく、200m2/g以上がより好ましく、300m2/g以上が更に好ましい。BET比表面積の上限は特に限定されないが、800m2/g以下が好ましい。BET比表面積は、次のようにして求められる。
<BET比表面積の算出方法>
フローソーブ2300(島津製作所製)を用いてBET1点法により求めた。吸着ガスは、窒素30体積%、ヘリウム70体積%のガスを用いた。試料の前処理として、120℃で10分間、吸着ガスの流通を行った。その後、試料が入ったセルを液体窒素で冷却し、吸着完了後室温まで昇温し、脱離した窒素量から試料の表面積を求めた。試料の質量で除して比表面積を求めた。
前記ビニル共重合粒子(有機多孔質粒子)は、水中油型懸濁重合法又は沈殿重合法により製造することが好ましい。
図1には、本発明の抄造成形体の製造方法の一実施態様の概略工程が示されている。本実施態様の製造方法においては、先ず、製造目的物である抄造成形体の必須成分(有色粒子、繊維状物、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー及び水)の一部のみを含む、スラリーの中間体を調製する(スラリー中間体調製工程)。スラリーの中間体は、繊維状物及び水を含むが、有色粒子、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含まないものである。
スラリーの中間体の調製は、繊維状物(例えば、繊維状物が凝集してシート状になっている繊維シート)を水に添加し混合することにより行う。混合は、容器内で攪拌して行う。攪拌方法としては、モーター、エンジン等の動力により攪拌翼を回転させる方法が挙げられる。スラリーの中間体の調製は、本実施態様のように、湿式抄紙において通常用いられるパルパー等の離解機を用いて常法に従って行うことができる。
次いで、スラリーの中間体を叩解機に導入して、該スラリーの中間体に含まれる繊維状物の叩解を行う。叩解は、ビーター、ディスクリファイナー等の公知の叩解機を用いて常法に従って行うことができる。この叩解により、前述したように、繊維状物のフリーネスを300ml以上に調整することが好ましい。
次いで、叩解された繊維状物を含むスラリーの中間体を、水を用いて希釈する。スラリーの中間体の希釈は、スラリーの中間体を、混合に用いた容器(離解機)から他の容器(希釈用タンク)に移す過程又は移した後に水を加えることにより行うことができ、通常、スラリーの中間体は容器内に一時的に滞留される。スラリーの中間体の希釈は、スラリーの中間体の固形分濃度(繊維濃度)を一度に抄造に用いる濃度まで希釈しても良く、あるいは多段階で希釈しても良い。スラリーの中間体を多段階で希釈する場合には、例えば、互いに連結された複数個の希釈用タンクを備えた公知の希釈システムを用いることができる。希釈用タンク内の底部又はその近傍には、通常、モーター、エンジン等の動力により回転する攪拌翼が取り付けられており、この攪拌翼により、タンク内の液を均一混合することができる。
希釈前のスラリーの中間体の固形分濃度(繊維濃度)、即ち、繊維状物の叩解後(フリーネスの調整後)のスラリーの中間体の固形分濃度(繊維濃度)は、好ましくは1量%以上、更に好ましくは2質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、より具体的には、好ましくは1〜10質量%、更に好ましくは2〜5質量%である。また、希釈後のスラリーの中間体の固形分濃度(繊維濃度)、即ち、有色粒子の添加前のスラリーの中間体の固形分濃度(繊維濃度)は、好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、より具体的には、好ましくは0.05〜3質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%である。
このように、本実施態様におけるスラリー中間体調製工程は、繊維状物の離解及び叩解並びにスラリーの中間体の希釈という複数(3つ)の工程を含んで構成されており、それら複数の工程のうちの少なくとも希釈は、スラリーの中間体を一時的に滞留させる容器(希釈用タンク)を用いて行われる滞留工程である。従って、本実施態様におけるスラリー中間体調製工程は、スラリーの中間体を一時的に滞留させる工程を含む。
尚、抄造成形体に前記必須成分(有色粒子、繊維状物、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマー)以外の他の成分を含有させる場合、その他の成分は、スラリー中間体調製工程においてスラリーの中間体に添加することができる。例えば、抄造成形体に前述した金属担持多孔質粒子(金属担持無機多孔質粒子、金属担持有機多孔質粒子)を含有させる場合、その金属担持多孔質粒子は、スラリー中間体調製工程におけるスラリーの中間体の希釈工程で添加することができる。
次いで、こうして所定の固形分濃度(繊維濃度)に調整されたスラリーの中間体に有色粒子を添加する(有色粒子添加工程)。この有色粒子の添加は、前述したスラリー中間体調製工程の実施装置と後述する分散・精製工程の実施装置(スクリーン装置等)とを結ぶ配管内を流れる、スラリーの中間体に対して実施し、且つ該スラリーの中間体は、有色粒子が添加されてから該分散・精製工程の実施装置に導入されるまでの間は、滞留せずに流れるようにする。本実施態様においては、有色粒子が添加されてから分散・精製工程の実施装置に導入されるまでの間にスラリーの中間体が滞留せずに流れるようにするために、有色粒子の添加箇所と分散・精製工程の実施装置との間に位置する配管には、タンクの如き液の滞留箇所を設けず、スラリーの中間体が滞留せずに該分散・精製工程の実施装置に向かって一定の流量で流れるようにしている。有色粒子の添加は、固形状(粉末状)の有色粒子をそのままスラリーの中間体に添加する方法によって実施しても良く、あるいは有色粒子を水に分散させて懸濁液を調製し、その懸濁液をスラリーの中間体に添加する方法によって実施しても良い。また、有色粒子の分散性を高める等の観点から、スラリー中間体調製工程の実施装置と分散・精製工程の実施装置とを結ぶ配管における、有色粒子の添加箇所(図1中符合Aで示す箇所)と該分散・精製工程の実施装置との間に位置する部分に、スタティックミキサー等の攪拌装置(スラリーの中間体を滞留させずに攪拌し得る装置)を配置しても良い。
ここで、「スラリー中間体調製工程の実施装置」は、有色粒子が添加されるスラリーの中間体を調製するのに用いられる装置であり、本実施態様では、離解機、叩解機及び希釈用タンクを含んで構成される装置である。また、「スラリー中間体調製工程の実施装置と分散・精製工程の実施装置とを結ぶ配管」は、スラリー中間体調製工程の実施装置が本実施態様のように複数の工程(離解、叩解、希釈)に対応した複数の手段(離解機、叩解機、希釈用タンク)を含んで構成されている場合は、該スラリー中間体調製工程の実施装置における、分散・精製工程の実施装置(スクリーン装置等)に最も近接する手段〔分散・精製工程の直前に施される工程で用いる手段。本実施態様では希釈に用いる容器(希釈用タンク)。〕と該分散・精製工程の実施装置とを結ぶ配管である。
有色粒子の添加量は、有色粒子の種類、抄造成形体の用途等に応じて適宜設定される。例えば有色粒子が活性炭の場合、活性炭の添加量は、活性炭を添加することによる作用効果(消臭効果等)と活性炭の脱落防止とのバランスの観点から、抄造成形体の坪量に対して、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、より具体的には、好ましくは0.1〜20質量%、更に好ましくは0.5〜10質量%である。
次いで、有色粒子添加工程後のスラリーの中間体中の成分(有色粒子及び繊維状物)を分散混合させ且つ該スラリーの中間体を精製する(分散・精製工程)。この分散・精製工程では、該工程の実施装置を用い、有色粒子と繊維状物とを均一に分散混合させると共に、異物の除去(精製)を行う。分散・精製工程の実施装置としては、通常の湿式抄紙においてスラリー中の成分の分散混合及び精製に利用可能な装置を特に制限無く用いることができ、例えば、スクリーン装置、クリーナー装置、あるいは両装置の組み合わせを用いることができる。例えば、分散・精製工程の実施装置としてスクリーン装置とクリーナー装置との組み合わせを用いた場合、先ず、スクリーン装置にスラリーの中間体を導入し、該スクリーン装置における形状の異なる複数のスクリーンバスケットに該スラリーの中間体を通すことで、乱流を形成させて有色粒子と繊維状物との均一分散混合及び異物の除去を行い、次に、円錐形状のクリーナー装置に該スラリーの中間体を導入し、遠心分離の原理により、有色粒子と繊維状物との均一分散混合及び比重差による異物の除去を行うこともできる。
このように、本実施態様においては、活性炭等の有色粒子を、スラリーの中間体を一時的に滞留させる工程(希釈)を含むスラリー中間体調製工程と、その後のスクリーン装置等を用いた分散・精製工程との間において、スラリーの中間体が滞留せずに一定の流量で流れており且つ有色粒子が添加されてからスクリーン装置等(分散・精製工程の実施装置)に導入されるまでの間も滞留せずに一定の流量で流れる箇所にて、スラリーの中間体に添加しており、そうすることによって、以下に説明するように、特許文献1及び2に記載されているように希釈前のスラリーの中間体に有色粒子を添加する場合に比して、スラリーの中間体における有色粒子の分散性が向上し、製造目的物である抄造成形体の色相が安定するようになる。
特許文献1及び2に記載されているように〔後述する比較例2(図3参照)のように〕、希釈前のスラリーの中間体に有色粒子として活性炭を添加した場合、その後のスラリーの中間体の希釈において、活性炭が添加されたスラリーの中間体は、底部又はその近傍に攪拌翼を備えた希釈用タンク内に一時的に滞留されるところ、その滞留の初期(抄造成形体の製造開始の初期)においては、タンク内がスラリーの中間体でほぼ満たされ、その液面が攪拌翼から比較的離れた状態にあるため、攪拌翼によるスラリーの中間体全体の攪拌が不十分となり易く(攪拌翼近傍は十分に攪拌されるが、液面近傍は攪拌が不十分となり易く)、結果として、スラリーの中間体中の活性炭は、比重差によりスラリーの中間体の液面及びその近傍に偏在する。しかし、スラリーの中間体の滞留開始(抄造成形体の製造開始)から一定の時間が経過し、タンク内のスラリーの中間体が消費されて減少し、その液面が攪拌翼に近づくと、攪拌翼によってスラリーの中間体全体が十分に攪拌されるようになり、結果として、滞留の初期における活性炭の偏在は解消され、活性炭はスラリーの中間体中に均一に分散される。その後、タンク内のスラリーの中間体の減少量が一定量を超えると、タンク内にスラリーの中間体及び/又は水が補充されて、タンク内は滞留の初期と同じ状態になり、以降、前述した活性炭の分散状態の変化が繰り返される。
このように、希釈前のスラリーの中間体に有色粒子として活性炭を添加すると、その後の希釈において、希釈用タンク内に滞留しているスラリー中間体中の活性炭の分散状態が経時により変化するため、その後の抄造工程で使用されるスラリーにおける活性炭の濃度が経時により変化するようになり、結果として、製造目的物である抄造成形体の色相(活性炭の黒色に起因する色相)が安定しないという不都合を招くことになる。
これに対し、本実施態様においては、分散・精製工程に導入される前の希釈後のスラリーの中間体に対し、スラリーの中間体が滞留せずに一定の流量で流れており且つ有色粒子が添加されてから分散・精製工程の実施装置に導入されるまでの間も滞留せずに一定の流量で流れる箇所にて、活性炭等の有色粒子を添加しているため、スラリーの中間体における有色粒子の分散状態が経時により変化することがなく、従って、抄造工程で使用されるスラリーにおける有色粒子の濃度が経時により変化することがなく、製造目的物である抄造成形体の色相が安定し、高品質の抄造成形体を安定的に供給することができる。
また、有色粒子を使った抄造成形体の製造終了後に、同じ製造設備を用いて、該有色粒子を含まない別の抄造成形体を製造する場合、その別の抄造成形体に該有色粒子が混入することを防止するために、別の抄造成形体の製造に先立って、製造ラインをストップさせて製造設備を洗浄する必要があるところ、本実施態様のように、希釈を含むスラリー中間体調製工程後に有色粒子を添加した場合には、希釈用タンク等の、スラリー中間体調製工程で使用する製造設備に有色粒子が付着することがないため、該製造設備の洗浄作業が不要となり、洗浄時間の短縮が図られ、結果として、製造ラインの稼働率の低下が抑制され、抄造成形体を効率良く製造することが可能となる。
次いで、分散・精製工程後のスラリーの中間体に、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーをこの順で添加して、スラリーを調製する(スラリー調製工程)。これら両ポリマーの添加は、分散・精製工程の実施装置(スクリーン装置等)と後述する抄造工程で用いる抄紙機とを結ぶ配管内を流れる、スラリーの中間体に対して実施する。両ポリマーの添加順序及び添加箇所をこのように設定することにより、繊維状物のフロック(凝集構造)の形成による有色粒子の抱え込み、及びフロック内における有色粒子の均一な凝集が促進され、結果として、有色粒子の繊維状物への定着性が向上すると共に、有色粒子の不均一な凝集に起因する、抄造成形体の色相の不安定化や有色粒子の脱落等の不都合が効果的に防止される。このような両ポリマーの添加に起因する作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、分散・精製工程の実施装置と抄紙機とを結ぶ配管における、カチオン性ポリマーの添加箇所(図1中符合Bで示す箇所)とアニオン性ポリマーの添加箇所(図1中符合Cで示す箇所)との間に、スタティックミキサー等の攪拌装置(スラリーの中間体を滞留させずに攪拌し得る装置)を配置しても良い。
カチオン性ポリマーを添加してからアニオン性ポリマーを添加するまでの時間は、両ポリマーの添加に起因する作用効果をより確実に奏させるようにする観点から、好ましくは0.1秒以上、更に好ましくは1秒以上、そして、好ましくは60秒以下、更に好ましくは30秒以下、より具体的には、好ましくは0.1〜60秒、更に好ましくは1〜30秒である。
同様の観点から、カチオン性ポリマーの添加箇所からアニオン性ポリマーの添加箇所までの配管の長さ、即ち、カチオン性ポリマーが添加されてからアニオン性ポリマーが添加されるまでのスラリーの中間体の流動距離は、好ましくは1m以上、更に好ましくは2m以上、そして、好ましくは30m以下、更に好ましくは20m以下、より具体的には、好ましくは1〜30m、更に好ましくは2〜20mである。
カチオン性ポリマーの添加量は、抄造成形体の坪量に対して、好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、そして、好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、より具体的には、好ましくは0.1〜2質量%、更に好ましくは0.2〜1.5質量%である。また、アニオン性ポリマーの添加量は、抄造成形体の坪量に対して、好ましくは0.001質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、そして、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、より具体的には、好ましくは0.001〜1質量%、更に好ましくは0.005〜0.5質量%である。
次いで、スラリー調製工程で得られたスラリーを抄紙機に導入して湿式抄造する(抄造工程)。尚、調製直後(アニオン性ポリマーの添加直後)のスラリーを抄紙機に導入すると、フロックの形成が十分になされないままスラリーが湿式抄造され、有色粒子の定着性の向上効果が低下するおそれがあるため、アニオン性ポリマーが添加されたスラリーが抄紙機に到達するまでの時間は、ある程度とるようにした方が好ましい。具体的には、該時間は、0.5秒以上、更に好ましくは2秒以上、そして、好ましくは60秒以下、更に好ましくは30秒以下、より具体的には、好ましくは0.5〜60秒、更に好ましくは2〜30秒である。
湿式抄造は、公知の抄紙機を用いて常法に従って実施することができる。湿式抄造は、スラリーから繊維状物を抄いて繊維ウエブとしたものを搬送しながら乾燥する工程を有し、通常、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等に分けられ、順次実施される。湿式抄造は、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、ハイブリッド抄紙機又は丸網抄紙機等の抄紙機を用いて常法に従って実施することができる。
以上の工程により、製造目的物である抄造成形体が得られる。本発明の製造方法により製造された抄造成形体は、そのまま各種用途に用いることもできるが、これを破断片状に小さく切り刻んで使用することもできる。シート状又はその破断片状の抄造成形体は、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、吸収性パッド等の吸収性物品の構成材料、壁紙、シーツ、押入シート、箪笥シート、下駄箱シート、マット、靴インソール、マスク、フィルター類、ラッピング食品の中敷シート等として使用することができる。シート状の抄造成形体を、吸収性物品の構成材料として用いる場合には、シート状の抄造成形体を、例えば表面シートと吸収体との間、該吸収体内、又は該吸収体と裏面シートとの間に配することができる。また、シート状の抄造成形体で、綿状パルプや吸水性ポリマー等の吸収性素材(吸収性コア)を被覆して吸収体となし、該吸収体を吸収性物品に用いることもできる。表面シートは、吸収性物品の使用時に使用者の肌に対向する側に配されるものであり、一般に液透過性である。吸収体は、表面シートと裏面シートとの間に配されるものであり、一般に液保持性である。裏面シートは、吸収体を挟んで、表面シートと反対の側、つまり使用者の肌から遠い側に配されるものであり、一般に撥水性ないし液不透過性である。
本発明によれば、低坪量のシート状の抄造成形体を製造する場合においても、有色粒子の高い定着率が得られる。本発明は、坪量が50g/m2以下のシート状の抄造成形体の製造に適しており、更に坪量が10g/m2以上45g/m2以下、とりわけ坪量が10g/m2以上40g/m2以下のシート状の抄造成形体の製造に適している。
シート(シート状の抄造成形体)の坪量は、次のようにして測定される。JIS P8111の条件にて測定対象シートの調湿を行った後、測定対象シートから10cm四方(面積100cm2)の測定片を切り出し、該測定片の重量を少数点以下2桁の天秤にて測定し、その測定値を面積で除して該測定片の坪量を算出する。測定対象シートから切り出した10枚の測定片について、前記手順に従って坪量を算出し、それらの平均値を測定対象シートの坪量とする。
本発明の製造方法により製造された抄造成形体の一例として、有色粒子として活性炭を含有する単層のシート状の抄造成形体を含んで構成される、薄葉紙が挙げられる。この薄葉紙は、活性炭の消臭機能により、尿等の排泄物の消臭性に優れており、また、活性炭を含有していることに起因して、該単層のシート状の抄造成形体全体が、活性炭の黒色が適度に反映された黒っぽい色(灰色又はその類似色)に着色されているため、使用者に薄葉紙の消臭効果に対する安心感を与えることができ、そのような特長が活かされる種々の用途に好適である。特に、この薄葉紙は、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品において、液保持性の吸収性コアを被覆するコアラップシートとして好適であり、排泄物が、尿等の比較的低粘性の場合のみならず、軟便等の比較的高粘性の場合であっても、排泄物を素早く透過させて吸収性コアに吸収させることができ、吸収性物品の防漏性の向上に寄与し得る。
活性炭(有色粒子)の平均粒径は、乾燥後のシート状の抄造成形体(薄葉紙)からの活性炭の脱落防止、及びそれに起因する抄紙機の汚染防止の観点から、好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上、そして、好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下、より具体的には、好ましくは1〜10μm、更に好ましくは2〜8μmである。有色粒子(活性炭)の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−920、堀場製作所社製)を使用し、下記の測定条件で測定されたメジアン径(D50)とした。測定条件は次の通り。測定方法:フロー法。分散媒:エタノール/蒸留水=90質量部/10質量部。分散方法:攪拌、内蔵超音波3分。試料濃度:0.1質量%。
前記薄葉紙(単層のシート状の抄造成形体)において、活性炭(有色粒子)の含有率は、活性炭の作用効果(消臭効果等)と活性炭の脱落防止とのバランスの観点から、好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より具体的には、好ましくは0.01〜30質量%、更に好ましくは0.1〜20質量%である。
また、前記薄葉紙(単層のシート状の抄造成形体)において、繊維状物としては、特にNBKP及びLBKP、とりわけNBKPが好ましい。繊維状物(NBKP、LBKP)のフリーネスについては前述した通りである。
前記薄葉紙(単層のシート状の抄造成形体)において、繊維状物の含有率は、該薄葉紙に実用上十分な強度特性を付与する観点から、好ましくは50質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、そして、好ましくは99.8質量%以下、更に好ましくは99質量%以下、より具体的には、好ましくは50〜99.8質量%、更に好ましくは80〜99質量%である。
また、前記薄葉紙(単層のシート状の抄造成形体)には、消臭性の一層の向上の観点から、活性炭(有色粒子)に加えて更に、前記金属担持多孔質粒子(金属担持無機多孔質粒子、金属担持有機多孔質粒子)を含有させることが好ましい。
前記薄葉紙(単層のシート状の抄造成形体)に金属担持多孔質粒子(金属担持無機多孔質粒子、金属担持有機多孔質粒子)を含有させる場合は、前記薄葉紙(単層のシート状の抄造成形体)において、金属担持多孔質粒子(金属担持無機多孔質粒子、金属担持有機多孔質粒子)の含有率は、好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、より具体的には、好ましくは0.05〜30質量%、更に好ましくは0.1〜20質量%である。
前記薄葉紙(単層のシート状の抄造成形体)を用いた吸収性物品の一例として、吸収性コア及びこれを被覆するコアラップシートを含んで構成される吸収性物品であって、該コアラップシートが、前記薄葉紙であるものが挙げられる。より具体的には、この吸収性物品は、肌対向面を形成する液透過性の表面シート、非肌対向面を形成する液不透過性ないし撥水性の裏面シート、及びこれら両シート間に配置された液保持性の吸収体を具備し、該吸収体が、前記吸収性コア及び前記コアラップシート(前記薄葉紙)を含んで構成されている。前記コアラップシート(前記薄葉紙)は、少なくとも前記吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面を被覆することが好ましい。例えば、前記吸収性コアの幅方向の長さの2倍以上3倍以下の幅を有する1枚の前記薄葉紙を、前記コアラップシートとして用いた場合には、その1枚の薄葉紙で該吸収性コアの肌対向面及び非肌対向面を被覆することが可能となる。尚、肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収性コア)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面であり、非肌対向面は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側(着衣側)に向けられる面である。前記表面シート、前記裏面シート及び前記吸収性コアとしては、それぞれ、この種の吸収性物品において通常用いられているものを特に制限無く用いることができる。この吸収性物品は、展開型あるいはパンツ型の使い捨ておむつ、尿とりパッド、生理用ナプキン等に適用できる。
前述した本発明の実施形態に関し、更に以下の付記(抄造成形体の製造方法)を開示する。
<1> 有色粒子、繊維状物、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマー及び水を含むスラリーから、湿式抄造により抄造成形体を製造する方法であって、
以下の1)〜5)の工程を含み、
1)前記繊維状物及び前記水を含み且つ前記有色粒子、前記カチオン性ポリマー及び前記アニオン性ポリマーを含まない、前記スラリーの中間体を調製するスラリー中間体調製工程;
2)前記スラリーの中間体に前記有色粒子を添加する有色粒子添加工程;
3)前記有色粒子添加工程後の前記スラリーの中間体中の成分を分散混合させ且つ該スラリーの中間体を精製する、分散・精製工程;
4)前記分散・精製工程後の前記スラリーの中間体に、前記カチオン性ポリマー及び前記アニオン性ポリマーをこの順で添加して、前記スラリーを調製するスラリー調製工程;
5)前記スラリーを抄紙機に導入して湿式抄造する抄造工程;
前記有色粒子添加工程における前記有色粒子の添加は、前記スラリー中間体調製工程の実施装置と前記分散・精製工程の実施装置とを結ぶ配管内を流れる、前記スラリーの中間体に対して実施し、且つ該スラリーの中間体は、該有色粒子が添加されてから該分散・精製工程の実施装置に導入されるまでの間は、滞留せずに流れるようにし、
前記スラリー調製工程における前記カチオン性ポリマー及び前記アニオン性ポリマーの添加は、前記分散・精製工程の実施装置と前記抄紙機とを結ぶ配管内を流れる、前記スラリーの中間体に対して実施する、抄造成形体の製造方法。
<2> 前記有色粒子は活性炭である前記<1>記載の抄造成形体の製造方法。
<3> 前記有色粒子の平均粒径は1μm以上10μm以下である前記<1>又は<2>記載の抄造成形体の製造方法。
<4> 前記有色粒子の平均粒径は2μm以上8μm以下である前記<1>〜<3>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<5> 前記有色粒子の添加量は、前記抄造成形体の坪量に対して、0.1質量%以上20質量%以下である前記<1>〜<4>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<6> 前記繊維状物のフリーネスは300ml以上である前記<1>〜<5>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<7> 前記繊維状物のフリーネスは300ml以上740ml以下である前記<1>〜<6>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<8> 前記繊維状物のフリーネスは400ml以上700ml以下である前記<1>〜<7>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<9> 前記繊維状物は植物繊維である前記<1>〜<8>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<10> 前記繊維状物は針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)である前記<1>〜<9>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<11> 前記カチオン性ポリマーの添加量は、前記抄造成形体の坪量に対して、0.1質量%以上2質量%以下である前記<1>〜<10>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<12> 前記カチオン性ポリマーはエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂(PAE)である前記<1>〜<11>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<13> 前記アニオン性ポリマーはアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂(PAM)又はその塩である前記<1>〜<12>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<14> 前記アニオン性ポリマーの重量平均分子量は500万以上3000万以下である前記<1>〜<13>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<15> 前記アニオン性ポリマーの重量平均分子量は1000万以上2000万以下である前記<1>〜<14>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<16> 前記アニオン性ポリマーのコロイド当量値(meq/g)が、0〜−5.0の範囲にある前記<1>〜<15>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<17> 前記アニオン性ポリマーのコロイド当量値(meq/g)が、0〜−2.0の範囲にある前記<1>〜<16>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<18> 前記アニオン性ポリマーの添加量は、前記抄造成形体の坪量に対して、0.001質量%以上1質量%以下である前記<1>〜<17>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<19> 前記カチオン性ポリマーがエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂(PAE)、前記アニオン性ポリマーがアニオン性ポリアクリルアミド系樹脂(PAM)の塩である場合、両ポリマーの使用質量比(抄造成形体における含有質量比)は、PAE:アニオン性PAMの塩=40:1〜10:1の範囲にある前記<1>〜<18>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<20> 前記抄造成形体は、更に金属担持多孔質粒子を含有する前記<1>〜<19>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<21> 前記金属担持多孔質粒子(金属担持無機多孔質粒子)は銀カンクリナイト様鉱物である前記<20>記載の抄造成形体の製造方法。
<22> 前記金属担持多孔質粒子(金属担持有機多孔質粒子)において、金属を担持する有機多孔質粒子は、架橋性ビニルモノマー及びヘテロ芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られる粒子である前記<20>又は<21>記載の抄造成形体の製造方法。
<23> 前記分散・精製工程の実施装置としてスクリーン装置を用いる前記<1>〜<22>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<24> 前記分散・精製工程の実施装置と前記抄紙機とを結ぶ配管における、前記カチオン性ポリマーの添加箇所と前記アニオン性ポリマーの添加箇所との間に、スタティックミキサー等の攪拌装置(前記スラリーの中間体を滞留させずに攪拌し得る装置)を配置する前記<1>〜<23>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<25> 前記カチオン性ポリマーを添加してから前記アニオン性ポリマーを添加するまでの時間は0.1〜60秒である前記<1>〜<24>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<26> 抄造成形体の坪量は50g/m2以下である前記<1>〜<25>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
<27> 抄造成形体の坪量は10g/m2以上45g/m2以下である前記<1>〜<26>の何れか一項に記載の抄造成形体の製造方法。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〜4〕
前述した実施態様に準じ、各成分の添加形態を図1に示すようにして、単層のシート状の抄造成形体(前記薄葉紙)を製造した。スラリー中間体調製工程におけるスラリー中間体の希釈には、互いに連結された2個の希釈用タンクを備えた希釈システムを用い、各タンク内の液量の管理は液面管理によって行った。希釈前のスラリーの中間体の固形分濃度(繊維濃度)は2.5質量%、希釈後のスラリーの中間体の固形分濃度(繊維濃度)は0.15質量%とした。分散・精製工程の実施装置(スクリーン装置)として、(株)新浜ポンプ製作所製のシンハマHS型スクリ−ンを用いた。抄造工程では、スラリーを、抄紙機のワイヤー目開き径90μm(166メッシュ)の丸網抄紙ワイヤー上に紙層を形成させ、80m/分の速度で該紙層を脱水した後、該紙層をドライヤで乾燥させて単層のシート状の抄造成形体(前記薄葉紙)を製造した。
〔比較例1〕
各成分の添加形態を図2に示すようにした以外は実施例2と同様にして単層のシート状の抄造成形体を製造した。図2に示す添加形態は、図1に示す添加形態においてカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの添加順序を逆にした以外は、図1に示す添加形態と同じである。
〔比較例2〕
各成分の添加形態を図3に示すようにした以外は実施例2と同様にして単層のシート状の抄造成形体を製造した。図3に示す添加形態は、図1に示す添加形態において、有色粒子(活性炭)の添加箇所を、希釈用タンク内に滞留しているスラリーの中間体に変更した以外は、図1に示す添加形態と同じである。
〔比較例3〕
各成分の添加形態を図4に示すようにし、且つ繊維状物のフリーネスを600mlとした以外は実施例2と同様にして単層のシート状の抄造成形体を製造した。図4に示す添加形態は、図1に示す添加形態において、有色粒子(活性炭)の添加箇所を、希釈用タンク内に滞留しているスラリーの中間体に変更し、且つカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの添加箇所を、希釈用タンクと分散・精製工程の実施装置(スクリーン装置)とを結ぶ配管内を流れるスラリーの中間体に変更した以外は、図1に示す添加形態と同じである。
〔比較例4〕
各成分の添加形態を図5に示すようにし、且つ繊維状物のフリーネスを600mlとし、且つアニオン性ポリマー(弱アニオン性)の添加量を0.025質量%にした以外は実施例2と同様にして単層のシート状の抄造成形体を製造した。図5に示す添加形態は、図1に示す添加形態において、有色粒子(活性炭)、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの添加箇所を、何れも希釈用タンク内に滞留しているスラリーの中間体に変更した以外は、図1に示す添加形態と同じである。
〔比較例5〕
各成分の添加形態を図6に示すようにし、且つ繊維状物のフリーネスを600mlとし、且つアニオン性ポリマー(弱アニオン性)の添加量を0.025質量%にした以外は実施例2と同様にして単層のシート状の抄造成形体を製造した。図6に示す添加形態は、図1に示す添加形態において、有色粒子(活性炭)の添加箇所を、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーと同様に、分散・精製工程の実施装置(スクリーン装置)と抄紙機とを結ぶ配管内を流れる精製後のスラリーの中間体に変更した以外は、図1に示す添加形態と同じである。
実施例及び比較例で用いた各成分の詳細は次の通り。
・繊維状物(NBKP):Cariboo Pulp and Paper Company社製、商品名「Cariboo」。
・活性炭(有色粒子):フタムラ化学(株)社製、商品名「SA1000」、平均粒径7μm。
・カチオン性ポリマー:星光PMC(株)社製、商品名「WS4030」、カチオン性湿潤紙力増強剤(PAE)。
・アニオン性ポリマー(弱アニオン性、コロイド当量値−1.2meq/g):MTアクアポリマー(株)社製、商品名「アコフロックA95、アニオン性乾燥紙力増強剤(アニオン性PAM)、重量平均分子量1700万。
・アニオン性ポリマー(中アニオン性、コロイド当量値−2.3meq/g):住友精化(株)社製、商品名「PAM−P」、アニオン性乾燥紙力増強剤(アニオン性PAM)、重量平均分子量1900万。
〔評価〕
実施例及び比較例で製造された抄造成形体について、前記方法によって坪量を測定すると共に、明度L値、活性炭定着率及び凝集物の有無をそれぞれ下記方法により評価した。それらの結果を下記表1に示す。
<明度L値の評価方法>
明度L値は、色差計によって測定される。本発明においては、日本電色工業(株)のハンディ型分光色差計NF777(商品名)を用い、照明条件C、視野角条件2°、正面受光条件=0/45°、光束径φ10mmの測定条件で、評価対象物(シート状の抄造成形体)への照射光の反射光を測定して求められる。明度L値が小さいほど、有色粒子(活性炭)の黒色が抄造成形体に強く反映され、抄造成形体は黒色に近い色になる。
<活性炭定着率の評価方法>
はじめに、1/10Nのヨウ素溶液(和光純薬工業(株)製)に活性炭SA1000(フタムラ化学(株)製)を添加して、活性炭濃度が0.1質量%、0.25質量%、0.5質量%、0.75質量%、1.0質量%の活性炭添加ヨウ素溶液を調製し、これらの活性炭添加ヨウ素溶液を1/10Nのチオ硫酸ナトリウム溶液(和光純薬工業(株)製)を用いて滴定して検量線を作成した。次に、評価対象物(シート状の抄造成形体)を1/10Nのヨウ素溶液(和光純薬工業(株)製)に浸漬させて1時間攪拌した溶液(評価対象物浸漬液)を、1/10Nのチオ硫酸ナトリウム溶液(和光純薬工業(株)製)を用いて該評価対象物浸漬液が透明になるまで滴定した。その滴定量を前記検量線から換算して、評価対象物浸漬液中の活性炭量を算出し、該活性炭量を評価対象物の活性炭定着率とした。活性炭定着率の値が大きいほど評価対象物中の活性炭含有率が高くなる。
<凝集物の有無の評価方法>
評価対象物(シート状の抄造成形体:MD30cm、CD20cm)の両面をそれぞれ目視で観察し、活性炭の凝集物の状態を観察した。周辺とは色相が明らかに違う活性炭の凝集物で且つ大きさ(凝集物の平面視における最大長さ部分の長さ)が500μm以上のものが1箇所以上ある場合を「凝集物有り」、斯かる凝集物が見られない場合を「凝集物無し」とした。
表1に示す通り、各成分の添加形態を図1に示す如く実施した各実施例は、明度L値及び活性炭定着率それぞれの製造開始15分後と30分後とでの差が小さく、且つ活性炭定着率が高く、また、得られた抄造成形体に凝集物が見られず、色相の安定した高品質の湿式抄造体を安定して製造することができた。
これに対し、比較例1は、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの添加順序を実施例とは逆にしたため、実施例に比して活性炭定着率が低い結果となった。また、比較例2〜4は、何れも活性炭を希釈用タンク内に滞留しているスラリーの中間体に添加したため、明度L値及び活性炭定着率それぞれの製造開始15分後と30分後とでの差が大きく、抄造成形体の色相が安定しない結果となり、また、活性炭定着率が製造中安定して高いとは言えない結果となった。比較例3及び4については、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーの添加箇所を分散・精製工程の実施装置(スクリーン装置)よりも上流側に設定したことも、抄造成形体の色相不安定や活性炭定着率の低下に影響していると推察される。更に、比較例2〜4は、活性炭を希釈用タンク内に添加しているため、他の例に比して、製造設備の洗浄作業が煩雑で長時間を要し、製造効率の点でも劣る。また、比較例5は、活性炭の添加箇所を、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーと同様に、分散・精製工程の実施装置(スクリーン装置)よりも下流側に設定したため、スラリーの中間体中で両ポリマーの作用により形成される、繊維状物(NBKP)のフロック内において、有色粒子が不均一に凝集し、抄造成形体に凝集物が見られる結果となった。