以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態について詳細に説明する。
図1に、第1の実施の形態に係る二次電池モジュール制御装置(以下、単に制御装置とも呼ぶ)21を説明する構成図を示す。
まず、制御装置21の制御対象となる二次電池モジュール10mについて説明する。二次電池モジュール10mは複数個の二次電池セル10cが直列接続されたものであり、このため二次電池モジュール10mの正極端子と負極端子との間の出力電圧であるモジュール電圧(値)Vmは各電池セル10cの出力電圧であるセル電圧(値)Vcの合算値になる。二次電池モジュール10m、換言すれば二次電池セル10cは、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛電池等で構成可能である。
なお、二次電池モジュール10mを電池モジュール10mまたはモジュール10mとも呼び、二次電池セル10cを電池セル10cまたはセル10cとも呼ぶことにする。
図1には電池モジュール10mおよびこれの制御装置21がハイブリッド電気車両(hybrid electrical vehicle:以下、HEVとも呼ぶ)100に適用される場合を例示している。しかし、二次電池モジュール10mおよび制御装置21の用途は、HEVに限定されるものではないし、また、車両に限定されるものでもない。
ここで、HEV100について説明する。図1には、HEV100の駆動装置とその動力源の概略構成を示している。HEV100は、当該HEV100を駆動する原動機として、エンジン102と、モータ・ジェネレータ(以下、M/Gとも呼ぶ)104,106とを有している。これらの原動機は、動力分配統合機構108を構成する遊星歯車機構に接続されている。また、動力分配統合機構108は、減速機構110と差動機構112とを介して駆動輪114に接続されている。これにより、各原動機の動力が動力分配統合機構108によって統合され、駆動輪114へ伝達される。
HEV100は、エンジン102とM/G104,106の各出力を制御することによって、各種のモードによる走行を行う。例えば、エンジン102で走行するモード、MG106で走行するモード、エンジン102とM/G106とが協調して走行するモード、エンジン102の動力でM/G104による発電を行うモード等、各種のモードによる走行を行う。
M/G104,106は、インバータ120を介して二次電池モジュール10mに接続されている。M/G104,106は、電力が供給されるときはモータとして機能し、例えば制動時(減速時)には発電機として機能する回転電機である。インバータ120は、M/G104,106がモータとして機能するときには二次電池モジュール10mからの電力をM/G104,106に供給し、M/G104,106が発電機として機能するときは回生電力を受け取って二次電池モジュール10mを充電する。なお、M/G104,106の一方を主にモータとして利用し他方を主に発電機として利用する場合があり、また、1個または3個以上のM/Gを利用する場合もある。
次に、二次電池モジュール制御装置21について説明する。当該制御装置21は、電圧検出手段32と、電流検出手段34と、温度検出手段36と、制御手段41と、記憶手段80とを含んでいる。
上記各検出手段32,34,36は、例えば一般的なセンサ、測定器等で構成することが可能である。電圧検出手段32は、図1の例では電池モジュール10mの正極端子と負極端子との間に接続されており、モジュール電圧Vmを検出する。
電流検出手段34は、図1の例では電池モジュール10mの正極端子とインバータ120との間に接続されており、電池モジュール10mの電流Iを検出する。上記のように電池モジュール10mは電池セル10cが直列接続されて構成されているのでモジュール10mの端子を流出入する電流(値)と各セル10cの端子を流出入する電流(値)とは等しく、このため両電流については同じ符号Iを用いることにする。
ここで、電流Iの向き、換言すれば電流値Iの符号(正負)から、当該電流Iがモジュール10mから流出する電流(放電電流)であるか、モジュール10mへ流入する電流(充電電流)であるかを判別することが可能である。なお、電流値Iの符号と放電電流/充電電流との対応関係は、電流検出手段34を構成するセンサ等の端子極性の設定によって異なる。また、モジュール10mが負荷へ電力供給しつつ充電される場合もあり、その場合において負荷への電力供給による電流の方が大きければ電流Iは放電電流として検出され、逆に充電による電流の方が大きければ電流Iは充電電流として検出される。以下では、電流(値)Iについて、必要に応じて、放電電流(値)には符号I1を用い、充電電流(値)には符号I5を用いることにする。
温度検出手段36は、例えば温度検知部が電池モジュール10mの外面に取り付けられることにより、電池モジュール10mの温度(以下、モジュール温度とも呼ぶ)Tmを検出する。ここで、電池モジュール10mの動作中は各電池セル10c間で温度差が生じる場合がある。このため、例えば、温度検出手段36の温度検知部を複数個のセル10cにわたって設けたり、複数の温度検知部によってモジュール10mの複数箇所の温度を検出して平均温度を得るように温度検出手段36を構成するのが好ましい。
検出手段32,34,36は、制御手段41に接続されており、当該制御手段41へ検出値Vm,I,Tmを送出する。
制御手段41は、受信した検出値Vm,I,Tmに基づいて、電池モジュール10mの放電動作を制御する。制御手段41は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のコンピュータで構成することが可能であり、また、例えばHEV100に搭載される各種ECU(Electric Control Unit)の一つまたは複数を利用して構成することも可能である。なお、図1には制御手段41がエンジン102と、M/G104,106と、インバータ120とを制御することによって電池モジュール10mの放電動作を制御する場合を例示しているが、この制御体系に限定されるものではない。制御手段41については後にさらに説明する。
記憶手段80は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性メモリ(EPROM(Erasable Programmable ROM)等)、ハードディスク装置、DVD(Digital Versatile Disc)等の1つまたは複数で構成可能である。記憶手段80は、各種のデータ、情報、プログラム等を格納するとともに、プログラムを実行するための作業領域を提供する。なお、図1では制御手段41が記憶手段80へアクセスする構成を例示しているが、例えば検出手段32,34,36が制御手段41を介さずに直接、記憶手段80へ検出値Vm,I,Tmを格納する構成等であってもよい。
制御手段41の構成等を詳述する前に、制御装置21による制御の基本的な概念を図2を参照して説明する。なお、図2には、電池モジュール10mを一定電流値で放電させた場合の特性図を例示しており、放電時間とモジュール電圧Vmとの関係(上段)および放電時間とセル電圧Vcとの関係(下段)について示している。なお、セル電圧Vcの特性線の本数はモジュール10m中のセル10cの個数を限定するものではない。
図2に示すように、放電時間が長くなると、モジュール電圧値Vmおよびセル電圧値Vcは低下していく。また、セル電圧Vcが低いほど、各電池セル10cの放電特性の差(特性のばらつき)が大きくなる。
このため、モジュール電圧Vmがモジュール電圧下限値Vm1まで低下したことを検出して放電を停止するだけでは、その時点で既にいくつかのセル10cのセル電圧Vcがセル電圧下限値Vc1を下回ってしまう、すなわち過放電状態になってしまう場合がある。その結果、セル電圧下限値Vc1を下回ったセル10cだけでなく、モジュール10m全体として、電池性能が劣化してしまう。
なお、モジュール電圧下限値Vm1およびセル電圧下限値Vc1は、モジュール10mおよびセル10cに対して予め設定される値であり、正常状態と過放電状態との境界に対応して設定される。
ここで、モジュール10m中の全てのセル10cの放電特性を均一に揃えることができれば好ましいが、上記放電特性差は各電池セル10cの個体間ばらつき(個体差)や動作時の温度ばらつき等に起因するため、均一な放電特性を得ることは難しいと考えられる。
これに対し、制御装置21は、次に概説する処理および制御によって、モジュール10m中の全てのセル10cについてセル電圧Vcがセル電圧下限値Vc1を下回るのを防止する。
具体的には、制御装置21では、モジュール電圧下限値Vm1よりも高い電圧Vm2(以下、下限監視値Vm2とも呼ぶ)を予め設定し、モジュール電圧Vmが低下して下限監視値Vm2に到達したことが判定されたならば、当該到達時点taからその後に放電が許容される残り時間t1を推定する。
ここで、放電許容残り時間t1は、例えば、モジュール電圧Vmが下限監視値Vm2である状態のモジュール10mについて、全てのセル10cがセル電圧下限値Vc1よりも高い電圧を保持した状態で放電が許容される最長時間として規定される。または、放電許容残り時間t1は、例えば、モジュール電圧Vmが下限監視値Vm2である状態のモジュール10mについて、いずれかのセル10cのセル電圧Vcがセル電圧下限値Vc1に到達するまでの最短時間として規定される。
また、制御装置21は、モジュール電圧Vmが下限監視値Vm2に到達した時刻taから放電許容残り時間t1が経過した時刻tbにおいて、モジュール10mの放電動作の制限を開始する。
これにより、モジュール10m中のいずれのセル10cについてもセル電圧Vcがセル電圧下限値Vc1を下回らないようにすることができ、すなわちいずれのセル10cも過放電状態にならないようにすることができる。その結果、電池モジュール10m全体としての性能劣化を抑制することができる。
放電許容残り時間t1は例えば放電電流I1やモジュール温度Tmに依存し、これらt1,I1,Tmの相関関係は実験やシミュレーション等によって予め求めておくことが可能である。かかる相関関係を図3および図4を参照して説明する。図3と図4は、特性図の横軸の物理量および特性線の本数が異なるが、実質的に同じ特性を現している。なお、図3に例示したモジュール温度TmはTm1<Tm2<Tm3なる大小関係にあり、図4に例示した放電電流I1はI11<I12<I13<I14なる大小関係にある。これらの特性図によれば、放電電流I1が大きいほど放電許容残り時間t1は短くなり、また、モジュール温度Tmが高いほど放電許容残り時間t1は長くなることが分かる。
このような制御を実現しうる具体的な構成例として、図1には、制御装置21の制御手段41が下限監視判定手段51と、放電許容残り時間推定手段61と、放電制限手段71とを含む場合を例示している。なお、各手段51,61,71はソフトウェアによって実現可能である。具体的には、制御手段41をCPU等のコンピュータで構成し、そのコンピュータを各手段51,61,71として機能させることによって実現できる。この場合、各手段51,61,71に対応する各機能は、所定のプログラムを実行することで実現される。当該プログラムは例えば記憶手段80に格納される。なお、各手段51,61,71の一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
下限監視判定手段51は、電圧検出手段32が検出したモジュール電圧Vmの検出値を取得し、例えばモジュール電圧Vmの検出値と下限監視値Vm2(図2参照)とを比較することによって、取得した検出値Vmが下限監視値Vm2以下であるか否かを判定する。なお、上記のように下限監視値Vm2はモジュール電圧下限値Vm1よりも高い値に設定されており(Vm2>Vm1)、これらの値Vm1,Vm2は、例えば、制御手段41が実行するプログラム中に予め組み込んでおいてもよいし、記憶手段80内に格納しておきプログラムの実行時に読み出すようにしてもよい。
放電許容残り時間推定手段61は、電流検出手段34が検出した放電電流I1の検出値と、温度検出手段36が検出したモジュール温度Tmの検出値とを取得し、これらの検出値I1,Tmと電池セル10cの放電特性の差(図2参照)とに基づいて、放電許容残り時間t1(図2〜図4参照)を推定する。電池セル10cの放電特性の差が考慮された放電許容残り時間t1は、当該残り時間t1と放電電流I1とモジュール温度Tmとの間の上記相関関係(図3および図4参照)から取得することができる。
例えば当該相関関係をマップ形式、ルックアップテーブル形式等で記憶手段80内に予め格納しておく構成によれば、放電許容残り時間推定手段61は、放電電流I1およびモジュール温度Tmの検出値を検索キーとして用いて記憶手段80内を検索し、対応する放電許容残り時間t1を抽出することによって、放電許容残り時間t1を推定することが可能である。また、例えば上記相関関係を関数式としてプログラム中に組み込んでおく構成によれば、放電許容残り時間推定手段61は、当該関数式に放電電流I1およびモジュール温度Tmの検出値を代入して放電許容残り時間t1を算出することによって、当該残り時間t1を推定することが可能である。
放電制限手段71は、下限監視判定手段51による判定結果と放電許容残り時間推定手段61による推定結果とを取得し、これらの結果に基づいて、モジュール10mの放電の制限を開始する指示信号を例えばM/G104,106およびインバータ120へ送出する。より具体的には、放電制限手段71は、モジュール電圧Vmが低下して下限監視値Vm2に到達した時点taから計時して放電許容残り時間t1が経過したならば、例えばM/G104,106およびインバータ120を制御して電池モジュール10mの放電動作を制限する。なお、放電許容残り時間t1の計時機能は例えば放電制限手段71に付与することが可能である。また、計時中か否かを、制御手段41を構成するCPU内または記憶手段80内の特定のフラグの状態に対応させて記録するようにしてもよい。
また、放電制限手段71は、上記の放電制限ととともに、例えばエンジン102の動力によってM/G104,106の一方または両方を発電機として機能させることにより電池モジュール10mを充電する制御を行うのが好ましい。
また、放電制限手段71は、放電制限中にモジュール電圧Vmが下限監視値Vm2よりも高い値に回復した場合には、放電制限の解除処理または終了処理、例えば放電制限指示を与えていたM/G104,106、インバータ120等に対して放電動作を許可する指示を行うようにしてもよい。このとき、放電制限手段71は、例えば放電制限中に下限監視判定手段51による判定結果を取得することにより、モジュール電圧Vmの回復を知ることが可能である。
上記構成を有する制御装置21の動作の一例を図5のフローチャートも参照して説明する。但し、制御装置21の動作は当該例示に限定されるものではない。
図5の例では、ステップS10において、電圧検出手段32がモジュール電圧Vmを検出して制御手段41へ送出する。モジュール電圧Vmの検出値を受信した制御手段41では、ステップS12において、下限監視判定手段51が、モジュール電圧Vmの検出値が下限監視値Vm2以下であるという条件(Vm≦Vm2)を満足するか否かを判定する。判定の結果、Vm>Vm2であれば放電の制限は必要ないと判断され制御装置21の処理はステップS10へ戻り、一方、Vm≦Vm2であれば制御装置21の処理はステップS14へ移行する。
ステップS14では、電流検出手段34が電流I(放電電流I1)を検出して制御手段41へ送出するとともに、温度検出手段36がモジュール温度Tmを検出して制御手段41へ送出する。なお、モジュール10mの電流Iが放電電流I1であるか充電電流I5であるかの判別は、電流検出手段34が行ってもよいし、制御手段41、例えば放電許容残り時間推定手段61が行ってもよい。
そして、ステップS16において、放電許容残り時間推定手段61が、取得した検出値I1,Tmを用いて上記のようにして放電許容残り時間t1を推定する。放電制限手段71は、モジュール電圧Vmが下限監視値Vm2に到達した時刻taと、推定された放電許容残り時間t1とを取得し、ステップS18において、モジュール電圧Vmが下限監視値Vm2まで低下してから当該残り時間t1が経過したか否かを判定する。判定の結果、放電許容残り時間t1が経過していない場合、制御装置21の処理はステップS10へ戻る。一方、ステップS18において放電許容残り時間t1が経過したと判定された場合、ステップS20において、放電制限手段71がモジュール10mの放電の制限を開始する。
図5の例では、放電制限中にモジュール電圧Vmがチェックされ、モジュール電圧Vmが下限監視値Vm2よりも高い値に回復した場合には、放電の制限が解除される(S22〜S26)。例えば、ステップS22において電圧検出手段32がモジュール電圧Vmを検出し、ステップS24において下限監視判定手段51がモジュール電圧Vmの検出値が下限監視値Vm2以下であるか否かを判定する。判定の結果、Vm>Vm2であればステップS26において放電制限手段71は放電制限を解除し(終了し)、一方、Vm≦Vm2であればステップS22へ戻りモジュール電圧Vmのチェックが継続される。図5の例では、放電制限解除ステップS26の後、制御装置21の処理は上記ステップS10へ戻る。
ここで、上記のように、ステップS18において放電許容残り時間t1が経過していないと判定された場合、制御装置21の処理はステップS10へ戻る。これにより、放電許容残り時間t1の計時中に、ステップS10,S12,S14,S16が実行される。
このため、ステップS10,S12の実行により、放電許容残り時間t1の計時中にモジュール電圧Vmが下限監視値Vm2よりも高い値に回復した場合には、例えば放電制限手段71が放電許容残り時間t1の計時を終了することによって、放電を制限しないようにすることができる。
また、放電許容残り時間t1の計時中にステップS14,S16を実行することにより、放電許容残り時間t1を新たに推定し(更新し)、更新された放電許容残り時間t1を用いて計時を継続する。
このとき、放電許容残り時間推定手段61を、検出ステップS14による新たな検出値I1,Tmのみを用いて放電許容残り時間t1を推定するように構成してもよいし、または、新たな検出値I1,Tmと以前に検出された検出値I1,Tmとを用いて、すなわち複数回分の検出値I1,Tmを用いて放電許容残り時間t1を推定するように構成してもよい。
放電電流I1の複数の検出値を利用する場合、例えば、新たに検出された放電電流値I1と以前に検出された放電電流値I1との平均値を算出し、当該平均値を上記相関関係(図3および図4参照)の放電電流値I1として適用することによって、放電許容残り時間t1を推定することが可能である。モジュール温度Tmについても同様である。この場合、上記の以前の検出値I1,Tmは、例えば、直近の1回分だけでもよいし、直近の複数回分でもよいし、モジュール電圧Vmが下限監視値Vm2に到達した後に検出した全ての検出値であってもよい。
複数回分の検出値I1,Tmを用いることにより、二次電池モジュール10mの使用状況に応じた放電許容残り時間t1の変動が考慮され、当該残り時間t1の推定精度を向上させることができる。
以上のように、制御装置21によれば、いずれの電池セル10cについてもセル電圧Vcがセル電圧下限値Vc1を下回る、すなわち過放電状態になるのを防止することができる。これにより、電池モジュール10m全体の性能劣化を抑制することができる。また、制御装置21によれば、各セル10cについてセル電圧Vc等を検出する必要がないので、当該装置21の簡略化、小型化等を図ることができる。
ここで、放電許容残り時間t1の推定にモジュール温度Tmを利用せずに放電電流I1だけを利用することも可能である。これに対し、上記のように放電電流I1とモジュール温度Tmの両方を利用して放電許容残り時間t1を推定することにより、当該残り時間t1について高い推定精度を得ることができる。
上記の実施の形態1では電池モジュール10mおよび電池セル10cの過放電を防止する場合を例示したが、以下に説明する実施の形態2ではこれらの過充電を防止するための制御装置を例示する。実施の形態2に係る二次電池モジュール制御装置25について、図6の構成図と図7の特性図と図8のフローチャートを示す。図6、図7および図8は、図1、図2および図5にそれぞれ対応する。なお、図6には制御装置25が実施の形態1と同様のHEV100に適用される場合を例示しており、このためここではHEV100についての説明は省略する。
図6に例示するように、制御装置25は、電圧検出手段32と、電流検出手段34と、温度検出手段36と、制御手段45と、記憶手段80とを含んでいる。図6の例では制御手段45以外の要素は実施の形態1に係る制御装置21(図1参照)中の対応要素と同様であり、このためそれらの要素についてはここでは説明を省略する。
制御手段45は、検出手段32,34,36が検出した検出値Vm,I,Tmを受信し、当該検出値Vm,I,Tmに基づいて、電池モジュール10mの充電動作を制御する。制御手段45は、例えばCPU等のコンピュータで構成することが可能であり、また、例えばHEV100に搭載される各種ECUの一つまたは複数を利用して構成することも可能である。
ここで、図7の特性図に示すように、充電時間が長くなると、モジュール電圧値Vmおよびセル電圧値Vcは上昇する。また、セル電圧Vcが高いほど、各電池セル10cの充電特性の差(特性のばらつき)が大きくなる。そこで、制御装置25は、モジュール10m中の全てのセル10cについてセル電圧Vcがセル電圧上限値Vc5を上回るのを防止する。
具体例は後述するが、制御装置25では、モジュール電圧上限値Vm5よりも低い電圧Vm6(以下、上限監視値Vm6とも呼ぶ)を予め設定し、モジュール電圧Vmが上昇して上限監視値Vm6に到達したことが判定されたならば、当該到達時点teからその後に充電が許容される残り時間t5を推定する。
充電許容残り時間t5は、例えば、モジュール電圧Vmが上限監視値Vm6である状態のモジュール10mについて、全てのセル10cがセル電圧上限値Vc5よりも低い電圧を保持した状態で充電が許容される最長時間として規定される。または、充電許容残り時間t5は、例えば、モジュール電圧Vmが上限監視値Vm6である状態のモジュール10mについて、いずれかのセル10cのセル電圧Vcがセル電圧上限値Vc5に到達するまでの最短時間として規定される。
また、制御装置25は、モジュール電圧Vmが上限監視値Vm6に到達した時刻teから充電許容残り時間t5が経過した時刻tfにおいて、モジュール10mの充電動作の制限を開始する。
これにより、モジュール10m中のいずれのセル10cについてもセル電圧Vcがセル電圧上限値Vc5を上回らないようにすることができ、すなわちいずれのセル10cも過充電状態にならないようにすることができる。その結果、電池モジュール10m全体としての性能劣化を抑制することができる。
充電許容残り時間t5は例えば充電電流I5やモジュール温度Tmに依存し、これらt5,I5,Tmの相関関係は実験やシミュレーション等によって予め求めておくことが可能である。かかる相関関係は上記の図3および図4と同様の傾向を示し、充電電流I5が大きいほど充電許容残り時間t5は短くなり、また、モジュール温度Tmが高いほど充電許容残り時間t5は長くなる。
なお、モジュール電圧上限値Vm5およびセル電圧上限値Vc5は、モジュール10mおよびセル10cに対して予め設定される値であり、正常状態と過充電状態との境界に対応して設定される。なお、実施の形態1で説明した値Vm1,Vm2,Vc1との間には、Vm1<Vm2<Vm6<Vm5、Vc1<Vc5なる関係がある。
図6には、制御手段45が、上限監視判定手段55と、充電許容残り時間推定手段65と、充電制限手段75とを含む場合を例示している。なお、手段55,65,75は、実施の形態1に係る手段51,61,71(図1参照)と同様に、ソフトウェアによって実現可能であり、また、その一部または全部をハードウェアによって実現することも可能である。
上限監視判定手段55は、電圧検出手段32が検出したモジュール電圧Vmの検出値を取得し、例えばモジュール電圧Vmの検出値と上限監視値Vm6(図7参照)とを比較することによって、取得した検出値Vmが上限監視値Vm6以下であるか否かを判定する。なお、上記のように上限監視値Vm6はモジュール電圧上限値Vm5よりも低い値に設定されており(Vm6<Vm5)、これらの値Vm5,Vm6は、例えば、制御手段45が実行するプログラム中に予め組み込んでおいてもよいし、記憶手段80内に格納しておきプログラムの実行時に読み出すようにしてもよい。
充電許容残り時間推定手段65は、電流検出手段34が検出した放電電流I5の検出値と、温度検出手段36が検出したモジュール温度Tmの検出値とを取得し、これらの検出値I5,Tmと電池セル10cの充電特性の差(図7参照)とに基づいて、充電許容残り時間t5(図7参照)を推定する。電池セル10cの充電特性の差が考慮された充電許容残り時間t5は、当該残り時間t5と充電電流I5とモジュール温度Tmとの間の上記相関関係から取得することができる。充電許容残り時間t5についての当該相関関係は、上記の放電許容残り時間t1についての相関関係と同様に、マップ形式、ルックアップテーブル形式等で記憶手段80内に予め格納しておいて利用してもよいし、関数式としてプログラム中に組み込んで利用してもよい。
充電制限手段75は、上限監視判定手段55による判定結果と充電許容残り時間推定手段65による推定結果とを取得し、これらの結果に基づいて、モジュール10mの充電の制限を開始する指示信号を例えばM/G104,106およびインバータ120へ送出する。より具体的には、充電制限手段75は、モジュール電圧Vmが上昇して上限監視値Vm6に到達した時点teから計時して充電許容残り時間t5が経過したならば、例えばM/G104,106およびインバータ120を制御して電池モジュール10mの充電を制限する。なお、充電許容残り時間t5の計時機能は例えば充電制限手段75に付与することが可能である。
また、充電制限手段75は、上記の充電制限ととともに、例えばM/G104,106の一方または両方をモータとして機能させることにより、電池モジュール10mを放電する制御を行うのが好ましい。かかる放電は、例えば不図示の各種車載装置を動作させることによって行ってもよい。
また、充電制限手段75は、充電制限中にモジュール電圧Vmが上限監視値Vm6よりも低い値に回復した場合には、充電制限の解除処理または終了処理、例えば充電制限指示を与えていたM/G104,106、インバータ120等に対して充電動作を許可する指示を行うようにしてもよい。このとき、充電制限手段75は、例えば充電制限中に上限監視判定手段55による判定結果を取得することにより、モジュール電圧Vmの回復を知ることが可能である。
図8を参照して、制御装置25の動作の一例を説明する。但し、制御装置25の動作は当該例示に限定されるものではない。
図8の例では、ステップS30において、電圧検出手段32がモジュール電圧Vmを検出して制御手段45へ送出する。モジュール電圧Vmの検出値を受信した制御手段45では、ステップS32において、上限監視判定手段55が、モジュール電圧Vmの検出値が上限監視値Vm6以上であるという条件(Vm≧Vm6)を満足するか否かを判定する。判定の結果、Vm<Vm6であれば充電の制限は必要ないと判断され制御装置25の処理はステップS30へ戻り、一方、Vm≧Vm6であれば制御装置25の処理はステップS34へ移行する。
ステップS34では、電流検出手段34が電流I(充電電流I5)を検出して制御手段45へ送出するとともに、温度検出手段36がモジュール温度Tmを検出して制御手段45へ送出する。なお、モジュール10mの電流Iが放電電流I1であるか充電電流I5であるかの判別は、電流検出手段34が行ってもよいし、制御手段45、例えば放電許容残り時間推定手段65が行ってもよい。
そして、ステップS36において、充電許容残り時間推定手段65が、取得した検出値I5,Tmを、I5とTmとt5との上記相関関係に適応することによって、充電許容残り時間t5を推定する。充電制限手段75は、モジュール電圧Vmが下限監視値Vm2に到達した時刻taと、推定された充電許容残り時間t5とを取得し、ステップS38において、モジュール電圧Vmが上限監視値Vm6まで上昇してから当該残り時間t5が経過したか否かを判定する。判定の結果、充電許容残り時間t5が経過していない場合、制御装置25の処理はステップS30へ戻る。一方、ステップS38において充電許容残り時間t5が経過したと判定された場合、ステップS40において、充電制限手段75がモジュール10mの充電の制限を開始する。
図8の例では、充電制限中にモジュール電圧Vmがチェックされ、モジュール電圧Vmが上限監視値Vm6よりも低い値に回復した場合には、充電の制限が解除される(S42〜S46)。例えば、ステップS42において電圧検出手段32がモジュール電圧Vmを検出し、ステップS44において上限監視判定手段55がモジュール電圧Vmの検出値が上限監視値Vm6以上であるか否かを判定する。判定の結果、Vm<Vm6であればステップS46において充電制限手段75は充電制限を解除し(終了し)、一方、Vm≧Vm6であればステップS42へ戻りモジュール電圧Vmのチェックが継続される。図8の例では、充電制限解除ステップS46の後、制御装置25の処理は上記ステップS30へ戻る。
ここで、上記のように、ステップS38において充電許容残り時間t5が経過していないと判定された場合、制御装置25の処理はステップS30へ戻る。これにより、充電許容残り時間t5の計時中に、ステップS30,S32,S34,S36が実行される。
このため、ステップS30,S32の実行により、充電許容残り時間t5の計時中にモジュール電圧Vmが上限監視値Vm6よりも低い値に回復した場合には、例えば充電制限手段75が充電許容残り時間t5の計時を終了することによって、充電を制限しないようにすることができる。
また、充電許容残り時間t5の計時中にステップS34,S36を実行することにより、充電許容残り時間t5を新たに推定し(更新し)、更新された充電許容残り時間t5を用いて計時を継続する。充電許容残り時間t5の更新は、例えば実施の形態1での放電許容残り時間t1の更新と同様に、新たな検出値I5,Tmのみを用いてもよいし、複数回分の検出値I5,Tmを用いてもよい。複数回分の検出値I5,Tmは例えば平均値を算出して利用することが可能である。複数回分の検出値I5,Tmを用いることにより、電池モジュール10mの使用状況に応じた充電許容残り時間t5の変動が考慮され、当該残り時間t5の推定精度を向上させることができる。
以上のように、制御装置25によれば、いずれの電池セル10cについてもセル電圧Vcがセル電圧上限値Vc5を上回る、すなわち過充電状態になるのを防止することができる。これにより、電池モジュール10m全体の性能劣化を抑制することができる。また、制御装置25によれば、各セル10cについてセル電圧Vc等を検出する必要がないので、当該装置25の簡略化、小型化等を図ることができる。
ここで、放電許容残り時間t1の推定と同様に、充電許容残り時間t5の推定にモジュール温度Tmを利用せずに充電電流I1だけを利用することも可能である。これに対し、上記のようにモジュール温度Tmも利用すれば、充電許容残り時間t5について高い推定精度が得られる。
図9に、実施の形態3に係る二次電池モジュール制御装置29を説明する構成を例示する。図9には制御装置29が、実施の形態1と同様のHEV100に適用される場合を例示しており、このためここではHEV100についての説明は省略する。
図9の例示では、制御装置29は、電圧検出手段32と、電流検出手段34と、温度検出手段36と、制御手段49と、記憶手段80とを含んでおり、制御手段49以外の要素は実施の形態1に係る制御装置21(図1参照)中の対応要素と同様であり、このためそれらの要素についてはここでは説明を省略する。
制御手段49は、上記の制御手段41,45(図1および図6参照)の機能を組み合わせた構成を有している。図9の例示では、制御手段49は、制御手段41と同様に機能する下限監視判定手段51と放電許容残り時間推定手段61と放電制限手段71を含むとともに、制御手段45と同様に機能する上限監視判定手段55と充電許容残り時間推定手段65と充電制限手段75を含んでいる。
かかる構成を有する制御装置29の動作の一例を図10のフローチャートを参照して説明する。但し、制御装置29の動作は当該例示に限定されるものではない。
図10の例では、ステップS50において、電圧検出手段32がモジュール電圧Vmを検出して制御手段49へ送出する。モジュール電圧Vmの検出値を受信した制御手段49では、ステップS52において、下限監視判定手段51が、モジュール電圧Vmの検出値が下限監視値Vm2以下(Vm≦Vm2)であるか否かを判定する。判定の結果、Vm≦Vm2であれば、制御装置29はステップS54として上記ステップS14〜S26(図5参照)を実行し、その後、ステップS50へ戻る。
一方、ステップS52においてVm>Vm2と判定された場合、ステップS56において、上限監視判定手段55が、モジュール電圧Vmの検出値が上限監視値Vm6以上(Vm≧Vm6)であるか否かを判定する。判定の結果、Vm≧Vm6であれば、制御装置29はステップS58として上記ステップS34〜S46(図8参照)を実行し、その後、ステップS50へ戻る。これに対し、ステップS56での判定結果がVm<Vm6であれば、制御装置29の処理は上記ステップS50へ戻る。
なお、上記とは逆に、ステップS52よりも先にステップS56を実行することも可能である。
かかる制御装置29によれば、いずれの電池セル10cについても過充電状態および過充電状態になるのを防止して、電池モジュール10m全体の性能劣化を抑制することができる。また、制御装置29によれば、各セル10cについてセル電圧Vc等を検出する必要がないので、当該装置29の簡略化、小型化等を図ることができる。
ここで、放電許容残り時間t1の推定と充電許容残り時間t5の推定の一方または両方についてモジュール温度Tmを利用せずに充電電流I1または充電電流I5だけを利用することも可能である。これに対し、上記のようにモジュール温度Tmも利用すれば残り時間t1,t5について高い推定精度が得られる。
10c 二次電池セル、10m 二次電池モジュール、21,25,29 二次電池モジュール制御装置、32 電圧検出手段、34 電流検出手段、36 温度検出手段、41,45,49 制御手段、51 下限監視判定手段、55 上限監視判定手段、61 放電許容残り時間推定手段、65 充電許容残り時間推定手段、71 放電制限手段、75 充電制限手段、80 記憶手段、I 電流、I1 放電電流、I5 充電電流、Tm モジュール温度、Vc セル電圧、Vc1 セル電圧下限値、Vc5 セル電圧上限値、Vm モジュール電圧、Vm1 モジュール電圧下限値、Vm2 下限監視値、Vm5 モジュール電圧上限値、Vm6 上限監視値、t1 放電許容残り時間、t5 充電許容残り時間。