以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1〜図13を参照して説明する。
図1は射出成形機11の正面図を示し、図2は平面図を示し、図3は右側面図を示している。なお、図2は、射出成形機11から固定型17、可動型24、可動プレート28等が取り外された状態を示している。
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、射出成形機11の骨格部分は、床12上に載置された下フレーム部13と、その下フレーム部13の上方に配置された上フレーム部14と、上下方向に延びて上下両フレーム部13,14を複数箇所で連結する連結フレーム部15とによって構成されている。
上記下フレーム部13上には固定盤16が配置され、さらに下フレーム部13上における固定盤16の一側(図1の右側)には、金型の一部をなす固定型17が並べられた状態で配置されている。固定型17は固定盤16に取付けられて、同固定盤16と一体となっている。
下フレーム部13上の互いに前後方向に離間した複数箇所(本実施形態では2箇所)には、互いに平行に左右方向へ延びる複数(一対)のレール18,18が敷設されている。両レール18,18上には、2種類のスライド部材21,22がそれぞれ同レール18に沿う方向へスライド可能に配置されている。すなわち、各スライド部材21,22の底面において、互いに前後方向へ離間した箇所にはブロック23,23が固定されており、これらのブロック23,23が対応するレール18,18にスライド可能に係合されている。一方(図1の左方)のスライド部材21上には、上述した固定型17とともに金型を構成する可動型24が載置されている。可動型24は、スライド部材21と一緒にレール18,18に沿う方向へ移動して上記固定型17に接近及び離間することが可能である。
図4(A)に示すように、上記固定型17の可動型24側(図4(A)の右側)の面には成形突部25が設けられ、可動型24の固定型17側(図4(A)の左側)の面には成形凹部26が設けられている。そして、可動型24の型合わせ面24Aが固定型17の型合わせ面17Aに接触された状態では、成形突部25が成形凹部26内に入り込み、それらの間に、所望形状の成形品Mを形成するための空間であるキャビティ27が形成される。
また、図1に示すように、他方(図1の右方)のスライド部材22上には、可動プレート28が起立状態で、脱着可能に取付けられている。この可動プレート28は、可動型24について固定型17とは反対側(図1の右側)に位置する。
可動プレート28の可動型24側(図1の左側)の面には第1型保持部29が固定されている。第1型保持部29は、可動型24に磁力を作用させてこれを吸着固定するためのものであり、例えば、特許第3898565号公報に記載された磁気吸着保持装置を第1型保持部29として用いることができる。この第1型保持部29は、複数のブロック部材の周囲に配設された複数の永久磁石と、複数のアルニコ(AlNiCo)磁石と、複数のアルニコ磁石にそれぞれ巻装された複数のコイルとを備えている。
上記構成を有する第1型保持部29では、その金型吸着面において可動型24を吸着・保持する際には、コイルに所定の方向へ数秒間通電する。この通電により、ブロック部材においてアルニコ磁石による磁束の向きが永久磁石による磁束の向きと同じになるように、アルニコ磁石の磁極が変化する。可動型24と第1型保持部29との間に磁束が通り、可動型24が第1型保持部29の金型吸着面に吸着・保持される。
また、上記吸着・保持を停止する際には、コイルに対し上記とは逆方向に数秒間通電する。この通電により、アルニコ磁石の磁極が反転し、ブロック部材において、アルニコ磁石による磁束が金型吸着面から出ないようになる。第1型保持部29の内部にのみ磁束が通ることとなり、可動型24には磁力が作用しなくなって、同可動型24の吸着・保持が停止される。
図1〜図3の少なくとも1つに示すように、両レール18,18間には、可動プレート28を通じて可動型24を駆動するアクチュエータとして電動モータ31が配置されている。スライド部材22及び電動モータ31間にはねじ軸33が回転可能に支持されており、上記電動モータ31の出力軸32がねじ軸33に動力伝達可能に連結されている。また、スライド部材22の底面にはナット34が固定されており、これに上記ねじ軸33が螺入されている。これらのねじ軸33及びナット34によって、電動モータ31の出力軸32の回転運動をスライド部材22(可動プレート28)の直線運動に変換する送りねじが構成されている。
この送りねじにより、スライド部材22及び可動プレート28が両レール18,18に沿って移動する。この際、可動型24が第1型保持部29の金型吸着面に吸着・保持されていれば、同可動型24も可動プレート28と一緒に移動する。
上記固定盤16の他側(図1の左側)には突き出し機構35が設けられている。突き出し機構35は、可動型24を固定型17から離れさせる金型の型開き時に、同固定型17の成形突部25に密着している成形品Mをその成形突部25から突き出して離型させるための機構である。
突き出し機構35の固定盤16側(図1の右側)の部位には第2型保持部36が固定されている。第2型保持部36は、上述した第1型保持部29と同様の構成を有している。第2型保持部36では、コイルに所定の方向へ数秒間通電することにより、アルニコ磁石による磁束の向きを永久磁石による磁束の向きと同じにし、固定盤16と第2型保持部36との間に磁束を通らせ、固定盤16を第2型保持部36の金型吸着面に吸着・保持する。また、第2型保持部36では、コイルに上記とは逆方向に数秒間通電することにより、アルニコ磁石の磁極を反転させ、アルニコ磁石による磁束が金型吸着面から出ないようにして、第2型保持部36の内部にのみ磁束を通らせ、固定盤16の上記吸着・保持を停止する。
固定盤16の外面の複数箇所にはスプルブッシュ37が組み込まれている。これらのスプルブッシュ37と上記キャビティ27とは、固定盤16内及び固定型17内に設けられたランナ(図示略)によって連通状態で接続されている。
固定盤16の近傍には複数(本実施形態では3つ)の射出装置IU1,IU2,IU3が配置されている。各射出装置IU1〜IU3は、上記スプルブッシュ37に接近及び離間するノズル38を備えている。射出装置IU1〜IU3はいずれも、ノズル38が可動型24の移動方向とは異なる方向へ移動するように配置されている。各射出装置IU1〜IU3では、そのノズル38をスプルブッシュ37に当接させた状態で、同ノズル38から溶融樹脂を高圧で射出する。射出された溶融樹脂は、スプルブッシュ37及びランナを経由してキャビティ27に供給される。なお、複数の射出装置IU1〜IU3を用いているのは、各ノズル38から供給される溶融樹脂のキャビティ27内での流路(キャビティ27内に溶融樹脂が充填されるまでの流路)を短くし、もって射出装置IU1〜IU3毎の射出圧を低くするためである。
射出成形機11には、金型の型締めに際し可動型24を固定型17に圧接させるとともに、金型の型開きに際し可動型24を固定型17から離隔させる金型の開閉装置が設けられている。この開閉装置は、可動型24を固定型17に圧接させる複数の圧接機構40と、圧接機構40とは別に設けられて可動型24を固定型17から離隔させる複数の離隔機構とを備えて構成されている。
各圧接機構40は、樹脂成形に際し、固定型17に接触された可動型24を同固定型17に圧接させ、射出が開始されてから溶融樹脂が固化するまでの期間、溶融樹脂の射出圧力によって可動型24が固定型17から開かれないように締め付けるための機構である。
次に、これらの圧接機構40及び離隔機構のそれぞれについて説明する。
<圧接機構40>
複数の圧接機構40は可動プレート28に取付けられている。これらの圧接機構40は、可動プレート28の上部において、互いに前後方向に離間した箇所に配置されたもの(本実施形態では5機)と、同可動プレート28の下部において、互いに前後方向に離間した箇所に配置されたもの(本実施形態では5機)とからなる。これらの圧接機構40は互いに同一の構造を有している。
図4(A)に示すように、可動型24において圧接機構40に対応する複数箇所には、同可動型24の移動方向(図4(A)の左右方向)に沿って延びる貫通孔41が設けられている。この貫通孔41は、1つの圧接機構40につき1本ずつ設けられている。各貫通孔41は、可動型24の移動方向についての両側面において開口している。貫通孔41と同心円上であって各開口42の内方近傍となる2箇所には、円管状をなすガイド部材43がそれぞれ圧入等の方法によって固定されている。
固定型17について、上記貫通孔41と同一直線上には雌ねじ部44が設けられている。詳しくは、固定型17の可動型24側(図4(A)の右側)には凹部45が設けられ、内周面に雌ねじ46を有する筒状の雌ねじ部44が凹部45に圧入されている。この雌ねじ部44もまた固定型17の可動型24側の面において開口している。
各圧接機構40には、軸部47と六角状の頭部48とからなるボルト49が用いられている。軸部47は、上記貫通孔41よりも小径であり、かつ同貫通孔41よりも長い。より詳しくは、軸部47は、可動型24、第1型保持部29及び可動プレート28の各厚み(可動型24の移動方向について長さ)の合計よりも長い。軸部47の先端部(頭部48とは反対側の端部)には、前記雌ねじ部44の雌ねじ46に螺合し得る雄ねじ51が形成されている。ボルト49は、貫通孔41内に、次の条件を満たすように配置されている。
(i)頭部48が可動型24について固定型17とは反対側(図4(A)の右側)に位置すること。
(ii)軸部47の先端が可動型24について固定型17と同一側(図4(A)の左側)に位置すること。
そして、軸部47の大部分は、可動型24の貫通孔41に挿通されている。これに加え、軸部47の一部は、第1型保持部29及び可動プレート28に挿通されている。軸部47は、上述した一対のガイド部材43に対し摺動可能に挿通支持されている。
こうした構成のボルト49では、雄ねじ51が雌ねじ部44の雌ねじ46に螺合させられる。頭部48が後述する油圧ワッシャ63に接触させられた状態で、すなわち、油圧ワッシャ63及び第1型保持部29を介して可動型24に間接的に接触させられた状態で、ボルト49がさらに締まる側へ回転させられると、軸部47が軸方向へ伸びる。ボルト49は、軸部47の伸びにより軸力を発生して可動型24を固定型17に圧接させる役割を担っている。
ここで、雌ねじ部44が固定型17の可動型24側の面で開口させられていて、キャビティ27の近くにおいてボルト49が締付けられる。そのため、締付けに伴い発生するキャビティ27の変形(撓み)が少なく、成形品Mの形状についての成形精度が高められる。また、ボルト49の軸力が効率よく固定型17及び可動型24間に作用させられるため、その分、ボルト49の要求軸力が小さくなる。
可動プレート28の可動型24とは反対側(図4(A)の右側)には、上記ボルト49の頭部48を回転駆動するための駆動機構52が設けられている。
この駆動機構52について説明すると、可動プレート28の上記頭部48を取り囲む複数箇所には、可動型24の移動方向(図4(A)の左右方向)へ延びる複数本の支柱53が配設されている。これらの支柱53の一端(図4(A)の右端)には取付板54が固定されている。取付板54には、サーボモータ等からなる電動モータ55が、その出力軸56を前記可動型24の移動方向と平行状態にして取付けられている。
上記電動モータ55の出力軸56の回転をボルト49の頭部48に伝達するために、六角状の穴57を有する有底の筒状体58が用いられ、この筒状体58が穴57において上記頭部48に嵌合されている。
上記筒状体58は円筒状の外周面を有している。一方、上記複数本の支柱53について、可動型24の移動方向についての複数箇所(図4(A)では2箇所)には軸受59が取付けられている。そして、上記筒状体58がこれらの軸受59により上記支柱53に回転可能に支持されている。電動モータ55の出力軸56と上記筒状体58とは、カップリング61により一体回転可能に連結されている。上述した筒状体58とカップリング61とにより、電動モータ55の出力軸56の回転をボルト49の頭部48に伝達する回転伝達部が構成されている。
上記筒状体58の穴57の内底面(図4(A)の右側の面)と、ボルト49の頭部48との間には、付勢部材として、コイルばね等のばね62が圧縮された状態で介装されている。このばね62により、ボルト49が常に雌ねじ部44側へ弾性付勢されている。
さらに、第1型保持部29とボルト49の頭部48との間には、ボルト49の回転による軸部47の伸び分に相当する軸力を発生させるための軸力発生補助手段として、油圧ワッシャ63が介装されている。図4(B)は、油圧ワッシャ63の内部構造を示している。この図4(B)に示すように、油圧ワッシャ63は、可動プレート28に設けられた収容孔64内に組み込まれている。収容孔64は、上記可動型24の貫通孔41と同一直線上において、その貫通孔41よりも大径状に形成されている。
油圧ワッシャ63は、シリンダ65及びピストン66を備えて構成されている。シリンダ65は円環状をなしており、上記収容孔64に嵌合固定されている。シリンダ65には、可動型24とは反対側(図4(B)の右側)の面において開口する環状凹部67が形成されている。ピストン66は円環状をなしており、上記環状凹部67内にシリンダ65からの出没可能に収容されている。環状凹部67の内底面とピストン66との間の空間は油圧室68を構成している。可動プレート28及びシリンダ65には、可動プレート28の外部と油圧室68とを繋ぐ油路69が形成されている。そして、可動プレート28の外部から高圧の作動油が油路69を通じて油圧室68に供給されると、その作動油の油圧がピストン66に作用し、同ピストン66がシリンダ65から突出してボルト49の頭部48を大きな力で押圧するように構成されている。
この構成により、可動型24を固定型17に圧接させるために必要な要求軸力の一部が、油圧ワッシャ63の発生する軸力によって賄われる。ボルト49の回転に伴う伸びによって発生すべき軸力が小さくなり、この軸力をボルト49に発生させる電動モータとして、出力トルクの小さな小型の電動モータ55を採用することが可能とされている。
上記のようにして各圧接機構40が構成されている。各圧接機構40では、可動型24を固定型17に接触させた状態で、電動モータ55により頭部48を通じてボルト49が締まる側へ回転させられる(これについては後で詳述する)。軸部47の先端部(雄ねじ51)が雌ねじ46に螺入させられることにより、可動型24が固定型17に圧接される。このように、ボルト49が締まる側へ回転されることによって、可動型24が直接固定型17に圧接させられる。このことから、一般的な射出成形機とは異なり、可動型24を移動させるためのダイプレート及びタイバーは用いられていない。その分、可動型24を移動させて金型を開閉するための装置(開閉装置)が、一般的な射出成形機におけるものよりも小型となっている。
<離隔機構>
上記射出成形機11では、金型の型締めに際し上記圧接機構40により、可動型24が非常に大きな力で固定型17に圧接される。金型の型開きに際し可動型24を固定型17から離隔させる場合には、その初期(可動型24を固定型17から5mm〜10mm程度離間させる期間)に、通常時よりも大きな力が必要となる。これは、以下の理由による。
(I)圧接時には、固定型17及び可動型24間であってキャビティ27以外の箇所に溶融樹脂が流れないように、可動型24を固定型17に平坦な面で密着させている。そのため、型開き時には、上記のように密着している可動型24を移動させなければならず、そのために離隔に際し大きな力が必要となる。
(II)可動型24は、キャビティ27内に充填されて冷却・固化した合成樹脂(成形品M)に接触しているところ、型開き時の初期には可動型24を成形品Mから剥がさねばならず、そのために離隔に際し力が必要となる。
そこで、本実施形態では、図2及び図8の少なくとも一方に示すように金型の型開きに際し、固定型17に圧接された可動型24を同固定型17から僅かに離隔させるべく複数の離隔機構が設けられている。これらの離隔機構は、上側に位置する一対の離隔機構71,71と、下側に位置する一対の離隔機構72,72とからなる。上側の両離隔機構71,71は、射出成形機11の上フレーム部14において、固定型17の可動型24との型合わせ面17Aの上方近傍において、互いに前後方向に離間した箇所に固定されている。下側の両離隔機構72,72は、射出成形機11の下フレーム部13において、固定型17の上記型合わせ面17Aの下方近傍において、互いに前後方向に離間した箇所に固定されている。
上記上側の各離隔機構71及び下側の各離隔機構72は、それらの構成部材が上下対称となる関係で配置されている点を除き、基本的に同様の構成を有している。そのため、ここでは下側の離隔機構72を例に採って説明する。
図9(A)は、離隔機構72の正面図を示し、図10は平面図を示している。また、図11は、図9(A)におけるA−A線に沿った断面構造を示している。図9(A)〜図11に示すように、離隔機構72は、ハウジング73において下フレーム部13に固定されている。ハウジング73は、互いに前後方向に離間した状態で起立する一対の壁部74,74を備えている。各壁部74,74上には、可動型24の移動方向(図9(A)の左右方向)に延びるようにレール75,75が敷設されている。両壁部74,74間には、上下両端部が開口された筒状の可動シリンダ76が可動型24の移動方向への移動可能に配置されている。より詳しくは、可動シリンダ76の周りには、前方及び後方へ延びるフランジ部77,77が設けられており、各フランジ部77の底面にブロック78がそれぞれ固定されている。そして、各ブロック78が対応するレール75に摺動可能に係合されている。
可動シリンダ76内には、棒状をなす離隔部材79が上下方向(鉛直方向)への摺動可能に収容されている。離隔部材79の上端部は、上側ほど左右方向の厚みが漸減するくさび状をなしている。表現を変えると、離隔部材79の先端部は、固定型17及び可動型24に近づくほど薄くなる楔状をなしている。離隔部材79をこうした楔状とするために、本実施形態では、離隔部材79の先端部の左右両側面、すなわち離隔部材79の固定型17との接触面、及び同離隔部材79の可動型24との接触面が、いずれも離隔部材79の移動方向(上下方向)に対し傾斜した傾斜面81,81とされている。両傾斜面81,81は、左右対称となる関係を有している。
離隔部材79の下方には、同離隔部材79を上記固定型17の型合わせ面17Aに沿って上下駆動することにより、固定型17及び可動型24間に打ち込むためのアクチュエータとして、油圧によってプランジャ82(又はピストン)を往復運動させる油圧シリンダ83が配置されている。この油圧シリンダ83のプランジャ82の先端部(上端部)には、上記離隔部材79が可動型24の移動方向への移動可能に連結されている。
なお、各離隔機構72において、上述した可動シリンダ76、レール75及びブロック78は、同離隔部材79が固定型17及び可動型24間へ打ち込まれるに従い、離隔部材79が可動型24の離隔方向と同一方向へスライドするのを許容するスライド機構80(図11参照)を構成している。
上記離隔機構72には、離隔部材79が固定型17の型合わせ面17Aを含む面P(図9(A)参照)よりも同固定型17側へスライドするのを規制する規制機構90が設けられている。規制機構90について説明すると、前後各壁部74の一側部(図9(A)及び図10の各左側部)には側板84がそれぞれ固定されている。各側板84には、ボルト91が可動シリンダ76の移動方向への位置調整可能に取付けられている。また、可動シリンダ76の一側部(図9(A)及び図10の各左側部)において、上記各ボルト91と同一直線上にはボルト92が、同可動シリンダ76の移動方向への位置調整可能に取付けられている。そして、各ボルト92が対応するボルト91に当接することにより、離隔部材79がそれ以上固定型17側へスライドすることが規制される。なお、ボルト91,92の少なくとも一方を回転させることにより、ボルト92とボルト91との当接位置を変更することが可能である。従って、上記位置調整により、金型(固定型17及び可動型24)の種類に拘わらず、離隔部材79を、固定型17の型合わせ面17Aを含む面P上に位置させることが可能である。
さらに、離隔機構72には、離隔部材79(可動シリンダ76)を常に固定型17側へ弾性付勢する弾性部材が用いられている。より詳しくは、前後各壁部74の他側部(図9(A)及び図10の各右側部)には側板85,85がそれぞれ固定されている。前後両フランジ部77,77における他側部(図9(A)及び図10の各右側部)にはそれぞれ凹部86,86が形成されている。また、各側板85の上部において上記凹部86に対向する箇所にも凹部87が形成されている。これらの形成により、互いに対向する凹部86,87の組み合わせが一対存在することとなる。各組み合わせにおける両凹部86,87の底部間には、上記弾性部材として、コイルばね等のばね88が圧縮された状態で配置されており、このばね88により可動シリンダ76が常に固定型17側へ付勢されている。
図9(A),(B)の少なくとも一方に示すように固定型17について、その下面と型合わせ面17Aとの境界部分において、互いに前後に離間した2箇所には凹部94,94がそれぞれ形成されている。同様に、可動型24について、その下面と、型合わせ面24Aとの境界部分において、互いに前後に離間した2箇所には凹部95,95がそれぞれ形成されている。相対向する両凹部94,95は、それぞれ上側ほど可動型24の移動方向(図9(A),(B)の各左右方向)の深さが漸減する傾斜面96,96を有している。
なお、固定型17について、その上面と型合わせ面17Aとの境界部分についても、また、可動型24について、その上面と型合わせ面24Aとの境界部分についても、上記凹部94,95とは上下対称となる関係を有する凹部94,95が形成されている。
このようにして下側の離隔機構72が構成されている。上述したように、上側の離隔機構71もこの下側の離隔機構72と同様の構成を有している。これらの複数の上側の離隔機構71、及び複数の下側の離隔機構72は、可動型24の固定型17からの離隔に際し、固定型17及び可動型24間の複数箇所に離隔部材79を同時に打ち込むためのものである。
次に、上述した圧接機構40及び離隔機構71,72を有する射出成形機11を用いて成形品Mを成形する手順について説明する。
図5の実線は、固定型17から可動型24が離間した状態の所定の圧接機構40を示している。この状態では、電動モータ55の出力軸56は回転を停止している。油圧ワッシャ63では、油圧室68に作動油が供給されておらず、油圧室68の油圧が低下している。ボルト49については、ばね62によって付勢された頭部48が油圧ワッシャ63のピストン66を押圧している。この押圧により、ピストン66はシリンダ65内に没入している。また、ボルト49の軸部47の先端部の雄ねじ51は貫通孔41から固定型17側へ露出しているが、固定型17の雌ねじ部44からは離間している。他の圧接機構40についても上記所定の圧接機構40と同様の状態となっている。
上記の状態から、電動モータ31及びボールねじの作動により可動型24を固定型17に接近する側(図5の左側)へ移動させると、それに伴い可動型24から露出している軸部47の雄ねじ51もまた固定型17に接近する。この接近の過程で、図5において二点鎖線で示すように雄ねじ51が雌ねじ部44に当接する。この状態では、可動型24は固定型17から未だ離間している。
電動モータ31及びボールねじの作動によりさらに可動型24を固定型17に接近する側へ移動させると、ボルト49のそれ以上の同方向への移動が規制されることから、図6に示すように、油圧ワッシャ63がボルト49の頭部48から離間する。筒状体58についても可動型24と一緒に固定型17に接近するため、ボルト49の頭部48と筒状体58の内底面との間のばね62が圧縮される。
図7に示すように、可動型24が固定型17に接触したところで、電動モータ31及びボールねじの作動を停止させる。この状態では、固定型17及び可動型24間にキャビティ27が形成される。電動モータ55の出力軸56を締まる側へ回転させる。この出力軸56の回転は、カップリング61を介して筒状体58に伝達され、これらとともにばね62が回転駆動される。筒状体58の回転により、ボルト49がその頭部48において回転される。このボルト49は、圧縮されたばね62によって弾性付勢されている。この弾性付勢により、ボルト49の軸部47の先端部は、同ボルト49の回転中、雌ねじ部44に押圧され続ける。そして、軸部47における雄ねじ51の端が雌ねじ部44における雌ねじ46の端に合致すると、ばね62によって弾性付勢されている雄ねじ51が雌ねじ46に噛み合い、軸部47の雌ねじ部44への螺入が開始される。
さらに、電動モータ55の出力軸56に回転をさせ続けることで、ボルト49が締まる側へ回転し続ける。軸部47の雄ねじ51が雌ねじ部44の雌ねじ46に螺入していく。可動型24の固定型17側への移動が停止していることから、上記のようにボルト49が雌ねじ46に螺入していくと、頭部48が油圧ワッシャ63に接近する。図4(A)に示すように、頭部48が油圧ワッシャ63に接触したところで、電動モータ55の出力軸56の回転を停止させる。これに伴いカップリング61及び筒状体58の回転が停止され、ボルト49の回転が停止される。雄ねじ51の雌ねじ46への螺入も停止される。ボルト49は、回転に伴い軸部47が軸方向へ伸びることにより軸力を発生するものであるが、この時点では、軸部47はほとんど伸びておらず軸力をほとんど発生していない。
ここで、可動型24を固定型17に圧接させるために必要な軸力を要求軸力とすると、油圧ワッシャ63を用いない場合には、ボルト49の回転のみによる軸部47の伸びによって上記要求軸力に相当する軸力を発生させなければならない。
しかし、本実施形態では、上記の時点で、油路69を通じて作動油を油圧ワッシャ63の油圧室68に供給する。この作動油の供給により油圧室68の油圧が上昇して、同油圧がピストン66に加わる。この油圧の高い状態を、キャビティ27内に溶融樹脂が充填されて冷却・固化するまで維持する。上記の高い油圧により、図4(B)に示すように、ピストン66がシリンダ65から突出してボルト49の頭部48を大きな力で押圧する。ボルト49の回転は停止されているが、上記高い圧力でのピストン66の押圧により軸部47が伸びて軸力を発生する。上記要求軸力の一部が油圧ワッシャ63の軸力によって賄われる。表現を変えると、ボルト49の回転に伴い発生する軸力と上記要求軸力との差分が、上記油圧ワッシャ63の軸力により補われる。本実施形態では、上述したようにボルト49の回転に伴い発生する軸力が小さいものの、結果として、要求軸力がボルト49において発生して、可動型24が固定型17に圧接させられる。この圧接により、固定型17及び可動型24が、キャビティ27を除く箇所(型合わせ面17A,24A)において、隙間のない状態で密着させられる。
上記圧接に際し、各圧接機構40から可動型24に加えられる力は、離隔機構71,72の影響を受けない。これは、各圧接機構40が離隔機構71,72とは別に設けられていて、同離隔機構71,72とは異なるアクチュエータ(電動モータ55及び油圧ワッシャ63)によって圧接のための力が発生されるからである。そのため、圧接に要求される力に対し過不足のない適正な大きさの力で可動型24を固定型17に圧接させることが可能である。
続いて、全ての射出装置IU1〜IU3を作動させて、それらのノズル38を対応するスプルブッシュ37に接触する位置まで移動させる。射出装置IU1〜IU3を作動させ、それらのノズル38から溶融樹脂をスプルブッシュ37内へ射出する(図1参照)。この溶融樹脂は、ランナを通ってキャビティ27内に供給され、同キャビティ27内に溶融樹脂が充填される。この際、各圧接機構40によって、可動型24が固定型17に圧接されているため、溶融樹脂の射出圧力によって可動型24が固定型17から離間することはない。
また、本実施形態では複数の射出装置IU1〜IU3が用いられているが、これらの射出装置IU1〜IU3は、そのノズル38が可動型24の移動方向とは異なる方向へ移動するように配置されている。この配置により、圧接機構40による圧接、及び後述する離隔機構71,72による離隔に影響を及ぼすことなく、各射出装置IU1〜IU3からキャビティ27に溶融樹脂が供給される。
上記溶融樹脂は、冷却・固化されることで、キャビティ27内で所望の成形品Mに賦形される。
そして、上記のように成形品Mが形成されると、次に、この成形品Mをキャビティ27から取り出すために、可動型24を固定型17から離れさせる型開きを行う。
この型開きに際しては、全ての離隔機構71,72について、離隔部材79の固定型17及び可動型24間への打ち込みに先立ち、油圧シリンダ83によって同離隔部材79を可動シリンダ76から突出させる。
図9(A)に示すように上記離隔部材79は、規制機構90により、固定型17の型合わせ面17Aを含む面Pよりも固定型17側へスライドすることが規制されている。しかも、離隔部材79(可動シリンダ76)は、ばね88により常に固定型17側へ弾性付勢されている。これらの規制機構90及びばね88により、離隔部材79は、固定型17及び可動型24間に入り込む前は、固定型17の型合わせ面17Aを含む面P上に位置している。
全ての離隔部材79の先端部が、図12に示すように固定型17及び可動型24の対応する凹部94,95の傾斜面96に軽く接触したところで、油圧シリンダ83による離隔部材79の突出を一旦停止させる。このように、全ての離隔機構71,72の離隔部材79を予め凹部94,95に接触する位置まで移動させる。
また、油圧ワッシャ63では、図4(B)の状態から、油圧室68内の作動油を排出させる等して、同油圧室68内の油圧を低下させる。ピストン66には、ばね62の付勢力がボルト49の頭部48を介して作用している。そのため、ピストン66は頭部48によって押圧されてシリンダ65内に没入する。これに伴い、油圧ワッシャ63による軸力が減少する。
続いて、電動モータ55の出力軸56を上記とは逆方向、すなわちボルト49が緩まる側へ回転させる。この回転がカップリング61及び筒状体58を介してボルト49に伝達され、同ボルト49がばね62に抗しながら後退(電動モータ55側へ移動)する。ボルト49の回転による軸部47の軸力が減少し、型締め状態が解除される。上記後退により、図7に示すように、軸部47の雄ねじ51が雌ねじ部44から抜け出たところで、全ての離隔機構71,72について、油圧シリンダ83を作動させてプランジャ82を突出させ、離隔部材79を可動シリンダ76から一斉に突出させる。これらの突出に伴い、各離隔部材79が固定型17の型合わせ面17Aに沿って移動させられ、同離隔部材79の先端部が対応する凹部94,95内に上記図12の状態よりもさらに入り込む。すなわち、図13に示すように、各離隔部材79が固定型17及び可動型24間に打ち込まれる。ここで、可動型24の移動方向についての離隔部材79の同先端部の厚みが、固定型17に近づくほど小さくなっている(楔状をなしている)。また、凹部94,95が上記先端部に対応した傾斜面96を有している。これらのことから、離隔部材79が凹部94,95内に入り込む方向へ移動している期間、上記油圧シリンダ83が離隔部材79を押し上げる(打ち込む)力の数倍の大きな力が凹部94,95の傾斜面96を通じて固定型17及び可動型24に作用する。
本実施形態では、離隔機構が複数(複数の離隔機構71及び複数の離隔機構72)設けられていて、全ての離隔機構71,72において、固定型17及び可動型24間の複数箇所に離隔部材79が同時に打ち込まれる。この際、仮に離隔部材79の固定型17及び可動型24間に入り込む量がばらつくと、可動型24が各離隔部材79から均等に力を受けず、同可動型24が正規の姿勢から傾いて噛み込み等が生じ、離隔機構71,72によって可動型24を固定型17から適正に離隔させることが困難となるおそれがある。
この点、本実施形態では、先述したように、全ての離隔機構71,72において、各離隔部材79の打ち込みに先立ち、その離隔部材79が固定型17及び可動型24に接触する位置まで移動させられている。そのため、上記のように全ての離隔機構71,72が作動させられて全ての離隔部材79が同時に打ち込まれると、各離隔部材79の固定型17及び可動型24間へ入り込む量が均一となる。その結果、可動型24が各離隔部材79から均等に力を受け、同可動型24が傾くことなく正規の姿勢で固定型17から適正に離隔させられる。
上記固定型17について凹部94,95とは反対側(図13の左側)には第2型保持部36を介して突き出し機構35が位置している(図1、図2参照)。これらの第2型保持部36及び突き出し機構35は固定されていて移動しない。そのため、凹部94,95の傾斜面96に対し、上記のような離隔部材79による力が発生しても、固定型17は第2型保持部36及び突き出し機構35側へは移動しない。
これに対し、可動型24については、スライド部材21とともに移動可能である。そのため、上記離隔部材79による力で図13に示すように可動型24が固定型17から離隔させられる。この離隔に際し、離隔機構71,72から可動型24に加えられる力は、各圧接機構40の影響を受けない。これは、離隔機構71,72が圧接機構40とは別に設けられていて、同圧接機構40とは異なるアクチュエータ(油圧シリンダ83)によって離隔のための力が発生されるからである。そのため、離隔に要求される力に対し過不足のない適正な大きさの力で可動型24を固定型17から離隔させることが可能である。
なお、離隔部材79が可動シリンダ76から突出するに従い、離隔部材79における両傾斜面81,81の凹部94,95における傾斜面96,96に対する接触箇所が変化する。この変化に伴い離隔部材79に対し、同図13において矢印で示すように、固定型17から離れる側へ移動させようとする力が作用する。この点、離隔部材79が収容された可動シリンダ76は、ブロック78においてレール75にスライド可能に係合されていて(図11参照)、同レール75に沿って可動型24の離隔方向と同一方向へスライド可能である。そのため、上記力が離隔部材79を通じて可動シリンダ76に作用すると、同可動シリンダ76は離隔部材79とともに、ばね88を弾性変形(圧縮)させながらレール75に沿って可動型24の離隔方向と同一方向へスライドする。表現を変えると、ばね88が弾性変形することで、可動シリンダ76のレール75に沿ったスライドが許容される。このスライドにより、離隔機構71,72の各部に無理な力が加わることなく、離隔部材79が凹部94,95にスムーズに入り込み、可動型24が固定型17から離隔させられる。
可動型24が固定型17から所定長さ(5〜10mm)離隔させられたところで、全ての離隔機構71,72について、油圧シリンダ83によって離隔部材79を一斉に後退させて可動シリンダ76内に没入させる。これらの没入に伴い、各離隔部材79が固定型17の型合わせ面17Aに沿って移動させられ、同離隔部材79の先端部が対応する凹部94,95から抜け出る。
離隔部材79が後退するに従い、離隔部材79における両傾斜面81,81の凹部94,95における傾斜面96,96に対する接触箇所が変化する。この変化に伴い離隔部材79に対し、固定型17から離れる側へ移動させようとする上記力が弱まる。可動シリンダ76は、上述したようにばね88により、固定型17側へ付勢されている。そのため、上記力が弱まるに従いばね88が弾性復元し、可動シリンダ76が離隔部材79とともに、レール75に沿って可動型24の離隔方向と反対方向へスライドする。そして、離隔部材79は凹部94,95から抜け出たときには、固定型17の型合わせ面17Aを含む面P上に復帰する(図9(A)参照)。
この状態で、電動モータ31及びボールねじ(図2参照)の作動により、可動型24を可動プレート28とともに固定型17から離間する側(図2の右側)へ移動させる。この移動に伴い、図6に示すように、可動型24が固定型17から離れていく。なお、上記のように可動型24が固定型17から離れる際には、成形品Mは成形凹部26から剥がれ、固定型17の成形突部25に密着している。
可動型24が固定型17から所定距離離れたところで、突き出し機構35(図1、図2参照)の作動により成形品Mを突き出して、成形突部25から剥がし、固定型17及び可動型24間から取り出す。
ところで、上記各圧接機構40では、第1型保持部29による吸着・保持が停止された状態で、図1に示すように可動プレート28がボルト49の軸方向へ移動すると、その可動プレート28が可動型24に対し接近又は離間する。これに伴い、複数本のボルト49の全て、及び全ての駆動機構52も一緒に可動プレート28と同一方向へ移動する。この移動により、固定型17及び可動型24に対する全てのボルト49及び全ての駆動機構52の位置が変化する。
従って、射出成形機11に対し固定型17及び可動型24を脱着する作業、いわゆる段取り替え作業を行う場合には、上記各離隔機構71,72等を用いた型開きの後、電動モータ31の出力軸32を回転させて、ねじ軸33を緩まる側へ回転させる。ねじ軸33の回転がナット34を介してスライド部材22に伝達され、同スライド部材22が可動プレート28を伴いながらねじ軸33に沿って可動型24から遠ざかる方向へ移動する(図1の二点鎖線参照)。この移動により、全てのボルト49の軸部47を可動型24の貫通孔41から抜き出す。この際、固定型17及び可動型24については特段移動させなくてもよい。全てのボルト49が貫通孔41から抜け出た後、電動モータ31の出力軸32の回転を止め、スライド部材22及び可動プレート28の移動を停止させる。
この状態では、全てのボルト49が固定型17及び可動型24から抜け出ていることから、それらのボルト49が固定型17及び可動型24の移動、特にボルト49の軸線に直交する方向への移動を規制しない。そのため、固定型17及び可動型24を各ボルト49の軸線と直交する方向へ移動させて、射出成形機11から取り外す。
引き続き、樹脂成形の対象となる新たな固定型17及び可動型24を射出成形機11に取付ける。
さらに、前記とは逆に、可動プレート28を新たな可動型24に近づける方向へ移動させ、全てのボルト49を対応する貫通孔41に挿入する。この挿入により、可動プレート28が可動型24に装着され、圧接機構40による型締めに備えた状態となる。
その結果、可動プレート28を用いず、ボルト49及び駆動機構52の組み合わせを可動型24に直接脱着する場合に比べ、段取り替え作業が容易となる。このことは、貫通孔41及び同貫通孔41に対応する雌ねじ部44の組み合わせが複数設けられ、ボルト49及び駆動機構52が貫通孔41及び雌ねじ部44の組み合わせ毎に設けられている本実施形態では、特に顕著なものとなる。これは、共通の可動プレート28がボルト49の軸方向へ移動して可動型24に接近又は離間すると、これに伴い全ての組み合わせのボルト49及び駆動機構52も一緒に可動プレート28と同一方向へ一斉に移動する。この移動により、固定型17及び可動型24に対する全ての組み合わせのボルト49及び駆動機構52の各位置が変化するからである。その結果、段取り替え作業の時間短縮と、同作業の簡易化とがともに図られる。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)可動型24を固定型17に圧接させる際には圧接機構40を用い、可動型24を固定型17から離隔させる際には、上記圧接機構40とは別に設けられた離隔機構71,72を用いるようにしている。そのため、可動型24を固定型17に圧接させることと、同可動型24を固定型17から離隔させることとを共通の機構により行う場合とは異なり、適切な力で可動型24を固定型17に圧接させ、かつ適切な力(圧接時よりも小さな力)で可動型24を固定型17から離隔させることができる。
また、圧接機構40のアクチュエータ(電動モータ55、油圧ワッシャ63)と、離隔機構71,72のアクチュエータ(油圧シリンダ83)とが、出力の調整できる領域(出力レンジ)の狭いものであっても、適正な力による上記圧接及び離隔を実施できる。そのため、出力レンジの広いアクチュエータを用いなくてもすみ、それに伴い開閉装置を安価に構成することができる。
(2)上記離隔機構71,72として、固定型17と、同固定型17に圧接された可動型24との間に打ち込まれる楔状の離隔部材79を備えるものを採用している。すなわち、離隔部材79として、可動型24の移動方向についての離隔部材79の厚みが、固定型17に近づくほど小さくなるものを用い、この離隔部材79を、固定型17の可動型24との型合わせ面17Aに沿って移動させることにより、同離隔部材79を固定型17及び可動型24間に打ち込むようにしている。そのため、離隔部材79を固定型17及び可動型24間に打ち込むときよりも大きな力で可動型24を固定型17から離隔させることができる。
(3)離隔部材79が固定型17及び可動型24間へ打ち込まれるに従い、同離隔部材79が可動型24の離隔方向と同一方向へスライドするのを許容するスライド機構80を各離隔機構71,72に設けている。そのため、離隔部材79が固定型17及び可動型24間に入り込むに従い、同離隔部材79に対し固定型17から離れる側へ移動させようとする力が作用するものの、同離隔部材79を可動型24の離隔方向と同一方向へスライドさせることができる。このスライドにより、離隔機構71,72の各部に無理な力が加わるのを抑制し、離隔部材79を固定型17及び可動型24間にスムーズに入り込ませることができる。
(4)全ての離隔機構71,72において、離隔部材79の打ち込みに先立ち、その離隔部材79を固定型17及び可動型24に接触する位置まで移動させるようにしている。そのため、全ての離隔部材79の固定型17及び可動型24間へ入り込む量を均一にし、可動型24を傾かせることなく正規の姿勢で固定型17から適正に離隔させることができる。
(5)離隔部材79が、固定型17の型合わせ面17Aを含む面Pよりも同固定型17側へスライドするのを規制する規制機構90と、離隔部材79を常に固定型17側へ弾性付勢するばね88とを、各離隔機構71,72に設けている。
そのため、離隔部材79による可動型24の離隔に際し、その都度離隔部材79を固定型17の型合わせ面17Aを含む面P上へ移動させる操作を行わなくてもすむ。
また、離隔部材79による可動型24の離隔時には、ばね88を弾性変形(圧縮)させることで、可動シリンダ76及び離隔部材79のレール75に沿ったスライドを実現することができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
・スライド機構80において、可動シリンダ76をレール75にスライド可能に係合させる構成を、上記実施形態(摺動)とは異なるものに変更してもよい。例えば、可動シリンダ76を、車輪、ボール、ローラ等によりレール75上に転動可能に係合させてもよい。
・各圧接機構40では、可動型24を固定型17に接触させたときに両者17,24間に形成されるキャビティ27の形状に応じてボルト49の位置を設定(変更)することにより、適度な型締め力を得ることができ、固定型17及び可動型24の小型化を容易に行うことができる。このようにすると、圧接機構40を用いたことによる上記金型の開閉装置の小型化と相まって、射出成形機11の小型化を図ることができる。
・固定型17及び可動型24の組み合わせを成形品Mの種類と同数設ける。この場合、キャビティ27の形状、位置等は固定型17及び可動型24の組み合わせ毎に異なるが、貫通孔41及び雌ねじ部44については、組み合わせに拘わらず全ての組み合わせに共通する箇所に設ける。このようにすると、圧接機構40の取付けられた可動プレート28については、上記組み合わせに共通のものを用いることができる。少ない数の可動プレート28でありながら、固定型17及び可動型24について複数種類の組み合わせに対応することができる。
・各圧接機構40について、ボルト49に代え、図14に示すように、スタッドボルト(植え込みボルト)97及びナット98の組み合わせが用いられてもよい。
この場合、可動型24において、その移動方向に沿って延びるように設けられた貫通孔41には、軸部のみからなり、かつ両端に雄ねじ99を有するスタッドボルト97が挿通される。このスタッドボルト97としては、可動型24、第1型保持部29及び可動プレート28の各厚みの合計よりも長いものが用いられる。上記のように、スタッドボルト97を貫通孔41に挿通させた状態では、その両端部が貫通孔41から露出する。特に、スタッドボルト97において、貫通孔41から電動モータ55側(図14の右側)に露出する部分については、油圧ワッシャ63からも露出し、筒状体58内に入り込む。
固定型17の上記貫通孔41と同一線上には、可動型24側の面(図14の右側面)において開口するねじ穴100が設けられる。そして、上記貫通孔41から露出したスタッドボルト97の一端部(図14の左端部)がねじ穴100に螺合されることにより、スタッドボルト97が固定型17に固定される。なお、スタッドボルト97は、上記とは異なる手段によって固定型17に固定(植設)されてもよい。
筒状体58内には、上記実施形態におけるボルト49の頭部48に代えて、ナット98が配置され、上記スタッドボルト97において筒状体58内に入り込んだ部分(雄ねじ99)がこのナット98に螺入される。可動型24とナット98との間には、上記実施形態と同様の構成を有する油圧ワッシャ63が、軸力発生補助手段として配設される。この変更例でも従来のものとは異なり、ダイプレート及びタイバーは用いられない。
なお、図14では、上記実施形態と同様の部材、箇所等については同一の符号が付されている。このように変更した場合でも、ボルト49を用いた上記実施形態と同様の効果が得られる。
・上記実施形態及び上記変更例の少なくとも一方において油圧ワッシャ63を省略してもよい。この場合には、ボルト49(又はナット98)の回転による軸部47(又はスタッドボルト97)の伸び分のみによって軸力を発生させることとなり、油圧ワッシャ63を用いる場合よりも大型の電動モータ55を使用することになるが、ダイプレート及びタイバーを用いる場合よりも金型の開閉装置を小型化する効果は得られる。
・本発明は、固定型17及び可動型24を上下方向に配置し、可動型24を上下方向へ移動させることにより固定型17に接近及び離間させるようにした射出成形機にも適用可能である。
・上記実施形態とは異なり、単一の射出装置から溶融樹脂をキャビティ27内に供給するようにしてもよい。
・上記実施形態について、離隔部材79における両傾斜面81,81のうち可動型24側の傾斜面81を鉛直面にしてもよい。この場合、可動型24における凹部95の傾斜面96についても鉛直面にする。このようにすると、上記実施形態とは異なり、離隔部材79が可動シリンダ76から突出しても、離隔部材79に対し可動型24から離れる側へ移動させようとする力は作用しない。そのため、離隔部材79が収容された可動シリンダ76をスライドさせる機構は不要となる。
・上記実施形態において、ばねとは異なる弾性部材を用いて離隔部材79(可動シリンダ76)を固定型17側へ弾性付勢してもよい。
・離隔部材79の先端部における傾斜面81,81の移動方向に対する傾斜度合いを、同先端部の左右両側部で異ならせてもよい。
17…固定型、17A…型合わせ面、24…可動型、40…圧接機構、71,72…離隔機構、75…レール、76…可動シリンダ、79…離隔部材、80…スライド機構、88…ばね(弾性部材)、90…規制機構、P…面。