以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態が適用された燃料電池システム10を備える燃料電池車両12の概略構成図である。
この燃料電池車両12は、基本的には、燃料電池14と、この燃料電池14の出力を補助するとともに、この燃料電池14の発電電流Ifにより充電される蓄電装置(エネルギストレージ)である、例えば電気二重層コンデンサ等のキャパシタ16と、走行用の駆動モータ等を含む負荷18と、エアコンプレッサ36等の補機とから構成される。ここで前記蓄電装置としては、キャパシタ16以外にバッテリに代替することも可能であり、両方を用いることもできる。
燃料電池14は、固体高分子電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んで保持して構成される燃料電池セルを、複数積層させて一体化させたスタック構造になっている。
具体的には、図2の燃料電池セル114の分解斜視図に示すように、各燃料電池セル114は、電解質膜(固体高分子電解質膜)・電極構造体120と、この電解質膜・電極構造体120を挟持する金属のセパレータ122、124とを備える。
燃料電池セル114の矢印B方向の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、一方の反応ガスである酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給するための酸化剤ガス供給連通孔130a、冷却媒体を供給するための冷却媒体供給連通孔132a、及び他方の反応ガスである燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出するための燃料ガス排出連通孔134bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。
燃料電池セル114の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔134a、冷却媒体を排出するための冷却媒体排出連通孔132b、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔130bが、矢印C方向に配列して設けられる。
電解質膜・電極構造体120は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された電解質膜(固体高分子電解質膜)120bと、この電解質膜120b挟んで保持するアノード電極120a及びカソード電極120cとを備える。
アノード電極120a及びカソード電極120cは、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に支持された多孔質カーボン粒子を前記ガス拡散層の表面に一様に塗布した電極触媒層とをそれぞれ有する。電極触媒層は、電解質膜120bの両面に接合されている。
セパレータ122の電解質膜・電極構造体120に対向する面122aには、酸化剤ガス供給連通孔130aと酸化剤ガス排出連通孔130bとに連通する酸化剤ガス流路(反応ガス流路ともいう。)146が設けられる。酸化剤ガス流路146は、例えば、矢印B方向に延びて存在する複数の溝部とカソード電極120cとの間に形成される。
セパレータ124の電解質膜・電極構造体120に対向する面124aには、燃料ガス供給連通孔134aと燃料ガス排出連通孔134bとに連通する燃料ガス流路(反応ガス流路ともいう。)148が形成される。この燃料ガス流路148は、例えば、矢印B方向に延びて存在する複数の溝部とアノード電極120aとの間に形成される。
セパレータ122の面122bとセパレータ124の面124bとの間には、冷却媒体供給連通孔132aから供給される冷却媒体を冷却媒体排出連通孔132bに導くための冷却媒体流路150が形成される。この冷却媒体流路150は、金属セパレータ122に設けられる複数の溝部と、セパレータ124に設けられる複数の溝部とを重ね合わせることにより、矢印B方向に延びて一体的に構成される。
再び、図1において、燃料電池14には、この燃料電池14に燃料ガス、例えば水素(H2)ガスを供給するための水素供給口20と、燃料電池14から排出される未使用の水素ガスを含む排ガスを排出するための水素排出口22と、燃料電池14に、酸化剤ガス、例えば酸素(O2)を含む空気(エア)を供給するための空気供給口24と、未使用の酸素を含む空気を燃料電池14から排出するための空気排出口26とが設けられている。
なお、水素排出口22と空気排出口26の近傍には、水素排出口22内のガスの温度Thと、空気排出口26内のガスの温度Toを検出する(測定する)温度検出手段としての温度センサ71、72が取り付けられている。また、燃料電池14内の冷却媒体排出連通孔132b(図2)の出口側近傍にも、図示はしないが、前記冷却媒体の温度を検出する(測定する)温度センサが取り付けられている。
水素供給口20には、水素供給流路28が連通される。この水素供給流路28には、エゼクタ48が設けられ、このエゼクタ48は、高圧水素を貯留する水素タンク42から水素供給弁44を通じて供給される水素ガスを、水素供給流路28及び水素供給口20を通じて燃料電池14に供給するとともに、燃料電池14で使用されなかった未使用の水素ガスを含む排ガスを水素排出口22に連通する水素循環流路46から吸引して燃料電池14に再供給する。
水素循環流路46には、アノード電極120aに溜まった水やカソード電極120cから電解質膜120bを透過してアノード電極120aに混入した窒素ガスを含む燃料ガスを水素パージ流路32及び図示しない希釈ボックスを介して外部に排出して発電安定性を確保するため通常発電運転時等に適宜開放される比較的に大流量用の水素パージ弁30が設けられる他、水素循環流路46の図示しないキャッチタンクに溜まった水等を水素ガスを含む排出ガスとともに、排出流路52を介して大気に排出するための比較的に小流量のドレイン弁50が設けられている。
一方、空気供給口24には、空気供給流路34が連通され、この空気供給流路34には、大気からの空気を圧縮して供給するエアコンプレッサ用モータと一体となったエアコンプレッサ36と、エアコンプレッサ36から吐出される高温化された圧縮空気(高温乾燥圧縮空気)を冷却するインタークーラー(I/C)55と、冷却された空気に水分を与えて加湿空気として吐出する加湿器56と、インタークーラー55及び加湿器56をそれぞれバイパスするインタークーラーバイパス弁57と加湿器バイパス弁58とが接続される。
また、空気排出口26には、エアコンプレッサ36から空気供給流路34及び空気供給口24を通じて燃料電池14に供給される空気の圧力を調整するための背圧制御弁38が設けられ、燃料電池14の空気排出口26は、この背圧制御弁38を介し空気排出流路40を通じて大気に連通している。
さらに、燃料電池14の水素供給流路28と空気供給流路35(加湿器56とインタークーラー55との連通路)との間には、空気導入流路53を介して水素供給口20に圧縮空気を導入するための、いわゆるアノード掃気処理時に開放される空気導入弁54が設けられる。
なお、背圧制御弁38を除き、水素供給弁44、空気導入弁54、水素パージ弁30、ドレイン弁50、インタークーラーバイパス弁57、加湿器バイパス弁58は、それぞれオンオフ弁である。
さらに、燃料電池システム10及びこの燃料電池システム10を搭載する燃料電池車両12には、制御装置70が設けられ、この制御装置70により、燃料電池システム10及び燃料電池車両12の前記各種弁の開閉、負荷18の制御、エアコンプレッサ36等の補機の制御、キャパシタ16の充放電制御、ディスチャージ抵抗器80のコンタクタ82のオンオフ制御等を含め、全ての動作が制御される。
制御装置70は、コンピュータ(ECU)により構成され、各種入力に基づきメモリに記憶されているプログラムを実行することで各種の機能を実現する機能手段としても動作する。この実施形態において、制御装置70は、掃気手段、低温時起動対策手段、低温時短時間発電後停止判定手段、掃気処理切替手段、キャパシタ残容量検出(算出)手段、計時手段(カウンタ・タイマ)等として機能する。
なお、図1において、太い実線は電力線を示し、点線は信号線を示す。また、二重線は、配管を示している。
燃料電池システム10の通常発電運転時には、制御装置70による弁制御により、基本的には、水素供給弁44は開放され背圧制御弁38が適量に開いた状態になっており、水素パージ弁30及びドレイン弁50は適宜開かれるが通常は閉じた状態となっており、さらに、空気導入弁54、インタークーラーバイパス弁57、及び加湿器バイパス弁58は、閉じた状態になっている。
この通常発電運転時において、水素タンク42から供給される燃料ガスが、エゼクタ48を介し水素供給流路28を通じて燃料電池14の水素供給口20に供給される。
水素供給口20に供給された燃料ガスは、各燃料電池セル114を構成する燃料ガス供給連通孔134aを通じ燃料ガス流路148に沿ってアノード電極120aに供給されアノード電極120aに沿って移動後、水分を含む未使用の水素ガスを含む排ガスは、燃料ガス排出連通孔134bを通じ水素排出口22から排出されて水素循環流路46に送られる。
水素循環流路46に排出された排ガスは、エゼクタ48の吸引作用下に、水素供給流路28の途上に戻された後、再度、燃料電池14内に燃料ガスとして供給される。この燃料ガスは、水分を含むガス、すなわち加湿ガスになっている。
一方、空気は、外気が圧縮された圧縮空気としてコンプレッサ102から供給され、通常運転時には、インタークーラー55、加湿器56を通じて加湿空気が空気供給流路34に供給される。この空気、すなわち酸化剤ガスは、空気供給口24から各燃料電池セル114を構成する酸化剤ガス供給連通孔130aを通じ酸化剤ガス流路146に沿ってカソード電極120cに供給されカソード電極120cに沿って移動後、未使用の空気を含む排ガスが、酸化剤ガス排出連通孔130bを通じ空気排出口26から空気排出流路40に排出される。
これにより、各燃料電池セル114では、アノード電極120aに供給される燃料ガスである水素と、カソード電極120cに供給される酸化剤ガス中の酸素とが反応して発電が行われる。
この発電の過程について説明すると、アノード電極120aにおいて水素ガスが水素イオン化され水素イオンと電子が発生する。水素イオンは電解質膜120b内を水分を伴ってカソード電極120c側に到達する。発生した電子は、アノード電極120aから図示しない負極側ターミナルプレートを通じて発電電流Ifとして出力され、電流・電圧センサ60を介し、外部負荷{負荷(電気負荷)18、及びエアコンプレッサ36の補機等}を通じカソード電極120cに到達する。そして、電解質膜120bのカソード電極120c側で、酸素が水素イオン及び電子と結合して水になる。余剰となった水は、酸化剤ガス流路146内に貯留する(酸化剤ガス流路146内での液滴発生)。
このように燃料電池セル114では、アノード電極120aで生成された水素イオンが電解質膜120bの中を通ってカソード電極120cに移動するときには、水の分子を同伴する。したがって、水素イオンの導電性を維持するために、電解質膜120bは、水分を含んだ所定の湿潤の状態(所定の含水量)になっていることが必須の要件とされている。
そして、発電状態が一定時間以上継続されると、カソード電極120c側で発生した生成水が電解質膜120b、アノード電極120aを透過して燃料ガス流路148側に伝達され、燃料ガス流路148内にも貯留されることとなる(燃料ガス流路148内での液滴発生)。
すなわち、燃料電池14において発電が開始されると、最初に酸化剤ガス流路146に液滴が発生し、所定発電時間経過後に燃料ガス流路148内にも液滴が発生することになる。
このようにして、供給される両反応ガスにより燃料電池14が発電する通常発電運転時に、燃料電池14から取り出された発電電流Ifは、燃料電池14の電流・電圧センサ60を介して負荷18及びエアコンプレッサ36(のエアコンプレッサ用駆動モータ)に供給されるとともに、キャパシタ16の電流・電圧センサ62を介してキャパシタ16に供給されキャパシタ16が充電される。なお、燃料電池14の積算発電量が、電流・電圧センサ60の出力に基づき、又、キャパシタ16の残容量が、電流・電圧センサ62の出力に基づき、制御装置70で算出管理されメモリに記憶される。
キャパシタ16は、制御装置70の制御下に、燃料電池14の発電電流Ifで充電される。そして、主に、燃料電池14の発電停止時に、キャパシタ16に蓄えられた電力が負荷18及びエアコンプレッサ36に供給される。なお、燃料電池車両12の減速時に駆動輪から負荷18である駆動用モータに駆動力が伝達されると、駆動モータは発電機として機能し、いわゆる回生制動力を発生する。これにより、車体の運動エネルギを電気エネルギとして回収することができ、負荷18側からキャパシタ16に電気エネルギが回生(蓄電)される。
通常発電運転時に、この燃料電池システム10を搭載する燃料電池車両12において、制御装置70は、アクセルペダルの踏み込み量Apや車速Vs等から必要電力を算出し、この算出した必要電力に基づいて燃料電池14、負荷18、エアコンプレッサ36及び背圧制御弁38等にそれぞれ制御信号を送出する等の各種制御を行う。また、制御装置70は、負荷18の制御及び氷点下起動制御等の低温時起動制御を確実に実施するために、電流・電圧センサ60、62、外気温センサ74及び温度センサ71、72から、それぞれ、発電電流If、発電電圧(燃料電池セル114毎の端子電圧)Vf、キャパシタ16に流れ込む電流、キャパシタ16の電圧Vc、外気温Ta、水素排出口22内のガス温度Th、空気排出口26内のガスの温度Toの各信号を取り込む。なお、発電電圧Vfは、それぞれ、燃料電池セル114毎の端子電圧であるが、以下の説明においては、発電電圧Vfは、適宜、平均電圧、総和電圧を用いることができる。
さらに、制御装置70には、燃料電池車両12及び燃料電池システム10の起動信号(始動信号)であるオン信号(燃料電池システム10をオフ状態からオン状態にする信号)及び停止信号であるオフ信号(燃料電池システム10をオン状態からオフ状態にする信号)を出力するイグニッションスイッチ(IGスイッチ)76が接続されている。
基本的には、以上のように構成され、かつ動作する燃料電池システム10及びこの燃料電池システム10を搭載する燃料電池車両12の掃気処理に係る動作について、図3のフローチャートに基づいて説明する。
ステップS1において、制御装置70が燃料電池システム10(燃料電池車両12)の起動信号であるイグニッションスイッチ76のオン信号を検出したとき、ステップS2において、前回の運転停止時(イグニッションスイッチ76のオフ時)に行われた掃気処理の種類に基づく後述する前置処理が行われる。
この前置処理の後、ステップS3において、燃料電池14の発電が開始される。
次に、ステップS4において、燃料電池14の温度を検出する温度検出手段、この実施形態では、水素排出口22に取り付けられた温度センサ71により温度(燃料電池の温度とする。)Thを検出し、その際、温度センサ71が故障していないかどうかが判定される。なお、燃料電池14の温度を検出するセンサとして、水素排出口22に設けられた温度センサ71に代替して、水素供給口20に取り付けられた温度センサ(不図示)、冷却媒体の温度を検出する温度センサ(不図示)、又は空気排出口26に設けられた温度センサ72を使用することができる。
なお、このステップS4での温度センサ71の故障は、出力値が得られない、出力値が変化しない、異常値であるかどうか等により判定される。なお、異常値とは、例えば、ソーク時間(燃料電池システム10が停止して放置されていた時間)が数時間経過しているにも拘わらず、温度センサ71から得られる温度Thと外気温センサ74から得られる温度Taとの差が所定値以上の異常に大きな値になっているとき等をいう。
温度センサ71が故障していなかったときには、ステップS5において、ステップS4で検出した発電開始直後の燃料電池14の温度Th(Th=Ts)が所定温度(閾値)Ta以下であるかどうかが判定される。ここでの、所定温度Taは、例えば、低温時の目安とされる氷点である0[℃](Ta=0)に設定される。
次いで、発電開始直後の燃料電池14の温度Th(Th=Ts)が所定温度Ta以下の温度であった場合(Ts≦Ta)、ステップS6において、イグニッションスイッチ76がオフ信号を出力したかどうかが検出される。オフ信号が検出されると、燃料電池14の起動(ステップS1)後の発電運転中に停止要求を受けたと判定され、次のステップS7において、今回起動時点(ステップS1)から停止要求を受けた時点(ステップS6)までに燃料電池14の発電により水分が、燃料電池14内で発生しているかどうかが判定される。
このステップS7の判定は、電流・電圧センサ60によって検出される発電電流Ifと発電電圧Vfと経過時間(今回起動時点から停止要求を受けた時点までの時間)により制御装置70で算出される電力量、いわゆる積算発電量[Wh]で判定することができる。また、積算発電量に代替して、燃料電池14の重量変化により判定することもできる。さらには、単に、前記経過時間のみで判定することもできる。いずれの場合にも、積算発電量と水分量との関係、あるいは重量変化と水分量との関係、及び経過時間と水分量との関係を予め求めて制御装置70のメモリに格納しておき、この関係(特性)を参照して水分量(水分の発生)を検出することができる。
ステップS7において、例えば、前記経過時間がきわめて短いために水分が発生していないと判定された場合には、掃気処理を行う必要がないので、掃気処理を行わずに、ステップS8において、燃料電池システム10の通常の停止処理(水素供給弁44を閉じる、エアコンプレッサ36を停止させる等の処理)が行われる。
その一方、ステップS7において、水分が発生していると判定されたときには、ステップS9において、燃料電池14の温度Th(今回の運転停止時である停止要求を受けた時点の温度Teとする。)を温度センサ71により検出し、検出したイグニッションスイッチ76をオフ状態とした直後の温度Th(Th=Te)が、が所定温度(閾値)Tb以下であるかどうかが判定される。この所定温度Tb(Ta<Tb)は予め決定され、メモリに格納されている温度であるが、このステップS9の判定は、発電開始からそれほど時間が経過していないため酸化剤ガス流路146側のみに水分が発生していて、燃料ガス流路148側には水分が伝達していない状態を判定するための閾値である。
なお、このステップS9の判定は、今回の起動時(ステップS1:YES)からイグニッションオフ時(ステップS6:YES)までに発電された積算発電量が所定積算発電量以下であるかどうかにより判定することもできる。
ステップS9の判定が否定的である場合、すなわち、燃料電池14の温度Th(Th=Te)が所定温度Tbを超える値であった場合には、ステップS10において、ステップS9で検出された燃料電池14の温度Th(Th=Te)が、所定温度(閾値)Tc以下であるかどうかが判定される(Tb≦Te≦Tc)。
この所定温度Tc(Tb<Tc)は予め決定され、メモリに格納されている温度であるが、このステップS10の判定は、酸化剤ガス流路146と燃料ガス流路148の両方に水分が発生しているかどうかを判定するためのものである。つまり、所定温度Tcは、酸化剤ガス流路146と燃料ガス流路148の両方に水分が発生していることを判定するための閾値である。
ステップS10の判定が肯定的である場合、また、ステップS9の判定が肯定的である場合には、ステップS6でのイグニッションスイッチ76からのオフ信号の受信(イグニッションスイッチ76のオフ状態への操作)は、低温時短時間発電後停止要求の操作であると決定される。そして、ステップS10の判定が肯定的であった場合には、ステップS11において、低温時短時間発電後停止要求に基づく掃気処理フラグFsとして、第2掃気処理用の値「2」を立てる(Fs=2)。
また、ステップS9の判定が肯定的であった場合にも、ステップS6でのイグニッションスイッチ76からのオフ信号の受信は、低温時短時間発電後停止要求の操作であると決定され、ステップS12において、低温時短時間停止要求に基づく掃気処理フラグFsとして、第1掃気処理用の値「1」を立てる(Fs=1)。
さらに、ステップS5の判定において、発電開始直後の燃料電池14の温度Th(Th=Ts)が、所定温度Ta(Ta=0[℃])を超える温度であって(Ts>Ta)、その後、ステップS13において、イグニッションスイッチ76からオフ信号を受信したとき、及びステップS10の判定において、燃料電池14の温度Th(Th=Te)が、所定温度Tcを超える温度であった場合(Te>Tc)には、ステップS6におけるイグニッションスイッチ76のオフ信号の受信は、それぞれ、低温時起動に該当せず、また低温時起動に該当しても充分な時間発電運転が行われていたものと判定し、それぞれ低温時短時間発電後停止要求ではないものと決定する。そのため、ステップS14において、掃気処理フラグFsとしてフラグを立てない(Fs=0)で、通常掃気処理用のデフォルト値のままとする。
次いで、ステップS15において、掃気処理フラグFsが立っているかどうか判定され、掃気処理フラグFsが立っていた場合には、ステップS16において、その掃気処理フラグFsの値が第1掃気処理用の値「1」か、第2掃気処理用の値「2」かが判定され、判定結果に応じて、ステップS18では、第1掃気処理の2段掃気処理(後述する。)が行われ、ステップS19では、第2掃気処理の3段掃気処理(後述する。)が行われる。また、ステップS15において、掃気処理フラグFsが立っていなかった場合には、ステップS17で、燃料電池14が通常通りに停止されたときの通常掃気処理が行われる。
さらに、ステップS4において、温度センサ71が故障していると判断された後、ステップS20において、イグニッションスイッチ76がオフ状態とされたときには、ステップS18の2段掃気処理が行われる。
いずれかの掃気処理が行われた後、ステップS8のシステム停止処理が行われる。
次に、ステップS17の通常掃気処理、ステップS18の2段掃気処理、及びステップS19の3段掃気処理の意義並びに処理内容をフローチャート及びタイムチャートを利用して説明する。
まず、図4のフローチャートを参照して、ステップS13の今回のイグニッションスイッチ76のオフ状態への操作が、低温時短時間発電後停止要求ではないと判定した場合の、換言すれば、通常時の停止要求と判定した場合のステップS17の通常掃気処理の動作について説明する。
この場合、ステップS17aにおいて、制御装置70により水素供給弁44が閉じられ(遮断され)燃料電池14に対する燃料ガスの供給が停止される。
次いで、ステップS17bにおいて、インタークーラーバイパス弁57と加湿器バイパス弁58が開かれて、さらにエアコンプレッサ36の吐出空気量が増量され、大流量とされた乾燥空気が空気供給口24から燃料電池14内に導入される。
導入された大流量の乾燥空気により燃料電池14内の酸化剤ガス流路146の生成水(液滴)等が、空気排出口26、背圧制御弁38、及び空気排出流路40を介して大気に掃気用の空気とともに排出されることで、カソード側の掃気処理が開始される。
次いで、ステップS17cにおいてディスチャージ制御が開始される。ディスチャージ制御は、燃料電池14の燃料ガス流路148等に残存する燃料ガスを短時間に消費させること等を目的に行われる処理であり、この場合、コンタクタ82が閉じられて発電電流Ifの一部がディスチャージ抵抗器80により消費される。また、ディスチャージ制御では、発電電流Ifは、エアコンプレッサ36の駆動にも使用される。
次に、ステップS17dにおいて、所定時間経過後に、カソード側掃気処理が完了すると、ステップS17eにおいて、エアコンプレッサ36の作動が停止されることで、燃料電池14に対する空気の供給が停止される。このとき、背圧制御弁38が全開とされ、酸化剤ガス流路146が外気に開放される。
次いで、ステップS17fにおいて、燃料電池14の発電電圧Vfが所定電圧以下の値になったかどうかが判定され、所定電圧以下の値になったときに、ステップS17gにおいて、コンタクタ82が開かれ、ディスチャージ制御が終了される。
次いで、ステップS17hにおいて制御装置70自身、すなわちECUがスリープ状態となり、燃料電池システム10がシステム停止状態とされる。
このように、通常掃気処理においては、ステップS13においてイグニッションスイッチ76のオフ状態を検出してから短時間で燃料電池システム10がシステム停止状態となるので、運転者等の燃料電池車両12の操作者に違和感を与えることがない。
次いで、燃料電池システム10のソーク中、ステップS17i、S17j、S17kで、それぞれ、システム温度(燃料電池14の温度Th)に応じた所定時間間隔毎に、制御装置70がウエークアップして、燃料電池14の温度Thが検出され、検出された温度Thが所定温度Td、例えばTd=5[℃]以下であるかどうが判定され(Th≦Td)、結果、外気温Taが低温になってきているかどうかが判定される。なお、上記所定時間間隔は予め決められた固定時間であってもよい。
ステップS17kの判定が肯定的となった場合、外気温Taが氷点下等の低温になるおそれがあると判断され、燃料電池14内の燃料ガス流路148内の液滴の凍結を回避するために、ステップS17lにおいてキャパシタ16の電力によりエアコンプレッサ36を駆動するとともに、空気導入弁54を開き、エアコンプレッサ36から吐出される高温圧縮空気をインタークーラーバイパス弁57、空気導入流路53、空気導入弁54を通じ、水素供給口20と空気供給口24の両方から燃料電池14の燃料ガス流路148と酸化剤ガス流路146に導入することで、アノード側の空気による掃気を開始する。
燃料電池14内の燃料ガス流路148を流通した空気は、水素排出口22から排出され、アノード側空気掃気処理開始当初は、小流量のドレイン弁50、排出流路52を通じて希釈状態の燃料ガス及び生成水(液滴)とともに排出され、所定時間後には、大流量の水素パージ弁30、水素パージ流路32を通じて生成水(液滴)とともに排出される。このようにしてアノード側掃気処理が行われる。
ステップS17mにおいて、所定時間のアノード側掃気処理が行われた後、ステップs17nでエアコンプレッサ36が停止されるとともに、残りの全ての弁が閉じられてアノード側掃気処理(アノード掃気処理)が停止されて通常掃気処理が終了し、ステップS8で燃料電池システム10のシステムが停止される。
このように、外気温Taが下がってきたときには、燃料ガス流路148内を自動的に掃気することで、次回の氷点下等の低温時において、安定で確実な起動を確保することができる。
次に、図5のフローチャート及び図6のタイムチャートを参照して、ステップS6の今回のイグニッションスイッチ76からのオフ信号の受信が、低温時短時間発電後停止要求であって、かつカソード電極120c側である酸化剤ガス流路146内にのみ水分が発生したと判定した場合に行われるステップS18の2段掃気処理の動作について説明する。
この場合、今回のシステム停止制御及び次回の氷点下時等の低温時の確実な起動を確保するために、時点t0において、イグニッションスイッチ76のオフ信号を検出したとき、まず、ステップS18aにおいて発電電流Ifによりキャパシタ16を所定容量まで充電する(時点t0〜t1)。
充電が完了後、ステップS18bにおいて、水素供給弁44が閉じられ燃料ガスの燃料電池14に対する供給が停止される。なお、水素供給弁44が閉じられても、燃料ガス流路148には燃料ガスが残留している。この残留ガスを消費するために、ステップS18cにおいて、空気の供給が継続される。
そのため、ステップS18dでは、発電電流Ifをエアコンプレッサ36等の補機に供給し発電させて燃料ガスを消費させる(時点t1〜t2)。燃料ガスが消費されることで、燃料ガス流路148内のガス圧力は徐々に低下する(時点t1〜t2)。
次いで、ステップS18e、18f、18gで、酸化剤ガス流路146内の液滴を排出するための2段掃気処理第1段処理を行う(時点t2〜t3)。このとき、ステップS18eでコンタクタ82を閉じてディスチャージ抵抗器80に発電電流Ifを消費させるディスチャージ制御を開始する(時点t2)。この時点t2で、燃料ガス流路148内の燃料ガス流量は、ほとんどゼロ値になる。
次いで、ステップS18fで、エアコンプレッサ36から吐出される空気量を大流量に設定し(時点t2)、大流量の空気を、ステップS18gでの所定時間(時点t2〜t3)、酸化剤ガス流路146に流通させることで酸化剤ガス流路146に残存する液滴を排出(除去)する。なお、時点t1〜t3までの酸化剤ガス流路146内の液滴除去に必要な時間は、約20[sec]である。
2段掃気処理第1段処理による酸化剤ガス流路146から液滴の排出後、ステップS18h〜S18kで、燃料電池14のカソード電極120c側の乾燥を促進し、次回の氷点下等の低温時起動を確実にするための2段掃気処理第2段処理を行う(時点t3〜t5)。
このとき、ステップS18hで、加湿器バイパス弁58及びインタークーラーバイパス弁57を開き、さらにステップS18iでエアコンプレッサ36の駆動を小さくして小流量空気量に設定し、小流量の乾燥空気を酸化剤ガス流路146内に供給する(時点t3)。なお、ステップS18hのバイパス弁57、58を開く処理は、ステップS18fの大流量掃気処理開始時に行ってもよい。
そして、ステップS18jにおいて、酸化剤ガス流路146内に小流量の乾燥空気を所定時間流通させることで、次回の低温時起動を確実にする(時点t3〜t5)。この所定時間は、電解質膜120bの含水量(含水率と同じ)が次回起動性から決定される最適量となるまでの所定時間とする。
具体的には、図7に示すように、次回の起動性(発電が可能になった後の最大可能出力)と電解質膜120bの含水量との間には、含水量が高からず低からずの中間状態で起動性が高くなる(最大可能出力が高くなる)関係(特性84)があることが分かっているので、特性84上、次回起動性が所定値以上となるまでの小流量の乾燥空気の供給時間が、ステップS18jの所定時間に設定される。
このステップS18jの処理は、キャパシタ16の残容量が次回の氷点下等の低温時起動に必要となる容量まで低下したかどうかで代替判定することもできる。また、ステップS18eで開始したディスチャージ制御は、フローチャート中には図示しないが、燃料ガス流路148内のガス圧力が所定値以下に下がった時点t4もしくは燃料電池14の発電電圧Vfが所定値以下に下がった時点にて、コンタクタ82が開かれ、ディスチャージ制御処理が終了させられる。
次いで、ステップS18kにおいて、エアコンプレッサ36の駆動が停止され、バイパス弁57、58が閉じられて、2段掃気処理第2段処理が終了することで2段掃気処理が終了する。
このようにして、ステップS6の今回のイグニッションスイッチ76のオフ状態への操作が、低温時短時間発電後停止要求であって、かつカソード電極120c側である酸化剤ガス流路146内にのみ水が発生したと判定した場合に行われる2段掃気処理を行うことで、次回の氷点下等の低温時において安定な起動性を確保することができる。
なお、ステップS4において、温度センサ71が故障していると判断された後、ステップS20において、イグニッションスイッチ76がオフ状態とされたときには、上述したステップS18の2段掃気処理が行われるように制御している。この2段掃気処理を行うことにより、どのような状況下においても、次回の起動を確実に行うことができる。すなわち、仮に、氷点下等の低温時にイグニッションスイッチ76がオフ状態にされたとしても次に説明する3段掃気処理に比較して少ないエネルギー消費により再起動ができるようになる。
次に、図8のフローチャート及び図9のタイムチャートを参照して、ステップS6の今回のイグニッションスイッチ76のオフ状態への操作が、低温時短時間発電後停止要求であって、かつカソード電極120c側である酸化剤ガス流路146とアノード電極120a側である燃料ガス流路148の両流路に水分が発生したと判定した場合に行われるステップS19の3段掃気処理の動作について説明する。
この場合、今回のシステム停止制御及び次回の氷点下時等の低温時の確実な起動を確保するために、時点t10において、イグニッションスイッチ76のオフ状態を検出したとき、まず、ステップS19aにおいて発電電流Ifによりキャパシタ16を所定容量まで充電する(時点t10〜t11)。
充電が完了後、ステップS19bにおいて、水素供給弁44が閉じられ燃料ガスの燃料電池14に対する供給が停止される。なお、水素供給弁44が閉じられても、燃料ガス流路148には、燃料ガスが残留している。この残留ガスを消費するために、ステップS19cにおいて、空気の供給が継続される。
そのため、ステップS19dでは、発電電流Ifをエアコンプレッサ36等の補機に供給し発電させて燃料ガスを消費させる(時点t11〜t12)。燃料ガスが消費されることで、燃料ガス流路148内のガス圧力は徐々に低下する(時点t11〜t12)。
次いで、ステップS19eにおいて、燃料電池システム10から外部に排出される燃料ガスの希釈要件を満足するために、比較的に小流量のドレイン弁50を開くとともに、空気導入弁54を開く(時点t12)。
そして、ステップS19fにおいて、図5のフローチャートを参照して説明したステップS18e〜S18gの処理と同一の2段掃気処理の第1段処理、すなわち、酸化剤ガス流路146内の液滴を排出するための処理を行う(時点t12〜t13)。したがって、時点t12〜t13の間では、上述したように、大流量の空気が酸化剤ガス流路146に流通され、酸化剤ガス流路146に残存する液滴が排出(除去)される。この場合にも、時点t11〜t13までの酸化剤ガス流路146内の液滴除去に必要な時間は、約20[sec]である。
なお、時点t12で空気導入弁54が開かれているので、この時点t12以降、燃料ガス流路148にも空気が導入されるが、大流量の水素パージ弁30は閉じており、小流量のドレイン弁50が開かれているので、燃料ガス流路148にも、小流量の空気が導入される。この場合、ドレイン弁50から排出流路52を通じて排出される燃料ガスは希釈されたガスとなっている。
このようにして、酸化剤ガス流路146から液滴が排出され、燃料ガスも希釈して排出された時点t13から燃料ガス流路148からの液滴の排出(除去)処理を行う。
この場合、ステップS19gにおいて、大流量の水素パージ弁30を開くことで(時点t13)、希釈された燃料ガスが残る燃料ガス流路148内に、ステップS19hで所定時間(時点t13〜t14)、大流量の空気が流通され、燃料ガス流路148内の液滴が排出(除去)される。そして、ステップS19iにおいて、空気導入弁54が閉じられる。
時点t12〜14に示すように、掃気ガスである酸化剤ガスの酸化剤ガス流路146内流量と燃料ガス流路148内流量が同時に大きくならないように時間的に分けて酸化剤ガス流路146と燃料ガス流路148内の液滴を除去するようにしているので、エアコンプレッサ36の駆動を抑制することができ、騒音を抑制することができる。結果、従来技術に比較して小型・軽量で小容量のエアコンプレッサ36を使用することが可能となる。
次いで、ステップS19jにおいて、図5のフローチャートを参照して説明したステップS18h〜S18kの処理と同一の2段掃気処理の第2段処理、すなわち、燃料電池14のカソード電極120c側の乾燥を促進し、次回の氷点下等の低温時起動を確実にするための処理を行う(時点t14〜t15)。
このようにして、ステップS6の今回のイグニッションスイッチ76のオフ状態への操作が、低温時短時間発電後停止要求であって、かつカソード電極120c側である酸化剤ガス流路146とアノード電極120a側である燃料ガス流路148の両流路に水が発生したと判定した場合に行われる3段掃気処理を行うことで、次回の氷点下等の低温時において安定な起動性を確保することができる。
ここで、ステップS2の前置処理について、図10のフローチャートを参照して説明する。
上述したように、ステップS1において、イグニッションスイッチ76のオン信号を検出したとき、ステップS2aにおいて、前回の運転停止時に行われた掃気処理で、アノード側を空気で掃気を行ったかどうかがメモリから読み込まれ、つまり3段掃気処理もしくは通常掃気処理にてアノード側空気掃気処理が行われていた場合には、燃料ガス流路148が空気により置換されているので、燃料ガス流路148を含むアノード系流路内に残っている酸化剤ガス、主に窒素であるが、これを排出して、起動性を確保するために、高純度の燃料ガスである水素ガスで完全に置換するための酸化剤ガスパージ処理を行う。
そのため、このステップS2bの処理では、水素供給弁44が開かれた後、水素パージ弁30をアノード系流路内が水素ガスで完全に置換されるまでの所定時間開放し、その後、ステップS3で発電が開始される。
一方、ステップS2aの判定結果、3段掃気処理が行われていなかった場合もしくは通常掃気処理にてアノード側空気掃気処理が行われていなかった場合、すなわち、2段掃気処理が行われていた場合もしくは通常掃気処理にてアノード側空気掃気処理が行われていなかった場合には、ステップS2cにおいて通常パージ処理が行われる。この通常パージ処理では、起動時に水素供給弁44が開かれた後、ソーク時間に応じた所定時間(上記したステップS2bの所定時間に比較してはるかに短い時間)水素パージ弁30を開放して、アノード系流路内を高純度の燃料ガスで置換した後、ステップS3での発電が開始される。
図11は、この発明の上記した掃気処理をマップ(ルックアップテーブル)で決定する他の実施形態を説明するフローチャートである。図11のフローチャートにおいて、図3のフローチャートに示した処理と同一の処理には、同一のステップ番号を付け、その詳細な説明は省略する。
ステップS1において、イグニッションスイッチ76のオン信号を検出したとき、ステップS2において、前回の運転停止時に行われた掃気処理の内容を参照した前置処理が行われる。
この前置処理の後、ステップS3において、燃料電池14の発電が開始される。
そして、ステップS31において、タイマにより、発電開始からの発電時間tgが計時が開始される。なお、発電時間tgに代替して、発電開始からの積算発電量を計測してもよい。
次に、ステップS4において、温度センサ71が故障していないかどうかが判定される。
温度センサ71が故障していなかったときには、ステップS32において、発電開始直後の燃料電池14の温度Thが発電開始時温度Tsとして検出される(Th=Ts)。
次いで、ステップS33において、イグニッションスイッチ76がオフ状態にされたかどうかが検出される。オフ状態が検出されると、燃料電池14の起動(ステップS1)後の発電運転中に停止要求を受けたと判定され、次のステップS34において、この発電停止時、正確には、イグニッションスイッチ76がオフ状態とされた時の燃料電池14の温度Thが発電停止時温度Teとして検出される(Th=Te)。また、同時に、そのステップS34において、発電開始からの発電時間tgの計時が終了され、今回の発電開始時から発電停止時までの時間が発電時間tgとして計測される。
次いで、ステップS7において、今回起動時から停止要求を受けた時点までに燃料電池14の発電により燃料電池14内で水分が発生しているかどうかが判定される。
このステップS7の判定は、上述したように、積算発電量[Wh]、又は、燃料電池14の重量変化により判定することもできる。いずれの場合にも、積算発電量と水分量との関係、あるいは重量変化と水分量との関係(特性)を予め求め、制御装置70のメモリに格納しておき、この特性を参照して水分量を検出することができる。
ステップS7において、水分が発生していないと判定された場合には、掃気処理を行わずに、ステップS8において、燃料電池システム10の通常の停止処理(水素供給弁44を閉じる、エアコンプレッサ36を停止させる等の処理)が行われる。
その一方、ステップS7において、水分が発生していると判定されたときには、ステップS35において、ステップS34で計時終了した発電時間tgが所定時間、例えば1分〜2分以下の短時間(もしくはこの短時間発電時間に対応する積算発電量以下)であったかどうかが判定される。
1分〜2分以下の時間であった場合には、ステップS17の通常掃気処理が行われた後、ステップS8のシステム停止処理が行われる。
ステップS35において、発電時間tgが1分〜2分の所定時間を超える時間であった場合には、ステップS33のイグニッションスイッチ76のオフ操作が、上述した短時間発電後停止要求の操作であると判断され、次いで、ステップS36で、発電開始時温度Ts及び発電停止時温度Teを座標点としてマップを検索し、掃気処理を決定する。
図12は、検索される掃気処理決定マップ200を示している。
基本的には、発電開始時温度Ts及び発電終了時温度Teが比較的に高い領域では通常掃気処理領域201に決定され、発電終了時温度Teが最も低い温度であるときに2段掃気処理領域202とされ、その中間では3段掃気処理領域203に決定される。ただし、発電開始時温度Tsが0[℃]以下の温度であって所定温度以上、かつ発電停止時温度Teが0[℃]以下の温度である四角形で示した領域も2段掃気処理領域204とされる。
この2段掃気処理領域204は、空気導入弁54が凍結していて動作しない等で、アノード掃気に必要なデバイスが凍結していると判定された場合に使用される領域である。なお、凍結していないと判定された場合には、その2段掃気処理領域204では、他のいずれかの領域201〜203の処理に決定される。
次いで、ステップS37において、掃気処理決定マップ200により決定した掃気処理に従う掃気処理を行う。
すなわち、ステップS33のイグニッションスイッチ76のオフの操作が低温時短時間発電後停止要求をする操作であると判定されたときには、2段掃気処理又は3段掃気処理が行われ、低温時ではないが、短時間発電後停止要求をする操作であると判定されたときには、通常掃気処理が行われる。
以上説明したように上述した実施形態によれば、燃料電池14の発電停止時もしくは発電停止後に燃料ガスが流通する燃料ガス流路148又は酸化剤ガスが流通する酸化剤ガス流路146の少なくとも1方を掃気ガス、この実施形態では空気により掃気する掃気手段(70、36、54)を備える燃料電池システム10が対象とされる。
そして、特に、燃料電池システム10が、氷点下等の低温時に起動後短時間発電後停止された場合、発電性能が極端に悪化することあるいは最悪の場合に再起動ができないことを未然に回避する処理が行える燃料電池システム10を対象とする。
ここで、イグニッションスイッチ76がオン状態とされた後にイグニッションスイッチ76がオフ状態とされたときの操作が、低温時短時間発電後停止要求に該当する操作であるかどうかの判断は、例えば、起動時(イグニッションスイッチ76のオン時)の温度Thが所定温度Ta(Ta=0[℃])以下の温度であって(ステップS5:YES)、かつイグニッションスイッチ76のオフ時の温度Thが所定温度Tb以下(ステップS9:YES)又は所定温度Tc以下(ステップS10:YES)の温度である場合、低温時短時間発電後停止要求の操作であると判断されて、掃気処理切替手段としての制御装置70により、通常の掃気処理(ステップS17)から、第1掃気処理としての2段掃気処理(ステップS18)又は第2掃気処理としての3段掃気処理(ステップS19)に切り替えられる。
なお、制御装置70は、図12に示した発電開始時温度Tsと発電停止時温度Teをパラメータとする掃気処理決定マップ200を利用して2段掃気処理と3段掃気処理を選択することもできる。
また、制御装置70は、発電により水分発生がなかった場合(ステップS7:NO)、もしくは水分の発生があっても極短時間発電(もしくは極短時間発電に対応する積算発電量以下)であった場合には、通常掃気処理を選択する。
ここで、2段掃気処理は、基本的には、酸化剤ガス流路146に発生した水滴を大流量の酸化剤ガスで短時間掃気する前掃気処理後に、乾燥した小流量の酸化剤ガスで電解質膜120bを起動性の良好な含水量とするために前記短時間より長い時間掃気を行う後掃気処理を含む処理である。
また、3段掃気処理は、前記2段掃気処理の前後の掃気処理の間に、燃料ガス流路148に発生した液滴を大流量の酸化剤ガスで短時間掃気を行う中間掃気処理を含む処理である。すなわち、3段掃気処理は、2段掃気処理に短時間のアノード電極120a側の掃気処理を加えた処理を含む処理である。
ここで、2段掃気処理及び3段掃気処理は、いずれもイグニッションスイッチ76のオフ直後に行われる。電解質膜120bの温度が高いうちに掃気処理を行った方が、水分の蒸発が促進されるからである。
また、2段掃気処理及び3段掃気処理では、前記前掃気処理時にデスチャージ制御処理(ディスチャージ抵抗器80を接続する。又は、発電電流Ifで補機を動作させる。)を行うことで、燃料ガス流路148を流通する燃料ガスの消費を促進して停止時間(システム停止までの時間)の短縮化が図れる。また、エアコンプレッサ36等の補機を燃料電池14の残存エネルギで動作させた場合には、キャパシタ16の使用電力を少なくすることができるので掃気エネルギを稼ぐことができる。
なお、2段掃気処理あるいは3段掃気処理では、インタークーラー55や加湿器56をバイパスさせて加熱空気を燃料電池14内に供給することで燃料ガス流路148及び酸化剤ガス流路146の乾燥が促進される。
また、温度センサ71が故障している場合には、2段掃気処理を行うことで、燃料電池システム10が再起動できなくなるシステムの停止を回避することができる。
上述した実施形態によれば、燃料電池システムにおいて、低温時短時間発電後停止操作が行われた場合であっても、その停止操作があったときに、確実な掃気処理が行え、かつ次回の氷点下等の低温時においても確実な再起動を可能にできる。
また、停止要求を受けた直後から適切な掃気処理を行って燃料電池システム10を停止させることができるので、操作者に違和感を与えることがない。
さらに、上述した実施形態における2段掃気処理あるいは3段掃気処理は、一連の作動となっているが、各掃気の間に、例えば所定時間の待機時間を設けるようにしてもよい。