JP4928024B2 - 押出加工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属製ビレットを押出加工して押出材を製造する技術に関し、殊にビレットの押出速度を制御することによって、良好な品質の押出材を安定して提供することのできる押出加工方法および該加工方法によって製造された押出材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
押出しによる金属製品の成形加工は、加熱されたビレットをコンテナに入れ、ラムによってビレットをダイスを介して押出すことにより、ダイスの形状に応じた断面を有する製品を製造するものである。
【0003】
この押出加工において、製品の押出速度(ビレットの押出速度)は、製品の品質を決定する重要な要素である。押出速度を大きくすると多量の加工熱が発生し、該加工熱が工具に奪われる熱よりも大きくなって、ビレットの温度が上昇して焼付け割れを起こす。一方、押出速度を小さくすると、ビレットの押出しに時間がかかりすぎて実操業に適さないばかりか、製品の強度が不足する場合がある。そこで、ビレットの押出速度と製品品質との関係に着目して種々の技術が提案されている。
【0004】
例えば、特開平5-104132号公報や特開平6-277750号公報には、押出加工された製品の温度を放射温度計を用いて測定し、該温度が一定の範囲になるように押出速度を制御して表面焼付けのない製品を提供する技術が開示されている。しかし、これらの技術では、押出時における製品形状の変化や押出材の組成変化については考慮されていないので、材料強度の低下や溶接時における割れの発生という問題を生じていた。
【0005】
また、これらの技術では、一回のビレット押出時間(一本のビレットを完全に押出すのに要する時間)内で、測定された温度結果をフィードバックすることは実操業では困難であることが分かった。つまり、これらの技術では、あくまで次のビレット押出速度を前パスよりも遅くすることができる程度であり、これによってビレットの押出に要する時間がさらに長くなる。従って、生産性を向上することはできなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、押出加工において、生産性をより向上すると共に、製品品質が良好で材料特性に優れた押出材製品を安定して得ることのできる押出加工方法およびこの様な押出材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明の押出加工方法とは、加熱されたビレットを押出加工するに際して、ビレットの押出速度を所定の速度にまで加速した後、製品不良が生じない様に該押出速度を制御して押出加工することに要旨を有し、前記押出速度を減速方向に制御したり、前記押出速度を一定の割合で減速すると一層優れた効果を得ることができる。
【0008】
本発明の押出加工方法では、押出加工中のビレットの歪速度と再結晶状態の関係に基づいて、製品不良とならない結晶粒径にコントロールできる歪速度範囲を予め求めておき、該歪速度範囲内で押出加工することが好ましく、この場合、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して押出速度パターンを設定することがさらに好ましい。
【0009】
また、本発明の押出加工方法では、ビレットまたは製品の表面温度の変化と表面焼付きの関係に基づいて、表面焼付きが生じない表面温度範囲を予め求めておき、該表面温度範囲内で押出加工することも好ましく、この場合、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して押出速度パターンを設定することがさらに好ましい。
【0010】
さらに、本発明の押出加工方法では、押出加工中のビレットの歪速度と再結晶状態の関係に基づいて、製品不良とならない結晶粒径にコントロールできる歪速度範囲を予め求めると共に、ビレットまたは製品の表面温度の変化と表面焼付きの関係に基づいて、表面焼付きが生じない表面温度範囲を予め求めておき、前記歪速度範囲及び前記表面温度範囲を満足する様に押出加工することが好ましく、この場合、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して、前記歪速度範囲を満足するビレットの押出速度パターンと、前記表面温度範囲を満足するビレットの押出速度パターンを求め、これら両パターンのうちからより低速となる条件を用いて押出加工するとさらに好ましい。
【0011】
また、本発明の押出加工方法では、
▲1▼ビレット加熱温度を予め複数設定し、該加熱温度の夫々に対応する押出速度パターンの中から、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間が最も短いものを最適押出速度パターンとして選択して押出加工することや、
▲2▼ビレットの先端部と終端部で加熱温度勾配を付与することができるビレットの加熱設備を用いてビレットを加熱した後、押出加工をするに際して、ビレット先端部の加熱温度を予め複数設定し、該加熱温度の夫々に対してビレットに付与する熱エネルギーが必要最小限で押出できるようなビレット温度勾配を算出し、算出された加熱温度勾配の夫々に対して押出速度パターンを求め、求められた押出速度パターンの中で、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間が最も短いものを最適押出速度パターンとして選択し、選択された最適押出速度パターンによって押出加工することが好ましい。
【0012】
上記押出加工方法によって製造される本発明の押出材は、アルミニウム合金製押出材であって、押出材長さ方向全体に亘って該押出材の表面再結晶厚さが100μm以下であるという特徴を有する。
【0013】
また、上記押出加工方法によって製造される本発明の押出材は、アルミニウム合金製押出材であって、押出材長さ方向全体に亘って引張強度および耐力のバラツキが20N/mm2以内という特徴を有する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、押出材の製品特性が劣化する原因について様々な角度から検討した。その結果、押出材の材料特性は、押出加工時にビレットが受ける歪速度の変化に関係していることを見出し、該歪速度がある値を超えると再結晶する際に結晶粒が粗大(以下、「再結晶不良」と称する場合がある)になり、材料特性を劣化させることを明らかにした。そして、本発明者がさらに研究した結果、押出加工時におけるビレットの押出速度を適宜制御すれば、再結晶不良を低減して良好な特性を発揮する押出材が得られることを見出し本発明を完成した。
【0015】
一方、押出された直後の製品温度変化の原因は、押出加工時に発生する加工発熱量に関係しているという知見に基づき、本発明者らが更に検討した結果、コンテナ挿入時のビレットの温度(初期のビレット温度)と、押出加工の際に生じる加工発熱量を考慮してビレットの押出速度を制御すれば、焼付き不良発生を低減することができることを見出した。
【0016】
以下、本発明の構成および作用効果について詳細に説明する。
【0017】
本発明の押出加工方法は、加熱されたビレットを押出加工するに際して、ビレットの押出速度を所定の速度にまで加速した後、製品不良が生じない様に前記押出速度を制御するものである。ここで、「所定の速度」とは、ビレットの押出加工を安定して操業できる速度であり、一般には「初速」と呼ばれている。
【0018】
従来の押出加工方法では、この初速を維持する様にビレットを等速押出していたが、本発明の押出加工方法では、初速に達した後のビレットの押出速度を製品不良が生じない範囲で制御するものであり、ここに最大のポイントを有する。本発明のポイントを図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、ビレットを終端部まで押出すのに要する時間と、ビレットの押出速度との関係を示したグラフである。図1(a)は従来例である。従来の押出加工方法では、押出速度が初速に達した後、該初速を維持する様に操業する。しかし、本発明の押出加工方法では、押出速度が初速に達した後に、該押出速度を制御(変更)するものである。この際の押出速度の制御は、後述する様に「製品不良を生じない」範囲で行なう必要がある。
【0020】
本発明では、初速に達した後の押出速度は、減速方向に制御することが好ましい。例えば、図1(b-1)に示した様に、初速に達した後、「減速→等速→減速」と速度を制御するパターンや、図1(b-2)に示した様に、減速方向に向かう様に押出速度を制御することが例示される。本発明の最も好ましい制御形態は、図1(c)の様に、初速に達したビレットの押出速度を一定の割合で減速するものである。この理由については後述する。
【0021】
ここで、本発明の一例である図1(c)に示した押出速度の制御形態について、詳細に説明する。図1(c)に示した押出速度の制御形態パターンでは、ビレットの押出に要する時間を従来より短縮することができる。つまり、図2(a)に示す様に、初速を従来の「ロ」よりも大きい「ハ」にした後、減速した場合、グラフ上に形成される台形「イロホヘ」及び四角形「イハニト」の面積は、押出されたビレットの長さを示すので、台形「イロホヘ」と四角形「イハニト」が等しければ、同じ長さのビレットが押出されていることになり、押出に要する時間は「ヘ」から「ト」に短縮されるのである。従って、図2(b)に示す様に初速に達するまでの加速度を従来より大きくするが、到達する初速が従来と同程度であると、ビレットの押出に要する時間は従来より長くなるのである。しかし、図2(c)に示す様に、初速に達するまでの加速度を従来より大きくすると共に、初速を従来より大きく設定した後減速すると、図2(a)よりもさらに押出時間を短縮できるのである。
【0022】
本発明において「製品不良が生じない」とは、再結晶不良や表面焼付きが生じないことを意味し、本発明では、製品不良が生じない押出速度範囲を予め求めておき、その範囲内で押出速度を制御するものである。以下、製品不良とビレットの押出速度との関係について詳細に説明するが、ここでは押出速度の制御は、所定の速度(初速)に達した後、一定の割合で減速する場合を用いて説明する。
【0023】
(1)再結晶不良とビレットの押出速度との関係
前述の如く、再結晶不良の原因は、ビレット押出時における歪速度にあり、この歪速度がある値を超えると、再結晶粒が粗大となって、材料強度が低下したり、溶接時に再結晶粒粗大部分から割れを発生し、材料特性を劣化させることになる。そこで、本発明では、押出加工中のビレットの歪速度と再結晶状態の関係に基づいて、再結晶不良とならない結晶粒径にコントロールできる歪速度範囲を予め求めておき(以下「歪速度予測モデル」と称する場合がある)、該歪速度範囲内で押出速度を制御して押出加工するのである。
【0024】
本発明の特徴を図3を用いて説明する。図3の(a-1)と(b-1)は従来例であり、(a-2)と(b-2)は本発明例である。図3(a-1)の▲1▼ラインに示す様に、ビレットの押出速度が初速に達した後、該初速を維持してビレットを終端部まで押出すと、押出加工が進むにつれて(ビレット終端部に近づくにつれて)歪速度が大きくなる。そして、製品終端部で歪速度がある値を超えてしまうと、再結晶粒が粗大化してしまい、材料特性が劣化するのである[図3(b-1)▲1▼ライン]。初速を維持する従来の方法でこの問題を解決するには、図3(a-1)の▲2▼ラインの様に、初速をできるだけ小さく設定して、該初速を維持してビレットの終端部まで押出す方法が考えられる。しかし、この場合はビレットの押出に時間がかかりすぎ、生産性が非常に悪くなる。
【0025】
一方、図3(a-2)に示す様に本発明の方法では、押出速度が初速に達するまでは従来より大きな加速度で加速し、且つ従来より初速を大きく設定している。よって、初期段階の歪速度の増加は大きくなるが[図3(b-2)]、初速に達した後、押出速度を一定の割合で減速しているので、歪速度は所期の値を超えない。従って、製品の先端部から終端部まで粗大再結晶粒が発生しない均一な特性を有する押出材を得ることができると共に、従来より短時間でビレットを押出すことができる。
【0026】
本発明において、再結晶不良が生じない押出速度パターンは次の様に算出される。前方押出におけるビレットのメタルフローは、ビレットが短くなるほど変形域が拡大する。本発明者らは、この変形域の境界線d(t)は、下記式で表せることを実験から明らかにした。ここで、L(t)は時刻tでのビレット長を示し、Rは押出比を示す。
d(t)=f(L(t),R)
【0027】
従来の様に、初速に達した後、該初速を維持する様に押出加工を行った場合は、ビレットが短くなるに連れて押出口近傍の変形域はビレット外周方向へ拡大する。よって、ビレットが受ける歪量は増大して、歪速度が増大する。押出口近傍の最大歪速度e(t)は、時刻tにおけるラム速度をVram(t)とした場合下記式で示される。
e(t)=g(L(t),R,Vram(t))
この逆関数を算出すると下記式となり、押出速度の制御パターンを算出することができる。
ram(t)=g-1(L(t),R,e(t)) ・・・(1)
【0028】
すなわち、e(t)に再結晶不良が発生しない歪速度(定数)を代入すると、歪速度を一定に保ったまま製品の全長に亘って押出加工することのできる押出速度パターンとなるのである。つまり、押出口近傍の最大歪速度e(t)と押出比Rを一定と想定すると、上記(1)式は、押出加工速度のパターンがビレット長L(t)の変化と関係があることを示している。これは、押出初期はビレットが長いので押出速度が大きくなるが、押出終期はビレットが短くなるので押出速度が小さくなることと一致する。
【0029】
上記方法によって、製品不良とならない結晶粒径にコントロールできる歪速度範囲内で、ビレットの押出速度パターンを複数決定することができるが、本発明では、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して押出速度パターンを設定することによってさらに生産性を向上させることができる。尚、「考慮」とは、押出速度パターンを設定する際に、若干の時間的余裕を持ったものを設定することを意味する。すなわち、生産性を最も向上させるためには、上記押出速度パターンの中から、押出に要する時間が最も短いものを選択すれば良いのであるが、操業上の安全性を考えて押出時間が若干長いものを選択する場合もあるので、時間を「考慮」して、押出速度パターンを設定するのである。
【0030】
(2)表面焼付きとビレットの押出速度との関係
コンテナ内やダイス出口近傍におけるビレットの温度がある温度を超えると、表面焼付きが生じ、これが製品表面の焼付き不良の原因となることは、上述した通りである。こうした問題に対して、従来では、押出直後の製品の表面温度を非接触温度計を用いて測定し、この温度がある値を超えない様に初速を設定して押出加工することで対処していた。しかし、この方法では、押出材の形状や成分組成の違いによる表面温度変化に関しては考慮されていなかったので、製造条件が異なるとその都度操業条件を最初から見なおす必要があった。
【0031】
本発明者らが研究したところによれば、コンテナに挿入する時点のビレットの温度(初期のビレットの温度)と、押出加工時に発生する加工発熱量とを考慮に入れて押出加工すると、製品の形状の違いによって操業条件を見なおす必要がなく、又、ビレットの成分組成を変えたとしても、該成分組成を有する材料の高温状態における変形抵抗さえ分かれば、加工発熱量が簡易に推定できるので、上記の様にその都度押出直後の製品表面を測定して、操業条件を見なおす様な手間のかかる作業を実施する必要がないことが分かった。そこで、本発明では、ビレットまたは製品の表面温度の変化と表面焼付きの関係に基づいて、表面焼付きが生じない表面温度範囲を予め求めておき(以下、「製品温度予測モデル」と称する場合がある)、この表面温度範囲内で押出加工するのである。
【0032】
本発明の特徴を図4を用いて説明する。図4(a-1)の▲1▼ラインの様に、ビレットの押出速度が初速に達した後、等速でビレットを押出すと、図4(b-1)の▲1▼ラインの様に、押出加工が進むにつれて加工発熱が生じるので、これに伴い製品の表面温度が高くなり、特に製品終端部では製品の表面温度が表面焼付きを生じる温度を超えてしまう。従って、従来の方法でこの問題を解決するには、図4(a-1)の▲2▼ラインの様に、初速を小さく設定して製品を押出す方法が考えられるが[図4(b-1)▲2▼ライン]、この場合はビレットを押出すのに時間がかかり、生産性が非常に悪くなる。
【0033】
一方、図4(a-2)に示す様に、本発明の方法では、押出速度が初速に達するまでは従来より大きな加速度で加速し、且つ従来より初速を大きく設定するので、初期段階の製品表面温度の上昇率は非常に大きくなる[図4(b-2)]。しかし、初速に達した後は、押出速度を一定の割合で減速しているので、製品表面温度が所期の値を超えることは無い。従って、製品の先端部から終端部まで製品品質の良好な押出材が得られると共に、従来より短時間で押出すことができる。
【0034】
本発明では、ビレットまたは製品の表面温度を次の様に算出する。コンテナ挿入時のビレットが持つ熱量をQb、加工による加工発熱量をΔq1、ビレットからコンテナへの抜熱量をΔq2とすると、押出材の持つ熱量Qpは、熱収支から下記式で表される。
p=Qb+Δq1−Δq2
【0035】
また、変形抵抗をY、押出比をRとすると、加工発熱量Δq1は、変形に要する荷重Y×ln(R)に比例することが一般に知られている。そして、変形抵抗Yが速度依存性を有していることを考慮に入れると、加工発熱量Δq1は下記式で示される。
Δq1=f1(Vram(t)、R、Y)
【0036】
また、コンテナ温度をTc、ビレット温度をTb(l)とすると、ビレットからコンテナへの抜熱量Δq2は下記式で示される。尚、ビレット温度は、ビレットの長手温度分布(温度勾配)を考慮しているので、長さlの関数で表されている。
Δq2=f2(Tc、Tb(l))
【0037】
ここで、ビレットの持つ熱量Qbは、ビレット温度分布Tb(l)の関数となり、また、押出材の持つ熱量Qpも同じくビレット温度分布Tp(l)の関数となるので、Qb及びQpを夫々Qb=f3(Tb(l))、Qp=f4(Tp(l))とすると、
p=Qb+Δq1−Δq2
⇔ f4(Tp(l))=f3(Tb(l))+f1(Vram(t)、R、Y)−f2(Tc、Tb(l))
となり、これを変形すると、Tp(l)は下記式で表される。
p(l)=f5(Tb(l)、Vram(t)、R、Y、Tc
【0038】
従って、この逆関数を求めると押出速度Vram(t)は、
ram(t)=f5 -1(Tp(l)、Tb(l)、R、Y、Tc) ・・・(2)
となり、上記(2)式に本発明の要件を満足するTp(l)を定数として代入すると、押出直後の製品表面温度を一定に保つことができる押出速度(ラム速度)を算出することができる。
【0039】
上記の様に、本発明によると表面焼付きが生じない表面温度範囲内で複数の押出速度パターンを算出することができるが、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して押出速度パターンを設定することによって、さらに生産性を向上させることができる。尚、「考慮」とは、押出速度パターンを設定する際に、若干の時間的余裕を持ったものを設定することを意味する。すなわち、生産性を最も向上させるためには、上記押出速度パターンの中から、押出に要する時間が最も短いものを選択すれば良いのであるが、操業上の安全性を考えて押出時間が若干長いものを選択する場合もあるので、時間を「考慮」して、押出速度パターンを設定するのである。
【0040】
また、本発明では、押出加工中のビレットの歪速度と再結晶状態の関係に基づいて、製品不良とならない結晶粒径にコントロールできる歪速度範囲を予め求めると共に、ビレットまたは製品の表面温度の変化と表面焼付きの関係に基づいて、表面焼付きが生じない表面温度範囲を予め求めておき、前記歪速度範囲及び前記表面温度範囲を満足する様に押出加工する様に押出速度パターンを設定すれば、再結晶不良を生じず、且つ表面焼付きを生じない様に押出加工することができる。
【0041】
そして、この場合も、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して、前記歪速度範囲を満足するビレットの押出速度パターンと、前記表面温度範囲を満足するビレットの押出速度パターンを求め、これら両パターンの低速条件を用いて押出すことが好ましい。すなわち、本発明の押出加工方法では、歪速度範囲及び表面速度範囲の両範囲を満足するので、再結晶不良や焼付き不良などの製品不良を生じない製品を製造することができると共に、押出に要する時間を考慮しているので、生産性も向上させることができる。
【0042】
本発明者らは、ビレットを押出すことが可能となる加熱温度についても検討した。押出材の形状(製品形状)が異なると、押出加工時の摩擦抵抗が変わるので、ビレットの押出に要する荷重も異なり、それに応じて最適押出速度も変わるからである。本発明では、ビレットの押出加工に必要な初期荷重をPiとすると、Piは下記式で算出することができる(以下「荷重推定モデル」と称する場合がある)。
Pi=Pf+Pd ・・・(3)
ここで、Pfは押出時のコンテナとビレット間の摩擦に対する抗力であり、一般にPfは下記式で示されることが知られている。尚、Yは変形抵抗、μは摩擦係数、laはビレットの初期長さ、daはコンテナ半径を示す。
Pf=Y×4×μ×la/da
【0043】
また、Pdは変形に必要な抗力を示すが、製品の形状が複雑になると、Pdを算出することは困難となる。そこで、本発明では、Pdを次の様に推定する。
Pd=P1+P2
P1はビレットを製品(押出材)と等しい断面積を有する中実丸棒に押出すのに必要な荷重を示し、平均変形抵抗をY、押出比をRとすると、下記式で示されることが知られている。
P1=Y×ln(R)
P2は上記中実丸棒と断面積の等しい所望の形状の製品に押出加工変形するのに必要な荷重であり、これを中実丸棒の外周長L1、製品の外周長L2、変形抵抗Yを用いて、下記式で推定することとする。
P2=g(L1,L2,Y)
【0044】
従って、ビレットを押出加工する際に、下記(4)式に示す関係を満足すると、所望の形状を有する製品を荷重Piで押出加工することができるのである。
Figure 0004928024
【0045】
換言すると、ビレット押出加工設備が有する最大押出荷重を上記(4)式中のPiに代入した場合に、上記(4)式を満足する様に押出条件を設定すると、ビレットが押出可能となる温度範囲を算出できるのである。
【0046】
本発明では、予め求められた歪速度範囲及び/又は表面温度範囲を考慮して押出速度パターンを設定する際に、ビレット加熱温度を予め複数設定し、該加熱温度の夫々に対応する押出速度パターンの中から、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間が最も短いものを最適押出速度パターンとして選択して押出加工するとさらに生産性が向上する。
【0047】
また、本発明では、コンテナに挿入する前のビレットを加熱するに際して、ビレットの先端部と終端部で加熱温度勾配を付与することができるビレットの加熱設備を用いてビレットを加熱する場合がある。この場合、押出加工を行うにあたり、ビレット先端部の加熱温度を予め複数設定し、該加熱温度の夫々に対して押出加工に用いる設備によって決まる最大押出荷重によって押出可能となる最大の温度勾配を算出し、算出された温度勾配の夫々に対して予め求められた歪速度範囲及び/又は表面温度範囲を考慮して押出速度パターンを求め、求められた押出速度パターンの中で、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間が最も短いものを最適押出速度パターンとして選択し、選択された最適押出速度パターンによって押出加工を行う。本発明の押出加工方法における押出速度パターンの決定の流れを、具体的にフローチャートを用いて説明する。
【0048】
図5に示したフローチャートは、荷重推定モデル、歪速度範囲、表面温度範囲を考慮して押出速度パターンを設定する例であり、コンテナに挿入する前にビレットを加熱する加熱設備には、温度勾配を付与することのできる装置を用いる。尚、ビレット先端部(ダイス側)の温度をTbhとし、ビレットの終端部(ラム側)の温度をTbtとする。
【0049】
まず、[ステップ1]において、ビレット先端部の温度(Tbh0)を設定する。
通常、この温度は、ビレット加熱設備においてビレット先端部を最大限に加熱することができる温度である。
【0050】
次に、[ステップ2]〜[ステップ3]において上記荷重推定モデルを用いて、ビレット先端部の加熱温度に基づき、ビレット全体の加熱温度勾配を算出する。
【0051】
[ステップ2]において、i回目に計算するビレット先端部の温度をTbhiとすると、ビレット先端部の加熱温度は下記式で示される。
bhi=Tbh(i-1)−ΔT
ここで、ΔTはビレットを加熱する際の温度設定の幅(加熱温度設定の幅)を表し、ビレット加熱設備の能力によって設定されるものである。
【0052】
次に、[ステップ3]において、算出されたTbhiに基づいて、ビレット全体の加熱温度勾配を算出し、ビレット終端部の温度Tbtiを算出する。
【0053】
加熱温度勾配は、[ステップ2]で得られたTbhiと上記(3)式を用いて算出される。つまり、押出加工では、ビレット先端部の温度がTbhiの場合に、押出すことができなければならない。そこで、上記(3)式を用いてビレット全体の加熱温度勾配と押出加工に必要な荷重との関係を検討する。荷重推定モデルにおけるビレットの平均変形抵抗Yは、ビレットの温度に依存するので、Piにビレット押出装置の最大能力(最大荷重)を代入すると、上記ビレットの温度で押出成形可能かどうかを判断することができる。そして、Pi≧Y×L+Pdであると、押出成形可能となる。ここで、ビレット先端部の温度Tbhiは算出されているので、ビレット先端部の温度Tbhiと平均変形抵抗Yの値からPi≧Y×L+Pdを満足するビレット終端部の温度Tbtiが算出できるのである。
【0054】
次に、[ステップ4]において、ビレット先端部の温度Tbhiとビレット終端部の温度Tbtiを比較し、Tbhi≧Tbtiの場合と、Tbhi<Tbtiの場合で場合分けをする。
【0055】
bhi≧Tbtiの場合は、図5のYESの方向、つまり[ステップ5]に進む。[ステップ5]では、上記製品予測モデルに基づいて算出された上記(2)式を用いて、焼付き不良が生じない表面温度範囲内でのビレット押出速度パターンV1iを算出する。
【0056】
次に、[ステップ6]において、上記歪速度予測モデルに基づいて算出された上記(1)式を用いて、再結晶不良が生じない歪速度範囲内でのビレット押出速度パターンV2iを算出する。尚、[ステップ5]及び[ステップ6]の順番は逆でも良い。
【0057】
次に、[ステップ7]において、上記V1iとV2iを組合わせて最適押出速度パターンを算出する。V1i及びV2iの押出速度パターンが異なる場合は、両パターンを重ね合わせて、低速条件となる様に押出速度パターンを決定する。この場合の最適押出速度パターンをV3iとする。
【0058】
次に、[ステップ8]において、最適押出速度パターンを用いてビレットを押出す場合に要するサイクルタイムCtiを算出する。サイクルタイムCtiを算出した後、[ステップ2]に戻り、次の計算に移る。
【0059】
一方、上記[ステップ4]で、Tbhi<Tbtiの場合はNOの方向、つまり[ステップ9]へ進み、今までに算出したサイクルタイムCt1〜Ctiの中から最短となる時間で押出加工できるCtnを選ぶ。この場合の押出速度パターンV3nが、本発明の要件を満足する押出速度パターンであり、この場合のTbhn,Tbtnがビレット加熱温度勾配の最適パターンである。
【0060】
この操業条件でビレットを押出加工すると、焼付け不良や再結晶不良を生じず、品質の良好な製品を製造することができる。また、上記フローチャートで最終的に選択されたサイクルタイムCtnは、押出に要する時間が最短のものであるから、生産性も向上することができる。
【0061】
本発明の押出加工方法は、金属製ビレットを押出加工して製品を製造する際に採用することができ、その金属種は特に限定されない。例えば、純銅、黄銅、青銅などの銅系材料やマグネシウム、チタンなどの特殊材料が挙げられる。そして、本発明は特にアルミ合金製ビレットを押出加工する際に本発明を採用することが好ましいことが分かっている。
【0062】
本発明の押出加工方法によって製造されるアルミニウム合金製押出材は、押出材長さ方向全体に亘って該押出材の表面再結晶厚さが100μm以下である特徴を有する。また、本発明の押出加工方法を採用して製造されるアルミニウム合金製押出材は、押出材長さ方向全体に亘って引張強度および耐力のバラツキが20N/mm2以内であるという特徴を奏する。
【0063】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲内に含まれるものである。
【0064】
【実施例】
実施例1
表1に示したJIS 7N01に相当するアルミ合金製ビレットを、グランコ炉を用いて480℃に均一加熱後、コンテナに挿入して押出した。コンテナの形状はφ200であり、ビレットの形状はφ198×L550である。
【0065】
【表1】
Figure 0004928024
【0066】
本発明例は、図6(a)の点線(可変速押出)で示す様に、押出速度の初速を18.0 m/minとし、その後ビレットを押出すと共に(製品長が短くなると共に)押出速度を一定の割合で小さくして押出した。一方、比較例は、図6(a)の実線(等速押出)で示す様に、押出速度の初速が12.0 m/minに達した後、この速度を保持したままビレット終端部まで押出した。押出された製品の物性は、引張強度のバラツキ(N/mm2)、0.2%耐力のバラツキ(N/mm2)、再結晶厚さ(μm)で評価した。
【0067】
<引張強度のバラツキ及び0.2%耐力のバラツキ>
押出材をJIS H001の条件(T5条件)で熱処理後、JIS H4100に示される試験片を作成して、室温で引張強度及び0.2%耐力を測定した。試験片は押出材の先端から2 m付近、10m付近、18m付近のものを採取した。引張強度及び0.2%耐力のバラツキは、押出材の先端から2 m付近のものを基準として、夫々の位置から採取した試験片との引張強度及び0.2%耐力との差で表した。図6(b)に引張強度のバラツキの結果を示し、図6(c)に0.2%耐力のバラツキの結果を示す。
【0068】
<再結晶厚さ>
押出材の先端から2m付近、10m付近、18m付近の位置において、押出方向と垂直な断面を試験片とした。この試験片をエッチングした後、光学顕微鏡を用いて観察した。結果を図6(d)に示す。
【0069】
図6(b)〜(d)から次の様に考察できる。
【0070】
本発明例の押出方法を採用すると、押出材の長さ方向全体に亘って引張強度および耐力のバラツキが20N/mm2以内の優れた押出材を得ることができる。また、押出材長さ方向全体に亘って表面再結晶厚さは100μm以下となった。
【0071】
一方、比較例である従来の押出方法では、押出材の終端部に近づくにつれて物性が低下していることが分かる。つまり、製品先端部と終端部を比較すると、引張強度のバラツキは約33N/mm2となり、0.2%耐力のバラツキも約38N/mm2となった。また、再結晶厚さも製品終端部では、100μmを超えている。従って、従来の様に初速を維持したままビレットの終端部まで押出すと、押出材の長さ方向全体に亘って均一な製品は得られないのである。これによって、押出材終端部は製品として用いることができず、資源の無駄にもなる。
【0072】
実施例2
ビレットを予め加熱する際に、ビレットを均一に加熱した場合と温度勾配を付けて加熱した場合を比較する。
【0073】
<均一に加熱>
実施例1に示したアルミ合金製ビレットとほぼ同じ成分を有するビレットを、グランコ炉を用いて目標温度500℃に加熱した後、押出した。尚、グランコ炉とは、バーナーによってビレットを直接加熱する炉であり、加熱後のビレットの先端部近傍、280mm付近、550mm付近における加熱温度(℃)を接触温度計を用いて夫々測定した。ビレットの長手位置に対する加熱温度を図7(a)に実線(均一加熱)で示す。
【0074】
<温度勾配を付ける>
実施例1に示したアルミ合金製ビレットとほぼ同じ成分を有するビレットを、グランコ炉を用いて目標温度460℃に均一加熱した。その後、インダクションヒータ(誘導加熱装置)を用いて、ビレットの先端部を500℃まで再加熱した。加熱後のビレットの先端部近傍、280mm付近、550mm付近における加熱温度(℃)を接触温度計を用いて夫々測定した。ビレットの長手位置に対する加熱温度を図7(a)に点線(テーパ加熱)で示す。
【0075】
均一加熱または温度勾配を付与して加熱されたビレットを、初速12m/minまで加速後、一定の割合で押出速度を小さくした。尚、終速は8m/minである。
【0076】
実施例1と同様に押出材の引張強度のバラツキ、0.2%耐力のバラツキ、再結晶厚さを測定した。その結果を図7(b)〜(c)に示す。
【0077】
図7(b)〜(c)から明らかな様に、ビレットを均一に加熱した後押出しても、ビレットに温度勾配を付与して加熱した後押出しても、押出速度を制御して押出すと、全ての物性に優れた押出材を得ることができる。そして、中でも、ビレットに温度勾配を付与する様に加熱した後押出すと、さらなる効果を奏することが分かる。すなわち、押出材先端部と終端部との引張強度のバラツキは約6N/mm2以内になると共に、0.2%耐力のバラツキも約5N/mm2以内になる。また再結晶厚さも約10μm以内になる。
【0078】
【発明の効果】
上記のような構成を採用すると、従来よりも生産性を向上させつつ、製品品質が良好で材料特性に優れた製品を安定して得ることのできる押出加工方法を提供することができた。そして、この加工方法を採用すると、製品の先端部から後端部にかけて焼付き不良や再結晶不良などの製品不良のない押出し材を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビレットの押出速度パターンを説明するグラフである。
【図2】本発明に係るビレットの押出速度パターンを説明するグラフである。
【図3】ビレットの押出速度パターンを説明するグラフである。
【図4】ビレットの押出速度パターンを説明するグラフである。
【図5】本発明の要件を満足する最適押出速度パターンを求める流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例に係るグラフである。
【図7】実施例に係るグラフである。

Claims (12)

  1. 加熱されたビレットを押出加工するに際して、ビレットの押出速度を所定の速度にまで加速した後、製品不良が生じない様に該押出速度を制御して押出加工するにあたり、
    ビレットまたは製品の表面温度の変化と表面焼付きの関係に基づいて、表面焼付きが生じない表面温度範囲を予め求めておき、該表面温度範囲内で前記押出速度を減速方向に制御して押出加工することを特徴とする押出加工方法。
  2. 押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して押出速度パターンを設定する請求項に記載の押出加工方法。
  3. 加熱されたビレットを押出加工するに際して、ビレットの押出速度を所定の速度にまで加速した後、製品不良が生じない様に該押出速度を制御して押出加工するにあたり、
    押出加工中のビレットの歪速度と再結晶状態の関係に基づいて、製品不良とならない結晶粒径にコントロールできる歪速度範囲を予め求めておき、該歪速度範囲内で
    押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して押出速度パターンを設定し、且つ
    ビレット加熱温度を予め複数設定し、該加熱温度の夫々に対応する押出速度パターンの中から、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間が最も短いものを最適押出速度パターンとして選択して押出加工することを特徴とする押出加工方法。
  4. 加熱されたビレットを押出加工するに際して、ビレットの押出速度を所定の速度にまで加速した後、製品不良が生じない様に該押出速度を制御して押出加工するにあたり、
    押出加工中のビレットの歪速度と再結晶状態の関係に基づいて、製品不良とならない結晶粒径にコントロールできる歪速度範囲を予め求めておき、該歪速度範囲内で
    ビレットの先端部と終端部で加熱温度勾配を付与することができるビレットの加熱設備を用いてビレットを加熱した後、押出加工するに際して、
    ビレット先端部の加熱温度を予め複数設定し、
    該加熱温度の夫々に対してビレットに付与する熱エネルギーが必要最小限で押出できるようなビレット温度勾配を算出し、
    算出された加熱温度勾配の夫々に対して、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して押出速度パターンを求め、
    求められた押出速度パターンの中で、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間が最も短いものを最適押出速度パターンとして選択し、選択された最適押出速度パターンによって押出加工することを特徴とする押出加工方法。
  5. 加熱されたビレットを押出加工するに際して、ビレットの押出速度を所定の速度にまで加速した後、製品不良が生じない様に該押出速度を制御して押出加工するにあたり、
    ビレットまたは製品の表面温度の変化と表面焼付きの関係に基づいて、表面焼付きが生じない表面温度範囲を予め求めておき、該表面温度範囲内で
    押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して押出速度パターンを設定し、且つ
    ビレット加熱温度を予め複数設定し、該加熱温度の夫々に対応する押出速度パターンの中から、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間が最も短いものを最適押出速度パターンとして選択して押出加工することを特徴とする押出加工方法。
  6. 加熱されたビレットを押出加工するに際して、ビレットの押出速度を所定の速度にまで加速した後、製品不良が生じない様に該押出速度を制御して押出加工するにあたり、
    ビレットまたは製品の表面温度の変化と表面焼付きの関係に基づいて、表面焼付きが生じない表面温度範囲を予め求めておき、該表面温度範囲内で
    ビレットの先端部と終端部で加熱温度勾配を付与することができるビレットの加熱設備を用いてビレットを加熱した後、押出加工するに際して、
    ビレット先端部の加熱温度を予め複数設定し、
    該加熱温度の夫々に対してビレットに付与する熱エネルギーが必要最小限で押出できるようなビレット温度勾配を算出し、
    算出された加熱温度勾配の夫々に対して、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して押出速度パターンを求め、
    求められた押出速度パターンの中で、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間が最も短いものを最適押出速度パターンとして選択し、選択された最適押出速度パターンによって押出加工することを特徴とする押出加工方法。
  7. 加熱されたビレットを押出加工するに際して、ビレットの押出速度を所定の速度にまで加速した後、製品不良が生じない様に該押出速度を制御して押出加工するにあたり、
    押出加工中のビレットの歪速度と再結晶状態の関係に基づいて、製品不良とならない結晶粒径にコントロールできる歪速度範囲を予め求めると共に、
    ビレットまたは製品の表面温度の変化と表面焼付きの関係に基づいて、表面焼付きが生じない表面温度範囲を予め求めておき、
    前記歪速度範囲及び前記表面温度範囲を満足する様に押出加工することを特徴とする押出加工方法。
  8. 押出開始から押出終了に至るまでに要する時間を考慮して、
    前記歪速度範囲を満足するビレットの押出速度パターンと、
    前記表面温度範囲を満足するビレットの押出速度パターン
    を求め、これら両パターンのうちからより低速となる条件を用いて押出加工する請求項に記載の押出加工方法。
  9. 請求項において、ビレット加熱温度を予め複数設定し、該加熱温度の夫々に対応する押出速度パターンの中から、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間が最も短いものを最適押出速度パターンとして選択して押出加工する押出加工方法。
  10. ビレットの先端部と終端部で加熱温度勾配を付与することができるビレットの加熱設備を用いてビレットを加熱した後、押出加工するに際して、
    ビレット先端部の加熱温度を予め複数設定し、
    該加熱温度の夫々に対してビレットに付与する熱エネルギーが必要最小限で押出できるようなビレット温度勾配を算出し、
    算出された加熱温度勾配の夫々に対して請求項に記載の方法によって押出速度パターンを求め、
    求められた押出速度パターンの中で、押出開始から押出終了に至るまでに要する時間が最も短いものを最適押出速度パターンとして選択し、選択された最適押出速度パターンによって押出加工する請求項に記載の押出加工方法。
  11. 前記押出速度を減速方向に制御するものである請求項3〜10のいずれかに記載の押出加工方法。
  12. 前記押出速度を一定の割合で減速するものである請求項1、2、11のいずれかに記載の押出加工方法。
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